JP4085151B2 - 中空糸膜モジュールの洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原水をろ過することで有機物および/または無機物によって汚染された中空糸膜モジュールの膜面および膜内部を傷つけることなく、迅速かつ効率よく性能を回復できる洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、中空糸膜モジュールを使用した分離技術の開発が進み、水のろ過をはじめ様々な用途に広く用いられている。しかし、中空糸膜モジュールを使用したろ過の過程では、原液の中に含まれる有機系および/または無機系からなる懸濁物質などの固形物や細菌類などが中空糸膜表面に付着し、または微多孔に侵入し、経時的に透過流速の低下が生じる。そこで、長期にわたり安定したろ過を継続するためには、ろ過条件の設定と同時に、有効な中空糸膜モジュールの洗浄方法の開発が不可欠である。
【0003】
従来、中空糸膜モジュールの洗浄方法として種々の方法が提案されており、これらは物理的洗浄方法と化学的洗浄方法とに大別できる。
物理的洗浄方法としては、水、透過液等の液体を透過液側から原液側へ通過させる液体逆洗方法、加圧気体を透過液側から原液側へ通過させる気体逆洗方法(特開昭53−108882号公報、特表平1−500732号公報など)、原液側に気泡を噴出させるバブリング方法、超音波法など、多種多様の方法が提案されている。また、化学的洗浄方法としては、酸、アルカリ水溶液、洗浄剤などの薬液により、付着物を溶解除去する方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、従来公知の物理的洗浄方法を用いた場合、その洗浄効果は必ずしも満足できるレベルになく、ろ過・洗浄を繰り返すと、数日から数カ月程度で透過流速が大きく低下する。そこで、透過流速を回復するために、化学的洗浄を行う必要が生じる。
一方、酸、アルカリ水溶液、洗浄剤等の薬液を用いた化学的洗浄方法では、ろ過を一旦完全に停止し、次いで薬液で洗浄し、この薬液が有害な場合には洗浄後に薬液を除去する工程を必要とすることから、長期間、ろ過を停止せざるを得ず、さらに、多量の洗浄廃液を処理しなければならないという課題がある。
したがって、より長期間の連続したろ過運転を可能とするには、有効な洗浄方法の開発が必要である。
【0005】
本発明の目的は、従来の物理的洗浄方法または化学的洗浄方法の欠点を改善することにある。すなわち、再生時にも装置を停止することなく、従来の物理的洗浄方法または化学的洗浄方法に比べて洗浄効果が大きく、廃薬品処理が不要で、定期的に洗浄工程を組み入れた自動運転ができ、中空糸膜のろ過能力を常に良好な状態に保つことが可能な中空糸膜モジュールの洗浄方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するための技術について鋭意検討した結果、 酸化剤を用いて中空糸膜を洗浄する酸化洗浄工程の後に、酸化剤が中空糸膜モジュール内に入った状態で、中空糸膜モジュール内の水を加温し循環させる温水循環工程を行うことにより、酸化剤として用いる、例えばオゾン、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素水、過酢酸およびその塩、および強酸性水などを完全分解して、つまり酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにできるという従来にない効果を発揮し、中空糸膜モジュールの洗浄方法として有用であることを見出した。
【0007】
本発明の一構成は、有機物を含む原水のろ過に使用した中空糸膜モジュールについて、中空糸膜の表面に蓄積した付着物を洗浄除去する方法において、
次亜塩素酸ソーダの酸化剤を用いて中空糸膜を洗浄する酸化洗浄工程と、上記酸化洗浄の後に、上記酸化剤が中空糸膜モジュール内に入った状態で、上記酸化剤の酸化力を失わせて無害化するように中空糸膜モジュール内の水を加温し循環させる温水循環工程と、上記温水循環を行いつつ、または行った後に、中空糸膜に気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングのうち1または2以上を実施する物理的洗浄工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、酸化洗浄工程の後に温水循環工程を行うことにより、酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにできる。その結果、中空糸膜の耐用年数が延びるとともに、それに伴うランニングコストが低減でき、かつ、洗浄に伴う維持管理費が低減され、廃薬品の処理も不要となる。ただし、使用する薬品およびその濃度によっては、廃薬品の処理が必要な場合もある。さらに、再生時にも装置を停止させることなく、自動運転が可能となるため、定期的に洗浄工程を組み入れることができ、中空糸膜のろ過能力を常に良い状態に保つことができる。
【0009】
本発明の他の構成は、原水のろ過に使用した中空糸膜モジュールについて、中空糸膜の表面に蓄積した付着物を洗浄除去する方法において、
温水を中空糸膜上に循環させる温水循環工程と、上記温水循環を行いつつ、または行った後に、中空糸膜に気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングのうち1または2以上を実施する物理的洗浄工程と、上記物理的洗浄後に、オゾンまたは次亜塩素酸ソーダの酸化剤を用いて中空糸膜を洗浄する酸化洗浄工程と、上記酸化洗浄の後に、上記酸化剤が中空糸膜モジュール内に入った状態で、上記酸化剤の酸化力を失わせて無害化するように中空糸膜モジュール内の水を加温し循環させる温水循環工程と、上記温水循環を行いつつ、または行った後に、中空糸膜に気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングのうち1または2以上を実施する物理的洗浄工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、上記と同様に、酸化洗浄工程の後に温水循環工程を行うことにより、酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにできるとともに、酸化洗浄工程の前に、温水循環工程および物理的洗浄工程を行うことにより、酸化剤の効果を上げて、酸化剤の使用量を減らすことができる。
【0011】
本発明の中空糸膜の素材は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂により親水化処理されたポリスルホン系樹脂、架橋または非架橋の親水性高分子が添加されたポリスルホン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂、親水化されたポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂などを挙げることができる。
【0012】
中空糸膜の孔径は特に限定されないが、0.001〜5μmの範囲にあることが、高い透水性を有し、ろ過効率が低下するおそれが小さいことから好ましい。
なお、ここでいう孔径とは粒子径が既知の各種基準物質(コロイダルシリカ、エマルジョン、ラテックスなど)を中空糸膜でろ過した際に、その90%が排除される粒子径をいう。孔径は均一であることが好ましい。限外ろ過膜の場合、上記のような基準物質の粒子径に基づいて、孔径を求めることは不可能であるが、分子量が既知の蛋白質を用いて同様の測定を行ったときに、分画分子量が3000以上であるものが好ましい。
【0013】
中空糸膜の力学的性質およびモジュールとしての膜面積の観点から、中空糸膜の外径は200〜3000μmの範囲内に設定することが好ましく、500〜2000μmの範囲内であることがより好ましい。
【0014】
中空糸膜の厚さは、50〜700μmの範囲にあることが好ましく、100〜600μmの範囲であることがより好ましい。
【0015】
中空糸膜はモジュール化されてろ過に使用される。モジュールの形態は、ろ過方法、ろ過条件、洗浄方法などに応じて適宜選択することができ、複数本の中空糸膜を1束とし、1束または数束から中空糸膜モジュールを構成してもよい。例えば、多数本の中空糸膜を束ねてU字型にしたもの、中空糸膜束の一端を適当なシール剤により一括封止したもの、中空糸膜束の一端を適当なシール剤により1本ずつ固定していない(片端フリー)状態で封止したもの、中空糸膜束の両端を固定し開口したもの(両端固定)などが挙げられる。
【0016】
中空糸膜モジュールによるろ過の方式としては、外圧全ろ過、外圧循環ろ過、内圧全ろ過、内圧循環ろ過などが挙げられ、所望の処理条件や処理性能に応じて適宜選択することができる。
【0017】
酸化剤としては、オゾン、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素水、過酢酸およびその塩、および強酸性水などがあり、それぞれ単独でまたは組合せで使用することができる。
【0018】
酸化剤の使用量は中空糸膜やその部材の劣化などを引き起こさない範囲で適宜選択することができる。例えば、オゾンでは0.1〜10ppmが好ましく、0.5〜5ppmがより好ましい。次亜塩素酸ソーダでは残留塩素濃度として0.1〜1000ppmが好ましく、0.2〜200ppmがより好ましい。過酸化水素水では0.5〜10%が好ましく、1〜5%がより好ましい。過酢酸およびその塩では10〜500ppmが好ましく、50〜300ppmがより好ましい。強酸性水では0.2〜500ppmが好ましく、0.5〜100ppmがより好ましい。
【0019】
温水の温度は40〜95℃の範囲が好ましく、50〜90℃の範囲がより好ましく、70〜85℃の範囲が特に好ましい。
【0020】
温水との接触時間は中空糸膜表面や微多孔への付着物の状態により適宜選択することができる。
【0021】
気体逆洗とは、中空糸膜の透過液側から中空糸膜のバブルポイント以上の圧力で気体(一般に空気、窒素)を加圧導入し、原液側に気体を噴出させることで膜面および膜内を洗浄する方法をいう。バブルポイントとは、中空糸膜の原液側に液体を満たした状態で、中空糸膜の透過液側から気体を加圧導入した時、中空糸膜の原液側から気体が放出されない程度の圧力をいう。
液体逆洗とは、気体に代えて液体(一般に透過液)を用いて気体逆洗と同様な操作で膜面および膜内を洗浄する方法をいう。
気体導入とは、中空糸膜の透過液側から中空糸膜のバブルポイント未満の圧力で気体を導入し、原液側に気体を透過させずに、透過液側の液体のみを中空糸膜を通して原液側に噴出させることで膜面および膜内を洗浄する方法をいう。
気体バブリングとは、中空糸膜の原液側を気泡で洗浄する方法をいう。気体としては、空気や窒素などが挙げられる。気泡の供給量は特に限定されない。
上記気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングの時間は適宜選択できる。
本発明の洗浄方法は常時用いる必要はなく、一般に行われる物理的洗浄方法を繰り返し実施した後に、ろ過性能が十分に回復しなくなったときに行うことは、酸化剤の使用量低減の上からも好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る中空糸膜モジュールの洗浄方法を示す概略構成図である。この洗浄方法は、外圧型の中空糸膜モジュール1を使用し、物理的洗浄工程(以下、逆洗工程ともいう)では、気体逆洗を行うものである。
【0023】
まず、原液をろ過する中空糸膜モジュール1のろ過工程においては、すべてのバルブを閉じた状態から、気体排出口バルブ5、原液導入口バルブ4および透過液出口バルブ6を開き、原液送液ポンプ3を作動させて中空糸膜モジュール1の原液側に原液を導入し、気体排出口バルブ5から原液が溢れた後、気体排出口バルブ5を閉じて、ろ過を開始する。そして、ろ過時間の経過に伴い中空糸膜の膜表面や微多孔に有機系および/または無機系からなる懸濁物質などの固形物や細菌類などが付着し、ろ過能力が低下する。このとき、通常の物理的洗浄方法(図1では気体逆洗)により、中空糸膜を洗浄し、ろ過性能を回復させる。しかし、ろ過工程−洗浄工程を繰り返すにしたがって、ろ過性能の回復が不十分となってくる。その際、以下の洗浄方法により中空糸膜を洗浄する。
【0024】
(酸化洗浄工程)
まず、原液送液ポンプ3を停止した後、ろ過工程で開いている原液導入口バルブ4および透過液出口バルブ6を閉じて、ろ過を停止し、閉じている気体排出口バルブ5および酸化剤導入口バルブ9を開け、酸化剤注入ポンプ8を作動させて酸化剤貯留タンク(または酸化剤発生器)7から酸化剤を注入する。この際、用いる酸化剤の性状により、以下のいずれかを選択できる。
(1)気体排出口バルブ5から酸化剤が溢れ、酸化剤を中空糸膜モジュール1内に充満させた状態で、または、しばらく循環させた後に、酸化剤注入ポンプ8を停止し、酸化剤導入口バルブ9を閉じて、所定時間放置する。
(2)気体排出口バルブ5から溢れた酸化剤を酸化剤貯留タンク7に戻し循環させる。
【0025】
(温水循環工程)
その後、酸化剤が中空糸膜モジュール1内に入った状態で、気体排出口バルブ5と給湯バルブ10、13を開き、給湯ポンプ11を作動させてヒータ12に中空糸膜モジュール1内の水を通過させて加温し循環させる。
【0026】
(逆洗工程)
所定の時間がきたら、給湯ポンプ11を停止し、給湯バルブ10、13を閉じて、エアコンプレッサ15を作動させながら、加圧気体導入口バルブ16を開けて加圧気体を中空糸膜モジュール1の透過液側に所定時間導入する。加圧気体が中空糸膜の透過液側から原液側に壁面を通過して押し出される際に、付着物が膜表面や微多孔から剥離する。上述した洗浄が終了した後、加圧気体導入口バルブ16を閉じ、原液排出バルブ14を開けてドレンを排出する。排出が完了した後、ろ過工程へ戻る。
【0027】
これにより、酸化洗浄工程の後に温水洗浄工程を行うことにより、酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにできる。したがって、薬品洗浄を行っても薬液除去工程が不要となって洗浄工程が短期間で済み、ろ過の停止も長期間に旦ることがないという従来にない効果を発揮する。その結果、中空糸膜の耐用年数が延びるとともに、それに伴うランニングコストが低減でき、かつ、洗浄に伴う維持管理費が低減される。また、廃薬品の処理も不要となる。ただし、使用する薬品およびその濃度によっては、廃薬品の処理が必要な場合もある。さらに、装置を停止させることなく、自動運転が可能となるため、定期的に洗浄工程を組み入れることができ、中空糸膜のろ過能力を常に良い状態に保つことができる。
【0028】
図2は、本発明の第2実施形態に係る中空糸膜モジュールの洗浄方法を示す概略構成図である。この洗浄方法は、第1実施形態と異なり、内圧型の中空糸膜モジュール1を使用するものであり、逆洗工程では液体逆洗を行うものである。
【0029】
第2実施形態における中空糸膜モジュール1のろ過工程においては、原液は中空糸膜内部を通過し原液出口バルブ17を経て原液槽2へ戻って循環し、透過液は透過液出口バルブ6を経て透過液貯留タンク19へ溜まる。ろ過時間の経過に伴い同様にろ過能力が低下する。このとき、通常の物理的洗浄方法(図2では液体逆洗)により、中空糸膜を洗浄し、ろ過性能を回復させる。しかし、ろ過工程−洗浄工程を繰り返すにしたがって、ろ過性能の回復が不十分となってくる。その際、以下の洗浄方法により中空糸膜を洗浄する。
【0030】
(酸化洗浄工程)
まず、原液送液ポンプ3を停止した後、ろ過工程で開いている原液導入口バルブ4および透過液出口バルブ6を閉じて、ろ過を停止し、酸化剤導入口バルブ9を開け、酸化剤注入ポンプ8を作動させて酸化剤貯留タンク(または酸化剤発生器)7から酸化剤を注入する。この際、用いる酸化剤の性状により、以下のいずれかを選択できる。
(1)気体排出口バルブ22から酸化剤が溢れ、酸化剤を中空糸膜モジュール1内に充満させた状態で、または、しばらく循環させた後に、酸化剤注入ポンプ8を停止し、酸化剤導入口バルブ9を閉じて、所定時間放置する。
(2)気体排出口バルブ22を開けて、酸化剤を酸化剤貯留タンク7に戻し循環させる。
【0031】
(温水循環工程)
その後、酸化剤が中空糸膜モジュール1内に入った状態で、透過液返送バルブ18と、給湯バルブ10、13を開き、給湯ポンプ11を作動させヒータ12を経て温水を中空糸膜モジュール1の原液側に供給し、透過液側に透過した温水を透過液返送バルブ18を経由して給湯ポンプ11に戻して循環させる。
【0032】
(逆洗工程)
所定の時間がきたら、給湯ポンプ11を停止し、透過液返送バルブ18と給湯バルブ10、13を閉じる。さらに、透過液導入口バルブ21を開け、透過液送液ポンプ20を作動させて、透過液を中空糸膜の透過液側から原液側に壁面を通過して押し出す。この際、付着物が膜表面や微多孔から剥離するので、原液排出バルブ14を開けて排出する。上述した洗浄が終了した後、透過液送液ポンプ20を停止し、透過液導入口バルブ21を閉じて、排出を完了させ、ろ過工程へ戻る。
【0033】
これにより、第2実施形態は、酸化洗浄工程の後に温水洗浄工程を行うことにより、酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにでき、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
図3は、本発明の第3実施形態に係る中空糸膜モジュールの洗浄方法を示す概略構成図である。この洗浄方法は、第1実施形態と同様に、外圧型の中空糸膜モジュール1を使用して、酸化洗浄工程および温水循環工程を行うが、物理的洗浄工程では気体導入と気体バブリングを実施するものである。
【0035】
(物理的洗浄工程)
第1実施形態と同様に、酸化洗浄工程および温水循環工程を行った後、気体導入と気体バブリングを実施する。この方法は、まずエアコンプレッサ15を作動させながら、加圧気体導入口バルブ16を開けて加圧気体を中空糸膜モジュール1の透過液側に所定時間導入する。加圧気体はそれ自身が中空糸膜の壁面を通過することができない圧力に設定されているため、中空糸膜の透過液側に残る透過液のみが膜の壁面を通して押し出される。該加圧工程の開始と同時、または該加圧工程中、または該加圧工程を所定時間行った後に、気体導入口バルブ22を開き、気泡による洗浄を所定時間実施する。上述した洗浄が終了した後、気体導入口バルブを閉じ、原液排出バルブ14を開けてドレンを排出する。排出が完了した後、ろ過工程へ戻る。
【0036】
これにより、第3実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、物理的洗浄工程で気体導入と気体バブリングの両方を実施することにより、洗浄の効果が一層大きくなる。
【0037】
なお、上記第1〜3実施形態において、原液送液ポンプ3、酸化剤注入ポンプ8、給湯ポンプ11は個々に設置してもよいし、1台で共用してもよい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって何ら制限されるものではない。
【0039】
実施例1
孔径0.1μmでバブルポイントが490kPa以上であるポリビニルアルコール系樹脂により親水化されたポリスルホン中空糸膜からなる膜面積7m2 の「片端フリー」タイプの中空糸膜モジュールを使用して、10〜20℃の河川表流水を原液として、外圧全ろ過方式、透過液流量560リットル/時の条件で定流量ろ過を行った。
【0040】
中空糸膜の洗浄は60分に1回、中空糸膜の透過液側に、圧力196kPaの空気を導入することにより、20秒間加圧操作し、次いで、中空糸膜モジュールの原液側の下部から圧力98kPaの空気を600ノルマルリットル/時の流量で1分間噴出させた。このろ過工程−洗浄工程を20回繰り返した後、21回目の洗浄時に、原液側ラインにオゾン2ppmを注入して5分間接触させた後に80℃の温水を原液側の膜面に3分間循環させた。温水循環後のオゾンの濃度は溶存オゾン濃度計で測定すると検出限界以下であった。さらに、中空糸膜の透過液側に、圧力196kPaの空気を導入することにより20秒間加圧操作し、次いで中空糸膜モジュールの原液側の下部から、圧力98kPaの空気を600ノルマルリットル/時の流量で1分間噴出させた。
ろ過運転期間中、本発明の洗浄方法を通常の物理的洗浄方法(この場合、気体導入+気体バブリング)により、20回に1回の割合で実施して、膜間差圧を定期的に測定し、差圧が147kPaに達するまでのろ過時間を中空糸膜のろ過寿命とした場合、ろ過寿命は90日であった。
【0041】
比較例1
オゾン注入を除いて実施例1と同様の操作を行ったところ、ろ過寿命は32日であった。
【0042】
比較例2
温水循環を除いて実施例1と同様の操作を行ったところ、オゾン注入5分直後の透過液中のオゾン濃度は0.6ppmであり、溶存オゾン濃度計の検出限界以下になるまでにろ過再開後5分必要であった。このときのろ過寿命は53日であった。
【0043】
実施例2
孔径0.02μmでバブルポイントが784kPa以上であるポリスルホン中空糸膜からなる膜面積5m2 の「両端固定」タイプの中空糸膜モジュールを使用して、原液である10〜15℃の地下水を中空糸膜の内側に線速1.5m/秒の速度で循環させながら、内圧循環ろ過方式、透過液流量400リットル/時の条件で定流量ろ過を行った。
【0044】
中空糸膜の洗浄は100分に1回、中空糸膜の透過液側から、逆洗ポンプにより水圧196kPaで透過液を30秒間逆流させた。このろ過工程−洗浄工程を10回繰り返した後、11回目の洗浄時に、原液側ラインに次亜塩素酸ソーダ25ppm(残留塩素濃度で)を注入して2分間接触させた後に75℃の温水を中空糸膜の内側から入れて循環させながら外側に3分間ろ過させた。温水循環後の残留塩素濃度は比色法で測定すると検出限界以下であった。さらに、中空糸膜の透過液側から、逆洗ポンプにより水圧196kPaで透過液を30秒間逆流させた。
ろ過運転期間中、本発明の洗浄方法を通常の物理的洗浄方法(この場合、透過液逆洗)により、10回に1回の割合で実施して、膜間差圧を定期的に測定し、差圧が147kPaに達するまでのろ過時間を中空糸膜のろ過寿命とした場合、ろ過寿命は82日であった。
【0045】
比較例3
次亜塩素酸ソーダ注入を除いて実施例2と同様の操作を行ったところ、ろ過寿命は28日であった。
【0046】
比較例4
温水循環を除いて実施例2と同様の操作を行ったところ、次亜塩素酸ソーダ注入2分直後の透過液中の残留塩素濃度は12ppmであり、比色法の検出限界以下になるまでにろ過再開後7分必要であった。このときのろ過寿命は37日であった。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明の一構成によれば、酸化洗浄工程の後に温水循環工程を行うことにより、酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにできる。その結果、中空糸膜の耐用年数が延びるとともに、それに伴うランニングコストが低減でき、かつ、洗浄に伴う維持管理費が低減され、廃薬品の処理も不要となる。さらに、再生時にも装置を停止させることなく、自動運転が可能となるため、定期的に洗浄工程を組み入れることができ、中空糸膜のろ過能力を常に良い状態に保つことができる。
本発明の他の構成によれば、酸化洗浄工程の後に温水循環工程を行うことにより、酸化剤の酸化力を失わせて酸化剤を無害化して、中空糸膜に残留しないようにできるとともに、酸化洗浄工程の前に、温水循環工程および物理的洗浄工程を行うことにより、酸化剤の効果を上げて、酸化剤の使用量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る中空糸膜モジュールの洗浄方法を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る中空糸膜モジュールの洗浄方法を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る中空糸膜モジュールの洗浄方法を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…中空糸膜モジュール、2…原液槽、3…原液送液ポンプ、4…原液導入口バルブ、5…気体排出口バルブ、6…透過液出口バルブ、7…酸化剤貯留タンク(酸化剤発生器)、8…酸化剤注入ポンプ、9…酸化剤導入口バルブ、10…給湯バルブ、11…給湯ポンプ、12…ヒータ、13…給湯バルブ、14…原液排出バルブ、15…エアコンプレッサ、16…加圧気体導入口バルブ、17…原液出口バルブ、18…透過液返送バルブ、19…透過液貯留タンク、20…透過液送液ポンプ、21…透過液導入口バルブ、22…気体排出口バルブ、23…気体導入口バルブ。
Claims (2)
- 有機物を含む原水のろ過に使用する中空糸膜モジュールについて、中空糸膜の表面に蓄積した付着物を洗浄除去する方法において、
次亜塩素酸ソーダの酸化剤を用いて中空糸膜を洗浄する酸化洗浄工程と、
上記酸化洗浄の後に、上記酸化剤が中空糸膜モジュール内に入った状態で、上記酸化剤の酸化力を失わせて無害化するように中空糸膜モジュール内の水を加温し循環させる温水循環工程と、
上記温水循環を行いつつ、または行った後に、中空糸膜に気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングのうち1または2以上を実施する物理的洗浄工程とを備えたことを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。 - 原水のろ過に使用する中空糸膜モジュールについて、中空糸膜の表面に蓄積した付着物を洗浄除去する方法において、
温水を中空糸膜上に循環させる温水循環工程と、
上記温水循環を行いつつ、または行った後に、中空糸膜に気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングのうち1または2以上を実施する物理的洗浄工程と、
上記物理的洗浄後に、オゾンまたは次亜塩素酸ソーダの酸化剤を用いて中空糸膜を洗浄する酸化洗浄工程と、
上記酸化洗浄の後に、上記酸化剤が中空糸膜モジュール内に入った状態で、上記酸化剤の酸化力を失わせて無害化するように中空糸膜モジュール内の水を加温し温水を中空糸膜上に循環させる温水循環工程と、
上記温水循環を行いつつ、または行った後に、中空糸膜に気体逆洗、液体逆洗、気体導入および気体バブリングのうち1または2以上を実施する物理的洗浄工程とを備えたことを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。
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