JP4079395B2 - 積層ゴムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板材料層とゴム材料層とが交互に積層して構成された積層ゴムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層ゴムは鋼板材料層とゴム材料層とが交互に積層して構成され、免震装置を構成する部材の一つとして用いられている。すなわち、積層ゴムは、上部構造体と下部構造体の間に配設され、下部構造体上において上部構造体の水平方向の変位を許容しつつ上部構造体の重量を支えるように機能している。
このような積層ゴムは、従来、次のように製造されている。
鋼板材料層は鋼板により構成され、鋼板の表面はショットブラスト処理を行い、脱脂洗浄を行った後、プライマー、加硫接着剤が塗布される。
ゴム材料層はゴムシートにより構成され、ゴムシートは未加硫のゴム材料が配合比率に従い練り混ぜられ、一定の厚さのシート状に圧延加工されることで形成される。
処理された鋼板とゴムシートは所定枚数が金型内に交互に積み重ねられる。
鋼板とゴムシートを金型内に積層した後、プレスにセットし、高温・高圧下で加硫成形を行う。
そして、加硫成形時、高温、高圧によって、鋼板とゴムシートは隙間なく加硫接着され、これにより鋼板材料層とゴム材料層とが交互に積層して構成された積層ゴムが製造される。製品としては、鋼板材料層が水平を保ち、また各ゴム材料層の厚さも所定の厚さになるよう設計されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、上記のような加硫成形時、高温・高圧下において、ゴムが流れ、鋼板とゴムシートは隙間なく加硫接着されるものの、ゴムの流れよっては、▲1▼鋼板を水平に保てず鋼板材料層が傾斜する可能性があり、また、▲2▼各ゴム材料層において所定の均等厚さにならない可能性があるという問題がある。
金型は上下部から加圧され、その圧力は上下部の鋼板とゴムシートを経由し中間部の鋼板とゴムシートに伝達される。温度の伝達もほぼ同じ経路である。その結果として上下部の鋼板とゴムシートは中間部の鋼板とゴムシートよりも、高圧、高温を受けやすくなる。そのため、上下部のゴム材料層は所定の厚さに均等に維持するのが特に難しい。
そして、上記のような欠陥を生じた積層ゴム装置であっても、通常の出荷試験ではわからない場合が多いが、限界性能、例えば圧縮せん断破壊性能を試験すると、正常製品の70%程度に落ちている場合がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、鋼板を水平に保つことができ、ゴム材料層を所定の均等厚さに成形でき、欠陥のできる可能性を減少させた積層ゴムの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明は、鋼板と未加硫のゴムシートを交互に重ね合わせ、これら重ね合わされた鋼板とゴムシートを高温・高圧下で加硫接着し、鋼板材料層とゴム材料層とが交互に積層して構成された積層ゴムを製造するに際して、前記ゴムシートに孔をその厚さ方向に貫通形成しておき、前記ゴム材料層が有すべき厚さと同じ寸法の厚さを有し前記孔に挿入可能で、加硫時に厚さが変わらない材料から、あるいは加硫時に厚さの変動の少ない材料から形成されたスペーサを設け、前記スペーサを孔に挿入して鋼板とゴムシートを重ね合わせるようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記孔とスペーサが、鋼板を水平に支持できるように互いに間隔をおいて複数設けられることを特徴とする。
また、本発明は、全てのゴムシートに前記孔が形成され、スペーサが挿入されることを特徴とする。
また、本発明は、前記加硫時に厚さが変わらない材料、あるいは加硫時に厚さの変動の少ない材料は、既に加硫された加硫ゴムであることを特徴とする。
また、本発明は、前記ゴムが前記ゴムシートを構成するゴムと同一の材料であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ゴムシート1枚について挿入されるスペーサの総断面積は、前記ゴムシートの断面積の5%以下であることを特徴とする。
【0005】
本発明では、加硫接着時、加硫時に厚さが変わらない、あるいは、厚さに変動が少ないスペーサにより鋼板が支持されるので、鋼板が水平に安定した状態で支持され、また、隣接する上下の鋼板間はスペーサの厚さと同一の寸法となり、ゴム材料層が均等な厚さに形成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施の形態の方法により製造された積層ゴムの断面正面図、図2(A)はゴム板の平面図、(B)はゴム板の断面図を示す。
積層ゴム12はゴム材料層14と鋼板材料層16とが交互に積層して構成され、上部には鋼製の上取り付けフランジ18Aが取着され、下部には鋼製の下取り付けフランジ18Bが取着されている。
このような積層ゴム12を製造するに際して、実施の形態で用いる鋼板22、ゴムシート24、スペーサ28から順に説明していく。
前記鋼板材料層16は複数の鋼板22が用いられて構成され、鋼板22は円板、もしくは中心に円形の孔2202を有する環板状に形成されている。
【0007】
前記ゴム材料層14は、図2に示すゴムシート24を複数用いることで構成されている。
前記ゴムシート24は加硫されていない未加硫のゴムからなり、円板、もしくは中心に円形の孔2402を有する環板状に形成されている。なお、鋼板22が円板の場合にはゴムシート24も円板となり、鋼板22が環板状の場合にはゴムシート24も環板状となる。
前記ゴムシート24の厚さは、製品である積層ゴム12のゴム材料層14の厚さ寄りも大きな寸法で形成されている。また、ゴムシート24の外径は、製品である積層ゴム12のゴム材料層14の外径よりも小さな寸法で形成されている。
そして、ゴムシート24の中間部で、ゴムシート24の中心を中心とする同一円周上に、等間隔をおいて4つのスペーサ挿入孔26が形成されている。各スペーサ挿入孔26は円形で、ゴムシート24の厚み方向に貫通形成されている。
【0008】
前記スペーサ28は各スペーサ挿入孔26に挿入される。
前記スペーサ28は前記スペーサ挿入孔26の挿入される外径で形成され、スペーサ28の厚さは、製品である積層ゴム12のゴム材料層14の厚さとほぼ同一の厚さで形成されている。
前記スペーサ28は、加硫時に厚さが変わらない材料、あるいは、加硫時に厚さの変動が少ない材料から形成されている。このような材料として、例えば、既に加硫された加硫ゴムや、鉄鋼、合成樹脂などを用いることができる。この場合、スペーサ28として加硫ゴムでゴムシート24を構成するゴムと同一の材料を用いると、特性が安定する点で有利となる。
【0009】
次に、このような鋼板22、ゴムシート24、スペーサ28を用いて積層ゴム12を製造する手順について説明する。
まず、金型30内に鋼棒32をセットし、下取り付けフランジ18Bを置いて下取り付けフランジ18Bの孔18Cに鋼棒32を挿通させ、その上に、中心孔2202、2402に鋼棒32が挿通されるようにゴムシート24と鋼板22を交互に載せ、それらの上に上取り付けフランジ18Aを載せ、上取り付けフランジ18Aの孔18Dに鋼棒32を挿通させる。
この時、下取り付けフランジ18Bの上面、鋼板22の両面、上取り付けフランジ18Aの下面は、ショットブラスト処理を行い、脱脂洗浄を行った後、プライマー、加硫接着剤が塗布される。
また、各ゴムシート24を載せる際に、各ゴムシート24のスペーサ挿入孔26にスペーサ28が挿入される。
【0010】
つぎに、高温、高圧をかけて加硫成形を行う。
これにより熱は、金型30から鋼板22とゴムシート24の外部に伝達されるのみではなく鋼棒32を介して鋼板22とゴムシート24の内部にも伝達され、高温、高圧によってゴムが流れ、鋼板22とゴムシート24は隙間なく加硫接着され、これによりゴム材料層14と鋼板材料層16とが交互に積層して構成された積層ゴム12が製造される。
そして、加硫接着時、従来ではゴムの流れよって鋼板22が水平状態を保ちにくくなるところ、本実施の形態では、加硫時に厚さが変わらない、あるいは、加硫時に厚さの変動が少ない4つのスペーサ28により鋼板22が支持されるので、鋼板22が水平に安定した状態で支持される。
また、加硫接着時、従来ではゴムの流れよってゴム材料層14が均等な厚さになりにくくなるところ、本実施の形態では、隣接する上下の鋼板22間に、加硫時に厚さが変わらない、あるいは、加硫時に厚さの変動が少ない4つのスペーサ28が配設されているので、隣接する上下の鋼板22間はスペーサ28の厚さと同一の寸法となり、したがって、各ゴム材料層14は均等な厚さに形成される。したがって、本実施の形態によれば、鋼板22を水平に保つことができ、ゴム材料層14を所定の均等厚さに成形でき、欠陥のできる可能性を簡単にかつ確実に減少させることが可能となる。
【0011】
なお、実施の形態では、スペーサ挿入孔26とスペーサ28が円形の場合について説明したが、これらの形状は任意である。
また、スペーサ挿入孔26とスペーサ28を1つのゴムシート24に4つずつ形成した場合について説明したが、スペーサ挿入孔26とスペーサ28の数は任意であり、加硫時に鋼板22を水平に安定した状態で支持できればよい。なお、一般に、スペーサ28が3つ以上であると、鋼板22を水平に支持した状態を安定させる上でより有利となる。
また、実施の形態では、全てのゴムシート24にスペーサ28を挿入した場合について説明したが、全てのゴムシート24に挿入しなくともよく、スペーサ28を挿入するゴムシート24を増やせば増やすほど、欠陥のない積層ゴム12を製造する上で有利となる。
【0012】
なお、積層ゴム12の直径が300mm〜500mm場合、性能を安定させる点からスペーサ28の直径は5mm〜10mmが好ましく、スペーサ28の直径が20mm〜40mmがより好ましい。
また、ゴムシート24の1枚当たりについて、スペーサ28の総断面積は、性能を安定させる点から、ゴムシート24の断面積の5%以下が好ましく、1%〜2%であるとより好ましい。
なお、本実施の形態では、鋼棒32を抜き取った後の積層ゴム12の中心孔に、運動エネルギーを減衰する減衰部材として円柱状の鉛を挿入するが、このような減衰部材を備えない積層ゴムにも本発明は無論適用される。
【0013】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明は、鋼板と未加硫のゴムシートを交互に重ね合わせ、これら重ね合わされた鋼板とゴムシートを高温・高圧下で加硫接着し、鋼板材料層とゴム材料層とが交互に積層して構成された積層ゴムを製造するに際して、前記ゴムシートに孔をその厚さ方向に貫通形成しておき、前記ゴム材料層が有すべき厚さと同じ寸法の厚さを有し前記孔に挿入可能で、加硫時に厚さが変わらない材料から、あるいは加硫時に厚さの変動の少ない材料から形成されたスペーサを設け、前記スペーサを孔に挿入して鋼板とゴムシートを重ね合わせるようにした。
そのため、本発明の積層ゴムの製造方法によれば、鋼板を水平に保つことができ、ゴム材料層を所定の均等厚さに成形でき、欠陥のできる可能性を簡単にかつ確実に減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の方法により製造された積層ゴムの断面正面図である。
【図2】 (A)はゴム板の平面図、(B)はゴム板の断面図である。
【符号の説明】
12 積層ゴム
14 ゴム材料層
16 鋼板材料層
22 鋼板
24 ゴムシート
28 スペーサ
Claims (6)
- 鋼板と未加硫のゴムシートを交互に重ね合わせ、
これら重ね合わされた鋼板とゴムシートを高温・高圧下で加硫接着し、
鋼板材料層とゴム材料層とが交互に積層して構成された積層ゴムを製造するに際して、
前記ゴムシートに孔をその厚さ方向に貫通形成しておき、
前記ゴム材料層が有すべき厚さと同じ寸法の厚さを有し前記孔に挿入可能で、加硫時に厚さが変わらない材料から、あるいは加硫時に厚さの変動の少ない材料から形成されたスペーサを設け、
前記スペーサを孔に挿入して鋼板とゴムシートを重ね合わせるようにした、
ことを特徴とする積層ゴムの製造方法。 - 前記孔とスペーサは、鋼板を水平に支持できるように互いに間隔をおいて複数設けられることを特徴とする請求項1記載の積層ゴムの製造方法。
- 全てのゴムシートに前記孔が形成され、スペーサが挿入されることを特徴とする請求項1または2記載の積層ゴムの製造方法。
- 前記加硫時に厚さが変わらない材料、あるいは加硫時に厚さの変動の少ない材料は、既に加硫された加硫ゴムであることを特徴とする請求項1、2または3記載の積層ゴムの製造方法。
- 前記ゴムは前記ゴムシートを構成するゴムと同一の材料であることを特徴とする請求項4記載の積層ゴムの製造方法。
- 前記ゴムシート1枚について挿入されるスペーサの総断面積は、前記ゴムシートの断面積の5%以下であることを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の積層ゴムの製造方法。
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