JP4085962B2 - 繊維ボードの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ケナフ繊維を原料とする繊維ボードの製造方法に関するものである。
住宅等の壁を形成する壁材としては、透湿性(通気性)を有する繊維ボードが用いられている。一般的に室内の水蒸気圧は室外の水蒸気圧よりも高いので、上記のように透湿性繊維ボードによって壁を形成してあると、室内の湿気(水分)を壁を通して室外へ移動させることができるものである。
従来、上記のような透湿性繊維ボードとしては、アブラヤシ繊維及びジュート繊維等の植物性天然繊維を主原料とする成型ボードが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この成型ボードは通気性を具備する上に、剛直性をも所望する場合には、接着剤の種類及びその使用量率を設定することによって達成できるというものである。
特開平6−285819号公報(段落番号[0011]等)
しかし、上記成型ボードにおいて、接着剤の種類等を設定することによって得られる剛直性や強度には限界がある。仮にこの限界を超えて剛直性や強度を高めることができたとしても、この場合にはもはや十分な透湿性を確保できないものとなっている場合が多く、この場合には以下のような問題が生じる。
すなわち、透湿性が不十分な成型ボードによって壁を形成すると、室内の湿気が壁内に浸入し難くなるのはもちろん、一旦、壁内に浸入した湿気は室外へ出難くもなるので壁内に滞留することとなる。そうすると壁の強度をある程度高めていても、やがては壁内で結露が生じ、この結露により壁内の柱や断熱材が腐朽するほか、壁自体の強度も弱められるおそれがある。逆に、透湿性が十分な成型ボードでは、当初から十分な強度を確保することができず、壁材として用いることができない。
このように、アブラヤシ繊維等の植物性天然繊維を主原料とする成型ボードでは、住宅等の壁を形成する壁材に要求される透湿性及び強度を満足させることは難しいものであり、また、壁材と同様に透湿性及び強度が要求される床材、天井材、下地材等の建築材料として上記成型ボードを利用するのも困難である。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高い透湿性を有しながら、強度が十分に高められた繊維ボードの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る繊維ボードの製造方法は、ケナフの靭皮部を茎芯部から分離する靭皮部分離工程と、ケナフの靭皮部を解繊してケナフ繊維を得る繊維化工程と、解繊して得られたケナフ繊維を集合させて平均長さが10〜200mm及び平均径が10〜300μmのケナフ繊維よりなる繊維マットを得るマット化工程と、繊維マットに熱硬化性接着剤を供給して繊維マットに熱硬化性接着剤を含浸する接着剤供給工程と、熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを乾燥する接着剤乾燥工程と、接着剤乾燥工程で得られた繊維マットを密度が600〜900kg/mとなるように加熱加圧して繊維ボードを成形する成形工程とを有し、上記熱硬化性接着剤が、単量体を10〜40重量%と、分子量200〜2000の多量体を60〜90重量%含み、平均分子量が400〜700のフェノール樹脂であることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、繊維マットに含浸した熱硬化性接着剤の量を繊維マットの重量の130%以下となるように、熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを加圧する含浸量調整工程を、接着剤乾燥工程の前に有することを特徴とするものである。
また請求項3の発明は、請求項2において、含浸量調整工程で繊維マットを加圧する方法が、対をなすローラー間に熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを通過させる方法であることを特徴とするものである。
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、繊維マットの含水率を25重量%以下に調整する繊維マット乾燥工程を、接着剤供給工程の前に有することを特徴とするものである。
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、接着剤乾燥工程で熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを乾燥するにあたって、繊維マットの表面に120℃以下の温度の気流を接触させながら乾燥することを特徴とするものである。
また請求項6の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、接着剤乾燥工程で熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを乾燥するにあたって、120℃以下の雰囲気内で、繊維マットの片面から繊維マットの内部を吸引しながら乾燥することを特徴とするものである。
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、茎芯部から分離したケナフの靭皮部の含水率を10〜40重量%に調整する靭皮部含水率調整工程を、繊維化工程の前に有することを特徴とするものである。
また請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、成形工程で得られた繊維ボードの表面に、繊維マットに含浸した熱硬化性接着剤より含浸性の低い第2の接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程を、成形工程の後に有することを特徴とするものである。
また請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、成形工程で繊維マットを加熱加圧する際に、繊維マットの表面に、繊維マットを構成するケナフ繊維より繊維径の細い微細繊維よりなる微細繊維シートを重ねて、加熱加圧を行なうことを特徴とするものである。
また請求項10の発明は、請求項9において、繊維マットに微細繊維シートを重ねて加熱加圧した後に、微細繊維シートに貫通する穴を設けることを特徴とするものである。
本発明によれば、高い透湿性を有しながら、強度を十分に高めた繊維ボードを製造することができるものであり、住宅等の壁を形成する壁材としてこの繊維ボードを利用することができるほか、壁材と同様に透湿性及び強度が要求される床材、天井材、下地材等の建築材料として利用することもできるものである。
また、10〜40重量%含まれる単量体は主としてケナフ繊維内に浸透し、また60〜90重量%含まれる分子量200〜2000の多量体はケナフ繊維内への浸透性が低く主としてケナフ繊維の表面に付着する。そして、ケナフ繊維の内部に浸透した成分が硬化することによって、ケナフ繊維内への水分の吸収を抑制することができ、水分の吸収によるケナフ繊維の膨潤、変形を抑制して繊維ボードの寸法安定性を高めることができるものであり、またケナフ繊維の表面に付着した成分が硬化することによってケナフ繊維同士を強固に接着・結合させることができ、繊維ボードの剥離強度を高めることができるものである。この結果、寸法安定性に優れると共に高い剥離強度を有する繊維ボードを得ることができるものである。
また請求項2の発明によれば、接着剤乾燥工程で繊維マットを乾燥する際に、繊維マット内を熱硬化性接着剤が移動することを抑制して、繊維マット内に熱硬化性接着剤を均一に分散させることができ、繊維ボードの機械的特性や耐水性能を向上することができるものである。
また請求項3の発明によれば、繊維マットの熱硬化性接着剤の含浸量調整を容易に行なうことができるものである。
また請求項4の発明によれば、接着剤供給工程で熱硬化性接着剤を供給する際に、含水率を低下させたケナフ繊維内への接着剤の樹脂分の浸透性を高めることができ、寸法安定性の高い繊維ボードを得ることができるものである。
また請求項5の発明によれば、繊維マット内の熱硬化性接着剤が移動することを抑制しながら乾燥を行なうことができるものであり、繊維マット内に熱硬化性接着剤を均一に分散させることができて、繊維ボードの機械的特性や耐水性能を向上することができるものである。
また請求項6の発明によれば、繊維マット内の厚さ方向での温度差を小さくした状態で乾燥を行なうことができるものであり、繊維マット内に熱硬化性接着剤を均一に分散させることができて、繊維ボードの機械的特性や耐水性能を向上することができるものである。
また請求項7の発明によれば、含水率の調整によって低グレードの靭皮部であっても解繊することができ、低グレードの靭皮部を用いて繊維ボードを製造することが可能になるものである。
また請求項8の発明によれば、繊維ボードの表面に表面仕上げ材を接着強度高く貼り付けることができると共に表面を平滑に仕上げることができ、キャスター等に対する耐久性を高く得ることができるものである。
また請求項9の発明によれば、繊維ボードの表面に表面仕上げ材を接着強度高く貼り付けることができると共に表面を平滑に仕上げることができ、キャスター等に対する耐久性を高く得ることができるものである。
また請求項10の発明によれば、微細繊維シートの上に表面仕上げ材を貼り付けるにあたって、接着剤を穴に通して繊維ボードにまで浸透させることができ、表面仕上げ材の接着強度を高めることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
ケナフはアオイ科の一年生植物であり、ケナフの茎部は芯部とその周囲の靭皮部から構成されている。そしてまず靭皮部分離工程で、ケナフの茎部を粉砕機で粉砕することにより、靭皮部を茎芯部から分離し、靭皮部を得る。
次に、このようにして得られた靭皮部から、繊維化工程でケナフ繊維を得る。図2(a)は繊維化工程の一例を示すものであり、解繊装置7を用いて靭皮部8を解繊処理することによってケナフ繊維1を得ることができるものである。すなわち解繊装置7は先端が尖ったピン9を外周に多数突設したピン付きシリンダー10と、ピン付きシリンダー10の前後に配置された前移送ローラ11と後移送ローラ12から形成されるものであり、前移送ローラ11で靭皮部8を回転駆動されるピン付きシリンダー10に投入し、ピン付きシリンダー10のピン9で靭皮部8を解繊すると共に、靭皮部8を解繊して得られるケナフ繊維1を後移送ローラ12で取り出すことができる。このとき、ケナフ繊維1は繊維方向に配向が生じないように、方向を揃えずに投入・取り出しをするようにしてある。
繊維化工程におけるこの解繊処理は、ケナフ繊維1の平均長さが10〜200mmに、より好ましくは15〜80mmに、且つケナフ繊維1の平均径が10〜300μmに、より好ましくは70〜150μmになるように行なうものであり、本発明はこのように解繊したケナフ繊維1を用いて繊維ボードを製造するものである。ここで図4(a)はケナフ繊維1の断面を顕微鏡で観察した模式図であり、一本のケナフ繊維1は直径10〜30μmの多数の単繊維2が結合して成り立っており、単繊維2の細胞壁3は中央に導管4を形成している。5は繊維表面を示すものである。
ケナフ繊維1の平均長さが上記の範囲より短いと、ケナフ繊維1同士の絡み合いが不十分となり、繊維ボードの強度を十分に高めることができない。逆に、ケナフ繊維1の平均長さが上記の範囲より長いと、後述する繊維マットを均一な構造となるように作製するのが困難となり、加熱加圧成形により得られる繊維ボードの密度のバラツキが大きくなることによって、強度面において欠陥となる部分が生じるおそれがある。また、ケナフ繊維1の平均径が上記の範囲より小さいと、強度面においては、ケナフ繊維1の接触点が多くなり、ケナフ繊維1同士の絡み合いが強まることによって、繊維ボードの強度を高めることができる反面、ケナフ繊維1間の空隙が小さくなるために透湿性が低くなるおそれがある。逆に、ケナフ繊維1の平均径が上記の範囲より大きいと、透湿性を有する繊維ボードを得ることはできるが、アブラヤシ繊維等と同様に平均径が太すぎるために、繊維ボードの強度が弱くなる。
次に、上記の繊維化工程で得られたケナフ繊維1を集合させて、マット化工程で繊維マット14を得る。図2(b)は繊維化工程の一例を示すものであり、搬送ネット15の上に繊維散布ノズル13からケナフ繊維1を撒いて所定厚みに堆積させ、搬送ネット15上のケナフ繊維1の集合体に上下からニードル16を突き刺してニードルパンチングを行なうことによって、ケナフ繊維1同士を絡み合わせ、繊維マット14を得ることができるものである。このとき、ケナフ繊維1を上から散布することによってランダムな向きになるように堆積して繊維マット14を作製することができるものである。またこのように単に堆積させた場合にはケナフ繊維1の繊維方向はX方向とY方向にのみランダムになるが、ケナフ繊維1を堆積させた後に、長さ方向(厚み方向と垂直な方向)で圧縮することによって、繊維方向はZ方向にも多少ランダム化されるようにすることができるものであり、得られる繊維ボードの厚み方向の特性を向上することができるものである。
そして、上記のようにして得た繊維マット14に接着剤供給工程で熱硬化性接着剤を供給して含浸させる。図2(c)は接着剤供給工程の一例を示すものであって、含浸槽18に液状の熱硬化性接着剤19が供給してあり、送りコンベア20で繊維マット14を含浸槽18に通して熱硬化性接着剤19に浸漬させることによって、繊維マット14に熱硬化性接着剤19を含浸させるようにしてある。含浸槽18で熱硬化性接着剤19を含浸した繊維マット14は、スクイズロール21に通して送り出される。熱硬化性接着剤19としては、フェノール樹脂接着剤を用いることができる。また繊維マットに対する熱硬化性接着剤の付着量が樹脂成分に換算して固形分で5〜40重量%の範囲になるように調整するのが好ましく、より好ましくは15〜30重量%である。15重量%より少ない場合、特に5重量%より少ない場合は、得られる繊維ボードの剥離強度が低下し、逆に30重量%より多い場合、特に40重量%より多い場合には、得られる繊維ボードの耐衝撃性が低下するおそれがある。
上記のように繊維マット14に熱硬化性接着剤を含浸させた後、接着剤乾燥工程で乾燥させることによって所定の含水率となるように調整する。乾燥は繊維マット14に常温風や熱風を送風したり、繊維マット14を加熱炉に導入して加熱したりすることによって行なうことができるものであり、繊維マット14中の水分が15重量%以下になるように乾燥を行なうのが望ましい。
そしてこの後に、繊維マット14を成形工程で加熱加圧成形し、熱硬化性接着剤を硬化させることによって、繊維ボードを作製することができるものである。加熱加圧成形の条件は、特に限定されるものではないが、温度120〜190℃、圧力1〜4MPaの範囲が好ましく、時間については板厚や加熱温度に応じて適宜設定されるものである。
本発明において、上記のようにして製造される繊維ボードは、密度が600〜900kg/mの範囲、より好ましくは700〜850kg/mの範囲になるように設定されるものである。このような密度の設定は、繊維ボードの作製時において熱硬化性接着剤の含有量を調整することや、繊維マットの面重量の調整等によって行なうことができる。繊維ボードの密度が上記の範囲より小さいと、繊維ボードにおける空隙の割合が増加することにより、透湿抵抗が小さくなって透湿性が高くなる反面、ケナフ繊維1同士の絡み合いが繊維ボードの強度向上に十分に寄与しなくなる。このような繊維ボードは透湿性はあるものの強度がないので、壁材等として用いるのは不適当である。逆に繊維ボードの密度が上記の範囲より大きいと、繊維ボードにおける空隙の割合が減少することにより、ケナフ繊維1同士の絡み合いが繊維ボードの強度向上に寄与する反面、透湿抵抗が大きくなって透湿性が低くなる。このような繊維ボードは強度はあるものの透湿性が不十分であり、結露を生じさせやすいので、壁材等として用いるのは不適当である。ちなみに、アブラヤシ繊維は、繊維径が太いものであるため、透湿性と強度の両者を満足するボードを得ることができない。また床材に用いた場合には、アブラヤシ繊維等の繊維径が太いものであれば、キャスターの耐久性に要求される表面硬度を満足するボードを得ることができない。
既述のように本発明に係る繊維ボードは、所定のケナフ繊維1を集合させた繊維マット14に熱硬化性接着剤を含浸させることによって、密度が600〜900kg/mとなるように作製されているので、高い透湿性を有しながら、強度を十分に高めることができるものである。そのため、住宅等の壁を形成する壁材として上記繊維ボードを利用することができるほか、壁材と同様に透湿性及び強度が要求される床材、天井材、下地材等の建築材料として利用することもできるものである。
特に、密度が700〜850kg/mである繊維ボードは、密度が700kg/mより小さい繊維ボードに比べて強度がさらに高く、密度が850kg/mより大きい繊維ボードに比べて透湿性がさらに高いものであり、透湿性と強度のバランスを一層良好に保つことができるものである。
上記の各工程を経て繊維ボードを製造するにあたって、接着剤乾燥工程では繊維マット14を常温〜120℃の温度、特に80〜120℃の温度で加熱して乾燥することができるが、このように乾燥を行なう際に、繊維マット14に含浸した熱硬化性接着剤が繊維マット11内から表面に移動し、繊維マット14内の熱硬化性接着剤が不均一になり、熱硬化性接着剤によるケナフ繊維1の接着・結合が不均一になって、繊維ボードの機械的特性や耐水性に問題が生じるおそれがある。
そこでこの場合には、熱硬化性接着剤を含浸した繊維マット14を加熱して乾燥する際に、繊維マット14の表面に高速の気流を接触させながら乾燥を行なうようにするのが好ましい。気流の温度は常温以上、120℃以下であることが好ましく、気流の流速は風速20m/秒以上であることが好ましい。さらに気流は繊維マット14の両面に作用させるのが望ましい。このように繊維マット14の表面に加熱した気流を接触させながら乾燥を行なうことによって、繊維マット14内の熱硬化性接着剤が移動することを抑制しながら乾燥を短時間で行なうことができるものであり、繊維マット14内に熱硬化性接着剤を均一に分散させることができ、繊維ボードの機械的特性や剥離強度、耐水性能を向上することができるものである。
また、熱硬化性接着剤を含浸した繊維マット14を加熱して乾燥する際に、常温以上、120℃以下の雰囲気内で、繊維マット14の片面から繊維マット14の内部を吸引しながら乾燥を行なうようにすることも好ましい。吸引は風速20m/秒程度の流速で行なうことが好ましい。このように繊維マット14の片面から繊維マット14の内部を吸引しながら乾燥を行なうことによって、繊維マット14内の厚さ方向での温度差を小さくした状態で乾燥を短時間で行なうことができるものであり、繊維マット14内に熱硬化性接着剤を均一に分散させることができ、繊維ボードの機械的特性や剥離強度、耐水性能を向上することができるものである。
また、上記の各工程を経て繊維ボードを製造するにあたって、接着剤供給工程と接着剤乾燥工程の間に含浸量調整工程を設け、繊維マット14に含浸した熱硬化性接着剤の含浸量を調整するようにしてもよい。熱硬化性接着剤は水等の溶剤で3〜6倍に希釈して繊維マットに含浸させるのが好ましく、その場合は繊維マット14に含浸した熱硬化性接着剤の量を繊維マット14の重量の130%以下となるように調整するのが好ましい。このように繊維マット14中の熱硬化性接着剤の含浸量を130重量%以下に調整した状態で、接着剤乾燥工程で乾燥を行なうことによって、繊維マット14内の熱硬化性接着剤がマット空隙を移動することを抑制しながら乾燥を短時間で行なうことができるものであり、繊維マット14内に熱硬化性接着剤を均一に分散させることができ、繊維ボードの機械的特性や耐水性能を向上することができるものである。繊維マット14中の熱硬化性接着剤の含浸量の下限は、特に限定されるものではないが、実用的には70重量%程度が下限である。
含浸量調整工程で繊維マット14中の熱硬化性接着剤の含浸量を130重量%以下に調整するにあたっては、例えば図3(a)のように、接着剤供給工程で熱硬化性接着剤を含浸した繊維マット14を、対をなすローラー23,23間に通過させて、面圧2.9MPa(30kg/cm)以上の圧力で加圧することによって、行なうことができる。
また繊維マット14中の熱硬化性接着剤の含浸量を130重量%以下に調整するにあたっては、図3(b)のように、全面に多数の孔25を設けたシート体26で繊維マット14を挟んで加圧し、この状態で、接着剤塗布工程で繊維マット14に熱硬化性接着剤を含浸させるようにしてもよい。このシート体26としては、孔明き金属板などを用いることができる。このように孔25付きのシート体26で繊維マット14を挟んで加圧した状態で熱硬化性接着剤を含浸させることによって、含浸量を規制した状態で繊維マット14に熱硬化性接着剤を含浸させることができるものであり、繊維マット14の重量の130%以下となるように調整しながら熱硬化性接着剤を含浸させることができるものである。従ってこの場合には、含浸量調整工程を特に必要とすることなく、接着剤供給工程で繊維マット14への熱硬化性接着剤の含浸量調整を行なうことができるものである。
また、上記の各工程を経て繊維ボードを製造するにあたって、マット化工程と接着剤供給工程の間に、繊維マット14を乾燥させる繊維マット乾燥工程を設け、繊維マット14の含水率を調整するようにしてもよい。含水率の調整は25重量%以下に調整するのが好ましく、特に15重量%以下が好ましい。繊維マット14の含水率の調整の下限は特に設定されないが、5重量%以下にまで含水率を下げる必要はない。このように繊維マット14を乾燥して含水率を25重量%以下、特に15重量%以下に低下させた後に、接着剤供給工程で熱硬化性接着剤を含浸させることによって、ケナフ繊維1内に樹脂分を効率良く浸透させることができ、より寸法安定性の高い繊維ボードを得ることができるものである。
さらに本発明において、靭皮部分離工程と繊維化工程の間に靭皮部含水率調整工程を設け、靭皮部分離工程で茎芯部から分離したケナフの靭皮部の含水率を10〜40重量%に調整するようにしてもよい。靭皮部が根元部分や皮付きなど低グレード品であると、靭皮部を繊維化工程で解繊してケナフ繊維1を得る際に、ケナフ繊維1が損傷を受けて短繊維化され、品質が良好な繊維マットを製造することができない。そこで、靭皮部含水率調整工程で靭皮部に水あるいは熱水を添加して、靭皮部の含水率を10〜40重量%に調整するようにしたものである。このように靭皮部の含水率を10〜40重量%に調整することによって、靭皮部が根元部分や皮付きなど低グレード品であっても、ケナフ繊維1に損傷を与えることなくスムーズに解繊することができるようになり、所定の繊維長を有するケナフ繊維を得ることができ、品質が良好な繊維マットを製造することができるものである。
また本発明において、ケナフ繊維を接着する熱硬化性接着剤としては、フェノール樹脂のなかでも、水溶性のレゾール型フェノール樹脂を用いるのが好ましいものであり、レゾール型フェノール樹脂は次のようにして調製することができる。すなわち、蒸留したフェノールと、ホルムアルデヒド水溶液と、アルカリ触媒とを秤量して反応容器にとり、オイルバスなどで加熱しながら攪拌することによって反応させ、硫酸を適量加えてpH調整することによって、過剰のアルカリ触媒を中和して沈殿させる。この後に、アスピレータで減圧しながら蒸留・脱水することによって、不揮発成分(樹脂成分)の重量比が50%程度のフェノール樹脂水溶液を得ることができるものであり、これを接着剤として使用することができるものである。
上記のアルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、アミン類などを用いることができるものであり、また反応条件は、温度条件が60〜95℃の範囲、反応時間が数十分から2時間程度の範囲が一般的である。そしてレゾール型フェノール樹脂は、フェノール、モノメチロールフェノール、ジメチロールフェノール、トリメチロールフェノールなどの単量体と、これらの単量体が2以上結合した多量体の混合物として調製されるものである。このようにフェノール樹脂は、分子量が90以上、200未満の単量体と、分子量が200以上、2000以下の多量体を含有しており、フェノール樹脂の分子量分布は例えば図5に示すような分布になっている。そして上記のようにフェノール樹脂を調製する際に、反応条件を制御したり、フェノールとアルデヒドのモル比を制御したり、アルカリ触媒の種類や量を選定したりすることによって、粘度の異なる様々な分子量をもつフェノール樹脂を得ることができるものであり、フェノール樹脂の分子量分布を自在に制御することができるものである。
そして本発明では、フェノール樹脂接着剤として、樹脂成分において、分子量90〜200の単量体を10〜40重量%と、分子量200〜2000の多量体を60〜90重量%含み(両者の合計100重量%)、平均分子量(重量平均分子量:Mw)が400〜700になるように調整したフェノール樹脂を用いるのが好ましい。単量体は分子サイズが小さいので、ケナフ繊維1内への浸透性が高く、図4(b)のように単量体mは主としてケナフ繊維1内に浸透し、また多量体は分子サイズが大きいので、ケナフ繊維1内への浸透性が低く、図4(c)のように多量体pは主としてケナフ繊維1の表面に付着する。従って、成形工程でフェノール樹脂接着剤を硬化させると、単量体はケナフ繊維1の内部で硬化し、繊維ボードが吸水してもケナフ繊維1内への水分の吸収が抑制され、水分の吸収によるケナフ繊維1の膨潤、変形を抑制して、繊維ボードの寸法安定性を高めることができるものである。また多量体はケナフ繊維1の表面で硬化し、ケナフ繊維1同士を強固に接着・結合させることができ、繊維ボードの剥離強度を高めることができるものである。このようにして、寸法安定性に優れると共に高い剥離強度を有する繊維ボードを得ることができるものである。
フェノール樹脂中の単量体の含有量が10重量%未満で、多量体の含有量が90重量%を超えると、ケナフ繊維1の内部へ浸透する樹脂分の量が少なくなって、寸法安定性が不十分になり、またフェノール樹脂中の単量体の含有量が40重量%を超え、多量体の含有量が60重量%未満であると、ケナフ繊維1の表面に付着する樹脂分の量が少なくなって、繊維ボードの剥離強度が不十分になる。さらに、フェノール樹脂の平均分子量が400未満であると、ケナフ繊維1の表面に付着する樹脂分の量が少なくなって、繊維ボードの剥離強度が不十分になり、またフェノール樹脂の平均分子量が700を超えると、ケナフ繊維1の内部へ浸透する樹脂分の量が少なくなって、寸法安定性が不十分になる。従って、寸法安定性と剥離強度の両方の特性を高く得るには、単量体や多量体の含有率、平均分子量が上記の範囲であるフェノール樹脂を用いる必要がある。
上記の各工程を経て製造される繊維ボードAを床表面材などとして使用する場合、繊維ボードAの表面には突き板や化粧シート等の表面仕上げ材28を接着剤29で貼り付ける必要がある。しかし繊維ボードAは空隙を有する多孔質であるので、繊維ボードAの表面に塗布した接着剤29が空隙内に浸透して吸収され、接着剤29による表面仕上げ材28の接着強度が低くなり、また表面仕上げ材28の剥離が生じ易い。そしてこの結果、キャスター等の往復荷重に対する耐久性に問題が生じるおそれがある。
そこで、成形工程で得られた繊維ボードAの表面に、繊維マット14に含浸した上記の熱硬化性接着剤より含浸性の低い第2の接着剤30を塗布する第2接着剤塗布工程を、成形工程の後に設けるようにしてある。含浸性の低い第2接着剤30は、繊維ボードAの空隙に浸透し難くて吸収されることが少なく、繊維ボードAの表層部の空隙を第2接着剤30で埋めることができるものであり、図6(a)のように繊維ボードAの表面に平滑な下地層を形成することができる。従って図6(b)のように、この第2接着剤30からなる平滑な下地層の上に接着剤29を塗布して表面仕上げ材28を接着することによって、接着剤29が繊維ボードAに浸透することを防いで、繊維ボードAの表面に表面仕上げ材28を接着強度高く貼り付けることができると共に、表面を平滑に仕上げることができるものであり、キャスター等に対する耐久性を高く得ることができるものである。
ここで、第2接着剤30としては、繊維マット14に含浸した上記の熱硬化性接着剤より粘度が高く、含浸性が低いものであれば、特に制限されるものではないが、SBRラテックス等を用いることができる。また第2接着剤30の粘度は、特に限定されるものではないが、1〜40Pa・s程度の範囲が好ましい。第2接着剤30の粘度をこのように高めるために、粉体を第2接着剤30に混合するようにしてもよい。この粉体としては、粒径が5mm以下のものが好ましく、小麦粉のような微細な粉末であってもよく、また繊維ボードAの端面などを削って出る粉等であってもよい。
また、上記のように繊維ボードAの表面に表面仕上げ材28を接着剤29で貼り付ける前に、図7(a)のように微細繊維シート32を繊維ボードAの表面に積層接着しておくようにしてもよい。微細繊維シート32の接着は、成形工程で繊維マット14を加熱加圧成形する際に、繊維マット14の表面に微細繊維シート32を重ねて加熱加圧を行なうことによって、繊維ボードAの成形と同時に行なうことができるものである。また繊維ボードAを成形した後に、繊維ボードAの表面に微細繊維シート32を貼り付けるようにしてもよい。そして図7(b)に示すように、この微細繊維シート32の上に表面仕上げ材28を接着剤29で接着することによって、繊維ボードAの表面に表面仕上げ材28を貼り付けることができるものである。微細繊維よりなる微細繊維シート32によって、繊維ボードAの表面の凹凸を吸収すると共に表面仕上げ材28の表面を平滑化することができ、キャスター等の往復荷重に対する耐久性を高く得ることができるものである。
微細繊維シート32は、上記のケナフ繊維1より繊維径の細い微細繊維よりなるものであり、微細繊維の繊維径は5〜100μmの範囲のものが好ましい。微細繊維径が100μmを超えると微細繊維シート32の平滑性が損なわれ、微細繊維シート32の上に貼り付けられる表面仕上げ材28の表面に凹凸が生じるおそれがある。微細繊維の繊維径は小さいほど好ましいが、5μm未満の微細繊維は作製が困難で入手することが難しい。この微細繊維としては特に限定されるものではないが、例えば木材パルプ繊維を用いることができるものであり、木材パルプ繊維からなる紙やシートを微細繊維シート32として使用することができるものである。木材パルプ繊維からなる微細繊維シート32は、入手の容易性、平滑性、ケナフ繊維などの植物繊維と構成成分が似ていて接着性が比較的良好であるなどの点から好ましい。勿論、微細繊維シート32としてはこのような木材パルプ繊維からなる紙やシートに限定されるものではなく、ポリエステル不織布などを用いることもできる。また微細繊維シート32は厚みが5〜200μmの範囲のものが好ましい。厚みが5μm未満であると、微細繊維シート32の強度が弱く、微細繊維シート32を貼り付けるときに破断するおそれがあり、厚みが200μmを超えると、キャスター等の往復荷重に対して微細繊維シート32内で破断が生じるおそれがある。さらに微細繊維シート32は単位面積あたりの重量が、10〜100g/mの範囲のものが好ましい。微細繊維シート32の重量が10g/m未満の場合は、微細繊維シート32を構成する繊維の絶対量が少なくなるため、十分な表面平滑性を付与できなくなり、逆に100g/mを超える場合は、微細繊維シート32を構成する微細繊維同士が十分に絡み合っていない部分が生じることがあり、その部分から微細繊維シート32が破断するおそれがある。
ここで、微細繊維シート32には表裏に貫通する穴33を形成するのが好ましく、成形工程の後に穴加工工程を設けて、このような穴33を形成するようにすることができる。穴33としては、図8(a)に示すようなドット状の穴33aとして形成したり、図8(b)に示すような溝状(スリット状)の穴33bとして形成したりすることができるものであり、微細繊維シート32の全面に亘るように設けるのが好ましい。
このように微細繊維シート32に貫通する穴33を設けることによって、図7(b)のように微細繊維シート32の上から表面仕上げ材28を接着剤29で接着するにあたって、この接着剤29は穴33を通して繊維マットAの内部にまで浸透することになり、繊維ボードAに対する表面仕上げ材28の接着強度を高めることができ、キャスター等の往復荷重に対する耐久性を高く得ることができるものである。
ここで、図8(b)に示すように溝状の穴33bを形成する場合、表面仕上げ材として木材の突き板を使用するときには、突き板の繊維方向Pと直交する方向に溝状の穴33bを形成するのが好ましい。このようにすれば、表面仕上げ材28が図8(c)のように繊維方向Pに剥がされる際に、溝状の穴33bの箇所で表面仕上げ材28は折れて切断され、これ以上に剥がれが進行しないようにすることができるものであり、表面仕上げ材28の剥離をより有効に防ぐことができるものである。
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、分子量の測定は、東ソー社製GPC測定装置「HLC802A」を用いて、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により行なった。このとき、分子量測定に用いる接着剤溶液をTHF溶液で溶解後、フィルターで濾過して分析に用い、分子量計算はポリエチレン換算で行ない、重量平均値を接着剤の分子量とした。
(実施例1)
ケナフの茎の靭皮部から得られる長繊維束(幅:1〜2cm、長さ:2〜4m)を機械的に解繊処理することによって、平均長さが25mm及び平均径が100μmであるケナフ繊維を得た。次にこのケナフ繊維を積層し、ニードルパンチングすることによって繊維マットを得た。次にこの繊維マットをフェノール樹脂接着剤中に浸漬した後、絞りローラーに通して絞ることによって、フェノール樹脂接着剤の含有量が25質量%となるように調整した。ここで、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量584、分子量の範囲が90〜190の単量体と分子量の範囲が200〜2000の多量体の重量比率が30:70のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分比率50重量%)に水を加えて樹脂固形分比率を22.2重量%に調整したものを用い、繊維マットに含浸した後、絞りローラーに通過させることにより、繊維マットに含浸した熱硬化性樹脂の量を繊維マットの重量の120重量%にした。
次にフェノール樹脂接着剤を含有する繊維マットを80℃で、含水率が約10質量%となるように乾燥した。この後、この繊維マットを170℃、3MPa、4分間の条件で加熱加圧成形し、厚さ4mmのケナフ繊維ボードを得た。このケナフ繊維ボードの密度は600kg/m、樹脂付着量は25重量%であった。
(実施例2)
ケナフ繊維ボードの密度を750kg/mとした他は、実施例1と同様にした。
(実施例3)
ケナフ繊維ボードの密度を800kg/mとした他は、実施例1と同様にした。
(実施例4)
ケナフ繊維ボードの密度を850kg/mとした他は、実施例1と同様にした。
(実施例5)
ケナフ繊維ボードの密度を900kg/mとした他は、実施例1と同様にした。
(比較例1)
ケナフ繊維ボードの密度を500kg/mとした他は、実施例1と同様にした。
(比較例2)
ケナフ繊維ボードの密度を1000kg/mとした他は、実施例1と同様にした。
(比較例3)
厚さ4mm、密度550kg/mの市販の合板(ラワン合板)を用いた。
そして、上記の実施例1〜5及び比較例1、2のケナフ繊維ボード並びに比較例3の合板を試料として、透湿抵抗及び曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
なお、透湿抵抗の測定は、JIS A 1324(建築材料の透湿性測定方法)に示すカップ法に基づいて行った。すなわち、直径30cmの透湿カップ内に塩化カルシウムを入れた後に、このカップを試料で密閉することによって、試料の取付けを行った。次に、試料を取り付けたカップを温度23℃、相対湿度50%に設定した恒温恒湿槽内に置き、所定の時間間隔でカップを取り出して、カップの質量増加を測定し、試料の透湿量を求めた。そして、次の式から透湿抵抗を算出した。
Zp=(P−P)×A/G
ここに、Zp:透湿抵抗[(m・s・Pa)/ng]{(m・h・mmHg)/g}、G:透湿量(ng/s){g/h}、A:透湿面積(0.0625m)、P:恒温恒湿槽内の空気の水蒸気圧(Pa){mmHg}、P:透湿カップ内の空気の水蒸気圧(0Pa){0mmHg}である。
一方、曲げ強度は、JIS A 5905(繊維板)に基づく曲げ強さ試験を行うことによって測定した。
Figure 0004085962
表1にみられるように、実施例1〜5について、透湿抵抗はたかだか5376(m・s・Pa)/ngであり、また、曲げ強度は最低でも48MPaであることから、実施例1〜5のケナフ繊維ボードはいずれも透湿性及び強度が高いものであることが確認される。
一方、所定のケナフ繊維を用いても、比較例1のケナフ繊維ボードのように密度が600kg/mを下回ると曲げ強度が著しく低くなり、比較例2のケナフ繊維ボードのように密度が900kg/mを上回ると透湿抵抗が著しく高くなり、透湿抵抗と強度のバランスがとれなくなることが確認される。また、比較例3の市販の合板では、透湿抵抗も強度も十分に得ることができないことが確認される。
(実施例6)
平均繊維長さ25mm、平均繊維径100μmのケナフ繊維を集合させてマット面重量が0.94g/cmの繊維マットを作製した。この繊維マットの含水率を測定したところ、25重量%であった。
そして接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量498、分子量の範囲が90〜190の単量体と分子量の範囲が200〜2000の多量体の重量比率が40:60のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分比率50重量%)を用い、フェノール樹脂接着剤に繊維マットを10秒間浸漬した後、絞りローラに繊維マットを通すことによって、繊維マットにフェノール樹脂接着剤を、フェノール樹脂成分の含有率が25重量%になるように付着させた。
次に、接着剤乾燥工程において、上記の接着剤を塗布した繊維マットに50℃の乾燥空気を送風することによって、繊維マット中の水分量が10重量%になるように乾燥を行なった。
次に、成形工程において、上記の乾燥した繊維マットを3層重ねた後、成形温度170℃、成形圧力3MPa、時間3.5分の条件で加熱加圧成形をすることによって、厚さ4mm、ボード密度750kg/mのケナフ繊維ボードを得た。
(実施例7)
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量560、分子量の範囲が90〜190の単量体と分子量の範囲が200〜2000の多量体の重量比率が30:70のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分50重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
(実施例8)
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量640、分子量の範囲が90〜190の単量体と分子量の範囲が200〜2000の多量体の重量比率が20:80のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分52重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
(実施例9)
繊維マットをまず繊維マット乾燥工程で含水率が13重量%になるように乾燥した。このように乾燥した繊維マットを用い、後は実施例8と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
比較例4
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量360、分子量の範囲が200〜650の多量体が100%のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分47重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
比較例5
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量605、分子量の範囲が200〜1000の多量体が100%のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分52重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
比較例6
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量1010、分子量の範囲が200〜2000の多量体が100%のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分53重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
比較例7
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量450、分子量の範囲が90〜190の単量体と分子量の範囲が200〜1000の多量体の重量比率が60:40のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分47重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
比較例8
接着剤塗布工程において、フェノール樹脂接着剤として、重量平均分子量690、分子量の範囲が90〜190の単量体と分子量の範囲が200〜2000の多量体の重量比率が3:97のレゾール型フェノール樹脂接着剤(樹脂成分52重量%)を用いるようにした他は、実施例6と同様にしてケナフ繊維ボードを得た。
上記の実施例6〜9及び比較例4〜8で作製したケナフ繊維ボードについて、JIS A 5905(繊維板)で規定された方法に準拠し、吸水厚さ膨張率及び剥離強さの試験を行なった。その結果を表2に示す。
Figure 0004085962
表2にみられるように、実施例6〜9のものはいずれも、吸水厚さ膨張率が小さく、寸法安定性に優れていると共に、剥離強さが高いことが確認される。
(実施例15)
ケナフを解繊して得た平均繊維長さが30mm、平均繊維径が150μmのケナフ繊維を長さ10〜200mmに切断し、このケナフ繊維を積層してニードルパンチングすることによって繊維マットを得た。次にこの繊維マットを実施例1と同じフェノール樹脂接着剤中に浸漬した後、絞りローラーに通して絞ることによって、フェノール樹脂接着剤の含有量が25質量%となるように調整した。次にフェノール樹脂接着剤を含有する繊維マットを80℃で、含水率が約10質量%となるように乾燥した。
そして微細繊維シートとして、微細繊維の平均繊維径が120μm、厚み220μm、面重量140g/m、弾性係数46MPaのポリステル不織布を用い、微細繊維シート
を繊維マットの上に重ね、この後、この繊維マットを温度170℃、圧力3MPa、時間10分の条件で加熱加圧成形することによって、密度750kg/m 、厚み11.7mmの、表面に微細繊維シートを貼り付けた繊維ボードを作製した。
次に、表面仕上げ材として厚さ0.3mmの突き板を用い、表面仕上げ材の片面にフェノール樹脂接着剤を塗布し、そして表面仕上げ材の接着剤塗布面を微細繊維シートに重ね、温度120℃、圧力0.8MPa、時間1分の条件で加熱加圧して、微細繊維シートの表面に厚み20μmの接着剤層で表面仕上げ材を貼付し、床材を得た。
(実施例16)
微細繊維シートとして、微細繊維の平均繊維径が120μm、厚み230μm、面重量140g/m、弾性係数42MPaのパルプシートを用いるようにした他は、実施例15と同様にして床材を得た。
上記のようにして実施例15〜16で得た床材について、等価曲げヤング率、耐キャスター回数、表面硬度を測定し、寒熱B試験を行なった。ここで、等価曲げヤング率は、床材全体を均質な構造と仮定したときの曲げヤング率であり、試験は通常の曲げ試験(JIS A5905など)に準拠しておこなった。また耐キャスター回数は、直径50mmの鋳造キャスターを床材表面に置き、250Nの負荷をかけた状態で20往復/分の速度でキャスターを移動させたときの、表面仕上げ板が剥離するまでの回数として測定した。また表面硬度は、直径10mmの硬球により床材表面に300Nの荷重を負荷したときの凹み量を硬球圧縮ひずみ量として測定した。この場合、凹み量が小さいほど表面硬度に優れた床材であるということができる。さらに寒熱B試験は、JAS(特殊合板)に準拠しておこなった。結果を表3に示す。
Figure 0004085962
(実施例17)
実施例15と同様な繊維ボードの表面に、第2接着剤として粘度3Pa・sのSBRラテックスを320g/mの塗布量で塗布し、表面仕上げ材として実施例15と同様の厚さ0.3mmの突き板を同条件で貼り合わせた。尚、繊維ボードに含浸したフェノール樹脂接着剤の粘度は0.01Pa・sである。
(実施例18)
第2接着剤として、粘度3Pa・sのSBRラテックスに小麦粉23重量%を混合して、粘度を30Pa・sにしたものを用い、75g/mの塗布量で塗布するようにした他は、実施例17と同様にした。
(実施例19)
第2接着剤として、粘度3Pa・sのSBRラテックスに平均繊維長0.25mmの繊維ボード粉砕品23重量%を混合して、粘度を16Pa・sにしたものを用い、87g/mの塗布量で塗布するようにした他は、実施例17と同様にした。
上記のようにして実施例17〜19で得た床材について、耐キャスター回数を実施例16と同様にして測定したところ、実施例17は13000回行なって異常無し(13000回以上の試験はおこなっていない)、実施例18,19は26000回行なって異常無し(26000回以上の試験はおこなっていない)であった。
本発明の実施の形態の一例における、各工程を示すブロック図である。 同上の各工程を示すものであり、(a)は繊維化工程の概略斜視図、(b)はマット化工程の概略断面図、(c)は接着剤塗布工程の概略断面図である。 同上の各工程を示すものであり、(a),(b)はそれぞれ概略断面図である。 (a)はケナフ繊維の断面模式図、(b)はフェノール樹脂の単量体成分の浸透状態を示すケナフ繊維の断面模式図、(c)はフェノール樹脂の多量体成分の付着状態を示すケナフ繊維の断面模式図である。 フェノール樹脂の分子量分布の一例を示すグラフである。 本発明の実施の形態の一例における一工程を示すものであり、(a),(b)はそれぞれ概略断面図である。 本発明の実施の形態の一例における一工程を示すものであり、(a),(b)はそれぞれ概略断面図である。 (a)は微細繊維シートの斜視図、(b)は微細繊維シートの斜視図、(c)は床板の概略図である。
符号の説明
1 ケナフ繊維
8 靭皮部
14 繊維マット
19 熱硬化性接着剤
25 孔
26 シート体
30 第2の接着剤
32 微細繊維シート
33 貫通穴
A 繊維ボード

Claims (10)

  1. ケナフの靭皮部を茎芯部から分離する靭皮部分離工程と、ケナフの靭皮部を解繊してケナフ繊維を得る繊維化工程と、解繊して得られたケナフ繊維を集合させて平均長さが10〜200mm及び平均径が10〜300μmのケナフ繊維よりなる繊維マットを得るマット化工程と、繊維マットに熱硬化性接着剤を供給して繊維マットに熱硬化性接着剤を含浸する接着剤供給工程と、熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを乾燥する接着剤乾燥工程と、接着剤乾燥工程で得られた繊維マットを密度が600〜900kg/mとなるように加熱加圧して繊維ボードを成形する成形工程とを有し、上記熱硬化性接着剤が、単量体を10〜40重量%と、分子量200〜2000の多量体を60〜90重量%含み、平均分子量が400〜700のフェノール樹脂であることを特徴とする繊維ボードの製造方法。
  2. 繊維マットに含浸した熱硬化性接着剤の量を繊維マットの重量の130%以下となるように、熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを加圧する含浸量調整工程を、接着剤乾燥工程の前に有することを特徴とする請求項1に記載の繊維ボードの製造方法。
  3. 含浸量調整工程で繊維マットを加圧する方法が、対をなすローラー間に熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを通過させる方法であることを特徴とする請求項2に記載の繊維ボードの製造方法。
  4. 繊維マットの含水率を25重量%以下に調整する繊維マット乾燥工程を、接着剤供給工程の前に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維ボードの製造方法。
  5. 接着剤乾燥工程で熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを乾燥するにあたって、繊維マットの表面に120℃以下の温度の気流を接触させながら乾燥することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維ボードの製造方法。
  6. 接着剤乾燥工程で熱硬化性接着剤を含浸した繊維マットを乾燥するにあたって、120℃以下の温度の雰囲気内で、繊維マットの片面から繊維マットの内部を吸引しながら乾燥することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維ボードの製造方法。
  7. 茎芯部から分離したケナフの靭皮部の含水率を10〜40重量%に調整する靭皮部含水率調整工程を、繊維化工程の前に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の繊維ボードの製造方法。
  8. 成形工程で得られた繊維ボードの表面に、繊維マットに含浸した熱硬化性接着剤より含浸性の低い第2の接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程を、成形工程の後に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の繊維ボードの製造方法。
  9. 成形工程で繊維マットを加熱加圧する際に、繊維マットの表面に、繊維マットを構成するケナフ繊維より繊維径の細い微細繊維よりなる微細繊維シートを重ねて、加熱加圧を行なうことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の繊維ボードの製造方法。
  10. 繊維マットに微細繊維シートを重ねて加熱加圧した後に、微細繊維シートに貫通する穴を設けることを特徴とする請求項9に記載の繊維ボードの製造方法。
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