(実施の形態1)(参考例)
本実施の形態1による光ディスク装置は、最急勾配法を用いることにより、焦点位置と等化量との双方について、精度良くジッタ最小点を探査するものである
図1は本実施の形態1による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。図において1は光ディスク(光ディスク媒体)であり、情報が記録されたものである。2は光ヘッドであり、光ディスク1に記録された情報を読みとるものである。3はプリアンプであり、光ヘッド2が読みとった信号を増幅して再生信号HFを出力するものである。プリアンプ3からは、再生情報信号HFとともに、フォーカス誤差信号FEが生成される。4はサーボアンプであり、光ヘッド2のフォーカス位置を制御する。5は等化手段として用いられる等化フィルタであり、再生情報信号HFに対して、カットオフ周波数Fcに応じた波形等化を施し等化信号QFを出力する。6はジッタ計測手段であり、等化信号QFのジッタを計測しその値をジッタ検出信号JTとして出力する。7は最小値探査手段であり、ジッタ検出信号JTが最小になるようにフォーカス位置補償信号ΔFE、およびカットオフ周波数Fcを相関的に変化させるものである。8は加算器であり、プリアンプ3から出力されるフォーカス誤差信号と、最小値探査手段7から出力されるフォーカス位置補償信号とを加算処理して、その結果をサーボアンプ4に出力する。10はスピンドルモータであり、光ディスク1を回転させる。
このように構成された、本実施の形態1による光ディスク装置の、フォーカス位置、及び波形等化制御の際の動作を以下に説明する。
光ヘッド2は、後述するサーボアンプ4からの制御信号を、フォーカスアクチュエータに入力されることにより、フォーカス位置を定め、レーザー光を光ディスク1の記録面上に収束させて、記録された情報を読みとり、その結果をプリアンプ3に出力する。プリアンプ3は、光ヘッド2から出力された信号を増幅して、再生情報信号HFを等化フィルタ5に出力する。
等化フィルタ5は、後述する最小値探査手段7より入力されるカットオフ周波数Fcに応じて等化処理を行い、等化信号QFを出力する。等化信号QFは、再生装置の出力となるとともに、制御のためにジッタ計測手段6にも出力される。ジッタ計測手段6は、等化信号QFのジッタを計測して、その結果をジッタ検出信号JTとして最小値探査手段7に出力する。
最小値探査手段7は、後述する最急勾配法により、ジッタ検出信号JTとして得られるジッタの量を最小とするような、焦点位置と等化量とを探査し、その探査により得られた焦点位置に基づいてフォーカス補償信号ΔFEを加算器8に出力し、又得られた等化量に基づいて、カットオフ周波数Fcを等化フィルタ5に出力する。
等化フィルタ5では、カットオフ周波数Fcが等化処理に用いられることにより、波形等化の制御が行われる。一方、加算器8においては、プリアンプ3より出力されたフォーカス誤差信号FEに対して補償信号ΔFEが加算され、加算結果は、サーボアンプ4を介して光ヘッド2のフォーカスアクチュエータにフィードバックされ、フォーカス位置制御が実行される。
ここで、等化フィルタ5の特性について、図2を用いて説明する。等化フィルタ5は、例えばトランスバーサル型フィルタを用いることができるが、他に、ベッセル型、等リップル型などを用いても良い。いずれにしても、その特性が図2に示すように特定のカットオフ周波数Fcにおいて相対ゲインGを持つものであり、かつ、カットオフ周波数、又は相対ゲインの何れかが、入力される制御信号に対応して可変であるものであれば良い。本実施の形態1による光ディスク装置では、等化フィルタ5は、カットオフ周波数Fcを変化させるものであるとする。この場合カットオフ周波数Fcを下げることにより(Fc→Fc−ΔFc)再生情報信号HF信号の高域部のゲインを上げられるものであるから、これはすなわち等化量を大きくしたことになる。逆に、カットオフ周波数を上げることにより(Fc→Fc+ΔFc)等化量が小さくなり、このようにカットオフ周波数を制御することで等化量を制御することができる。
次に、最小値探査手段7による探査方法の説明のために、等化量(カットオフ周波数)の設定と、該設定に対応する典型的な対フォーカス・ジッタ特性について、図3、および図4を用いて説明する。まず図3(a)において、カットオフ周波数Fc0において、最適に等化された場合、フォーカスずれが無い点であるジャストフォーカス点FE0においてジッタが最小となる。これよりカットオフ周波数が低くなっても(→Fc0−ΔFc:等化過多)、高くなっても(→Fc0+ΔFc:等化不足)ジッタは増加する。特にカットオフ周波数が低く等化過多となる場合の対フォーカス・ジッタ特性は、図3(a)に示されるような非対称になる、このような場合には、フォーカス誤差が無い状態(FE0)でジッタ最小にならず、多少オフセットしたところがジッタ最小になる。また、図4に示すように、過補償時(等化過多)、フォーカス点を中心に両側にジッタ極小点が出る場合がある。図3と図4に示す特性の違いは光ヘッド固有の収差(球面収差、コマ収差、非点収差など)に大きく起因していると考えられる。いずれにせよ、等化過多は、いうなれば、より再生条件の悪い信号に対して最適となっているはずであって、これを考慮すればフォーカスがずれた方がよりジッタが小さくなることもあり得ることと言える。
カットオフ周波数、フォーカス位置、及びジッタについて、以上のような関係があることにより問題となるのは、評価値であるジッタが最小(極小)になるようにフォーカス位置調整しようとした場合、真のフォーカス点が探査できないことにつながる点が挙げられる。また、これとは逆に、フォーカスオフセットがある状態において、ジッタ最小になるように等化フィルタ5のカットオフ周波数を調整しても、過補償状態(Fc0−ΔFc)に収束してしまう場合もある。従って、等化フィルタ、及びフォーカスはいずれも独立して調整することは望ましくなく、両者を関連付けながら調整しなければならない。すなわち、等化フィルタについてのカットオフ周波数と、フォーカス調整についてのフォーカス位置とを2元的に同時に考慮する必要がある。図3(b)はこのような関係を示す図である。図3(b)に示すカットオフ周波数Fcを横軸に、フォーカスを縦軸にジッタを濃淡表示した等高線マップを示す。図においては、濃い方がジッタが小さいことを示すものである。図3(a)のグラフは、この等高線マップから得られる等化フィルタカットオフ周波数がFc0−ΔFc、Fc0、Fc0+ΔFcにおける断面図をプロットしたものに他ならない。この等高線マップより、ジッタ最小点は、特定の等化フィルタカットオフ周波数Fc0とフォーカス位置FE0の交点にただ一つ存在することが分る。従って、再生信号ジッタを最小化するためにはこの組み合わせを2元探査することが必要である。
最小値探査手段7はこの2元探査を実行するものであって、例えば本実施の形態1による光ディスク装置においては、マイクロプロセッサーで構成されることにより、多少複雑な探査方法をもプログラミングにより簡単に実現することができる。本実施の形態1では、最小値探査手段7は、最急勾配法により探査を行うものである。
図5は、最急勾配法を説明するための図である。ここで簡単化のため、等化フィルタカットオフ周波数Fcをx、フォーカス位置(フォーカス誤差信号FEで表記できるものとする)をy、ジッタJTをzとする。図5における等高線の垂線の方向ベクトルGは
G=(∂z/∂x、∂z/∂y) (1)
であらわすことができる。(1)を具体的に求めるにはx(カットオフ周波数Fc)、y(フォーカス位置FE)をそれぞれ独立に微小量動かし、そのときのジッタの変化量を一時記憶しそれぞれの微小量で除するようにすれば良い。そしてその後、現在位置する(x、y)の位置を、ベクトルΔVすなわち
ΔV=(−ε・∂z/∂x、−ε・∂z/∂y) (2)
だけ離れた新座標(x’、y’)に移動させる。ここでεは定数であり、例えば実験的に求めておく等して、予め設定しておくことができる。
それから、次の2つの式に従って新座標を求める。
x’=x−ε・∂z/∂x (3)
y’=y−ε・∂z/∂y (4)
この新座標の決定は、具体的には、x’を等化フィルタカットオフ周波数Fxの新たな値として、y’をフォーカス位置補償量(FE+ΔFE)として、それぞれ等化フィルタ5、加算器8に供給することとなる。
そして、(3)、及び(4)で求めた新座標(x’y’)を新たに(x、y)として(1)、及び(2)でベクトルを求め、(3)、(4)でさらに新座標を求めることを繰り返せば、図5に示すように(x、y)は、等高線と垂直な軌跡を描きながらジッタ最小となる点へ収束する。従って、探査の結果、上記2元変数x、yはジッタが最小となる等化フィルタカットオフ周波数FC0と(フォーカス誤差信号FE0で表記できる)フォーカス位置として得られる。
このように、本実施の形態1による光ディスク装置では、最急勾配法を用いて、ジッタが最小となるような等化フィルタカットオフ周波数と、フォーカス位置とを求める最小値探査手段7を備えたことで、波形等化処理の制御と、フォーカス位置の制御とを精度良く行うことが可能となる。
なお、最小値探査手段の用いる最急勾配法式の演算式として、上記のものを示したが、(2)〜(4)において記述したアルゴリズムは一例であり、実用上はさまざまな変形が考えられる。例えば、式(2)において一度に2次元ベクトルを求めたが、x(Fc)、y(FE)を交互に微少変化させ交互に式(3)、(4)を実行させながら探査を進めるものであってもよい。
(実施の形態2)(参考例)
本実施の形態2による光ディスク装置は、2次元ジッタ特性を利用した簡易探査方法を用いることにより、焦点位置と等化量との双方について、精度良くジッタ最小点を探査するものである。
本実施の形態2による光ディスク装置は実施の形態1による装置と同様に構成され、説明には図1を用いる。そして、本実施の形態2による光ディスク装置の動作についても、最小値探査手段7の用いる探査方法が異なる点を除き、実施の形態1のものと同様となる。
以下に、本実施の形態2による装置で用いる2元探査の簡易的方法について図6、図7を用いて説明する。以下説明する方法は、図3(b)で示した等高線マップの特徴を利用したものであって、図7に示すT1〜T4の経路に沿った探査を行うものである。まず、初期値として、等化フィルタカットオフ周波数として十分高い値を設定する(T0)。これは即ち、等化量を十分小さい値にしておくことであり、後述するように探査を簡単にするために行う。
そして、T1の処理では、等化フィルタカットオフ周波数を低い方に適量シフトさせて、等化量を増加させ、ジッタの変化を調べる。初期値としては、カットオフ周波数Fcを十分高い設定値としてあったので、そこから徐々に下げて行くとそれに応じて等化量が増すからジッタは低減する。探査が進み、ジッタが底打ち状態となって、次に増加し始めると変化率Gxは正に転ずる。ここで、第1段階における等化フィルタカットオフ周波数については、ジッタ極小状態となる最適値を求めたことになる。
このとき、たまたまフォーカスが合っておれば最適Fcが探査されたことになるが、先述のように過補償状態になっている可能性もある。従って、次にT2、及びT3の処理を行い、第2段階としてフォーカス最適値を探査する。
本実施の形態2による光ディスク装置で用いる探査方法では、T2において、若干補償不足となるように、フィルタカットオフ周波数をシフトさせるという処理を行う。これは、図3(a)に示すように、対フォーカス・ジッタ特性については、等化フィルタが最適または補償不足状態においてのみ対称になる性質があるので、対フォーカス・ジッタ特性の対称性を得ることにより、探査の精度の向上を図るためである。そして、T3の処理ではジッタ最小となるフォーカス最適値を探査する。
第3段階では、T4の処理として、フォーカス位置を第2段階で求めたフォーカス最適値として、再びジッタ最小となる等化フィルタカットオフ周波数の探査を行う。この第3段階においては、第1段階から第2段階に移行する際の等化不足となる等化フィルタカットオフ周波数を初期値とした探査を行う。
図6は、最小値探査手段7による、この探査方法のアルゴリズムを示すフローチャート図である。ステップ1〜4は第1段階であって、等化フィルタカットオフ周波数の最適値近辺を探査する。ステップ5〜7は第2段階であって、フォーカス最適値を探査する。ステップ8〜9は第3段階であって、再び等化フィルタカットオフ周波数の最適値を求める。以下に図6のフローに従って、本実施の形態2による光ディスク装置の最小値探査手段7における、探査の際の動作を説明する。
まず、ステップ1において、等化フィルタカットオフ周波数Fc(変数x)、およびフォーカス誤差信号FEで表記できるフォーカス位置(変数y)の初期設定を行う。フィルタカットオフ周波数は十分高い値にしておくと、Fc探査の方向が確定するので、傾斜ベクトルを求める必要がなく、実施の形態1に示した最急勾配法よりも演算処理を簡略化することができる。一方、フォーカス位置の初期値としては、信号が再生可能な程度に設定された値を用いて良いが、後述するように再生信号振幅やトラッキングエラー信号等を参照して粗調整を行っても良い。いずれの初期値も、実験やシミュレーション等により、あらかじめ算定して設定しておくことができる。
まず、ステップ2が実行されると、等化フィルタカットオフ周波数すなわち変数xの変化量として設定された、Δxを用いて、変数xを低い側へシフトさせ(x−Δx)、その時のジッタJTの変化分(z(x,y)−z(x−Δx,y))を測定する。そして、得られたジッタの変化分をΔxで除して変化率Gxを演算して、その正負を判定する。初期値としてxは十分高い値が設定されているので、Gxは負の値となり、ステップ3の後にステップ2が実行される。従って、ステップ2で正の値と判定されるまで、変数xの値はΔxずつ増加される。
これは、上記のT1の探査であり、カットオフ周波数Fcを十分高い設定値から徐々に下げて等化量を増加させると、それに応じてジッタは低減する。したがって探査の当初はGxは常に負であるが、探査が進み、ジッタが底打って増加し始めると変化率Gxは正に転ずる。ここで、ステップ4が実行される。
ステップ4は上記のT2の処理であり、T1の段階で得られたジッタ極小となるxをkΔxだけ増加させ、若干補償不足の状態とする処理である。先述のように、対フォーカス・ジッタ特性の非対称性を改善して、次のフォーカス探査が精度良く行えるようにするための処理である。
ここで、対称性と探査方法との関係について説明する。実施の形態1で用いた最急勾配法においては、(2)式に示したような微分ベクトルを求める必要があるが、これを精度良く求めるためには分母∂y(フォーカスオフセットの差)が小さくなけばならないが、その結果、分子∂z(測定ジッタの差)がノイズに対して小さくなり、結局精度良くベクトルが検出できないといった問題点が生じる。一方、本実施の形態2による探査方法においては、図6のフローにおけるステップ5〜6において、微分を行うのではなく、単にフォーカスオフセットを正負に変化させたときのジッタの差を求めるだけである。ここでは対フォーカス・ジッタ特性が対称であることを前提としているので、フォーカスを±Δy変更させてジッタが等しいということは、±0のポイントではジッタが最小値であることを意味する。したがってこのときのΔyは微分における∂yのように微小量である必要は無く、むしろδに対して十分大きい方が精度的に有利となる。
ステップ5では、フォーカスである変数yを±Δy変移させ、そのときのジッタの変化の差分Gy(=z(x,y+Δy)−z(x,y−Δy))を演算する。ステップ6では、差分Gyの絶対値がδ以下になったか否かを判断する。このことは、フォーカスをそれぞれ反対方向に等量オフセットさせたときのジッタがδ以下の誤差で一致したか否かを判断することである。ステップ6の判断において、δ以下でない場合は、変数yの値をy−ε・Gy(ε:定数)に変更することにより、フォーカスオフセットの中心値をε・Gyだけ補償して、ステップ5〜6の処理を繰り返す。ステップ6でδ以下と判断されるまで、ステップ5〜7が繰り返され、ステップ6でδ以下と判断されたとき、上記のT3が終わり、ステップ8が実行される。
ステップ8〜9は上記のT4であり、ステップ2〜3と同様の処理である。すなわち、ステップ4(T2)で若干補償不足気味に設定したカットオフ周波数Fc(x)を初期値として用いて、再度ジッタ最小となる値を探査する。ステップ8において正の値となれば探査終了となる。
以上の手順において、等化フィルタカットオフ周波数、及びフォーカス位置の変化分Δx、及びΔy、定数k、及びεについては、x、及びyの初期値と同様に、実験やシミュレーション等により、あらかじめ算定して設定しておくことができる。
このように、本実施の形態2による光ディスク装置では、等化フィルタが最適または補償不足状態においてのみ対フォーカス・ジッタ特性が対称になる性質を利用した探査法を用いて、ジッタが最小となるような等化フィルタカットオフ周波数と、フォーカス位置とを求める最小値探査手段7を備えたことで、波形等化処理の制御と、フォーカス位置の制御とを精度良く行うことが可能となる。
実施の形態1で示した最急勾配法を適用した場合、精度良くしかも理論的には高速に2元探査を実行できるが、これは(1)で示される微分演算が高速・高精度に実行できることを前提としたものである。しかし実際には、2次元の偏微分を演算するためには近接した3点の測定が少なくとも必要であり、測定時間、精度の点で実用上の問題が発生することがある。
なお、フォーカスオフセットの初期値について、ある程度焦点制御がなされた状態にしておいたほうが、以降の探査の収束が早くなり、処理の高速化を図れる。そのためには、ジッタがほぼ最小になるようにフォーカスオフセットを粗調整しておいても良いが、かかる方法によったのではフォーカス・ジッタ特性についての対称性が保証されていないこととなるので、再生情報信号の振幅や、トラッキングエラー信号の振幅等を評価値として用いて、これら振幅が最大になるようにフォーカスを調整する方法も採用できる。このような他の評価値を用いる方法については、実施の形態3において説明する。
また、等化フィルタカットオフ周波数Fcの初期値として、最適周波数以上であり、かつ最適周波数の近傍存在する値に設定できるならば、ステップ1〜4による処理は不要となる。従って、実験やシミュレーション等によりかかる値を設定し、これを初期値として用いることによればさらに処理負担を軽減し、処理の高速化を図ることが可能となる。しかし、実際には光ディスク媒体は交換媒体であり、成形条件の差によって特性が大きく異なることが予期され、適度な学習無しに最適値に近い初期値を設定することは困難であると考えられるため、上記のような設定した初期値を用いる方法によることは、若干の精度の低下を伴う可能性がある。また、初期値が極端に補償不足状態であるときにフォーカスオフセット最適化を行った場合、再生情報信号のS/Nが大きく低下するので、十分な精度が確保できない可能性もあるため、適切な設定を行うことが望ましい。
(実施の形態3)(参考例)
本実施の形態3による光ディスク装置は、フォーカス位置探査については評価値として再生信号あるいはトラッキング誤差信号の振幅を利用することにより、フォーカス位置探査と等化量探査とを独立に実行するものである。
図8は本実施の形態3による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。図8において、9は振幅計測手段であり、プリアンプ3から出力される再生情報信号の振幅を計測し、振幅計測信号EVを出力する。72は最大値探査手段であり、振幅計測信号EVが最大になるようにフォーカス位置補償信号ΔFEを相関的に変化させる。本実施の形態2における最小値探査手段71は、ジッタ検出信号JTが最小になるようにカットオフ周波数Fcのみを相関的に変化させる。光ディスク媒体1、光ヘッド2、プリアンプ3、サーボアンプ4、等化フィルタ5、ジッタ計測手段6、加算器8、及びスピンドルモーター10は実施の形態1による装置のものと同様である。
このように本実施の形態3による装置では、等化フィルタ5、ジッタ計測手段6、最小値探査手段71が係わる等化量最適化ループと、信号振幅計測手段9、最大値探査手段72、およびフォーカス制御ループが係わるフォーカス位置補償ループとを分離しているものである。図2から図4を用いて説明したように、単純に信号等化系とフォーカス制御系とをそれぞれ独立に実行させたのでは十分な制御をなし得ない場合がある。しかし、このことは、両者に対して同一の評価値すなわちジッタを用いることによるものであって、互いに別の評価値を用いて独立に制御をすれば、それぞれにおいて最適値に収束するはずである。そこで本実施の形態3による光ディスク装置では、信号等化系においてはジッタ計測手段6より得られる信号JTを最小化するように、一方フォーカス制御系においては再生信号の再生振幅を最大にするように、それぞれ探査が実行される。
このように構成された本実施の形態3による光ディスク装置について、以下にその動作を説明する。
光ヘッド2は、サーボアンプ4からの制御信号に従ってフォーカス位置を定め、レーザー光を光ディスク1の記録面上に収束させて、記録された情報を読みとり、その結果をプリアンプ3に出力する。プリアンプ3は、光ヘッド2から出力された信号を増幅して、再生情報信号HFを等化フィルタ5に出力する。
等化フィルタ5は、後述する最小値探査手段71より入力されるカットオフ周波数Fcに応じて等化処理を行い、等化信号QFを出力する。等化信号QFがジッタ計測手段6に出力され、ジッタ計測手段6の計測結果がジッタ検出信号JTとして最小値探査手段71に出力される。最小値探査手段71は、後述する探査方法を用いて、ジッタの量を最小とするような等化量を探査し、得られた等化量に基づいて、カットオフ周波数Fcを等化フィルタ5に出力する。等化フィルタ5では、カットオフ周波数Fcが等化処理に用いられることにより、波形等化の制御が行われる。 一方、再生情報信号HFは、振幅計測手段9にも入力され、信号振幅計測手段9は再生情報信号HFの信号振幅を計測して、その結果を振幅計測信号EVとして出力する。振幅計測手段9による振幅の計測方法としては、例えば、再生情報信号HFを全波整流し、リップル成分を除去してDC成分のみ出力する方法が使用可能である。振幅計測手段9の計測結果が振幅計測信号EVとして最大値探査手段72に出力され、最大値探査手段72は、後述する探査方法を用いて、振幅の量を最大とするようなフォーカス位置を探査し、得られたフォーカス位置に基づいて、フォーカス補償信号ΔFEを加算器8に出力する。加算器8においては、プリアンプ3より出力されたフォーカス誤差信号FEに対して補償信号ΔFEが加算され、加算結果は、サーボアンプ4を介して光ヘッド2のフォーカスアクチュエータにフィードバックされ、フォーカス位置制御が実行される。
以下に、最小値探査手段71と、最大値探査手段72とによる探査の方法を説明する。我々の実験では、図9に示すように、フォーカス位置に対してジッタ関数と振幅関数とをプロットして比較すると、ジッタ関数の最小値と振幅関数の最大値とは0〜0.3μm程度の誤差でほぼ一致することが分かっている。従って、信号振幅EVを評価値として用い、これが最大となるように探査したフォーカス位置は、ジッタが最小となる位置の近傍に収束すると考えられる。そして、この探査処理は波形等化前の信号HFを用いて行うものであり、波形等化の結果にかかわることなしに、独立して実行できる。
最小値探査手段71、および最大値探査手段72はそれぞれが別のマイクロプロセッサーにおいて実現するものであってもよく、あるいは同一マイクロプセッサーにおける複数タスクによって実現されるものであってもよい。図10は最小値探査手段71、又、図11は最大値探査手段72における処理手順を示すフローチャート図である。
図10に示す、最小値探査手段71による探査では、ステップ1〜3は、図6に示すステップ1〜3と同様の処理となり、等化フィルタ5のカットオフ周波数Fc(x)を初期値から順次下げて行き、ジッタ(z)の最小値が見つかった状態で探査を終了する。
図11に示す、最大値探査手段72による探査では、ステップ1は図6に示すステップ1と同様であり、ステップ2〜4は図6に示すステップ5〜7と同様の処理となる。ここで、実施の形態2においてはジッタ(z)を最小化させることが目的であったのに対し、本実施の形態3では、信号振幅EV(w)を最大化させることを意図している点で異なる。従って、フォーカス位置(y)を微少量(Δy)変化させたとき、振幅(w)の差分Gyが0に近づくようにフォーカス位置を更新するものであるが、Gy=0となるポイントが極小点ではなく極大点であるためステップ4でなされるフォーカス位置の微少変位の方向が図6におけるステップ7に対して逆になっている。
このように、本実施の形態3による光ディスク装置では、実施の形態1又は2による装置に対して、再生情報信号HFの振幅を計測する振幅計測手段9と、振幅が最大となるようなフォーカス位置を探査する最大値探査手段72とを追加した構成としたことで、フォーカス探査を実行する際に再生信号振幅EVを用いるため、フォーカス制御系と信号等化系とを互いに独立して探査することができ、双方を精度良く制御することが可能となる。
なお、本実施の形態3の装置では両制御系を同時に動作させることとしているが、信号等化系に先だってフォーカス制御系を実行させるようにしてもよい。ただし、信号等化系を先に実行してからフォーカス制御系を実行することは、フォーカスがオフセットである状態で等化制御を行うことが等化過剰を招くこととなるので望ましくない。
また、本実施の形態ではフォーカス位置を探査するのに再生信号振幅を用いたが、ジッタ以外の評価値であれば、フォーカス位置に伴って変化するどのような信号を用いてもよい。例えばプリアンプがトラッキング誤差信号を出力するものとして、これを用いることとしても同様の精度の良好な制御が可能となる。
(実施の形態4)(参考例)
本実施の形態4による光ディスク装置は、光ディスク上に大小の傷がある場合でも、それらを避けてあるいは相殺して、精度よくジッタの変化分を測定し得るものである。
図12は本実施の形態4のブロック図である。図12において、光ディスク1は実施の形態1と同様のものであるが、光ディスク1上にはスパイラル状のトラックが設けられていて、このトラックに沿って情報が記録されているとする。11は回転検出手段であり、スピンドルモーター10の回転を検出し、その1回転ごとにパルス信号RVを発する。12はスチルパルス生成手段であり、回転検出手段11が発生するパルス信号RVに同期して、スチルパルス信号STLを生成する。プリアンプ31は、実施の形態1と同様の増幅を行うが、本実施の形態4による装置では、再生情報信号HFとともに、トラッキング誤差信号TEをも出力するものである。32、34、36、及び37はホールド手段であり、入力された信号を一時保持する。33、及び44は加算器であり、入力された信号を加算処理し、その加算結果を出力する。35、及び43はカウンタであり、入力された信号を計数する。38は除算手段であり、ホールド手段36の出力JYをホールド手段37の出力JXで割って、その出力を平均ジッタ信号AJTとして出力する。39はクロック発生手段であり、処理に用いるクロック信号CKを発生する。40はコンパレータであり、入力された信号の比較を行い、ある条件を満たす場合には制御信号を発生する。41、及び42はスイッチであり、閉じた状態では入力された信号を出力側に流通させるが、開いた状態においては入力された信号を出力側に流通させなくするものである。45はトラッキングアンプであり、光ヘッド2を設定されたトラック上に位置するように制御する制御信号を出力する。光ヘッド2、等化フィルタ5、ジッタ計測手段6、及びスピンドルモーター10は実施の形態1による装置のものと同様である。
このように構成された本実施の形態4による光ディスク装置について、以下にその動作を説明する。光ヘッド2は、トラッキングアンプ45からの制御信号に従ってトラッキング位置を定め、レーザー光を光ディスク1の記録面上の設定されたトラックに収束させて、記録された情報を読みとり、その結果をプリアンプ3に出力する。プリアンプ3は、光ヘッド2から出力された信号を増幅して、再生情報信号HFを等化フィルタ5に出力し、またトラッキング誤差信号TEを加算器44に出力する。トラッキング誤差信号TEはトラッキングアンプ45を経て光ヘッド2のトラッキングアクチュエータにフィードバックされ、トラッキング制御が実行される。
等化フィルタ5は、後述するカウンタ43より入力されるカットオフ周波数Fcに応じて等化処理を行い、等化信号QFを出力する。等化信号QFはジッタ計測手段6に出力され、ジッタ計測手段6の計測結果がジッタ検出信号JTとしてホールド手段32に出力される。
一方光ディスク媒体1はスピンドルモーター10に装着されており、回転検出手段11はこのスピンドルモーター10の1回転ごとにパルス信号RVを発する。パルス信号RVは、スチルパルス生成手段12と、カウンタ35、及び43と、ホールド手段34、36、及び37とに入力される。スチルパルス生成手段12はパルス信号RVに同期してスチルパルス信号STLを発生し、この信号STLはさらに加算器44を介してトラッキングアンプ45に供給される。その結果トラックスチル動作が実行される。つまり、1回転ごとに再生方向と逆方向に1トラックジャンプが実行され、光ヘッド2は常に同じトラック上の情報を繰り返し再生し続ける。
クロック発生器39はクロック信号CKを発し、このクロック信号CKはスイッチ41を通して、ホールド手段32、及び34と、カウンタ35とに供給される。スイッチ41は通常は閉じた状態であり、クロック信号を上記に出力させる方向に接続している。ホールド手段32はこのクロック信号CKに応じてジッタ計測手段6の出力信号JTを、クロック信号CKの周期の期間だけ一時保持してから、スイッチ42を通して加算器33に出力する。スイッチ42は通常は閉じた状態であり、ホールド手段32の出力を加算器33に出力する方に接続している。33、34はそれぞれ加算器、ホールド手段であり、これらはホールド手段32の出力をクロック信号CKに応じて逐次累積加算する、いわゆるアキュムレータとして作用する。
カウンタ35はクロック信号CKを計数する。36、37はそれぞれホールド手段であり、それぞれホールド手段34、カウンタ35の出力を回転同期パルス信号RVのエッジに応じて、スピンドルモーター1回転の期間、一時保持する。38は除算手段であり、ホールド手段36の出力JYをホールド手段37の出力JXで割って、その出力を平均ジッタ信号AJTとして出力する。ジッタの積算値が保持されているホールド手段34は回転同期パルス信号RVでリセットされることにより、次のサイクルのための初期設定がなされる。
図13は、本実施の形態4による光ディスク装置におけるトラッキング制御とジッタ計測とを説明するための図である。先述のように光ディスク媒体1の表面には傷が付きやすいものであるため、かかる傷は、ジッタを計測する際に大きな誤差要因となる。そこで本実施の形態4ではジッタを計測するのに常に同一トラックで計測し、しかもトラック1周当たりの計測ジッタの積算平均を用いることによって、傷の影響を相殺し得るものである。
つまり、等化フィルタ5のカットオフ周波数Fcを変化させ、その時のジッタの増減分から最適値を探査することは実施の形態1〜3と同様であるが、Fcを切り換えるタイミングを、図13に示されるようにカウンタ43を用いて回転検出信号RVと同期をとって切り換えるようにすれば、同じトラックを走査する限り、ジッタ増減分からは傷の成分が殆ど除去されることになる。すなわち、図13に示すように回転検出信号RVに応じて等化フィルタ5のカットオフ周波数Fcを変えた場合、ジッタの改善、または悪化によって、ジッタ検出信号JTは同図に示されるように平行移動するように変化する。従ってこのときのジッタの変化量ΔJYは図中点線(等化フィルタ変更前)と実線で挟まれたハッチング部分となって、結局傷部分も相対的に変化することでその影響が相殺される。
そして、本実施の形態4による装置では、コンパレータ40と、スイッチ41、及び42とを備えたことにより、さらに大きな傷に対する対策をとり得るものである。コンパレータ40は、ジッタ検出信号JTがしきい値Vthを越えたとき、スイッチ41、及び42に対してスイッチを開くよう制御信号を発するものであり、本実施の形態4の装置において傷検出手段として作用する。
図13において、加算器33およびホールド手段34で生成されるジッタの積算値Jyは図中ハッチングした部分の積分となる。この積算値の生成の過程で大きな傷があると、ジッタは瞬時に増大する。本実施の形態4による装置では、あらかじめ設定されたしきい値Jthを超えるジッタ検出信号JTが出力された場合は、傷を検出したものとみなすものである。これにより、大きな傷があるとき、ジッタ検出信号JTがしきい値Vthを超えるので、コンパレータ40より制御信号JOVRが発せられることにより、スイッチ41、及び42はいずれも開いた状態となる。
従って、スイッチ42が開いた状態になることにより、加算器33にはジッタ検出信号が供給されなくなる。また、スイッチ41が開いた状態になることにより、カウンタ35にはクロック信号CKが供給されないこととなるので、カウンタ35の動作は一時停止状態となる。この状態は、光ヘッドが傷部分を通過し終え、ジッタ信号JTがしきい値Vth以下になるまで続く。ジッタ信号JTがしきい値Vth以下になると、コンパレータ40からは制御信号JOVRが発せられなくなるので、スイッチ41、及び42は再び閉じた状態となる。その後、加算器33およびホールド手段34は処理を再開し、パルス信号RVを受け取るまで累積加算を続ける。その結果、図中ハッチングされた部分が傷部分を除く累積加算結果Jyとなってホールド手段37に保持される。
これを累積加算が実行された「期間」で除すれば平均値が求まる。この「期間」はクロック信号CKをカウンタ35でカウントして得る。カウントの終了、及びリセットはパルス信号RVに応じて行われる。また、信号JOVRが出ている間、すなわち傷部分に相当する間は、スイッチ41が開いてカウントが中断される。その結果ホールド回路36には傷部分を除く「期間」Jxが保持される。従って、積算値Jyを期間Jxで除すれば、傷部分を除く平均ジッタ信号AJTが求まることとなる。
本実施の形態4では、ジッタを評価値とした波形等化処理の制御については言及せず、また図示していないが、実施の形態1〜3と同様に等化フィルタカットオフ周波数Fcを制御することとして、ジッタ信号JTの代わりに上記の平均ジッタ信号AJTを用いれば、傷の影響を低減して高精度にカットオフ周波数Fcの探査を実行できるものである。また、本実施の形態4ではカットオフ周波数Fcに対するジッタ検出にのみ言及したが、カットオフ周波数Fcの代わりに光ディスク1回転ごとにフォーカス位置を微少変化させた場合においても本実施の形態と同様の効果が得られ、傷の影響の低減を図り得る。
このように、本実施の形態4による光ディスク装置では、回転検出手段11と、スチルパルス生成手段12と、加算器42と、トラッキングアンプ45とを備え、これらが、光ヘッド2を光ディスク1の同一トラック上で走査を行うように制御するトラッキング制御手段として機能し、クロック生成手段39と、ホールド手段32、34、36、及び37と、カウンタ35と除算手段38とを備え、これらがジッタの量の平均値を演算するジッタ平均手段として機能し、光ディスク1上の同一トラックにおいてトラック1周当たりの計測ジッタの積算平均を求めるので、ジッタ量計測にあたり光ディスク1上の傷の影響を低減することが可能となる。
さらに、本実施の形態4による光ディスク装置では、コンパレータ40と、スイッチ41、及び42とを備え、これらがジッタ検出信号が設定されたしきい値を超えたことにより傷を検出する傷検出手段と、ジッタの積算平均の演算を中止する演算制御手段として機能するので、大きな傷を検出し、計測に対するその影響を回避することが可能となる。
なお、本実施の形態4においては、光ディスク上の傷を検出するのにジッタ信号JTの大きさを用いたが、これに限らず再生信号から得られる他の情報を用いてもよい。例えば図8で示されたような振幅計測手段を用いた場合、検出振幅の急峻な落ち込みにより傷を検出することができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5による光ディスク装置は、傷の少ない光ディスク内周部で探査を行うことにより、傷の影響を避けるものである。
図14は本発明の実施の形態5による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。101は光ディスクであり、図15に示すものである。図15については、後述する。51はコントローラであり、光ヘッド2の移動を制御するためのパルス信号を出力する。52はフリップフロップであり、入力された信号に対応して、H(High)、又はL(Low)の信号を出力する。53はトラバースモーターであり、光ヘッド2を移動させる。54はセンサーであり、光ディスク101の最内周付近に位置しており、光ヘッドを検知して信号を出力する。56はサンプルホールド回路であり、サンプル状態(スイッチオン状態)では最小値探査手段71から入力された信号を等化フィルタ5に流通させるが、ホールド状態(スイッチオフ状態)においては入力された信号を出力側に流通させなくなる。最小値探査手段71は実施の形態3と同様にジッタ最小となる等化フィルタカットオフ周波数の探査を行うが、その探査の結果を直接等化フィルタ5に入力するのではなく、サンプルホールド回路56に入力するものである。光ヘッド2、等化フィルタ5、ジッタ計測手段6、及びスピンドルモーター10は実施の形態1による装置のものと同様である。
このように構成された本実施の形態5による光ディスク装置について、以下にその動作を説明する。まずコントローラ51がスタートパルスSTPを発してフリップフロップ52の出力をHにする。トラバースモーター53は、フリップフロップ52からHの信号を入力されると、光ヘッド2を光ディスク媒体101の内周側へ移送する。光ヘッド2がほぼ光ディスク媒体101の記録面のほぼ最内周に移動すると、センサー54はこれを検知してフラグ信号Dを出力する。フラグ信号Dは、フリップフロップ52とサンプルホールド回路56とに出力される。フリップフロップ52はこのフラグ信号Dを入力されることによってリセットされ、出力信号はLとなるので、この信号を入力されたトラバースモーター53は光ヘッド2の移送を止める。
そして、このフラグ信号Dによりジッタ最小化手法による最適等化量探査が実行される。すなわち、フラグ信号Dが供給されるとサンプルホールド回路56がサンプル状態となり、ジッタ計測手段6より出力されるジッタ検出信号JTが最小になるような等化フィルタカットオフ周波数Fcを最小値探査手段71が探査するループが閉じられる。等化フィルタ5には、最小値探査手段71が出力した等化フィルタカットオフ周波数Fcが入力される。
その後ドライブが通常動作となり、情報の再生を行う場合には、光ヘッド2が外周側へ移動することにより、センサー54が光ヘッド2を検知しないこととなるので、フラグ信号Dが出力されなくなり、サンプルホールド回路56がホールド状態となる。従って、先に最小値探査の結果決定された等化フィルタカットオフ周波数Fcが以降保持され、これにより波形等化処理が行われる。
以上の動作は言い換えれば、等化フィルタ最適化の探査を光ディスク媒体の最内周領域においてのみ行うことに他ならない。このようにしたのは以下の理由による。まず図15に本実施の形態5における光ディスク媒体101の正面図、および断面図を示す。光ディスク媒体は、例えばコンパクトディスク(CD)やビデオディスクのように、カートリッジに入れずに用いる場合が多いが、長期間使用していると同図に示すように媒体表面に多数の傷が付く。これらの傷は情報再生時にエラーの原因となるばかりでなく、等化フィルタを最適調整する際にも悪影響を与えることは既に述べた通りである。
かかる傷のうち最も多いのは媒体面を机等で擦った際にできるスクラッチ、すなわち”引っ掻き傷”である。そこで本実施の形態5では図15に示すように光ディスク媒体101の情報記録領域103のさらに内側に突起部102を設け、その近傍(最内周領域)が机等の平面と接触しないようにしている。その結果、他の領域に比べ最内周部に傷が付きにくくなるので、上述のように最内周領域のみで最適等化係数探査を実行すれば、傷による影響は軽減される。
このように、本実施の形態5による光ディスク装置では、トラバースモーター53を備え、これが、光ヘッド2を光ディスク101の傷の少ない内周に移送する移送手段として機能し、センサー54、コントローラ51、及びフリップフロップ52を備え、これらが、上記光ヘッドの移送を制御する移送制御手段として機能し、サンプルホールド回路56を備え、これが、光ディスク101の最内周で探査した等化量により波形等化を行うように制御する等化量設定手段として機能することで、傷の少ない最内周領域で探査した等化量を、波形等化処理に用いるので、かかる探査に対する光ディスク101の傷の影響を低減することが可能となり、精度の良い制御を行い得ることとなる。
なお、本実施の形態5ではフォーカス探査については言及していないが、ジッタの最小化の精度を向上できるものであるので、等化フィルタを最適化するのと同様の効果が期待できる。すなわち、本実施の形態5による傷の影響の低減効果は、ジッタを評価量として用いるすべてのパラメータの探査において用いることができる。また、フォーカス探査については実施の形態3に準じて、図8に示す構成とし、信号振幅を評価値として用いてもよい。
また、実施の形態4による光ディスク装置との組み合わせにより、傷の少ない最内周領域においてジッタをディスク1周ごとに平均化するようにすればさらに傷の影響を受けにくくすることができる。
また、本実施の形態5では、光ヘッド2が最内周に位置するか否かを検知するのにセンサー54を用いたが、光ヘッド2そのものが再生するアドレス信号あるいは他の識別信号から最内周にいるか否かを判断しても良い。
また、本実施の形態5では、上記センサー54の出力をもとに等化フィルタ設定値をホールドしたが、この信号を用いず、コントローラ51が探査終了後の適当なタイミングにホールド信号を発生するようにしても良い。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6による光ディスク装置は、等化過多状態で対フォーカス、ジッタ特性が緩やかになる性質を利用して、トラックジャンプに伴うフォーカス変動によるジッタの悪化を低減し、アドレス情報等をより確実に検出できるようにするものである。
図16は本発明の実施の形態6による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。図16において61はコントローラであり、トラックジャンプの際にH(High)状態となるトラックジャンプ指令信号TJPを発生する。トラバースモーター53は実施の形態5と同様に光ヘッドを移動させるものであるが、本実施の形態6では、コントローラ61から発せられるトラックジャンプ指令信号TJPに応じて光ヘッド2を光ディスク媒体半径方向に移動させるものである。62はメモリであり、予め設定された等化フィルタカットオフ周波数を記憶する。メモリ62に記憶される等化フィルタカットオフ周波数は、等化フィルタ5における波形等化処理が等化過多となるような値として設定されたものとする。63はスイッチであり、閉じた状態のときのみ、メモリ62の記憶内容を加減算器64に出力する。64は加減算器で、入力された信号の加減演算処理を行う。光ディスク媒体1、光ヘッド2、スピンドルモーター10、等化フィルタ5、ジッタ検出手段6は実施の形態1と同様のものである。また、サンプルホールド回路56と、最小値探査手段71とは実施の形態5と同様のものである。
このように構成された本実施の形態6による光ディスク装置について、以下にその動作を説明する。既に説明した通り、光ディスク101の記録面にはスパイラル状のトラックが設けられていて、このトラックに沿って情報が記録されているものであり、通常再生状態では光ヘッドはトラックに沿って情報の読み出しを行っている。しかし、離れたトラックに記録された情報を読み出すことが必要となった際には、瞬時に該離れたトラックに光ヘッドが移動するトラックジャンプを行うこととなる。
かかるトラックジャンプなしに、光ヘッド2がトラック上を走査しているときコントローラ61が出力するトラックジャンプ指令信号TJPはLであり、サンプルホールド回路56はサンプル状態であり、また、スイッチ63は開いているとする。このとき等化フィルタ5、ジッタ検出回路6、最小値探査手段71は閉ループを構成し、検出ジッタ値JTが最小になるようにカットオフ周波数Fcを決定する。
上記トラックジャンプを行う際には、コントローラ61がトラックジャンプ指令信号TJPを発し(L→H)、このトラックジャンプ指令信号TJPを入力されることでトラバースモーター53が起動し、光ヘッド2は移動を開始する。このトラックジャンプ指令信号TJPはサンプルホールド回路56と、スイッチ63とにも供給される。そして、サンプルホールド回路56はトラックジャンプ指令信号TJPを入力されることにより、光ヘッドの移動と同時にホールドモードになる。さらに、スイッチ63はトラックジャンプ指令信号TJPを入力されることにより、閉じた状態となって、メモリ62に保持されている補償値ΔFcが減算器64に入力される。そして、サンプルホールド回路56から減算器64に入力される周波数Fcより、補償値ΔFcが減算された結果が、等化フィルタ5に供給される。
つまり、最小値探査手段71の探査により得られたカットオフ周波数Fcの代わりに、Fc−ΔFcが設定され、その結果、等化フィルタFcの出力する等化信号は等化過多状態となる。ホールド直前のFcはジッタ最小となる値であったので、Fcが変化することでジッタは増大するが、光ヘッド2の移動に伴う振動によって生じるフォーカスの乱れに対してはむしろ幾分強くなる。
このことを図4を用いて説明する。等化フィルタ5が最適等化状態にある場合(FcO)、確かにフォーカス最適点(FEO)でジッタ最小にはなるが、フォーカス位置ずれが大きくなるにつれ、ジッタは急峻に悪化する。一方等化フィルタが過等化に設定されている場合(Fc−ΔFc)、フォーカス最適点(FEO)でのジッタは増えるが、フォーカス位置ずれに伴うジッタ増加は緩やかであり、むしろある程度のフォーカス位置ずれがある状態では最適等化の場合に比べてジッタが小さい場合がある。トラックジャンプ等のない、通常再生の際においてはジッタ最小の状態が望ましいので、適時フォーカス最適点を探査し、あるいはその結果をホールドするようにしておけば、対フォーカス特性が急峻であっても問題にはならない。しかし、本実施の形態6のようにトラックジャンプを実行する場合、その際の振動や衝撃などによって瞬時にフォーカスずれが発生する場合がある。通常再生時のように定常的なフォーカスずれが考えられる場合は探査手法を用いてこれを吸収することが可能であるが、瞬時に発生するフォーカスずれを極めて短時間のうちに吸収するのは殆ど不可能である。
そこで本実施の形態6では過等化状態における対フォーカス・ジッタ特性を利用して、瞬時のフォーカスずれにおけるジッタを多少なりとも改善している。すなわち、トラックジャンプ直後(TJP=L→H)に、すでに最適探査されている等化フィルタカットオフ周波数FcからFc−ΔFcに変えているのは、最適等化状態から過等化状態に切り替えていることに他ならない。その結果対フォーカス、ジッタ特性は図4に既に示されているような”鍋底”になり、フォーカスが大きくずれたときでもジッタの増加をある程度抑えることができる。トラックジャンプ指令信号TJPでサンプルホールド回路56をホールド状態にしているのはトラックジャンプ中に最適探査を実行しないようにするためである。
トラックジャンプにより移動する先の目標アドレスADRが検出され、トラックジャンプを終了させるとき、コントローラ61はトラックジャンプ指令信号TJPをLにしてトラバースモーター53を止める。また、トラックジャンプ指令信号がLになることにより、スイッチ63が開放され、等化フィルタ6で用いられるカットオフ周波数をFcに戻す。その結果、ジッタ最小の状態で情報の再生を再開できるようになる。
このように、本実施の形態6による光ディスク装置では、コントローラ61、スィッチ63、メモリ62、及びサンプルホールド回路56を備えたことで、トラックジャンプがある場合には、スイッチ63とサンプルホールド回路56とを切り替えることにより、等化フィルタ5が用いるカットオフ周波数を、等化過多になるようあらかじめ設定したものとするので、等化過多時におけるフォーカス・ジッタ特性を利用することにより、トラックジャンプ時の振動・衝撃によるフォーカスずれに対してジッタの増加を抑えることができ、その結果、トラックジャンプ時においてもより確実にアドレスを検出することが可能となる。
なお、以上のように、本実施の形態6では、トラックジャンプによって生じるフォーカスのずれをあらかじめ見込んで、そのフォーカスずれのある状態において最適になるようなカットオフ周波数、すなわち探査した最適周波数よりは等化過多となるようなカットオフ周波数を設定しておき、トラックジャンプ期間中のみ上記設定最多カットオフ周波数を用いることとしたものである。しかし、トラックジャンプ期間中のみならず、常時、探査した最適周波数よりは等化過多となるようなカットオフ周波数を用いることとすることも可能であり、コントローラの負担の軽減を図り得るとともに、不測のフォーカスずれによく対応可能となり、特に連続的にトラックジャンプを繰り返すような動作をさせる場合には、全体的な処理の迅速化が図り得るという効果がある。
さらに、このように設定することで、ディスクの変形等によって生じるディスクチルトにも対応が可能となる。一般にディスクは外周部ほど変形が大となる傾向があるので、先の実施の形態5に示したように、傷の少ない最内周で探査を実行し、該探査で得られたカットオフ周波数を用いて波形等化処理を行うこととする場合に、外周部では等化不足をひき起こす可能性がある。そこで、常時等化過多となるような制御を行うことにより、ディスクの内外周にかかわりなく、良好な波形等化処理を行うことが可能となる。
また、本実施の形態6においては、トラックジャンプ開始と同時にサンプルホールド回路56をホールド状態にしたが、同時である必要は無く、トラックジャンプ開始前にホールドしても良い。
なお、実施の形態1〜6においては、いずれも等化量を変化させるのにカットオフ周波数を変化させるものとしたが、代わりにゲインG(図2参照)を変化させること、あるいは両者を同時に変化させることによって調整を行ってもよく、同様の効果が得られる。
また、いずれの実施の形態においても、最小値探査手段等をマイクロプロセッサー等で構成することができる。そして、マイクロプロセッサーそのものはデジタル処理を実行するものであるから、その入力値であるジッタ信号JTあるいはその出力であるFc、ΔFE、そしてΔFEと加算されるべきフォーカス誤差信号FEについては、デジタル信号であるものとして扱ったものであるが、いずれの実施の形態においてもアナログかデジタルかは全く問題ではなく、AD変換器、DA変換器の設置場所等に関する単なる設計上の問題となるのみであって、アナログ信号を用いた処理を行うことも可能である。