JP4091778B2 - 着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法に係り、特に、着色されたコンタクトレンズからなる着色されたコンタクトレンズの収納ケース内における存在の有無や存在枚数又はレンズの種類等の検知を、迅速且つ高精度に実施すると共に、より一層低廉に行なうことの出来る方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
よく知られているように、眼用レンズ、中でも、特にコンタクトレンズにあっては、視力を矯正するために人の眼に装用せしめられるといった重要な機能が要請されるところから、医療用具として取り扱われており、装用者の手元に届いて使用に供されるまでに、必要な品質が確実に保証されるべく、所定の収納ケース内に収容されて、厳重に保存及び輸送されている。
【0003】
そして、そのような眼用レンズの包装時や出荷時等には、従来より、レンズの収容されていない収納ケースがレンズを収容しているものとして取り扱われたり、誤った規格や品質のレンズ等がユーザーに提供されてしまう等といった問題の発生を防止する目的から、収納ケース内における眼用レンズの有無や、存在枚数、レンズの種類等を確認・検査する作業が、適宜に実施されているのであるが、現状では、そのような確認・検査作業は、一般に、作業者の目視にて行なわれているのが実情である。このため、作業者の眼の疲れや体調不良等による人為的な検査ミス等の問題が惹起される恐れがあるばかりでなく、レンズの生産性を低下させ、製造コストの上昇を招く原因の一つにもなっているのである。
【0004】
特に、近年においては、短期間でレンズ交換するタイプの使い捨て(ディスポーザブル)レンズが、その使い勝手の良さや、気軽に新品のレンズと交換して装用することが出来る等の理由により、普及してきており、この点よりして、更なる生産性の向上やコストダウンが、要請されている。そして、レンズの製造ラインでは、そのような要請に応えるべく、自動化が図られてきているのではあるが、高度に自動化された製造ラインであっても、未だ、上述せる如き作業者の目視による手動的な検査が、必要とされているのである。因みに、そのような収納ケース内におけるレンズの存在等の確認・検査を実施しない場合には、レンズの入っていない収納ケースが、数%の割合において、パッケージ化されて出荷せしめられてしまうといった問題が、惹起されることとなる。このため、メーカーからの出荷以前に、眼用レンズの収容ケース内における存在等の検知を自動で行なうことが出来るシステムの実現が、強く求められてきているのである。
【0005】
ところで、特開平7−325161号公報や特開平8−2514号公報(米国特許第5568715号明細書)には、散乱光乃至は拡散光によりパッケージを照らして、その際のレンズ画像を画像処理することにより、レンズの存在の有無を検査する手法が、また、特開平2−257007号公報には、撮像したレンズ画像を画像処理して、コンタクトレンズの外周欠けの検査を行なう手法が明らかにされているが、それらの手法は、何れも、カメラにて撮像した画像を画像処理するものであるところから、複雑なソフトウェアを含む、極めて高価な設備を導入しなければならず、コスト高であると共に、検査時間が長くなるといった問題も発生するものであった。
【0006】
また、特開2000−177720号公報や特開2000−338260号公報、米国特許第6124594号明細書には、パッケージ中のレンズに対して、電磁放射線(紫外光、赤外光等)を照射し、蛍光発光を測定したり、測定スペクトルを検出することによって、レンズの存在の有無を検査する手法が提案されているのであるが、これらの手法にあっても、放射線源等の特別な設備が必要とされるため、設備費が極めて高くなり、依然として、設備費等についての問題が内在するものであったのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、着色コンタクトレンズの収納ケース内における存在の有無や存在枚数、又はレンズの種類の検知を、人間の眼による目視検査ではなく、自動化せしめて、迅速且つ高精度に実施すると共に、より一層低廉に行い得る方法を、提供することにある。
【0008】
【解決手段】
そして、そのような課題を解決すべく、本発明者らは、コンタクトレンズの殆ど全てが、着色せしめられた形態において供給されることに鑑み、カラー印刷物の色調検査(特開平6−160298号公報)や材料表面の性状制御(特開平8−304243号公報)、白色ポリエステルフィルムの検査(特開平11−300915号公報)等の用途に用いられている色差計の如き色度検出手段を用いて、着色コンタクトレンズが収容されたケース内の色を定量的に数値化せしめることによって、着色コンタクトレンズの存在等の検知を実施することが可能であるか、否か、詳細に検討を行なった結果、着色された着色コンタクトレンズが収容されたケースに対して、可視光領域の検査光を照射し、そして、それによって得られる反射光を検出して、かかる反射光の色度、具体的には、色度座標を求めることによって、着色コンタクトレンズの存在等の検知を、優れた精度をもって迅速に実施することが出来ることを見出したのである。しかも、かかる手法を採用すれば、画像処理装置の如き極めて高価な設備費も不必要となり、上記した検査を、従来に比して、低廉に行なうことが可能となる知見を得たのである。
【0009】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、着色されたコンタクトレンズの収納ケース内における存在の有無や存在枚数又はレンズの種類を検知する方法にして、(a)検出対象となる収納ケースに対して、可視光領域の検査光を照射せしめる工程と、(b)該照射された検査光の該収納ケースからの反射光を検出し、XYZ表色系の三刺激値から色度座標の値を演算する工程と、(c)かかる演算により得られた色度座標の値を用いて、前記収納ケース内における着色されたコンタクトレンズの存在の有無や存在枚数又はレンズの種類について予め準備された照合用データと照合乃至は比較することにより、該収納ケース内における着色されたコンタクトレンズの存在の有無や存在枚数又はレンズの種類を判定する工程とを、含むことを特徴とする着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法にある。
【0010】
すなわち、かくの如き本発明に従う検知方法にあっては、検出対象たる収納ケースの色を、該収納ケースに可視光領域の検査光を照射して得られる反射光から、色度座標の値にて表わすようにしているため、着色されたコンタクトレンズが収容されている収納ケースと収容せしめられていない収納ケースとでは、得られる色度座標の値が大きく異なることとなり、以て、着色されたコンタクトレンズの存在の有無を、極めて容易に且つ優れた精度をもって、迅速に判定することが出来るようになっているのである。また同様に、収納ケース内に収容されるレンズの枚数や、レンズの種類(例えば、色の異なるレンズや、厚みの異なるレンズ)によっても、演算される色度座標の値が変化することとなり、それ故、着色されたコンタクトレンズの収納ケース内における存在枚数やその種類の判定も、容易に且つ充分な精度にて行なうことが出来るのである。
【0011】
しかも、上述せるように、画像処理装置等の極めて高価な設備が何等必要とされるものではないところから、着色されたコンタクトレンズの存在等の検知を、従来に比して低廉且つ高感度に行なうことが出来るのである。
【0012】
なお、かかる本発明に従う着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法の好ましい態様の一つによれば、前記着色されたコンタクトレンズが、460〜520nmの領域に主波長を有する色に着色されたものであることが、望ましい。けだし、そのような色、具体的には、青系〜緑系の色に着色されたコンタクトレンズにあっては、優れた感度をもって検知され得ると共に、装用者にあっても、無色透明レンズに比べ、色の判別が容易となるからである。
【0013】
さらに、本発明における好ましい態様の他の一つによれば、前記検査光が、前記着色されたコンタクトレンズの色の主波長よりも少なくとも50nm以上高い若しくは低い主波長を有していることが、望ましく、このような検査光を照射することによって、検出される反射光の主波長も大きく変化するようになるのであり、このために、着色されたコンタクトレンズの存在等、中でも、レンズの存在枚数やその種類の判別が、より一層容易となって、感度が向上し、更に高精度な検知が可能となる。
【0014】
加えて、本発明に従う着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法の好ましい別の態様の一つによれば、前記反射光が、前記着色されたコンタクトレンズの色の主波長よりも少なくとも50nm以上高い若しくは低い主波長を有する着色フィルタを介して検出される。このような構成によっても、検出される反射光の主波長が大きく変化するようになって、着色されたコンタクトレンズの判別性乃至は感度が向上し、より一層優れた精度をもって、着色されたコンタクトレンズの存在等の検知が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0016】
先ず、図1には、着色コンタクトレンズの収容ケース内における存在の有無や存在枚数、レンズの種類(例えば、色の異なるレンズや、厚みの異なるレンズ)等の検知を自動化せしめることが可能な、本発明の一実施形態に係る着色コンタクトレンズ検査システムを機能的に示す説明図が、概略的に示されている。そこにおいて、かかる着色コンタクトレンズ検査システム10は、照明装置12と光検出装置14、データ処理装置16を有して、構成されている。
【0017】
より具体的には、照明装置12は、検出対象となる収納ケース18に対して、可視光領域の検査光(照明光)を、一定の環境下で照射せしめるための装置であり、そのような照明装置12からの検査光が、かかるケース18に当てられることによって、ケース18が照明されるのである。そして、そのような照明装置12としては、かかる可視光領域(380〜780nm)の光を少なくとも照射し得る、従来から公知の各種の照明装置、中でも、使用条件等に応じて、長寿命で波長の安定したものが、好適に用いられ得るのであり、例えば、蛍光灯等の高周波照明やストロボ光、発光ダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を光源とする照明装置を例示することが出来る。また、かかる照明装置12には、色度検査または色調検査の測定精度を向上せしめるべく、供給電源の安定化や、検査光以外の外部光を遮断するための設備、長期使用による検査光の光量を監視するための光量測定装置が併設されていても良い。
【0018】
また、そのような照明装置12から照射される検査光としては、上述したように、可視光領域(380〜780nm)の光を少なくとも含み、かかるケース18を照明し得る光であれば、特に制限されるものではなく、CIE(国際照明委員会)にて規定される標準光の如き白色光であっても、或いは、狭い帯域幅や比較的広い帯域幅等を有する演色光(着色光)であっても何等差支えないのであるが、そのような検査光の中でも、より好適には、ケース18内に収容せしめられているコンタクトレンズ20の色に応じて、該コンタクトレンズ20の色の主波長よりも少なくとも50nm以上長い、或いは、50nm以上短い主波長を有する検査光が、望ましいのである。
【0019】
例えば、コンタクトレンズ20として、460〜520nm付近に主波長を有する、青〜緑系の色に着色せしめられたコンタクトレンズを採用する場合にあっては、その色の主波長よりも50nm以上長い主波長を有する黄緑〜黄色光や、50nm以上短い主波長を有する青紫〜紫色光等が、検査光として、好適に選択され得るのである。
【0020】
そして、このようなコンタクトレンズ20の着色の主波長よりも、少なくとも50nm以上長い若しくは短い主波長を有する検査光を照射せしめることによって、かかる検査光の演色による色のずれが生じ、収納ケース18内の着色コンタクトレンズ20の存在等、中でも、白色光等の検査光を照射した場合に判定が煩雑なレンズの存在枚数や、その種類(厚み等の規格違い等)の判別が、より一層容易となって感度が向上し、更に優れた精度での検知が可能となるのである。
【0021】
ところで、そのような所望とする主波長を有する検査光を収納ケース18に対して照射するには、該目的とする主波長を有する光を専ら発生し得る光源を有する照射装置12が選択され得る他、光源と検査対象物たる収納ケース18との間に、目的とする主波長を有する光を透過せしめ得るフィルタが配設されてなる照射装置等が、適宜に選択されて用いられ得ることは、言うまでもないところである。
【0022】
かくして、照明装置12から発せられる検査光は、収納ケース18に照射せしめられ、そして、その照射された検査光の収納ケース18からの反射光が、光検出装置14によって検知されるようになっているのである。ここにおいて、光検出装置14としては、反射された可視光領域の光を検出し得る、従来から公知の各種の光検出装置が採用され得、例えば、フォトダイオード、CCD等の光検出器を有する、色彩輝度計や分光光度計等が、適宜に選択されて用いられ得るのである。因みに、市販の色彩輝度計としては、例えば、受光体として機能するシリコンフォトダイオード光検出器を含み、検出分解能が高く、長期使用に対しても安定して動作する、株式会社トプコン製「色彩輝度計BM−7」等を例示することが出来る一方、分光光度計としては、φ1mmのファイバーから入力された光を測定できる、浜松ホトニクス株式会社製「マルチチャンネル検出器PMA−11」等を例示することが出来、そのような色彩輝度計や分光光度計等の市販品を上手く利用することによって、より一層低廉に検知をすることが可能になる。なお、以下では、光検出装置14として、従来より商業的に入手可能であり、光の検出と共に色度座標の演算を行ない得る色彩輝度計を例に挙げて、説明を行なうこととする。
【0023】
また、図1に示される本具体例においては、そのような色彩輝度計14及び照明装置12が、収納ケース18の上方において配置されているところから、かかる色彩輝度計14にあっては、収納ケース18からの反射光が検出されるようになっている。この際、本実施形態においては、収納ケース18からの反射光が有利に得られるように、かかる収納ケース18が、光を有利に反射せしめられ得る白色板22の上に載置されているのである。
【0024】
かくして、収納ケース18からの反射光が色彩輝度計14内の受光体に入射して検出されると、該色彩輝度計14において、その検出データから、JIS−Z−8722に示される如き手法等、即ち常法に従って演算が行なわれ、色度座標の値、具体的には、XYZ表色系の(x,y,z)が算出され得るようになっている。なお、かかる色度座標の値(x,y,z)は、よく知られているように、XYZ表色系の三刺激値の各々と、それらの和との比であり、次式(1)〜(3)によって定義されるものである。
x=X/(X+Y+Z) ・・・(1)
y=Y/(X+Y+Z) ・・・(2)
z=Z/(X+Y+Z)=1−(x+y) ・・・(3)
【0025】
なお、かかる(1)〜(3)の式から明らかなように、色度座標の3つの値(x,y,z)は、合計で1となるところから、本実施形態においては、そのようにして算出された3つの色度座標値のうちの二つの色度座標値(x,y)のデータが、インターフェースを介して、パーソナルコンピュータ等の従来から公知のデータ処理装置16に伝送されるようになっているのである。
【0026】
そして、色度座標値(x,y)データが、データ処理装置16に入力せしめられると、該データ処理装置16内の判定部において、色度座標値(x,y)データと予め準備された照合用データとの比較が行なわれて、コンタクトレンズ20の存在の有無や存在枚数又はレンズの種類が判定されるようになっているのである。なお、ここにおいて、予め準備される照合用データは、収納ケース18や、そこに収容されるコンタクトレンズ20の色に応じて、設定されるものであって、例えば、コンタクトレンズ20の存在しない収納ケース18や、1枚のコンタクトレンズ20が収容されたケース18、2枚のコンタクトレンズ20が収容されたケース18等の色度座標値(誤差領域を含んでいても良い)が、それぞれ、照合用データとして、実際に測定して得られた色度座標値(x,y)データと、照合乃至は比較されるのである。
【0027】
例えば、実際に測定して得られた色度座標値(x,y)が、照合用データの中の、1枚のコンタクトレンズ20が収容された場合の色度座標の値(領域)に一致する場合には、1枚のコンタクトレンズ20が存在するといった判定がなされるのである。
【0028】
而して、データ処理装置16の判定部にて、上述せる如きコンタクトレンズ20の存在等の判定が行なわれると、その結果が、かかるデータ処理装置16のディスプレイ17や、該データ処理装置16に接続されたプリンタ、警告装置等の従来から公知の出力装置(図示せず)にて出力せしめられ得るのである。
【0029】
かくして、出力せしめられた結果から、コンタクトレンズ20が何等収容されていない収納ケース18や、コンタクトレンズ20の収容枚数の異なる収納ケース18、誤った種類のコンタクトレンズ20が収容された収納ケース18等の問題のある収納ケース(不適合品)を、製造ラインから取り除くことが可能となって、コンタクトレンズ20不含の収納ケース18や、誤ったレンズがユーザー等に提供されてしまうこと等を、極めて有利に防止することが出来る。
【0030】
従って、このような検査システム或いは検知方法を採用すれば、着色コンタクトレンズ20の存在等の検知が有利に自動化せしめられて、その迅速な実施が可能となると共に、その作業に要する人件費の大幅な削減が実現され、以て、コンタクトレンズ20のコストダウンが実現され得るといった利点をも享受し得るのである。
【0031】
また、色度座標の値を、着色コンタクトレンズ20の存在等の判定に利用するようにしているところから、可視光領域のある特定の波長の光のみを検出して判定を行なう場合等に比して、感度が向上し、より一層容易に判定することが出来ると共に、より優れた精度が確保され得るのである。
【0032】
さらに、このような着色コンタクトレンズ検査システムを用いた着色コンタクトレンズ20の存在等の検知方法によれば、画像処理プログラム等の複雑なソフトウェアを含む、画像解析装置の如き極めて高価な装置等が何等必要とされ得ず、従来から商業的に入手可能な色彩輝度計や分光光度計の如き装置等を用いることが出来るところから、これらを上手く利用することによって、より低廉に実施することが出来る。
【0033】
ところで、このような検知方法において、その存在等が検査されるコンタクトレンズ20としては、無色透明ではなく、また、視力矯正を妨害せしめるような色に着色されていないものであれば、何れのものをも、その対象とすることが出来る。尤も、現在市場に供給されているコンタクトレンズにあっては、その殆どが着色されたレンズなのであるが、そのようなレンズの中でも、460〜520nm付近に主波長を有する、青〜緑系の色に着色せしめられたコンタクトレンズが好適に採用され得る。けだし、そのような色に着色されたコンタクトレンズ20にあっては、優れた感度をもって検知され得ると共に、装用者の眼によっても、その色の判別が容易となるからである。
【0034】
一方、このような検知方法に用いられる収納ケース18としては、コンタクトレンズ20と同様な色に着色されておらず、且つ、検査光を反射せしめ得るものであれば、特に限定されるものではないことは、言うまでもないところであり、例えば、ポリプロピレン製の白色半透明や無色透明等の従来から着色コンタクトレンズ用の収納ケースとして用いられてきているもの等が何れも有利に採用され得る。
【0035】
なお、図1に示される如き収納ケース18は、一般に、使い捨てコンタクトレンズの収納に使用される「ブリスターパッケージ」や「ブリスターケース」等と呼ばれる容器であって、上方に向かって開口する半球形状の凹所が設けられたプラスチック製の矩形状平板部と、該平板部の周縁端部から下方に一体的に突出する脚部とから構成されており、かかる矩形状平板部の中央部に設けられた半球形状の凹所が、レンズ収容部とされている。そして、かかるレンズ収容部に、着色されたコンタクトレンズ20と、かかるコンタクトレンズ20を保存するための保存液24が収容せしめられるようになっているのである。
【0036】
そして、本実施形態においては、コンタクトレンズ20が、保存液24内に浸漬された状態において、コンタクトレンズ20の収納ケース18内における存在等の検知操作乃至は検査操作が行なわれるようになっているのである。なお、そのようなコンタクトレンズ20の存在等の検知の後に、収納ケース18は、レンズ収容部の開口部を覆蓋するように、該開口部の径方向外方に延びる平板部の平坦面に、ポリプロピレン等からなるプラスチックフィルムや、アルミニウム箔のラミネート等の柔軟なシート状蓋体(図示せず)が、従来より公知の各種手法にて接着せしめられることによって、密閉され、そして、かかる収納ケース18内に密閉されたコンタクトレンズ20は、オートクレーブ滅菌等の操作によって、開封されるまで無菌状態が保持されたまま、保存乃至は輸送されるのである。
【0037】
また、収納ケース内に入れられる保存液24にあっても、コンタクトレンズ20と同様な色に着色されておらず、且つ、検査光を透過又は反射せしめられ得るものであれば、特に限定されるものではないことは、言うまでもないところである。
【0038】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、光検出装置14として、光の検出と共に色度座標の演算を行ない得る色彩輝度計が採用されていたところから、色度座標を求める演算が光検出装置14にて行なわれるようになっていたが、データ処理装置16にて、そのような色度座標を求める演算が行なわれるような構成を採用することも可能である。
【0040】
また、上例では、開蓋状態において、コンタクトレンズ20の存在等の検知、検査が行なわれていたが、収納ケースの蓋体が検査光を透過せしめ得るものであれば、閉蓋した状態において実施することも可能である。
【0041】
さらに、収納ケース18には、ここでは、コンタクトレンズ20が収容されていたが、かかるコンタクトレンズの種類は、何等限定されるものではなく、例えば、低含水、高含水等の全てに分類されるソフトコンタクトレンズ、及びハードコンタクトレンズが、その対象となり得るものであって、コンタクトレンズの材質等が、本発明の適用に際して何等問われることはない。
【0042】
また、上例においては、演算によって得られた色度座標の値(x,y)が、そのまま、照合用の色度座標データと対比されて、着色コンタクトレンズ(コンタクトレンズ20)の存在等の判定が実施されるようになっていたが、本発明手法は、このような方法に何等限定されるものではなく、例えば、得られた色度座標の値(x,y)から、更に反射光の主波長を求め、その得られた主波長から、着色コンタクトレンズの存在等の判定を行なうようにしたり、或いは、得られた色度座標の値(x,y)と標準光の色度座標の値とを結ぶ直線の傾きを算出し、その傾きから判定を行なうようにする等、得られた色度座標の値から更なる演算を実施し、その得られた結果にて判定を行なうことも可能である。但し、上記した主波長や傾き等を用いて判定を行なう場合には、それに応じた照合用データが必要とされることは、勿論、言うまでもないところである。
【0043】
なお、色度座標の値(x,y)から主波長を求める場合には、例えば、JIS−K−0102−1998に示されるように、得られた色度座標の値(x,y)を、図2に示される如き色度図上にプロットし、かかる色度座標の点S(x,y)と標準光Cの色度座標の点C(0.3101,0.3162)を結ぶ直線を作成する。そして、かかる直線を、点Cから点Sの方向に向かって延長して、スペクトル軌跡(色度図上のそれぞれの波長における単色光刺激を表わす点を連ねた線)と交わる点S′を求める。このようにして求められた点S′に対応する単色光の波長が、検出された光の主波長である。
【0044】
そして、かくの如くして、色度座標の値から求められた主波長にて、着色コンタクトレンズの存在等の判定を行なうようにすると共に、検査光として、ケース18内に収容せしめられているコンタクトレンズ20の色の主波長よりも少なくとも50nm以上長い若しくは短い主波長を有する可視光領域の光を照射すれば、着色されたコンタクトレンズの存在の有無は勿論のこと、判別が煩雑である着色コンタクトレンズの存在枚数やレンズの種類(厚み)の判定がより一層容易となって、感度が向上し、更に高精度な検知が可能となる。
【0045】
加えて、色度座標の値(x,y)のうち、x又はyのみの値で、簡易的にレンズの有無等の判断をすることも可能である。
【0046】
また、本発明にあっては、検査光として、可視光領域の光の中でも、ケース18内に収容せしめられているコンタクトレンズ20の色の主波長よりも、少なくとも50nm以上長い、或いは、50nm以上短い主波長を有する検査光が、特に好適に採用され得るのであるが、そのような構成を採用する以外にも、例えば、特定の波長領域の光の少なくとも一部を遮断するフィルタ等を介して、収納ケース18からの反射光を光検出装置14にて検出することによっても、同様の効果が得られるのである(つまり、コンタクトレンズ20の色の主波長よりも少なくとも50nm以上長い、或いは、50nm以上短い主波長を有する着色フィルタが、照明装置12の光源と検出対象たる収納ケース18の間に配設されても、或いは、収納ケース18と光検出装置14の間に配設されても、同様の結果が得られるのである)。
【0047】
例えば、460〜520nmの領域に主波長を有する青〜緑色に着色されたコンタクトレンズが収容せしめられた収納ケースに対して、検査光として、白色光を照射して得られる反射光を、その色の主波長よりも50nm以上長い主波長を有する黄緑〜黄色の着色フィルタを介して検出することによっても、検出される反射光の主波長が大きく変化するようになって、着色されたコンタクトレンズの判別性乃至は感度が向上し、より一層優れた精度をもって、着色されたコンタクトレンズの存在等の検知が可能となるのである。
【0048】
加えて、上述せる如き着色コンタクトレンズ検査システム内への収納ケース18の搬入や搬出、問題のある収納ケース18(不適合品)の排出等を、従来より公知の手法にて、自動化すれば、全く人手を介することなく、収納ケース18内の検査が出来ると共に、不良品を排除することが可能となって、従来では困難であった製造から出荷までのオートメーション化が、有利に図られ得ることとなる。この場合、データ処理装置16には、コンタクトレンズ20の存在等の判定をする機能だけでなく、光検出装置14への反射光の検出のタイミングコントロール等の制御機能が設けられていても良い。
【0049】
その他、一々列挙はしないが、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
【0051】
実施例 1
図1に示される如き着色コンタクトレンズ検査システム(10)を用い、ポリプロピレン樹脂製の白色半透明のブリスターケース(18)の検査を行なった。なお、検査光としては、標準光C、又は、主波長が570nm程度である黄色光を採用する一方、コンタクトレンズとしては、フタロシアニン系顔料により、主波長が490nm程度の淡い青緑色透明に着色されたコンタクトレンズ(20)を用いた。また、光検査装置(14)としては、株式会社トプコン製「色彩輝度計BM−7」を使用した。
【0052】
すなわち、図1に示されるように、コンタクトレンズ(20)の0〜2枚を、所定量の生理食塩水(24)が収容されたブリスターケース(18)内に、浸漬せしめ、そして、そのようなコンタクトレンズ(20)が浸漬されたブリスターケース(18)を、コンタクトレンズ(20)が色彩輝度計(14)のセンサーの真下に配置されるように、白色板(22)上に載置した。
【0053】
そして、上述せる如くして設置されたブリスターケース(18)に対して、上方から検査光を照射し、そのようにして照射された検査光のブリスターケース(18)からの反射光を、色彩輝度計(14)にて検出することによって、かかる反射光の色度座標の値(x,y)が、色彩輝度計(14)内にて演算せしめられた。その結果を、下記表1に示す。
【0054】
また、得られた色度座標の値から、検出された反射光の主波長、及び、得られた色度座標の値(x,y)と標準光Cの色度座標の値(0.3100,0.3162)とを結ぶ直線の傾きを算出し、下記表1に併せて示した。
【0055】
【表1】
【0056】
かかる表1からも明らかなように、ブリスターケース(18)内における着色コンタクトレンズ(20)の存在の有無や、その存在枚数によって、色度座標の値が変化していることが分かる。特に、コンタクトレンズ(20)が0枚のものと、1枚のものでは、色度座標の値に、大きな変化があることが理解され得るのである。
【0057】
また、コンタクトレンズ(20)の色の主波長よりも50nm以上長い主波長を有する黄色光を照射せしめた場合には、白色光を照射せしめた場合と比べて、収容されるコンタクトレンズ(20)の枚数によって、検出される反射光の主波長や、標準光Cの色度座標の値(0.3100,0.3162)とを結ぶ直線の傾きが大きく変化していることが、分かる。このため、着色されたコンタクトレンズの存在の有無は勿論のこと、その判別が困難なレンズの存在枚数やその種類の判定が、より一層容易となって、感度が向上し、更に優れた精度での検知が可能となることが、認められるのである。
【0058】
実施例 2
上記実施例1と同様にして、1000個のブリスターケース(18)内を検査し、着色コンタクトレンズ(20)の存在の有無の検知を、色度座標を求めることによって行ない、その結果を、下記表2に示した。なお、検査光としては、主波長が570nm程度である黄色光を採用すると共に、コンタクトレンズの存在の有無の判定が、パソコン(16)のディスプレイ(17)に表示され得るようにして、行なった。また、比較のために、上記1000個のブリスターケース(18)について、目視検査し、その結果も、下記表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】
かかる表2の結果からも明らかなように、本発明手法に採用される着色コンタクトレンズ検査システム(10)は、目視検査と充分に代替し得るものであり、目視検査に比して、連続的に且つ迅速に行ない得るものであることが、容易に理解され得るのである。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法にあっては、着色されたコンタクトレンズが収容される収納ケースに対して、可視光領域の検査光を照射し、かかる収納ケースからの反射光を検出して、その反射光の色度座標の値を求め、そして該色度座標の値から、着色コンタクトレンズの存在等を判定するようにしているところから、かかる着色されたコンタクトレンズの存在等の検知が有利に自動化せしめられ得て、その迅速な実施が可能となると共に、目視検査等を採用する場合に比して、より一層優れた精度での検知が可能となるのである。また、画像処理装置の如き高価な装置等も不必要となるところから、上記した着色コンタクトレンズの存在等の検査を、従来に比して低廉に行なうことが出来る特徴も有しているのである。
【0062】
加えて、本発明手法を採用すれば、着色コンタクトレンズが何等収容されていない収納ケースや、着色コンタクトレンズの収容枚数の異なる収納ケース、誤った種類の着色コンタクトレンズが収容された収納ケース等の不適合品を、製造ラインから取り除くことが、極めて容易となるのであり、これにより、着色コンタクトレンズ不含の収納ケースや、誤ったレンズがユーザー等に提供されてしまうこと等を、極めて有利に防止することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明手法に従って、着色コンタクトレンズの存在等の検知を行なう際に用いられる着色コンタクトレンズ検査システムの一例を概略的に示す説明図である。
【図2】 色度座標を図示するための色度図であって、得られた色度座標の値から、検出された反射光の主波長を求める一例を説明するための図である。
【符号の説明】
10 着色コンタクトレンズ検査システム 12 照明装置
14 光検出装置 16 判定装置
18 収納ケース 20 着色コンタクトレンズ
22 白色板 24 保存液
Claims (8)
- 着色されたコンタクトレンズの収納ケース内における存在の有無や存在枚数又はレンズの種類を検知する方法にして、
検出対象となる収納ケースに対して、可視光領域の検査光を照射せしめる工程と、
該照射された検査光の該収納ケースからの反射光を検出し、XYZ表色系の三刺激値から色度座標の値を演算する工程と、
かかる演算により得られた色度座標の値を用いて、前記収納ケース内における着色されたコンタクトレンズの存在の有無や存在枚数又はレンズの種類について予め準備された照合用データと照合乃至は比較することにより、該収納ケース内における着色されたコンタクトレンズの存在の有無や存在枚数又はレンズの種類を判定する工程とを、
含むことを特徴とする着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。 - 前記着色されたコンタクトレンズが、460〜520nmの領域に主波長を有する色に着色されたものである請求項1に記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
- 前記検査光が、前記着色されたコンタクトレンズの色の主波長よりも少なくとも50nm以上高い若しくは低い主波長を有している請求項1又は請求項2に記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
- 前記反射光が、前記着色されたコンタクトレンズの色の主波長よりも少なくとも50nm以上高い若しくは低い主波長を有する着色フィルタを介して検出される請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
- 前記検査光が、前記着色されたコンタクトレンズの色の主波長よりも少なくとも50nm以上高い若しくは低い主波長を有する着色フィルタを通して、前記収納ケース内に照射せしめられる請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
- 前記色度座標値のうちの一つ又は二つの値が、前記予め準備された照合用データとしての照合用色度座標データと照合乃至は比較せしめられる請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
- 前記色度座標値から反射光の主波長を求め、その得られた主波長から、前記した判定を行なう請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
- 前記色度座標値の二つを用い、それらと標準光の色度座標の値とを結ぶ直線の傾きを算出して、その傾きから、前記した判定を行なう請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の着色されたコンタクトレンズの存在等の検知方法。
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