JP4084422B2 - ハロゲン化アリルの製造法及びそのために使用する装置 - Google Patents

ハロゲン化アリルの製造法及びそのために使用する装置 Download PDF

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Description

本発明は、ハロゲン化アリルの製造法及び該方法において適切に使用し得る反応器に関する。特に、本発明は、気相でのプロペンの高温塩素化によるハロゲン化アリルの製造に関する。
ハロゲン化アリル、特に塩化アリルは、エピハロヒドリン、特にエピクロロヒドリンの製造において重要な中間体であり、これは、今やエポキシ樹脂を製造する上で主要な化学物質となっている。
米国特許明細書第5,504,266号は、ハロゲン化アリルを製造する二段階方法を開示し、該方法は、
(a)モル比が少なくとも2.5:1、適切には5:1より小のプロペンとハロゲンを連続撹拌タンク反応器に供給し、
(b)プロペンとハロゲンを連続撹拌タンク反応器内で400〜525℃の温度範囲にて部分反応させて部分的に変換し、
(c)流出物(effluent)を連続撹拌タンク反応器からパイプ反応器に送り、そこで400〜525℃の温度範囲のプラグ流(plug-flow)内で反応を続けさせ、そして
(d)反応生成物をパイプ反応器から取出すこと、
を含む。
連続撹拌タンク反応器は、球形、楕円形、又は卵形である。
米国特許明細書第5,367,105号は、ハロゲン化アリルの製造法を開示し、該製造法は、モル比が3:1から5:1の範囲にあるガス状プロペンとガス状塩素の実質的に平行なジェットを反応器に導入し、そして反応生成物を反応器から取出すことを含む。
上記方法において使用される反応器は、円錐頂部と逆円錐底部を有する円筒形ハウジングを含み、反応物は円錐頂部に注入される。
これらの公知の方法は、相対的に低い生成率をもたらすか又は実質的な量の副生物が形成されて付着が生じるという欠点を有することが分かった。
ハロゲン化アリルはますます価値あるものとなりつつあるので、生成率を改善し、副生物の生成を減らす意義がある。
研究の結果、公知の方法の欠点がより少ない改良方法が見つかった。
従って、本発明によりガス状プロペンとガス状ハロゲンからハロゲン化アリルを製造する方法は、
(a)入口ノズルを介してプロペンを管状ループ反応器に導入し、
(b)管状ループ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口群であって、軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群を介し、ガス状ハロゲンを管状ループ反応器に導入し、
(c)プロペンとハロゲンを反応させ、そして
(d)出口開口を介して反応流出物を管状ループ反応器から取出す
工程を含み、任意の反応器容積要素におけるハロゲン濃度を、全ガス混合物に対して3質量%より小さく維持し、入口ノズルを出るプロペンのガス直線速度を、少なくとも管状ループ反応器内で連続的な循環を維持するのに十分とする。
明細書及び請求の範囲において、「反応器容積要素」なる用語は、反応器の内面及び反応器を通る流体流の方向に垂直で且つ軸方向に間隔を置いて離れて設けられた2つの面により定められた要素をいい、この要素は、反応器の内径に比べて小さい厚さを有する。
ハロゲン化反応は、発熱性であり、本発明の方法の利点は、連続的な循環が反応器全体に均一な温度分布をもたらすことである。さらに、再循環率は、温度制御を改善すべく調整できる。
本発明による方法の好適実施態様は、さらに
(e)工程(d)にて取出された反応流出物をパイプ反応器の入口端に導入し、
(f)パイプ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口群であって、軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群を介して、ガス状ハロゲンをパイプ反応器に導入し、ハロゲンとプロペンを反応させ、そして
(g)反応生成物をパイプ反応器の出口端から取出す
工程を含む。
ハロゲンガスは塩素ガスとするのが好ましい。
さらに、本発明は、少なくとも1つの入口ノズルを備えた管状ループ反応器と、管状ループ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口群であって軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群と、出口開口とを含む反応器に関する。
以下、例として添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
図1a、1b及び1cは、本発明による方法において適切に使用し得る反応器例の3つの拡張断面を略示する。
図2は、改良設計された反応器の縦断面を略示する。
図3は、管状ループ反応器の一部の縦断面を図1a〜1cより大きいスケールにて略示する。
図1a〜1cを参照する。反応器1は、管状ループ反応器2を含む。管状ループ反応器2は、(図1aに示されるような)伸張形、(図1bに示されるような)円形、又は(図1cに示されるような)楕円形とし得る。
管状ループ反応器2は、少なくとも1つの入口ノズル3と、管状ループ反応器2の壁5に設けられた複数の入口開口4を備える。入口開口4は、軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの群6として構成され、各群において入口開口は、径方向に配置される。すなわち、各群の入口開口は、管状ループ反応器2の円周に沿って分布する。明確にするため、入口ノズル全てと群全てを参照番号で示してはいない。
管状ループ反応器は、入口ノズル3の近くに配置された出口開口9をさらに備える。適切には、出口開口9は、入口ノズル3の下流における管状ループ反応器2の下流端に配置する。
通常運転中は、入口ノズル3を介してプロペンを管状ループ反応器2に導入し、複数の入口開口4を介してガス状ハロゲンを管状ループ反応器2に導入する。反応混合物は、管状ループ反応器2を矢印12の方向に通過する。反応流出物は、出口開口9を介して管状ループ反応器2から取出され、反応流出物はそこから回収装置(図示せず)に送られて公知の方法により所望のハロゲン化アリルを分離する。反応流出物の残留物は、管状ループ反応器2を通って循環する。再循環率(R)は、注入ノズル3により注入されるプロペンの量に対する再循環される反応混合物の量の質量比として定められる。
何れの反応器容積要素13におけるハロゲン濃度も全ガス混合物に対し3質量%より小さく維持され、且つ、入口ノズル3を出るプロペンのガス直線速度が少なくとも管状ループ反応器2内の連続的な循環を維持するのに十分であるように、条件を選択する。
入口ノズルを出るプロペンのガス直線速度(Upropene)は、
a)管状ループ反応器の各断面において20m/sより大、好ましくは40m/sより大の平均速度(Uloop)、及び
b)ループ反応器内の最小温度が400℃より大、好ましくは430℃より大となることを保証する再循環率(R)、
を得るのに十分でなければならない。ループ反応器内の最大温度は、520℃より小、好ましくは500℃より小としなければならない。
再循環率(R)の適値は、2より大、好ましくは3より大である。
本出願人は、そのように条件を選択するとハロゲン化アリル、好ましくは塩化アリルを良好な選択性にて製造し得ることを見出した。副生物、特に流出物中の重クロロエーテルに対する主要な先駆物質である1,5−ヘキサジエンの著しい低減により、得られる塩化アリルは、より薄く着色される。
適切には、入口開口4の群6の数は、2〜15の範囲であり、好ましくは6〜12の範囲であり、1群当たりの入口開口4の数は、2〜8の範囲である。
1つの断面において径方向配置されたハロゲン入口開口の1群当たりの数は、通常は2〜15の範囲であり、好ましくは4〜12の範囲である。
適切には、1より多い注入ノズル3があり、該注入ノズルは、管状ループ反応器2に沿って軸方向に間隔を置いて設けられる。再循環率を決めるため、全ての注入ノズルからのプロペンの総量が用いられる。
次に、図2を参照する。この図に示される反応器1は、パイプ反応器15を含み、その入口端17は、管状ループ反応器2の出口開口9と流体連通している。
パイプ反応器15は、パイプ反応器15の壁21に設けられ径方向配置された入口開口20の群であって軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群19を備える。
パイプ反応器15は、反応生成物を反応器1から取出すための出口端25を有する。
通常運転中、出口開口9から取出した反応流出物は、パイプ反応器15の入口端17に導入し、ガス状ハロゲンは、パイプ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口20の群19であって軸方向に間隔を置いて配置された入口開口20の群19を介して、パイプ反応器15に導入する。ハロゲンを非反応プロペンと反応させ、反応生成物をパイプ反応器15の出口端25から取出し、この反応生成物をそこから回収装置(図示せず)に送って公知方法により所望のハロゲン化アリルを分離する。
次に、図3を参照する。この設計で使用される入口ノズルは、イジェクター30であり、プロペン原料の一部を、補助入口35を介して導入でき、それにより、再循環率は、イジェクター30及び補助入口35を介して供給するプロペン量を調節することにより低減し得る。図3に示されているように、イジェクター30の端部はテーパー状であり、半頂角37は約2°である。さらに、イジェクター30の端は、支持棒40により支持し、支持棒は3個設けるのが適切である。
本発明の方法の好適実施態様によりループ反応器と相互連結パイプ反応器の組み合わせが使用されるならば、管状ループ反応器とパイプ反応器の両方に導入される全ハロゲンに対し、管状ループ反応器に導入されるハロゲンのモル比は、60〜100%の範囲にあり、好ましくは70〜90%の範囲にある。
ハロゲン原料、好ましくは塩素原料の入口温度は、50〜150℃、好ましくは60〜110℃、より好ましくは80〜110℃の範囲にあり、一方それぞれの入口を介して導入されるハロゲンの温度は、同じか又は異ならせ得る。
好ましくは、管状ループ反応器に導入するハロゲンガス、好ましくは塩素ガスの温度は、ほぼ同一となり、オプションのパイプ反応器に導入するハロゲンガスの温度も、同一の値を有し得る。しかし、一方でループ反応器に導入し、他方でオプションのパイプ反応器に導入するハロゲンのそれぞれの温度は、異なり得る。導入するプロペンは、200〜400℃、好ましくは230〜360℃の範囲の温度を有する。異なる反応温度が、ループ反応器及びオプションのパイプ反応器の異なる断面にそれぞれ設定でき、特にパイプ反応器領域では種々の温度ゾーンが設定できる。
典型的には、ループ反応器内での滞留時間(τloop)は、平均で0.5〜3秒、パイプ反応器内での滞留時間(τpipe)は、0.2〜1秒である。
一般に、管状ループ反応器の内径(単位:m)は、次式により決められる。
loop=A*(R/τloop)*(U2propene/U3loop)*d2
ここで、Aは、反応材料の表面特性に依存する経験値、Rは、再循環率、τloopは、ループ反応器内の滞留時間(単位:秒)、Upropeneは、ノズルを出るプロペンの直線速度(単位:m/s)、Uloopは、管状ループ反応器内での直線速度(単位:m/s)、dは、プロペンノズルの内径(単位:m)である。
実際的な条件下では、Aは、20〜40、好ましくは25〜35の範囲の値を有する。
管状ループ反応器に沿った入口開口の群数は、上記クリティカルな濃度要求に従って選択する。これらの群は管状ループ反応器に沿って等距離にて配置するのが好ましい。
パイプ反応器の内径は、パイプ反応器内の直線速度が20〜80m/sとなるように選択する。入口開口の群数とそれらの位置は、管状ループ反応器の場合と同じ方法で決める。
好適実施態様に従ってループ反応器とパイプ反応器の組み合わせを用いる場合、ループ反応器の容積は、パイプ反応器の容積と比べて相対的に大きい。
本発明はまた、上記示した方法を実行する特定の反応器アッセンブリに関することが分かる。
好ましくはこのパイプ反応器は、出口開口を介してループ反応器に連結された直線パイプにより構成されることが分かるが、直線パイプ反応器が、1以上のベント管部を介してループ反応器に連結される代替案も適用できる。
さらに好ましくは、ループ反応器の内径とパイプ反応器の内径の比は、4:1から3:2までの範囲にあり、パイプ反応器の容積に対する管状ループ反応器の容積の比は、6〜9の範囲にある。
図2に示したような反応器アッセンブリでは、ループ反応器を構成する管の直径に対する前記ループ反応器の最大外側長さの比は、30〜50の範囲にあり、一方、該直径に対する前記管状ループの外側幅の比は、3〜5の範囲にある。
ループ反応器の内径に対する管状ループ反応器の最大外側長さのさらに好ましい比は、35〜45の範囲にある。
以下の例により本発明をさらに説明するが、本発明の範囲をこの実施態様に制限するものではない。
例1
図2による反応器にて、次の条件下で塩素を用いてプロペンを変換した。
プロペン予熱(℃): 340
塩素予熱(℃): 70
プロペン/塩素モル比: 4.2
反応器出口温度(℃): 505
プロペン供給速度(kg/h): 6300
塩素供給速度(kg/h): 2536
反応圧力(bara): 3.2
ループ反応器内の滞留時間τloop(s): 1.8
パイプ反応器内の滞留時間τpipe(s): 0.2
プロペンイジェクターの直線速度Upropene(m/s): 355
ループ反応器内でのガス速度Uloop(m/s): 40
ループ反応器の内径Dloop(m): 0.3
パイプ反応器の内径Dpipe(m): 0.15
プロペンイジェクターの直径d(m): 0.055
ループ反応器内での塩素入口群数: 7
パイプ反応器内での塩素入口群数: 3
再循環率: 3
変換されたプロペンのモルに基づいた生成率(モル%):
塩化アリル: 89.37
2−クロロプロペン: 2.81
1,2−ジクロロプロパン: 1.38
シス−1,3−ジクロロプロペン: 1.95
トランス−1,3−ジクロロプロペン: 1.76
その他: 2.73

Claims (14)

  1. ガス状プロペンとガス状ハロゲンからハロゲン化アリルを製造する方法であって、
    (a)入口ノズルを介してプロペンを管状ループ反応器に導入し、
    (b)管状ループ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口群であって軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群を介し、ガス状ハロゲンを管状ループ反応器に導入し、
    (c)プロペンとハロゲンを反応させ、そして
    (d)出口開口を介して反応流出物を管状ループ反応器から取出す
    工程を含み、任意の反応器容積要素におけるハロゲン濃度を、全ガス混合物に対し3質量%より小さく維持し、入口ノズルを出るプロペンのガス直線速度を、少なくとも管状ループ反応器内で連続的な循環を維持するのに十分とする上記方法。
  2. 入口ノズルの近くに設けた出口開口を介して、反応流出物を管状ループ反応器から取出す、請求の範囲第1項記載の方法。
  3. 上記工程(c)を430〜520℃の範囲の温度にて行う、請求の範囲第1項又は第2項に記載の方法。
  4. 各反応器容積要素におけるガス状反応混合物中のハロゲン濃度を、0.5〜1.5質量%の範囲に維持する、請求の範囲第1項に記載の方法。
  5. ハロゲン原料の入口温度を80〜110℃の範囲とする、請求の範囲第4項に記載の方法。
  6. (e)上記工程(d)で取出した反応流出物をパイプ反応器の入口端に導入し、
    (f)パイプ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口群であって軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群を介し、ガス状ハロゲンをパイプ反応器に導入し、ハロゲンとプロペンを反応させ、そして
    (g)反応生成物をパイプ反応器の出口端から取出す
    工程をさらに含む、請求の範囲第1〜5項のいずれか一項に記載の方法。
  7. プロペン原料が、200〜400℃の範囲の温度を有する、請求の範囲第6項に記載の方法。
  8. ループ反応器内での滞留時間(τloop)が、0.5〜3秒の範囲である、請求の範囲第1〜7項のいずれか一項に記載の方法。
  9. パイプ反応器内での滞留時間(τpipe)が、0.2〜1秒の範囲である、請求の範囲第6〜8項のいずれか一項に記載の方法。
  10. ハロゲンが塩素である、請求の範囲第1項に記載の方法。
  11. 請求の範囲第1項に記載の方法を実行するよう特に構成された反応器であって、少なくとも1つの入口ノズル、管状ループ反応器の壁に設けられ径方向配置された入口開口群であって軸方向に間隔を置いて配置された幾つかの入口開口群、及び出口開口を備えた管状ループ反応器からなる反応器。
  12. 群数が、2〜15の範囲にある、請求の範囲第11項記載の反応器。
  13. 前記管状ループ反応器の前記出口開口と流体連通している入口端を有し、パイプ反応器の壁に設けられ径方向配置された複数の入口開口を備える開放端パイプ反応器をさらに含、請求の範囲第11項又は第12項に記載の反応器。
  14. ループ反応器の内径とパイプ反応器の内径の比が、4:1から3:2までの範囲にあり、パイプ反応器の容積に対する管状ループ反応器の容積の比が、6〜9の範囲にある、請求の範囲第13項記載の反応器。
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