JP4089437B2 - 自着火燃焼を行うエンジンに供給される燃料の判定方法 - Google Patents

自着火燃焼を行うエンジンに供給される燃料の判定方法 Download PDF

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    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
    • F02B1/00Engines characterised by fuel-air mixture compression
    • F02B1/12Engines characterised by fuel-air mixture compression with compression ignition

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃焼室内で混合気を自着火させながら運転されるエンジンに関し、さらに詳しくは、そのようなエンジンに供給される燃料の適否を判定する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、予混合圧縮自着火運転を行うエンジンにおいて、自着火燃焼を安定して行えない場合には、火花点火による運転を行う、という運転モードの切換えが行われていた。たとえば、特許文献1においては、排気通路中のNOxの濃度に基づいて燃焼状態を判定し、予混合自着火運転と火花点火運転を切り換える技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術は、一般に、自着火燃焼が起こった場合には排ガス中のNOx濃度が低くなり、自着火燃焼が起こらずに火炎伝播燃焼が起こった場合にはNOx濃度が高くなることに着目したものである。なお、その他の関連文献として、特許文献2〜5がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−336600号公報
【特許文献2】
特開2000−257467号公報
【特許文献3】
特開2001−152908号公報
【特許文献4】
特開平11−006435号公報
【特許文献5】
特開平11−006436号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、燃焼室内で混合気を自着火させながら運転されるエンジンには、オクタン価が低く着火しやすい燃料を供給することが好ましい。しかし、ユーザが誤って自着火運転に適さない燃料を供給してしまうことがある。よって、燃料を自着火させるエンジンを運転する際には、供給された燃料が自着火に適するものか否かを判定することが好ましく、燃料が自着火に適さないものである場合は、火花点火による運転を行うことが好ましい。
【0006】
そのような燃料の適否の判定は、たとえば、実際にその燃料でエンジンを運転してみて、自着火燃焼が起こったか否かに基づいて行うことが可能である。そして、自着火燃焼が起こったか否かは、排ガス中のNOx濃度に基づいて自着火燃焼が起こるか否かを判定することも可能である(特許文献1)。
【0007】
しかし、炎伝播燃焼であっても火炎の伝播が緩慢である場合や、失火が起こった場合には、排ガス中のNOxの濃度は低くなる。よって、そのような場合には、排ガス中のNOxの濃度に基づく判定では、自着火燃焼が起こっていると誤判定する可能性がある。
【0008】
この発明は、従来技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、自着火燃焼を行わせるエンジンに供給される燃料の適否を正確に判定する技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンにおいて、所定の処理を行う。このエンジンは、燃焼室を構成するシリンダおよびピストンと、燃焼室の混合気に点火を行うことができる点火部と、エンジンの回転数を検出する回転数センサと、を備える。そして、ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、点火部による点火を行わないか、または点火運転よりも遅いタイミングで点火部による点火を行う自着火優先運転と、でエンジンを運転することができる制御部を有している。その制御部は、自着火優先運転を行う運転モードであって、エンジンの始動時から所定の長さ以下の期間に実行される第1の運転モードにおいて、エンジンの回転数が第1のしきい値に達しなかった場合には、燃料が自着火運転に適していないと判断する。このような態様とすれば、失火が起こった場合にも、正常な燃焼と誤判定することがなく、自着火燃焼に対する燃料の適否を正確に判定することができる。
【0010】
また、第1の運転モードは、圧縮比が比較的低い低圧縮比サブモードと、圧縮比が比較的高い高圧縮比サブモードと、を有していることが好ましい。そして、エンジンの始動後、低圧縮比サブモードにより所定の期間にエンジンを運転し、低圧縮比サブモードにおいてエンジンの回転数が第2のしきい値に達しなかった場合には、高圧縮比サブモードによりエンジンを運転することが好ましい。このような態様とすれば、圧縮比が低い運転においては正常な運転を行うことができなくても、圧縮比を高くした状態で正常な運転を行うことができる燃料を、自着火燃焼に適さないと判定することなく、有効に活用することができる。すなわち、そのような燃料でNOxの少ない自着火燃焼を行うことができる。
【0011】
なお、運転モードとして、自着火優先運転を行う自着火サブモードと、点火運転を行う点火サブモードとを備え、第1の運転モードの後に実行される第2の運転モードを有する場合には、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、第1の運転モードにおいてエンジンの回転数が第1のしきい値に達した場合には、第2の運転モードにおいて自着火サブモードを実行する。また、第1の運転モードにおいてエンジンの回転数が第1のしきい値に達しなかった場合には、燃料が自着火運転に適していないと判断して、第2の運転モードにおいて点火サブモードを実行する。このような態様とすれば、エンジンの回転数に基づいて自着火燃焼に対する燃料の適否を正確に判定して、エンジンを適切に運転することができる。
【0012】
また、第1の運転モードは、要求負荷が0である状態において燃料の噴射量が比較的多く、第2の運転モードは、要求負荷が0である状態において燃料の噴射量が比較的少ないモードを含むことが好ましい。このような態様とすれば、第1の運転モードにおいて無負荷状態で適正な燃焼が行われた場合のエンジン回転数が、第2の運転モードが含むモードよりも高くなる。よって、第1の運転モードにおいて要求負荷が0である場合にも、燃焼状態の異常が生じてエンジンの回転数が一定の値まで上昇しない場合と、適正な燃焼が行われている場合との回転数の違いが大きくなり、燃焼状態を正確に判定しやすい。
【0013】
また、燃焼室内の燃焼状態を検出することができる燃焼状態検出センサを備える以下のようなエンジンにおいて、後述する処理を行うことも好ましい。このエンジンは、燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンであって、以下のような運転が可能である。すなわち、ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、点火部による点火を行わないか、または点火運転よりも遅いタイミングで点火部による点火を行う第1の自着火優先運転と、点火部による点火を行わないか、または点火運転よりも遅いタイミングで点火部による点火を行い、同じ要求負荷における燃焼室内への燃料噴射量が第1の自着火優先運転よりも多い第2の自着火優先運転と、である。
【0014】
上記のようなエンジンにおいて、以下のような処理を行うことが好ましい。第1の自着火優先運転でエンジンを運転している場合において、燃焼状態検出センサによって燃焼状態の異常を検知した場合には、第2の自着火優先運転でエンジンを運転する。そして、第2の自着火優先運転でエンジンを運転している場合において、燃焼状態検出センサによって燃焼状態の異常を検知した場合には、点火運転でエンジンを運転する。このような態様とすれば、自着火が生じやすく燃費もよい運転を優先的に行いつつ、燃焼状態に応じた運転を行うことができる。
【0015】
なお、燃焼状態検出センサを、燃焼室内のイオン電流を検出することができるセンサとし、イオン電流に基づいて燃焼状態を判定することが好ましい。このような態様とすれば、正確に燃焼状態を判定して、自着火運転に対する燃料の適否を判断することができる。
【0016】
そして、上記のような態様において、ピストンの上死点後、所定の期間が経過した後の燃焼室内のイオン電流量がしきい値を超えている場合に、燃焼状態の異常があるものと判断することが好ましい。このような態様とすれば、自着火燃焼ではなく、火炎伝播燃焼が生じていることを正確に判定することができる。
【0017】
また、ピストンの上死点後、燃焼室内のイオン電流が第1のしきい値以上である時間が第2のしきい値よりも長く継続した場合には、燃焼状態の異常があるものと判断する態様とすることもできる。このような態様としても、自着火燃焼ではなく、火炎伝播燃焼が生じていることを正確に判定することができる。
【0018】
一方、燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンに供給される燃料の判定を行う際には、以下のようにすることができる。すなわち、まず、ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、点火部による点火を行わないか、または点火運転よりも遅いタイミングで点火部による点火を行う自着火優先運転と、におけるエンジンの運転条件をそれぞれ設定する。そして、エンジンの始動時以降、自着火優先運転でエンジンを運転する。その後、エンジンの始動時から所定の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数がしきい値に達しなかった場合には、燃料が自着火運転に適していないと判断する。このような態様としても、失火が起こった場合にも正常な燃焼と誤判定することがなく、燃焼状態を正確に判定できる。その結果、自着火燃焼に対する燃料の適否を正確に判断することができる。
【0019】
また、以下のような方法で燃料の判定を行ってもよい。すなわち、エンジンの始動時以降、自着火優先運転でエンジンを運転する。その後、エンジンの始動時から第1の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数が第1のしきい値に達しなかった場合には、圧縮比を高く設定してエンジンを運転する。そして、圧縮比を高く設定してから第2の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数が第2のしきい値に達しなかった場合には、燃料が自着火運転に適していないと判断する。このような態様とすれば、圧縮比を高くすれば自着火燃焼を起こさせることができる燃料を、「自着火に適さない」と判断することなく有効に活用することができる。
【0020】
そして、以下のようにエンジンを運転することも好ましい。すなわち、まず、ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、点火部による点火を行わないか、または点火運転よりも遅いタイミングで点火部による点火を行う自着火優先運転と、におけるエンジンの運転条件をそれぞれ設定する。そして、エンジンの始動時以降、自着火優先運転でエンジンを運転する。その後、エンジンの始動時から所定の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数がしきい値に達しなかった場合には、点火運転でエンジンを運転する。エンジンの始動時から所定の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数がしきい値に達した場合には、自着火優先運転でエンジンを運転する。このような態様とすれば、NOx発生量の少ない自着火運転を優先的に行いつつ、燃焼状態を正確に判定してエンジンを適切に運転することができる。
【0021】
また、以下のようにエンジンを運転することも好ましい。対象となるエンジンは、前述の三つの運転、すなわち点火運転と、第1の自着火優先運転と、同じ要求負荷における燃焼室内への燃料噴射量が第1の自着火優先運転よりも多い第2の自着火優先運転が可能である。そして、第1の自着火優先運転の際に燃焼状態に異常がある場合には、第2の自着火優先運転の際に移行する。また、第2の自着火優先運転の際に燃焼状態に異常がある場合には、点火運転に移行する。このような態様とすれば、自着火が生じやすく燃費もよい運転を優先的に行いつつ、供給される燃料などの状況に応じた運転を行うことができる。
【0022】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、エンジン、そのエンジンを用いた車両または移動体、運転モード切り換え方法、運転モード切り換え装置、その装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次の順序に従って、本発明の実施例について説明する。
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
A−2.エンジンの運転:
B.第2実施例:
B−1.点火ユニットの構成およびイオン電流の検出:
B−2.エンジンの運転:
C.変形例:
C−1.第1実施例の変形例:
C−2.第2実施例の変形例:
C−3.その他:
【0024】
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
図1は、第1実施例のエンジン10の構造を概念的に示した説明図である。第1実施例のエンジン10は、4サイクル運転と、2サイクル運転とを含む複数の運転モードを選択的に実行することができる。「4サイクル運転」(正確には「4ストローク/1サイクル運転」)とは、吸気、圧縮、膨張、排気の4つのピストン行程で1サイクルが構成される運転である。「2サイクル運転」(正確には「2ストローク/1サイクル運転」)とは、掃気・圧縮期間と、膨張期間の2つの期間で1サイクルが構成される運転である。
【0025】
図1では、エンジン10の構造を示すために、燃焼室150のほぼ中央で断面を取って表示している。エンジン10の本体は、シリンダブロック140の上部にシリンダヘッド130が組み付けられて構成されている。このシリンダブロック140とシリンダヘッド130とで、円筒形のシリンダ142が構成されており、このシリンダ142の内部をピストン144が上下に摺動する。シリンダヘッド130のうち、ピストンの往復方向の延長線上でピストンと向かい合う部分が、天井部130rである。天井部130rと、ピストン144の頂部と、シリンダ142の側壁と、で囲まれた空間が燃焼室150となる。
【0026】
ピストン144は、コネクティングロッド146を介してクランクシャフト148に接続されており、ピストン144はクランクシャフト148の回転にともなってシリンダ142内を上下に摺動する。
【0027】
シリンダヘッド130には、燃焼室150に吸入空気を取り入れるための吸気通路12と、燃焼室150内の混合気に点火するための点火プラグ136と、燃焼室150内で発生した燃焼ガスを排出するための排気通路16が設けられている。吸気通路12を通ってきた酸素を含む空気は、シリンダヘッド130の天井部130rに設けられた吸気口12oを介して燃焼室150内に流入する。また、燃焼室内の既燃ガスは、天井部130rに設けられた排気口16oを介して排気通路16から排出される。
【0028】
シリンダヘッド130には、さらに、吸気バルブ132と排気バルブ134とが設けられている。吸気バルブ132および排気バルブ134は、それぞれに電動アクチュエータ162,164によって任意のタイミングで駆動され、ピストン144の動きに同期して吸気口12oおよび排気口16oを開閉する。
【0029】
吸気通路12には、スロットル弁22が設けられている。電動アクチュエータ24を駆動してスロットル弁22を適切な開度に制御することで、燃焼室150内に吸入される空気量を制御することができる。また、スロットル弁22の下流には、サージタンク12tが設けられている。サージタンク12tは、スロットル弁22によって調節された吸気の圧力の変動を緩和する。
【0030】
第1実施例のエンジン10は、シリンダヘッド130に設けられた筒内燃料噴射部15を備えている。筒内燃料噴射部15は、燃焼室150内にガソリンを直接噴射するものである。筒内燃料噴射部15は、ガソリンの噴射圧力を変えることで単位時間当たりに噴射するガソリンの量を増減させることができる。ガソリンは図示しないガソリンタンクに蓄えられており、図示しない燃料ポンプで汲み上げられて筒内燃料噴射部15に供給されている。
【0031】
エンジン10の動作は、エンジン制御用ユニット(以下、ECU)30によって制御されている。ECU30は、CPUや、RAM、ROM、A/D変換素子、D/A変換素子などをバスで相互に接続して構成された周知のマイクロコンピュータである。ECU30は、エンジン回転速度Neやアクセル開度θacを検出し、これらに基づいてスロットル弁22を適切な開度に制御する。エンジン回転速度Neは、クランクシャフト148の先端に設けたクランク角センサ32によって検出することができる。アクセル開度θacは、アクセルペダルに内蔵されたアクセル開度センサ34によって検出することができる。ECU30は、筒内燃料噴射部15、点火プラグ136などを適切に駆動する制御も司っている。点火プラグ136は、具体的には、ECU30によって制御される点火ユニット(IGU)137によって駆動される。
【0032】
また、ECU30は、エンジン回転速度Neやアクセル開度θacを検出し、これらに基づいて4サイクル運転と2サイクル運転とを含む複数の運転モードを切り換える制御も行う。4サイクル運転では、ピストンが2往復する間に1回の割合で、混合気の吸入と燃焼と排気とを行うのに対し、2サイクル運転では、ピストンが1往復するたびに、吸入と燃焼と排気とを行う。ピストン144の動きに同期させて、吸気バルブ132、排気バルブ134を開閉させるタイミングを変更し、また、筒内燃料噴射部15、点火プラグ136などを駆動するタイミングを切り換えてやれば、4サイクル運転と2サイクル運転とを切り換えることができる。
【0033】
具体的には、ECU30は、エンジン回転速度Neやアクセル開度θacに基づいて、吸気バルブ132、排気バルブ134の開閉タイミングを設定する。そして、それら吸気バルブ132および排気バルブ134の開閉タイミングは、電磁駆動弁駆動回路40に伝えられる。電磁駆動弁駆動回路40は、それらの値にしたがって、電動アクチュエータ162,164を適切なタイミングで駆動する。
【0034】
A−2.エンジンの運転:
第1実施例のエンジンは、4サイクル運転と2サイクル運転を含む複数の運転モードを有している。しかし、以下では、2サイクル運転の例を使用して、運転モードの切換えについて説明する。
【0035】
(1)運転モード:
図2は、第1実施例のエンジンが有する2サイクル運転の運転モードの表である。第1実施例のエンジンは、2サイクル運転としては、エンジンの始動時から所定の長さ以下の期間に実行される始動モードSMと、始動モードSMの後で実行される通常モードRMと、を有している。
【0036】
始動モードSMは、さらに、エンジン始動直後に実施される低圧縮比サブモードSM1と、状況に応じて低圧縮比サブモードSM1の後に実施される高圧縮比サブモードSM2とを有している。また、通常モードRMは、予混合自着火サブモードRM1と火花点火サブモードRM2を有している。なお、これら予混合自着火サブモードRM1と火花点火サブモードRM2は、所定の条件に従って選択的に実行される。
【0037】
通常モードRMにおいては、燃焼室内の混合気の空気過剰率は1よりも大きい。「空気過剰率」は、混合気中に含まれる燃料と過不足なく燃焼するだけの空気の量に対して、実際の混合気中に含まれている空気は何倍であるか、を表す指標である。たとえば、空気過剰率が「2」であるとき、混合気中には、空気と燃料とが互いに過不足なく燃焼する量の2倍だけ、空気が含まれている。
【0038】
通常モードRMの二つのサブモードのうち予混合自着火サブモードRM1は、あらかじめ燃料と空気とを混合しておき、その混合気を燃焼室150内で圧縮して、燃料に自着火を起こさせて、動力を得る運転モードである。予混合自着火サブモードRM1においては、点火プラグ136による点火は行わない。なお、予混合自着火サブモードRM1においては、吸気バルブ132を閉じるタイミングは、ピストン144が下死点にきた後30°〜40°の所定のタイミングである。図2の表において、吸気バルブ132を閉じるタイミングは、「IVC」の列に示す。「ABDC」は、「ピストンが下死点にきた後」の意味である。たとえば、IVCの欄が「30°」であれば、その運転モードにおいては、吸気バルブ132はピストンが下死点にきた後30°過ぎたところで閉じられる。吸気バルブ132を閉じるタイミングは、ECU30によって、燃焼状態の状況に応じて変更される。なお、図2の表において、「EVC」の列には排気バルブ134を閉じるタイミングを示す。
【0039】
自着火燃焼では燃焼室内で短時間にいっきに燃焼が起こる。このため、一般的な火花点火による火炎伝播燃焼のような、初期に燃焼した領域が長時間にわたって高温に維持されることによる影響が少ない。さらに、自着火燃焼は、火花点火燃焼が困難な希薄な混合気においても短時間で燃料が燃焼するという特徴を有するため、火花点火燃焼に比べてNOx発生量が著しく低くなる条件が存在する。よって、できるだけ広い運転領域で、このような自着火燃焼を利用する予混合自着火サブモードRM1による運転を行うことが好ましい。
【0040】
また、通常モードRMの二つのサブモードのうちの火花点火サブモードRM2は、上死点前30°において、点火プラグ136の電極から火花を飛ばして燃焼室150内の燃料に点火を行う。他の点は、予混合自着火サブモードRM1と同様である。火花点火サブモードRM2においては、点火プラグ136によって燃料に点火を行うため、確実に失火を防ぐことができる。ただし、燃焼室150内において火炎伝播燃焼がおこるため、排ガス中のNOxの量は、予混合時着火モードに比べて多くなる。
【0041】
一方、始動モードSMの二つのサブモードは、通常モードRMの二つのサブモードにくらべて、要求負荷が0である状態(無負荷状態)での1サイクルの燃料噴射量が多い。始動モードSMの二つのサブモードにおいては、無負荷状態での1サイクルの燃料噴射量が多いため、一般に予混合自着火サブモードRM1にくらべて、無負荷状態でのエンジンの単位時間当たりの回転数は高くなる。なお、「要求負荷」は、アクセル開度センサ34から送られてくるアクセル開度θac等に基づいて、ECU30によって決定される。本明細書では、「要求負荷が0である状態(無負荷状態)」とは、アクセルの踏み込み量が0、すなわち、θacが0である状態をいう。
【0042】
始動モードSMの二つのサブモードのうち低圧縮比サブモードSM1においては、吸気バルブ132を閉じるタイミングは、下死点後40°である。以上で説明した以外の点については、低圧縮比サブモードSM1は、予混合自着火サブモードRM1と同様である。すなわち、点火プラグ136による点火は行わない。低圧縮比サブモードSM1は、エンジンの始動直後から実行される。
【0043】
通常の運転において、無負荷状態では、スロットル弁22は最も閉じた状態となり、サージタンク12t(図1参照)内の圧力は大気圧よりも低い。その結果、シリンダ142への空気の供給量も少ない。しかし、エンジン始動時においては、サージタンク12t内の圧力は大気圧となっている。このため、エンジン始動直後は、スロットル弁22が最も開いた状態と同程度にシリンダ142に空気が供給される。よって、この点からも、エンジンの始動直後に実行される低圧縮比サブモードSM1では、エンジンの回転数は通常モードRMの無負荷状態のときに比べて高くなる。
【0044】
始動モードSMの二つのサブモードのうち高圧縮比サブモードSM2は、低圧縮比サブモードSM1に比べて吸気バルブ132を閉じるタイミングが早い。他の点は、低圧縮比サブモードSM1と同じである。低圧縮比サブモードSM1において、排気バルブ134を下死点後25°で閉じ、吸気バルブ132を下死点後40°で閉じている場合には、高圧縮比サブモードSM2は、排気バルブ134を同様に下死点後25°で閉じ、吸気バルブ132は、下死点後40°よりも早い下死点後30°で閉じる態様とすることができる。
【0045】
高圧縮比サブモードSM2は、低圧縮比サブモードSM1に比べて吸気バルブ132を閉じるタイミングが早い。このため、ピストン144が低い位置にあるとき、すなわち、燃焼室150の容積が大きいときから圧縮が開始される。よって、高圧縮比サブモードSM2は、低圧縮比サブモードSM1に比べて圧縮比が高く、低圧縮比サブモードSM1に比べて燃焼室150内の燃料が自着火を起こしやすい。
【0046】
なお、高圧縮比サブモードSM2においても点火プラグ136による点火は行わない。すなわち、始動モードSMにおいては、低圧縮比サブモードSM1においても高圧縮比サブモードSM2においても、点火プラグ136による点火は行わない。これら点火プラグ136による点火を行わない、始動モードSMの低圧縮比サブモードSM1および高圧縮比サブモードSM2、ならびに予混合自着火サブモードRM1が、特許請求の範囲にいう「自着火優先運転」を行う運転モードである。
【0047】
(2)運転モードの切換え:
図3は、エンジン始動後、燃焼状態に応じてエンジンの運転モードを切り換える手順を示すフローチャートである。ECU30は、エンジン始動直後は、ステップS2において、始動モードSMの低圧縮比サブモードSM1による運転を行う。そして、ステップS4において、エンジン始動後の運転サイクル数C1が、しきい値Cs1を越えたか否かを判断する。エンジン始動後の運転サイクル数C1がしきい値Cs1以下であり、判断結果が「No」である場合は、低圧縮比サブモードSM1による運転を継続する。そして、エンジン始動後の運転サイクル数C1がしきい値Cs1を越えるまで、ステップS2の低圧縮比サブモードSM1による運転を継続する。なお、ステップS4におけるしきい値Cs1は、エンジンの始動後、通常の状態であれば運転状態が安定すると考えられる所定のサイクル数とすることができる。第1実施例では、Cs1は3とする。
【0048】
エンジン始動後の運転サイクル数C1が、しきい値Cs1を越え、ステップS4の判断結果が「Yes」となった場合には、ステップS6において、エンジンの回転数Neが、しきい値Ns1を越えたか否かを判定する。なお、「エンジンの回転数」とは、エンジンのクランクシャフトの単位時間当たりの回転数である。
【0049】
ステップS6においてエンジンの回転数Neがしきい値Ns1を越えており、判断結果が「Yes」である場合には、燃焼は正常に起こっており燃料は正常である(自着火運転に適している)と判定し、始動モードSMによる運転を終えて、ステップS16で予混合自着火サブモードRM1による運転を開始する。具体的には、無負荷状態での1サイクルの燃料噴射量を、始動モードSMの噴射量から低減して、予混合自着火サブモードRM1(通常モードRM)の噴射量とする(図2参照)。以降、予混合自着火サブモードRM1による運転を続ける。このような手順を実行することで、低圧縮比サブモードSM1において適正な運転が可能な場合には、NOxの発生量が少ない予混合自着火サブモードRM1による運転を優先的に行うことができる。
【0050】
なお、本実施例では、「燃焼が正常」であるとは、燃焼室内において自着火燃焼が支配的に起こっていることを意味し、「燃焼状態の異常」とは、燃焼室内において自着火燃焼が支配的に起こっていないことを意味する。多くの場合、自着火燃焼が支配的に起こっていないときには、火炎伝播燃焼が支配的に起こっている。また、失火が起こっていることもある。なお、ステップS6におけるしきい値Ns1は、エンジンの始動後、燃焼状態の異常が生じていなければ達成されると考えられる所定のエンジン回転数とすることができる。第1実施例では、Ns1は2000rpmとする。第1実施例においては、始動モードSMにおける無負荷時の燃料噴射量が通常モードRMよりも多く、その結果、無負荷時のエンジン回転数が通常モードRMよりも高い。よって、燃焼異常により回転数が上昇しないか、正常な燃焼が起こっているかの違いを容易に判定することができる。また、エンジン始動後の一定期間を除いて定常的に実行される通常モードRMにおいては、無負荷時の燃料噴射量が始動モードSMよりも低い。このため、エンジンの燃費を向上させることができる。
【0051】
ステップS6において、エンジンの回転数Neが、しきい値Ns1以下であり、判断結果が「No」であった場合には、ECU30は、ステップS8において、エンジンの運転を低圧縮比サブモードSM1から高圧縮比サブモードSM2に切り換える。具体的には、吸気バルブ132を閉じるタイミングを、下死点後40°から30°に早める(図2参照)。
【0052】
その後、ステップS10において、エンジンの運転を高圧縮比サブモードSM2に切り換えた後の運転サイクル数C2が、しきい値Cs2を越えたか否かを判断する。運転サイクル数C2が、しきい値Cs2を越えるまでは、ステップS8の高圧縮比サブモードSM2による運転を続ける。
【0053】
なお、ステップS10のしきい値Cs2は、エンジンの運転を高圧縮比サブモードSM2に切り換えた後、通常の状態であれば運転状態が安定すると考えられる所定のサイクル数とすることができる。第1実施例では、Cs2は、Cs1と同じく3とする。
【0054】
エンジンの運転を高圧縮比サブモードSM2に切り換えた後の運転サイクル数C2がしきい値Cs2を越え、ステップS10の判断結果が「Yes」となった場合には、ステップS12において、エンジンの回転数Neが、しきい値Ns2を越えたか否かを判定する。
【0055】
ステップS12において、エンジンの回転数Neがしきい値Ns2を越えている場合には、燃料は正常であると判定し、ステップS16で予混合自着火サブモードRM1による運転を開始する。具体的には、無負荷状態での1サイクルの燃料噴射量を低減する(図2参照)。以降、予混合自着火サブモードRM1による運転を続ける。その際、吸気バルブ132を閉じるタイミングは、予混合自着火サブモードRM1においても下死点後30°のままとする。すなわち、ステップS12からステップS16に移行した場合の予混合時着火サブモードRM1の圧縮比は、ステップS6からステップS16に移行した場合の予混合時着火サブモードRM1の圧縮比よりも、高い。
【0056】
なお、ステップS12のしきい値Ns2は、エンジンの運転を高圧縮比サブモードSM2に切り換えた後、燃焼状態の異常が生じていなければ達成されると考えられる所定のエンジン回転数とすることができる。第1実施例では、Ns2も、Ns1と同じく2000rpmとする。これらNs1、Ns2は、アイドリング時のエンジン回転数として設定されている回転数よりも高く設定することが好ましい。
【0057】
ステップS12において判定結果が「Yes」となる場合とは、低圧縮比サブモードSM1においては燃焼異常が生じ(ステップS6において判定結果が「No」となる)、高圧縮比サブモードSM2においては燃焼異常が生じない(ステップS12において判定結果が「Yes」となる)場合である。燃料の質は適正であるが、気温、湿度、大気圧のうちの少なくとも一つが低圧縮比サブモードSM1に適さない場合や、燃料のオクタン価が、予混合自着火運転ができないほどに高くはないが、低圧縮比サブモードSM1において適正な運転ができない程度に高い場合には、そのような結果となることがある。
【0058】
上記のような手順を実行することで、同じ予混合時着火サブモードRM1であっても、燃焼の質、気温、湿度、大気圧などに応じた適切な圧縮比で運転を行うことができる。その結果、より広い条件下で、NOxの発生量が少ない予混合自着火運転を行わせることができる。また、低圧縮比では適切に自着火運転ができない場合に、高圧縮比で運転することとしているので、比較的自着火しやすい燃料に対して最初から圧縮比の高い運転モードを実行して、ノッキングを生じさせてしまうおそれがない。
【0059】
ステップS12において、エンジンの回転数Neがしきい値Ns2以下であり、判定結果がNoであった場合には、ECU30は、燃料が自着火に適さないと判断して、ステップS14においてエンジンの運転を火花点火サブモードRM2に切り換える。具体的には、各サイクルにつき、上死点前30°において行う点火プラグ136による点火を開始する。そして処理を終了する。その後、エンジンは、火花点火サブモードRM2による運転が続行される。
【0060】
燃料が予混合自着火サブモードRM1に適さない場合、例えば、燃料のオクタン価が高すぎる場合には、高圧縮比サブモードSM2においてもエンジン回転数があがらないことがある。そのような場合には、ステップS12において判定結果は「No」となり、火花点火サブモードRM2が実行される。上記のような手順を実行することで、自着火燃焼を行えない場合にも、安定した運転を行うことができる。
【0061】
以上で説明した第1実施例では、燃焼状態の異常の判定をエンジンの回転数に基づいて判定している(ステップS6およびS12参照)。このため、火炎の伝播速度が緩慢な火炎伝播燃焼が起こっているときや、失火が起こったときにも、NOx濃度によって燃焼状態の判定を行う場合のように、自着火が適正に起こっていると誤判定することがない。よって、燃料が自着火に適しているか否かを正確に判定することができる。
【0062】
B.第2実施例:
B−1.点火ユニットの構成およびイオン電流の検出:
第2実施例のエンジンは、点火ユニットの構成が第1実施例とは異なっている。第2実施例のエンジンの他の構成は、図1に示す第1実施例と同様である。
【0063】
図4は、第2実施例の点火ユニット(IGU)137bの内部構造を示した説明図である。IGU137bは、点火コイル42とコイル駆動回路44とを有している。点火コイル42は、一次側コイル42aと二次側コイル42bを有している。一次側コイル42aの一端はバッテリ60に接続され、他端はコイル駆動回路44に接続されている。また、二次側コイル42bの一端は点火プラグ136の中心電極136aに接続され、他端はコイル駆動回路44に接続されている。
【0064】
コイル駆動回路44は、トランジスタ44aと、定電圧ダイオード44b、44c、コンデンサ44d、抵抗44eを有している。トランジスタ44aのコレクタ電極は一次側コイル42aに接続され、トランジスタ44aのエミッタ電極は接地され、ベース電極はECU30に接続されている。定電圧ダイオード44b,44cは、二次側コイル42bからグランドに至る回路上にその順番に設けられている。二次側コイル42bからグランドに向かう向きの電流に対して、定電圧ダイオード44bは逆方向に設けられており、定電圧ダイオード44cは順方向に設けられている。
【0065】
また、コンデンサ44dが、定電圧ダイオード44bと並列に接続されており、抵抗44eが、定電圧ダイオード44cと並列に接続されている。その結果、抵抗44eの一端も接地されていることになる。抵抗44eの接地されていない側はECU30に接続されており、ECU30は接地電圧に対する電圧値を検出することができる。
【0066】
図5は、点火プラグ136において火花を飛ばす場合の、点火信号(IGT)、点火プラグ136の電極間(中心電極136aと周辺電極136bの間)の電圧、イオン電流の波形を示すグラフである。グラフの横軸は、クランクシャフトの回転角度θcである。点火プラグ136において火花を飛ばす場合には、ECU30は、たとえば、まず、図5のt1のタイミングで点火信号(IGT)を出力して、図4のトランジスタ44aのベース電極をON状態(高電圧状態)とする。すると、一次側コイル42aに電流が流れる。一次側コイル42aの電流は徐々に増大するため、二次側コイル42bには相互誘導作用によって逆起電力が生じる。その結果、図5に示すように、タイミングt1以降、二次側コイル42bに接続された中心電極136aと、周辺電極136bとの間にも電位差が生じる。
【0067】
その後、ECU30がタイミングt2で点火信号(IGT)の出力を停止すると、一次側コイル42aを流れる電流量は急激に0となる。すると、二次側コイル42bには、相互誘導作用によってそれまでとは逆向きの逆起電力が発生する。この逆起電力により、図5に示すように、二次側コイル42bに接続された点火プラグ136の中心電極136aと、周辺電極136bとの間に、それまでとは逆向きの逆起電力が生じ、火花が飛ぶ。その火花によって燃焼室150内の混合気が点火される。その際、電流は、図4に示した二次側コイル42bを図4において下向きに流れる。このときの二次側コイル42bの逆起電力は、定電圧ダイオード44bのツェナー電圧よりも大きいため、電流は、定電圧ダイオード44b,44cを通ってグランドに流れる。
【0068】
中心電極136aと周辺電極136bとの間に放電が起こり、定電圧ダイオード44b,44cを通って図4の下向きに電流が流れると、コンデンサ44dには、定電圧ダイオード44bのツェナー電圧に相当するだけの電荷が蓄えられる。このため、放電後、中心電極136aと周辺電極136bとの間には、コンデンサ44dに蓄えられた電荷に相当する分だけの電位差が生じる(図5の中段右側参照)。
【0069】
燃料と空気を含む混合気が燃焼室150内において燃焼すると、その混合気はイオン化する。このため、混合気が燃焼すると、中心電極136aと周辺電極136bの間にはイオン電流が流れる。すなわち、「イオン電流」とは、燃焼室内においてイオン化した混合気によって、燃焼室内にある電位差のある電極の間を流れる電流である。中心電極136aと周辺電極136bの間にイオン電流が流れると、コンデンサ44dの電荷が減少するので、抵抗44eの接地されていない側の電位が変化する。ECU30はこれを検出することにより、イオン電流を検知することができる。
【0070】
イオン電流の大きさ、発生時期、継続時間などに基づいて、燃焼室内の燃焼状態を判定することができる。自着火燃焼が生じた場合には、図5において比較的細かいハッチをかけた波形Ifで示すように、比較的大きな電流が短時間だけ流れる。これに対して、火花点火によって火炎伝播燃焼が生じた場合には、図5において比較的粗いハッチをかけた波形Idで示すように、比較的小さな電流が長時間にわたって流れる。なお、図5において、「TDC」は、ピストンの上死点である。そして、t1のタイミングおよびTDC後のタイミングでいくつか生じているイオン電流の波形は、ノイズである。
【0071】
第2実施例では、燃焼室150内において自着火燃焼が起こったか、火炎伝播燃焼が起こったかは、次のようにして判定する。上死点後20°の時点(図5においてATDC20°で示す)でのイオン電流の値が、しきい値Isを越えている場合は、長時間イオン電流が流れる火炎伝播燃焼が起こったものと判定する。そして、上死点後20°の時点でのイオン電流の値(以下、「イオン電流I20」と表記する)が、しきい値Is以下である場合は、短時間しかイオン電流が流れない自着火燃焼が起こったものと判定する。図5の例では、自着火燃焼が起こった場合(波形Ifで示される)のイオン電流I20は0であり、しきい値Isより小さい(0に近い)。一方、火炎伝播燃焼が起こった場合(波形Idで示される)のイオン電流I20はId20であり、しきい値Isを越えている(0から遠い)。
【0072】
第2実施例では、点火プラグ136を利用して燃焼室150中のイオン電流を測定し、燃焼状態を判定している。よって、複雑な構成を追加することなく、的確に燃焼状態を判定することができる。
【0073】
B−2.エンジンの運転:
(1)運転モード:
第2実施例のエンジンは、始動モードSMおよび通常モードRMのいずれのモードにおいても、点火プラグ136による点火を行う。また、第2実施例のエンジンは、通常モードRMの予混合自着火サブモードを2種類有している。以下では、各モードの第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0074】
図6は、第2実施例のエンジンが有する2サイクル運転の運転モードを示す表である。第2実施例のエンジンは、通常モードRM内に2種類の予混合自着火サブモードを有する。第1の予混合自着火サブモードRM11は、ピストンが上死点にあるときに点火プラグ136による点火を行う。他の点は、第1実施例の予混合自着火サブモードRM1と同様である。以下では、第1の予混合自着火サブモードRM11を第1のサブモードRM11ということがある。
【0075】
第2の予混合自着火サブモードRM12は、第1のサブモードRM11と比べたときに、それぞれ同一の負荷がある場合の燃料噴射量が第1のサブモードRM11よりも多い。このため、第2の予混合自着火サブモードRM12は、第1のサブモードRM11と比べて、燃焼室150内の混合気に自着火を起こさせやすい。他の点は、第1のサブモードRM11と同様である。以下では、第2の予混合自着火サブモードRM12を第2のサブモードRM12ということがある。
【0076】
通常モードRMの火花点火サブモードRM13および始動モードSMにおいて、負荷があるときの燃料噴射量は、いずれも第1実施例の場合と同様である。したがって、同一の要求負荷に対する燃料噴射量は、図6の燃料噴射量の「有負荷」の欄に示すように、第2の予混合自着火サブモードRM12のみが他の運転モードに比べて多い。
【0077】
図6の表に示すように、第2実施例においては、各運転モードにおいて点火プラグ136による点火を行う。ここで、「点火」とは、所定の条件下で混合気に火をつけることができる点火部が、混合気に火をつけるための動作を行うことをいう。その際、混合気が実際に点火部の動作によって燃焼されるか否かは問わない。第2実施例では、「点火」とは、点火プラグ136の電極から火花を飛ばすことである。
【0078】
第2実施例では、図6の表に示すように、自着火を行わせる運転モードにおいても点火プラグ136による点火を行っている。このため、自着火を行わせる運転モードにおいて、適切に自着火が生じなかった場合にも、火花による点火を行うことで、失火を防止することができる。
【0079】
点火プラグ136による点火のタイミングは、火花点火サブモードRM13においては第1実施例と同様に上死点前30°であるのに対して、他の運転モードにおいては、上死点である。図6の表の点火タイミングの欄において、「BTDC」は、「ピストンが上死点にくる前」の意味である。火花点火サブモードRM13以外のモードにおいては上死点で点火を行うため、点火タイミングの欄は「0」となっている。低圧縮比サブモードSM11、高圧縮比サブモードSM12、火花点火サブモードRM13の他の点は、それぞれ第1実施例の低圧縮比サブモードSM1、高圧縮比サブモードSM2、火花点火サブモードRM2と同様である。
【0080】
第2実施例では、火花点火サブモードRM13においては、上死点前において火花点火を行っている。よって、エンジンが燃料の燃焼によって取り出すことができるトルクが大きい。なお、第1および第2実施例では、火花点火サブモードRM13における点火タイミングは、上死点前30°としたが、エンジンのトルクが大きくなる任意の点火タイミングで、火花点火を行うことができる。通常、エンジンのトルクが最も大きくなる点火タイミングは、上死点前に存在する。
【0081】
また、第2実施例においては、自着火を行わせる運転モードにおいては、火花点火サブモードRM13に比べて遅いタイミングで、具体的には、上死点で点火を行っている。このため、自着火が起こる状態であるにもかかわらず、自着火が起こる前に点火プラグ136による点火で混合気を火炎伝播燃焼させてしまうことがない。よって、NOxの発生量が少ない自着火燃焼を優先的に起こさせることができる。
【0082】
なお、BTDC30°で点火プラグ136による点火を行う火花点火サブモードRM13が、特許請求の範囲にいう「点火運転」を行う運転モードである。そして、BTDC30°よりも遅いTDC(上死点)で点火プラグ136による点火を行う低圧縮比サブモードSM11および高圧縮比サブモードSM12、ならびに第1および第2の予混合自着火サブモードRM11,RM12が、特許請求の範囲にいう「自着火優先運転」を行う運転モードである。
【0083】
(2)運転モードの切換え:
第2実施例のエンジンは、点火プラグ136によって、燃焼室150内の燃焼状態を判定する。そして、始動時に好ましい運転モードを選択するだけでなく、エンジンの運転中にも、点火プラグ136によって燃焼室150内の燃焼状態をモニタし、燃焼状態に応じて運転モードを切り換える。以下では、通常モードRMにおけるモードの切換について説明する。始動モードSMにおけるモード選択の手続きは、第1実施例と同様である。
【0084】
図7は、通常モードRMに移行した後、燃焼状態に応じてエンジンの運転モードを切り換える手順を示すフローチャートである。ECU30は、通常モードRMに移行した直後は、ステップS22において、第1のサブモードRM11による運転を行う。そして、ステップS24において、実行中のサイクルでピストンが上死点に達するまでに運転終了の指示があったか否かを判定する。運転終了の指示がなく、ステップS24における判断結果が「No」である場合は、ステップS26において、上死点後20°におけるイオン電流I20がしきい値Isを下回っているか否かを判定する(図5参照)。
【0085】
上死点後20°におけるイオン電流I20が値Isを下回っており、ステップS26の判断結果が「Yes」である場合は、ECU30は、燃料は正常であると判断して、次のサイクルもステップS22において第1のサブモードRM11による運転を行う。そして、イオン電流I20が値Isを下回っている限り、運転終了の指示があるまでは、第1のサブモードRM11による運転を継続する。このような手順を実行することで、第1の予混合自着火サブモードRM11において適正な運転が可能な場合には、NOxの発生量が少ない第1の予混合自着火サブモードRM11による運転を優先的に行うことができる。
【0086】
上死点後20°におけるイオン電流I20が値Is以上であり、ステップS26の判断結果が「No」である場合は、ECU30は、次のサイクルについて、ステップS22において第2の予混合自着火サブモードRM12による運転を行う。具体的には、同一負荷に対する燃料噴射量を増やして次のサイクルの運転を行う(図6参照)。そして、ステップS30において、実行中のサイクルでピストンが上死点に達するまでに運転終了の指示があったか否かを判定する。運転終了の指示がなく、ステップS30における判断結果が「No」である場合は、ステップS32において、上死点後20°におけるイオン電流I20がしきい値Isを下回っているか否かを判定する(図5参照)。
【0087】
上死点後20°におけるイオン電流I20が値Isを下回っており、ステップS32の判断結果が「Yes」である場合は、ECU30は、燃料は正常であると判断して、次のサイクルもステップS28において第2の予混合自着火サブモードRM12による運転を行う。そして、イオン電流I20が値Isを下回っている限り、運転終了の指示があるまでは、第2の予混合自着火サブモードRM12による運転を継続する。
【0088】
このような手順を実行することで、燃料の質、気温、湿度、大気圧などが適切ではないために第1のサブモードRM11において燃焼状態の異常がある場合にも、第2の予混合自着火サブモードRM12で予混合自着火運転を行わせることができる。また、第2実施例のエンジンは、第1と第2のサブモードRM11,RM12を有しており、燃料噴射量が少ない第1のサブモードRM11を優先的に実行する。このため、全体として燃費を高くすることができる。すなわち、第2実施例のエンジンは、通常モードRMにおいて、燃料の質、気温、湿度、大気圧などに応じて適切なサブモードを選択して運転を行うことができる。
【0089】
上死点後20°におけるイオン電流I20が値Is以上であり、ステップS32の判断結果が「No」である場合は、ECU30は、燃料が自着火に適さないと判断して、次のサイクルについて、ステップS34で火花点火サブモードRM13による運転を行う。具体的には、同一負荷に対する燃料噴射量を減らして、点火プラグ136による点火タイミングを上死点から上死点前30°まで前進させる(図6参照)。そして、ステップS36において、実行中のサイクルで上死点までに運転終了の指示があったか否かを判定する。運転終了の指示がなく、ステップS36における判断結果が「No」である場合は、火花点火サブモードRM13による運転を継続する。運転終了の指示があり、ステップS36における判断結果が「Yes」である場合は、処理を終了する。上記のような手順を行うことで、自着火燃焼を行えない場合にも、安定した運転を行うことができる。
【0090】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0091】
C1.第1の変形例:
(1)変形例1:
第1実施例では、始動時に、低圧縮比サブモードSM1による運転が適切に行われない場合には(図3のステップS6参照)、高圧縮比サブモードSM2による運転が行われていた(ステップS8参照)。しかし、図3のエンジンの運転モードを切り換える手続きにおいて、ステップS8〜S12を行わない態様とすることもできる。すなわち、ステップS6において、エンジンの回転数Neが、しきい値以下であった場合には、火花点火サブモードRM2による運転を行って(ステップS14)、処理を終了する態様とすることもできる。このような態様とすれば、単純な処理で安定したエンジンの運転を行うことができる。
【0092】
(2)変形例2:
上記実施例では、2サイクル運転を例に運転モードの切換を説明したが、4サイクル運転において、同様に自着火運転と火花点火運転を切り換えてもよい。
【0093】
2サイクル運転を例にして説明した第1実施例において、始動モードSMの低圧縮比サブモードSM1は、吸気弁を閉じるタイミングが比較的遅いモードであり、高圧縮比サブモードSM2は、吸気弁を閉じるタイミングが比較的早いモードであった。しかし、4サイクル自着火運転においては、低圧縮比サブモードSM1は、ピストンの下死点後において吸気弁を閉じるタイミングが比較的遅いモードとし、高圧縮比サブモードSM2は、ピストンの下死点後において吸気弁を閉じるタイミングが比較的早いモードとすることができる。また、4サイクル自着火運転において、低圧縮比サブモードSM1は、ピストンの下死点前において吸気弁を閉じるタイミングが比較的早いモードとし、高圧縮比サブモードSM2は、ピストンの下死点前において吸気弁を閉じるタイミングが比較的遅いモードとすることができる。
【0094】
また、ピストンのストロークを変えることができるエンジンを使用する場合は、低圧縮比サブモードSM1においてはピストンのストロークを比較的短くし、高圧縮比サブモードSM2においてはピストンのストロークを比較的長くする態様とすることもできる。そして、燃焼室の容量を変えることができるエンジンを使用する場合は、低圧縮比サブモードSM1においては燃焼室の容量を比較的大きくし、高圧縮比サブモードSM2においては燃焼室の容量を比較的小さくする態様とすることもできる。すなわち、低圧縮比サブモードSM1は比較的混合気の圧縮比が低いモードであればよく、高圧縮比サブモードSM2は比較的混合気の圧縮比が高いモードであればよい。
【0095】
(2)変形例3:
第1実施例では、始動モードSMにおける燃焼状態の判定は、エンジン始動後3サイクル後(ステップS4参照)と、状況に応じて高圧縮比サブモードSM2に移行した後3サイクル後(ステップS10参照)にも行われた。そして、燃焼状態の判定後、始動モードSMから通常モードRMに移行した。よって、始動モードSMは、3サイクル実行されることも6サイクル実行されることもあった。すなわち、燃焼状態の判定の前に行う始動モードSMは、サブモードの切換えが行われた場合と行われなかった場合、それぞれの状況に応じて、安定して燃焼状態の判定を行うことができる所定の長さ以下の期間だけ実行する態様とすることができる。
【0096】
(4)変形例4:
上記実施例においては、図2および図6に示すように、始動モードSMは、負荷が0である状態において燃料の噴射量が通常モードRMよりも多かった。しかし、始動モードSMは、そのような態様に限られず、負荷が0である状態における始動モードSMの燃料の噴射量が、負荷が0である状態における通常モードRMの燃料噴射量と同じであってもよい。また、第1実施例では、通常モードRMの無負荷時の燃料噴射量は、始動モードSMの無負荷時の燃料の噴射量よりも少なかった。しかし、通常モードRMは、無負荷時の燃料噴射量が始動モードSMと同じである時間区間またはサブモードを含んでいてもよい。通常モードRMは、始動モードSMからの移行後、所定の期間は、無負荷時の燃料噴射量が始動モードSMと同じである態様とすることもできる。そのような態様とすれば、始動モードだけでは十分に上昇しなかった冷却水の温度を、エンジンの運転上、好ましい温度範囲まで上昇させることができる。
【0097】
(5)変形例5:
上記実施例においては、エンジンの回転数に基づいて燃焼状態を判定し、燃焼状態に異常があると判定した場合には、吸気バルブ132を閉じるタイミングを早くしたり(図2の高圧縮比サブモードSM2参照)、燃料噴射量を増やしたり(図6の第2の予混合自着火サブモードRM12参照)、点火プラグ136による点火を行っていた。しかし、燃焼状態に異常があると判定した後の対応は、他の対応であってもよい。たとえば、警告灯を点灯してもよいし、エンジンの運転を停止してもよい。すなわち、本発明を実施する際には、クランクシャフトの単位時間当たりの回転数がしきい値に達しなかった場合には、燃料が自着火に適さないと判断する、任意の態様とすることができる。
【0098】
C−2.第2実施例の変形例:
(1)変形例1:
第2実施例においては、図6の表に示すように、火花点火サブモードRM13においては、上死点前30°で点火を行っており、第1および第2の予混合自着火サブモードRM11,RM12においては、上死点で点火を行っていた。しかし、点火タイミングはこれらに限られず、他のタイミングとすることもできる。たとえば、火花点火サブモードRM13においては、上死点前25°で点火を行ってもよく、第1または第2の予混合自着火サブモードRM12において、上死点前5°で点火を行ってもよい。すなわち、点火サブモードは、ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う運転モードであればよい。そして、自着火サブモードは、エンジンの回転数が同一で、要求負荷が同一であるという条件下で、点火サブモードよりも遅いタイミングで点火部による点火を行う運転モードとすることができる。また、自着火サブモードは、点火部による点火を行わない運転モードとすることもできる。
【0099】
(2)変形例2:
第2実施例では、点火プラグ136を利用して燃焼室150中のイオン電流を測定し、燃焼状態を判定した。しかし、イオン電流を測定するための専用のセンサを、別途エンジンに備える態様としてもよい。
【0100】
(3)変形例3:
第2実施例においては、上死点後20°の時点でのイオン電流I20が、しきい値Isを越えているか否かで燃焼状態の判定を行っていた。しかし、イオン電流に基づいて燃焼状態を判定する方法として、他の方法を利用することもできる。たとえば、ピストンの上死点後、イオン電流がしきい値Isを超えている時間を測定し、その時間に基づいて燃焼状態を判定してもよい。
【0101】
自着火燃焼が生じた場合には、図5において波形Ifで示すように、比較的大きな電流が短時間だけ流れる。一方、火炎伝播燃焼が生じた場合には、波形Idで示すように、比較的小さな電流が長時間にわたって流れる。よって、具体的には、イオン電流がしきい値Isを超えている時間がしきい値ts以上である場合には、主として火炎伝播燃焼が生じていると判断し、しきい値ts未満である場合には、主として自着火燃焼が生じていると判定することができる。図5の例においては、自着火燃焼の場合にイオン電流がしきい値Isを超えている時間をtfで示し、火炎伝播燃焼の場合にイオン電流がしきい値Isを超えている時間をtdで示す。通常、tdはtfより大きくなるため、tdとtfの間の適切な値にtsを設定することで、上記のように燃焼状態を判定することができる。
【0102】
また、自着火燃焼の場合には、大きなイオン電流が流れる(図5参照)。よって、ピストンの上死点後、一定の時間内のイオン電流の最大値が、所定のしきい値を超えている場合は、自着火燃焼であると判断し、しきい値を下回っている場合は、火炎伝播燃焼が起こった、すなわち、燃焼状態の異常があると判断してもよい。さらに、イオン電流が0である場合や所定の下限値よりも小さい場合は、失火がおこったものと判断することが好ましい。
【0103】
さらに、上述したような複数の判断基準を組み合わせて、燃焼状態を判定してもよい。たとえば、それらすべての判断基準に基づく判定が「Yes(燃焼状態の異常がある)」である場合に、燃焼状態の異常があると判断してもよいし、いずれか一つが「Yes」である場合に、燃焼状態の異常があると判断してもよい。すなわち、本発明を実施する際には、燃焼室内のイオン電流を検出することができるセンサを利用して、任意の方法で燃焼状態を判定することができる。
【0104】
(4)変形例4:
第2実施例においては、イオン電流に基づいて燃焼室内の混合気の燃焼状態を判定していたが、他の方法で燃焼室内の混合気の燃焼状態を判定してもよい。たとえば、第1実施例と同様に、所定の要求負荷を与えた場合のエンジンの単位時間当たりの実際の回転数が、所定のしきい値に達しなかった場合には、その運転モードにおいて適切な燃焼が行われていないと判定して、運転モードを変える態様とすることができる。すなわち、本発明を実施する際には、燃焼室内の燃焼状態を検出することができる任意の燃焼状態検出センサに基づいて、運転状態を切り換える態様とすることができる。
【0105】
C−3.その他:
上記各実施例および変形例では、各バルブの開閉タイミング、火花点火のタイミングは、数値を挙げて説明した。しかし、それらは一例に過ぎず、各バルブの開閉タイミング、火花点火のタイミングは、シリンダの内径、ピストンのストローク量、バルブの径など、エンジンの設計値に応じた所定のタイミングとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のエンジンの構造を概念的に示した説明図。
【図2】 第1実施例のエンジンが有する2サイクル運転の運転モードの表。
【図3】 エンジン始動後、燃焼状態に応じてエンジンの運転モードを切り換える手順を示すフローチャート。
【図4】 第2実施例の点火ユニット(IGU)137bの内部構造を示した説明図。
【図5】 点火プラグ136において火花を飛ばす場合の、点火信号、点火プラグ136の電極間の電圧、イオン電流の波形を示すグラフ。
【図6】 第2実施例のエンジンが有する2サイクル運転の運転モードを示す表。
【図7】 通常モードRMに移行した後、燃焼状態に応じてエンジンの運転モードを切り換える手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…エンジン
12…吸気通路
12o…吸気口
12t…サージタンク
15…筒内燃料噴射部
16…排気通路
16o…排気口
22…スロットル弁
24…電動アクチュエータ
30…ECU
32…クランク角センサ
34…アクセル開度センサ
40…電磁駆動弁駆動回路
42…点火コイル
42a…一次側コイル
42b…二次側コイル
44…コイル駆動回路
44a…トランジスタ
44b,44c…定電圧ダイオード
44d…コンデンサ
44e…抵抗
60…バッテリ
130…シリンダヘッド
130r…天井部
132…吸気バルブ
134…排気バルブ
136…点火プラグ
136a…中心電極
136b…周辺電極
137,137b…点火ユニット(IGU)
140…シリンダブロック
142…シリンダ
144…ピストン
146…コネクティングロッド
148…クランクシャフト
150…燃焼室
162,164…電動アクチュエータ
C1…エンジン始動後の運転サイクル数
Cs1…低圧縮比サブモードSM1を終了するか否か判定するためのしきい値
C2…高圧縮比サブモードSM2に移行した後の運転サイクル数
Cs2…高圧縮比サブモードSM2を終了するか否か判定するためのしきい値
Id…火炎伝播燃焼が起こった場合のイオン電流
Id20…火炎伝播燃焼が起こった場合のATDC20°のイオン電流値
If…自着火燃焼が起こった場合のイオン電流
Ne…クランクシャフトの単位時間当たりの回転数(エンジンの回転数)
Ns1,Ns2…エンジンの回転数のしきい値
t1…点火信号(IGT)の出力をONにするタイミング
t2…点火信号(IGT)の出力をOFFにするタイミング
θac…アクセル開度
θc…クランクシャフトの回転角度

Claims (12)

  1. 燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンであって、
    燃焼室を構成するシリンダおよびピストンと、
    前記燃焼室の混合気に点火を行うことができる点火部と、
    前記エンジンの回転数を検出する回転数センサと、
    前記ピストンの上死点前のタイミングで前記点火部による点火を行う点火運転と、前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行う自着火優先運転と、で前記エンジンを運転することができる制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記自着火優先運転を行う運転モードであって、前記エンジンの始動時から所定の長さ以下の期間に実行される第1の運転モードにおいて、エンジンの回転数が第1のしきい値に達しなかった場合には、燃料が前記自着火運転に適していないと判断する、エンジン。
  2. 請求項1記載のエンジンであって、
    前記第1の運転モードは、圧縮比が比較的低い低圧縮比サブモードと、圧縮比が比較的高い高圧縮比サブモードと、を有し、
    前記制御部は、
    前記エンジンの始動後、前記低圧縮比サブモードにより所定の期間に前記エンジンを運転し、前記低圧縮比サブモードにおいてエンジンの回転数が第2のしきい値に達しなかった場合には、前記高圧縮比サブモードにより前記エンジンを運転する、エンジン。
  3. 請求項1または2に記載のエンジンであって、
    前記制御部は、さらに、
    前記自着火優先運転を行う自着火サブモードと、前記点火運転を行う点火サブモードとを備え、前記第1の運転モードの後に実行される第2の運転モードを有し、
    前記第1の運転モードにおいてエンジンの回転数が前記第1のしきい値に達した場合には、前記第2の運転モードにおいて前記自着火サブモードを実行し、
    前記第1の運転モードにおいてエンジンの回転数が前記第1のしきい値に達しなかった場合には、燃料が前記自着火運転に適していないと判断して、前記第2の運転モードにおいて前記点火サブモードを実行する、エンジン。
  4. 請求項3記載のエンジンであって、
    前記第1の運転モードは、要求負荷が0である状態において燃料の噴射量が比較的多く、
    前記第2の運転モードは、要求負荷が0である状態において燃料の噴射量が比較的少ないモードを含む、エンジン。
  5. 燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンであって、
    燃焼室を構成するシリンダおよびピストンと、
    前記燃焼室の混合気に点火を行うことができる点火部と、
    前記燃焼室内の燃焼状態を検出することができる燃焼状態検出センサと、
    ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行う第1の自着火優先運転と、前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行い、同じ要求負荷における前記燃焼室内への燃料噴射量が前記第1の自着火優先運転よりも多い第2の自着火優先運転と、で前記エンジンを運転することができる制御部と、を有し、
    前記制御部は、
    前記第1の自着火優先運転で前記エンジンを運転している場合において、前記燃焼状態検出センサによって燃焼状態の異常を検知した場合には、前記第2の自着火優先運転で前記エンジンを運転し、
    前記第2の自着火優先運転で前記エンジンを運転している場合において、前記燃焼状態検出センサによって燃焼状態の異常を検知した場合には、前記点火運転で前記エンジンを運転する、エンジン。
  6. 請求項5記載のエンジンであって、
    前記燃焼状態検出センサは、前記燃焼室内のイオン電流を検出することができるセンサであり、
    前記制御部は、前記イオン電流に基づいて燃焼状態を判定する、エンジン。
  7. 燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンに供給される燃料の判定方法であって、
    (a)ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行う自着火優先運転と、における前記エンジンの運転条件をそれぞれ設定する工程と、
    (b)前記エンジンの始動時以降、前記自着火優先運転で前記エンジンを運転する工程と、
    (c)前記エンジンの始動時から所定の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数がしきい値に達しなかった場合には、燃料が前記自着火運転に適していないと判断する工程と、を備える燃料の判定方法。
  8. 燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンに供給される燃料の判定方法であって、
    (a)ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、
    前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行う自着火優先運転と、における前記エンジンの運転条件をそれぞれ設定する工程と、
    (b)前記エンジンの始動時以降、前記自着火優先運転で前記エンジンを運転する工程と、
    (c)前記エンジンの始動時から第1の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数が第1のしきい値に達しなかった場合には、圧縮比を高く設定して前記エンジンを運転する工程と、
    (d)前記圧縮比を高く設定してから第2の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数が第2のしきい値に達しなかった場合には、燃料が前記自着火運転に適していないと判断する工程と、を備える燃料の判定方法。
  9. 燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンの運転方法であって、
    (a)ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転と、
    前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行う自着火優先運転と、における前記エンジンの運転条件をそれぞれ設定する工程と、
    (b)前記エンジンの始動時以降、前記自着火優先運転で前記エンジンを運転する工程と、
    (c)前記エンジンの始動時から所定の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数がしきい値に達しなかった場合には、前記点火運転で前記エンジンを運転する工程と、
    (d)前記エンジンの始動時から前記所定の期間が経過した後の時点で、エンジンの回転数が前記しきい値に達した場合には、前記自着火優先運転で前記エンジンを運転する工程と、を含む、エンジンの運転方法。
  10. 燃焼室内の混合気を自着火させることができるエンジンの運転方法であって、
    (a)ピストンの上死点前のタイミングで点火部による点火を行う点火運転で前記エンジンを運転する工程と、
    (b)前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行う第1の自着火優先運転で前記エンジンを運転する工程と、
    (c)前記点火部による点火を行わないか、または前記点火運転よりも遅いタイミングで前記点火部による点火を行い、同じ要求負荷における前記燃焼室内への燃料噴射量が前記第1の自着火優先運転よりも多い第2の自着火優先運転で前記エンジンを運転する工程と、を備え、
    前記工程(b)は、
    燃焼状態に異常がある場合には、前記工程(c)に移行する工程を備え、
    前記工程(c)は、
    燃焼状態に異常がある場合には、前記工程(a)に移行する工程を備える、エンジンの運転方法。
  11. 請求項10記載のエンジンの運転方法であって、
    前記工程(b)または(c)は、
    ピストンの上死点後、所定の期間が経過した後の前記燃焼室内のイオン電流量がしきい値を超えている場合に、前記燃焼状態の異常があるものと判断する工程を含む、エンジンの運転方法。
  12. 請求項10記載のエンジンの運転方法であって、
    前記工程(b)または(c)は、
    ピストンの上死点後、前記燃焼室内のイオン電流が第1のしきい値以上である時間が第2のしきい値よりも長く継続した場合には、前記燃焼状態の異常があるものと判断する工程を含む、エンジンの運転方法。
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