JP4088383B2 - 車両用ディスクブレーキ装置 - Google Patents
車両用ディスクブレーキ装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4088383B2 JP4088383B2 JP05413299A JP5413299A JP4088383B2 JP 4088383 B2 JP4088383 B2 JP 4088383B2 JP 05413299 A JP05413299 A JP 05413299A JP 5413299 A JP5413299 A JP 5413299A JP 4088383 B2 JP4088383 B2 JP 4088383B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- arm
- brake
- electromagnet
- arms
- braking
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Braking Arrangements (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁コイルへの通電を断ったとき、制動ばねのばね力によって付勢される一対の制輪子により被制動回転体を制動する車両用ディスクブレーキ装置に関する。さらに詳しくは、鉄道車両の台車枠に常用ブレーキとは別に搭載され、非常用、保安用、停留用のブレーキとして使用される鉄道車両用ディスクブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の通常の運転操作で多用されるブレーキ、いわゆる常用ブレーキは、運転エネルギーを電気エネルギーに変換することにより制動力を得る電気ブレーキが一般的であり、停車時あるいは低速走行時において車両の運動エネルギが減少すると制動力が消滅する減速用のブレーキ方式になっている。そこで、停止中の制動力を確保するために、空気圧式あるいは油圧式のアクチュエータによる摩擦ブレーキ装置が別に搭載されている。空気圧式のディスクブレーキ装置や車輪路面ブレーキ装置に代表される上述の摩擦ブレーキ装置は、常用のブレーキとして使用されるとともに、異常事態が発生したときの緊急停止のための非常用ブレーキ、常用ブレーキ装置が故障したときや停電したときなど緊急時に車両を制動する保安用ブレーキ、常用ブレーキにより減速され停止した車両を保持する停留ブレーキにも使用できる。
【0003】
このような鉄道車両の保安ブレーキ装置として使用されるディスクブレーキ装置は、一般にテコ式の構造を採用しており、ブレーキシリンダに空気圧を供給することにより一対のライニング付き制輪子によってブレーキディスクを挟圧し制動する構造を採っている(例:特開平10−203365号公報、特開平4−201672号公報等)。
【0004】
また、最近になって空気圧や油圧以外のアクチュエータで駆動する摩擦ブレーキ方式として、無励磁作動型のディスクブレーキ装置が開発されている。この方式のブレーキ装置は、常時励磁のコイルが消磁すると、そのコイルに対峙する機械式ばねによって摩擦材を押し付ける、新しいタイプの摩擦ブレーキである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の鉄道車両用ディスクブレーキ装置は、エア・コンプレッサと空気溜め、あるいは油圧ポンプとアキュムレータ、および種々の弁や配管を要するため、保守の軽減やシステムの簡素化が図れないという課題があった。また、従来の無励磁作動型ディスクブレーキ装置は、最低限のブレーキ調整機能が無いため、保安ブレーキや常用ブレーキのバックアップ用に使えなかった。また、強いブレーキ力の確保と動作ストロークの確保と小型軽量化とを両立するディスクブレーキ装置として満足できるものがなかった。
【0006】
そこで、本発明者らはアクチュエータに空気圧や油圧を用いない無励磁作動型の電磁ばね式アクチュエータによる車両用ディスクブレーキ装置について鋭意検討したところ、鉄道車両用のディスクブレーク装置は、特に振動や走行中の車輪のぶれを考慮してブレーキディスクと制輪子との間隔を大きくしなければならないことから、以下の事項を満足させる構造とする必要があることが判明した。▲1▼僅かなアームの揺動で制輪子のストロークを大きくするためにアームの回動支点をブレーキディスクの外側に設ける。▲2▼アームの形状を工夫し制動ばねを制輪子側に設け、電磁石を回動支点側に設ける。▲3▼一対のアーム間に形成され電磁石を組込むためのスペースが限られている場合や、保安ブレーキとしての安全性を高める場合には、メインの他に電磁コイルへの電流制御による電磁力調整を可能にするアシスト用電磁石とリンク機構を組込む必要がある。
【0007】
本発明は上記した従来の問題および検討結果に基づいてなされたもので、その目的とするところは、停留用ブレーキとして、また安全性が高く非常用ブレーキや保安用ブレーキとしても満足な機能を備えたエアレスで無励磁作動型の車両用ディスクブレーキ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明は、基端が支持軸によってそれぞれ揺動自在に枢支され揺動端が被制動回転体の両側にそれぞれ位置するアームであって、各アームの中間部にアーム長手方向と直交するコア固定部を設けるとともにこのコア固定部の先端側に前記被制動回転体を挟んで当該アームの揺動端とは反対側に位置する制輪子取付部とを設けた一対のアームと、これらのアームの前記制輪子取付部にそれぞれ設けられ前記被制動回転体を両側より挟圧する一対の制輪子と、一方のアームの揺動端部と他方のアームの制輪子取付部間および一方のアームの制輪子取付部と他方のアームの揺動端部間にそれぞれ設けられ前記制輪子が前記被制動回転体を挟圧する方向に付勢する複数個の制動ばねと、前記一対のアームの基端部近傍に配設され通電により前記制動ばねに抗して前記アームを前記制輪子が前記被制動回転体から離間する方向に揺動させる電磁石装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第1の発明において、電磁石装置をアームの基端部近傍に配置し、制輪子を制輪子取付部に配置しているので、僅かなアームの揺動で制輪子のストロークを大きくすることができる。また、電磁石装置のエアギャップを小さくすることができ、大きな磁気吸引力を得ることができる。
制動ばねは、電磁石装置に通電しない制動状態において一対のアームを互いに開く方向に揺動させ、制輪子を被制動回転体に圧接する。したがって、制輪子は被制動回転体を挟圧し制動する。
被制動回転体としては、車輪または車軸に固定されたブレーキディスクの何れであってもよい。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、電磁石装置は、互いに対向する一対の電磁石からなり、これらの電磁石はアーム基端側が互いに接触する方向に付勢されて支持され、制輪子側が各アームにレバーで連結されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明において、電磁石装置への通電を断ち制動解放状態から制動状態に切り替えられたとき、一対のアームが制動ばねによって開く方向に揺動して制輪子が被制動回転体を挟圧すると、一対の電磁石はアーム基端側を回動支点として制輪子側がアームと一体に開く方向に回動し、エアギャップが形成される。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、一対のアームのコア固定部を互いに近接させて対向させ、これらのコア固定部間に電磁石装置とともに通電励磁されることにより前記アームを制動ばねに抗して揺動させ制輪子を被制動回転体から離間させるアシスト用電磁石装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
第3の発明において、アシスト用電磁石装置は制動解放状態においてメインの電磁石装置とともに通電される。このときの駆動力は、メインの電磁石装置の磁気吸引力とアシスト用電磁石装置の磁気吸引力の和となり、大きな駆動力が得られる。したがって、ばね定数の大きな制動ばねを使用することができ、ディスクブレーキ装置の安全率を高めることができる。
また、メインの電磁石装置だけでは、制動状態においてエアギャップがアーム基端側において狭く、制輪子側において広くなるので、磁気回路上の磁気抵抗が大きくなり、通電した後の制動解放動作が遅れることが考えられるが、アシスト用電磁石装置を備えることにより大きな駆動力が得られるので、制動解放動作の遅れを防止することができる。
【0014】
第4の発明は、上記第3の発明において、2つの電磁石装置への通電を断って制動状態にした後、各電磁石装置の一方の電磁石に反発する力方向の極性となるように励磁電流を逆向きに流すことにより、各電磁石装置の反発力と制動ばねのばね力で被制動回転体を制動することを特徴とする。
【0015】
第4の発明において、制動ばねによる制動状態において、電磁石装置に逆電流を流して反発力を発生させると、この反発力は一対のアームを開く方向に揺動させようとする。したがって、制動ばねのばね力と電磁石装置の反発力によって制輪子が被制動回転体を挟圧し制動する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明に係る車両用ディスクブレーキ装置の一実施の形態を示すもので、図1は同ブレーキ装置の正面図、図2は制動解放状態の一部を破断して示す平面図、図3は一部を破断して示す背面図、図4は制動解放状態の要部の一部を破断して示す拡大図、図5は制動状態の要部の一部を破断して示す平面図、図6は制動状態の要部の一部を破断して示す拡大図である。
【0017】
これらの図において、鉄道車両用ディスクブレーキ装置(以下、ディスクブレーキ装置という)1は、基端が図示を省略した鉄道車両の台車枠に設けた1本の支持軸2によって共通に揺動自在(開閉自在)に枢支された一対からなる第1、第2のアーム3,4を備え、これらのアーム3,4の閉方向(制動を解放する方向)の揺動を前記台車枠に設けた図示しないブラケットにより一定範囲内に制限している。前記支持軸2は、前記第1、第2のアーム3,4の回動角度が僅かで後述する制輪子9,17のストロークを大きくするために車輪5の外側(前方または後方)で車輪5の幅方向中心線の延長上に離間して設けられている。ここで、第1、第2のアーム3,4の閉方向とはアームが閉じる方向で、後述する一対の制輪子から見るとブレーキディスクから互いに離間して制動を解放する方向で、アームの開方向とはアームが開く方向で、制輪子から見ると互いに接近してブレーキディスクを挟圧し制動する方向である。
【0018】
前記第1のアーム3は、ダイキャスト鋳造等によって製作され、外側に略円弧状に湾曲し基端側が前記支持軸2によって枢支された上下一対からなる上、下支持部3a,3bと、これらの上、下支持部3a,3bの基端側とは反対側端に車輪5方向に延設された揺動端としてのばね受部3cとを備えている。ばね受部3cは、図1に示すように正面視E字状に形成することにより、上下方向に略等間隔で離間する3つの水平腕部3c-1,3c-2,3c-3と、これらの水平腕部3c-1,3c-2,3c-3のアーム基端側と後述するコア固定部3dとを連結する垂直な連結部3c-4とで構成されている。なお、水平腕部3c-1,3c-2,3c-3は、全て同一長さを有している。
【0019】
また、前記上、下支持部3a,3bと前記ばね受部3cとの連結部には、図2に示すようにばね受部3cと直交し第2のアーム4方向に延在する前記コア固定部3dが一体に突設されている。このコア固定部3dは板状に形成され、先端側の上下端には上下一対からなる制輪子取付部3e,3fが前記ばね受部3cとは前記車輪5を挟んで反対側に位置するようにそれぞれ一体に延設されている。制輪子取付部3e,3fは、前記ばね受部3cより十分に長く形成され、これら制輪子取付部の先端部間にライニング8を有する制輪子9が前記車輪5の第2のアーム4側面に取付けられたリング状のブレーキディスク10に対向するように設けられている。この制輪子9は、垂直な軸11によって幅方向中間部が揺動自在に軸支されている。前記軸11は、上下端が前記一対の制輪子取付部3e,3fによって支持されている。さらに、前記一対の制輪子取付部3e,3fの長手方向の中間部間には、図3に示すように板状のばね受部材12が上下面に設けたねじ孔13にねじ込まれる複数個の六角穴付きボルト14によって前記ばね受部3cの水平腕部3c-1,3c-2,3c-3と対向するように固定されている。
【0020】
前記第2のアーム4は、前記第1のアーム3と略左右対称ではあるが、相互干渉を防止するために第1のアーム3より高さ方向の寸法が若干小さく形成され、外側に略円弧状に湾曲し基端部が前記第1のアーム3の上、下支持部3a,3bとともに前記支持軸2によって枢支された上下一対からなる上、下支持部4a,4bと、これらの上、下支持部4a,4bの基端側とは反対側端に車輪5方向に延設された揺動端としてのばね受部4cとを備えている。
【0021】
前記上、下支持部4a,4bは、前記第1のアーム3の上、下支持部3a,3b間に位置し、また上、下支持部4a,4b間には前記支持軸2に嵌装されたカラー15(図1、図3)が介在されている。前記ばね受部4cは、図3に示すように正面視E字状に形成することにより、上下方向に略等間隔で離間する3つの水平腕部4c-1,4c-2,4c-3と、これらの水平腕部4c-1,4c-2,4c-3のアーム基端側を連結する垂直な連結部4c-4とで構成されている。なお、水平腕部4c-1,4c-2,4c-3は、全て同一長さを有している。
【0022】
また、前記ばね受部4cの連結部4c-4には、ばね受部4cと直交し第1のアーム3方向に延在するコア固定部4dが一体に突設されている。このコア固定部4dは、板状に形成されて前記第1のアーム3のコア固定部3dと互いに近接して対向し、先端側には上下一対からなる制輪子取付部4e,4fが前記ばね受部4cとは前記車輪5を挟んで反対側で前記制輪子取付部3e,3fと対向するようにそれぞれ一体に延設されている。制輪子取付部4e,4fは、前記制輪子取付部3e,3fと同一長さで、先端部間にライニング16を有する制輪子17が前記車輪5の第1のアーム3側面に取付けられたリング状のブレーキディスク18に対向するように設けられている。この制輪子17は、垂直な軸20によって幅方向中間部が揺動自在に軸支されている。前記軸20は、上下端が前記一対の制輪子取付部4e,4fによって支持されている。
【0023】
さらに、前記連結部4c-4の高さ方向中央部には、図2に示すように制輪子17方向に延在するばね受部4gが一体に突設されている。このばね受部4gは、前記第1のアーム3のばね受け部3cの水平腕部3c-2と略同一長さを有して前後に所定の間隔を保って対向している。したがって、ディスクブレーキ装置1を図1に示す正面から見た場合、ばね受部4gは視認することができない。
【0024】
前記第1のアーム3のばね受部3cと第2のアーム4の制輪子取付部4e,4f,ばね受部4gとの間および第1のアーム3に設けたばね受部材12と第2のアーム4のばね受部4cとの間には、制動ばね23,24が調整機構25,26を介してそれぞれ3個ずつ、合計6個設けられている。制動ばね23,24は同一のばね定数を有する圧縮コイルばねからなり、第1、第2のアーム3,4が開く方向、すなわち図2において第1のアーム3を反時計方向に、第2のアーム4を時計方向にそれぞれ付勢している。したがって、後述するメインである第1の電磁石装置40とアシスト用である第2の電磁石装置41に通電しない制動状態において、第1、第2のアーム3,4が制動ばね23,24によって開く方向に揺動すると、制輪子9,17は制動ばね23,24のばね力によってブレーキディスク10,18に両側から圧接されてこれらのブレーキディスクを挟圧し、車輪5を制動する。
【0025】
前記調整機構25は、前記第2のアーム4の制輪子取付部4e,4f,およびばね受部4gにそれぞれ設けたばね受け用座ぐり穴を有するねじ孔28に一端がねじ込まれた3本のボルト29およびナット30を備えている。各ボルト29は、先端部が第1のアーム3のばね受部3cの各水平腕部3c-1,3c-2,3c-3の内側に形成したばね受け用座ぐり穴を有するボルト挿通孔31をそれぞれ遊嵌状態で貫通し、その突出端部に前記ナット30が螺合している。ボルト29を遊嵌状態で貫通させた理由は、アームが揺動したときボルト29とボルト挿通孔31の内面との接触による摩擦を防止するためである。
【0026】
前記調整機構26は、前記第1のアーム3のばね受部材12に設けたばね受け用座ぐり穴を有する3つのねじ孔33にそれぞれ一端がねじ込まれた3本のボルト34およびナット35を備えている。各ボルト34は、先端部が第2のアーム4のばね受部4cの各水平腕部4c-1,4c-2,4c-3に形成したばね受け用座ぐり穴を有するボルト挿通孔36をそれぞれ遊嵌状態で貫通し、その突出端部に前記ナット35が螺合している。
【0027】
各調整機構25,26のナット30,35を回転させてばね受部3c,4cとの間隔を調整し、制輪子9,17の間隔を車輪5の幅より大きく設定しておくと、ディスクブレーキ装置1を台車枠に装着することができる。装着後は、ナット30,35を回転させてばね受部3c,3dとの間隔を再調整することにより、制動解放状態における制輪子9,17の間隔を所定の間隔に調整する。なお、このディスクブレーキ装置1は、第1、第2の電磁石装置40,41に通電しているときに図2に示すように車輪5の制動を解放し、通電していないときに図5に示すように車輪5を制動する無励磁作動型であるが、図5に示す制動状態においてナット30,35を締め込む方向に回転させてばね受部3c,4cに押し付けると、制動ばね23,24が圧縮されて第1、第2のアーム3,4を閉方向に揺動させることにより、制輪子9,17をブレーキディスク10,17から離間させて、第1、第2の電磁石装置40,41に通電しなくても車輪5の制動を解放することができる。
【0028】
前記第1の電磁石装置40は、一方の面に環状溝44が形成された円板状のコア45と、前記環状溝44に巻回された電磁コイル46とからなる電磁石Aと、同じく前記コア45と対向する面に環状溝48が形成された円板状のコア49と、前記環状溝48に巻回された電磁コイル50とからなる電磁石Bとで構成されている。各コア45,49の環状溝44,48が形成され対向、密着する磁極面は、図4に示すようにそれぞれ平坦な環状の外磁極面53a,54aと円形の内磁極面53b,54bを形成している。また、内磁極面53b,54bは、外磁極面53a,54aより若干低く形成されており、これによって外磁極面53a,54aどうしが電磁コイル46,50への通電励磁によって互いに密着しても内磁極面53b,54b間に隙間を確保している。これは、図2および図4に示すように第1の電磁石装置40が通電によって磁気吸着されたときに磁気回路が完全に閉回路になってしまうと、制動ばね23,24の弾性復帰力による第1、第2のアーム3,4の回動が残留磁気力によって遅れるのを防止するためである。そして、電磁石A,Bは、電磁コイル46,50どうしが互いに密接するように重ね合わされて前記第1、第2のアーム3,4の上、下支持部3a,3b、上、下支持部4a,4bおよびコア固定部3dとの間に形成された空間内に、略垂直でかつ前記コア固定部3dと直交するように配置され、支持機構56によってアーム基端側が互いに接触する方向に付勢されて支持され、制輪子側が第1、第2のアーム3,4に対してそれぞれ回動自在に連結されている。
【0029】
電磁石A,Bの支持機構56を図4に基づいてさらに詳述すると、この支持機構56は、第1、第2のアーム3,4の基端部側にボルト61によってそれぞれ固定されたブラケット62と、このブラケットに設けた挿通孔63に揺動可能に挿通され電磁石A,Bのコア45,49のアーム基端側にそれぞれ螺合されたボルト64と、このボルト64に装着され前記コア45,49をそれぞれ互いに密接する方向に付勢する圧縮コイルばね65とを備えている。また、一対のレバー66によって電磁石A,Bの制輪子側を支持している。このレバー66は、一端が第1、第2のアーム3,4にボルト67によってそれぞれ固定され、他端側が前記各コア45,49に設けた取付板68に連結ピン69を介して相対回動自在に連結されている。
【0030】
このような、電磁石A,Bは図2および図4に示す車輪5の制動解放状態において電磁コイル46,50に通電されることによりコア45,49が磁極面と直交する軸線方向の磁気吸引力と圧縮コイルばね65の力によって互いに密接しており、通電を断つと、制動ばね23,24のばね力によって第1、第2のアーム3,4が開方向に揺動することから、電磁石A,Bは、図5および図6に示すようにアーム基端側を回動支点として制輪子側端が離間して開き、三角形のエアギャップが形成される。
【0031】
図2および図5において、前記第2の電磁石装置41は、前記第1の電磁石装置40と直交するように配置されることにより磁極面と平行な方向の磁気吸引力によって前記第1の電磁石装置40をアシストするもので、互いに近接して対向する一対の電磁石C,Dで構成されている。電磁石Cは、一方の面に環状溝73が形成された円板状のコア74と、前記環状溝73に巻回された電磁コイル75とからなり、前記コア固定部3dのコア固定部4dと対向する面に設けた凹陥部76に嵌合固定されている。電磁石Dは、同じく前記コア74と対向する面に環状溝77が形成された円板状のコア78と、前記環状溝77に巻回された電磁コイル79とからなり、前記コア固定部4dのコア固定部3dと対向する面に設けた凹陥部80に嵌合固定されている。
【0032】
このような電磁石C,Dは、図2に示す通電状態(制動解放状態)において、磁極面と平行な方向の磁気吸引力によって吸引されることにより軸線を互いに一致させて対向している。この状態において、コア74とコア78の磁極面は、エアギャップが第1のアーム3側が狭く、第2のアーム4側が広くなるように傾斜する。一方、図5に示す非通電状態(制動状態)においては、第1、第2のアーム3,4が開方向に揺動することから、軸線がdだけずれている。この状態において、コア74とコア78の磁極面は、互いに平行で、均一なエアギャップを形成している。このように非通電状態において、エアギャップが均等になるように設計しておくと、非通電状態から通電状態に切り替えたとき、均等でない場合に比べて磁極面と平行な方向の磁気吸引力を効率よく発生させることができる。
【0033】
このように、第1の電磁石装置40に加えてアシスト用の第2の電磁石装置41を設け、通電によって制動状態から制動解放状態に切り替えるとき、制動ばね23,24を圧縮する方向の力が大きくなるようにすると、制動ばね23,24のばね力に抗して制輪子9,17をブレーキディスク10,18から迅速に離間させることができるので、制輪子9,17に固定しているライニング8,16の偏摩耗、焼き付き、ディスクブレーキ装置1の短寿命化を防止することができる。なお、ディスクブレーキ装置1の駆動力は、第1の電磁石装置40の軸線方向の磁気吸引力と、第2の電磁石装置41の軸線と直交する方向の磁気吸引力の和であり、制動ばね23,24による制動力より大きく設定されている。
【0034】
このように本発明に係るディスクブレーキ1は、第1、第2の電磁石装置40,41に通電しているときに制動ばね23,24のばね力に抗して制輪子9,17をブレーキディスク10,18から離間させて制動を解放し、第1、第2の電磁石装置40,41への通電を停止すると制動ばね23,24のばね力によって第1、第2のアーム3,4が支持軸2を回動中心として互いに開く方向に揺動して制輪子9,17をブレーキディスク10,18に押しつけて車輪5を制動するように構成したので、エアレスで無励磁作動型のディスクブレーキ装置を実現できる。したがって、空気溜め、配管、弁、エアコンプレッサ等を必要とせず、装置を簡素化することができる。
また、第1の電磁石装置40をアーム基端側に配置し、制輪子9,17をアームの揺動端側に配置しているので、第1、第2のアーム3,4の僅かな揺動で制輪子9,17のストロークを大きくすることができる。また、第1の電磁石装置40のエアギャップを小さくすることができるので、大きな磁気吸引力が得られる。さらに、アシスト用として第2の電磁石装置41を備えているので、ディスクブレーキ装置として大きな駆動力を得ることができ、制動ばね23,24のばね力を大きくすることができる。そのため、安全性が高く、鉄道車両の停留用ブレーキとして使用することができる。
【0035】
また、第1の電磁石装置40だけでは、制動状態においてエアギャップが車輪5側が広く、支持軸2側が狭くなるので、磁気回路上の磁気抵抗が大きく、電磁コイル46,50に通電した後の制動解放動作が遅れることも考えられるが、アシスト用の第2の電磁石装置41を備えているので、制動解放動作が遅れることがなく、ライニング8,16の偏摩耗、焼き付き等を防止することができ、より一層安全性を高めることができる。
【0036】
また、第2の電磁石装置41を第1、第2のアーム3,4のコア固定部3d,4d間に配置しているので、第1、第2のアーム3,4間の空間が限られている場合であっても有効に組み込むことができる。
【0037】
さらに、このようなディスクブレーキ装置1においては、第1、第2の電磁石装置40,41に対する励磁方法を変えたりコイルへの電流制御により電磁力を調整したりすることができ、種々のブレーキとして使用することができる。すなわち、停留用、保安用、または非常用ブレーキとして用いる場合、停車時のブレーキ力保持あるいは停留ブレーキ時あるいは保安ブレーキ時に第1、第2の電磁石装置40,41を消磁し、非常ブレーキ時およびブレーキ緩め時(制動解放時)において励磁すればよい。
また、別の励磁態様として第1、第2の電磁石装置40,41の通電を断って制動状態にした後に、各電磁石装置40,41の一方の電磁石に反発する力方向の極性となるように励磁電流を逆向きに流すようにしてもよい。このように逆電流を流して反発力を発生させると、第1、第2のアーム2,4は開く方向の力を受けるため、制動ばね24のばね力(制動力)と第1、第2の電磁石装置40,41の反発力によって制輪子9,17がブレーキディスク18を挟圧し、大きな制動力が得られる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る車両用ディスクブレーキ装置によれば、エアレスで無励磁作動型のディスクブレーキ装置を実現でき、したがって空気溜め、配管、弁、エアコンプレッサ等を必要とせず、装置の簡素化および製造コストの低減を実現することができる。また、一対のアームの僅かな揺動で制輪子のストロークを大きくすることができ、鉄道車両用ディスクブレーキ装置として好適である。また、大きな駆動力を得ることができるので、安全性が高く、停留用ブレーキとして、また非常用ブレーキや保安用ブレーキとして使用することができる。さらに、アシスト用の電磁石装置を備えているので、制動解放動作が遅れることがなく、より一層安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車両用ディスクブレーキ装置の正面図である。
【図2】 制動解放状態の一部を破断して示す平面図である。
【図3】 一部を破断して示す背面図である。
【図4】 制動解放状態の要部の一部を破断して示す拡大図である。
【図5】 制動状態の要部の一部を破断して示す平面図である。
【図6】 制動状態の要部の一部を破断して示す拡大図である。
【符号の説明】
1…ディスクブレーキ装置、2…支持軸、3…第1のアーム、3a,3b…上、下支持部、3c…ばね受部、3d…コア固定部、3e,3f…制輪子取付部、4…第2のアーム、4a,4b…上、下支持部、4c…ばね受部、4d…コア固定部、4e,4f…制輪子取付部、5…車輪、9…制輪子、10…ブレーキディスク、17…制輪子、18…ブレーキディスク、23,24…制動ばね、40…第1の電磁石装置、41…第2の電磁石装置、66…レバー、A,B,C,D…電磁石。
Claims (4)
- 基端が支持軸によってそれぞれ揺動自在に枢支され揺動端が被制動回転体の両側にそれぞれ位置するアームであって、各アームの中間部にアーム長手方向と直交するコア固定部を設けるとともにこのコア固定部の先端側に前記被制動回転体を挟んで当該アームの揺動端とは反対側に位置する制輪子取付部とを設けた一対のアームと、これらのアームの前記制輪子取付部にそれぞれ設けられ前記被制動回転体を両側より挟圧する一対の制輪子と、一方のアームの揺動端部と他方のアームの制輪子取付部間および一方のアームの制輪子取付部と他方のアームの揺動端部間にそれぞれ設けられ前記制輪子が前記被制動回転体を挟圧する方向に付勢する複数個の制動ばねと、前記一対のアームの基端部近傍に配設され通電により前記制動ばねに抗して前記アームを前記制輪子が前記被制動回転体から離間する方向に揺動させる電磁石装置とを備えたことを特徴とする車両用ディスクブレーキ装置。
- 請求項1記載の車両用ディスクブレーキ装置において、
電磁石装置は、互いに対向する一対の電磁石からなり、これらの電磁石はアーム基端側が互いに接触する方向に付勢されて支持され、制輪子側が各アームにレバーで連結されていることを特徴とする車両用ディスクブレーキ装置。 - 請求項1または2記載の車両用ディスクブレーキ装置において、
一対のアームのコア固定部を互いに近接させて対向させ、これらのコア固定部間に電磁石装置とともに通電励磁されることにより前記アームを制動ばねに抗して揺動させ制輪子を被制動回転体から離間させるアシスト用電磁石装置を設けたことを特徴とする車両用ディスクブレーキ装置。 - 請求項3記載の車両用ディスクブレーキ装置において、
2つの電磁石装置への通電を断って制動状態にした後、各電磁石装置の一方の電磁石に反発する力方向の極性となるように励磁電流を逆向きに流すことにより、各電磁石装置の反発力と制動ばねのばね力で被制動回転体を制動することを特徴とする車両用ディスクブレーキ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05413299A JP4088383B2 (ja) | 1999-03-02 | 1999-03-02 | 車両用ディスクブレーキ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05413299A JP4088383B2 (ja) | 1999-03-02 | 1999-03-02 | 車両用ディスクブレーキ装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000249177A JP2000249177A (ja) | 2000-09-12 |
JP4088383B2 true JP4088383B2 (ja) | 2008-05-21 |
Family
ID=12962071
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP05413299A Expired - Fee Related JP4088383B2 (ja) | 1999-03-02 | 1999-03-02 | 車両用ディスクブレーキ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4088383B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4926677B2 (ja) * | 2006-12-04 | 2012-05-09 | ナブテスコ株式会社 | 鉄道車両用ブレーキ装置 |
JP5692412B2 (ja) * | 2011-12-01 | 2015-04-01 | 株式会社島津製作所 | X線管移動装置 |
-
1999
- 1999-03-02 JP JP05413299A patent/JP4088383B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000249177A (ja) | 2000-09-12 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2862711B2 (ja) | エレベーター用の安全ディスクブレーキ | |
US5791442A (en) | Magnetic latch mechanism and method particularly for linear and rotatable brakes | |
US4181201A (en) | Spring actuated, solenoid released brake mechanism | |
JPH04226291A (ja) | エレベータ用ブレーキ装置 | |
US5443132A (en) | Magnetic latch mechanism and method particularly for brakes | |
JP4088383B2 (ja) | 車両用ディスクブレーキ装置 | |
JP3958619B2 (ja) | 電磁ドラムブレーキ | |
JPH11513468A (ja) | 車両用ディスクブレーキ装置 | |
KR20010049563A (ko) | 트럭용 에어 브레이크 | |
JP7444755B2 (ja) | ブレーキキャリパ装置 | |
WO1998053217A1 (en) | Motor brake | |
US6206149B1 (en) | Caliper disk brake for steel mill cranes | |
CN106763323B (zh) | 多回路三角制动器构造型式的以电磁方式松开的弹簧压力制动器 | |
CN101815666B (zh) | 电梯用曳引机和制动装置 | |
JP5555151B2 (ja) | 無励磁作動ブレーキ用手動解放装置 | |
CN210193279U (zh) | 一种重型行车断电保护装置及重型行车 | |
CN208916707U (zh) | 一种制动器 | |
JPH025132Y2 (ja) | ||
JP2005113965A (ja) | 電磁制動装置 | |
JP4009286B2 (ja) | 巻上機用の制動装置 | |
CN100416130C (zh) | 内胀式电磁制动器 | |
US3665232A (en) | Electrohydraulic caliper disc brake | |
JP2024016823A (ja) | ブレーキキャリパ装置 | |
KR200460062Y1 (ko) | 디스크 브레이크 시스템의 레버 작동장치 | |
CN208561541U (zh) | 一种制动器 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060302 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20060302 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20060302 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080215 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080219 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080225 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110228 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |