JP4077106B2 - 吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置 - Google Patents

吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吊橋のハンガーロープに当該ハンガーロープの振動を抑制するための制振用ロープを螺旋状に巻付ける装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、比較的大規模の吊橋は、複数の主塔の間に主ケーブルを張り渡し、この主ケーブルに複数本のハンガーロープを介して橋桁を吊下げることにより、構成されている。すなわち、この吊橋における各ハンガーロープは、上下方向に張られた状態で橋桁を吊下げ支持する吊り材としての役割を果たしている。
【0003】
さらに、この種の吊橋では、互いに隣接するハンガーロープ同士をゴム製のダンパーで連結することにより、各ハンガーロープの横方向の振動を抑制するといったことも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、前記吊橋のハンガーロープに対してこれと直交する方向に強い風が吹くことにより、各ハンガーロープにきわめて振幅の大きい振動が瞬間的に発生することが判明した。これは、ウェーク・インデュースト・フラッター現象によるものであり、前記ダンパーをもってしても十分な抑制をすることができず、そればかりか、振幅が過大でダンパーの破損を招くおそれもある。
【0005】
かかる不都合を回避する手段として、各ハンガーロープの周囲にこれよりも小径の制振用ロープを巻付けることにより、前記強風に起因するハンガーロープの振動を抑制することが考えられる。しかし、このような制振用ロープを既設のハンガーロープに対して空中で手作業にて巻き付けていくといったことは極めて困難であり、かかる作業を膨大な本数のハンガーロープに対して1本ずつ行っていくことは事実上不可能に等しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、既に吊橋に設けられた状態にある各ハンガーロープに対して制振用ロープを自動的にかつ効率よく巻付けることができる吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、吊橋のハンガーロープに制振用ロープを螺旋状に巻付けるための装置であって、前記ハンガーロープの周囲に配されるフレームと、このフレームに周方向に並べて設けられ、前記ハンガーロープの外周面上を転動する複数のローラと、前記フレームに設けられ、前記制振用ロープを繰り出すロープ供給手段とを備えるとともに、前記各ローラの転がり方向を前記ハンガーロープの中心軸に対して傾斜させることにより、前記フレームの降下に連動して当該フレーム及びロープ供給手段が前記ハンガーロープの軸回りに旋回するように構成したものである。
【0008】
この装置において、前記各ローラがハンガーロープ外周面に接する状態で装置全体をハンガーロープ軸方向に沿って降下させると、この降下に伴って当該ハンガーロープ軸方向から傾斜した方向にローラがハンガーロープ外周面上を転動し、その結果、フレーム及びロープ供給手段は一体に降下しながらハンガーロープの周囲を旋回する。このような降下動作と旋回動作とが同時に進行することにより、前記ロープ供給手段から繰り出されるロープはハンガーロープの周囲に螺旋状に巻付けられていくことになる。
【0009】
従って、この装置では、フレームを旋回させるのに特別な動力を必要とせず、フレームをハンガーロープに沿って下降させるだけで自動的に制振用ロープの巻付をすることができる。
【0010】
ここで、前記各ローラの具体的な個数や配置は特に問わないが、3個以上のローラを周方向に等間隔で配列すれば、よりバランスのとれた安定した状態でハンガーロープの周囲に装置をセットすることができる。
【0011】
前記ローラは、フレームに単純に取付けるようにしてもよいが、このローラを前記フレームに対してハンガーロープの径方向に変位可能に取付けるとともに、当該ローラを前記ハンガーロープの外周面側に付勢する付勢手段を備えるようにすれば、ハンガーロープの直径誤差やフレームの微小な弾性変形が生じている場合にも、前記付勢手段の付勢力によって確実にローラをハンガーロープ外周面上に圧接させ、当該外周面上を転動させることができる。
【0012】
前記ロープ供給手段としては、巻回された制振用ロープを順次繰り出すロープリールと、このロープリールから繰り出される制振用ロープをハンガーロープ外周面上の適当な巻付け位置へ案内するガイドローラとを備えたものが、好適である。
【0013】
さらに、繰り出される制振用ロープに適当な張力を与える張力付与手段を備えることにより、制振用ロープを適当に張った状態でハンガーロープの周囲に巻き付けていくことが可能になる。
【0014】
本発明では、前記フレームの具体的な形状や構造を問わず、ローラ及びロープ供給手段を支持した状態でハンガーロープの周囲を旋回できるものであればよい。さらに、前記フレームを、前記ハンガーロープが侵入可能な開口部を形成する開状態と前記ハンガーロープの周囲に閉曲線を形成する閉状態とに開閉可能となるように構成すれば、このフレームを開いた状態でハンガーロープの周囲にセットし、その後にフレームを閉じることにより、既設のハンガーロープに対しても簡単に装置をセットすることができる。
【0015】
前記フレームは、その自重に任せて降下させることも可能であるが、その降下速度を制御するには、ウインチ等で吊下げながら降下させる必要がある。この場合、前記フレームを旋回可能に保持した状態で吊下げられる保持部材を備えることにより、当該保持部材を吊下げるだけの簡単な構成でフレームを旋回させながら降下させることが可能になる。
【0016】
さらに、互いに隣接するハンガーロープの周囲にそれぞれ設置される複数のフレームを同時に保持した状態で前記ハンガーロープの間の空間に吊下げられるように前記保持部材を構成すれば、保持部材を吊下げるための吊下げロープ等をハンガーロープ同士の間に配する合理的なレイアウトで、2つのフレームの降下速度を同時に制御することが可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0018】
図1は、既設のハンガーロープ10に対し、本発明にかかるロープ巻付装置を用いて制振用ロープ12を螺旋状に巻付けている様子を示したものである。
【0019】
前記フレーム14は、図2に示すような上下一対の環状枠16と、両環状枠16を上下方向に連結する複数本のタイロッド18とからなっている。
【0020】
図3及び図4に示すように、各タイロッド18は周方向に所定間隔(図例では60°間隔)を置いて配列されている。そして、各環状枠16には、複数(図例では3つ)のローラ27をハンガーロープ10の外周面に押付けるためのローラ押付け装置20が等間隔(図例では120°間隔)で設けられている。
【0021】
各ローラ押付け装置20の構造を図7(a)(b)に示す。環状枠16は、上下一対の板材16a,16bで構成されており、これら板材16a,16bの間に支持ブロック21が挟み込まれ、ボルト19で固定されている。支持ブロック21には、これを径方向に貫通するローラ支軸22が当該径方向にスライド可能に支持されている。このローラ支軸22と支持ブロック21との相対回転はキー23によって規制されている。ローラ支軸22の径方向外側端部(図7(a)(b)では右側端部)には雄ねじ22aが刻まれ、この雄ねじ22aに螺合されたナット24によってローラ支軸22の径方向内側への抜け止めがなされている。
【0022】
ローラ支軸22の径方向内側端部には、二股状のローラ支持部25が形成され、このローラ支持部25に水平方向のピン26の両端が固定されるとともに、当該ピン26の回りに回転可能に前記ローラ27が支持されている。前記ローラ支持部25と支持ブロック21との間には板ばね(付勢手段)28が介在し、この板ばね28によってローラ27が径方向内側(すなわちハンガーロープ外周面側)に付勢されている。すなわち、ローラ27は板ばね28の弾発力によってハンガーロープ10の外周面に押付けられており、この押付け状態でローラ27がハンガーロープ10の外周面上を転動するようになっている。
【0023】
さらに、この装置の特徴として、図8に示すように、ハンガーロープ10の外周面上におけるローラ27の転がり方向が、当該ハンガーロープ10の中心軸Xに対して所定角度αだけ傾斜した方向となるように、ローラ27及びローラ支持部25が傾いた状態で配置されている。この所定角度αの具体的な設定については後述する。
【0024】
なお、図8以外の図面においては、便宜上、ローラ27の転がり方向が前記中心軸Xと平行な方向(すなわち垂直方向)となっている状態で当該ローラ27を描いている。
【0025】
図4の実線及び二点鎖線に示すように、各環状枠16は、開閉可能に構成されている。詳しくは、各環状枠16は、中心角が180°よりも大きい円弧状の本体部16Aと、中心角が180°よりも小さい円弧状の回動部16Bとに分割されており、回動部16Bの一端が本体部16Aの一端にボルト30によって垂直軸回りに回動可能に連結される一方、回動部16Bの他端が本体部16Bの他端にボルト32によって切離し可能に締結されるようになっている。
【0026】
詳しくは、前記本体部16Aの他端及び回動部16Bの他端にそれぞれ、ボルト挿通孔をもつブロック34A,34Bが固定されるとともに、これらブロック34A,34Bのボルト挿通孔にボルト32を挿通した状態で当該ボルト32にナット36を螺着することにより、図4実線に示す閉位置に環状枠16が締め付けられるようになっている。一方、前記ブロック34A,34Bからボルト32を開いて図4二点鎖線に示す開位置に回動部16Bを回動させることにより、この回動部16Bの回動端部と本体部16Aの端部との隙間(開口部)からハンガーロープ10が侵入できる(すなわちハンガーロープ10の外側に環状枠16をセットできる)ようになっている。
【0027】
なお、図4において38は、前記ナット36による締付力を十分に確保するためにボルト32の周囲に配された圧縮コイルばねである。
【0028】
前記フレーム14には、左右一対のロープ供給手段40が取付けられている。この実施の形態では、各ロープ供給手段40は、下から順に、ロープリール42と、前後一対のガイドローラ44と、テンションローラ(張力付与手段)46と、ガイドローラ48とを備えている。
【0029】
図6に示すように、前記ロープリール42は、水平方向の軸50回りに回転可能に取付けられており、当該軸50はその両端がブラケット52を介して2本のタイロッド18に支持されている。各ロープリール42には、前記制振用ロープ12が多数回巻かれており、ロープリール42の回転を伴いながら制振用ロープ12が順次上側へ繰り出されるようになっている。
【0030】
図2及び図5に示すように、前記ガイドローラ44及びテンションローラ46は、共通の取付板54に固定されており、この取付板54は前記ロープリール42と同様に2本のタイロッド18に取付けられている。
【0031】
ガイドローラ44は、前後に相互隣接するように配設され、これらガイドローラ44の間に制振用ロープ12が通されている。
【0032】
テンションローラ46は、トルク発生装置56を介して前記取付板54に取付けられている。トルク発生装置56は、前記テンションローラ46の回転軸に連結され、当該回転軸に適当な回転抵抗(抵抗トルク)を与えるものであり、このトルク発生装置56としては、前記回転軸に摩擦部材を圧接させて摩擦力により回転抵抗を与えるもの、流体を利用したもの等、公知のものが種々適用可能である。
【0033】
従って、前記テンションローラ46に前記制振用ロープ12を巻付けておくことにより、当該テンションローラ46の回転抵抗の分だけ制振用ロープ12に張力が与えられるようになっている。
【0034】
ガイドローラ48は、テンションローラ56から引き出された制振用ロープ12をハンガーロープ10の外周面上の所定位置へ案内するものであり、図3に示すように、一対の支持板57の間に回転可能に支持されている。これらの支持板57は、ブラケット58を介して上側環状枠16の上面に取付けられている。
【0035】
図1に示すように、この実施の形態では、左右一対のフレーム14が、互いに隣接するハンガーロープ10に対して同時に配置され、同時に使用されるようになっている。そして、これらのフレーム14が、共通の保持部材70によって同時にかつ旋回可能に保持されるようになっている。その構造の詳細を図9及び図10を併せて参照しながら説明する。
【0036】
前記フレーム14は、図9に示すような被保持部60を備えている。この被保持部60は、上側の板材61A,61Bと下側の板材62A,62Bとが縦方向の内壁64A,64Bによって上下に連結されたものであり、前記下側環状枠16ののさらに下側に連結されている。
【0037】
板材61A,62A及び内壁64Aは、前記環状枠16の本体部16Aに相当する中心角大の円弧状をなし、板材61B,62B及び内壁64Bは、前記環状枠16の回動部16Bに相当する中心角小の円弧状をなしている。内壁64A,64Bの外周面は、板材61A,62A,61B,62Bの外周面よりも径方向内側に凹んだ位置にあり、従って、上下板材と内壁とでコ字状の断面形状をもつ外周部が形成されている。
【0038】
各上側板材61A,62Aからは上方にロッド66が延びており、上側板材61A側のロッド66の上端が前記下側環状枠16における本体部16Aの下面に、下側板材61B側のロッド66の上端が回動部16Bの下面に、それぞれ連結されている。従って、板材61B,62B及び内壁64Bは、板材61A,62A及び内壁64Aと切離された状態で、前記下側環状枠16の回動部16Bと一体に回動するようになっている。
【0039】
なお、図2において68は、被保持部60の下面に取付けられた、運搬用のキャスタである。
【0040】
保持部材70は、左右に延びる本体シリンダ72を備え、この本体シリンダ72の上面には、図略のウインチ等から垂下されたウインチロープ73が連結される吊下げ部74が形成されている。
【0041】
この本体シリンダ72の左右には、その軸方向に伸縮可能な伸縮ロッド76が設けられている。これらの伸縮ロッド76の上端には、本体シリンダ72内を摺動するピストン部78が固定される一方、本体シリンダ72の左右両端には、伸縮ロッド76の外周面と摺接する端壁77が設けられている。そして、両ピストン部78の間に内側圧縮コイルばね80Aが装填されるとともに、各ピストン部78と端壁77との間に外側圧縮コイルばね80Bが装填されている。
【0042】
各伸縮ロッド76の外側端部には、環状保持体82が設けられている。これらの環状保持体82も、前記環状枠16と同様、図10の実線及び二点鎖線に示すように開閉可能に構成されている。すなわち、各環状保持体82は、中心角が180°よりも大きい本体部82Aと、中心角が180°よりも小さい回動部82Bとに分割され、本体部82Aの一端と回動部82Bの一端とがピン84を介して垂直軸回りに回動可能に連結されるとともに、本体部82Aの他端と回動部82Bの他端とがピン86の抜き差しによって切離し可能に連結されるようになっている。
【0043】
前記伸縮ロッド76の外側端部、及び、環状保持体82の適所には、当該環状保持体82から内側に突出する支持軸87が配設され、各支持軸87の周囲にローラ88が回転可能に取付けられている。そして、環状保持体82を閉じた状態で各ローラ88が前記被保持部60におけるコ字状断面の外周部に外側から嵌合されることにより、当該外周部内でローラ88が転動できる(すなわち、当該被保持部60と伸縮ロッド76とが回転可能に結合される)ようになっている。
【0044】
次に、この装置の使用要領及びその作用を説明する。
【0045】
▲1▼ 左右一対のフレーム14をハンガーロープ10の下端部周囲に装着する。詳しくは、上下環状枠16を開いた状態でその内側にハンガーロープ10を侵入させ、その後に上下環状枠16を閉じて各ローラ27をハンガーロープ外周面に密着させる。
【0046】
▲2▼ 各フレーム14の被保持部60に保持部材70の各環状保持体82を連結する。詳しくは、環状保持体82を開いた状態でその内側に被保持部60を侵入させ、その後に環状保持体82を閉じることにより、各ローラ88を被保持部60の外周部に嵌入する。
【0047】
▲3▼ 予めハンガーロープ10の上端近傍に設置しているウインチからウインチロープ73を降ろし、その下端を前記保持部材70における本体シリンダ72の吊下げ部74に連結する。
【0048】
▲4▼ ウインチを巻き上げることにより、保持部材70及び両フレーム14を一体にハンガーロープ10の上端近傍位置まで引き上げる。
【0049】
▲5▼ 各ロープ供給手段40から制振用ロープ12を引き出し、その上端をハンガーロープ上端に設けられたソケットにつなぐ。
【0050】
▲6▼ ウインチを所定速度で巻下げ方向に作動させ、両フレーム14を保持部材70とともにその自重によって下降させる。このとき、板ばね28の弾発力でハンガーロープ10の外周面に圧接している各ローラ27には、鉛直方向上向きの滑り摩擦力と、ピン26回りに発生する転がり摩擦力とが発生するが、後者の転がり摩擦力に比べて前者の滑り摩擦力が十分大きいため、各ローラ27はほとんど滑ることなくハンガーロープ外周面上を転動する。しかも、その転動方向は図8に示すようにハンガーロープ10の中心軸Xに対して所定角度αだけ傾斜しているため、両フレーム14及びこれに取付けられているロープ供給手段40はその下降に伴って当該下降速度に比例した速度でハンガーロープ10の周囲を旋回する。このような下降と旋回とが同時に行われることにより、ロープリール42から引き出される制振用ロープ12が、テンションローラ46の回転抵抗に対応した張力で、ハンガーロープ10の周囲に順次螺旋状に巻付けられていく。
【0051】
特にこの実施の形態では、各ローラ27はフレームに対して径方向に微小変位可能であるため、ハンガーロープ10の直径誤差やフレームの微小な弾性変形がある場合でも、板ばね28の弾発力によって確実にハンガーロープ外周面に密着しながら当該外周面上を円滑に転動することができる。
【0052】
▲7▼ 両フレーム14がハンガーロープ下端まで到達した時点で、ウインチを停止させ、制振用ロープ12を固定バンドなどで仮固定する。その後、フレーム14をハンガーロープ10から取り外すとともに、制振用ロープ12の残り下端部をハンガーロープ10の周囲に手巻し、本固定する。
【0053】
以上のように、この実施の形態にかかるロープ巻付装置を用いれば、特別な動力を要することなく、その自重を利用して、ハンガーロープ10の周囲に制振用ロープ12を自動的にかつ効率よく巻き付けていくことができる。
【0054】
また、図示のように、2つのフレーム14に共通の保持部材70を連結し、この保持部材70にウインチロープ等の吊下げロープをつなぐようにすれば、当該吊下げロープをハンガーロープ10同士の間に垂下させる合理的なレイアウトで、2つのフレーム14を同時に適当な速度で降下させることが可能となる。しかも、図示の構造では、保持部材70の本体シリンダ72に対して左右の伸縮ロッド76が左右方向に相対変位可能となっているため、ハンガーロープ10同士の距離に多少の変化があってもこれを前記相対変位によって吸収することが可能である。
【0055】
なお、前記ローラ27の転がり方向とハンガーロープ中心軸Xとのなす角度(傾斜角度)αについては、制振用ロープ12の目標巻付けピッチに応じて適宜設定すればよい。前記角度αを小さくして転がり方向をハンガーロープ中心軸方向に近づければ、降下に伴う旋回度合いが少なくなって巻付ピッチ(螺旋ピッチ)が大きくなり、逆に、前記角度αを大きくして転がり方向を水平方向に近づければ、降下に伴う旋回度合いが大きくなって巻付ピッチが小さくなる。また、後者のように巻付ピッチを小さくして旋回度合いを大きくする場合には、全くの自重によって降下させてもその降下速度は小さくなるため、ウインチによる吊下げを省略することも可能である。
【0056】
本発明の第2の実施の形態を図11に示す。この実施の形態では、上側環状枠16からさらに上方の位置まで各タイロッド18を延ばし、これらタイロッド18の上端に被保持部60を固定して、当該被保持部60に保持部材70の環状保持部82を連結している。
【0057】
このように、保持部材70を各ロープ保持部14のフレーム上部に連結しても、前記第1の実施の形態と同様にして良好な巻付作業ができる。
【0058】
その他、本発明は例として次のような実施の形態をとることも可能である。
【0059】
・本発明においてローラ27の個数及び配置は適宜設定可能である。ただし、3個以上のローラ27を周方向に等間隔で配することにより、よりバランスのとれた安定した状態でハンガーロープ10の周囲にフレーム14を装着することが可能になる。軸方向についてのローラ27の個数も適宜設定が可能であるし、ローラの位置を相互軸方向にずらした構成としてもよい。
【0060】
・ロープ供給手段40の個数も特に問わず、単数もしくは3個以上のものを設けるようにしてもよい。
【0061】
・本発明にかかるフレームの構成は、前記のような上下環状枠16とタイロッド18との組み合わせに限らない。例えば、全体が上下方向に延びる筒状体としてもよいし、多角形状としてもよい。ただし、その慣性モーメントがなるべく小さくなるように設計することが好ましい。
【0062】
・保持部材70を用いる場合、当該保持部材70とフレーム14(図例では被保持部60)とを旋回可能に結合する構造は、前記のようなコ字状断面の被保持部60とローラ88との組み合わせに限られない。例えば、通常のベアリングを用いるようにしてもよい。
【0063】
・本発明にかかるロープ巻付装置は、他の用途にも広く応用できる。例えば、ハンガーロープの周囲に防錆用のテープを巻き付けたり、塗料を螺旋状に吹き付けて模様を形成したりする場合にも、利用が可能である。
【0064】
【発明の効果】
以上のように本発明は、ハンガーロープの周囲に配されるフレームに複数のローラ及びロープ供給手段を設けるとともに、前記各ローラの転がり方向を前記ハンガーロープの中心軸に対して傾斜させることにより、前記フレームの降下に連動して当該フレーム及びロープ供給手段が前記ハンガーロープの軸回りに旋回するようにしたものであるので、既に吊橋に設けられた状態にある各ハンガーロープに対して制振用ロープを自動的にかつ効率よく巻付けることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるロープ巻付装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【図2】前記ロープ巻付装置のフレームを示す一部断面正面図である。
【図3】前記フレームの平面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】図2のC−C線断面図である。
【図7】(a)は前記フレームに設けられたローラ押付装置の断面平面図、(b)は同ローラ押付装置の側面図である。
【図8】前記ローラ押付装置によりハンガーロープに押付けられるローラと当該ハンガーロープ中心軸との傾斜角度を示す説明図である。
【図9】(a)は前記フレームにおける被保持部の平面図、(b)は同被保持部の一部断面正面図である。
【図10】前記被保持部を保持する保持部材の一部断面平面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態にかかるロープ巻付装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【符号の説明】
10 ハンガーロープ
12 制振用ロープ
14 フレーム
16 環状保持体(フレームを構成)
18 タイロッド(フレームを構成)
20 ローラ押付装置
27 ローラ
28 板ばね(付勢手段)
40 ロープ供給手段
42 ロープリール
46 テンションローラ(張力付与手段)
48 ガイドローラ
60 被保持部
70 保持部材

Claims (8)

  1. 吊橋のハンガーロープに制振用ロープを螺旋状に巻付けるための装置であって、前記ハンガーロープの周囲に配されるフレームと、このフレームに周方向に並べて設けられ、前記ハンガーロープの外周面上を転動する複数のローラと、前記フレームに設けられ、前記制振用ロープを繰り出すロープ供給手段とを備えるとともに、前記各ローラの転がり方向を前記ハンガーロープの中心軸に対して傾斜させることにより、前記フレームの降下に連動して当該フレーム及びロープ供給手段が前記ハンガーロープの軸回りに旋回するように構成したことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  2. 請求項1記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、3個以上のローラを周方向に等間隔で配列したことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  3. 請求項1または2記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、前記ローラを前記フレームに対してハンガーロープの径方向に変位可能に取付けるとともに、このローラを前記ハンガーロープの外周面側に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、前記ロープ供給手段として、巻回された制振用ロープを順次繰り出すロープリールと、このロープリールから繰り出される制振用ロープをハンガーロープ外周面上の適当な巻付け位置へ案内するガイドローラとを備えたことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  5. 請求項4記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、繰り出される制振用ロープに適当な張力を与える張力付与手段を備えたことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、前記フレームを、前記ハンガーロープが侵入可能な開口部を形成する開状態と前記ハンガーロープの周囲に閉曲線を形成する閉状態とに開閉可能となるように構成したことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、前記フレームを旋回可能に保持した状態で吊下げられる保持部材を備えたことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
  8. 請求項7記載の吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置において、互いに隣接するハンガーロープの周囲にそれぞれ設置される複数のフレームを同時に保持した状態で前記ハンガーロープの間の空間に吊下げられるように前記保持部材を構成したことを特徴とする吊橋のハンガーロープ制振用ロープ巻付装置。
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