JP4088003B2 - アダプティブアレーアンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アレーアンテナの高速なアダプティブ制御に関し、さらに特定的には、いわゆる遺伝的アルゴリズムを用いたアレーアンテナの高速なアダプティブ制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
アダプティブアレーアンテナとは、複数のアンテナ素子を備え、これらからの信号を適切な重み付けの後で合成することによって、不要な信号を除去するアンテナをいう。これら複数のアンテナ素子からの出力に振幅・位相シフトを加えて合成すると、アンテナの指向性は変化することになる。
【0003】
図22は、従来におけるアダプティブアレーアンテナの構成を示したブロック図である。図22において、本アダプティブアレーアンテナは、複数のアンテナによって構成されたアレーアンテナからの信号に対してそれぞれ所定の重み付けを行う重み付け部4と、重み付け部4における重み付け値を制御する重み付け制御部5と、重み付け制御部5から入力された信号を加算する加算器6とを備える。
【0004】
アレーアンテナにおいて受信された信号は、重み付け部4および重み付け制御部5へ入力される。重み付け制御部5は、所望波のみを最も感度よく受信できるようにアンテナの指向性を変化させるための重み付け値をそれぞれ算出する。算出された重み付け値は、重み付け部4へ入力される。
【0005】
重み付け部4は、当該重み付け値を用いて、入力された信号それぞれの重み付けを変化させる。重み付けを変化させられた信号は、加算器6によって全て加算され、出力される。
【0006】
このようなアダプティブアレーアンテナは、重み付け制御部5において、所望波のみを最も感度よく受信できるように重み付け値を算出するアルゴリズムが重要な要素である。その算出アルゴリズムの典型例としては、従来より使われているLMS(Least Mean Squares)アルゴリズムおよびRLS(Recursive Least Squares)アルゴリズムが挙げられる。これらのアルゴリズムについて、以下に説明する。
【0007】
LMSアルゴリズムは、入力(受信)ベクトルと誤差信号のサンプル値とに基づく勾配ベクトルの瞬間推定値を利用する。本アルゴリズムにおいて、重み付け値を1回更新するのに必要な演算は、次式(1)のように示される。ただし、wはウェイトベクトルを、uは受信ベクトルを表すものとする。uはアンテナ素子数分のデータの集まりである。また、dは教師信号(トレーニング信号)を、eは誤差信号を、*は複素共役を、Hは複素共役転置を、nは更新番号をそれぞれ表すものとする。
【数1】
また、図23は、上式(1)の演算を実現する構成を示したブロック図である。
【0008】
RLSアルゴリズムは、LMSアルゴリズムとは異なり、相関ベクトルの逆行列を求める。本アルゴリズムにおいて、重み付け値を1回更新するのに必要な演算は、次式(2)のように示される。ただし、kおよびPはベクトルを表すものとする。
【数2】
また、図24は、上式(2)の演算を実現する構成を示したブロック図である。
【0009】
これら2つのアルゴリズムを比較すると、LMSアルゴリズムでは、演算量は少ないが精度は低い。逆に、RLSアルゴリズムでは、精度は高いが演算量は莫大な量になる。これらの演算量を比較するため、アンテナの素子数を8として、ウェイト更新の処理に必要な演算量を以下に示す。ただし、16ビットの加減算の演算量は1とする。したがって、16ビットの乗算の演算量は16、除算の演算量は32(16×2=32)、複素数の加減算の演算量は2、複素数の乗算の演算量は66(16+16+1+16+16+1=66)、複素数の除算の演算量は132(66×2=132)となる。
【0010】
まず、LMSアルゴリズムの演算量を考える。前述の式(1)において、e(n)の演算量は546(2+(66+2)×8=546)、w(n)の演算量は800((2+66+16+16)×8=800)となり、合計の演算量は、1346(546+800=1346)となる。
【0011】
次に、RLSアルゴリズムの演算量を考える。前述の式(2)において、k(n)の演算量は、5953(8×8×(66+2)+8×(66+2)+1+8×132=5953)、P(n)の演算量は4352(8×8×66+8×8×2=4352)、e(n)の演算量は546(2+(66+2)×8=546)、w(n)の演算量は544(8×(66+2)=544)となり、合計の演算量は11395(546+5953+4352+544=11395)となる。
【0012】
したがって、LMSアルゴリズムの演算量は、RLSアルゴリズムの演算量の12%にも満たない。この演算量は、特に高速な通信を行う際に重要な要素である。
【0013】
例えば、2.4GHzの周波数帯を用いる無線LANにおいて、アダプティブアレーアンテナを用いる場合について考える。このような無線LANにおいて、一般的なシンボルレートは10MHzである。また、アダプティブアレーアンテナにおいて、重み付けを変更するために要求される応答速度は、シンボルレートの10倍程度である。したがって、本無線LANに用いられるアダプティブアレーアンテナは、100MHz程度の応答速度が要求される。しかし、現在の実用的なハードウェアの性能を考慮すれば、RLSアルゴリズムによってこのように高速な応答速度を実現することは極めて困難である。したがって、近時、アダプティブアレーアンテナには、LMSアルゴリズムが広く用いられている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、LMSアルゴリズムは、勾配ベクトルの瞬間推定値を用いるため、演算量は少ないが、雑音によって誤った方向に修正されることもあるため、解の精度が低い。さらに、RLSアルゴリズムに比べて、LMSアルゴリズムは、解への収束速度が遅い。したがって、前述の無線LANのように、高速な応答が要求される場合には、解へ収束し終わらないうちに重み付け値を算出しなければならなくなる。その結果、解の精度は低くなってしまう。
【0015】
図25は、LMSアルゴリズムを用いたアダプティブアレーアンテナにおける、解の収束速度を表したグラフである。図25において、点線は希望波を表し、一点鎖線は希望波に対する雑音レベルを表している。また、それ以外の3つの折れ線は、妨害波を表している。図25を参照すると、全ての妨害波のレベルが希望波に対する雑音レベル以下になるのは、繰り返し回数が75回付近以降であって、解への収束速度が遅いことがわかる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、いわゆる遺伝的アルゴリズムを用いることによって、演算量が少なく、また、LMSアルゴリズムよりも解の収束速度が速い結果、短い時間内に精度の高いアダプティブ制御を行うことができるアダプティブアレーアンテナを提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、受信信号に対して重み付けを行って指向性を変化させるアダプティブアレーアンテナであって、信号を受信する複数のアレーアンテナ素子と、複数のアレーアンテナ素子からの入力信号に重み付けを行うための複数の素子ウェイト値を含むウェイト情報を算出する重み付け制御部と、重み付け制御部からウェイト情報が入力されて、複数のアレーアンテナ素子からの信号に対してそれぞれ重み付けを行う重み付け部と、重み付け部からの信号を全て合成する加算器とを備え、重み付け制御部は、複数のアレーアンテナ素子からの信号をサンプリングしたサンプルデータを記憶するバッファと、ウェイト情報の候補となる複数のウェイト情報について、サンプルデータと当該ウェイト情報とを前記アレーアンテナ素子に対応する要素ごとに乗算して合成するアレー合成演算をそれぞれ行い、それぞれの演算結果から当該ウェイト情報に対する評価値をそれぞれ算出する評価部と、評価値に対応するウェイト情報から2つ以上選別する選別部と、選別部から送られた2つ以上のウェイト情報を、非線形操作により更新して出力する非線形処理部と、非線形処理部が更新したウェイト情報を記憶して、評価部へ入力する情報記憶部と、2つ以上選別されたウェイト情報に対応する評価値から所望の評価値に対応するウェイト情報を出力する決定部とを有し、ウェイト情報の候補となる複数のウェイト情報は、評価部が出力した対応する評価値に基づいて、ウェイト情報が選別され、さらに非線形処理部により非線形操作が行われたのち、再評価されることを所定の回数だけ繰り返して所定の初期ウェイト情報から更新されていき、所定の回数が終了すると、決定部によって所望の評価値に対応するウェイト情報のみが出力されることを特徴とする。
【0018】
第1の発明により、非線形操作で素子ウェイト値を更新するため、逆行列演算等に比べて演算量を削減することができる。また、交換によって現探索点の近傍を探索することができ、変更によって現探索点より多少離れた地点を探索し、局所解に陥ることを防ぐ。そして、選別によって探索点を絞り込み、これらの操作を繰り返すことによって最適解への精度を高めていくことができる。
第2の発明は、非線形処理部は、(1)2つ以上選別されたウェイト情報に含まれる各素子ウェイト値の1つ以上を相互に交換して新たなウェイト情報を生成する交換部、(2)2つ以上選別された複数のウェイト情報に含まれる素子ウェイト値の1つ以上を乱数によって変更し、新たなウェイト情報を生成する変更部、(3)2つ以上選別されたウェイト情報をそのまま複製して新たなウェイト情報を生成する複製部、の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0019】
第3の発明は、情報記憶部は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、複数の異なる指向性を持つように予め定められた初期ウェイト情報を有し、当該初期ウェイト情報を受信信号が入力される前に評価部へ入力することを特徴とする。
【0020】
第3の発明により、ロードされたウェイト情報が最適解に近い状態から探索を進めることができ、探索の繰り返し回数を減らし演算量を削減することができる。
【0021】
第4の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、情報記憶部は、過去に受信信号を送信した複数の送信局毎に対応するウェイト情報を保存し、新たに送信局が変更される毎に保存したウェイト情報をロードして新たなウェイト情報とすることを特徴とする。
【0022】
第4の発明により、信号の送信元が変更されても前回の最適解近傍から探索を行うことができ、探索の繰り返し回数を減らし演算量を削減することができる。
【0032】
第5の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の原点からの距離と、所定値との二乗誤差を求め、当該二乗誤差の値が小さいほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする。
【0033】
第5の発明により、半径が特定値であって原点を中心とした円周上に信号点を集め、妨害波を分離する。ゆえに、所望信号のみを取り出す素子ウェイト値が求まる。
【0034】
第6の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、アレー合成演算の結果から算出される信号点座標と、送信時における信号点配置座標との座標間距離を求め、当該距離が短いほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする。
【0035】
第6の発明により、信号点配置座標に信号点を集め、妨害波を分離する。ゆえに、所望信号のみを周波数同期を保って取り出す素子ウェイト値が求まる。
【0036】
第7の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、予めトレーニングのための信号点座標を有し、アレー合成演算の結果から算出される信号点座標と、トレーニングのための信号点座標との座標間距離を求め、当該距離が短いほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする。
【0037】
第7の発明により、トレーニング時はトレーニング用の信号点座標のみに信号点を集め、精度の高い妨害波の分離を行う。ゆえに、所望信号のみを取り出す精度の高い素子ウェイト値が求まる。
【0038】
第8の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の実数成分および虚数成分をそれぞれ正とした信号点座標と、送信時において第1象現に存在する信号点配置座標との座標間距離を求め、当該距離が短いほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする。
【0039】
第8の発明により、第1象現の信号点配置座標に正に変換した信号点を集め、妨害波を分離する。ゆえに、評価を簡略化して演算量を削減し、所望信号のみを周波数同期を保って取り出す素子ウェイト値が求まる。
【0040】
第9の発明は、第13の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、送信時において第1象現に存在する信号点配置座標が複数存在する場合には、アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の実数成分の絶対値と、複数の信号点配置座標の実数成分との2乗誤差をそれぞれ求めてそれら全てを乗算し、アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の虚数成分の絶対値と、複数の信号点配置座標の虚数成分との2乗誤差をそれぞれ求めてそれら全てを乗算し、これらの乗算された値同士を加算した値が小さいほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする。
【0041】
第9の発明により、第1象現にある複数の信号点配置座標のどれか一つに信号点を集め、妨害波を分離する。ゆえに、信号点配置座標が複数あっても評価を行え、所望信号のみを周波数同期を保って取り出す素子ウェイト値が求まる。
【0042】
第10の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、サンプル時刻が互いに異なる複数のサンプルデータ毎にアレー合成演算を行い、算出された複数の評価値を合計した値を評価値として算出することを特徴とする。
【0043】
第10の発明により、複数の信号点の評価合計から時間平均された評価値を求めることになり、雑音等による影響を低減し精度の高い評価ができる。
【0044】
第11の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、決定部は、選別された複数のウェイト情報に対応する評価値の中で2番目に高い評価値に対応するウェイト情報を算出することを特徴とする。
【0045】
第11の発明により、一番高い評価値を避けることで雑音によって評価を高められたウェイト情報を選択する危険を低減することができる。
【0053】
第12の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、評価部は、ウェイト情報の候補となる複数のウェイト情報に対応する評価値をそれぞれ並列演算して算出することを特徴とする。第12の発明により、評価部の演算を高速にすることができる。
【0054】
第13の発明は、第1の発明のアダプティブアレーアンテナであって、ウェイト情報は、アレーアンテナ素子に対応する複数の素子ウェイト値に加えて、複数の当該素子ウェイト値に対して位相回転に関する拘束条件を付す回転子を素子ウェイト値としてさらに含み、評価部が行うアレー合成演算は、サンプルデータと当該ウェイト情報とをアレーアンテナ素子に対応する要素ごとに乗算し、乗算された値のそれぞれに回転子を乗算して合成することを特徴とする。
【0055】
第13の発明により、復調する場合に位相回転の調整を行う必要がなくなる。また、拘束条件を付された素子ウェイト値を用いることによって、条件が付されない場合よりも精度の高い重み付けを行うことができる。
【0056】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1を参照しつつ、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナについて説明する。なお、本アダプティブアレーアンテナが受信する信号の変復調方式は、4相または8相の位相変調方式であるものとする。4相位相変調方式が用いられる場合、送信時における信号点配置座標は、図2のように図示することができる。8相位相変調方式が用いられる場合、送信時における信号点配置座標は、図3のように図示することができる。図2および図3において、黒点は、信号点を表し、横軸は実数成分を、縦軸は虚数成分をそれぞれ表す。
【0057】
図1において、本アダプティブアレーアンテナは、信号を受信するためのアレーアンテナ部10と、アレーアンテナ部10からの8つの信号に対してそれぞれ所定の重み付けを行う重み付け部4と、重み付け部4における各重み付け値を与える重み付け制御部5と、重み付け制御部5からの8つの信号を加算する加算器6とを備える。
【0058】
アレーアンテナ部10は、8個のアンテナ素子11〜18と、アンテナ素子11〜18に対応して設けられた8個のチューナ21〜28と、チューナ21〜28に対応して設けられた8個のA/D変換器31〜38とを含む。
【0059】
このように、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、8個のアンテナ素子11〜18からの信号を重み付け処理する構成である。しかし、アンテナ素子の個数は、8個に限られない。アンテナ素子の個数は、複数であればいくつであってもよい。また、アンテナ素子の配列形状は、どのようなものであってもよい。
【0060】
次に、アダプティブアレーアンテナの動作について説明する。送信されてきた信号は、8個のアンテナ素子11〜18によって受信される。受信されたそれぞれの信号は、対応する8個のチューナ21〜28によって高周波信号からベースバンド信号へダウンコンバートされる。ダウンコンバートされたそれぞれの信号は、対応する8個のA/D変換器31〜38によって、アナログ信号からディジタル信号へと変換され、サンプルデータとして出力される。
【0061】
当該サンプルデータは、重み付け部4および重み付け制御部5へ入力される。重み付け制御部5は、サンプルデータが入力されて、所望波のみを最も感度よく受信できるようにアンテナの指向性を変化させるための素子ウェイト値をそれぞれ算出する。算出された8つの素子ウェイト値は、1つのウェイト情報として1組にされて、重み付け部4へ入力される。このように、ウェイト情報とは、複数の素子ウェイト値を含むデータセットである。
【0062】
重み付け部4は、当該ウェイト情報に含まれる8つの素子ウェイト値を用いて、入力されたサンプルデータそれぞれの重み付けを変化させる。重み付けを変化させられた信号は、加算器6によって全て加算され、出力される。
【0063】
図4を参照しつつ、重み付け部4および加算器6の動作を詳細に説明する。重み付け部4は、8つの乗算部401〜408と、8つの素子ウェイト部411〜418とを含む。8つの素子ウェイト部411〜418は、ウェイト情報が入力されて、各サンプルデータに対応する素子ウェイト値を出力する。8つの乗算部401〜408は、対応する素子ウェイト部から入力された素子ウェイト値と、対応するサンプルデータとを乗算する。加算器6は、乗算された8つの値を、全て加算する。加算された値は、1サンプル分の演算結果として出力される。このような演算をアレー合成演算と呼ぶ。
【0064】
本実施形態において、ウェイト情報は、16個が設けられる。1つのウェイト情報は、8つの素子ウェイト値を含む。このようなウェイト情報は、W[k][m]と表すことができる。kは、ウェイト情報番号を表し、16以下の自然数である。また、mは、素子番号を表し、8以下の自然数である。
【0065】
図5は、重み付け制御部5の詳細な構成を示したブロック図である。重み付け制御部5は、8つの信号が入力されるバッファ107と、バッファ107からの信号が入力されて所望の信号を受信するために最適な重み付け値を算出する評価部101と、評価の高い重み付け候補値を選び出す選別部102と、選別部102から入力された値を複製する複製部103と、選別部102から入力された値を部分的に交換する交換部104と、選別部102から入力された値を部分的に変更する変更部105と、複製部103と交換部104と変更部105とによって算出された値を記憶する情報記憶部100と、選別部102から入力された値から重み付け値を決定する決定部106とを備える。
【0066】
次に、図6を参照しつつ、重み付け制御部5の動作について説明する。ステップS100において、情報記憶部100は、受信信号が検出されたことを示すロード信号が入力されるまで、待機状態を保つ。ロード信号は、図示されないタイミング検出部によって、信号の受信が検知された場合に出力される。
【0067】
次に、受信信号が検出されたことを示すロード信号が入力されると、情報記憶部100は、ウェイト情報に初期値を入力する(ステップS200)。初期値は0でもよいが、16方向の異なる指向性を持つように予め算出された図7に示されるようなウェイト情報であることが好ましい。このようなウェイト情報によって、最適解に近い状態から探索を進めることができるので、探索の繰り返し回数を減らして演算量を削減することができる。
【0068】
また、送信端末が複数ある場合には、情報記憶部100は、送信を行おうとする送信端末の端末番号がロード信号として入力されてもよい(ステップS100)。このような構成において、図示されないタイミング検出部は、所定のタイミングによって管理されている複数の送信端末のうち、送信を行おうとする送信端末を検知する。タイミング検出部は、検知した端末番号をロード信号として出力する。
【0069】
情報記憶部100は、ロード信号が入力されると、ウェイト情報に初期値を入力する(ステップS200)。ここで入力される初期値は、端末番号毎に記憶されている前回通信時のウェイト情報であることが好ましい。このようなウェイト情報によれば、信号の送信元が変更された場合においても前回の最適解近傍から探索を行うことができる。したがって、探索の繰り返し回数を減らして演算量を削減することができる。
【0070】
ステップS300において、バッファ107は、各アンテナ素子から受信した8つの信号に対して、それぞれシンボル速度の8倍の速度でサンプリングし、4シンボル分のサンプルデータを取り込む。すなわち、バッファ107は、(32×8)個のサンプルデータを取り込む。取り込まれたサンプルデータは、S[n][m]と表すことができる。nはサンプル番号を表し、32以下の自然数である。mは素子番号を表し、8以下の自然数である。
【0071】
次に、ステップS400において、決定部106は、ステップS500以下の各処理が何回行われたかをカウントするための変数Countに0を代入し、サブルーチンステップS500へ進む。
【0072】
図8は、サブルーチンステップS500(評価処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。まず、図8を参照しつつ、4相位相変調方式が用いられる場合における評価部101の動作について説明する。前述のように、送信時における信号点配置座標は、図2のように図示される。
【0073】
ステップS510において、評価部101は、バッファ107および情報記憶部100からのデータを入力されて、次式(3)のような演算を行う。
【数3】
上式(3)のように、評価部101は、まず、サンプルデータS[n][m]に対して、情報記憶部100に記憶されているウェイト情報W[k][m]を乗算する。この乗算は、図4に示されるような前述のアレー合成演算である。
【0074】
次に、ステップS520において、評価部101は、上記アレー合成演算における演算結果の絶対値を生成する。この絶対値は、信号点の原点からの距離に相当する。評価部101は、生成された絶対値から、一定振幅に相当する1との二乗誤差(差の二乗)を求める。評価部101は、その総和を評価値として、評価処理を終了する。当該評価値は、P[k]と表すことができる。kは、前述のように、ウェイト情報番号を表す。
【0075】
このように、評価部101は、4相位相変調方式による変調信号の振幅値が一定であることを利用して、サンプルデータの振幅値が一定の振幅値からどの程度ずれているかを、評価値として算出する。算出された評価値は、16個のウェイト情報に対応して、それぞれ算出される。したがって、評価部101は、16個の評価値を得ることができる。
【0076】
次に、図8を参照しつつ、8相位相変調方式が用いられる場合における評価部101の動作について説明する。前述のように、送信時における信号点配置座標は、図3のように図示される。
【0077】
ステップS510において、評価部101は、バッファ107および情報記憶部100からのデータが入力されて、次式(4)のような演算を行う。なお、式中のRealは実数成分の抽出を意味し、Imagは虚数成分の抽出を意味するものとする。
【数4】
【0078】
上式(4)のように、評価部101は、S[n][m]および情報記憶部100に記憶されているウェイト情報から、図4に示されるような前述のアレー合成演算を行い、演算値を生成する。
【0079】
ステップS520において、評価部101は、生成された演算値における実数部および虚数部の絶対値が、8相位相変調の第1象現における2点の信号点配置座標cos(π/8)+i×sin(π/8)およびsin(π/8)+i×cos(π/8)の実数部および虚数部に対して、どのくらいの誤差を生じているかを、それぞれ算出する。
【0080】
すなわち、上式(4)におけるI1[k][n]は、アレー合成演算の演算結果における実数部の絶対値と、信号点配置座標cos(π/8)+i×sin(π/8)における実数部との2乗誤差を表している。また、Q2[k][n]は、前述の演算結果における虚数部の絶対値と同信号点の虚数部との2乗誤差を表している。
【0081】
同様に、I2[k][n]およびQ1[k][n]は、アレー合成演算の演算結果における実数部および虚数部の絶対値と、信号点配置座標sin(π/8)+i×cos(π/8)の実数部および虚数部との2乗誤差をそれぞれ表している。
【0082】
P[k]は、上述のように算出された2乗誤差を実数部および虚数部のそれぞれにおいて乗算し、その結果を加算した評価値である。以上のような評価部101の動作は、16個のウェイト情報に対してそれぞれ行われ、評価処理を終了する。
【0083】
ところで、上述したように、8相位相変調方式が用いられる場合において、評価部101の動作は、4相位相変調方式が用いられる場合の動作とは異なる。しかし、これらの場合において、評価部101の動作は、同じであってもよい。すなわち、評価部101は、8相位相変調方式による変調信号の振幅が、一定の振幅であることを利用して、サンプルデータの振幅値が一定の振幅値からどのくらいずれているかを、評価値として算出してもよい。
【0084】
また、4相位相変調方式が用いられる場合において、評価部101の動作は、8相位相変調方式が用いられる場合の動作とは異なる。しかし、これらの場合において、評価部101の動作は、同じであってもよい。ただし、図2に示されるように、4相位相変調の第1象現における信号点は、1点しかない。その信号点配置座標は、sin(π/4)+i×cos(π/4)である。
【0085】
以上のような評価部101における上式(4)の演算は、kの値を1から16まで順次変化させて1つずつ行う必要はない。なぜなら、それらは互いに無関係だからである。したがって、P[1]からP[16]までの演算は、並列に演算することができる。上述のように、従来のLMSないしRLSアルゴリズムを用いる場合では、このような並列演算を行うことは基本的にできない。
【0086】
図9は、評価部101における上述のような並列演算を可能にする構成を示したブロック図である。図9を参照すると、評価部101へ入力される2つの信号は、評価部101に含まれるP[1]からP[16]までの演算ブロックへそれぞれ入力される。各演算ブロックは、入力されたデータを用いて対応するP[1]からP[16]までの評価値のいずれかを算出し、出力する。出力された信号は、全てがまとめられて評価部101から出力される。このような構成によれば、評価部101は、順次に演算する場合と比較して、16倍の速度で演算することができる。
【0087】
以上のようにして評価処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS600の処理を開始する。
【0088】
図10は、サブルーチンステップS600(選別処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図10を参照すると、ステップS610において、選別部102は、算出された評価値が小さいもの(評価が高いもの)から順番に並ぶように、当該評価値に対応する16個のウェイト情報をソートする。
【0089】
次に、ステップS620において、選別部102は、ソートされた16個のウェイト情報のうち、評価値が小さい(評価が高い)上位4個のウェイト情報を選択する。選別部102は、選択された4個のウェイト情報を一時的に保存し、選択処理を終了する。もちろん、選択されるウェイト情報は、4個に限られないが、本実施形態においては、4個とする。
【0090】
以上のようにして選別処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS700の処理を開始する。
【0091】
図11は、サブルーチンステップS700(複製処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図11を参照すると、ステップS710において、複製部103は、選別部102によって選択された4個のウェイト情報から任意のウェイト情報を選択する。次に、複製部103は、選択されたウェイト情報をコピーして、新しいウェイト情報を生成し、当該ウェイト情報を情報記憶部100へ記憶させる(ステップS720)。
【0092】
ステップS730において、複製部103は、ウェイト情報が必要数(ここでは4個とする)に達したかを判断する。生成されたウェイト情報が4個に達しない場合、処理は、ステップS710へ戻る。生成されたウェイト情報が4個に達した場合、選別処理は終了する。
【0093】
以上のようにして選別処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS800の処理を開始する。
【0094】
図12は、サブルーチンステップS800(交換処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図12を参照すると、ステップS810において、交換部104は、選別部102によって選択された4個のウェイト情報のうち、その評価値が1位のウェイト情報と3位のウェイト情報とを、2位のウェイト情報と4位のウェイト情報とを、3位のウェイト情報と2位のウェイト情報とを、4位のウェイト情報と1位のウェイト情報とをそれぞれ組み合わせる。さらに、交換部104は、組み合わせられた4組のウェイト情報から、1組を選択する。
【0095】
次に、交換部104は、1つまたは複数の素子番号mをランダムに選ぶ(ステップS820)。交換部104は、ランダムに選ばれた素子番号の素子ウェイト値を、組み合わせられたウェイト情報同士で交換して、新しい1組のウェイト情報をそれぞれ生成する。交換部104は、新しく生成された1組2個のウェイト情報を、情報記憶部100に記憶させる(ステップS830)。
【0096】
なお、ステップS830において交換される素子ウェイト値は、その実数成分と虚数成分とが同時に交換されてもよいし、どちらか一方の成分同士が交換されてもよい。どちらか一方の成分同士が交換される場合には、交換部104が動作する毎に交互に実数成分と虚数成分とが選ばれて交換されることが好ましい。このように構成すれば、各成分毎に解の収束速度を速めることができる。
【0097】
ステップS840において、交換部104は、ウェイト情報が必要数(ここでは4組8個とする)に達したかを判断する。生成されたウェイト情報が4組8個に達しない場合、当該処理はステップS810へ戻る。生成されたウェイト情報が4組8個に達した場合、交換処理は終了する。
【0098】
以上のようにして交換処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS900の処理を開始する。
【0099】
図13は、サブルーチンステップS900(変更処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図13を参照すると、ステップS910において、変更部105は、乱数範囲を所定の範囲、ここでは範囲A(−0.1〜0.1、−0.1i〜0.1i)に設定する。
【0100】
ステップS920において、変更部105は、最適解近傍に解が収束しつつある場合であるか否かを判断する。具体的には、変更部105は、選別部102によって選択された4個のウェイト情報の中での最高評価値を求め、最高評価値が4以上のときには、未だ最適解近傍に解が収束しつつある場合ではないと判断して、ステップS940へジャンプする。また、変更部105は、最高評価値が4未満のときには、最適解近傍に解が収束しつつある場合であると判断して、ステップS930へ進む。
【0101】
ステップS930において、変更部105は、乱数範囲を狭く設定する。具体的には、変更部105は、乱数範囲を範囲B(−0.05〜0.05、−0.05i〜0.05i)に設定する。
【0102】
ステップS940において、変更部105は、選別部102によって選択された4個のウェイト情報から任意のウェイト情報を選択する。次に、変更部105は、1つまたは複数の素子番号mをランダムに求める(ステップS950)。
【0103】
ステップS960において、変更部105は、設定された乱数範囲内で、変更値をランダムに発生させる。また、変更部105は、当該変更値の実数成分または虚数成分のいずれか一方を0にしてもよい。いずれか一方を0にする場合、変更部105は、動作毎に実数成分と虚数成分とを交互に選んで0にすることが好ましい。
【0104】
ステップS970において、変更部105は、上記のように求められた素子番号mに対応する素子ウェイト値に対して、ランダムに発生させられた変更値を加算し、加算された値を新たな素子ウェイト値とする。変更部105は、このようにして生成された新しい4個のウェイト情報を情報記憶部100に記憶させる。
【0105】
ステップS980において、変更部105は、ウェイト情報が必要数(ここでは4個とする)に達したかを判断する。生成されたウェイト情報が4個に達しない場合、処理はステップS940へ戻る。生成されたウェイト情報が4個に達した場合、変更処理は終了する。
【0106】
また、以上のような動作に替えて、変更部105は、次のような動作を行ってもよい。ステップS920において、変更部105は、最適解近傍に解が収束しつつある場合であるか否かを判断する際に、情報記憶部100、評価部101、選別部102、複製部103、交換部104および変更部105における各動作の通算繰り返し回数を用いる。具体的には、変更部105は、各動作の通算繰り返し回数が32回以上の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合であると判断し、32回未満の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合でないと判断する。このような動作において、変更部105は、最高評価値を算出する必要がない。したがって、変更部105は簡易な構成になる。
【0107】
以上のようにして評価処理が終了した後、重み付け制御部5は、ステップS600の処理を開始する。
【0108】
ここで、図6において、サブルーチンステップS700〜S900は、順次に実行されるように説明した。しかし、これらの処理は、同時に並列処理されてもよい。図5に示すように、複製部103と、交換部104と、変更部105とは、並列処理が可能なように構成されている。したがって、これらが並列処理するように動作すれば、順次に処理するように動作する場合よりも高速に演算することができる。
【0109】
ステップS1000において、決定部106は、前述の変数Countを1だけインクリメントする。さらに、ステップS1100において、決定部106は、変数Countが4に達したかを判断する。4に達していなければ、処理はステップS500へ戻る。4に達していれば、処理はステップS1200へ進む。
【0110】
ステップS1200において、決定部106は、前述のように選別部102に一時的に保存されている4つのウェイト情報から評価値が2位のウェイト情報を取り出す。取り出されたウェイト情報は、重み付け用ウェイト情報として、上述の重み付け部4へ入力される。
【0111】
ここで、評価値が2位のウェイト情報が取り出される理由は、1位のウェイト情報の評価値が雑音によって誤って高められた可能性があり、そのような可能性が大きい場合には、2位の評価値のほうが1位の評価値よりも、正確であると考えられるからである。
【0112】
しかし、1位のウェイト情報の評価値が雑音によって誤って高められた可能性が小さい場合には、決定部106は、評価値が1位のウェイト情報を重み付け用ウェイト情報として出力するのが好ましい。
【0113】
ステップS1300において、バッファ107は、受信信号の有無を検知する。受信信号があれば、処理はステップS300へ戻る。受信信号がなければ、処理は終了する。
【0114】
(第2の実施形態)
本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナと同様に、図1に示すように構成される。ただし、アレーアンテナ部10における8個のアンテナ素子11〜18は、図14に示されるように、等間隔で直線状に配列されている。したがって、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナと共通の動作を行う場合の説明を省略し、相違する動作を行う場合を中心に説明する。
【0115】
第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、ウェイト情報は、16個が設けられる。1つのウェイト情報は、4つの素子ウェイト値を含む。このようなウェイト情報は、W[k][m]と表すことができる。kはウェイト情報番号を表し、16以下の自然数である。また、mは素子番号を表し、4以下の自然数である。
【0116】
ただし、アンテナ素子は8つあるので、評価の際の演算時および重み付け時には、1つのウェイト情報に含まれる4つの素子ウェイト値の他に、さらに4つの素子ウェイト値が必要である。そこで、図15に示すように、演算時および重み付け時には、素子番号が1〜4の素子ウェイト値の共役複素数値を算出して、これらを素子番号が8〜5の素子ウェイト値とする。
【0117】
したがって、1つのウェイト情報は、4つの素子ウェイト値のみを含むが、演算時および重み付け時には、1つのウェイト情報は、8つの素子ウェイト値を含むものとして取り扱われる。よって、評価の際の演算時および重み付け時には、ウェイト情報W[k][m]におけるmは、8以下の自然数であるものとして取り扱う。
【0118】
このように、素子番号が1〜4の素子ウェイト値の共役複素数値を、素子番号が8〜5の素子ウェイト値とすることができるのは、図14に示されるように、アンテナ素子が互いに対称な位置にあるからである。
【0119】
例えば、アンテナ素子11とアンテナ素子18のように、原点を結んで対称な位置に設けられたアンテナ素子同士は、原点位置からみると等距離の位置にある。これらのアンテナ素子において受信される信号は、原点からみれば、同じ量だけ位相が遅れ、あるいは進む。したがって、これらの信号は、共役複素の関係にある。この共役複素関係は、これらのアンテナ素子に対応する素子ウェイト値にも同様にみられる。
【0120】
よって、以上のようなウェイト情報の構成によれば、ウェイト情報に含まれる素子ウェイト値は、アンテナ素子の実際の数の半分にすることができる。このような構成は、探索における解への収束速度を速くして、精度を向上させることに役立つ。
【0121】
すなわち、後述のように、交換部104および変更部105における解への収束時間は、素子ウェイト値の数に従って長くなる。したがって、素子ウェイト値の数が少ないほど、解への収束速度が速くなる。また、短い時間内に解を探索しなければならない本実施形態のような場合には、解の精度を向上させることができる。
【0122】
次に、図6を参照しつつ、重み付け制御部5の動作について説明する。ステップS100〜S700における動作は、第1の実施形態における動作と同様である。ただし、評価処理の際の演算においては、前述のように、素子番号が1〜4の素子ウェイト値の共役複素数値を算出して、これらを素子番号が8〜5の素子ウェイト値とする。
【0123】
次に、サブルーチンステップS800において、交換部104は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行う。また、このような動作に替えて、本実施形態においては、交換部104は、次のような動作を行ってもよい。
【0124】
図16を参照しつつ、サブルーチンステップS800における交換処理について、説明する。ステップS850において、交換部104は、変数Jの初期値を1に設定する。次に、交換部104は、選別部102によって選択されたウェイト情報のうち、その評価値がJ位のウェイト情報以外のウェイト情報をランダムに選択する(ステップS860)。
【0125】
ステップS870において、交換部104は、評価値がJ位のウェイト情報と、ランダムに選択されたその他のウェイト情報との2つを1組とする。さらに、交換部104は、当該1組のウェイト情報それぞれに含まれる素子番号Jの素子ウェイト値同士を交換して、新しい1組のウェイト情報を生成する。新しく生成されたウェイト情報は、情報記憶部100に記憶される。
【0126】
次に、交換部104は、Jの値を1だけインクリメントする(ステップS880)。ステップS890において、交換部104は、Jの値が4を超えているか否かを判断する。Jの値が4以下であれば、処理はステップS860へ戻る。Jの値が4を超えていれば、交換処理は終了する。
【0127】
図17は、上記のような交換部104の動作を示した模式図である。図17において、「?」の記号は、1組のウェイト情報において、互いの評価順位が異なるように、ランダムに選択されたウェイト情報の評価順位を表している。矢印の記号は、素子ウェイト値を交換する動作を表している。図17に示されるような動作を経て、交換部104は、新しく生成された4組8個のウェイト情報を、情報記憶部100に記憶させる。
【0128】
なお、上述したように、本実施形態において、1つのウェイト情報は、4つの素子ウェイト値のみを含む。したがって、上記のような交換部104の動作によれば、1つのウェイト情報が8つの素子ウェイト値を含む場合に比べて、交換対象は半分ですむ。したがって、交換部104は、速い速度で解へ収束するような演算を行うことができる。
【0129】
変更部105は、第1の実施形態における場合と同様な動作を行う。なお、本実施形態において、1つのウェイト情報は、4つの素子ウェイト値のみを含む。したがって、交換部104の動作と同様に、変更部105の動作は、1つのウェイト情報が8つの素子ウェイト値を含む場合に比べて、速い速度で解へ収束するような演算を行うことができる。
【0130】
決定部106は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行うので、説明を省略する。
【0131】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの動作について説明する。本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成は、図18に示されるような16個のアンテナ素子を有するほかは、第1および第2の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成とほぼ同様である。
【0132】
詳細に説明すれば、本アダプティブアレーアンテナは、図1のようなアダプティブアレーアンテナとは一部分が異なり、アレーアンテナ部からの16個の信号に対してそれぞれ一定の重み付けを行う構成である。また、当該アレーアンテナ部は、16個のアンテナ素子と、これらに対応して設けられた16個のチューナおよびA/D変換器とを含む。本実施形態においても、ウェイト情報は、16個が設けられるが、1つのウェイト情報は、8個の素子ウェイト値を含む。
【0133】
ただし、アンテナ素子は16個あるので、評価の際の演算時および重み付け時には、1つのウェイト情報に含まれる8つの素子ウェイト値の他に、さらに8つの素子ウェイト値が必要である。そこで、第2の実施形態の場合と同様に、演算時および重み付け時には、素子番号が1〜8の素子ウェイト値の共役複素数値を算出して、これらを素子番号が16〜9の素子ウェイト値とする。
【0134】
したがって、1つのウェイト情報は、8つの素子ウェイト値のみを含むが、演算時および重み付け時には、1つのウェイト情報は、16個の素子ウェイト値を含むものとして取り扱われる。よって、評価の際の演算時および重み付け時には、ウェイト情報W[k][m]におけるmは、16以下の自然数であるものとして取り扱う。
【0135】
このように、素子番号が1〜8の素子ウェイト値の共役複素数値を、素子番号が16〜9の素子ウェイト値とすることができるのは、図18に示されるように、アンテナ素子が原点をはさんで互いに対称な位置にあるからである。
【0136】
図18を参照すると、アンテナ素子111とアンテナ素子111’とは、原点をはさんで等距離の位置にある。アンテナ素子112〜118とアンテナ素子112’〜118’との関係も同様である。このように対称な位置にあるアンテナ素子において受信される信号は、前述のように、原点からみれば同じ量だけ位相が遅れ、あるいは進む。したがって、これらの信号は、共役複素の関係にある。この共役複素関係は、これらのアンテナ素子に対応する素子ウェイト値にも同様にみられる。
【0137】
よって、以上のようなウェイト情報の構成によれば、ウェイト情報に含まれる素子ウェイト値は、アンテナ素子の実際の数の半分になる。このような構成は、第2の実施形態における場合と同様に、探索における解への収束速度を速くして、精度を向上させることに役立つ。
【0138】
本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの選別部102、複製部103、交換部104、変更部105および決定部106の動作は、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナにおける動作と同様であるので、説明を省略する。但し、評価の際の演算時には、ウェイト情報W[k][m]におけるmは、16以下の自然数であるものとして取り扱われる。したがって、本実施形態におけるアレー合成演算は、16個の信号について行われる点で第1の実施形態とは異なる。
【0139】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの動作について説明する。本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成は、16個のアンテナ素子を有する点で、第3の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成と同様である。ただし、各アンテナ素子は、図19に示されるような座標位置に配置されるものとする。
【0140】
図19には、直交するX軸およびY軸の座標が示されている。X軸上には、原点からの位置が等距離であるAおよびaと、Bおよびbとが示され、Y軸上には、原点からの位置が等距離であるCおよびcと、Dおよびdとが示されている。したがって、Aおよびaと、Bおよびbと、Cおよびcと、Dおよびdとは、互いに複素共役の関係に立つ。本アダプティブアレーアンテナに含まれる16個のアンテナ素子は、これらの座標をX座標とY座標とにおいてそれぞれ組み合わせた位置に設けられている。
【0141】
これらのアンテナ素子に対応する素子ウェイト値は、上述の複素共役の関係にある座標の組み合わせによって特定することができる。例えば、図19において左上に設けられているアンテナ素子は、X座標がdであり、Y座標がAである。他方、図19において左下に設けられているアンテナ素子は、X座標がdであり、Y座標がaである。したがって、これら2つのアンテナ素子に対応する素子ウェイト値は、Aとdとを乗算し、aとdとを乗算することによってそれぞれ求めることができる。
【0142】
このように、アンテナ素子に対応する素子ウェイト値は、4つの座標値と、これら4つの座標値と複素共役の関係にある座標の組み合わせによって特定することができる。したがって、本実施形態においても、ウェイト情報は、16個が設けられるが、1つのウェイト情報は、4個の素子ウェイト値を含んでいればよい。
【0143】
ただし、アンテナ素子は16個あるので、評価の際の演算時および重み付け時には、1つのウェイト情報に含まれる4つの素子ウェイト値をそれぞれ乗算することによって、素子番号が1〜16の素子ウェイト値を算出する。
【0144】
したがって、1つのウェイト情報は、4つの素子ウェイト値のみを含むが、演算時および重み付け時には、1つのウェイト情報は、16個の素子ウェイト値を含むものとして取り扱われる。よって、評価の際の演算時および重み付け時には、ウェイト情報W[k][m]におけるmは、16以下の自然数であるものとして取り扱う。
【0145】
以上のようなウェイト情報の構成によれば、ウェイト情報に含まれる素子ウェイト値は、アンテナ素子の実際の数の4分の1になる。このような構成は、第3の実施形態における場合よりもさらに、探索における解への収束速度を速くして、さらに精度を向上させることができる。
【0146】
本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの選別部102、複製部103、交換部104、変更部105および決定部106の動作は、第2の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナにおける動作と同様であるので、説明を省略する。但し、前述のように、評価の際の演算時には、ウェイト情報W[k][m]におけるmは、16以下の自然数であるものとして取り扱われる。したがって、本実施形態におけるアレー合成演算は、16個の信号について行われる点で第2の実施形態とは異なる。
【0147】
(第5の実施形態)
本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナと同様に、図1に示すように構成される。ただし、本実施形態は、ウェイト情報の構成が他の実施形態とは異なる。したがって、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナと共通の動作を行う場合の説明を省略し、相違する動作を行う場合を中心に説明する。
【0148】
第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、ウェイト情報は、16個が設けられる。1つのウェイト情報は、8つの素子ウェイト値と1つの回転子Rとを含む。したがって、ウェイト情報は9つの要素を含み、順に、W[k][1]、W[k][2]、…W[k][8]、R[k]と表すことができる。kは、ウェイト情報番号を表し、16以下の自然数である。また、ウェイト情報に含まれる9つの要素には、順に1〜9の要素番号が付せられる。
【0149】
次に、図6を参照しつつ、重み付け制御部5の動作について説明する。ステップS100〜S400における動作は、第1の実施形態における動作と同様である。サブルーチンステップS500において、評価部101は、以下のような動作を行う。
【0150】
図8を参照しつつ、8相位相変調方式が用いられる場合における評価部101の動作について説明する。前述のように、送信時における信号点配置座標は、図3のように図示される。
【0151】
ステップS510において、評価部101は、バッファ107および情報記憶部100からのデータを入力されて、次式(5)のような演算を行う。なお、式中のRealは実数成分の抽出を意味し、Imagは虚数成分の抽出を意味するものとする。
【数5】
【0152】
上式(5)のように、評価部101は、サンプルデータS[n][m]および情報記憶部100に記憶されているウェイト情報から、図4に示されるような前述のアレー合成演算を行い、さらに回転子を乗算して演算値を生成する。ステップS520において、評価部101は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行う。
【0153】
次に、サブルーチンステップS600およびS700における重み付け制御部5の動作は、第1の実施形態における動作と同様である。サブルーチンステップS800において、交換部104は、以下のような動作を行う。なお、図12および図13における素子番号mは、要素番号と読み替えるものとする。
【0154】
図12を参照すると、ステップS810において、交換部104は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行う。次に、交換部104は、1つまたは複数の要素番号をランダムに選ぶ(ステップS820)。交換部104は、ランダムに選ばれた要素番号の素子ウェイト値または回転子を、組み合わせられたウェイト情報同士で交換して、新しい1組のウェイト情報をそれぞれ生成する。交換部104は、新しく生成された1組2個のウェイト情報を、情報記憶部100に記憶させる(ステップS830)。
【0155】
ステップS840において、交換部104は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行う。以上のようにして交換処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS900の処理を開始する。
【0156】
図13を参照すると、ステップS910〜ステップS940において、変更部105は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行う。ステップS950において、変更部105は、1つまたは複数の要素番号をランダムに求める。
【0157】
ステップS960において、変更部105は、設定された乱数範囲内で、変更値をランダムに発生させる。ステップS970において、変更部105は、上記のように求められた要素番号に対応する素子ウェイト値に対して、ランダムに発生させられた変更値を加算し、加算された値を新たな素子ウェイト値とする。ただし、上記のように求められた要素番号が9であるとき、すなわち回転子であるときには、ランダムに発生させられた変更値をさらに2で割ってから回転子に加算し、加算された値を新たな回転子とする。変更部105は、このようにして生成された新しい4個のウェイト情報を情報記憶部100に記憶させる。ステップS980において、変更部105は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行う。
【0158】
また、以上のような動作に替えて、変更部105は、第1の実施形態における動作と同様に、次のような動作を行ってもよい。ステップS920において、変更部105は、最適解近傍に解が収束しつつある場合であるか否かを判断する際に、情報記憶部100、評価部101、選別部102、複製部103、交換部104および変更部105における各動作の通算繰り返し回数を用いる。具体的には、変更部105は、各動作の通算繰り返し回数が32回以上の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合であると判断し、32回未満の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合でないと判断する。このような動作においては、変更部105は、最高評価値を算出する必要がないので、簡易な構成にすることができる。
【0159】
次に、図6を参照すると、ステップS1000およびステップS1100において、決定部106は、第1の実施形態における動作と同様の動作を行うので、説明を省略する。
【0160】
ステップS1200において、決定部106は、前述のように選別部102に一時的に保存されている4つのウェイト情報から評価値が2位のウェイト情報を取り出す。取り出されたウェイト情報は、8つの素子ウェイト値と1つの回転子Rとを含む。決定部106は、これら8つの素子ウェイト値に対して回転子をそれぞれ乗算する。決定部106は、これらの乗算された値を重み付け用ウェイト情報として、上述の重み付け部4へ入力する。
【0161】
このように、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、ウェイト情報に回転子Rを含む。この回転子Rを乗算することによって、図示されない復調部は、位相回転の調整を行う必要がなくなる。また、ウェイト情報に回転子Rが含まれることにより、8つの素子ウェイト値は、位相回転に関する拘束条件を付されることになる。したがって、当該拘束条件を付された8つの素子ウェイト値は、条件が付されない場合よりも精度の高い重み付けを行うことができる。
【0162】
(第6の実施形態)
本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第1および第2の実施形態のアダプティブアレーアンテナの構成および動作に、トレーニングを行う構成および動作が付加される。したがって、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第1および第2の実施形態のアダプティブアレーアンテナとほぼ同様の構成および動作を行うが、一定期間のトレーニングを行う点が他と異なる。このトレーニング期間において、送信される信号はトレーニング用の信号と同じである。以下では、図6を参照しつつ、動作の共通点に関する説明を省略し、相違点について説明する。
【0163】
図6において、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナのステップS400までの動作は、第1および第2の実施形態のアダプティブアレーアンテナにおける動作と同様である。本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、受信開始後の一定期間中、典型的には、最初の16シンボル分を受信する期間中、トレーニングを行う。
【0164】
サブルーチンステップS500において、トレーニングを行う評価部101は、第1および第2の実施形態のアダプティブアレーアンテナにおける動作とは、異なる動作を行う。図20は、本実施形態におけるサブルーチンステップS500の詳細な動作を示したフローチャートである。
【0165】
図20を参照すると、評価部101は、ステップS530において、ウェイト情報およびサンプルデータから前述のようなアレー合成演算をおこなって演算値を生成する。次に、ステップS540において、評価部101は、生成された演算値とトレーニングデータとの2乗誤差を求め、その総和をウェイト情報の評価値とする。このような演算は、次式(6)のように表すことができる。なお、式中のRealは実数成分、Imagは虚数成分の抽出を意味する。
【数6】
【0166】
上式(6)において、D[n]は、既知のトレーニングデータを表す。nは、サンプル番号を表す。この既知のトレーニングデータは、予め定められていれば、0と1とが繰り返されたデータでもよいし、16シンボル全てが異なるデータであってもよい。送信される信号も、この既知のトレーニングデータを含む。
【0167】
上式(6)のように、評価部101は、図4に示されるようなサンプルデータS[n][m]および情報記憶部100に記憶されているウェイト情報のアレー合成演算を行う。評価部101は、この演算結果と既知のトレーニングデータD[n]との二乗誤差(差の二乗)を実数成分、虚数成分毎に求めて加算する。評価値P[k]は、その加算された値である。
【0168】
算出された評価値は、16個のウェイト情報に対応して、それぞれ算出される。したがって、本実施形態における評価部101は、第1および第2の実施形態の場合と同様に、16個の評価値を得ることができる。
【0169】
次に、サブルーチンステップS600からステップS1200までの本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの選別部102、複製部103、交換部104、変更部105および決定部106の動作は、第1の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナにおける動作と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、ステップS1300の動作が省略される。
【0170】
以上のようにして、バッファ107は、1回の動作において4シンボル分のデ−タを取り込むのであるから、16シンボル分のデータを取り込むには、4回の動作が必要となる。この4回の動作を終えると、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、トレーニング動作を終了する。
【0171】
トレーニング動作を終了するとそれ以降、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第1ないし第2の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナと全く同様の動作を行う。このように、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第1ないし第2の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナに加えて、さらにトレーニング動作をすることが特徴である。
【0172】
また、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第3ないし第4の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナに加えて、さらにトレーニング動作をするように構成してもよい。ただし、アンテナ素子の数に応じて、素子番号mは1から16までの整数となる。
【0173】
さらに、本実施形態に係るアダプティブアレーアンテナは、第5の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナに加えて、さらにトレーニング動作をするように構成してもよい。ただし、各アレー合成演算値には、回転子Rが乗算されなければならない。このような演算は、次式(7)のように示される。
【数7】
【0174】
上述のようなトレーニング動作は、予め定められたトレーニング用の信号点座標のみにサンプルデータの信号点を集めることができる。したがって、所望の信号を正確に分離することのできる精度の高い素子ウェイト値を求めることができる。
【0175】
以上のようないわゆる遺伝的アルゴリズムを用いる各実施形態のアダプティブアレーアンテナは、従来のLMSアルゴリズムを用いる場合よりも、並列処理を行わない場合には、やや演算量が多くなるものの、解への収束速度が速い結果、精度の高いアダプティブ制御を行うことができる。以下、本発明の実施形態における演算量と従来例の場合の演算量とを比較する。
【0176】
LMSアルゴリズムおよびRLSアルゴリズムと評価基準を合わせるために、トレーニング信号を有する第6の実施形態の場合を比較して、1サンプル毎の演算量を考える。前述と同じく、16ビットの加減算の演算量を1とし、さらに、交換および複製の演算量を1、ビット検査の演算量を1、複素数の絶対値の2乗を33(16+16+1=33)とする。
【0177】
本発明の第6の実施形態におけるアルゴリズムにおいて、複製手段の演算量は4(1×4=4)、変更手段の演算量は8(1×2×4=8)、交換手段の演算量は8(1×8=8)、選別手段の演算量は256(1(ビット検査)×16×16=256)、評価手段の演算量は9264(((66+2)×8+2+33)×16=9264)であり、合計の演算量は9540(4+8+8+256+9264=9540)となる。
【0178】
上記の合計演算量は、RLSアルゴリズムにおける演算量の約84%にあたる。したがって、本発明におけるアルゴリズムを用いる場合には、RLSアルゴリズムを用いる場合よりも高速に演算することができる。なお、素子数の増加によってRLSの演算量は、さらに指数関数的に増大することにも注目する必要がある。
【0179】
また、前述のように、複製手段、変更手段、交換手段、選別手段、評価手段は、16個のウェイト情報毎に並列処理を行うことができる。並列処理を行った場合には、複製手段の演算量は1(1×1=1)、変更手段の演算量は2(1×2=2)、交換手段の演算量は1(1×1=1)、選別手段の演算量は16(1(ビット検査)×16=16)、評価手段の演算量は579((66+2)×8+2+33=579)であり、合計の演算量は599(1+2+1+16+579=599)となる。したがって、本発明におけるアルゴリズムを用いる場合には、RLSアルゴリズムを用いる場合はもちろんのこと、LMSアルゴリズムを用いる場合よりも約2.3倍速く演算することができる。
【0180】
また、本発明におけるアルゴリズムを用いる場合には、LMSアルゴリズムを用いる場合よりも高速に解へ収束させることができる。図21は、本発明のアルゴリズムを用いたアダプティブアレーアンテナにおける、解の収束速度を表したグラフである。図25と同様に、図21においても、点線は所望波を表し、一点鎖線は希望波に対する雑音レベルを表している。また、それ以外の3つの折れ線は、妨害波を表している。図21を参照すると、全ての妨害波のレベルが希望波に対する雑音レベル以下になるのは、繰り返し回数が20回付近以降である。したがって、図25によれば、LMSアルゴリズムを用いる場合と比較して、本発明におけるアルゴリズムを用いる場合には約3.75倍速く解へ収束させることができる。
【0181】
(第1の実施形態の応用例)
上記のようなアダプティブアレーアンテナは、アダプティブフィルタにも応用することができる。以下に、その応用例について説明する。
【0182】
図26を参照しつつ、第1の実施形態を応用した8タップアダプティブフィルタについて説明する。なお、本アダプティブフィルタが受信する信号の変復調方式は、4相または8相の位相変調方式であるものとする。4相位相変調方式が用いられる場合、送信時における信号点配置座標は、図2のように図示することができる。8相位相変調方式が用いられる場合、送信時における信号点配置座標は、図3のように図示することができる。図2および図3において、黒点は、信号点を表し、横軸は実数成分を、縦軸は虚数成分をそれぞれ表す。
【0183】
図26において、本アダプティブフィルタは、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換部30と、A/D変換部30からの信号が入力されて8タップアダプティブフィルタに対応する8つの信号を出力するタップ71〜78と、タップ71〜78からの8つの信号に対してそれぞれ一定の重み付けを行う重み付け部4と、重み付け部4における各重み付け値を与える重み付け制御部5と、重み付け制御部5からの8つの信号を加算する加算器6とを備える。
【0184】
このように、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、8個のタップ71〜78からの信号を重み付け処理する構成である。しかし、タップの個数は、8個に限られない。タップの個数は、複数であればいくつであってもよい。また、タップの配列形状は、どのようなものであってもよい。
【0185】
次に、アダプティブフィルタの動作について説明する。送信されてきた信号は、A/D変換部30へ入力される。A/D変換部30は、入力されたアナログ信号をデジタル信号へ変換して出力する。。出力されたそれぞれの信号は、タップ71〜78へそれぞれ入力される。タップ71〜78は、8タップアダプティブアレーフィルタに対応するタップ出力をサンプルデータとして出力する。
【0186】
当該サンプルデータは、重み付け部4および重み付け制御部5へ入力される。重み付け制御部5は、サンプルデータが入力されて、所望波のみを受信できるようにするためのタップ係数値をそれぞれ算出する。算出された8つのタップ係数値は、1つのタップ情報として1組にされて、重み付け部4へ入力される。
【0187】
重み付け部4は、当該タップ情報に含まれる8つのタップ係数値を用いて、入力されたサンプルデータそれぞれの重み付けを変化させる。重み付けを変化させられた信号は、加算器6によって全て加算され、出力される。
【0188】
図4を参照しつつ、重み付け部4および加算器6の動作を詳細に説明する。重み付け部4は、8つの乗算部401〜408と、8つの素子ウェイト部411〜418とを含む。8つの素子ウェイト部411〜418は、タップ情報が入力されて、各サンプルデータに対応するタップ係数値を出力する。8つの乗算部401〜408は、対応する素子ウェイト部から入力されたタップ係数値と、対応するサンプルデータとを乗算する。加算器6は、乗算された8つの値を、全て加算する。加算された値は、1サンプル分の演算結果として出力される。このような演算をフィルタ演算と呼ぶ。
【0189】
本実施形態の応用例において、タップ情報は、16個が設けられる。1つのタップ情報は、8つのタップ係数値を含む。このようなタップ情報は、T[k][m]と表すことができる。kは、タップ情報番号を表し、16以下の自然数である。また、mは、タップ番号を表し、8以下の自然数である。
【0190】
図5は、重み付け制御部5の詳細な構成を示したブロック図である。重み付け制御部5は、8つの信号が入力されるバッファ107と、バッファ107からの信号が入力されて所望の信号を受信するために最適な重み付け値を算出する評価部101と、評価の高い重み付け候補値を選び出す選別部102と、選別部102から入力された値を複製する複製部103と、選別部102から入力された値を部分的に交換する交換部104と、選別部102から入力された値を部分的に変更する変更部105と、複製部103と交換部104と変更部105とによって算出された値を記憶する情報記憶部100と、選別部102から入力された値から重み付け値を決定する決定部106とを備える。
【0191】
次に、図6を参照しつつ、重み付け制御部5の動作について説明する。ただし、図6以降の図において、ウェイト情報番号はタップ情報番号と、ウェイト情報はタップ情報と、素子ウェイト値はタップ係数値と、素子番号はタップ番号と、それぞれ読み替えるものとする。ステップS100において、情報記憶部100は、受信信号が検出されたことを示すロード信号が入力されるまで、待機状態を保つ。ロード信号は、図示されないタイミング検出部によって、信号の受信が検知された場合に出力される。
【0192】
次に、受信信号が検出されたことを示すロード信号が入力されると、情報記憶部100は、タップ情報に初期値を入力する(ステップS200)。初期値は0でもよいが、16の異なる位相シフトを持つように予め算出された図7に示されるようなタップ情報であることが好ましい。このようなタップ情報によって、最適解に近い状態から探索を進めることができるので、探索の繰り返し回数を減らして演算量を削減することができる。
【0193】
また、送信端末が複数ある場合には、情報記憶部100は、送信を行おうとする送信端末の端末番号がロード信号として入力されてもよい(ステップS100)。このような構成において、図示されないタイミング検出部は、所定のタイミングによって管理されている複数の送信端末のうち、送信を行おうとする送信端末を検知する。タイミング検出部は、検知した端末番号をロード信号として出力する。
【0194】
情報記憶部100は、ロード信号が入力されると、タップ情報に初期値を入力する(ステップS200)。ここで入力される初期値は、端末番号毎に記憶されている前回通信時のタップ情報であることが好ましい。このようなタップ情報によれば、信号の送信元が変更された場合においても前回の最適解近傍から探索を行うことができる。したがって、探索の繰り返し回数を減らして演算量を削減することができる。
【0195】
ステップS300において、バッファ107は、各タップから入力された8つの信号に対して、それぞれシンボル速度の8倍の速度でサンプリングし、過去40個分のサンプルデータを取り込む。取り込まれたサンプルデータは、S[n]と表すことができる。nはサンプル番号を表し、40以下の自然数である。
【0196】
次に、ステップS400において、決定部106は、ステップS500以下の各処理が何回行われたかをカウントするための変数Countに0を代入し、サブルーチンステップS500へ進む。
【0197】
図8は、サブルーチンステップS500(評価処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。まず、図8を参照しつつ、4相位相変調方式が用いられる場合における評価部101の動作について説明する。前述のように、送信時における信号点配置座標は、図2のように図示される。
【0198】
ステップS510において、評価部101は、バッファ107および情報記憶部100からのデータを入力されて、次式(8)のような演算を行う。
【数8】
上式(8)のように、評価部101は、まず、サンプルデータに対して、情報記憶部100に記憶されているタップ情報T[k][m]を乗算する。この乗算は、図4に示されるような前述のフィルタ演算である。
【0199】
次に、ステップS520において、評価部101は、上記フィルタ演算における演算結果の絶対値を生成する。この絶対値は、信号点の原点からの距離に相当する。評価部101は、生成された絶対値から、一定振幅に相当する1との二乗誤差(差の二乗)を求める。評価部101は、その総和を評価値として、評価処理を終了する。当該評価値は、P[k]と表すことができる。kは、前述のように、タップ情報番号を表す。
【0200】
このように、評価部101は、4相位相変調方式による変調信号の振幅値が一定であることを利用して、サンプルデータの振幅値が一定の振幅値からどの程度ずれているかを、評価値として算出する。算出された評価値は、16個のタップ情報に対応して、それぞれ算出される。したがって、評価部101は、16個の評価値を得ることができる。
【0201】
次に、図8を参照しつつ、8相位相変調方式が用いられる場合における評価部101の動作について説明する。前述のように、送信時における信号点配置座標は、図3のように図示される。
【0202】
ステップS510において、評価部101は、バッファ107および情報記憶部100からのデータが入力されて、次式(9)のような演算を行う。なお、式中のRealは実数成分の抽出を意味し、Imagは虚数成分の抽出を意味するものとする。
【数9】
【0203】
上式(9)のように、評価部101は、S[n]および情報記憶部100に記憶されているタップ情報から、図4に示されるような前述のフィルタ演算を行い、演算値を生成する。
【0204】
ステップS520において、評価部101は、生成された演算値における実数部および虚数部の絶対値が、8相位相変調の第1象現における2点の信号点配置座標cos(π/8)+i×sin(π/8)およびsin(π/8)+i×cos(π/8)の実数部および虚数部に対して、どのくらいの誤差を生じているかを、それぞれ算出する。
【0205】
すなわち、上式(9)におけるI1[k][n]は、フィルタ演算の演算結果における実数部の絶対値と、信号点配置座標cos(π/8)+i×sin(π/8)における実数部との2乗誤差を表している。また、Q2[k][n]は、前述の演算結果における虚数部の絶対値と同信号点の虚数部との2乗誤差を表している。
【0206】
同様に、I2[k][n]およびQ1[k][n]は、フィルタ演算の演算結果における実数部および虚数部の絶対値と、信号点配置座標sin(π/8)+i×cos(π/8)の実数部および虚数部との2乗誤差をそれぞれ表している。
【0207】
P[k]は、上述のように算出された2乗誤差を実数部および虚数部のそれぞれにおいて乗算し、その結果を加算した評価値である。以上のような評価部101の動作は、16個のタップ情報に対してそれぞれ行われ、評価処理を終了する。
【0208】
ところで、上述したように、8相位相変調方式が用いられる場合において、評価部101の動作は、4相位相変調方式が用いられる場合の動作とは異なる。しかし、これらの場合において、評価部101の動作は、同じであってもよい。すなわち、評価部101は、8相位相変調方式による変調信号の振幅が、一定の振幅であることを利用して、サンプルデータの振幅値が一定の振幅値からどのくらいずれているかを、評価値として算出してもよい。
【0209】
また、4相位相変調方式が用いられる場合において、評価部101の動作は、8相位相変調方式が用いられる場合の動作とは異なる。しかし、これらの場合において、評価部101の動作は、同じであってもよい。ただし、図2に示されるように、4相位相変調の第1象現における信号点は、1点しかない。その信号点配置座標は、sin(π/4)+i×cos(π/4)である。
【0210】
以上のような評価部101における上式(9)の演算は、kの値を1から16まで順次変化させて1つずつ行う必要はない。なぜなら、それらは互いに無関係だからである。したがって、P[1]からP[16]までの演算は、並列に演算することができる。上述のように、従来のLMSないしRLSアルゴリズムを用いる場合では、このような並列演算を行うことは基本的にできない。
【0211】
図9は、評価部101における上述のような並列演算を可能にする構成を示したブロック図である。図9を参照すると、評価部101へ入力される2つの信号は、評価部101に含まれるP[1]からP[16]までの演算ブロックへそれぞれ入力される。各演算ブロックは、入力されたデータを用いて対応するP[1]からP[16]までの評価値のいずれかを算出し、出力する。出力された信号は、全てがまとめられて評価部101から出力される。このような構成によれば、評価部101は、順次に演算する場合と比較して、16倍の速度で演算することができる。
【0212】
以上のようにして評価処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS600の処理を開始する。
【0213】
図10は、サブルーチンステップS600(選別処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図10を参照すると、ステップS610において、選別部102は、算出された評価値が小さいもの(評価が高いもの)から順番に並ぶように、当該評価値に対応する16個のタップ情報をソートする。
【0214】
次に、ステップS620において、選別部102は、ソートされた16個のタップ情報のうち、評価値が小さい(評価が高い)上位4個のタップ情報を選択する。選別部102は、選択された4個のタップ情報を一時的に保存し、選択処理を終了する。もちろん、選択されるタップ情報は、4個に限られないが、本実施形態の応用例においては、4個とする。
【0215】
以上のようにして選別処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS700の処理を開始する。
【0216】
図11は、サブルーチンステップS700(複製処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図11を参照すると、ステップS710において、複製部103は、選別部102によって選択された4個のタップ情報から任意のタップ情報を選択する。次に、複製部103は、選択されたタップ情報をコピーして、新しいタップ情報を生成し、当該タップ情報を情報記憶部100へ記憶させる(ステップS720)。
【0217】
ステップS730において、複製部103は、タップ情報が必要数(ここでは4個とする)に達したかを判断する。生成されたタップ情報が4個に達しない場合、処理は、ステップS710へ戻る。生成されたタップ情報が4個に達した場合、選別処理は終了する。
【0218】
以上のようにして選別処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS800の処理を開始する。
【0219】
図12は、サブルーチンステップS800(交換処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図12を参照すると、ステップS810において、交換部104は、選別部102によって選択された4個のタップ情報のうち、その評価値が1位のタップ情報と3位のタップ情報とを、2位のタップ情報と4位のタップ情報とを、3位のタップ情報と2位のタップ情報とを、4位のタップ情報と1位のタップ情報とをそれぞれ組み合わせる。さらに、交換部104は、組み合わせられた4組のタップ情報から、1組を選択する。
【0220】
次に、交換部104は、1つまたは複数のタップ番号mをランダムに選ぶ(ステップS820)。交換部104は、ランダムに選ばれたタップ番号のタップ係数値を、組み合わせられたタップ情報同士で交換して、新しい1組のタップ情報をそれぞれ生成する。交換部104は、新しく生成された1組2個のタップ情報を、情報記憶部100に記憶させる(ステップS830)。
【0221】
なお、ステップS830において交換されるタップ係数値は、その実数成分と虚数成分とが同時に交換されてもよいし、どちらか一方の成分同士が交換されてもよい。どちらか一方の成分同士が交換される場合には、交換部104が動作する毎に交互に実数成分と虚数成分とが選ばれて交換されることが好ましい。このように構成すれば、各成分毎に解の収束速度を速めることができる。
【0222】
ステップS840において、交換部104は、タップ情報が必要数(ここでは4組8個とする)に達したかを判断する。生成されたタップ情報が4組8個に達しない場合、当該処理はステップS810へ戻る。生成されたタップ情報が4組8個に達した場合、交換処理は終了する。
【0223】
以上のようにして交換処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS900の処理を開始する。
【0224】
図13は、サブルーチンステップS900(変更処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。図13を参照すると、ステップS910において、変更部105は、乱数範囲を所定の範囲、ここでは範囲A(−0.1〜0.1、−0.1i〜0.1i)に設定する。
【0225】
ステップS920において、変更部105は、最適解近傍に解が収束しつつある場合であるか否かを判断する。具体的には、変更部105は、選別部102によって選択された4個のタップ情報の中での最高評価値を求め、最高評価値が4以上のときには、未だ最適解近傍に解が収束しつつある場合ではないと判断して、ステップS940へジャンプする。また、変更部105は、最高評価値が4未満のときには、最適解近傍に解が収束しつつある場合であると判断して、ステップS930へ進む。
【0226】
ステップS930において、変更部105は、乱数範囲を狭く設定する。具体的には、変更部105は、乱数範囲を範囲B(−0.05〜0.05、−0.05i〜0.05i)に設定する。
【0227】
ステップS940において、変更部105は、選別部102によって選択された4個のタップ情報から任意のタップ情報を選択する。次に、変更部105は、1つまたは複数のタップ番号mをランダムに求める(ステップS950)。
【0228】
ステップS960において、変更部105は、設定された乱数範囲内で、変更値をランダムに発生させる。また、変更部105は、当該変更値の実数成分または虚数成分のいずれか一方を0にしてもよい。いずれか一方を0にする場合、変更部105は、動作毎に実数成分と虚数成分とを交互に選んで0にすることが好ましい。
【0229】
ステップS970において、変更部105は、上記のように求められたタップ番号mに対応するタップ係数値に対して、ランダムに発生させられた変更値を加算し、加算された値を新たなタップ係数値とする。変更部105は、このようにして生成された新しい4個のタップ情報を情報記憶部100に記憶させる。
【0230】
ステップS980において、変更部105は、タップ情報が必要数(ここでは4個とする)に達したかを判断する。生成されたタップ情報が4個に達しない場合、処理はステップS940へ戻る。生成されたタップ情報が4個に達した場合、変更処理は終了する。
【0231】
また、以上のような動作に替えて、変更部105は、次のような動作を行ってもよい。ステップS920において、変更部105は、最適解近傍に解が収束しつつある場合であるか否かを判断する際に、情報記憶部100、評価部101、選別部102、複製部103、交換部104および変更部105における各動作の通算繰り返し回数を用いる。具体的には、変更部105は、各動作の通算繰り返し回数が32回以上の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合であると判断し、32回未満の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合でないと判断する。このような動作において、変更部105は、最高評価値を算出する必要がない。したがって、変更部105は簡易な構成になる。
【0232】
以上のようにして評価処理が終了した後、重み付け制御部5は、ステップS600の処理を開始する。
【0233】
ここで、図6において、サブルーチンステップS700〜S900は、順次に実行されるように説明した。しかし、これらの処理は、同時に並列処理されてもよい。図5に示すように、複製部103と、交換部104と、変更部105とは、並列処理が可能なように構成されている。したがって、これらが並列処理するように動作すれば、順次に処理するように動作する場合よりも高速に演算することができる。
【0234】
ステップS1000において、決定部106は、前述の変数Countを1だけインクリメントする。さらに、ステップS1100において、決定部106は、変数Countが4に達したかを判断する。4に達していなければ、処理はステップS500へ戻る。4に達していれば、処理はステップS1200へ進む。
【0235】
ステップS1200において、決定部106は、前述のように選別部102に一時的に保存されている4つのタップ情報から評価値が2位のタップ情報を取り出す。取り出されたタップ情報は、重み付け用タップ情報として、上述の重み付け部4へ入力される。
【0236】
ここで、評価値が2位のタップ情報が取り出される理由は、1位のタップ情報の評価値が雑音によって誤って高められた可能性があり、そのような可能性が大きい場合には、2位の評価値のほうが1位の評価値よりも、正確であると考えられるからである。
【0237】
しかし、1位のタップ情報の評価値が雑音によって誤って高められた可能性が小さい場合には、決定部106は、評価値が1位のタップ情報を重み付け用タップ情報として出力するのが好ましい。
【0238】
ステップS1300において、バッファ107は、受信信号の有無を検知する。受信信号があれば、処理はステップS300へ戻る。受信信号がなければ、処理は終了する。
【0239】
(第2の実施形態の応用例)
本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第1の実施形態を応用したアダプティブフィルタと同様に、図26に示すように構成される。ただし、8個のタップ71〜78は、等しい所定の時間間隔に設定されている。したがって、第1の実施形態を応用したアダプティブフィルタと共通の動作を行う場合の説明を省略し、相違する動作を行う場合を中心に説明する。
【0240】
第1の実施形態の応用例と同様に、本実施形態の応用例においても、タップ情報は、16個が設けられる。1つのタップ情報は、4つのタップ係数値を含む。このようなタップ情報は、T[k][m]と表すことができる。kはタップ情報番号を表し、16以下の自然数である。また、mはタップ番号を表し、4以下の自然数である。
【0241】
ただし、タップは8つあるので、評価の際の演算時および重み付け時には、1つのタップ情報に含まれる4つのタップ係数値の他に、さらに4つのタップ係数値が必要である。そこで、図15に示すように、演算時および重み付け時には、タップ番号が1〜4のタップ係数値の共役複素数値を算出して、これらをタップ番号が8〜5のタップ係数値とする。
【0242】
したがって、1つのタップ情報は、4つのタップ係数値のみを含むが、演算時および重み付け時には、1つのタップ情報は、8つのタップ係数値を含むものとして取り扱われる。よって、評価の際の演算時および重み付け時には、タップ情報T[k][m]におけるmは、8以下の自然数であるものとして取り扱う。
【0243】
このように、タップ番号が1〜4のタップ係数値の共役複素数値を、タップ番号が8〜5のタップ係数値とすることができるのは、タップが互いに対称な位置にあるからである。
【0244】
例えば、全タップの全時間間隔のちょうど中間の時刻を原点とするとき、原点を結んで対称な時刻に設けられたタップ同士は、原点位置からみると等しい時間間隔にある。これらのタップにおいて受信される信号は、原点からみれば、同じ量だけ位相が遅れ、あるいは進む。したがって、これらの信号は、共役複素の関係にある。この共役複素関係は、これらのタップに対応するタップ係数値にも同様にみられる。
【0245】
よって、以上のようなタップ情報の構成によれば、タップ情報に含まれるタップ係数値は、タップの実際の数の半分にすることができる。このような構成は、探索における解への収束速度を速くして、精度を向上させることに役立つ。
【0246】
すなわち、後述のように、交換部104および変更部105における解への収束時間は、タップ係数値の数に従って長くなる。したがって、タップ係数値の数が少ないほど、解への収束速度が速くなる。また、短い時間内に解を探索しなければならない本実施形態の応用例のような場合には、解の精度を向上させることができる。
【0247】
次に、図6を参照しつつ、重み付け制御部5の動作について説明する。ステップS100〜S700における動作は、第1の実施形態の応用例における動作と同様である。ただし、評価処理の際の演算においては、前述のように、タップ番号が1〜4のタップ係数値の共役複素数値を算出して、これらをタップ番号が8〜5のタップ係数値とする。
【0248】
次に、サブルーチンステップS800において、交換部104は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行う。また、このような動作に替えて、本実施形態の応用例においては、交換部104は、次のような動作を行ってもよい。
【0249】
図16を参照しつつ、サブルーチンステップS800における交換処理について、説明する。ステップS850において、交換部104は、変数Jの初期値を1に設定する。次に、交換部104は、選別部102によって選択されたタップ情報のうち、その評価値がJ位のタップ情報以外のタップ情報をランダムに選択する(ステップS860)。
【0250】
ステップS870において、交換部104は、評価値がJ位のタップ情報と、ランダムに選択されたその他のタップ情報との2つを1組とする。さらに、交換部104は、当該1組のタップ情報それぞれに含まれるタップ番号Jのタップ係数値同士を交換して、新しい1組のタップ情報を生成する。新しく生成されたタップ情報は、情報記憶部100に記憶される。
【0251】
次に、交換部104は、Jの値を1だけインクリメントする(ステップS880)。ステップS890において、交換部104は、Jの値が4を超えているか否かを判断する。Jの値が4以下であれば、処理はステップS860へ戻る。Jの値が4を超えていれば、交換処理は終了する。
【0252】
図17は、上記のような交換部104の動作を示した模式図である。図17において、「?」の記号は、1組のタップ情報において、互いの評価順位が異なるように、ランダムに選択されたタップ情報の評価順位を表している。矢印の記号は、タップ係数値を交換する動作を表している。図17に示されるような動作を経て、交換部104は、新しく生成された4組8個のタップ情報を、情報記憶部100に記憶させる。
【0253】
なお、上述したように、本実施形態の応用例において、1つのタップ情報は、4つのタップ係数値のみを含む。したがって、上記のような交換部104の動作によれば、1つのタップ情報が8つのタップ係数値を含む場合に比べて、交換対象は半分ですむ。したがって、交換部104は、速い速度で解へ収束するような演算を行うことができる。
【0254】
変更部105は、第1の実施形態の応用例における場合と同様な動作を行う。なお、本実施形態の応用例において、1つのタップ情報は、4つのタップ係数値のみを含む。したがって、交換部104の動作と同様に、変更部105の動作は、1つのタップ情報が8つのタップ係数値を含む場合に比べて、速い速度で解へ収束するような演算を行うことができる。
【0255】
決定部106は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行うので、説明を省略する。
【0256】
(第3の実施形態の応用例)
次に、第3の実施形態を応用したアダプティブフィルタの動作について説明する。本実施形態を応用したアダプティブフィルタの構成は、16個のタップを有するほかは、第1および第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタの構成とほぼ同様である。
【0257】
詳細に説明すれば、本アダプティブフィルタは、図26のようなアダプティブフィルタとは一部分が異なり、16個の信号に対してそれぞれ一定の重み付けを行う構成である。また、本アダプティブフィルタは、16個のタップと、A/D変換器とを含む。本実施形態の応用例においても、タップ情報は、16個が設けられるが、1つのタップ情報は、8個のタップ係数値を含む。
【0258】
ただし、タップは16個あるので、評価の際の演算時および重み付け時には、1つのタップ情報に含まれる8つのタップ係数値の他に、さらに8つのタップ係数値が必要である。そこで、第2の実施形態の応用例の場合と同様に、演算時および重み付け時には、タップ番号が1〜8のタップ係数値の共役複素数値を算出して、これらをタップ番号が16〜9のタップ係数値とする。
【0259】
したがって、1つのタップ情報は、8つのタップ係数値のみを含むが、演算時および重み付け時には、1つのタップ情報は、16個のタップ係数値を含むものとして取り扱われる。よって、評価の際の演算時および重み付け時には、タップ情報T[k][m]におけるmは、16以下の自然数であるものとして取り扱う。
【0260】
このように、タップ番号が1〜8のタップ係数値の共役複素数値を、タップ番号が16〜9のタップ係数値とすることができるのは、前述の8タップアダプティブフィルタの場合と同様に、、タップが原点をはさんで互いに対称な位置にあるからである。
【0261】
よって、以上のようなタップ情報の構成によれば、タップ情報に含まれるタップ係数値は、タップの実際の数の半分になる。このような構成は、第2の実施形態の応用例における場合と同様に、探索における解への収束速度を速くして、精度を向上させることに役立つ。
【0262】
本実施形態を応用したアダプティブフィルタの選別部102、複製部103、交換部104、変更部105および決定部106の動作は、第1の実施形態を応用したアダプティブフィルタにおける動作と同様であるので、説明を省略する。但し、評価の際の演算時には、タップ情報T[k][m]におけるmは、16以下の自然数であるものとして取り扱われる。したがって、本実施形態の応用例におけるフィルタ演算は、16個の信号について行われる点で第1の実施形態の応用例とは異なる。
【0263】
(第5の実施形態の応用例)
本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第1の実施形態を応用したアダプティブフィルタと同様に、図26に示すように構成される。ただし、本実施形態の応用例は、タップ情報の構成が他の実施形態の応用例とは異なる。したがって、第1の実施形態を応用したアダプティブフィルタと共通の動作を行う場合の説明を省略し、相違する動作を行う場合を中心に説明する。
【0264】
第1の実施形態の応用例と同様に、本実施形態の応用例においても、タップ情報は、16個が設けられる。1つのタップ情報は、8つのタップ係数値と1つの回転子Rとを含む。したがって、タップ情報は9つの要素を含み、順に、T[k][1]、T[k][2]、…T[k][8]、R[k]と表すことができる。kは、タップ情報番号を表し、16以下の自然数である。また、タップ情報に含まれる9つの要素には、順に1〜9の要素番号が付せられる。
【0265】
次に、図6を参照しつつ、重み付け制御部5の動作について説明する。ステップS100〜S400における動作は、第1の実施形態の応用例における動作と同様である。サブルーチンステップS500において、評価部101は、以下のような動作を行う。
【0266】
図8を参照しつつ、8相位相変調方式が用いられる場合における評価部101の動作について説明する。前述のように、送信時における信号点配置座標は、図3のように図示される。
【0267】
ステップS510において、評価部101は、バッファ107および情報記憶部100からのデータを入力されて、次式(10)のような演算を行う。なお、式中のRealは実数成分の抽出を意味し、Imagは虚数成分の抽出を意味するものとする。
【数10】
【0268】
上式(10)のように、評価部101は、サンプルデータおよび情報記憶部100に記憶されているタップ情報から、図4に示されるような前述のフィルタ演算を行い、さらに回転子を乗算して演算値を生成する。ステップS520において、評価部101は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行う。
【0269】
次に、サブルーチンステップS600およびS700における重み付け制御部5の動作は、第1の実施形態の応用例における動作と同様である。サブルーチンステップS800において、交換部104は、以下のような動作を行う。なお、図12および図13におけるタップ番号mは、要素番号と読み替えるものとする。
【0270】
図12を参照すると、ステップS810において、交換部104は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行う。次に、交換部104は、1つまたは複数の要素番号をランダムに選ぶ(ステップS820)。交換部104は、ランダムに選ばれた要素番号のタップ係数値または回転子を、組み合わせられたタップ情報同士で交換して、新しい1組のタップ情報をそれぞれ生成する。交換部104は、新しく生成された1組2個のタップ情報を、情報記憶部100に記憶させる(ステップS830)。
【0271】
ステップS840において、交換部104は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行う。以上のようにして交換処理が終了した後、重み付け制御部5は、サブルーチンステップS900の処理を開始する。
【0272】
図13を参照すると、ステップS910〜ステップS940において、変更部105は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行う。ステップS950において、変更部105は、1つまたは複数の要素番号をランダムに求める。
【0273】
ステップS960において、変更部105は、設定された乱数範囲内で、変更値をランダムに発生させる。ステップS970において、変更部105は、上記のように求められた要素番号に対応するタップ係数値に対して、ランダムに発生させられた変更値を加算し、加算された値を新たなタップ係数値とする。ただし、上記のように求められた要素番号が9であるとき、すなわち回転子であるときには、ランダムに発生させられた変更値をさらに2で割ってから加算し、加算された値を新たな回転子とする。変更部105は、このようにして生成された新しい4個のタップ情報を情報記憶部100に記憶させる。ステップS980において、変更部105は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行う。
【0274】
また、以上のような動作に替えて、変更部105は、第1の実施形態の応用例における動作と同様に、次のような動作を行ってもよい。ステップS920において、変更部105は、最適解近傍に解が収束しつつある場合であるか否かを判断する際に、情報記憶部100、評価部101、選別部102、複製部103、交換部104および変更部105における各動作の通算繰り返し回数を用いる。具体的には、変更部105は、各動作の通算繰り返し回数が32回以上の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合であると判断し、32回未満の場合には、最適解近傍に解が収束しつつある場合でないと判断する。このような動作においては、変更部105は、最高評価値を算出する必要がないので、簡易な構成にすることができる。
【0275】
次に、図6を参照すると、ステップS1000およびステップS1100において、決定部106は、第1の実施形態の応用例における動作と同様の動作を行うので、説明を省略する。
【0276】
ステップS1200において、決定部106は、前述のように選別部102に一時的に保存されている4つのタップ情報から評価値が2位のタップ情報を取り出す。取り出されたタップ情報は、8つのタップ係数値と1つの回転子Rとを含む。決定部106は、これら8つのタップ係数値に対して回転子をそれぞれ乗算する。決定部106は、これらの乗算された値を重み付け用タップ情報として、上述の重み付け部4へ入力する。
【0277】
このように、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、タップ情報に回転子Rを含む。この回転子Rを乗算することによって、図示されない復調部は、位相回転の調整を行う必要がなくなる。また、タップ情報に回転子Rが含まれることにより、8つのタップ係数値は、位相回転に関する拘束条件を付されることになる。したがって、当該拘束条件を付された8つのタップ係数値は、条件が付されない場合よりも精度の高い重み付けを行うことができる。
【0278】
(第6の実施形態の応用例)
本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第1および第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタの構成および動作に、トレーニングを行う構成および動作が付加される。したがって、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第1および第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタとほぼ同様の構成および動作を行うが、一定期間のトレーニングを行う点が他と異なる。このトレーニング期間において、送信される信号はトレーニング用の信号と同じである。以下では、図6を参照しつつ、動作の共通点に関する説明を省略し、相違点について説明する。
【0279】
図6において、本実施形態を応用したアダプティブフィルタのステップS400までの動作は、第1および第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタにおける動作と同様である。本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、受信開始後の一定期間中、典型的には、最初の16シンボル分を受信する期間中、トレーニングを行う。
【0280】
サブルーチンステップS500において、トレーニングを行う評価部101は、第1および第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタにおける動作とは、異なる動作を行う。図20は、本実施形態の応用例におけるサブルーチンステップS500の詳細な動作を示したフローチャートである。
【0281】
図20を参照すると、評価部101は、ステップS530において、タップ情報およびサンプルデータから前述のようなフィルタ演算をおこなって演算値を生成する。次に、ステップS540において、評価部101は、生成された演算値とトレーニングデータとの2乗誤差を求め、その総和をタップ情報の評価値とする。このような演算は、次式(11)のように表すことができる。なお、式中のRealは実数成分、Imagは虚数成分の抽出を意味する。
【数11】
【0282】
上式(11)において、D[n]は、既知のトレーニングデータを表す。nは、サンプル番号を表す。この既知のトレーニングデータは、予め定められていれば、0と1とが繰り返されたデータでもよいし、16シンボル全てが異なるデータであってもよい。送信される信号も、この既知のトレーニングデータを含む。
【0283】
上式(11)のように、評価部101は、図4に示されるようなサンプルデータおよび情報記憶部100に記憶されているタップ情報のフィルタ演算を行う。評価部101は、この演算結果と既知のトレーニングデータD[n]との二乗誤差(差の二乗)を実数成分、虚数成分毎に求めて加算する。評価値P[k]は、その加算された値である。
【0284】
算出された評価値は、16個のタップ情報に対応して、それぞれ算出される。したがって、本実施形態の応用例における評価部101は、第1および第2の実施形態の応用例の場合と同様に、16個の評価値を得ることができる。
【0285】
次に、サブルーチンステップS600からステップS1200までの本実施形態を応用したアダプティブフィルタの選別部102、複製部103、交換部104、変更部105および決定部106の動作は、第1の実施形態を応用したアダプティブフィルタにおける動作と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、ステップS1300の動作が省略される。
【0286】
以上のようにして、バッファ107は、16シンボル分のデータを取り込むには、4回の動作が必要となる。この4回の動作を終えると、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、トレーニング動作を終了する。
【0287】
トレーニング動作を終了するとそれ以降、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第1ないし第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタと全く同様の動作を行う。このように、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第1ないし第2の実施形態を応用したアダプティブフィルタに加えて、さらにトレーニング動作をすることが特徴である。
【0288】
また、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第3ないし第4の実施形態を応用したアダプティブフィルタに加えて、さらにトレーニング動作をするように構成してもよい。ただし、タップの数に応じて、タップ番号mは1から16までの整数となる。
【0289】
さらに、本実施形態を応用したアダプティブフィルタは、第5の実施形態を応用したアダプティブフィルタに加えて、さらにトレーニング動作をするように構成してもよい。ただし、各フィルタ演算値には、回転子Rが乗算されなければならない。このような演算は、次式(12)のように示される。
【数12】
【0290】
上述のようなトレーニング動作は、予め定められたトレーニング用の信号点座標のみにサンプルデータの信号点を集めることができる。したがって、所望の信号を正確に分離することのできる精度の高いタップ係数値を求めることができる。
【0291】
以上のようないわゆる遺伝的アルゴリズムを用いる各実施形態を応用したアダプティブフィルタは、従来のLMSアルゴリズムを用いる場合よりも、並列処理を行わない場合には、やや演算量が多くなるものの、解への収束速度が速い結果、精度の高いアダプティブ制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成を示した模式図である。
【図2】4相位相変調における信号点配置座標を示す図である。
【図3】8相位相変調における信号点配置座標を示す図である。
【図4】アレー合成演算を行う構成を示した模式図である。
【図5】重み付け制御部5の詳細な構成を示した模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における重み付け制御部5の動作を示すフローチャートである。
【図7】初期ウェイト情報の一例を示す図である。
【図8】図6のサブルーチンステップS500(評価処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。
【図9】評価部101において並列演算を可能にする構成を示したブロック図である。
【図10】図6のサブルーチンステップS600(選別処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。
【図11】図6のサブルーチンステップS700(複製処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。
【図12】図6のサブルーチンステップS800(交換処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。
【図13】図6のサブルーチンステップS900(変更処理)における詳細な処理を示したフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ素子の配列形状を示した模式図である。
【図15】本発明の第2の実施形態におけるウェイト情報の変換方法を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態において、図6のサブルーチンステップS800(交換処理)の詳細な処理を示したフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態におけるウェイト情報の交換方法の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係るアンテナ素子の配列形状を示した模式図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係るアンテナ素子の配列形状を示した模式図である。
【図20】本発明の第6の実施形態におけるサブルーチンステップS500(評価処理)の詳細な動作を示したフローチャートである。
【図21】本発明のアルゴリズムを用いたアダプティブアレーアンテナにおける、解の収束速度を表したグラフである。
【図22】従来におけるアダプティブアレーアンテナの構成を示したブロック図である。
【図23】従来におけるLMSアルゴリズムの演算を実現する構成を示したブロック図である。
【図24】従来におけるRLSアルゴリズムの演算を実現する構成を示したブロック図である。
【図25】従来におけるLMSアルゴリズムのアルゴリズムを用いたアダプティブアレーアンテナにおける、解の収束速度を表したグラフである。
【図26】本発明の一実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成をアダプティブフィルタに適用した場合の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
4 重み付け部
5 重み付け制御部
6 加算器
10 アレーアンテナ部
11〜18 アンテナ素子
21〜28 チューナ
30〜38 A/D変換器
71〜78 タップ
100 情報記憶部
101 評価部
102 選別部
103 複製部
104 交換部
105 変更部
106 決定部
107 バッファ
111〜118 アンテナ素子
111’〜118’ アンテナ素子
401〜408 乗算器
411〜418 素子ウェイト部
Claims (13)
- 受信信号に対して重み付けを行って指向性を変化させるアダプティブアレーアンテナであって、
信号を受信する複数のアレーアンテナ素子と、
複数の前記アレーアンテナ素子からの入力信号に重み付けを行うための複数の素子ウェイト値を含むウェイト情報を算出する重み付け制御部と、
前記重み付け制御部から前記ウェイト情報が入力されて、複数の前記アレーアンテナ素子からの信号に対してそれぞれ重み付けを行う重み付け部と、
前記重み付け部からの信号を全て合成する加算器とを備え、
前記重み付け制御部は、
複数の前記アレーアンテナ素子からの信号をサンプリングしたサンプルデータを記憶するバッファと、
前記ウェイト情報の候補となる複数のウェイト情報について、前記サンプルデータと当該ウェイト情報とを前記アレーアンテナ素子に対応する要素ごとに乗算して合成するアレー合成演算をそれぞれ行い、それぞれの演算結果から当該ウェイト情報に対する評価値をそれぞれ算出する評価部と、
前記評価値に対応するウェイト情報から2つ以上を選別する選別部と、
前記選別部から送られた前記2つ以上のウェイト情報を、非線形操作により更新して出力する非線形処理部と、
前記非線形処理部が更新したウェイト情報を記憶して、前記評価部へ入力する情報記憶部と、
前記2つ以上選別されたウェイト情報に対応する評価値から所望の評価値に対応するウェイト情報を出力する決定部とを有し、
前記ウェイト情報の候補となる複数のウェイト情報は、前記評価部が出力した対応する評価値に基づいて、ウェイト情報が選別され、さらに前記非線形処理部により非線形操作が行われたのち、再評価されることを所定の回数だけ繰り返して所定の初期ウェイト情報から更新されていき、所定の回数が終了すると、前記決定部によって前記所望の評価値に対応するウェイト情報のみが出力されることを特徴とする、アダプティブアレーアンテナ。 - 前記非線形処理部は、(1)前記2つ以上選別されたウェイト情報に含まれる各素子ウェイト値の1つ以上を相互に交換して新たなウェイト情報を生成する交換部、(2)前記2つ以上選別された複数のウェイト情報に含まれる素子ウェイト値の1つ以上を乱数によって変更し、新たなウェイト情報を生成する変更部、(3)前記2つ以上選別されたウェイト情報をそのまま複製して新たなウェイト情報を生成する複製部、の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記情報記憶部は、複数の異なる指向性を持つように予め定められた初期ウェイト情報を有し、当該初期ウェイト情報を受信信号が入力される前に前記評価部へ入力することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記情報記憶部は、過去に受信信号を送信した複数の送信局毎に対応するウェイト情報を保存し、新たに送信局が変更される毎に保存したウェイト情報をロードして新たなウェイト情報とすることを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、前記アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の原点からの距離と、所定値との二乗誤差を求め、当該二乗誤差の値が小さいほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、前記アレー合成演算の結果から算出される信号点座標と、送信時における信号点配置座標との座標間距離を求め、当該距離が短いほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、予めトレーニングのための信号点座標を有し、前記アレー合成演算の結果から算出される信号点座標と、トレーニングのための信号点座標との座標間距離を求め、当該距離が短いほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、前記アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の実数成分および虚数成分をそれぞれ正とした信号点座標と、送信時において第1象現に存在する信号点配置座標との座標間距離を求め、当該距離が短いほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする、請求項6に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、送信時において第1象現に存在する信号点配置座標が複数存在する場合には、前記アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の実数成分の絶対値と、複数の前記信号点配置座標の実数成分との2乗誤差をそれぞれ求めてそれら全てを乗算し、前記アレー合成演算の結果から算出される信号点座標の虚数成分の絶対値と、複数の前記信号点配置座標の虚数成分との2乗誤差をそれぞれ求めてそれら全てを乗算し、これらの乗算された値同士を加算した値が小さいほど高い評価の評価値を算出することを特徴とする、請求項8に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、サンプル時刻が互いに異なる複数のサンプルデータ毎にアレー合成演算を行い、算出された複数の評価値を合計した値を評価値として算出することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記決定部は、選別された複数のウェイト情報に対応する評価値の中で2番目に高い評価値に対応するウェイト情報を算出することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記評価部は、前記ウェイト情報の候補となる複数のウェイト情報に対応する評価値をそれぞれ並列演算して算出することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
- 前記ウェイト情報は、前記アレーアンテナ素子に対応する複数の素子ウェイト値に加えて、複数の当該素子ウェイト値に対して位相回転に関する拘束条件を付す回転子を素子ウェイト値としてさらに含み、
前記評価部が行うアレー合成演算は、前記サンプルデータと当該ウェイト情報とを前記アレーアンテナ素子に対応する要素ごとに乗算し、乗算された値のそれぞれに回転子を乗算して合成することを特徴とする、請求項1に記載のアダプティブアレーアンテナ。
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