JP4082129B2 - 銀塩光熱写真ドライイメージング材料、画像記録方法、画像形成方法、及び銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高画質で、より均一性に優れたムラのない黒白銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0003】
そこで、レーザー・イメージャーやレーザー・イメージセッターにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされている。
【0004】
係る技術として、例えばD.MorganとB.Shelyによる米国特許3,152,904号、同3,487,075号又はD.H.Klosterboerによる「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.48頁,1991)等に記載されるように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料(以下、熱現像銀塩感材とも記す)が知られている。この熱現像銀塩感材では、溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0005】
これらの熱現像銀塩感材は、感光層中に設置された感光性ハロゲン化銀粒子を光センサーとし、有機銀塩を銀イオンの供給源とし、内蔵された還元剤によって、通常、80〜140℃で熱現像することで画像を形成させ、定着を行わないことが特徴である。
【0006】
公知の装置及び方法を用いて現像される、これら熱現像銀塩感材は、しばしば、不均一な画像となることがあった。特に、連続処理する際に、この傾向が顕著であり、濃度ムラ発生が問題であった。
【0007】
テキストや線画等の多々の適用分野において、これらの欠点は許容されることができる。しかしながら、医療、工業、グラフィックや、その他の画像が適用される分野においては、より均一であり、かつ高品質の画像が所望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、高品質で濃度ムラのない、均一性に優れた銀塩光熱写真ドライイメージング材料、画像記録方法及び画像形成方法、ならびに該ドライイメージング材料の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段によって達成される。
【0010】
1)支持体上に、少なくとも有機銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤、バインダーを含有する感光層と導電性層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、該導電性層が前記一般式(1−a)で表される化合物を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0011】
2)支持体上に、少なくとも有機銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤、バインダーを含有する感光層と導電性層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、該導電性層が前記一般式(1−b)で表される化合物を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0012】
3)前記導電性層が前記一般式(2)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0013】
4)前記感光層がチウロニウム化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0014】
5)前記感光層がMMBI(5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール)を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0015】
6)前記感光層が前記一般式(3)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0016】
7)前記感光層が前記一般式(4)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0017】
8)前記感光層が前記一般式(5)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0018】
9)1)〜8)の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に画像露光する手段がレーザー光走査露光機であり、該露光機のレーザー光の波長が600〜1600nmである画像記録方法。
【0019】
10)1)〜8)の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を熱現像して画像を形成する画像形成方法。
【0020】
11)1)〜8)の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光層が、溶剤分散された塗布液を塗布・乾燥して成る銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0021】
以下、本発明を詳述する。まず、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料(以下、光熱写真材料とも称す)の導電性層に用いられる一般式(1−a)及び一般式(1−b)で表される化合物(弗素含有界面活性剤)について説明する。
【0022】
一般式(1−a)の化合物は、例えばFO2S(CH2)nSO2Fの電解弗素化により得たFO2S(CF2)nSO2Fの加水分解からの塩交換など、公知の合成法で得られる。尚、Mがアンモニウム基を表す場合、NH4の他に、水素原子の1〜4個が各種アルキル基で置換された公知の1〜4級有機アンモニウム基(メチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラドデシルアンモニウム等)も包含する。
【0023】
一般式(1−b)の化合物も、一般式(1−a)の化合物と同様、FO2S(CF2)pSO2Fの加水分解からのアルカリ土類金属との塩交換で得ることができる。
【0024】
以下に一般式(1−a)、一般式(1−b)で表される弗素含有界面活性剤の代表例を示す。
【0025】
HO3S(CF2)SO3H,HO3S(CF2)2SO3H,
HO3S(CF2)4SO3H,HO3S(CF2)6SO3H,
HO3S(CF2)8SO3H,NaO3S(CF2)4SO3Na,
KO3S(CF2)SO3K,KO3S(CF2)3SO3K,
KO3S(CF2)6SO3K,H4NO3S(CF2)SO3NH4,
H4NO3S(CF2)2SO3NH4,H4NO3S(CF2)4SO3NH4,
H4NO3S(CF2)6SO3NH4,
(C2H5)3HNO3S(CF2)SO3NH(C2H5)3,
(C2H5)3HNO3S(CF2)3SO3NH(C2H5)3,
(C2H5)3HNO3S(CF2)6SO3NH(C2H5)3,
Ba[O3S(CF2)SO3],Ba[O3S(CF2)3SO3],
Ba[O3S(CF2)5SO3],Ca[O3S(CF2)SO3],
Ca[O3S(CF2)2SO3],Ca[O3S(CF2)4SO3],
Ca[O3S(CF2)6SO3],Ca[O3S(CF2)8SO3],
Mg[O3S(CF2)SO3],Mg[O3S(CF2)3SO3],
Mg[O3S(CF2)5SO3],Mg[O3S(CF2)7SO3],
Mg[O3S(CF2)8SO3],
これらを導電性層に添加するに際しては、塩交換した活性剤を精製して用いるのが一般的だが、例えばHO3S(CF2)nSO3H溶液にアンモニア水を加えて造塩した反応液を、そのまま添加して精製を省略することも可能である。
【0026】
一般式(1−a)、一般式(1−b)の活性剤の添加量は、導電層とは反対側の感光層中の銀1モル当たり1×10-8〜1×10-1モルが好ましく、特に1×10-5〜1×10-2モルが好ましい。添加量が多いと感度、コントラスト、最高濃度の低下などが起こり、添加量が少ないと本発明の効果が得られ難い。
【0027】
上記一般式(1−a)、一般式(1−b)の化合物は、前記一般式(2)の化合物(非イオン性含弗素界面活性剤)と併用することが好ましい。
【0028】
一般式(2)において、Rf2及びRf3で表される弗素含有脂肪族基としては、直鎖、分岐鎖及び環式、又はこれらの組合せから成る脂肪族基、例えばアルキルシクロ脂肪族基が挙げられる。好ましい弗素含有脂肪族基としては、それぞれ炭素数1〜20のフルオロアルキル基(−C4F9、−C8F17等)、スルホフルオロアルキル基(−C7F15SO3、−C8F17SO3−等)、CnF2n+1SO2N(R1)R2−基(R1は水素原子、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボキシル基又はアリール基で、R2はそれぞれ炭素数1〜20のアルキレン基、アルキレンカルボキシル基を表し、nは1〜20の整数を表す。C7F15SO2N(C2H5)CH2−、C8F17SO2N(CH2COOH)CH2CH2CH2−等)で、これらは更に置換基を有してもよい。
【0029】
AOはエチレンオキシ、プロピレンオキシ、i−プロピレンオキシ等のアルキレンオキシ基を有する基で、末端にアミノ基などの置換基を有してもよい。kは好ましくは5〜15の整数である。
【0030】
以下に好ましい化合物例を示すが、これに限定されない。
2−1:C12F25(CH2CH2O)24C12F25
2−2:C8F17(CH2CH2O)8C8F17
2−3:C7F15CH2CH(OH)CH2(CH2CH2O)15CH2CH(OH)CH2C7F15
2−4:C7F15(CH2CH2O)10C7F15
2−5:C12F25(CH2CH2O)15C12F25
2−6:C8F17CH2CH(OH)CH2(CH2CH2O)20CH2CH(OH)CH2C8F17
2−7:C8F17(CH2CH2O)18C8F17
2−8:C8F17(CH2CH2O)20C8F17
2−9:C7F15SO2N(C2H5)CH2(CH2CH2O)22CH2N(CH3)SO2C7F15
2−10:C9F17O(CH2CH2O)22C9F17
上記非イオン性含弗素界面活性剤の使用量は、熱現像銀塩感材1m2当たり3×10-6〜1×10-2モルの範囲が好ましい。又、熱現像銀塩感材1m2当たり0.01〜1gでよく、10〜500mgが好ましく、50〜300mgがより好ましい。尚、前記一般式(1)の活性剤よりも多量使用することが好ましい。
【0031】
これらの弗素含有界面活性剤は、水又は有機溶媒に溶解して導電層塗布液に添加されてもよく、又、微粒子固体分散物として添加されてもよく、更には塗布液を塗布後に溶解したものや微粒子固体分散物を突き付けてもよい。
【0032】
弗素含有界面活性剤を含有する塗布液に添加する添加剤としては特に限定はなく、例えばバインダー、塗布助剤、マット剤、滑り剤などを添加することができる。この場合、バインダーに対する弗素化合物の比が25以下であることが好ましく、より好ましくは0.008〜25であり、更に好ましくは0.04〜20である。
【0033】
塗布液を塗布する方法としては、エアードクター、ブレード、エアナイフ、スクイズ、含浸、リバースロール、トランスファーロール、グラビヤ、キス、キャスト、スプレー、ディップ、バー、エクストルージョン法などが利用できる。塗布液量は特に限定されないが、1〜200ml/m2が好ましく、より好ましくは5〜100ml/m2である。
【0034】
用いられる塗布溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、i−プロパノール、ブタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸、琥珀酸等のメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル等)、炭化水素系(ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素系(メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、安息香酸、アニソール等)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エーテル系(ジエチルエステル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、エーテルアルコール系(ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリセリン、ジメチルスルホキシド等が好ましい。これらの中でも好ましくは、メタノール、エタノール、i−プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0035】
本発明の導電性層には、上記一般式(1)の化合物の使用が必須だが、本発明の効果を妨げない限りにおいて、その他の界面活性剤、例えば特開2000−214554に開示される如き各種活性剤を用いることができる。
【0036】
本発明においては、後述する強色増感剤の他に、特願2000−70296に開示される下記一般式(6)で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として感光層に含有することができる。
【0037】
【化4】
【0038】
式中、H31Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、T31は脂肪族炭化水素基から成る2価の連結基又は連結基を表し、J31は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を一つ以上含む2価の連結基又は連結基を表す。Ra、Rb、Rc及びRdは各々、水素原子、アシル基、脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基を表し、又はRaとRb、RcとRd、RaとRcあるいはRbとRdの間で結合して含窒素複素環基を形成してもよい。M31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。
【0039】
上記各置換基の詳細は、同出願明細書の「0023」〜「0032」に記載される。一般式(6)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
本発明の熱現像銀塩感材は、前記一般式(3)、(4)、(5)で表される化合物を含有することが好ましい。これらについて順次説明する。
【0048】
一般式(3)において、Rは1価の置換基を表し、Rで表される好ましいアルキル基の例としては炭素数1〜8であり、より好ましくは炭素数1〜5である。例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−アミル、オクチル等が挙げられる。mは0〜4の整数を表すが、m≧2の場合、複数のRは各々同一でも異なってもよい。又、複数のRが隣接する場合には脂肪族環、芳香族環又は複素環を形成してもよい。R1及びR2は各々水素原子又は1価の置換基を表す。
【0049】
以下に一般式(3)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化12】
【0051】
これらの化合物は、例えばR.G.Elder Field著:Heterocyclic Compounds,John Wiley and Sons,Vol.1〜9,1950〜1967やA.R.Katritzky著:Comprehensive Heterocyclic Chemistry,Pergamon Press,1984等に記載される既知の方法によって合成することができる。
【0052】
一般式(4)において、Zが形成する複素芳香族5員環としてはチオフェン環等が好ましく、更に置換基を有してもよい。ここで言う芳香族の定義は、例えば1988年Jhon Wiley & Sons社発行のJ.March著:Advanced Organic Chemistry,Chapter2に記載されている。R1及びR2は水素原子又は1価の置換基を表す。R1、R2ならびにZで形成される含硫黄芳香族5員環上の置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。又、一般式(4)の化合物はプロトネーションして塩を形成していてもよい。
【0053】
R1及びR2で表される1価の置換基及びZにより形成される複素芳香族5員環上の置換基は、それぞれ同一でも異なってもよく、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、フェニルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、フェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、カルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メシル、トシル等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ウレイド、メチルウレイド、ブチルウレイド、フェニルウレイド等)、燐酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ジエチル燐酸アミド、フェニル燐酸アミド等)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、複素環基(イミダゾリル、ピリジル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0054】
R1及びR2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、複素環基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、チエニル基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基である。
【0055】
Zにより形成される複素芳香族5員環上に結合する基として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基である。
【0056】
以下に一般式(4)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
これらの化合物は、例えばTetrahedron Letters,1981年,22巻,345〜349頁、J.Heterocycl.Chem,1980年,17巻,1019〜1023頁、Bull.Soc.Chim.Fr.,1967年,4220〜4235頁、Bull.Soc.Chim.Fr.,1967年 2495〜2507頁、フランス特許1453897号等に記載される既知の方法によって、当業者であれば容易に合成することができる。
【0061】
一般式(5)において、R′で表される1価の置換基としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、プロパルギル、3−ペンチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、フェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルホニルアミノ、オクタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メシル、トシル等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等)、燐酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基(スルフィン酸基)、メルカプト基、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、ヒドラジノ基、複素環基(イミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノ等)等が挙げられる。又、アルカリ金属などとの塩形成が可能な置換基は塩を形成してもよい。これらの置換基は更に置換されてもよい。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0062】
以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化16】
【0064】
これらの化合物は、例えば、新実験化学講座(丸善)14−III、5章−1、Organic Fanctional Group Preparations(Academic Press New York and London)I−9章などに記載されている既知の方法によって合成することができる。又、種々の市販の試薬を利用することもできる。
【0065】
上記一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物は、熱現像銀塩感材の感光層に添加されるのが好ましいが、更に保護層などの非感光性層に添加してもよい。
【0066】
一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物の添加量は、各々銀1モル当たり10-4〜1モル、好ましくは10-3〜0.3モル、更に好ましくは10-3〜0.1モルが好ましい。又、一般式(3)、(4)及び(5)の化合物は、各々1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0067】
一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物は、溶液、粉末、固体微粒子分散物など如何なる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(ボールミル、振動ボールミル、サイドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル等)で行われる。又、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0068】
続いて、本発明の熱現像銀塩感材に用いられる必須素材である有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、バインダー、支持体ならびに好ましく用いられる各種添加剤について順次説明する。
【0069】
(有機銀塩)
銀画像形成のための銀イオン供給源としての有機銀塩は、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特にこの中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸の銀塩、及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなResearch Disclosure(RD)17029及び29963に記載された有機又は無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0070】
有機酸の銀塩、例えば没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩。アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩又は錯体、例えばアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)の反応生成物の銀塩又は錯体。チオン類の銀塩又は錯体、例えば3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩又は錯体。イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体又は塩。サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。
【0071】
これらの中、特に好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀などの長鎖の脂肪族カルボン酸の銀塩が挙げられる。
【0072】
又、有機銀塩が2種以上混合されていることが、現像性を上げ高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0073】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0074】
(有機銀塩結晶成長抑制剤/分散剤)
脂肪族カルボン酸銀粒子に対する結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物を、該カルボン酸銀粒子の製造工程において、共存させた条件下で脂肪族カルボン酸銀を製造することが好ましい。
【0075】
尚、有機銀塩結晶成長抑制剤あるいは分散剤とは、該カルボン酸銀粒子の製造工程において、当該化合物を共存させた条件下でカルボン酸銀を製造した時に、共存させない条件下で製造した時より小粒径化や単分散化する機能、効果を有する化合物を言う。具体例として、炭素数が10以下の1価アルコール類、好ましくは第2級アルコール、第3級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、グリセリン等が挙げられる。好ましい添加量としては、カルボン酸銀に対して10〜200質量%である。
【0076】
一方で、イソヘプタン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソベヘン酸、イソヘキサコ酸など、それぞれ異性体を含む分岐脂肪族カルボン酸も好ましい。この場合、好ましい側鎖として炭素数4以下のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。又、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モロクチン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、セラコレン酸などの脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられる。好ましい添加量は、脂肪族カルボン酸銀の0.5〜10モル%である。
【0077】
グルコシド、ガラクトシド、フルクトシドなどの配糖体類、トレハロース、スクロースなどトレハロース型二糖類、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、アルギン酸など多糖類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、ソルビタン、ソルビット、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルホルムアミドなど水溶性有機溶媒、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等の水溶性ポリマー類も好ましい化合物として挙げられる。好ましい添加量としては脂肪族カルボン酸銀に対して0.1〜20質量%である。
【0078】
炭素数が10以下のアルコール好ましくは、第2級アルコール、第3級アルコールは、仕込み工程での脂肪族カルボン酸ナトリウムの溶解度を上げることにより減粘し、攪拌効率を上げることで単分散かつ小粒径化する。分岐脂肪族カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸は、脂肪族カルボン酸銀が結晶化する際にメイン成分である直鎖脂肪族カルボン酸銀よりも立体障害性が高く、結晶格子の乱れが大きくなるため大きな結晶は生成せず、結果的に小粒径化する。
【0079】
上記の有機銀塩は種々の形状において使用できるが、平板状の粒子、特にアスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子が好ましい。
【0080】
本発明において、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子であるとは、前記平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の50%以上を占めることを表す。更に、本発明に係る有機銀塩は、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
【0081】
アスペクト比3以上の平板状粒子とは粒径と厚さの比、下記式で表される所謂アスペクト比(ARと略記)が3以上の粒子である。
【0082】
AR=粒径(μm)/厚さ(μm)
平板状有機銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由として、アスペクト比が低すぎると有機銀塩粒子が最密され易くなり、又、アスペクト比が余りに高い場合には有機銀塩粒子同士が重なり易く、又、くっ付いた状態で分散され易くなるので光散乱等が起き易くなり、その結果として感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記記載の範囲が好ましい範囲と考える。
【0083】
上記の形状を有する有機銀塩粒子を得る方法としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/又は前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0084】
平板状有機銀塩粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機又は高圧ホモジナイザ等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0085】
又、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては、壁、プラグ等に衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0086】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えばAl2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、Sr2TiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、SiO2−nH2O、窒素化珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを以下においてジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0087】
平板状有機銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類又はダイヤモンドを用いることが好ましく、中でも、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0088】
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。又、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい運転条件として挙げられる。又、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0089】
又、本発明の熱現像銀塩感材において好ましい態様は、当該材料の支持体面と垂直な断面を電子顕微鏡観察した時、0.025μm2未満の投影面積を示す有機銀塩粒子の割合が有機銀塩粒子の全投影面積の70%以上を示し、かつ、0.2μm2以上の投影面積を示す粒子の割合が有機銀塩粒子の全投影面積の10%以下である特徴を有する有機銀塩、感光性ハロゲン化銀を含有する感光性乳剤を塗布して成るものである。このような場合、感光性乳剤中において有機銀塩粒子の凝集が少なく、かつ均一に分布した状態を得ることが出来る。
【0090】
このような特徴を有する感光性乳剤を作製する条件としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/又は前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機又は高圧ホモジナイザ等で分散すること、その際のバインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加すること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないことなどに加えて、調液時にはディゾルバを使用し周速2.0m/秒以上で攪拌することなどが好ましい条件として挙げられる。
【0091】
上記のような特定の投影面積値を有する有機銀粒子の投影面積や全投影面積に占める割合などは、前記平板状粒子の平均厚さを求める個所で記載したと同様に、TEMを用いた方法により、有機銀に相当する個所を抽出する。この際に、凝集した有機銀は一つの粒子と見なして処理し、各粒子の面積(AREA)を求める。同様にして、少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm2未満、B:0.025μm2以上0.2μm2未満、C:0.2μm2以上の三つの群に分類する。
【0092】
本発明の熱現像銀塩感材は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、かつC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものであることが好ましい。
【0093】
上記手順で計測を行うには、予め、標準試料を用いて1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。標準試料としては、米国ダウケミカル社より市販されるユニフォーム・ラテックス・パーティクルス(DULP)が適当であり、0.1〜0.3μmの粒径に対して10%未満の変動係数を有するポリスチレン粒子が好ましく、具体的には粒径0.212μm、標準偏差0.0029μmというロットが入手可能である。
【0094】
画像処理技術の詳細は、前記と同様「田中弘編:画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラム又は装置としては、上記操作が可能であれば特に限定はされないが、矢張り一例として前記と同様ニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
【0095】
有機銀塩粒子は単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここで言う単分散度とは下記式で定義される。
【0096】
単分散度=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
上記の有機銀塩の平均粒径(円相当径)は0.01〜0.2μmが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.15μmである。尚、平均粒径(円相当径)とは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0097】
熱現像銀塩感材の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで医用画像として好ましい画像が得られる。
【0098】
(感光性ハロゲン化銀)
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収し得て、又は、人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収し得て、かつ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内の何れかの領域の光を吸収した時に、当該ハロゲン化銀結晶内及び/又は結晶表面において物理化学的変化が起こり得るように処理、製造されたハロゲン化銀結晶粒子を言う。
【0099】
ハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著:Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著:Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊,1966年)、V.L.Zelikman et al著:Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)等に記載された方法を用いて、ハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等の何れでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等の何れを用いてもよいが、上記方法の中でも、形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。
【0100】
粒子形成は、通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、又、核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールが出来るので好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う場合には、まず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させて核(種粒子)生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等の下で可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ粒子成長させる粒子成長工程により、ハロゲン化銀粒子を調製する。粒子形成後、脱塩工程により、不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により除くことで、所望のハロゲン化銀乳剤を得ることが出来る。
【0101】
ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.2μm以下、より好ましくは0.01〜0.17μm、特に0.02〜0.14μmが好ましい。ここで言う粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さを言う。又、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算した時の直径を言う。
【0102】
ハロゲン化銀粒子の粒子サイズは単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下記式で求められる粒子サイズの変動係数が30%以下のものを言う。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0103】
粒子サイズの変動係数(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの中、特に立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0104】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5〜100、より好ましくは2〜50がよい。これらは、米国特許5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0105】
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への銀増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。尚、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
【0106】
ハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。この低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更には5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。
【0107】
低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸又はアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下又は加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0108】
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのが有効である。
【0109】
感光性ハロゲン化銀粒子は如何なる方法で感光層(画像形成層)に添加されてもよく、この時、ハロゲン化銀粒子は、還元可能な銀源(有機銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
【0110】
ハロゲン化銀は予め調製しておき、これを有機銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と有機銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許1,447,454号に記載される様に、有機銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を有機銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで有機銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることも出来る。又、有機銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、有機銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された有機銀塩の溶液もしくは分散液、又は有機銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
【0111】
ハロゲン化銀形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については米国特許4,009,039号、同3,457,075号、同4,003,749号、英国特許1,498,956号及び特開昭53−27027号、同53−25420号等に詳説される金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム等の無機ハロゲン化物;例えばトリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様なオニウムハライド類;例えばヨードホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等のハロゲン化炭化水素類;N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド等のN−ハロゲン化合物;その他、例えば塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。この様に、ハロゲン化銀を有機酸銀とハロゲンイオンとの反応により有機酸銀塩中の銀の一部又は全部をハロゲン化銀に変換することによって調製することもできる。又、別途調製したハロゲン化銀に有機銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
【0112】
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、有機銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、有機銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モル使用するのが好ましい。
【0113】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、元素周期律表の6〜11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらは1種類でも同種あるいは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。これらの金属イオンは、金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体又は錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9〜1×10-2モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-4モルがより好ましい。遷移金属錯体又は錯体イオンは下記一般式で表されるものが好ましい。
【0114】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−又は4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、又、異なってもよい。
【0115】
これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加しハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載される様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0116】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合される時、第3の水溶液として添加し3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、又は物理熟成時途中もしくは終了時、又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0117】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、光熱熱写真材料においては脱塩しないで用いることもできる。
【0118】
(還元剤)
本発明の熱現像銀塩感材に内蔵させる好適な還元剤の例は、米国特許3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号、及びRD17029及び29963等に記載されており、公知の還元剤の中から適宜選択して使用することが出来るが、有機銀塩に脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合には、2個以上のフェノール骨格がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール骨格のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル等)又はアシル基(アセチル、プロピオニル等)が置換したフェノール骨格の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたビスフェノール類、例えば下記一般式(A)で示される化合物が好ましい。
【0119】
【化17】
【0120】
式中、Xはカルコゲン原子又はCHR10を表し、R10は水素原子、ハロゲン原子、炭素数7以下の脂肪族基又は6員以下の環状基を表す。R11及びR12は各々、水素原子又は置換基を表す。
【0121】
上記Xが表すカルコゲン原子としては、硫黄、セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。R10で表されるハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素原子等であり、炭素数が7以下の脂肪族基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキサジエニル、エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル基等であり、6員以下の環状基としては、脂環式基、複素環基を含み、炭素環式基としては、シクロブテン、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、シクロヘキサジエニル、フェニル基等の4〜6員環が好ましく、複素環基としては、ピラゾール、ピロール、ピロリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリジン、トリアジン、チアゾール、フラン、ピラン等の5、6員環残基が好ましく、特に好ましくは、水素原子又はシクロアルキル基、シクロアルケニル基、フェニル基などの環状構造を有する基である。
【0122】
これらの基は更に置換基を有してもよく、該置換基としては、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスホノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0123】
R11、R12が表すハロゲン原子としては、例えば弗素、塩素、臭素原子等が挙げられ、R11、R12が表す置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、複素環基等が挙げられる。複数のR11、R12は同じでも異なってもよい。
【0124】
R11は炭素数2以上が好ましい。R12は炭素数1〜5が好ましく、更に好ましくは炭素数1である。これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(弗素、塩素、臭素等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル等)、アルキニル基(エチニル、1−プロピニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。
【0125】
一般式(A)で示される化合物の具体例として下記の化合物が挙げられる。
【0126】
【化18】
【0127】
【化19】
【0128】
【化20】
【0129】
【化21】
【0130】
その他、米国特許3,589,903号、同4,021,249号もしくは英国特許1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号等に記載されたポリフェノール化合物、例えば2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許3,672,904号に記載されたビスナフトール類、更に、例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許3,801,321号に記載されるようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類も挙げることが出来る。
【0131】
一般式(A)で表される化合物を初めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
【0132】
熱現像銀塩感材に使用される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には、有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルが適当である。又、この量の範囲内において、上記還元剤は2種以上併用されてもよい。
【0133】
本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び有機銀塩粒子及び溶媒から成る感光乳剤溶液に添加混合して塗布した方が、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0134】
尚、還元剤の補助剤として、EP1096310号に記載されるトリフェニルホスフィンオキサイド等のように還元剤のヒドロキシル基の水素と水素結合を形成し得る化合物を併用することも好ましい。
【0135】
(化学増感)
ハロゲン化銀粒子には化学増感を施すことができる。例えば特願2000−57004及び同2000−61942に開示されている方法等により、硫黄などのカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。
【0136】
本発明においては、以下に述べる硫黄、セレン、テルル等のカルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0137】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等に開示される種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうちカルコゲン原子が炭素原子又は燐原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0138】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、カルコゲン化合物の種類、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルを用いる。
【0139】
化学増感環境としては特に制限はないが、ベヘン酸銀等の有機酸銀塩が存在しない条件下でハロゲン化銀粒子に化学増感を施すことが好ましい、又、ハロゲン化銀粒子上に生成されたカルコゲン化銀又は銀核を消滅、あるいは、それらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、特に銀核を酸化し得る酸化剤の共存下においてカルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことも好ましく、この場合の増感条件としては、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、又、温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0140】
従って、本発明の熱現像銀塩感材においては、前記感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化し得る酸化剤の共存下においてカルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて温度30℃以下において化学増感を施され、かつ、有機銀塩と混合して分散され脱水及び乾燥された感光性乳剤を用いることが好ましい。
【0141】
又、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素又はハロゲン化銀粒子に対して吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることも好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下に化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0142】
本発明に用いられる分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。この含窒素複素環化合物の複素環としては、ピラゾール、ピリミジン、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ピリダジン、1,2,3−トリアジンの各環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール、ジアザインデン、トリアザインデン、ペンタアザインデン等の環を挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾチアゾール等の環も適用できる。
【0143】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、かつ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
【0144】
これら複素環には、ヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。該置換基としては、(置換)アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。
【0145】
これら含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、大凡の量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4モル〜10-1モルである。
【0146】
ハロゲン化銀粒子には、前述のように金イオン等の貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
【0147】
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的化合物例としては、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1錫、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。又、乳剤のpHを7以上、又はpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0148】
化学増感を施されるハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたのでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、又、両者が混合されたものでもよい。
【0149】
(分光増感)
感光性ハロゲン化銀粒子には分光増感色素を吸着させ、分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン、メロシアニン、コンプレックスシアニン、コンプレックスメロシアニン、ホロポーラーシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノール等の各色素を用いることができる。例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。有用な増感色素は、例えばRD17643,23頁,IV−A項(1978年12月)、同18431,437頁,X項(1978年8月)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の色素が好ましく用いられる。
【0150】
有用なシアニン色素は、例えばチアゾリン、オキサゾリン、ピロリン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン、ローダニン、オキサゾリジンジオン、チアゾリンジオン、バルビツール酸、チアゾリノン、マロノニトリル及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0151】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることが好ましい。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば米国特許4,536,473号、同4,515,888号、同4,959,294号等に開示される赤外分光増感色素が挙げられる。中でも、ベンゾアゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が、特に好ましい。上記の赤外増感色素は、例えばエフ・エム・ハーマー著:The Chemistry of Heterocyclic Compounds,第18巻,The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊,New York,1964年)に記載の方法によって容易に合成できる。
【0152】
これらの赤外増感色素の添加時期はハロゲン化銀調製後のどの時点でもよく、例えば溶剤に添加して、あるいは微粒子状に分散した所謂、固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/有機銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。又、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0153】
分光増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0154】
(強色増感)
熱現像銀塩感材に用いられるハロゲン化銀粒子、有機銀塩粒子を含有する乳剤は、増感色素と共に、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されてもよい。
【0155】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質はRD17643(1978年12月発行)23頁,IV−J項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、本発明においては、下記の一般式(7)で表される複素芳香族メルカプト化合物又はメルカプト誘導体化合物が好ましい。
【0156】
一般式(7) Ar−SM
式中、Mは水素原子又はアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム又はテルリウム原子を有する芳香環又は縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環としてベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0157】
尚、有機酸銀塩及び/又はハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させた時に実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も包含される。特に、下記の一般式(7a)で表されるメルカプト誘導体化合物が好ましい例として挙げられる。
【0158】
一般式(7a) Ar−S−S−Ar
式中のArは上記一般式(7)で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
【0159】
上記の複素芳香環は、例えばハロゲン原子(塩素、臭素、沃素)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)等から選ばれる置換基を有し得る。
【0160】
前述のように、従来の銀塩写真感材と比較して、熱現像銀塩感材の構成上の最大の相違点は、後者の感材中には、現像処理の前後を問わず、カブリやプリントアウト銀(焼出し銀)の発生の原因となり得る感光性ハロゲン化銀、カルボン酸銀及び現像剤(還元剤)が多量含有されていることである。このため、熱現像銀塩感材には、現像前ばかりでなく現像後の保存安定性を維持するための高度のカブリ防止及び画像安定化技術が必須であるが、従来は、カブリ核の成長及び現像を抑制する芳香族性複素環化合物の他に、カブリ核を酸化消滅する機能を有する酢酸水銀のような水銀化合物が非常に有効な保存安定化剤として使用されていたが、この水銀化合物の使用が安全性/環境保全性上の問題であった。
【0161】
(カブリ防止剤、画像安定化剤)
以下、熱現像銀塩感材に用いられるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
【0162】
当該感材での還元剤としては、前述したように、主にビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンを持った還元剤が用いられるので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されることが好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物である。
【0163】
従って、これらの機能を有する化合物であれば如何なる化合物でもよいが、複数の原子から成る有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有し、かつ熱現像銀塩感材に格別の弊害を生じることのない化合物であれば、如何なる構造を持った化合物でもよい。
【0164】
又、フリーラジカルを発生する化合物としては、発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性を持たせるために、炭素環式、又は複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0165】
これらの化合物の代表的なものとして、特願2000−57004に一般式〔1〕で示されるビイミダゾリル化合物、一般式〔2〕で示されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0166】
又、還元剤を不活性化し還元剤が有機銀塩を銀に還元できないようにする化合物として、反応活性種がハロゲン原子でないものが好ましいが、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物も、上記ハロゲン原子でない活性種を放出する化合物と併用することが出来る。ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も多くのものが知られており、併用により良好な効果が得られる。
【0167】
これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例として、前記特願2000−57004に一般式〔4〕で示される下記化合物が挙げられる。
【0168】
Q−Y−C(X1)(X2)(X3)
式中、Qはアリール基又は複素環基を表す。X1、X2及びX3は各々、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表す。
【0169】
各基の詳細な説明は段落「0088」〜「0093」に、具体的化合物例は段落「0095」〜「0102」に4−1〜4−64として記載される。
【0170】
尚、上記の化合物の他に、本発明の熱現像銀塩感材中には、従来カブリ防止剤として知られている化合物が含まれてもよいが、上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば米国特許3,589,903号、同4,546,075号、同4,452,885号、特開昭59−57234号、米国特許3,874,946号、同4,756,999号、特開平9−288328号、同9−90550号等に記載の化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許5,028,523号及び欧州特許600,587号、同605,981号、同631,176号等に開示される化合物が挙げられる。
【0171】
(省銀化剤)
本発明の熱現像銀塩感材には省銀化剤を用いることが好ましい。省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物を言う。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度を言う。
【0172】
省銀化剤としては、特願2001−192698に記載される一般式〔H〕で表されるヒドラジン誘導体化合物、一般式(G)で表されるビニル化合物、一般式(P)で表される4級オニウム化合物、更には1級又は2級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物及びその塩が好ましい例として挙げられる。
【0173】
ここで、1級又は2級アミノ基を2個以上有するとは、1級アミノ基のみを2個以上、2級アミノ基のみを2個以上、更には1級アミノ基と2級アミノ基をそれぞれ1個以上含むことを指し、アルコキシシラン化合物の塩とは、アミノ基とオニウム塩を形成し得る無機酸あるいは有機酸とアルコキシシラン化合物との付加物を指す。
【0174】
(バインダー)
本発明の熱現像銀塩感材に好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート類、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。これらは親水性でも非親水性でもよい。
【0175】
熱現像銀塩感材の感光層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。詳しくは後述する。又、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0176】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、感光層において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合が15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、感光層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましい。更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0177】
熱現像銀塩感材の感光層に用いられるバインダーのガラス転移温度(Tg)は、70〜105℃であることが特に好ましい。このような特性を有するバインダーを用いることによって、有機酸による膜の柔軟化を防止し、熱転移点温度を上昇させ、擦傷防止に対し顕著な効果を発揮することができる。これに対し、Tgが70℃未満のバインダーを用いると、熱転移点温度が低下し擦傷耐性などの物性値として所望の値を得ることができない。逆に、Tgが105℃を超えるバインダーを用いると、物性の著しい低下を招く結果となり好ましくない。
【0178】
好ましいバインダーとしては従来公知の高分子化合物を用いることができるが、Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体より成る化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。又、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が前記の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
【0179】
このようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されてもされなくてもよく、具体的には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−i−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
【0180】
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:その具体例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなど;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトンなど;オレフィン類:例えばジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど;ビニルエーテル類:例えばメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニル等を有するものなど;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデン等を挙げることができる。
【0181】
これらのうち、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物では、生成する有機酸との相溶性に優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0182】
又、本発明においては、バインダーが、実質的にアセトアセタール構造を持つポリビニルアセタールであることが好ましい。例えば、米国特許2,358,836号、同3,003,879号、同2,828,204号、英国特許771,155号に示されるポリビニルアセタールを挙げることができる。
【0183】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、特願2000−380225に一般式(V)として記載される化合物が特に好ましい。
【0184】
(架橋剤)
架橋剤を上記バインダーに対し用いることにより膜付きが良くなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
【0185】
架橋剤としては、従来、写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、好ましいのはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物又は酸無水物である。この3化合物に付いては特願2000−57004に詳述される。
【0186】
(マット剤)
本発明においては、熱現像銀塩感材の表面層に(感光層側、又、支持体を挟み感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、現像前の取扱いや熱現像後の画像の傷付き防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対して0.1〜30質量%含有することが好ましい。
【0187】
用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物の何れでもよい。無機物としては、スイス特許330,158号等に記載のシリカ、仏国特許1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許625,451号や英国特許981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許330,158号等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート、米国特許3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0188】
マット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0189】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法でもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。又、複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0190】
(支持体)
本発明の熱現像銀塩感材の支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(アルミニウム等)等が挙げられるが、情報記録材料としての取扱い上は、可撓性のあるシート又はロールに加工できるものが好適である。従って、好適な支持体としては、プラスチックフィルム(セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルローストリアセテート又はポリカーボネート等の各フィルム)が好ましく、中でも、2軸延伸したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0191】
(色調剤)
本発明に係る熱現像銀塩感材には色調剤を用いることが好ましく、好適な色調剤の例はRD17029、米国特許4,123,282号、同3,994,732号、同3,846,136号及び同4,021,249号に開示されており、例えば次のものがある。
【0192】
イミド類(スクシンイミド、フタルイミド、ナフタールイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジンとフタル酸類(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸)の組合せ;フタラジンとマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物等)から選択される少なくとも一つの化合物との組合せ等が挙げられる。特に好ましい色調剤としてはフタラジノン又はフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組合せである。
【0193】
尚、従来、医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、レントゲン写真の判読者にとってより的確な記録画像の診断観察結果が得易いと言われている。ここで、冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であることを言う。
【0194】
(層構成)
本発明の熱現像銀塩感材は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有している。支持体の上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば感光層の上には、保護層が感光層を保護する目的で、又、支持体の反対の面には、感光材料間の、あるいは感光材料ロールにおいてくっ付きを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては熱現像層よりもガラス転位点が高く、擦り傷や、変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。
【0195】
尚、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0196】
(フィルター染料)
熱現像銀塩感材においては、感光層を透過する光の量又は波長分布を制御するために感光層と同じ側又は反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。
【0197】
用いられる染料としては、熱現像銀塩感材の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明に係る熱現像銀塩感材を赤外光による画像記録材料とする場合には、特願平11−255557号に開示されるようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(チオピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(ピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)、又、スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、又はピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0198】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。
【0199】
尚、染料としては特開平8−201959号の化合物も好ましい。
(構成層の塗布)
熱現像銀塩感材は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。
【0200】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法は、スライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。
【0201】
尚、塗布銀量は、イメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、医療用画像を目的とする場合には、0.6〜2.5g/m2が好ましく、更には0.8〜1.5g/m2が好ましい。当該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましく、更には5〜15%が好ましい。
【0202】
(イメージング材料の現像)
本発明の熱現像銀塩感材の現像条件は、使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には、適した高温において像様に露光した熱現像銀塩感材を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜200℃、好ましくは約100〜200℃)で十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、熱現像銀塩感材を加熱することにより現像することができる。
【0203】
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、又、200℃を超えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく、搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0204】
加熱する機器、装置、あるいは手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素又は白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは、保護層の設けられた熱現像銀塩感材は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、又、熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0205】
(感材への露光)
熱現像銀塩感材の露光は、当該感材に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば当該感材を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザーパワーがハイパワーであることや、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザー(780nm、820nm)が、より好ましく用いられる。
【0206】
露光はレーザー走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザー光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0207】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0208】
レーザー光が感光材料に走査される時の感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザー走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。
【0209】
又、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳を掛ける等の方法がよい。尚、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0210】
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0211】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャ等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0212】
尚、上述した第1、第2及び第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られているルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。尚、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像銀塩感材に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像銀塩感材固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0213】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0214】
実施例1
〈下引済みPET支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ175μmのPETに、光学濃度で0.170(コニカ社製デンシトメータPDA−65にて測定)に青色着色したフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、又、反対側の面に下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層B−1とした。
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に下引上層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能を持つ下引上層B−2として塗設した。
(下引上層塗布液a−2)
ゼラチン 0.4g/m2になる量
C−1 0.2g
C−2 0.2g
C−3 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる
(下引上層塗布液b−2)
C−4 60g
C−5を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
C−6 12g
ポリエチレングリコール(質量平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる
【0215】
【化22】
【0216】
【化23】
【0217】
〈バック面側塗布〉
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製:CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社:VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、0.30gの赤外染料1を添加し、更にメタノール43.2gに溶解した弗素系活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)4.5gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社製:シロイド64X6000)を75g添加、攪拌してバック面側の塗布液とした。
【0218】
【化24】
【0219】
上記バック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになる様に押出しコーターにて塗布・乾燥を行った。乾燥温度100℃、露天温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0220】
〈感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製〉
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて、溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットルを加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後に、pHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0221】
次に、上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更に硫黄増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5(0.5%エタノール溶液)を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。
【0222】
【化25】
【0223】
〈粉末有機銀塩Aの調製〉
4720mlの純水に、ベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。この脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0224】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して、有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。尚、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0225】
〈予備分散液Aの調製〉
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製:Butvar B−79)14.57gをMEK1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製:ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0226】
〈感光性乳剤分散液1の調製〉
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行うことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0227】
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤1及び0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0228】
〈赤外増感色素液Aの調製〉
19.2mgの赤外増感色素S−43、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール(MMBI)を31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0229】
〈添加液aの調製〉
現像剤としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
【0230】
〈添加液bの調製〉
3.56gのカブリ防止剤2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0231】
各添加液に用いた添加剤の構造を以下に示す。
【0232】
【化26】
【0233】
〈感光層塗布液の調製〉
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)及びMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に、臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加し20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液を添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社製:Butvar B−79)13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300(モーベイ社社製の脂肪族イソシアネート,10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0234】
【化27】
【0235】
〈マット剤分散液の調製〉
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解した溶液に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を調製した。
【0236】
〈表面保護層塗布液の調製〉
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(CAB171−15:前出)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)4.5g、ビニルスルホン化合物(HD−1)1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、弗素系活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)1.0gを添加・溶解した。次に、上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0237】
HD−1:(CH2=CHSO2CH2)2CHOH
〈感光層面側塗布〉
前記感光層塗布液と表面保護層塗布液を押出し(エクストルージョン)コーターを用いて同時に重層塗布することにより感光材料1を作製した。塗布に際しては、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様に行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行った。
【0238】
〈画像記録及び画像評価〉
上記作製した熱現像感光材料を、遮光下、室温(23℃・55%RH)において、熱現像感光材料の画像形成層面側から、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザ(最大出力35mW)を露光源とした露光機により、露光量を変化させレーザ走査による露光を行い、次いで、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、熱現像感光材料の保護層とドラム表面とが接触するようにして、123℃で12秒の熱現像処理を行い画像を形成した。
【0239】
尚、レーザ走査露光は、熱現像感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度、保護層面でのレーザスポット径は主走査方向100μm、副走査方向75μmの楕円形、レーザ走査ピッチは主走査方向100μm、副走査方向75μmとして行い、JIS K6253タイプAで規定される表面ゴム硬度が70のヒートドラムを有する自動現像機を用いた。
【0240】
得られた画像の最大濃度(Dmax)とカブリ濃度(Dmin)を測定した。光学濃度はコニカ社製:デンシトメータPDA−65にて測定した。
【0241】
Dmax:露光部分の最大露光部におけるビジュアルの透過濃度(前出:PDA−65で小数点以下2桁まで)を10点測定し、その平均値を最大濃度(Dmax)とした。
【0242】
Dmin:未露光部分のビジュアルの透過濃度(前出:PDA−65で小数点以下3桁まで)を10点測定し、その平均値をカブリ濃度(Dmin)とした。
【0243】
《評価1》
連続熱現像による濃度ムラ発生の度合いを評価した。即ち、35.5×43.2cmに裁断した感光材料試料を、光学濃度0.8が得られる条件で露光及び現像を行った。この時、100枚を連続処理し、100枚目の現像済み試料の濃度ムラを目視で3段階評価した。
【0244】
◯:1分間見てムラなし
△:5秒間見てムラなし
×:5秒間見てムラあり
《評価2》
評価1の濃度ムラ評価の試料のDmax−Dminを算出し、之を以てコントラストの評価とした。
【0245】
実施例2
実施例1を基本として表1に示すように導電層及び感光層に含有させる化合物を変更した。変更した添加剤は、比較例を基準とし、モル量が等しくなるように添加した。
【0246】
以上により得られた結果を纏めて表1に示す。
【0247】
【表1】
【0248】
表1より明らかな様に、本発明の感材試料は比較の感材試料に比べ、評価1、2の何れにおいても優れている。
【0249】
【発明の効果】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料によれば、高品質で濃度ムラのない、均一性に優れた画像が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は高画質で、より均一性に優れたムラのない黒白銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0003】
そこで、レーザー・イメージャーやレーザー・イメージセッターにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされている。
【0004】
係る技術として、例えばD.MorganとB.Shelyによる米国特許3,152,904号、同3,487,075号又はD.H.Klosterboerによる「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.48頁,1991)等に記載されるように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料(以下、熱現像銀塩感材とも記す)が知られている。この熱現像銀塩感材では、溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0005】
これらの熱現像銀塩感材は、感光層中に設置された感光性ハロゲン化銀粒子を光センサーとし、有機銀塩を銀イオンの供給源とし、内蔵された還元剤によって、通常、80〜140℃で熱現像することで画像を形成させ、定着を行わないことが特徴である。
【0006】
公知の装置及び方法を用いて現像される、これら熱現像銀塩感材は、しばしば、不均一な画像となることがあった。特に、連続処理する際に、この傾向が顕著であり、濃度ムラ発生が問題であった。
【0007】
テキストや線画等の多々の適用分野において、これらの欠点は許容されることができる。しかしながら、医療、工業、グラフィックや、その他の画像が適用される分野においては、より均一であり、かつ高品質の画像が所望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、高品質で濃度ムラのない、均一性に優れた銀塩光熱写真ドライイメージング材料、画像記録方法及び画像形成方法、ならびに該ドライイメージング材料の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段によって達成される。
【0010】
1)支持体上に、少なくとも有機銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤、バインダーを含有する感光層と導電性層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、該導電性層が前記一般式(1−a)で表される化合物を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0011】
2)支持体上に、少なくとも有機銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤、バインダーを含有する感光層と導電性層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、該導電性層が前記一般式(1−b)で表される化合物を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0012】
3)前記導電性層が前記一般式(2)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0013】
4)前記感光層がチウロニウム化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0014】
5)前記感光層がMMBI(5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール)を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0015】
6)前記感光層が前記一般式(3)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0016】
7)前記感光層が前記一般式(4)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0017】
8)前記感光層が前記一般式(5)で表される化合物を含有する1)又は2)記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0018】
9)1)〜8)の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に画像露光する手段がレーザー光走査露光機であり、該露光機のレーザー光の波長が600〜1600nmである画像記録方法。
【0019】
10)1)〜8)の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を熱現像して画像を形成する画像形成方法。
【0020】
11)1)〜8)の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光層が、溶剤分散された塗布液を塗布・乾燥して成る銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0021】
以下、本発明を詳述する。まず、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料(以下、光熱写真材料とも称す)の導電性層に用いられる一般式(1−a)及び一般式(1−b)で表される化合物(弗素含有界面活性剤)について説明する。
【0022】
一般式(1−a)の化合物は、例えばFO2S(CH2)nSO2Fの電解弗素化により得たFO2S(CF2)nSO2Fの加水分解からの塩交換など、公知の合成法で得られる。尚、Mがアンモニウム基を表す場合、NH4の他に、水素原子の1〜4個が各種アルキル基で置換された公知の1〜4級有機アンモニウム基(メチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラドデシルアンモニウム等)も包含する。
【0023】
一般式(1−b)の化合物も、一般式(1−a)の化合物と同様、FO2S(CF2)pSO2Fの加水分解からのアルカリ土類金属との塩交換で得ることができる。
【0024】
以下に一般式(1−a)、一般式(1−b)で表される弗素含有界面活性剤の代表例を示す。
【0025】
HO3S(CF2)SO3H,HO3S(CF2)2SO3H,
HO3S(CF2)4SO3H,HO3S(CF2)6SO3H,
HO3S(CF2)8SO3H,NaO3S(CF2)4SO3Na,
KO3S(CF2)SO3K,KO3S(CF2)3SO3K,
KO3S(CF2)6SO3K,H4NO3S(CF2)SO3NH4,
H4NO3S(CF2)2SO3NH4,H4NO3S(CF2)4SO3NH4,
H4NO3S(CF2)6SO3NH4,
(C2H5)3HNO3S(CF2)SO3NH(C2H5)3,
(C2H5)3HNO3S(CF2)3SO3NH(C2H5)3,
(C2H5)3HNO3S(CF2)6SO3NH(C2H5)3,
Ba[O3S(CF2)SO3],Ba[O3S(CF2)3SO3],
Ba[O3S(CF2)5SO3],Ca[O3S(CF2)SO3],
Ca[O3S(CF2)2SO3],Ca[O3S(CF2)4SO3],
Ca[O3S(CF2)6SO3],Ca[O3S(CF2)8SO3],
Mg[O3S(CF2)SO3],Mg[O3S(CF2)3SO3],
Mg[O3S(CF2)5SO3],Mg[O3S(CF2)7SO3],
Mg[O3S(CF2)8SO3],
これらを導電性層に添加するに際しては、塩交換した活性剤を精製して用いるのが一般的だが、例えばHO3S(CF2)nSO3H溶液にアンモニア水を加えて造塩した反応液を、そのまま添加して精製を省略することも可能である。
【0026】
一般式(1−a)、一般式(1−b)の活性剤の添加量は、導電層とは反対側の感光層中の銀1モル当たり1×10-8〜1×10-1モルが好ましく、特に1×10-5〜1×10-2モルが好ましい。添加量が多いと感度、コントラスト、最高濃度の低下などが起こり、添加量が少ないと本発明の効果が得られ難い。
【0027】
上記一般式(1−a)、一般式(1−b)の化合物は、前記一般式(2)の化合物(非イオン性含弗素界面活性剤)と併用することが好ましい。
【0028】
一般式(2)において、Rf2及びRf3で表される弗素含有脂肪族基としては、直鎖、分岐鎖及び環式、又はこれらの組合せから成る脂肪族基、例えばアルキルシクロ脂肪族基が挙げられる。好ましい弗素含有脂肪族基としては、それぞれ炭素数1〜20のフルオロアルキル基(−C4F9、−C8F17等)、スルホフルオロアルキル基(−C7F15SO3、−C8F17SO3−等)、CnF2n+1SO2N(R1)R2−基(R1は水素原子、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボキシル基又はアリール基で、R2はそれぞれ炭素数1〜20のアルキレン基、アルキレンカルボキシル基を表し、nは1〜20の整数を表す。C7F15SO2N(C2H5)CH2−、C8F17SO2N(CH2COOH)CH2CH2CH2−等)で、これらは更に置換基を有してもよい。
【0029】
AOはエチレンオキシ、プロピレンオキシ、i−プロピレンオキシ等のアルキレンオキシ基を有する基で、末端にアミノ基などの置換基を有してもよい。kは好ましくは5〜15の整数である。
【0030】
以下に好ましい化合物例を示すが、これに限定されない。
2−1:C12F25(CH2CH2O)24C12F25
2−2:C8F17(CH2CH2O)8C8F17
2−3:C7F15CH2CH(OH)CH2(CH2CH2O)15CH2CH(OH)CH2C7F15
2−4:C7F15(CH2CH2O)10C7F15
2−5:C12F25(CH2CH2O)15C12F25
2−6:C8F17CH2CH(OH)CH2(CH2CH2O)20CH2CH(OH)CH2C8F17
2−7:C8F17(CH2CH2O)18C8F17
2−8:C8F17(CH2CH2O)20C8F17
2−9:C7F15SO2N(C2H5)CH2(CH2CH2O)22CH2N(CH3)SO2C7F15
2−10:C9F17O(CH2CH2O)22C9F17
上記非イオン性含弗素界面活性剤の使用量は、熱現像銀塩感材1m2当たり3×10-6〜1×10-2モルの範囲が好ましい。又、熱現像銀塩感材1m2当たり0.01〜1gでよく、10〜500mgが好ましく、50〜300mgがより好ましい。尚、前記一般式(1)の活性剤よりも多量使用することが好ましい。
【0031】
これらの弗素含有界面活性剤は、水又は有機溶媒に溶解して導電層塗布液に添加されてもよく、又、微粒子固体分散物として添加されてもよく、更には塗布液を塗布後に溶解したものや微粒子固体分散物を突き付けてもよい。
【0032】
弗素含有界面活性剤を含有する塗布液に添加する添加剤としては特に限定はなく、例えばバインダー、塗布助剤、マット剤、滑り剤などを添加することができる。この場合、バインダーに対する弗素化合物の比が25以下であることが好ましく、より好ましくは0.008〜25であり、更に好ましくは0.04〜20である。
【0033】
塗布液を塗布する方法としては、エアードクター、ブレード、エアナイフ、スクイズ、含浸、リバースロール、トランスファーロール、グラビヤ、キス、キャスト、スプレー、ディップ、バー、エクストルージョン法などが利用できる。塗布液量は特に限定されないが、1〜200ml/m2が好ましく、より好ましくは5〜100ml/m2である。
【0034】
用いられる塗布溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、i−プロパノール、ブタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸、琥珀酸等のメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル等)、炭化水素系(ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素系(メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、安息香酸、アニソール等)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エーテル系(ジエチルエステル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、エーテルアルコール系(ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリセリン、ジメチルスルホキシド等が好ましい。これらの中でも好ましくは、メタノール、エタノール、i−プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0035】
本発明の導電性層には、上記一般式(1)の化合物の使用が必須だが、本発明の効果を妨げない限りにおいて、その他の界面活性剤、例えば特開2000−214554に開示される如き各種活性剤を用いることができる。
【0036】
本発明においては、後述する強色増感剤の他に、特願2000−70296に開示される下記一般式(6)で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として感光層に含有することができる。
【0037】
【化4】
【0038】
式中、H31Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、T31は脂肪族炭化水素基から成る2価の連結基又は連結基を表し、J31は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を一つ以上含む2価の連結基又は連結基を表す。Ra、Rb、Rc及びRdは各々、水素原子、アシル基、脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基を表し、又はRaとRb、RcとRd、RaとRcあるいはRbとRdの間で結合して含窒素複素環基を形成してもよい。M31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。
【0039】
上記各置換基の詳細は、同出願明細書の「0023」〜「0032」に記載される。一般式(6)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
本発明の熱現像銀塩感材は、前記一般式(3)、(4)、(5)で表される化合物を含有することが好ましい。これらについて順次説明する。
【0048】
一般式(3)において、Rは1価の置換基を表し、Rで表される好ましいアルキル基の例としては炭素数1〜8であり、より好ましくは炭素数1〜5である。例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−アミル、オクチル等が挙げられる。mは0〜4の整数を表すが、m≧2の場合、複数のRは各々同一でも異なってもよい。又、複数のRが隣接する場合には脂肪族環、芳香族環又は複素環を形成してもよい。R1及びR2は各々水素原子又は1価の置換基を表す。
【0049】
以下に一般式(3)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化12】
【0051】
これらの化合物は、例えばR.G.Elder Field著:Heterocyclic Compounds,John Wiley and Sons,Vol.1〜9,1950〜1967やA.R.Katritzky著:Comprehensive Heterocyclic Chemistry,Pergamon Press,1984等に記載される既知の方法によって合成することができる。
【0052】
一般式(4)において、Zが形成する複素芳香族5員環としてはチオフェン環等が好ましく、更に置換基を有してもよい。ここで言う芳香族の定義は、例えば1988年Jhon Wiley & Sons社発行のJ.March著:Advanced Organic Chemistry,Chapter2に記載されている。R1及びR2は水素原子又は1価の置換基を表す。R1、R2ならびにZで形成される含硫黄芳香族5員環上の置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。又、一般式(4)の化合物はプロトネーションして塩を形成していてもよい。
【0053】
R1及びR2で表される1価の置換基及びZにより形成される複素芳香族5員環上の置換基は、それぞれ同一でも異なってもよく、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、フェニルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、フェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、カルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メシル、トシル等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ウレイド、メチルウレイド、ブチルウレイド、フェニルウレイド等)、燐酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ジエチル燐酸アミド、フェニル燐酸アミド等)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、複素環基(イミダゾリル、ピリジル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0054】
R1及びR2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、複素環基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、チエニル基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基である。
【0055】
Zにより形成される複素芳香族5員環上に結合する基として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基である。
【0056】
以下に一般式(4)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
これらの化合物は、例えばTetrahedron Letters,1981年,22巻,345〜349頁、J.Heterocycl.Chem,1980年,17巻,1019〜1023頁、Bull.Soc.Chim.Fr.,1967年,4220〜4235頁、Bull.Soc.Chim.Fr.,1967年 2495〜2507頁、フランス特許1453897号等に記載される既知の方法によって、当業者であれば容易に合成することができる。
【0061】
一般式(5)において、R′で表される1価の置換基としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、プロパルギル、3−ペンチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、メトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、フェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルホニルアミノ、オクタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、フェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メシル、トシル等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等)、燐酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基(スルフィン酸基)、メルカプト基、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、ヒドラジノ基、複素環基(イミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノ等)等が挙げられる。又、アルカリ金属などとの塩形成が可能な置換基は塩を形成してもよい。これらの置換基は更に置換されてもよい。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0062】
以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化16】
【0064】
これらの化合物は、例えば、新実験化学講座(丸善)14−III、5章−1、Organic Fanctional Group Preparations(Academic Press New York and London)I−9章などに記載されている既知の方法によって合成することができる。又、種々の市販の試薬を利用することもできる。
【0065】
上記一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物は、熱現像銀塩感材の感光層に添加されるのが好ましいが、更に保護層などの非感光性層に添加してもよい。
【0066】
一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物の添加量は、各々銀1モル当たり10-4〜1モル、好ましくは10-3〜0.3モル、更に好ましくは10-3〜0.1モルが好ましい。又、一般式(3)、(4)及び(5)の化合物は、各々1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0067】
一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物は、溶液、粉末、固体微粒子分散物など如何なる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(ボールミル、振動ボールミル、サイドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル等)で行われる。又、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0068】
続いて、本発明の熱現像銀塩感材に用いられる必須素材である有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、バインダー、支持体ならびに好ましく用いられる各種添加剤について順次説明する。
【0069】
(有機銀塩)
銀画像形成のための銀イオン供給源としての有機銀塩は、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特にこの中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸の銀塩、及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなResearch Disclosure(RD)17029及び29963に記載された有機又は無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0070】
有機酸の銀塩、例えば没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩。アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩又は錯体、例えばアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)の反応生成物の銀塩又は錯体。チオン類の銀塩又は錯体、例えば3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩又は錯体。イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体又は塩。サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。
【0071】
これらの中、特に好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀などの長鎖の脂肪族カルボン酸の銀塩が挙げられる。
【0072】
又、有機銀塩が2種以上混合されていることが、現像性を上げ高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0073】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0074】
(有機銀塩結晶成長抑制剤/分散剤)
脂肪族カルボン酸銀粒子に対する結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物を、該カルボン酸銀粒子の製造工程において、共存させた条件下で脂肪族カルボン酸銀を製造することが好ましい。
【0075】
尚、有機銀塩結晶成長抑制剤あるいは分散剤とは、該カルボン酸銀粒子の製造工程において、当該化合物を共存させた条件下でカルボン酸銀を製造した時に、共存させない条件下で製造した時より小粒径化や単分散化する機能、効果を有する化合物を言う。具体例として、炭素数が10以下の1価アルコール類、好ましくは第2級アルコール、第3級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、グリセリン等が挙げられる。好ましい添加量としては、カルボン酸銀に対して10〜200質量%である。
【0076】
一方で、イソヘプタン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソベヘン酸、イソヘキサコ酸など、それぞれ異性体を含む分岐脂肪族カルボン酸も好ましい。この場合、好ましい側鎖として炭素数4以下のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。又、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モロクチン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、セラコレン酸などの脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられる。好ましい添加量は、脂肪族カルボン酸銀の0.5〜10モル%である。
【0077】
グルコシド、ガラクトシド、フルクトシドなどの配糖体類、トレハロース、スクロースなどトレハロース型二糖類、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、アルギン酸など多糖類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、ソルビタン、ソルビット、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルホルムアミドなど水溶性有機溶媒、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等の水溶性ポリマー類も好ましい化合物として挙げられる。好ましい添加量としては脂肪族カルボン酸銀に対して0.1〜20質量%である。
【0078】
炭素数が10以下のアルコール好ましくは、第2級アルコール、第3級アルコールは、仕込み工程での脂肪族カルボン酸ナトリウムの溶解度を上げることにより減粘し、攪拌効率を上げることで単分散かつ小粒径化する。分岐脂肪族カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸は、脂肪族カルボン酸銀が結晶化する際にメイン成分である直鎖脂肪族カルボン酸銀よりも立体障害性が高く、結晶格子の乱れが大きくなるため大きな結晶は生成せず、結果的に小粒径化する。
【0079】
上記の有機銀塩は種々の形状において使用できるが、平板状の粒子、特にアスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子が好ましい。
【0080】
本発明において、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子であるとは、前記平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の50%以上を占めることを表す。更に、本発明に係る有機銀塩は、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
【0081】
アスペクト比3以上の平板状粒子とは粒径と厚さの比、下記式で表される所謂アスペクト比(ARと略記)が3以上の粒子である。
【0082】
AR=粒径(μm)/厚さ(μm)
平板状有機銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由として、アスペクト比が低すぎると有機銀塩粒子が最密され易くなり、又、アスペクト比が余りに高い場合には有機銀塩粒子同士が重なり易く、又、くっ付いた状態で分散され易くなるので光散乱等が起き易くなり、その結果として感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記記載の範囲が好ましい範囲と考える。
【0083】
上記の形状を有する有機銀塩粒子を得る方法としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/又は前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0084】
平板状有機銀塩粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機又は高圧ホモジナイザ等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0085】
又、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては、壁、プラグ等に衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0086】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えばAl2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、Sr2TiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、SiO2−nH2O、窒素化珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを以下においてジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0087】
平板状有機銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類又はダイヤモンドを用いることが好ましく、中でも、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0088】
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。又、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい運転条件として挙げられる。又、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0089】
又、本発明の熱現像銀塩感材において好ましい態様は、当該材料の支持体面と垂直な断面を電子顕微鏡観察した時、0.025μm2未満の投影面積を示す有機銀塩粒子の割合が有機銀塩粒子の全投影面積の70%以上を示し、かつ、0.2μm2以上の投影面積を示す粒子の割合が有機銀塩粒子の全投影面積の10%以下である特徴を有する有機銀塩、感光性ハロゲン化銀を含有する感光性乳剤を塗布して成るものである。このような場合、感光性乳剤中において有機銀塩粒子の凝集が少なく、かつ均一に分布した状態を得ることが出来る。
【0090】
このような特徴を有する感光性乳剤を作製する条件としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/又は前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機又は高圧ホモジナイザ等で分散すること、その際のバインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加すること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないことなどに加えて、調液時にはディゾルバを使用し周速2.0m/秒以上で攪拌することなどが好ましい条件として挙げられる。
【0091】
上記のような特定の投影面積値を有する有機銀粒子の投影面積や全投影面積に占める割合などは、前記平板状粒子の平均厚さを求める個所で記載したと同様に、TEMを用いた方法により、有機銀に相当する個所を抽出する。この際に、凝集した有機銀は一つの粒子と見なして処理し、各粒子の面積(AREA)を求める。同様にして、少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm2未満、B:0.025μm2以上0.2μm2未満、C:0.2μm2以上の三つの群に分類する。
【0092】
本発明の熱現像銀塩感材は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、かつC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものであることが好ましい。
【0093】
上記手順で計測を行うには、予め、標準試料を用いて1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。標準試料としては、米国ダウケミカル社より市販されるユニフォーム・ラテックス・パーティクルス(DULP)が適当であり、0.1〜0.3μmの粒径に対して10%未満の変動係数を有するポリスチレン粒子が好ましく、具体的には粒径0.212μm、標準偏差0.0029μmというロットが入手可能である。
【0094】
画像処理技術の詳細は、前記と同様「田中弘編:画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラム又は装置としては、上記操作が可能であれば特に限定はされないが、矢張り一例として前記と同様ニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
【0095】
有機銀塩粒子は単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここで言う単分散度とは下記式で定義される。
【0096】
単分散度=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
上記の有機銀塩の平均粒径(円相当径)は0.01〜0.2μmが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.15μmである。尚、平均粒径(円相当径)とは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0097】
熱現像銀塩感材の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで医用画像として好ましい画像が得られる。
【0098】
(感光性ハロゲン化銀)
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収し得て、又は、人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収し得て、かつ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内の何れかの領域の光を吸収した時に、当該ハロゲン化銀結晶内及び/又は結晶表面において物理化学的変化が起こり得るように処理、製造されたハロゲン化銀結晶粒子を言う。
【0099】
ハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著:Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著:Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊,1966年)、V.L.Zelikman et al著:Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)等に記載された方法を用いて、ハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等の何れでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等の何れを用いてもよいが、上記方法の中でも、形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。
【0100】
粒子形成は、通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、又、核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールが出来るので好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う場合には、まず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させて核(種粒子)生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等の下で可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ粒子成長させる粒子成長工程により、ハロゲン化銀粒子を調製する。粒子形成後、脱塩工程により、不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により除くことで、所望のハロゲン化銀乳剤を得ることが出来る。
【0101】
ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.2μm以下、より好ましくは0.01〜0.17μm、特に0.02〜0.14μmが好ましい。ここで言う粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さを言う。又、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算した時の直径を言う。
【0102】
ハロゲン化銀粒子の粒子サイズは単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下記式で求められる粒子サイズの変動係数が30%以下のものを言う。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0103】
粒子サイズの変動係数(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの中、特に立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0104】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5〜100、より好ましくは2〜50がよい。これらは、米国特許5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0105】
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への銀増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。尚、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
【0106】
ハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。この低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更には5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。
【0107】
低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸又はアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下又は加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0108】
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのが有効である。
【0109】
感光性ハロゲン化銀粒子は如何なる方法で感光層(画像形成層)に添加されてもよく、この時、ハロゲン化銀粒子は、還元可能な銀源(有機銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
【0110】
ハロゲン化銀は予め調製しておき、これを有機銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と有機銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許1,447,454号に記載される様に、有機銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を有機銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで有機銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることも出来る。又、有機銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、有機銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された有機銀塩の溶液もしくは分散液、又は有機銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
【0111】
ハロゲン化銀形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については米国特許4,009,039号、同3,457,075号、同4,003,749号、英国特許1,498,956号及び特開昭53−27027号、同53−25420号等に詳説される金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム等の無機ハロゲン化物;例えばトリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様なオニウムハライド類;例えばヨードホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等のハロゲン化炭化水素類;N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド等のN−ハロゲン化合物;その他、例えば塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。この様に、ハロゲン化銀を有機酸銀とハロゲンイオンとの反応により有機酸銀塩中の銀の一部又は全部をハロゲン化銀に変換することによって調製することもできる。又、別途調製したハロゲン化銀に有機銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
【0112】
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、有機銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、有機銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モル使用するのが好ましい。
【0113】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、元素周期律表の6〜11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらは1種類でも同種あるいは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。これらの金属イオンは、金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体又は錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9〜1×10-2モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-4モルがより好ましい。遷移金属錯体又は錯体イオンは下記一般式で表されるものが好ましい。
【0114】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−又は4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、又、異なってもよい。
【0115】
これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加しハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載される様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0116】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合される時、第3の水溶液として添加し3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、又は物理熟成時途中もしくは終了時、又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0117】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、光熱熱写真材料においては脱塩しないで用いることもできる。
【0118】
(還元剤)
本発明の熱現像銀塩感材に内蔵させる好適な還元剤の例は、米国特許3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号、及びRD17029及び29963等に記載されており、公知の還元剤の中から適宜選択して使用することが出来るが、有機銀塩に脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合には、2個以上のフェノール骨格がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール骨格のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル等)又はアシル基(アセチル、プロピオニル等)が置換したフェノール骨格の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたビスフェノール類、例えば下記一般式(A)で示される化合物が好ましい。
【0119】
【化17】
【0120】
式中、Xはカルコゲン原子又はCHR10を表し、R10は水素原子、ハロゲン原子、炭素数7以下の脂肪族基又は6員以下の環状基を表す。R11及びR12は各々、水素原子又は置換基を表す。
【0121】
上記Xが表すカルコゲン原子としては、硫黄、セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。R10で表されるハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素原子等であり、炭素数が7以下の脂肪族基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキサジエニル、エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル基等であり、6員以下の環状基としては、脂環式基、複素環基を含み、炭素環式基としては、シクロブテン、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、シクロヘキサジエニル、フェニル基等の4〜6員環が好ましく、複素環基としては、ピラゾール、ピロール、ピロリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリジン、トリアジン、チアゾール、フラン、ピラン等の5、6員環残基が好ましく、特に好ましくは、水素原子又はシクロアルキル基、シクロアルケニル基、フェニル基などの環状構造を有する基である。
【0122】
これらの基は更に置換基を有してもよく、該置換基としては、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスホノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0123】
R11、R12が表すハロゲン原子としては、例えば弗素、塩素、臭素原子等が挙げられ、R11、R12が表す置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、複素環基等が挙げられる。複数のR11、R12は同じでも異なってもよい。
【0124】
R11は炭素数2以上が好ましい。R12は炭素数1〜5が好ましく、更に好ましくは炭素数1である。これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(弗素、塩素、臭素等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル等)、アルキニル基(エチニル、1−プロピニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。
【0125】
一般式(A)で示される化合物の具体例として下記の化合物が挙げられる。
【0126】
【化18】
【0127】
【化19】
【0128】
【化20】
【0129】
【化21】
【0130】
その他、米国特許3,589,903号、同4,021,249号もしくは英国特許1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号等に記載されたポリフェノール化合物、例えば2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許3,672,904号に記載されたビスナフトール類、更に、例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許3,801,321号に記載されるようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類も挙げることが出来る。
【0131】
一般式(A)で表される化合物を初めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
【0132】
熱現像銀塩感材に使用される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には、有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルが適当である。又、この量の範囲内において、上記還元剤は2種以上併用されてもよい。
【0133】
本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び有機銀塩粒子及び溶媒から成る感光乳剤溶液に添加混合して塗布した方が、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0134】
尚、還元剤の補助剤として、EP1096310号に記載されるトリフェニルホスフィンオキサイド等のように還元剤のヒドロキシル基の水素と水素結合を形成し得る化合物を併用することも好ましい。
【0135】
(化学増感)
ハロゲン化銀粒子には化学増感を施すことができる。例えば特願2000−57004及び同2000−61942に開示されている方法等により、硫黄などのカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。
【0136】
本発明においては、以下に述べる硫黄、セレン、テルル等のカルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0137】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等に開示される種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうちカルコゲン原子が炭素原子又は燐原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0138】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、カルコゲン化合物の種類、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルを用いる。
【0139】
化学増感環境としては特に制限はないが、ベヘン酸銀等の有機酸銀塩が存在しない条件下でハロゲン化銀粒子に化学増感を施すことが好ましい、又、ハロゲン化銀粒子上に生成されたカルコゲン化銀又は銀核を消滅、あるいは、それらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、特に銀核を酸化し得る酸化剤の共存下においてカルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことも好ましく、この場合の増感条件としては、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、又、温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0140】
従って、本発明の熱現像銀塩感材においては、前記感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化し得る酸化剤の共存下においてカルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて温度30℃以下において化学増感を施され、かつ、有機銀塩と混合して分散され脱水及び乾燥された感光性乳剤を用いることが好ましい。
【0141】
又、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素又はハロゲン化銀粒子に対して吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることも好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下に化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0142】
本発明に用いられる分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。この含窒素複素環化合物の複素環としては、ピラゾール、ピリミジン、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ピリダジン、1,2,3−トリアジンの各環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール、ジアザインデン、トリアザインデン、ペンタアザインデン等の環を挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾチアゾール等の環も適用できる。
【0143】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、かつ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
【0144】
これら複素環には、ヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。該置換基としては、(置換)アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。
【0145】
これら含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、大凡の量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4モル〜10-1モルである。
【0146】
ハロゲン化銀粒子には、前述のように金イオン等の貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
【0147】
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的化合物例としては、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1錫、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。又、乳剤のpHを7以上、又はpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0148】
化学増感を施されるハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたのでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、又、両者が混合されたものでもよい。
【0149】
(分光増感)
感光性ハロゲン化銀粒子には分光増感色素を吸着させ、分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン、メロシアニン、コンプレックスシアニン、コンプレックスメロシアニン、ホロポーラーシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノール等の各色素を用いることができる。例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。有用な増感色素は、例えばRD17643,23頁,IV−A項(1978年12月)、同18431,437頁,X項(1978年8月)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の色素が好ましく用いられる。
【0150】
有用なシアニン色素は、例えばチアゾリン、オキサゾリン、ピロリン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン、ローダニン、オキサゾリジンジオン、チアゾリンジオン、バルビツール酸、チアゾリノン、マロノニトリル及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0151】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることが好ましい。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば米国特許4,536,473号、同4,515,888号、同4,959,294号等に開示される赤外分光増感色素が挙げられる。中でも、ベンゾアゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が、特に好ましい。上記の赤外増感色素は、例えばエフ・エム・ハーマー著:The Chemistry of Heterocyclic Compounds,第18巻,The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊,New York,1964年)に記載の方法によって容易に合成できる。
【0152】
これらの赤外増感色素の添加時期はハロゲン化銀調製後のどの時点でもよく、例えば溶剤に添加して、あるいは微粒子状に分散した所謂、固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/有機銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。又、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0153】
分光増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0154】
(強色増感)
熱現像銀塩感材に用いられるハロゲン化銀粒子、有機銀塩粒子を含有する乳剤は、増感色素と共に、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されてもよい。
【0155】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質はRD17643(1978年12月発行)23頁,IV−J項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、本発明においては、下記の一般式(7)で表される複素芳香族メルカプト化合物又はメルカプト誘導体化合物が好ましい。
【0156】
一般式(7) Ar−SM
式中、Mは水素原子又はアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム又はテルリウム原子を有する芳香環又は縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環としてベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0157】
尚、有機酸銀塩及び/又はハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させた時に実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も包含される。特に、下記の一般式(7a)で表されるメルカプト誘導体化合物が好ましい例として挙げられる。
【0158】
一般式(7a) Ar−S−S−Ar
式中のArは上記一般式(7)で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
【0159】
上記の複素芳香環は、例えばハロゲン原子(塩素、臭素、沃素)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)等から選ばれる置換基を有し得る。
【0160】
前述のように、従来の銀塩写真感材と比較して、熱現像銀塩感材の構成上の最大の相違点は、後者の感材中には、現像処理の前後を問わず、カブリやプリントアウト銀(焼出し銀)の発生の原因となり得る感光性ハロゲン化銀、カルボン酸銀及び現像剤(還元剤)が多量含有されていることである。このため、熱現像銀塩感材には、現像前ばかりでなく現像後の保存安定性を維持するための高度のカブリ防止及び画像安定化技術が必須であるが、従来は、カブリ核の成長及び現像を抑制する芳香族性複素環化合物の他に、カブリ核を酸化消滅する機能を有する酢酸水銀のような水銀化合物が非常に有効な保存安定化剤として使用されていたが、この水銀化合物の使用が安全性/環境保全性上の問題であった。
【0161】
(カブリ防止剤、画像安定化剤)
以下、熱現像銀塩感材に用いられるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
【0162】
当該感材での還元剤としては、前述したように、主にビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンを持った還元剤が用いられるので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されることが好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物である。
【0163】
従って、これらの機能を有する化合物であれば如何なる化合物でもよいが、複数の原子から成る有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有し、かつ熱現像銀塩感材に格別の弊害を生じることのない化合物であれば、如何なる構造を持った化合物でもよい。
【0164】
又、フリーラジカルを発生する化合物としては、発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性を持たせるために、炭素環式、又は複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0165】
これらの化合物の代表的なものとして、特願2000−57004に一般式〔1〕で示されるビイミダゾリル化合物、一般式〔2〕で示されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0166】
又、還元剤を不活性化し還元剤が有機銀塩を銀に還元できないようにする化合物として、反応活性種がハロゲン原子でないものが好ましいが、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物も、上記ハロゲン原子でない活性種を放出する化合物と併用することが出来る。ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も多くのものが知られており、併用により良好な効果が得られる。
【0167】
これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例として、前記特願2000−57004に一般式〔4〕で示される下記化合物が挙げられる。
【0168】
Q−Y−C(X1)(X2)(X3)
式中、Qはアリール基又は複素環基を表す。X1、X2及びX3は各々、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表す。
【0169】
各基の詳細な説明は段落「0088」〜「0093」に、具体的化合物例は段落「0095」〜「0102」に4−1〜4−64として記載される。
【0170】
尚、上記の化合物の他に、本発明の熱現像銀塩感材中には、従来カブリ防止剤として知られている化合物が含まれてもよいが、上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば米国特許3,589,903号、同4,546,075号、同4,452,885号、特開昭59−57234号、米国特許3,874,946号、同4,756,999号、特開平9−288328号、同9−90550号等に記載の化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許5,028,523号及び欧州特許600,587号、同605,981号、同631,176号等に開示される化合物が挙げられる。
【0171】
(省銀化剤)
本発明の熱現像銀塩感材には省銀化剤を用いることが好ましい。省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物を言う。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度を言う。
【0172】
省銀化剤としては、特願2001−192698に記載される一般式〔H〕で表されるヒドラジン誘導体化合物、一般式(G)で表されるビニル化合物、一般式(P)で表される4級オニウム化合物、更には1級又は2級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物及びその塩が好ましい例として挙げられる。
【0173】
ここで、1級又は2級アミノ基を2個以上有するとは、1級アミノ基のみを2個以上、2級アミノ基のみを2個以上、更には1級アミノ基と2級アミノ基をそれぞれ1個以上含むことを指し、アルコキシシラン化合物の塩とは、アミノ基とオニウム塩を形成し得る無機酸あるいは有機酸とアルコキシシラン化合物との付加物を指す。
【0174】
(バインダー)
本発明の熱現像銀塩感材に好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート類、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。これらは親水性でも非親水性でもよい。
【0175】
熱現像銀塩感材の感光層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。詳しくは後述する。又、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0176】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、感光層において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合が15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、感光層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましい。更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0177】
熱現像銀塩感材の感光層に用いられるバインダーのガラス転移温度(Tg)は、70〜105℃であることが特に好ましい。このような特性を有するバインダーを用いることによって、有機酸による膜の柔軟化を防止し、熱転移点温度を上昇させ、擦傷防止に対し顕著な効果を発揮することができる。これに対し、Tgが70℃未満のバインダーを用いると、熱転移点温度が低下し擦傷耐性などの物性値として所望の値を得ることができない。逆に、Tgが105℃を超えるバインダーを用いると、物性の著しい低下を招く結果となり好ましくない。
【0178】
好ましいバインダーとしては従来公知の高分子化合物を用いることができるが、Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体より成る化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。又、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が前記の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
【0179】
このようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されてもされなくてもよく、具体的には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−i−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
【0180】
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:その具体例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなど;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトンなど;オレフィン類:例えばジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど;ビニルエーテル類:例えばメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニル等を有するものなど;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデン等を挙げることができる。
【0181】
これらのうち、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物では、生成する有機酸との相溶性に優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0182】
又、本発明においては、バインダーが、実質的にアセトアセタール構造を持つポリビニルアセタールであることが好ましい。例えば、米国特許2,358,836号、同3,003,879号、同2,828,204号、英国特許771,155号に示されるポリビニルアセタールを挙げることができる。
【0183】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、特願2000−380225に一般式(V)として記載される化合物が特に好ましい。
【0184】
(架橋剤)
架橋剤を上記バインダーに対し用いることにより膜付きが良くなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
【0185】
架橋剤としては、従来、写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、好ましいのはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物又は酸無水物である。この3化合物に付いては特願2000−57004に詳述される。
【0186】
(マット剤)
本発明においては、熱現像銀塩感材の表面層に(感光層側、又、支持体を挟み感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、現像前の取扱いや熱現像後の画像の傷付き防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対して0.1〜30質量%含有することが好ましい。
【0187】
用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物の何れでもよい。無機物としては、スイス特許330,158号等に記載のシリカ、仏国特許1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許625,451号や英国特許981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許330,158号等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート、米国特許3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0188】
マット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0189】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法でもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。又、複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0190】
(支持体)
本発明の熱現像銀塩感材の支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(アルミニウム等)等が挙げられるが、情報記録材料としての取扱い上は、可撓性のあるシート又はロールに加工できるものが好適である。従って、好適な支持体としては、プラスチックフィルム(セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルローストリアセテート又はポリカーボネート等の各フィルム)が好ましく、中でも、2軸延伸したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0191】
(色調剤)
本発明に係る熱現像銀塩感材には色調剤を用いることが好ましく、好適な色調剤の例はRD17029、米国特許4,123,282号、同3,994,732号、同3,846,136号及び同4,021,249号に開示されており、例えば次のものがある。
【0192】
イミド類(スクシンイミド、フタルイミド、ナフタールイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジンとフタル酸類(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸)の組合せ;フタラジンとマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物等)から選択される少なくとも一つの化合物との組合せ等が挙げられる。特に好ましい色調剤としてはフタラジノン又はフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組合せである。
【0193】
尚、従来、医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、レントゲン写真の判読者にとってより的確な記録画像の診断観察結果が得易いと言われている。ここで、冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であることを言う。
【0194】
(層構成)
本発明の熱現像銀塩感材は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有している。支持体の上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば感光層の上には、保護層が感光層を保護する目的で、又、支持体の反対の面には、感光材料間の、あるいは感光材料ロールにおいてくっ付きを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては熱現像層よりもガラス転位点が高く、擦り傷や、変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。
【0195】
尚、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0196】
(フィルター染料)
熱現像銀塩感材においては、感光層を透過する光の量又は波長分布を制御するために感光層と同じ側又は反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。
【0197】
用いられる染料としては、熱現像銀塩感材の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明に係る熱現像銀塩感材を赤外光による画像記録材料とする場合には、特願平11−255557号に開示されるようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(チオピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(ピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)、又、スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、又はピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0198】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。
【0199】
尚、染料としては特開平8−201959号の化合物も好ましい。
(構成層の塗布)
熱現像銀塩感材は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。
【0200】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法は、スライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。
【0201】
尚、塗布銀量は、イメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、医療用画像を目的とする場合には、0.6〜2.5g/m2が好ましく、更には0.8〜1.5g/m2が好ましい。当該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましく、更には5〜15%が好ましい。
【0202】
(イメージング材料の現像)
本発明の熱現像銀塩感材の現像条件は、使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には、適した高温において像様に露光した熱現像銀塩感材を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜200℃、好ましくは約100〜200℃)で十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、熱現像銀塩感材を加熱することにより現像することができる。
【0203】
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、又、200℃を超えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく、搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0204】
加熱する機器、装置、あるいは手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素又は白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは、保護層の設けられた熱現像銀塩感材は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、又、熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0205】
(感材への露光)
熱現像銀塩感材の露光は、当該感材に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば当該感材を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザーパワーがハイパワーであることや、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザー(780nm、820nm)が、より好ましく用いられる。
【0206】
露光はレーザー走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザー光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0207】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0208】
レーザー光が感光材料に走査される時の感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザー走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。
【0209】
又、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳を掛ける等の方法がよい。尚、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0210】
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0211】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャ等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0212】
尚、上述した第1、第2及び第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られているルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。尚、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像銀塩感材に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像銀塩感材固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0213】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0214】
実施例1
〈下引済みPET支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ175μmのPETに、光学濃度で0.170(コニカ社製デンシトメータPDA−65にて測定)に青色着色したフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、又、反対側の面に下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層B−1とした。
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に下引上層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能を持つ下引上層B−2として塗設した。
(下引上層塗布液a−2)
ゼラチン 0.4g/m2になる量
C−1 0.2g
C−2 0.2g
C−3 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる
(下引上層塗布液b−2)
C−4 60g
C−5を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
C−6 12g
ポリエチレングリコール(質量平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる
【0215】
【化22】
【0216】
【化23】
【0217】
〈バック面側塗布〉
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製:CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社:VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、0.30gの赤外染料1を添加し、更にメタノール43.2gに溶解した弗素系活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)4.5gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社製:シロイド64X6000)を75g添加、攪拌してバック面側の塗布液とした。
【0218】
【化24】
【0219】
上記バック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになる様に押出しコーターにて塗布・乾燥を行った。乾燥温度100℃、露天温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0220】
〈感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製〉
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて、溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットルを加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後に、pHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0221】
次に、上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更に硫黄増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5(0.5%エタノール溶液)を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。
【0222】
【化25】
【0223】
〈粉末有機銀塩Aの調製〉
4720mlの純水に、ベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。この脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0224】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して、有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。尚、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0225】
〈予備分散液Aの調製〉
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製:Butvar B−79)14.57gをMEK1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製:ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0226】
〈感光性乳剤分散液1の調製〉
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行うことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0227】
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤1及び0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0228】
〈赤外増感色素液Aの調製〉
19.2mgの赤外増感色素S−43、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール(MMBI)を31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0229】
〈添加液aの調製〉
現像剤としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
【0230】
〈添加液bの調製〉
3.56gのカブリ防止剤2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0231】
各添加液に用いた添加剤の構造を以下に示す。
【0232】
【化26】
【0233】
〈感光層塗布液の調製〉
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)及びMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に、臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加し20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液を添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社製:Butvar B−79)13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300(モーベイ社社製の脂肪族イソシアネート,10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0234】
【化27】
【0235】
〈マット剤分散液の調製〉
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解した溶液に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を調製した。
【0236】
〈表面保護層塗布液の調製〉
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(CAB171−15:前出)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)4.5g、ビニルスルホン化合物(HD−1)1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、弗素系活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)1.0gを添加・溶解した。次に、上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0237】
HD−1:(CH2=CHSO2CH2)2CHOH
〈感光層面側塗布〉
前記感光層塗布液と表面保護層塗布液を押出し(エクストルージョン)コーターを用いて同時に重層塗布することにより感光材料1を作製した。塗布に際しては、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様に行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行った。
【0238】
〈画像記録及び画像評価〉
上記作製した熱現像感光材料を、遮光下、室温(23℃・55%RH)において、熱現像感光材料の画像形成層面側から、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザ(最大出力35mW)を露光源とした露光機により、露光量を変化させレーザ走査による露光を行い、次いで、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、熱現像感光材料の保護層とドラム表面とが接触するようにして、123℃で12秒の熱現像処理を行い画像を形成した。
【0239】
尚、レーザ走査露光は、熱現像感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度、保護層面でのレーザスポット径は主走査方向100μm、副走査方向75μmの楕円形、レーザ走査ピッチは主走査方向100μm、副走査方向75μmとして行い、JIS K6253タイプAで規定される表面ゴム硬度が70のヒートドラムを有する自動現像機を用いた。
【0240】
得られた画像の最大濃度(Dmax)とカブリ濃度(Dmin)を測定した。光学濃度はコニカ社製:デンシトメータPDA−65にて測定した。
【0241】
Dmax:露光部分の最大露光部におけるビジュアルの透過濃度(前出:PDA−65で小数点以下2桁まで)を10点測定し、その平均値を最大濃度(Dmax)とした。
【0242】
Dmin:未露光部分のビジュアルの透過濃度(前出:PDA−65で小数点以下3桁まで)を10点測定し、その平均値をカブリ濃度(Dmin)とした。
【0243】
《評価1》
連続熱現像による濃度ムラ発生の度合いを評価した。即ち、35.5×43.2cmに裁断した感光材料試料を、光学濃度0.8が得られる条件で露光及び現像を行った。この時、100枚を連続処理し、100枚目の現像済み試料の濃度ムラを目視で3段階評価した。
【0244】
◯:1分間見てムラなし
△:5秒間見てムラなし
×:5秒間見てムラあり
《評価2》
評価1の濃度ムラ評価の試料のDmax−Dminを算出し、之を以てコントラストの評価とした。
【0245】
実施例2
実施例1を基本として表1に示すように導電層及び感光層に含有させる化合物を変更した。変更した添加剤は、比較例を基準とし、モル量が等しくなるように添加した。
【0246】
以上により得られた結果を纏めて表1に示す。
【0247】
【表1】
【0248】
表1より明らかな様に、本発明の感材試料は比較の感材試料に比べ、評価1、2の何れにおいても優れている。
【0249】
【発明の効果】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料によれば、高品質で濃度ムラのない、均一性に優れた画像が得られる。
Claims (11)
- 支持体上に、少なくとも有機銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤、バインダーを含有する感光層と導電性層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、該導電性層が下記一般式(1−a)で表される化合物を含有することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
一般式(1−a) MO3S−(CF2)n−SO3M
〔式中、Mは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子又はアンモニウム基を表し、nは正の整数を表すが、M=Hの時n=1〜6及び8であり、M=Naの時n=4であり、M=Kの時n=1〜6であり、M=アンモニウム基の時n=1〜8である。〕 - 支持体上に、少なくとも有機銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤、バインダーを含有する感光層と導電性層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、該導電性層が下記一般式(1−b)で表される化合物を含有することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
一般式(1−b) L[O3S−(CF2)p−SO3]
〔式中、Lはバリウム原子、カルシウム原子又はマグネシウム原子を表し、pは正の整数を表すが、L=Baの時p=1〜5であり、L=Ca,Mgの時p=1〜8である。〕 - 前記導電性層が下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
一般式(2) Rf2−(AO)k−Rf3
〔式中、Rf2及びRf3は、各々、弗素含有脂肪族基を表し、同じでも異なってもよい。AOは少なくとも一つのアルキレンオキシ基を有する基を表し、kは1〜30の整数を表す。〕 - 前記感光層がチウロニウム化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 前記感光層がMMBI(5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール)を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 請求項1〜8の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に画像露光する手段がレーザー光走査露光機であり、該露光機のレーザー光の波長が600〜1600nmであることを特徴とする画像記録方法。
- 請求項1〜8の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を熱現像して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項1〜8の何れか1項記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光層が、溶剤分散された塗布液を塗布・乾燥して成ることを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
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