JP4080381B2 - アルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理組成物 - Google Patents

アルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境への影響に留意しながらも、アルミニウムおよびアルミニウム合金にすぐれた耐食性を付与する表面処理方法に関する。更に詳しく述べるならば、本発明は、6価クロムイオンやフッ素イオンなどの環境に悪影響を及ぼす有害物を含有せず、アルミニウム合金の表面に優れた耐食性、特に耐孔食性を有する化成皮膜を形成することができる組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
腐食、特に孔食はClを含んでいる環境中で使用されるアルミニウム合金にとっては、重要な問題であり、表面処理は腐食防止を達成するための有効なアプローチの1つである。アルミニウムの陽極酸化処理やクロメート処理などが腐食を防止することは周知である。但し、処理設備に要する高い処理コスト、あるいは六価クロムなど公害になる化合物を含有することが、それらの処理方法で問題となる。
近年、アルミニウム合金の孔食を防止するためのクロムフリー化成処理の開発が活発に行われているが、これらの中で、環境問題についてマグネシウム、リチウム、カルシウムなどの軽金属イオンを使用する化成処理が、前述の環境への負荷低減の面から、実用化される可能性が高い技術として注目されている。
【0003】
これらの軽金属イオンを用いた化成処理剤の従来技術としては、マグネシウムイオンと重炭酸イオンとを使用した化成処理方法が開示されている(例えば特許文献1を参照)。また、マグネシウムイオン系化成皮膜の耐食性を向上するため、マグネシウムイオンと弱アルカリ性を有する有機物を含有する処理液が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
リチウムイオン系化成処理について、アルミニウム合金の表面に、60〜80℃の苛性ソーダとリチウムイオン溶液を接触させる方法(例えば特許文献3参照)、90℃のリチウム塩とトリエタノールアミンの液で処理する方法(例えば特許文献4参照)、硝酸リチウムと苛性ソーダの処理液を接触させる方法(例えば特許文献5参照)、アルミン酸塩、リチウム塩、珪酸塩、および有機キレートを含有する液で処理する方法(例えば特許文献6及び特許文献7参照)などが開発されている。また、25〜35℃、pH11〜13のリチウムイオンと炭酸イオンの混合液中の処理で Hydrotalcite 皮膜をアルミニウム合金表面に生成させる方法が開示されている(例えば特許文献8参照)。しかし、このリチウム−炭酸系化成処理皮膜は耐食性が不十分なため、化成処理後に、4時間、150℃の加熱処理、さらには重金属イオン液での Sealing 処理が必要とされている(例えば特許文献9参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭52−42434号公報
【特許文献2】
米国特許第5500288号明細書
【特許文献3】
特開昭48−18131号明細書
【特許文献4】
特開昭52−9642号明細書
【特許文献5】
特公昭52−10085号明細書
【特許文献6】
特公昭57−42156号明細書
【特許文献7】
特公昭60−43434号明細書
【特許文献8】
米国特許第5266356号明細書
【特許文献9】
米国特許第5756218号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来の軽金属イオン化成処理技術には、高い所要処理温度、長い所要処理時間、不十分な耐食性などの問題点があげられる。例えば、上記したマグネシウムイオン系化成処理剤は95℃、30分という厳しい処理条件を要し、実用上問題がある。また、リチウム−炭酸系処理皮膜の耐食性についても、塩水噴霧が168時間、あるいは0.5MNaClへの浸漬が80時間という、短時間の場合についてのみその耐食性が保持されるにすぎない。化成処理皮膜の耐食性が不十分な場合には、皮膜の欠陥部における孔食などの局部腐食発生が著しくなる。孔食の侵食は深く進行するため、アルミニウム合金に対して、均一腐食が発生する場合よりもさらに有害である。従って、優れた耐食性、特に耐孔食性を有する表面処理組成物が望まれている。
【0007】
本発明は、環境への負荷の少ない軽金属イオンを使用し、比較的低い温度条件で、かつ、短時間で処理でき、優れた耐食性が得られるアルミニウムおよびアルミニウム合金用表面処理組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明では、アルミニウム合金用化成処理液の主な組成を、次のように構成した。すなわち、リチウムイオン、炭酸イオン、及び表面不動態化促進と、溶解・皮膜成長の制御剤として酸化剤を含有する水性液からなることを特徴とする組成とした。
【0009】
アルカリ性リチウム−炭酸系処理では、皮膜の生長とAlの溶解が同時に起こる。従来の技術では、このAl溶解による皮膜中で小孔などの欠陥が生成した。Alより貴な金属間化合物が存在するアルミニウム合金の場合に、このような欠陥は著しく生成される。この欠陥は化成皮膜の耐食性に大きな影響を与える。
【0010】
アルカリ性リチウムと炭酸イオンの混合液中で、アルミニウム合金はアノード電位で不動態特性を有することが知られている。この不動態化の原因は不動態化電位範囲で表面に LiAlO2の生成によるものであるという説が提案されているが、上記液中でアルミニウム合金の不動態皮膜の成分と構造はまだ不明である。上記液中でアルミニウム合金の分極挙動により、不動態皮膜は活性溶解状態で生成した皮膜(従来のリチウムイオン系化成皮膜)より緻密性と耐食性が高いと推定される。しかし、膜厚が極めて薄いため、リチウムと炭酸イオン液中で生成した不動態皮膜はアルミニウム合金の長時間防食用には耐食性不十分である。
そこで、本発明者は上記目的を達成するために、リチウムと炭酸イオン液中に浸漬したアルミニウム合金について、不動態電位範囲での電位制御、皮膜生長の促進、及び皮膜中の欠陥の抑制などを鋭意研究した結果、酸化剤の添加と処理液成分組成を調整することにより、優れた耐食性化成皮膜が形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明はリチウム化合物と、炭酸化合物と、及び酸化剤を含むことを特徴とする耐食性、特に耐孔食性に優れたアルミニウム及びアルミニウム合金用クロムフリー表面処理組成物を提供する。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の化成処理工程は、従来のリチウムイオン系化成処理技術と異なり、強アルカリ性リチウムと炭酸イオン混合液中でアルミニウム合金の不動態電位範囲での化成皮膜成長を特徴とする。前記液中でアルミニウム合金の自然電位を不動態電位範囲に制御するには、酸化剤を添加することにより達成される。本発明のアルミニウム合金の表面処理方法では、化成液のアルカリ度、酸化剤濃度などの調整により不動態化電位範囲での最適な溶解と皮膜成長速度を達成し、比較的な低温、短時間で優れた耐食性皮膜が得られることを特徴とする。
【0013】
化成処理中でアルミニウム合金電位の制御について、例えば、0.25M/LLi+、0.05M/L CO 2−の混合液中A3003アルミニウム合金の安定自然電位は−1.29V(SCE)の活性態溶解電位領域中であって、上記処理液中に0.05M/L Naの酸化剤を添加すると、A3003の安定自然電位は−1.12V(SCE)の不動態電位領域に上昇する。従って、アルカリ性リチウムと炭酸イオン混合水溶液中で、適当な酸化剤を添加することにより、アルミニウム合金は不動態電位領域での化成皮膜生長が実現できることが認められた。
【0014】
化成処理液のリチウムイオン供給源としては、例えば水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、および臭化リチウムなどであり、これらを1種又は2種以上を配合することにより供給される。リチウムイオンの含有量は0.001〜1.0M/L、好ましくは、0.05〜0.2M/Lである。リチウムイオン濃度が0.001M/L未満の場合には、表面調整の効果が不充分となるので好ましくない。一方、1.0M/Lを超えて添加しても、その効果が飽和してしまい経済的に無駄である。
【0015】
化成処理液の炭酸イオン供給源としては、例えば炭酸及び重炭酸のリチウム、ナトリウム及びカリウム化合物などであり、これらを1種又は2種以上配合することにより供給される。炭酸イオンの含有量は0.01〜1.0M/L、好ましくは、0.03〜0.1M/Lである。炭酸イオン濃度が0.01M/L未満の場合には、化成皮膜の耐食性が不充分となるので、好ましくない。一方、1.0M/Lを超えて添加しても、その溶解度を越えて沈殿が発生し、それに見合った耐食性の向上は見られない。
【0016】
化成処理液中最も重要な成分として酸化剤供給源は、例えば過硫酸、硝酸、亜硝酸、及び臭素酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウム塩化合物などであり、これらを1種又は2種以上配合することにより供給される。酸化剤の含有量は0.001〜1.0M/L、好ましくは、0.02〜0.2M/Lである。酸化剤濃度が0.001M/L未満の場合には、化成皮膜の耐食性が不充分となるので、好ましくない。一方、その濃度は1.0M/Lを超えて添加しても、その効果が飽和してしまい経済的に無駄である。
【0017】
化成処理液のpH調整においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムなどの1種又は2種以上を用いて、pHを10〜14、好ましくは、12.5〜13.5の範囲に調整する。化成処理液のpHが10以下の場合には、処理液の反応性が低下するため、化成皮膜の耐食性が不充分となる傾向がある。一方、処理液のpHが14を超える場合は化成皮膜の耐食性は悪くなる。
【0018】
化成処理液中の腐食抑制剤として酸素酸イオン供給源は、例えばモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、またはタングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、及びタングステン酸カリウムなどの1種又は2種以上の配合によって供給される。化成液中の酸素酸イオンの含有量は、0.001〜1.0M/L、好ましくは、0.01〜0.05M/Lである。化成液中の酸素酸濃度が0.001M/L未満の場合には、酸素酸が化成皮膜耐食性を向上する効果が見られないことになる。また、その濃度は1.0M/Lを超えて高くなると、それに見合った耐食性向上は見られない。
【0019】
また、化成処理液中の腐食抑制剤として、リン酸イオン供給源は、リン酸またはポリリン酸またはピロリン酸塩のアンモニウム、ナトリウム、及びカリウム化合物などの1種又は2種以上の配合によって供給される。化成液中のリン酸イオンの含有量は0.001〜1.0M/L、好ましくは、0.005〜0.05M/Lである。化成液中のリン酸イオン濃度が0.001M/L未満の場合には、化成皮膜耐食性を向上する効果が見られないことになる。また、その濃度は、1.0M/Lを超えて高くなると、それに見合った耐食性の向上は見られない。
【0020】
本発明の化成処理は、20〜100℃、好ましくは、40〜80℃の温度で行う。また、処理時間は5秒〜60分が好ましく、さらに2〜20分がより好ましい。処理時間が5秒未満の場合には、化成皮膜の耐食性は不充分となる傾向がある。また、処理時間が60分間を超えて長くなると、それに見合った耐食性の向上は見られないため、コストが上昇することになる。また、化成処理方法としては、浸漬法または噴霧法の両方法とも適用できる。
【0021】
【実施例】
実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。但し、本発明の範囲は、実施例により制限されるものではない。
【0022】
実施例1
被処理物としてA3000系アルミニウム合金板材の5×10cmの試験片を用いた。この試験片を清浄化→水洗→酸洗(脱スマット)→水洗→化成処理→水洗→純水洗→80℃乾燥の工程で表面処理した。なお、処理過程の詳細は次のとおりである。
【0023】
まず、清浄化工程には日本パーカライジング(株)製アルカリ脱脂剤(商品名「FC−4498SK])の2重量%水溶液を用い、60℃の温度で1分間浸漬処理した。その後、10重量%の硫酸水溶液中で常温、1分間で脱スマット処理した。
【0024】
その後の化成処理は、0.075M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、及び0.05M/L過硫酸ナトリウムの水溶液を用いて、60℃、30分間で行った。
【0025】
実施例2
化成処理液を、0.075M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、及び0.05M/L硝酸ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0026】
実施例3
化成処理液を、0.05M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、0.2M/L水酸化ナトリウムの及び0.05M/L過硫酸ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0027】
実施例4
化成処理液を、0.05M/L硝酸リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、及び0.1M/L水酸化ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0028】
実施例5
化成処理液を、0.05M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、0.1M/L水酸化ナトリウム、0.03M/L硝酸ナトリウム及び0.03M/L過硫酸ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0029】
実施例6
化成処理液を、0.05M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、0.1M/L水酸化ナトリウム、及び0.05M/L臭素酸ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0030】
実施例7
化成処理液を、0.05M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、0.1M/L水酸化ナトリウム、0.02M/Lモリブデン酸ナトリウム、及び0.05M/L過硫酸ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0031】
実施例8
化成処理液を、0.05M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム、0.05M/L硫酸リチウム、0.1M/L水酸化ナトリウム、0.005M/Lリン酸ナトリウム、及び0.05M/L過硫酸ナトリウムの水溶液に調整し、化成処理条件は60℃、30分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0032】
比較例1
表面洗浄工程は実施例1と同様に実施し、その後、化成処理を行った。化成処理液は、米国特許第5266356号の処理液組成範囲と同様、酸化剤イオンを含まない0.075M/L水酸化リチウム、0.05M/L炭酸リチウム及び0.05M/L硫酸リチウムの水溶液に調整した。化成処理条件は60℃、30分間とした。
【0033】
比較例2
表面洗浄工程は実施例1と同様に実施し、その後化成処理を行った。化成処理液は、特開昭48−18131のアルカリ性リチウムイオン系水溶液と同様、炭酸イオンを含まない、0.075M/L水酸化リチウム、及び0.05M/L硝酸ナトリウムの水溶液に調整した。、化成処理条件は60℃、30分間とした。
【0034】
比較例3
表面洗浄工程は実施例1と同様に実施し、その後化成処理を行った。化成処理液は、炭酸イオンと酸化剤イオンを含まない、0.075M/L水酸化リチウム、及び0.05M/L硫酸リチウムの水溶液に調整した。、化成処理条件は60℃、30分間とした。
【0035】
比較例4
表面洗浄工程は実施例1と同様に行い、その後、クロメート化成処理を行った。処理液は日本パーカライジング(株)製クロメート化成処理剤(商品名「AM−713」)を用い、3.6重量%の水溶液に調整した。処理条件は50℃、40秒間とした。
【0036】
比較例5
表面洗浄工程は実施例1と同様に行い、その後、ジルコニウム系化成処理を行った。処理液は日本パーカライジング(株)製化成処理剤(商品名「AL−N405」)を用い、2重量%の水溶液に調整した。処理条件は60℃、1分間とした。
【0037】
上記実施例と比較例で処理したA3003試験片について、耐食性は塩水噴霧試験(250時間)で評価を行った。化成皮膜の耐孔食性は電位走査法による分極測定における、孔食電位で評価を行った。分極測定についてはPP製ろう斗を接着剤で試片表面に付けた測定セルを用いた。測定面積は1.13cmである。分極測定は、測定液中に5分間浸漬し、自然電位が安定した後に行った。孔食電位はアノード分極曲線で電流密度が急に増加する電位あるいは電流値が10μAcm−2における電位とした。一般的に、孔食電位が高いほど化成皮膜の耐孔食性はより高いと考えられる。測定液は通気した300ppm塩素イオン含有水溶液を用いた。分極測定は室温で1mV/sの掃引速度で行った。また飽和カロメル電極(SCE)を基準電極とした。評価の結果を表1に示した。
【0038】
【表1】
Figure 0004080381
【0039】
表1に示すように、米国特許第5266356号の組成範囲の化成処理液(比較例1)で処理した試験板の孔食電位は−350mVと低いレベルであり、96時間塩水噴霧試験で全面孔腐食が発生したことから、従来の炭酸−リチウムイオン系処理技術では、耐食性が不充分であることが認められた。
【0040】
また、リチウムイオンと、酸化剤イオンを含むアルカリ性水溶液(比較例2、特開昭48−18131)、及びリチウムイオンのみを含むアルカリ水溶液(比較例3)で処理した試験板の孔食電位は約−550mVと低いレベルであり、48時間塩水噴霧試験で全面孔腐食が発生したことから、従来のアルカリ性リチウムイオン系処理技術では、耐食性が不充分であることが認められた。
【0041】
本発明の皮膜の耐食性に及ぼす酸化剤添加の効果は、実施例1と比較例1〜3の結果が示している。酸化剤を添加した実施例1で得られた皮膜は孔食電位が向上し、塩水噴霧試験で216時間でも腐食が発生せず、炭酸イオンとリチウムイオンを含むアルカリ水溶液における不動態電位での皮膜の生長の効果が認められた。
【0042】
酸化剤を添加した本発明の実施例1〜8においては、耐孔食性が従来のリチウム系化成皮膜である比較例1及びジルコニウム系皮膜である比較例5より大幅に向上した。本発明の実施例8の化成皮膜は、比較例4のクロメート皮膜と同じで、250時間塩水噴霧試験で腐食が発生せず、優れた耐食性が認められた。
【0043】
比較例4のクロメート処理は、孔食電位が低いにもかかわらず優れた耐食性を有するが、これはクロメート処理皮膜が自己修復機能を有するためであり、本発明の耐孔食性発現機構とは全く異なるものである。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明のように、リチウム−炭酸系混合液中に酸化剤を添加することによって不動態電位領域で化成皮膜を生長させる本発明の表面処理組成物は、アルミニウム合金表面に優れた耐食性皮膜を生成させることができる。さらに、本発明の表面処理組成物は、6価クロムイオンやフッ素イオンなどの環境に悪影響を及ぼす有害物を含有せず、耐食性化成皮膜層を、比較的低温で、かつ比較的短い処理時間で形成することが可能となる。

Claims (4)

  1. リチウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩、塩化塩、臭化塩及び臭素酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物から供給されるリチウムイオンと、炭酸及び重炭酸のリチウム、ナトリウム及びカリウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物から供給される炭酸イオンと、及び過硫酸、亜硝酸及び臭素酸のリチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化剤を必須成分として含むことを特徴とする耐食性、特に耐孔食性に優れたアルミニウム及びアルミニウム合金用ロムフリー表面処理組成物。
  2. 前記表面処理組成物が、0.001〜1.0M/Lの含有量のリチウムイオン、0.01〜1.0M/Lの含有量の炭酸イオン及び0.001〜1.0M/Lの含有量の酸化剤を含有する請求項1に記載の表面処理組成物。
  3. 前記表面処理組成物が、さらに腐食抑制剤として、モリブテン酸またはタングステン酸のアンモニウム、ナトリウム、及びカリウムの酸素酸化合物から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の表面処理組成物。
  4. 前記表面処理組成物が、さらに腐食抑制剤としてリン酸またはポリリン酸又はピロリン酸塩のアンモニウム、ナトリウム、及びカリウム化合物から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1から3のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
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