JP4089925B2 - マイクロレンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い効率で光を集光することができるマイロクレンズの製造方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、カラーの液晶ディスプレイ(LCD)は、カラーフィルタを使用して構成画素部を3原色(R,G,B)とし、液晶の電気的スィッチングにより3原色の各光の透過を制御してカラー表示を行うものであり、プラズマディスプレイ等に比べて消費電力が小さいという長所がある。このような液晶ディスプレイでは、表示を明るく鮮明なものとするために、背後に照明用光源を備えた、いわゆるバックライト方式が近年普及している。しかし、照明用光源を使用した場合、消費電力が増大し、上記の消費電力が小さいという液晶ディスプレイの長所が損なわれることになる。このため、照明用光源からの光を効率良く画素部に集光することにより、照明用光源に要する電力を低減することが要求され、その手段として、マイクロレンズを配列してなるマイクロレンズアレイを使用した液晶ディスプレイが提案されている(特開昭60−165623号等)。
【0003】
また、CCD等を使用したカラーイメージセンサーでは、有効開口率を上げるために各受光セルに対応したマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイを受光面に配設したものが開発されている(特開昭61−67003号)。さらに、近年、光通信等で使用が増大している光ファイバにおいても、光の結合を行う場合にマイクロレンズが組み合わされて使用されている(特開昭61−153602号)。
【0004】
上述のように、基板の一方の面に形成されたマイクロレンズは種々の用途で使用されており、その製造方法には、▲1▼ガラスに拡散されたイオン濃度の分布を利用して屈折率勾配型のレンズとする方法(Electronics Letters Vol.17,No.13.PP452(1981)) 、▲2▼金型によってプラスチックあるいはガラスの表面をレンズ状の凹凸に成形する方法、▲3▼熱可塑性樹脂を用いてレンズの平面形状にパターン化し、その後、熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱して流動させることによりパターンエッジにダレを生じさせて凸レンズを形成する方法(特開昭60−38989号等)、▲4▼感光性樹脂にプロキシミティ露光を施してパターンエッジにボケを生じさせ、このボケに応じて光反応生成物の量に分布をもたせて凸レンズ形状を得る方法(特開昭61−153602号)、▲5▼感光性樹脂に強度分布をもたせた光を照射して露光し、光強度に応じた屈折率分布パターンを形成して微小レンズとする方法(特開昭60−72927号等)、▲6▼感光性ガラスに対する光照射によって生じる結晶化に伴った収縮を利用して凸レンズを形成する方法(Applied Optics Vol.24,No.16,P2520(1985))、▲7▼感光性樹脂をアライナーを用いて所望のパターン状に露光すると、非露光部から露光部に未反応のモノマーが移動して露光部が盛り上がるという現象を利用した凸レンズ形成方法(応用物理学会光学懇話会微小光学研究グループ機関誌 Vol.5,No.2,P118(1987),同 Vol.6,No.2,P87(1988))等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のいずれのマイクロレンズの製造方法においても、所望の特性を備えたマイクロレンズをより簡単に且つ高いパターン精度で製造できることが要求されているが、この要求に十分に応えられるマイクロレンズの製造方法は未だ開発されていない。
【0006】
これを解決するために、本出願人は、特願平8−338147号において、支持基板の一方の面に拡散防止層を形成し、該拡散防止層上に低融点ガラス層を形成した後、該低融点ガラス層を熱溶融し、ガラス化された低融点ガラス層上に感光性レジストを塗布し、その後、所定パターンの開口を有するマスクを介して前記感光性レジストを露光・現像してレジストパターンを形成し、該レジストパターンをマスクとして前記低融点ガラス層をエッチングして溝部を形成し、その後、前記低融点ガラス層を再度、熱溶融してマイクロレンズとする製造方法を提案している。
【0007】
しかしながら、上記製造方法においては、図3(A)に示す焼成前のマイクロレンズ9′の形状と、図3(B)に示す焼成後のマイクロレンズ9の形状とを比較すると、焼成後にはマイクロレンズ9の自重と表面張力の作用により基板1の横方向に広がってしまい、例えばx=100μm、y=30μmのパターンが、x′=150μm、y′=20μmとなってしまい、マイクロレンズのサイズのコントロールが困難であるという問題を有している。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであって、マイクロレンズのサイズのコントロールを行うことができるマイクロレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載のマイクロレンズの製造方法は、支持基板上に拡散防止層を形成し、該拡散防止層上に低融点ガラス層のレンズパターンを形成した後、前記低融点ガラス層全面に流動抑制層を塗布し、前記低融点ガラス層を熱溶融してマイクロレンズとすることを特徴とし、
また、請求項2記載の発明は、請求項1において、前記流動抑制層を形成した後、支持基板の上下を反転させて、熱溶融してマイクロレンズとすることを特徴とし、
請求項3記載の発明は、請求項1、2において、前記流動抑制層が樹脂からなることを特徴とし、請求項4記載の発明は、請求項1、2において、前記流動抑制層が蒸着膜からなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明のマイクロレンズの製造方法の1実施形態を示す模式的断面図である。先ず、図Aに示す工程において、支持基板1上に拡散防止層2を形成し、この拡散防止層2上に低融点ガラス層3を形成する。
【0011】
支持基板1は、透明ガラス基板であり、石英ガラス、無鉛ガラス、鉛ガラス等の材料からなるものであり、その厚みは、マイクロレンズの用途等を考慮して適宜設定することができ、例えば、0.1〜3mm程度とする。
【0012】
支持基板1上に形成される拡散防止層2は、後述する低融点ガラス層3の成分が支持基板1に拡散することを防止するためのもので、低融点ガラス層3と支持基板1との相溶性が小さく低融点ガラスとなじみにくい材料、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO2、Al2O3、TiO2等の金属酸化物、BN、Si3N4、TiN等の金属窒化物(反射型マイクロレンズの場合は、W、Mo等の高融点金属も使用可能)等の1種または2種以上を使用して、スパッタリング法、電子ビーム蒸発法、有機金属材料の塗布・焼成、気相成長法(CVD法)等により形成することができる。この拡散防止層2は、単層構造および多層構造のいずれであってもよく、その厚みは100〜3000オングストローム程度が好ましい。厚みは100オングストローム未満であると、拡散防止の作用が十分ではなく、マイクロレンズの表面状態が低下するので好ましくない。また、厚みが3000オングストロームを超えると、透過型マイクロレンズの場合、光の透過率が低下し好ましくない。
【0013】
マイクロレンズの材料である低融点ガラス層3は、PbO−ZnO−B2O3系、PbO−B2O3−SiO2系、PbO−SiO2−B2O3系等の低融点ガラス材料の1種または2種以上から、支持基板1よりも軟化点の低い材料を用いて、スピンコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法により形成する。厚みは2〜100μm程度とする。
【0014】
次に、支持基板1を低融点ガラス層3の軟化点よりも高く、かつ、支持基板1の軟化点よりも低い温度で加熱し、低融点ガラス層3を熱溶融した後、冷却してガラス化する。この熱溶融処理は、低融点ガラス層3のポーラスな膜をある程度緻密化させるためで、後述する感光性レジスト塗布工程において、レジストの塗布性を向上させると共に、塗布の均一化、使用量の低減を図るためであり、また、エッチング工程において、図Dに示す平坦部7の側面が不規則に浸食されてマイクロレンズのパターン精度が悪くなるのを防止すると共に、低融点ガラス層3中の樹脂成分が分解しエッチング残査が生じるのを防止するためである。
【0015】
以上のように低融点ガラス層3を熱溶融しガラス化した後、低融点ガラス層3上に感光性レジスト塗膜4を形成する。感光性レジスト塗膜4は、ゴム系ポジレジスト、アクリル系ネガレジスト等の公知の感光性レジストを使用し、スピンコート法、ブレードコート法等成膜手段により形成することができ、厚みは0.5〜2μm程度とする。また、上記の感光性レジストからなるドライフィルムを使用して感光性レジスト塗膜4を形成することもできる。
【0016】
次に、図Bに示す工程において、マスクを介して感光性レジスト塗膜4を露光し現像することにより、レジトスパターン5を形成する。このレジストパターン5は、マイクロレンズ群を構成する各マイクロレンズの配列の間隙部に相当するパターンで、すなわち格子状の開口部5aが形成されている。
【0017】
次いで、図Cに示す工程において、支持基板1をエッチング液に浸漬し、レジストパターン5をマスクとして低融点ガラス層3をエッチングして、低融点ガラス層3に溝部6を形成し、拡散防止層2を露出させる。この低融点ガラス層3のエッチングに使用するエッチング液としては、フッ化水素酸、フッ化水素酸と硫酸との混合液等を挙げることができる。その後、レジスト剥離液によりレジストパターン5を剥離すると、図Dに示すように、低融点ガラス層3は、形成しようとするマイクロレンズの配列パターンに対応して、周囲に溝部6が形成された平坦部7を残した状態となる。
【0018】
次に、図Eに示す工程において、焼成後のレンズのサイズの変化を極力抑えるために、低融点ガラス層3の全面に流動抑制層8を形成する。流動抑制層8としては、光硬化型又は熱硬化型の樹脂であって、低融点ガラスの焼成温度で灰化する樹脂を数μmの厚さで塗布して用いることができる。流動抑制層に用いられる樹脂の例としては、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、焼成型アクリル樹脂等がある。
【0019】
また、流動抑制層8として、炭素、SiO2等の透明又は焼成により透明となる物質を数千オングストローム蒸着して用いることも可能である。
【0020】
次に、支持基板1を低融点ガラス層3の軟化点よりも高く、かつ、支持基板1の軟化点よりも低い温度で焼成し、低融点ガラス層3が熱溶融によって流動するとき流動抑制層8がその広がりを抑制し、流動抑制層8として前記の樹脂を使用した場合には、図Fに示すように、流動抑制層8は灰化されてなくなり、また、蒸着膜を使用した場合には、低融点ガラス上に蒸着膜の被膜を有した状態で、レンズ形状となったマイクロレンズ9が形成され、このようなマイクロレンズ9が複数配列されたマイクロレンズアレイ10が得られる。また、支持基板1の焼成による低融点ガラス層3全体の熱溶融では、支持基板1と低融点ガラス層3との間に拡散防止層2を配置しているので、低融点ガラスの軟化点より100〜400℃高く設定でき、具体的には、電気炉等の加熱手段を使用して熱溶融を行うことができる。
【0021】
なお、形成するマイクロレンズ9の焦点距離は、低融点ガラス層3の厚み(2〜100μm程度)、マイクロレンズ9のピッチ、溝部6の深さで設定することができ、低融点ガラス層3の厚みは2〜100μm程度、溝部6の深さは1〜30μm、幅は5〜100μmの範囲で設定し、その用途等に応じて焦点距離を10〜3000μmの範囲で、各マイクロレンズ9の形成ピッチを10〜500μmの範囲で適宜設定する。
【0022】
図2は、本発明のマイクロレンズの製造方法の他の実施形態を示す模式的断面図である。上記実施形態においては、エッチング液を用いるようにしているが、本実施形態においては、低融点ガラス層3をドライエッチングして溝部6を形成する。このようなドライエッチングは、カソードカップル型反応性イオンエッチング、平行平板型イオンエッチング等を使用して行うことができる。溝部6の深さは1〜20μm、幅は3〜60μmの範囲で設定することができる。本実施形態においては、レジストパターン5の開口部5aの幅に対応して溝部6が形成されるため、マイクロレンズ9のパターン精度を更に向上させることができる。
【0023】
更に、本実施形態において特徴的なことは、図Cに示すように、低融点ガラス層3の全面に流動抑制層8を形成した後、図Dに示すように、支持基板1の上下を反転させることである。これにより、マイクロレンズの自重による横方向への広がりが更に抑制され、マイクロレンズのサイズをより高精度にコントロールすることができる。本実施形態によれば、低融点ガラス層3が熱溶融したときマイクロレンズの自重と流動抑制層8により、低融点ガラスの横方向の移動を抑制するため、例えば、図3においてx′=110μm、y=27μm程度までサイズのコントロールを行うことができる。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
支持基板として、10cm角の石英ガラス基板(厚み1.1mm、屈折率1.46、軟化点1600℃)を準備した。この石英ガラス基板上にスパッタリング法によりITOからなる拡散防止層(厚み1000オングストローム)を形成し、さらに、この拡散防止層に下記組成の低融点ガラス(軟化点350℃)用いてスクリーン印刷方法により低融点ガラス層(厚み5μm)を形成した。次に、この石英ガラス基板を電気炉により400℃に加熱し、低融点ガラス層をある程度熱溶融した後、冷却しガラス化した。
【0025】
低融点ガラスの組成
・PbO(酸化鉛) …65重量部
・ZnO(亜鉛 ) …20重量部
・B2O3(硼酸) …12重量部
・その他(Na2O、Li2O、BaO、CaO、Al2O3)…3重量部
次に、上記のガラス化した低融点ガラス層上にスピンコート法により感光性レジスト(東京応化工業(株)製OFPR800)を塗布し乾燥して感光性レジスト塗膜(厚み0.8μm)を形成した。次いで、所定パターンの開口を有するマスクを介して感光性レジスト塗膜を露光し現像してレジストパターンを形成した。このレジストパターンは、線幅5μm、形成ピッチ60μmの格子形状の開口部を有し、この開口部には低融点ガラス層が露出するものであった。次いで、石英ガラス基板の裏面に保護フィルムを貼り、石英ガラス基板を50%フッ化水素酸溶液中に2分間浸漬しして、レジストパターンをマスクとし低融点ガラス層のエッチングを行い、引き上げ後、洗浄した。これにより、低融点ガラス層には、線幅15μmの溝部(この溝部では拡散防止層が露出している)が格子形状に形成されるとともに、この溝部により45μm×45μm角の平坦部が形成された。
【0026】
その後、レジスト剥離液(東京応化工業(株)製 剥離液10)によりレジストパターンを剥離して水洗した。そして、この石英ガラス基板に流動抑制層としてエチルセルロースを2μmの膜厚で塗布し、石英ガラス基板を電気炉により600℃に加熱し、平坦部を熱溶融によって流動させることによって、平面視直径約50μm、焦点距離600μmのマイクロレンズが複数配列されたマイクロレンズアレイが得られた。
【0027】
(実施例2)
流動抑制層として、SiO2膜を5000オングストロームの厚さで蒸着により形成し、石英ガラス基板の上下を反転させて電気炉により600℃に加熱して、平坦部を熱溶融させた点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズアレイを形成した。平面視直径約47μm、焦点距離520μmのマイクロレンズが複数配列されたマイクロレンズアレイが得られた。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、低融点ガラス層が熱溶融したときマイクロレンズの自重と流動抑制層により、低融点ガラスの横方向の移動を抑制することにより、マイクロレンズのサイズのコントロールを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマイクロレンズの製造方法の1実施形態を示す模式的断面図である。
【図2】本発明のマイクロレンズの製造方法の他の実施形態を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の課題及び効果を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1…支持基板
2…拡散防止層
3…低融点ガラス層
4…感光性レジスト塗膜
5…レジストパターン、5a…開口部
6…溝部
7…平坦部
8…流動抑制層
9…マイクロレンズ
Claims (4)
- 支持基板上に拡散防止層を形成し、該拡散防止層上に低融点ガラス層のレンズパターンを形成した後、前記低融点ガラス層全面に流動抑制層を形成し、前記低融点ガラス層を熱溶融してマイクロレンズとすることを特徴とするマイクロレンズの製造方法。
- 前記流動抑制層を形成した後、支持基板の上下を反転させて、熱溶融してマイクロレンズとすることを特徴とする請求項1記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記流動抑制層が樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記流動抑制層が蒸着膜からなることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロレンズの製造方法。
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