JP4089800B2 - 重質油の水素化精製方法およびそれに用いる触媒 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は重質油の水素化精製用触媒、特には、水素化脱硫を行った重質油に含まれる比較的高分子量の含ヘテロ化合物の分解に優れた水素化精製方法およびそれに用いる触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、重質油の水素化精製では、アルミナなどの多孔性の無機担体に脱メタル能、水素化能などを有する活性金属を担持した触媒が多く用いられる。このような触媒を用いることにより、水素化精製では、重質油中に含まれるヘテロ元素、すなわち硫黄、窒素、および金属分(バナジウム、ニッケル、鉄など)が除去される。触媒に関しては、ヘテロ元素の除去能力を向上させる活性金属、担体の性質、細孔構造などについて種々検討がなされてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
環境上の規制などにより重質油中の硫黄、窒素などのヘテロ成分の含有量を所定の値以下に押さえることが必要となる。重質油の水素化精製を繰り返し行うことで、ヘテロ成分の含有量を十分下げることもできるが、ヘテロ成分の含有量を十分に下げられない場合もある。
【0004】
または、ヘテロ成分を十分に除去できる条件で水素化精製処理を行った場合、触媒寿命が短いなどの処理上の問題があった。例えば、反応条件を高温にすることにより、ヘテロ成分の除去を促進することも試みられているが、副反応として炭化水素が縮合して、ドライスラッジが発生し、製品が劣質化することや触媒上にコークが堆積して触媒が失活する、いわゆるコーク劣化が生じるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのもので、本発明の目的は重質油中の含ヘテロ成分の含有量を十分に下げることができる水素化精製方法およびそれに用いる触媒を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を進めた結果、次の知見を得た。すなわち、従来の水素化精製触媒では、比較的低分子量の含ヘテロ化合物、すなわち硫黄、窒素、および金属分(バナジウム、ニッケル、鉄など)を含む化合物は分解され、ヘテロ成分が除去される。しかし、重質油に含まれる比較的高分子量の含ヘテロ化合物は分解されにくいために残存し、ヘテロ成分含有量を十分に下げることができなくなっているのである。
【0007】
このような検討に基づき、比較的高分子量の含ヘテロ化合物を分解し、ヘテロ成分を低減することが可能な触媒の検討を進め、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明による重質油の水素化精製方法は、水素化脱硫を行った重質油であって、該重質油中に含まれる全硫黄重量の50%以上が分子量1000以上の硫黄含有化合物に含まれる硫黄分である重質油を、モリブデンとニッケルの組み合わせからなる水素化活性金属と、カリウムと、リンを含んだ多孔質からなる水素化精製触媒と水素の存在下で反応させるものである。また、本発明による水素化精製触媒は、水素化脱硫を行った重質油であって、該重質油中に含まれる全硫黄重量の50%以上が分子量1000以上の硫黄含有化合物に含まれる硫黄分である重質油を、さらに水素化精製する触媒であって、モリブデンとニッケルの組み合わせからなる水素化活性金属と、カリウムと、リンを含み、多孔質であるものである。カリウム含有量の濃度分布が触媒の中心部よりも外周部において高濃度であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、重質油中に含まれる硫黄含有化合物の重量平均分子量が2000以上である重質油に適用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
[多孔質からなる触媒] 本発明に係る触媒は、比表面積が100〜450m2/g、より好ましくは150〜300m2/g、平均細孔容積が0.1〜2cc/g、より好ましくは0.3〜1.5cc/g、平均細孔径は50〜400Å、より好ましくは70〜300Åの範囲になるようにするとよい。
【0011】
触媒に用いる担体としては、一般に、触媒担体として用いられている無機物から調製されるのであれば何れでも支障なく、例えば、周期律表第II族、第III族、および第IV族元素の酸化物からなるものが挙げられる。特に、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、チタニア、カルシア、酸化亜鉛等の酸化物の少なくとも1種類を使用できる。このうち、アルミナ(α、γ、δ、η、χ等の各結晶構造)、シリカ-アルミナ、シリカ、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア、アルミナ-シリカ-マグネシア等からなるもの、特には、γ−アルミナまたはγ−アルミナにシリカ分を配合したものが好ましい。また、触媒の形状は、球状、円柱状、三葉型または四葉型等のいかなる形状でも使用に支障はない。
【0012】
[水素化精製] 本発明による水素化精製条件は、反応温度が250〜500℃、より好ましくは300〜450℃、反応圧力が1〜30MPa/cm2、好ましくは5〜20MPa/cm2、水素流量が水素/油比で50〜5000L/L、より好ましくは500〜2000L/L、および液空間速度(LHSV)が0.1〜10/hr、より好ましくは0.2〜5/hrの範囲から適宜選定することが好適である。本発明の水素化精製は、精製後の全硫黄量を0.5%以下、特には0.2%以下とする場合に好ましく用いられる。
【0013】
[水素化活性金属] 本発明に用いられる水素化活性金属とは、水素化能を有する金属であり、具体的には、モリブデンとニッケルの組み合わせである。
【0014】
水素化活性金属の含有量は、触媒に対して、金属の合計量として1〜20重量%、特には2〜15重量%の範囲が好ましい。この範囲より含有量が少ないと、脱硫・脱窒素や脱メタル活性が低く、また含有量が多いと細孔容積が減少する傾向がみられ、また製造コストが高くなりあまり好ましくない。水素化活性金属の含有量としては、モリブデンが2〜15重量%、ニッケルが1〜5重量%であることが好ましい。
【0015】
水素化活性金属は、金属状態、酸化物状態、あるいは硫化物状態で触媒に含有させる。なお、含有とは触媒の全体にわたって分布している状態であってもよいが、特には、触媒の表面付近に分布している状態、いわゆる担持されていることが好ましい。
【0016】
[カリウム] 本発明に用いられる触媒は、カリウムを含むものである。触媒中にカリウムの元素として0.1〜10重量%の範囲で適宜選定する。この範囲より含有量が少ないとヘテロ分子の分解、低分子量化作用が十分でなく、含有量が多いと脱硫・脱窒素や脱メタル活性の低下が著しく、分解促進効果も損なう。特に、適当な分解作用および水素化精製能を付与するためには、0.2〜5重量%、特には、0.2〜1重量%が好ましい。
【0017】
カリウムは、酸化物状態などの状態で触媒に含有させる。なお、含有とは触媒の全体にわたって分布している状態であってもよいが、カリウムの最大濃度ピークが触媒ペレットの断面において、その外表面付近に位置するようにすることが好ましい。これは、重質油中の硫黄、またはメタル分含有化合物が、触媒ペレット内に拡散していく過程でペレット外表面付近のカリウムにより低分子量化され、通常の分子の大きさでは拡散しにくいペレット内部まで拡散して除去されるようになるためである。これにより触媒は、そのペレット内部まで脱メタル、脱硫反応に有効に活用することができる。
【0018】
このカリウムの最大濃度ピークの位置は、触媒ペレットの断面において、外表面から中心までの距離をR、外表面から最大濃度ピークの位置までの距離をrとした場合、r/R=0〜0.5の範囲、特には0〜0.3の範囲になるようにすると効果が高い。r/R>0.5の範囲ではカリウムの低分子量化効果があまり高くなく、触媒ペレット内部をあまり有効に使うことができないので好ましくない。
【0019】
また、触媒ペレットの断面において、外表面近傍(外表面から中心までの距離をRとし、外表面から0〜0.2Rの範囲)のカリウム濃度をXo、中心付近(外表面から中心までの距離をRとし、外表面から0.8R〜1.0Rの範囲)のカリウム濃度をXiとするとき、Xi/Xoの値が0〜0.8の範囲、特には0〜0.6の範囲にあることが好ましい。このカリウム濃度は、微小領域に含まれる元素の定量分析に適した分析法、例えば、EPMA、オージェ電子分光法、二次イオン質量分析法(SIMS)により、触媒ペレットの断面を線分析した場合の所定範囲における検出強度の積分値から求めることができる。なお、分析の対象となる断面は、触媒ペレットが回転対称の形状に近似できる場合には、その対称軸に垂直な断面であり、対称軸が断面の中心となる。
【0020】
[そのほかの成分] 本発明に用いられる触媒は、リンを含む。触媒中のリンの含有量は元素として、通常0.1〜10重量%の範囲であり、特に、0.2〜5重量%、さらには、0.2〜1重量%が好ましい。リンは、酸化物状態などの状態で触媒に含有させる。なお、含有とは触媒の全体にわたって分布している状態であってもよいが、特には、触媒の中心部よりも外周部において高濃度であることが好ましい。
【0021】
[担持方法] 本発明の触媒は、担持法、共沈法、混練法等により水素化活性金属、カリウムなどを含有させて製造することができる。担持法では、例えば、前述した担体とカリウムを含有する含浸液とを接触させることにより、担体表面にカリウムを担持し、乾燥、焼成を行う方法が好適である。特に、担体を、第VI族または第VIII族元素から選択された少なくとも1種類の金属成分とリン酸化合物とを含む溶液に含浸し、次に、カリウム化合物を含む溶液に含浸することで外周部に効率よくカリウムを含浸することができる。水素化活性金属元素成分とリン酸化合物とを含む溶液に含浸した後に、通常は、50〜180℃、好ましくは80〜150℃の温度範囲で、10分〜24時間乾燥する。また、カリウム化合物を含む溶液に含浸した後に、通常、乾燥・焼成する。この乾燥は、50〜180℃、特には80〜150℃の温度範囲で、10分〜24時間行うことが好ましい。また、焼成は400〜600℃、特には450〜550℃の温度範囲で行われ、焼成温度までの昇温時間は10〜240分、焼成温度での保持時間は1〜240分が好適である。
【0022】
さらに含浸液中には、活性金属を高濃度で分散性良く担持するために、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸等の有機酸や、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等を添加してもよい。乾燥は通常50〜180℃、好ましくは80〜150℃の温度範囲で、乾燥時間としては通常10分〜24時間の範囲で適宜選定するとよい。焼成は400〜600℃、好ましくは450〜550℃の温度範囲で選定される。焼成温度までの昇温時間は10〜240分、焼成温度での保持時間は1〜240分が好適である。
【0023】
担体の作製工程において、水素化活性金属、カリウムを含有させることもできる。例えば、混練法として、担体の原料となる粉体と、カリウムを含む化合物、例えば硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、りん酸塩、塩化物、フッ化物、酸化物などのカリウム無機化合物とを混練することにより行う。その際に所望の細孔構造を得るために、硝酸、硫酸、アンモニア水等の解こう剤を用いてpHを調製して混練する方法が好適である。
【0024】
また、重質油分子の触媒内への拡散に対して有効なマクロポアを付与するために界面活性剤、エマルジョン、カーボンブラック等を添加する方法も併用できる。混練は通常、回転式混練機等を用いて行うとよい。混練時間は15分〜6時間、好ましくは30分〜4時間である。練りあがったドウを押し出し成形機等を用いてペレット状に成形する。
【0025】
[重質油] 本発明の触媒は、硫黄、窒素、バナジウム、ニッケル、鉄等のヘテロ元素をその骨格に含み、比較的高分子量の含ヘテロ化合物を含有するアスファルテン分等の蒸留残渣が含まれている重質油の水素化精製に好適である。このような重質油としては、脱硫触媒を用いて少なくとも1度の水素化脱硫工程を経た重質油を用いることができ、その特性としては、重質油中に含まれる全硫黄重量の50%以上が分子量1000以上の硫黄含有化合物に含まれる硫黄分である。また、該重質油中に含まれる硫黄含有化合物の重量平均分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、特には4000以上である。通常、重質油中には、硫黄が0.5重量%以上含有される。
【0026】
重質油としては、50%留出温度が450℃以上である重質油、すなわち、原油、タールサンド、シェールオイルあるいは石炭液化油等を常圧蒸留または減圧蒸留することにより得られる各種の重質留分や残渣油、あるいはこれらの分解、異性化、改質、溶剤抽出等の処理を行った重質油等に、広く適用されるが、特には、脱硫触媒を用いて水素化脱硫した後の減圧残渣油、常圧残渣油などの重質油に好適である。
【0027】
[前段の水素化脱硫] 本発明の態様の一つとして、水素化脱硫が行われた重質油に対して、水素化精製処理が行われる。この前段の水素化脱硫の精製条件は、反応温度が250〜500℃、より好ましくは300〜450℃、反応圧力が1〜30MPa/cm2、好ましくは5〜20MPa/cm2、水素流量が水素/油比で50〜5000L/L、より好ましくは500〜2000L/L、および液空間速度(LHSV)が0.1〜10/hr、より好ましくは0.2〜5/hrの範囲から適宜選定することが好適である。
【0028】
前段の水素化脱硫に用いる触媒は、カリウムを実質的に含まず、水素化活性金属を含む多孔質からなる水素化精製触媒を用いることが好ましい。前段触媒は、比表面積が100〜450m2/g、より好ましくは150〜300m2/g、平均細孔容積が0.1〜2cc/g、より好ましくは0.3〜1.5cc/g、平均細孔径は50〜400Å、より好ましくは70〜300Åの範囲になるようにするとよい。
【0029】
この触媒の水素化活性金属は、水素化能を有する金属であり、第VI族または第VIII族元素から選択された少なくとも1種類の金属成分である。具体的には、第VI族元素として、クロム、モリブデン、タングステン、第VIII族元素として、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金等を挙げることができる。これらの金属の内、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバルトが、特には、モリブデンまたはタングステンと、ニッケルまたはコバルトの組み合わせが好ましい。これらの活性金属は、単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
水素化活性金属の含有量は、触媒に対して、金属として1〜20重量%、特には5〜15重量%の範囲が好ましい。この範囲より含有量が少ないと、脱硫・脱窒素や脱メタル活性が低く、また含有量が多いと細孔容積が減少する傾向がみられ、また製造コストが高くなりあまり好ましくない。モリブデンまたはタングステンと、ニッケルまたはコバルトの組み合わせの場合には、モリブデンおよびタングステンが2〜15重量%、ニッケルおよびコバルトが1〜5重量%であることが好ましい。
【0031】
前段の水素化脱硫と、本発明による水素化精製は、別の反応容器内で行ってもよいし、同じ反応容器内の上流と下流に分けて触媒を充填することにより行ってもよい。前段の水素化脱硫に先だって水素化脱金属処理などの前処理を行ってもよい。また、本発明の水素化精製を行った後に、さらに、他の水素化精製処理を行ってもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明による重質油の水素化精製方法は、比較的高分子量の含ヘテロ化合物を多く含む重質油を、モリブデンとニッケルの組み合わせからなる水素化活性金属と、カリウムと、リンを含んだ多孔質からなる水素化精製触媒と水素の存在下で反応させるものであり、重質油に多く含まれる比較的高分子量の含ヘテロ化合物の分解を促進することにより、硫黄などのヘテロ成分の含有量を十分に下げることができる。
【0033】
【実施例】
本発明を実施例により詳しく説明する。
【0034】
[触媒A] 市販の擬ベーマイト粉体に硝酸および水を加えて混練した後、直径0.8mm、長さ3〜5mmの柱状物に押し出し成形した。この成形体を乾燥し、600℃で1時間焼成し、γ-アルミナ担体を得た。このγ-アルミナ担体にモリブデン酸水溶液をスプレー法で含浸させ、乾燥した。さらに、硝酸ニッケル水溶液をスプレー法で含浸させ、乾燥した。その後、500℃で30分焼成することにより、元素重量として、モリブデンが8重量%、ニッケルが2.2重量%担持された触媒Aを得た。触媒Aの比表面積は233m2/g、細孔容積は0.62cc/g、中央細孔径は92Åであった。
【0035】
[触媒B] 市販の擬ベーマイト粉体に硝酸および水を加えて混練した後、直径0.8mm、長さ3〜5mmの柱状物に押し出し成形した。この成形体を乾燥し、600℃で1時間焼成し、γ-アルミナ担体を得た。このγ-アルミナ担体にモリブデン酸水溶液をスプレー法で含浸させ、乾燥した。さらに、硝酸ニッケル水溶液とりん酸の混合液をスプレー法で含浸させ、乾燥した。その後、500℃で30分焼成することにより、触媒Bを得た。触媒Bは、元素重量として、モリブデンが8重量%、ニッケルが2.2重量%、りんが1.0重量%が担持され、比表面積は213m2/g、細孔容積は0.57cc/g、中央細孔径は91Åであった。
【0036】
[触媒C] 市販の擬ベーマイト粉体に硝酸および水を加えて混練した後、直径0.8mm、長さ3〜5mmの柱状物に押し出し成形した。この成形体を乾燥し、600℃で1時間焼成し、γ-アルミナ担体を得た。このγ-アルミナ担体にモリブデン酸アンモニウムとりん酸を溶解して調製した水溶液をスプレー法で含浸させ、乾燥した後、硝酸ニッケル水溶液をスプレー法で含浸させ、乾燥した。さらに、水酸化カリウム水溶液をスプレー法で含浸させ、乾燥した。その後、500℃で30分焼成することにより、触媒Cを得た。触媒Cは、元素重量として、モリブデンが8重量%、ニッケルが2.2重量%、カリウムが0.5重量%、りんが1.0重量%担持され、比表面積は217m2/g、細孔容積は0.58cc/g、中央細孔径は91Åであった。
【0037】
[前段の水素化脱硫] 触媒Aを用い、水素圧140kg/cm2 、液空間速度 0.3/hr、水素流量670L/L、反応温度400℃の条件で常圧残渣油を水素化脱硫して、水素化脱硫油を得た。用いた常圧残渣油および得られた水素化脱硫油の性状を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
[後段の水素化脱硫] 触媒Aを用いて前段の水素化脱硫を行った水素化脱硫油を原料油として、触媒A、BまたはCを用い、水素圧120kg/cm2、液空間速度0.3/hr、水素流量670L/L、反応温度405℃の条件で水素化精製処理を行い、20時間運転した後の特性を触媒の初期特性として評価した。また、触媒が劣化した後の特性を評価するために、より過酷な条件である水素圧120kg/cm2、液空間速度0.3/hr、水素流量670L/L、反応温度405℃の条件で200時間後に評価した。その結果を表2に示す。また、比較のために、前段の水素化脱硫の原料とした常圧残渣油を原料油として、触媒A、BまたはCを用い、水素圧120kg/cm2、液空間速度1.0/hr、水素流量670L/L、反応温度380℃の条件でて上述の後段の水素化処理と同じ条件で水素化処理および評価を行った結果を表3に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
触媒Aを用いて前段の水素化処理を行った原料油(水素化脱硫油)、および、触媒BまたはCを用いて後段の水素化処理を行った処理油に含まれる硫黄含有ヘテロ化合物を分析した結果を表4に示す。また、比較のために、前段の水素化脱硫の原料とした常圧残渣油を原料油として、触媒BまたはCを用いて後段の水素化処理と同じ条件で水素化処理した処理油に含まれる硫黄含有ヘテロ化合物を分析した結果を表5に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
原料油、処理油に含まれる硫黄含有ヘテロ化合物の分析は、GPC-ICP分析により行った。試験対象をGPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ)により分子量の差により分画し、それぞれのヘテロ原子をICP(ICPまたはICP-AES:誘導結合プラズマ発光分光分析、セイコ−電子工業社製SPS-1500)により定量した。なお、 GPC分析法は、 GPC装置として、Waters社製 Shodex 803を用い、移動相THF/o-キシレン(30:70)、カラムKF-G+KF803+MIXED E、流速0.7ml/minの条件で行った。分子量は、ポリスチレン換算分子量で表している。表中の硫黄含化合物の分子量分布は、分子量0のから分子量Xまでの分子量を有するヘテロ化合物に含まれる硫黄量の積分値が全硫黄量の25,50,75%に相当する場合の分子量Xの値を示している。
【0046】
触媒Cと触媒A、Bを比べると、水素化脱硫油を原料油とした場合には、触媒Cが高い脱硫性能を有しているが、常圧残渣油を原料油とした場合の差は顕著でない。表4,表5から、まず、原料油の硫黄含有ヘテロ化合物の分子量に着目すると、水素化脱硫油は比較的分子量の大きい(1000以上の)ヘテロ化合物を多く含み、他方、常圧残渣油は比較的分子量の小さい(1000以下の)ヘテロ化合物を多く含んでいることがわかる。
【0047】
水素化脱硫油を触媒Cで水素化処理すると、ヘテロ化合物の重量平均分子量は下がるが、触媒Bの場合の重量平均分子量は増えている。図1にヘテロ分子の分子量と、それが含む硫黄量を示す。分子量1000以下のヘテロ分子に対しては、触媒Bの方が触媒Cよりも若干脱硫活性が高いが、分子量1000以上のヘテロ分子に対しては、逆転して触媒Cの方が触媒Bよりも高い脱硫活性を示している。これらから、触媒Cは分子量の大きいヘテロ化合物を多く分解することができ、他方、触媒Bは分子量の大きいヘテロ化合物を分解していないことがわかる。常圧残渣油は、比較的分子量の小さい(1000以下の)ヘテロ化合物を多く含んでおり、触媒Bと触媒Cの脱硫活性の差が現れない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水素化脱硫油を触媒Bまたは触媒Cを用いて水素化処理した処理油に含まれる硫黄含有ヘテロ分子の分子量と、それが含む硫黄量(触媒Aを用いた場合を100とした相対値)を示す図である。
Claims (4)
- 水素化脱硫を行った重質油であって、該重質油中に含まれる全硫黄重量の50%以上が分子量1000以上の硫黄含有化合物に含まれる硫黄分である重質油を、モリブデンとニッケルの組み合わせからなる水素化活性金属と、カリウムと、リンを含んだ多孔質からなる水素化精製触媒と水素の存在下で反応させることを特徴とする重質油の水素化精製方法。
- 水素化脱硫を行った重質油であって、該重質油中に含まれる全硫黄重量の50%以上が分子量1000以上の硫黄含有化合物に含まれる硫黄分である重質油を、さらに水素化精製する触媒であって、
モリブデンとニッケルの組み合わせからなる水素化活性金属と、カリウムと、リンを含み、多孔質であることを特徴とする水素化精製触媒。 - モリブデンを2〜15重量%、ニッケルを1〜5重量%、並びにカリウムを0.2〜1重量%含有する請求項2に記載の水素化精製触媒。
- 前記重質油中に含まれる硫黄含有化合物の重量平均分子量が2000以上であることを特徴とする請求項1に記載の重質油の水素化精製方法。
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1998
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