JP4078580B2 - 透明導電性フィルムの製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックフィルム上に透明導電性薄膜を積層及び成膜するロールコーター式連続スパッタリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続式スパッタリング装置を用いてウェブに薄膜を形成させる際、ウェブから発生する水分により金属酸化物薄膜の純度が低下するという問題が知られている。これは、水分中の酸素が金属ターゲットの金属と反応することにより金属酸化物薄膜の組成が変化するためである。
【0003】
また、スパッタリング装置はロールコーター式連続スパッタリング装置を用いて生産されることが多い。しかしながら、従来のロールコーター式連続スパッタリング装置は、連続とはいうものの、ロール状のフィルム1本を連続でスパッタリングする場合が多い。すなわち、1本のロールのスパッタリングが完了すると真空チャンバーを開けてフィルムロールを交換し、再度、真空引きを行ってから、再びスパッタリングを行うというものであり、バッチ式に近いものである。
【0004】
一方、真空や加熱などによりウェブから水分が出てくると、成膜時にスパッタリングにより形成させる金属酸化物薄膜の組成が変化するという問題点がある。そこで、ウェブから出てくる水分の影響を少なくするために、ロールコーター式連続スパッタリング装置において、ロール室と成膜室を遮蔽板で仕切ったり、ロール室で予備加熱を行うことが従来行なわれてきた。しかしながら、ロール室から成膜室へは冷却ロールに接触させながらウェブを通過させる必要があるため、ロール室と成膜室の間を完全に仕切ることはできない。そのため、ロール室で発生した水分が成膜室に混入し、スパッタリングにより形成させた金属酸化物薄膜の組成が変化するという問題点を完全に解消することはできなかった。
【0005】
また、従来のロールコーター式連続スパッタリング装置では、フィルムロールを交換する度に真空チャンバーを大気開放にするため、チャンバー内壁に水分が付着して、成膜室内の真空度を常に高い状態に保つことが出来ないという問題もあった。
【0006】
前記の問題を改善するために、特開2000−017437号公報では、成膜室内の水分分圧を低く保つために、成膜室内に水分排気能力の高いクライオ・コイル等水分用ポンプ、例えば、ポリコールド(商標)のような冷却部に水分を吸着させるポンプを用いた装置も提案されている。
【0007】
しかしながら、成膜室内にクライオ・コイルを設ける場合、ウェブ近くにはターゲットを取り付けるカソード・ボックスがあり、クライオ・パネルをウェブから離れた位置に設置させる必要がある。そのため、ロール室から成膜室に混入する水分の影響で膜純度の低下や、ITO膜をスパッタリングした場合、ペン入力耐久性の低下など膜品質に悪影響が起こることがあった。
【0008】
また、ロール室で予備加熱を行い、かつ、その近くにクライオ・コイルを設けるという方法も提案されているが、予備加熱で発生する大量の水分をロール室内で完全に吸着してしまうことが難しいため、ウェブから発生する水分の影響を完全に無くすことは出来なかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、成膜室内の水分分圧の上昇が少なく、ペン入力耐久性に優れ、かつ、生産性に優れた透明導電性フィルムを成膜するための、ロールコーター式連続スパッタリング装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、請求項記載の発明により達成される。すなわち、巻出しフィルム室、脱ガス室、バッファ室、成膜室、巻取りフィルム室から構成されたスパッタリング装置内を走行するウェブを脱ガス室内に設置したヒーターで加熱し、脱ガス室に設けたクライオ・コイルなどの真空排気装置により発生した水分を排気、吸着させる。さらに、脱ガス室と成膜室の間に設けたバッファ室にもクライオ・コイルなどの真空排気装置を設け、脱ガス室で吸着され切れなかった水分を排気、吸着させる。
【0011】
バッファ室と成膜室は冷却ロールと遮蔽板で遮蔽され、かつ、冷却ロール周上の隔離点での接線よりも冷却ロール側の領域にスパッタリングターゲットを設け、かつ、冷却ロール周上の隔離点での接線よりも冷却ロール側の領域外に真空排気ポンプを設けることで、仮にバッファ室から水分がまわり込んで来たとしても、成膜室の真空排気装置で排気、吸着する構造とする。
【0012】
また、フィルム・ロール交換時にチャンバー内壁に水分が付着することを防止するために、巻出しフィルム室と脱ガス室及び、巻取りフィルム室と後処理室もしくは、バッファ室間にウェブをゴム・パッキンで挿み込む機構を設け、フィルム・ロール交換を、成膜室を大気開放にせずに行うことでチャンバー内壁への水分付着を防止、かつ、こうすることで、フィルム・ロール交換後の真空引き時間も短縮出来るので、生産性に優れた装置にすることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
図1は、本発明の実施例におけるロールコーター式連続スパッタ装置を示す概略図である。真空槽1、2、3、4、5、6から成るロールコーター式スパッタ装置の巻き出しロール7にセットされたウェブ16は巻出しロール室1を通り、バッファ室3を通過してバッファ室と成膜室を仕切る仕切り12の隙間を通って冷却ロール9上を通過し、再び、バッファ室を経由して後処理室を通り、巻取りフィルム室で巻き取りロール8で巻き取られる。各真空槽内の真空度は真空排気装置10及び、クライオコイル11により真空を維持する。ターゲットが取り付けてあるカソード・ボックス13は冷却ロール9の半径方向側面に配置され、アルゴンガス雰囲気中にて高電圧をターゲットに加えることでターゲット材料の一部がウェブ上にスパッタリングされる。
【0014】
また、巻き出しロール7から送り出された高ウェブ16は脱ガス室2に設けられた加熱装置14により加熱され、ポリコールド(商標)を使用したクライオ・パネル11によりウェブ16から出て来た水分を吸着させる。
【0015】
脱ガス室2と成膜室4の間にバッファ室3を設け、脱ガス室2から漏れてきた水分を排気、吸着させる。
【0016】
成膜室4とバッファ室3は冷却ロール9と遮蔽板12で隔離させ、ウェブが通る隙間だけが開いている。また、ターゲットを冷却ロール周上の隔離点での接線よりも冷却ロール側の領域に設置し、その外側に真空排気装置を設けることで、仮に水分が成膜室に回り込んできたとしても、水分を排気、吸着しやすくしている。
【0017】
巻出しフィルム室1と脱ガス室2、巻取りフィルム室6と後処理室5間にフィルムを挟み込む装置15を設けることでフィルム・ロール交換時にも巻出しフィルム室1と巻取りフィルム室6のみを大気開放にするだけで、成膜室の圧力を10Pa以下に保持した状態でロール交換が可能である。
【0018】
【作用】
本発明によれば、ウェブ中の水分を強制的に蒸発させ、真空排気装置により排気/吸着させること、また、バッファ室を設けたことや水分がターゲット周りに行き難くしたことで水分率の低いウェブをスパッタ可能となる。また、スパッタ膜の純度を低下させることが無く、ペン入力耐久性に優れた透明導電性フィルムが得られる。さらに、フィルム・ロール交換時に成膜室を大気開放にする必要が無いために、チャンバー壁面は水分が付きにくく、これもペン入力耐久性に優れた透明導電性フィルムを得ることに寄与し、かつ、真空引き時間が短縮されるので、生産性も向上する。
【0019】
【実施例】
以下に実施例により本願発明を説明するが、本願発明はこれらにより限定されるものではない。
【0020】
スパッタリングを施すウェブ16は、片面に高分子被覆層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製、A4100、幅:1000m、厚み:188μm)を用い、高分子被覆層側表面にスパッタリングを行なった。
【0021】
ターゲットはインジウム−スズ複合酸化物(酸化インジウム/酸化スズ=90重量%/10重量%、三井金属鉱業(株)製)を用い、DCマグネトロン・スパッタ法により1個のターゲットでスパッタリングを行った。ラインスピードは2m/分、加熱装置としては赤外線ヒーターを用いてフィルム表面温度を150℃に加熱した。
【0022】
本発明のスパッタ装置と従来のスパッタ装置で得られた透明導電性フィルムに関し、ペン入力耐久試験(5Nの荷重下で20万回)後の接触抵抗値を表1に示した。本発明のスパッタ装置は従来のスパッタ装置と比べ、ペン入力耐久試験後の接触抵抗値は低く、ペン入力耐久性に優れていることが分かる。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のロールコーター式連続スパッタリング装置は、ウェブ(スパッタ基板)が成膜室に入る前に基板を加熱する装置、および蒸発した水分を排気、吸着するクライオ・コイルなどの真空排気装置を配設しているため、成膜室内の水分分圧の上昇を抑制でき、その結果スパッタ膜の純度の低下を防止することが出来て、ペン入力耐久性に優れた透明導電性フィルムが得られる。さらに、フィルム・ロール交換ことに成膜室を大気開放にする必要が無いために、成膜室の壁面は水分が付きにくく、これもペン入力耐久性に優れた透明導電性フィルムを得ることが出来て、かつ、真空引き時間が短縮されるので、生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるロールコーター式スパッタ装置全体の構成図である。
【符号の説明】
1 巻出しフィルム室
2 脱ガス室
3 バッファ室
4 成膜室
5 後処理室
6 巻取りフィルム室
7 巻出しロール
8 巻取りロール
9 冷却ロール
10 真空排気装置
11 クライオ・コイル(ガス吸着型ポンプ)
12 遮蔽板
13 カソード・ボックス
14 ヒーター
15 ウェブを挟み込む装置
16 ウェブ
Claims (3)
- 長尺プラスチックフィルム上に透明導電性薄膜をインジウム−スズ複合酸化物のロールコーター式連続スパッタリング法にて連続的に成膜するペン入力耐久試験(5Nの荷重下で20万回)後の接触抵抗値が10KΩ以下の透明導電性フィルムの製造装置であって、該製造装置が、巻出しフィルム室、脱ガス室、成膜室、後処理室もしくはバッファ室、巻取りフィルム室から構成されており、前記脱ガス室は、その室内に赤外線ヒーターが設けられ、該赤外線ヒーターはライン速度10m/分でフィルム表面温度を200℃まで昇温することが可能な出力を有し、成膜室と隣室との隔離は、冷却ロールと遮蔽板でなされ、かつ、冷却ロール周上の隔離点での接線よりも冷却ロール側の領域外にガス吸着型ポンプを具備している真空排気装置が設けられ、かつ、フィルム・ロール交換時にチャンバー内壁に水分が付着することを防止するために巻出しフィルム室および/または巻取りフィルム室の圧力が大気圧であっても成膜室の圧力を10Pa以下に保持するための巻出しフィルム室と脱ガス室間、及び巻取りフィルム室と後処理室もしくはバッファ室間にウェブをゴム・パッキンで挿み込む機構が設けられていることを特徴とするペン入力用透明導電性フィルムの製造装置。
- 前記脱ガス室と成膜室との間に、バッファ室が設けられていることを特徴とする請求項1記載のペン入力用透明導電性フィルムの製造装置。
- 冷却ロール周上の隔離点での接線よりも冷却ロール側の領域にスパッタリングターゲットが設けられていることを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載のペン入力用透明導電性フィルムの製造装置。
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