JP4088554B2 - 磁気共鳴画像診断用の電磁石装置 - Google Patents

磁気共鳴画像診断用の電磁石装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気共鳴画像診断装置(以下、MRI装置とする。)の電磁石装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置は、主に水素原子の核磁気共鳴現象を利用し、被検体の断層映像を撮る装置である。このMRI装置では、検査部位を配置する空間に均一な磁場が必要になる。磁場は、ppm(百万分の1)レベルの均一性が要求される。静磁場強度は2.0T程度までが用いられているが、近年、さらに強い磁場強度の磁石装置も研究用として稼動を始めている。用いられる電磁石装置としては、超電導磁石が一般的である。MRI装置の電磁石の形態としては、容器が円筒状で、筒状の開口部が設けられており、その開口部の中央に均一磁界を設け、その開口部内に被検体を搬入して撮像を行うソレノイドタイプと、上下2つの容器にコイル群を収納し、その容器が対向する空間に均一磁界を設け、その空間に被検体を配して撮像を行うオープンタイプのものがある。
【0003】
強い磁場を発生するMRI装置では、電磁石装置からの漏洩磁界が問題となる。漏洩磁界の大きさは、一般的には0.5mT以上の磁場強度の広さで評価され、病院等に電磁石装置を設置する場合には、0.5mTラインをMRI装置設置室内に納めることが希望される。ソレノイドタイプ、オープンタイプのいずれにおいても、電磁石の漏洩磁場の分布が問題とされる。一般に、ソレノイドタイプの電磁石は、円筒状のコイル群を、円筒の長さ方向が水平となるように配置されるため、水平面方向に対して磁界が発生するので、隣室や隣接する廊下への漏洩磁場が問題となる。オープンタイプでは、垂直方向に磁界が発生するため、階上、階下への漏洩磁場が問題となる。
漏洩磁界を小さく抑える方式として、磁石に対し、強磁性体で磁気回路を構成するパッシブシールド方式、磁場を発生する主コイルと逆向きの磁場を発生するシールドコイルを配置し、外部漏洩磁場を小さく抑えるアクティブシールド方式などが利用されている。これらの方式を採用し、漏洩磁界を環境に合わせて必要な磁場強度に低減する方法が提案されている。
【0004】
従来のソレノイドタイプのMRI装置では、電磁石の漏洩磁場を抑える際に、強磁性体を用いることが示されている。また、任意の方向の漏洩磁界を低減させるために、磁気シールド開口部の開口径を他方より小さくし、一方向の漏洩磁界を抑える構造が示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、従来のオープンタイプのMRI装置では、静磁場発生源の上部および下部の少なくとも一方に、その静磁場発生源から発生する磁場とほぼ逆向きの磁場を発生する打ち消し磁場発生手段と、それを制御する打ち消し磁場制御手段を設け、漏洩磁場を打ち消す技術が示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平03−012133号公報
【特許文献2】
特開2002−143126号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の、MRI装置では、漏洩磁界分布を任意に変化させるために、電磁石装置を構成する主コイル群に対し、強磁性体や、打ち消し磁場発生手段などを付加的に設ける必要があり、コストがかかり、また強磁性体を用いる場合では、強磁性体と他の構成部との相互作用が問題となる場合があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、強磁場を発生するMRI装置用の電磁石装置において、漏洩磁界分布を、設置環境に適応させることができるコイルの構成についての指標を示し、安価な電磁石装置およびそれを用いるMRI装置を提供することを目的とする。
0009
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる電磁石装置は、筒状開口部が設けられた容器、上記容器内に同軸となるように配列収納され、上記容器の開口部内に均一磁界を発生する、環状に巻き回しされた複数のコイルおよびシールドコイルよりなるコイル群を備え、上記コイル群は、上記均一磁界の中心から上記軸方向に沿う第一の方向側に配置された第一のコイル群と、上記均一磁界の中心から上記第一の方向とは逆向きである第二の方向側に配置された第二のコイル群により構成され、上記第一、第二のコイル群による起磁力の絶対値総和が、それぞれAT1、AT2であり、上記均一磁界の中心から、上記第一、第二の方向に沿う、コイル磁界強度が任意の絶対値Bとなる位置までの距離が、それぞれR1、R2であるとき、R1>R2かつAT1<AT2の関係が成り立つとともに、上記第一のコイル群を構成する上記複数のコイルによる起磁力が、上記第二のコイル群を構成する上記複数のコイルによる起磁力より小さいものである。
【0010】
また、この発明に係わる電磁石装置は、所定空間をあけて対向配置された第一、第二の容器、上記第一、第二の容器内に、同軸となるように配列収納され、上記第一、第二の容器の間に均一磁界を発生する、それぞれ環状に巻き回しされた複数のコイルよりなる第一、第二のコイル群を備え、上記第一、第二のコイル群による起磁力の絶対値総和がそれぞれAT1、AT2であり、上記均一磁界の中心から上記第一のコイル群側の上記軸方向に沿う第一の方向、および上記均一磁界の中心から上記第二のコイル群側の上記軸方向に沿う第二の方向に沿って、上記均一磁界の中心から、コイル磁界強度が任意の絶対値Bとなる位置まで距離が、それぞれR1、R2であるとき、R1>R2かつAT1<AT2の関係が成り立つものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1ないし図3を用いて説明する。
図1は、中心に1.5Tの静磁界を発生させるソレノイドタイプのMRI装置の断面図であり、超電導磁石のコイル配置の一例を示した断面図である。
図1に示すように、超電導磁石は、磁場を発生するコイル群により構成され、コイル群は、磁界中心4から第一の方向側(ベッド側)3aに配置されたコイル11a、12a、13a、14aとシールドコイル15a(これらのコイルによって、第一のコイル群が構成される。)、および磁界中心4から第一の方向とは逆向きの第二の方向側(反ベッド側)3bに配置されたコイル11b、12b、13b、14bとシールドコイル15b(これらのコイルによって、第二のコイル群が構成される。)から構成されている。
【0012】
このコイル群は、磁石の中心軸3上に同軸となるように円状に巻き回し形成された複数のコイルよりなり、磁石の中心軸(軸方向と同じ。)3の方向に沿って第一の方向側3a(磁場発生方向5に相当する。)に向って磁場を発生させる。これらコイル群は、例えばNbTi線材を用いた超電導物質を使用し構成され、各コイルは矩形の断面形状となるように線材を巻き回して製作され、液体ヘリウムを収納する円筒状のヘリウム槽容器1内に収納される。ヘリウム槽容器1は断熱構造と冷却装置を装備し、被検体を搬入するための筒状の開口部が設けられたクライオスタット2(容器に相当し、その形状は略円筒状である。)の中に設置される。ここでは、断熱構造や冷却装置については、省略している。
【0013】
また、第一の方向側3aには、被検体(患者)を寝かせるためのベッド7が配置され、例えば、このベッド7は、スタンバイの状態で、図1のように、クライオスタット2外の、磁場均一空間6よりも低い位置に停止している。検査時には、ベッド7に被検体を載せて、クライオスタット2の筒状開口部2a内の磁場均一空間(均一磁界と同意である。)4へ移動する。ベッド7の移動は、ベッド調節用装置7aにより行われる。
0014
さらに、磁界中心4を通る垂直方向の面が、磁場中心位置4aであり、この磁場中心位置4aから第一の方向側3aに位置するのが第一のコイル群、同様に、第二の方向に位置するのが第二のコイル群となる。ちょうど磁場中心位置4aのコイル11a、11bは、一続きのコイルであるが、ここでは計算上、磁場中心位置4aで二つに分断されたものとして考える。
【0015】
主コイル群を構成するコイル11a、12a、13a、14aおよび11b、12b、13b、14bは、磁石の中心軸3に沿って磁界を作る。また、周囲への漏洩磁界を低減するためにシールドコイル15a、15bが配置され、主コイル群と逆向きの磁界を作っている。この時、コイル14aと14bは主な磁界を発生し、コイル11a、12a、13aと11b、12b、13bは主に磁界中心4の周りに約10ppm以下である磁場均一空間6を形成する。磁気共鳴イメージング撮影は、この磁場均一空間6にて行われる。
シールドコイル15aは、15bよりも、その矩形断面積が小さく形成されている。また、磁界中心4からベッド7側(第一の方向側3aに相当。)に配置されるコイル11a、12a、13a、14aは、磁界中心4を挟んだ反対側(反ベッド側、第二の方向側3bに相当。)にあるコイル11b、12b、13b、14bよりも、その断面積が小さな形状となるように構成されている。
【0016】
図2は、磁場中心4に1.5Tの静磁界を発生させ、反ベッド側(第二の方向側3b。)での0.5mTの位置R2が4.0mに固定されている場合、磁場中心4からのベッド側(第一の方向側3a)での0.5mTとなる位置までの距離R1と、コイル起磁力の関係を示したものである。線(1)はベッド側にある起磁力の絶対値の和AT1を示し、線(2)は反ベッド側にある起磁力の絶対値の和AT2を示している。線(1)から判るように、ベッド側の漏洩磁界0.5mTとなる位置までの距離R1が大きくなると、反ベッド側にある起磁力の絶対値の和AT2に対し、ベッド側にある起磁力の絶対値の和AT1は減少していく。このように、R1がR2よりも大きくなると(R1>R2)、AT1はAT2より小さくなる(AT1<AT2)という関係が成り立つ。
【0017】
また、図2に示すように、漏洩磁場の分布が磁界中に対して対称な分布の場合、すなわちベッド側の漏洩磁場0.5mTのライン位置(R1)が4mの位置にあるとき、ベッド側のコイルの起磁力AT1と、反ベッド側のコイルの起磁力AT2は同じ値となる。ベッド側の漏洩磁場0.5mTの位置R1が大きくなると、ベッド側コイル起磁力AT1は減少していくので、ベッド側コイル起磁力AT1と反ベッド側コイル起磁力AT2の総和AT1+AT2も減少する。
【0018】
図3は、磁界中心4に1.5Tの静磁界を発生した場合における、磁場中心4からの距離と磁石の中心軸3上における漏洩磁界強度の関係を示した図である。線(1)は、ベッド側(第一の方向側3a。)における漏洩磁場強度を示し、線(2)は反ベッド側(第二の方向側3b。)の漏洩磁場強度を示している。漏洩磁界強度が0.5mTとなる磁界中心4からの距離が、ベッド側ではR1=6m、反ベッド側ではR2=約4mであり、R2よりもR1が大きな値となっている。
【0019】
また、R1が約6m、R2が約4mにおける起磁力は、図2により示され、ベッド側のコイル群の起磁力AT1はAT1=2.02×10A、反ベッド側のコイル群の起磁力AT2はAT2=2.37×10Aであることがわかる。漏洩磁界、すなわち漏洩磁場の分布と起磁力の関係は、R1>R2の時に、AT1<AT2となっている。
【0020】
以上のことから、本発明のような構成にした水平型(ソレノイドタイプ)電磁石において、漏洩磁場強度までの距離がR1>R2の関係を満たし、さらに、起磁力絶対値の総和がAT1<AT2の関係の関係を満たすようにコイルを調節配置すること、つまり、R1>R2およびAT1<AT2というコイルの構成についての指標を満たすような電磁石装置を形成することで、漏洩磁界の分布を調整することができる。また、コイルの総起磁力が小さい、製作コストの安価な電磁石を得ることができる。このように漏洩磁界分布を起磁力により設定できるので、漏洩磁界の制限が不必要な領域での磁界強度を緩くして、設置環境に適応した適正な設定をし、電磁石の起磁力を小さくできる。起磁力は電流と巻きターン数が積で表現されるので、起磁力が小さくなると、電流が一定のコイルにおいては、巻きターン数を減少させることができる。また、コイルを製作する場合に、巻線作業に要する時間を短縮することができる。また、使用する超電導線材量も少なくなり、製作費用を安くすることができるなどの効果を得られる。
【0021】
なお、漏洩磁界分布を示すR1、R2は、MRI装置を設置する部屋の大きさの都合などから10m程度以下の値となるのが一般的であり、その範囲内で、上記のような関係、すなわちR1>R2およびAT1<AT2の関係を満たすように、電磁石装置を製作することで、総起磁力が小さい、製作コストが安価な電磁石を得られる。
また、クライオスタット2の筒状開口部2a内では、漏洩磁界は問題にならないことから、R1、R2の値が、筒状開口部2内に位置する値とはならない。
【0022】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、コイル群を収納する容器(クライオスタット2に相当する。)が略円筒状であり、患者が入る筒状開口部2aにおける内径が一定である例を示したが、この実施の形態2では、患者を寝かせるベッド7が搬入される側の開口部分の内径を大きくする場合について、図4に、そのMRI装置の断面図を示して説明する。
【0023】
ヘリウム槽容器31内には、第一の方向側(ベッド側)3aに第一のコイル群となるコイル21a、22a、23aさらにシールドコイル24aが配置され、第二の方向側(反ベッド側)3bに第二のコイル群となるコイル21b、23b、24b、24b、26b、28bさらにシールドコイル22b、25b、27bが配置されており、このヘリウム槽容器31がクライオスタット32内に収納されている。クライオスタット32の筒状開口部は、ベッド7が搬入される第一の方向側3aでの開口部32aの内径が、他端側の開口部32bの内径よりも大きく形成されている。
【0024】
開口部23a、32bのように、コイル群を収納する容器の内径を、段階的に変化させる場合においても、実施の形態1で示したように、磁界中心4から漏洩磁場強度(0.5mT分布)までの距離の関係をR1>R2とし、起磁力絶対値の総和がAT1<AT2の関係を満たすようにコイルの巻きターン数、配置を調整することで、漏洩磁界の分布を任意に調整することができる。
【0025】
図1で示したようなコイル配置であれば、ベッド7側の開口部32aの内径を大きくすると、ベッド7側の磁場を発生する主コイルと、打ち消すシールドコイルの径方向の間隔が狭くなるので起磁力が増加し、電磁力、コイル内部の磁界強度が大きくなるなどの問題があり、特に、コイル内部の磁界強度が大きくなると、使用できる超電導材料が制限され、量産できる電磁石の設計ができなくなるが、ベッド側の0.5mT磁場間での距離R1をR2よりも大きくし、AT1<AT2とすることで、量産製作が可能なコイルを構成できる。例えば、中心磁界が1.5Tの電磁石で、0.5mTの漏洩磁界分布位置がベッド側ではR1=5m、反ベッド側ではR2=2mで、AT1は4.5×10A、AT2は4.7×10Aと量産作成が可能な値となる。
【0026】
量産の可否は、この例では起磁力が1×10Aに達するかどうか、その大きさに依存する。起磁力が大きくなると、コイルに使用できる超電導線材がより高価となるため(例えばNbTi線をNbSn線とするなど。)、量産がより難しくなる。
また、クライオスタット2のベッド7側の開口部32aの内径を大きくすることにより、狭い開口部に恐怖心を持つ患者に対しても、その恐怖心を和らげることが可能なMRI装置を提供できるという効果がある。
【0027】
実施の形態3.
上述の実施の形態1、2では、ソレノイドタイプ電磁石装置について述べたが、この実施の形態3では、オープンタイプの電磁石装置に発明を適応させる場合について、図5にMRI装置の断面図を示し、説明する。オープンタイプ電磁石装置の場合、その発生する磁場は、磁界発生軸47に沿って垂直方向に発生する。コイル群を収納する二つの容器は、所定の空間をあけて対向配置され、それら二つの容器は、その外形が略円柱状であり、その円柱の軸は磁界発生軸47に沿っており、それぞれの容器内には、同軸となるように、環状に巻き回し形成された複数のコイルが配列収納されている。
【0028】
一般にオープンタイプの電磁石装置の上側への0.5mT漏洩磁場部分布44は、設置室の天井面42よりも階上床面43で制限される。装置の床面41方向(下側)への漏洩磁場条件は、床下の環境により決まるが、一般に設置室の床下は、MRI装置重量等から病室等に用いられることは少ない。電磁石装置が発生する磁場均一空間48の中心から、0.5mT漏洩磁場分布までの上側(第二の方向)への距離がR2、下側(第一の方向)への同様の漏洩磁場分布までの距離がR1であるとき、その関係をR1>R2として、上側クライオスタット45における起磁力の絶対値総和AT2、下側クライオスタット46における起磁力の絶対値総和AT1の関係を、AT1<AT2とすることで、漏洩磁場の分布を設置環境に適応できる安価な電磁石を得ることができる。なお、磁場均一空間48の中心を通る水平方向面が磁場中心位置49である。
【0029】
オープンタイプ電磁石装置では、コイル群を上下2個の、上側、下側クライオスタット45、46(第二、第一の容器に相当する。)に収納しており、第二の容器には第二のコイル群が、第一の容器には第一のコイル群が収納される。上側、下側クライオスタット45、46間に吸引しあう電磁力が発生する。この電磁力を支持するためとコイルの自重を支えるために上側、下側クライオスタット45、46に断熱構造も兼ね備えた連通管50が必要になる。この実施の形態3では、起磁力を小さくできることから、コイル吸引電磁力の減少およびコイル自重の低減された電磁石装置が得られる。よって支持する構造も簡素化できるという効果がある。
【0030】
実施の形態4.
上述の実施の形態3では、上側、下側クライオスタット45、46の形状(外径)が同じである場合について述べたが、図6にMRI装置の断面図を示すように、下側クライオスタット56(第一の容器に相当。)の外径を上側クライオスタット55(第二の容器に相当。)の外径より小さくする際にも、この発明を適用できる。このとき、磁界発生軸57上の、磁界中心(磁界発生軸57と磁場中心位置59が交わる位置。)から0.5mTの漏洩磁場分布54までの、天井面42側(上側、第二の方向側に相当。)の距離R2よりも床面41側(下側、第一の方向側に相当。)の距離R1を大きくすることで、下側クライオスタット56における起磁力AT1を小さくできる。上側クライオスタット55における起磁力の絶対値総和AT2に対し、AT1の値を小さくし、AT1<AT2の関係とすることで、量産可能な起磁力を持つ電磁石を提供することができる。
【0031】
また、図7に上側、下側クライオスタット55、56内のコイル群の配置を示した断面図を示す。
磁界中心70をとおる磁界発生軸57を中心として、その断面構造は左右対称であるため、図7では、右側半分を中心にその断面構造を示す。上側クライオスタット55には、コイル71a、73a、75aさらにシールドコイル72a、74a、76aよりなる第一のコイル群が収納され、下側クライオスタット56には、コイル71b、73b、75b、77bさらにシールドコイル72b、74b、76bよりなる第二のコイル群が収納されている。図7に示すように、容器の外径に応じて、内部に収納するコイルの最大巻き回し径は調整される。より外径の小さい下側クライオスタット56内の第一のコイル群を構成するコイルのうち、巻き回し径が最大である第一のコイル(コイル75b、シールドコイル76bに相当。)は、上側クライオスタット55の第二のコイル群を構成するコイルのうち、巻き回し径が最大である第二のコイル(シールドコイル76a、コイル77aに相当。)よりも、その巻き回し径が小さくなるように形成されている。
【0032】
この場合、下側クライオスタット56の外径を小さく構成したため、容器の外径が小さくなった分だけ空間に余裕ができ、磁場均一空間59へ手が届きやすくなり、アクセスが容易になる。つまり、電磁石装置を部分的に小型化できるために、医療従事者の作業のために空間を広く確保することができ、MRI装置を使用する医者や看護士にとって、患者の診察準備等の処置が容易になるなどの効果があり、MRI装置の利用効率をあげることができるという効果がある。
また、上記の様な電磁石装置を用いたMRI装置は、その構造を開放的なものとできるため、患者の恐怖心を和らげることができる。
0033
【発明の効果】
以上のように、この発明の電磁石装置によれば、筒状開口部が設けられた容器、上記容器内に同軸となるように配列収納され、上記容器の開口部内に均一磁界を発生する、環状に巻き回しされた複数のコイルおよびシールドコイルよりなるコイル群を備え、上記コイル群は、上記均一磁界の中心から上記軸方向に沿う第一の方向側に配置された第一のコイル群と、上記均一磁界の中心から上記第一の方向とは逆向きである第二の方向側に配置された第二のコイル群により構成され、上記第一、第二のコイル群による起磁力の絶対値総和が、それぞれAT1、AT2であり、上記均一磁界の中心から、上記第一、第二の方向に沿う、コイル磁界強度が任意の絶対値Bとなる位置までの距離が、それぞれR1、R2であるとき、R1>R2かつAT1<AT2の関係が成り立つとともに、上記第一のコイル群を構成する上記複数のコイルによる起磁力が、上記第二のコイル群を構成する上記複数のコイルによる起磁力より小さいため、総起磁力を小さくでき、製作コストの安価な電磁石装置を得ることができる。
【0034】
また、この発明による電磁石装置は、所定空間をあけて対向配置された第一、第二の容器、上記第一、第二の容器内に、同軸となるように配列収納され、上記第一、第二の容器の間に均一磁界を発生する、それぞれ環状に巻き回しされた複数のコイルよりなる第一、第二のコイル群を備え、上記第一、第二のコイル群による起磁力の絶対値総和がそれぞれAT1、AT2であり、上記均一磁界の中心から上記第一のコイル群側の上記軸方向に沿う第一の方向、および上記均一磁界の中心から上記第二のコイル群側の上記軸方向に沿う第二の方向に沿って、上記均一磁界の中心から、コイル磁界強度が任意の絶対値Bとなる位置まで距離が、それぞれR1、R2であるとき、R1>R2かつAT1<AT2の関係が成り立つため、総起磁力を小さくでき、製作コストの安価な電磁石装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるソレノイドタイプのMRI装置を示す断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による起磁力と漏洩磁界分布との関係を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による漏洩磁場強度と磁界中心からの距離との関係を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態2によるソレノイドタイプのMRI装置を示す断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態3によるオープンタイプのMRI装置を示す断面図である。
【図6】 この発明の実施の形態4によるオープンタイプのMRI装置を示す断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態4によるオープンタイプのMRI装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1、31 ヘリウム槽容器 2、32 クライオスタット
3 磁石の中心軸 3a 第一の方向側(ベッド側)
3b 第二の方向側(反ベッド側) 4、70 磁界中心
4a 磁場中心位置 5 磁場発生方向
6 磁場均一空間 7 ベッド
7a ベッド調節用装置
11a、11b、12a、12b、13a、14a、14b、21a、21b、22a、23a、23b、24b、26b、28b、71a、71b、73a、73b、75a、75b、77b コイル
15a、15b、22b、24b、25b、27b、72a、72b、74a、74b、76a、76b シールドコイル
32a、32b 開口部 41 床面
42 天井面 43 階上床面
44、54 漏洩磁場分布 45、55 上側クライオスタット
46、56 下側クライオスタット 47、57 磁界発生軸
48、58 磁場均一空間 49、59 磁場中心位置
50 連通管。

Claims (6)

  1. 筒状開口部が設けられた容器、上記容器内に同軸となるように配列収納され、上記容器の開口部内に均一磁界を発生する、環状に巻き回しされた複数のコイルおよびシールドコイルよりなるコイル群を備え、上記コイル群は、上記均一磁界の中心から上記軸方向に沿う第一の方向側に配置された第一のコイル群と、上記均一磁界の中心から上記第一の方向とは逆向きである第二の方向側に配置された第二のコイル群により構成され、上記第一、第二のコイル群による起磁力の絶対値総和が、それぞれAT1、AT2であり、上記均一磁界の中心から、上記第一、第二の方向に沿う、コイル磁界強度が任意の絶対値Bとなる位置までの距離が、それぞれR1、R2であるとき、R1>R2かつAT1<AT2の関係が成り立つとともに、上記第一のコイル群を構成する上記複数のコイルによる起磁力が、上記第二のコイル群を構成する上記複数のコイルによる起磁力より小さいことを特徴とする磁気共鳴画像診断用の電磁石装置。
  2. 所定空間をあけて対向配置された第一、第二の容器、上記第一、第二の容器内に、同軸となるように配列収納され、上記第一、第二の容器の間に均一磁界を発生する、それぞれ環状に巻き回しされた複数のコイルよりなる第一、第二のコイル群を備え、上記第一、第二のコイル群による起磁力の絶対値総和がそれぞれAT1、AT2であり、上記均一磁界の中心から上記第一のコイル群側の上記軸方向に沿う第一の方向、および上記均一磁界の中心から上記第二のコイル群側の上記軸方向に沿う第二の方向に沿って、上記均一磁界の中心から、コイル磁界強度が任意の絶対値Bとなる位置まで距離が、それぞれR1、R2であるとき、R1>R2かつAT1<AT2の関係が成り立つことを特徴とする磁気共鳴画像診断用の電磁石装置。
  3. 任意の絶対値Bは、0.5mTであることを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴画像診断用の電磁石装置。
  4. 上記容器は、円筒状であり、その軸が水平方向に沿うように設置され、上記容器の筒状開口部は、被検体を載せるベッドが搬入される上記第一の方向側に位置する開口部内径が、第二の方向側に位置する開口部内径よりも大きくなり、上記第二の方向側に位置する開口部内径は、上記ベッドの幅以上の大きさとなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴画像診断用の電磁石装置。
  5. 上記第一、第二の容器は、その外形が円柱状であり、下側に配置される上記第一の容器は、上側に配置される上記第二の容器よりもその外径が小さいことを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴画像診断用の電磁石装置。
  6. 第一のコイル群を構成するコイルのうち、巻き回し径が最大である第一のコイルは、第二のコイル群を構成するコイルのうち、巻き回し径が最大である第二のコイルよりも、その巻き回し径が小さいことを特徴とする請求項5記載の磁気共鳴画像診断用の電磁石装置。
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