JP4076212B2 - 筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、アトキンソンサイクルを実施する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、内燃機関の運転中に気筒内を上下動するピストンの該気筒内での挙動は、吸入、圧縮、燃焼・膨張、排気といった一連のサイクル(行程)で表現され、これらのサイクルが順次繰り返されることによって内燃機関の運転が継続される。
【0003】
一方、こうした内燃機関は通常、圧縮行程容積と燃焼・膨張行程容積とがほぼ同一であるため、圧縮比と膨張比も基本的に同一となる。そして一般に、このような燃焼システムはオットーサイクルと呼ばれている。
【0004】
また一方、燃料の持つ熱エネルギーを運動エネルギーに変換する膨張行程でのピストンストロークを長くする、換言すれば膨張比を高めることは、内燃機関の熱効率を向上させるうえで極めて有効である。しかし、上記のオットーサイクルでは、膨張比を高めると圧縮比も同時に高まってしまうため、ノッキングの発生等が避けられない。このため、上記オットーサイクルが採用される内燃機関では、膨張比を高めるにも自ずと限界がある。
【0005】
そこで従来は、オットーサイクルによるこうした不具合を解消すべく、ピストンが吸気下死点に到達した後に吸気弁を閉じる、いわゆる吸気弁遅閉じによって圧縮行程の実質的な開始を遅らせるアトキンソンサイクルと称される燃焼システムなども提案されている(例えば特開2000−204951号公報参照)。このアトキンソンサイクルによれば、上記吸気弁の遅閉じによって圧縮行程が短縮されるため、実圧縮比を高めることなく高い膨張比を得ることができるようになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アトキンソンサイクルの場合、吸気弁の閉弁時期が遅くなることから、圧縮行程の初期段階では気筒内に吸入された吸気が吸気ポートに吹き返されてしまうことも避けられない。もっとも、吸気ポートに燃料が噴射される通常の内燃機関であれば、気筒内に吸気が導入される以前に空気と燃料との混合はほぼ完了しているため、アトキンソンサイクルの実施によって気筒内に吸入された吸気が吸気ポートに吹き返されたとしても、気筒内の混合気濃度に対する影響は少ない。しかし、気筒内に直接燃料が噴射される上記筒内噴射式内燃機関の場合には、このアトキンソンサイクルの実施に伴う、以下のような不都合が無視できないものとなる。
【0007】
すなわち、このような筒内噴射式内燃機関では、空気と燃料との混合が気筒内で行われる。このため、アトキンソンサイクルの実施によって気筒内に吸入された吸気が吸気ポートに吹き返されると、空気との混合が図られていない燃料の一部も、このとき同時に気筒外へ排出されてしまい、気筒内の混合気濃度が本来あるべき濃度とは異なるようになる。しかも、このとき排出される燃料の量にはばらつきがあるため、気筒内の混合気濃度にもばらつきが生じ、ひいては燃焼変動の増大を招くようになる。
【0008】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、筒内噴射式内燃機関を通じてアトキンソンサイクルを実施する場合であれ、燃焼変動の増大を好適に抑制することのできる筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御を行う制御手段を備えることをその要旨とする。
【0010】
通常、燃料噴射弁から噴射された燃料は、気筒内を突き進み、その運動エネルギーが消滅したところで拡散する。そして、この燃料噴射弁から噴射された燃料の到達距離の大小は、いわゆる燃料の貫徹力と呼ばれるものと相関関係にあり、貫徹力が大きくなるほど燃料の到達距離も長くなる傾向にある。また、この貫徹力は燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射圧とも相関関係にあり、噴射圧が高くなるほど貫徹力も大きくなる。この点、上記請求項1に記載の構成によれば、筒内噴射式内燃機関において上記吸気弁遅閉じ制御の実行要求がなされ、アトキンソンサイクルが実施されるときには、燃料の貫徹力が大きくされる。そのため、噴射された燃料の拡散中心は、燃料噴射圧が低い場合と比較して、より一層吸気ポートから離れた位置になり、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなって、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、当該機関の回転速度に基づいて前記噴射圧の増大度合いを設定することをその要旨とする。
【0012】
上記構成では、燃料噴射弁から噴射された燃料がピストンの頂部に衝突する時期と相関関係にある機関回転速度に基づいて、燃料噴射圧の増大度合いを設定するようにしている。従って、燃料がピストンの頂部に衝突して層状に液化することによる燃料の拡散性の低下を抑えられるとともに、燃料を吸気ポートから十分離れた位置に到達させることができるようになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御、及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる制御を選択的に実行する制御手段を備え、前記制御手段は、前記ピストンが吸気上死点から下降を始めてから前記燃料の噴射が開始されるまでの時間(TQS)を機関出力軸の回転速度と回転角度とに基づき算出するとともに、最大噴射圧で噴射した燃料が前記気筒内の吸気下死点に到達するまでの時間(TQ)をこの算出した時間(TQS)に加算し、この加算した値(TQS+TQ)が、機関出力軸の回転速度から算出される前記ピストンの吸気上死点から吸気下死点に移動するまでに要する行程時間(TST)以下であるか否かを判定する判定手段を備え、この判定手段によって前記加算した値(TQS+TQ)が前記行程時間(TST)以下である旨判定されるときには、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い前記噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御を実行し、同判定手段によって前記加算した時間(TQS+TQ)が前記行程時間(TST)以下ではない旨判定されるときには、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い前記噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる制御を実行することをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い気筒内に噴射する燃料の噴射圧を吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くすることにより、燃料の貫徹力を大きくすることができるようになる。そのため、噴射された燃料の拡散中心は、燃料噴射圧が低い場合と比較して、より一層吸気ポートから離れた位置になり、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなって、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
また、上記構成によれば、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い気筒内に噴射する燃料の噴射時期を吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させることにより、ピストンがより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射を行うことができるようになる。このように、ピストンがより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射が行われると、噴射された燃料の拡散中心は、燃料の噴射時期が進角されない場合と比較して、より一層ピストンに近づくようになる。そしてこれにより、ピストンの頂部と拡散した燃料との間に挟まれる空気の量も少なくなり、その後のピストンの下降、及び気筒内への空気の流入によって、拡散した燃料が気筒の下方に移動していく際にも、拡散した燃料はピストンの頂部近傍に位置しながら下降するようになる。従って、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなり、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
なお、一般に、燃料噴射時期は混合気の点火時期や吸気の状態等に合わせて設定されている。そのため、この燃料噴射時期を変更すると、気筒内の燃焼状態に少なからず悪影響を与えてしまう。そこで上記請求項3に記載の構成では、燃料の噴射圧を増大させることにより、吸気下死点に到達したピストンに燃料を衝突させることができると判定されるときには、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い燃料の噴射圧が高圧化される。一方、燃料の噴射圧を増大させても吸気下死点に到達したピストンに燃料を衝突させることができないと判定されるときには、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い燃料の噴射時期が進角される。このように吸気ポートへの燃料の吹き返しが燃料噴射圧の高圧化によって抑制できないときには、燃料噴射時期の進角を行うようにしている。このため、燃焼状態に対する悪影響を極力抑えつつ、吸気ポートに吹き返される燃料の量を減少させることができるようになる。すなわち、燃料の噴射圧を高くする制御と燃料の噴射時期を進角させる制御とを、吸気弁遅閉じ制御が行われるときの燃料噴射の制御態様として、望ましいかたちで切り替えることができるようになる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御、及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる制御を併せて実行する制御手段を備えることをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い気筒内に噴射する燃料の噴射圧を吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くすることにより、燃料の貫徹力を大きくすることができるようになる。そのため、噴射された燃料の拡散中心は、燃料噴射圧が低い場合と比較して、より一層吸気ポートから離れた位置になり、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなって、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
さらに、上記構成によれば、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い気筒内に噴射する燃料の噴射時期を吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させることにより、ピストンがより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射を行うことができるようになる。このように、ピストンがより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射が行われると、噴射された燃料の拡散中心は、燃料の噴射時期が進角されない場合と比較して、より一層ピストンに近づくようになる。そしてこれにより、ピストンの頂部と拡散した燃料との間に挟まれる空気の量も少なくなり、その後のピストンの下降、及び気筒内への空気の流入によって、拡散した燃料が気筒の下方に移動していく際にも、拡散した燃料はピストンの頂部近傍に位置しながら下降するようになる。従って、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなり、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする噴射圧高圧化制御、及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる噴射時期進角御を選択的に実行する制御手段を備え、前記制御手段は、前記噴射圧高圧化制御を優先して実行し、同高圧化制御によって前記内燃機関の吸気ポートへの燃料の吹き返しが抑制できないときには前記噴射時期進角制御を実行することをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、噴射圧の高圧化制御を実行することにより、燃料の貫徹力を大きくすることができるようになる。そのため、噴射された燃料の拡散中心は、燃料噴射圧が低い場合と比較して、より一層吸気ポートから離れた位置になり、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなって、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
また、上記構成によれば、噴射時期の進角制御を実行することにより、ピストンがより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射を行うことができるようになる。このように、ピストンがより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射が行われると、噴射された燃料の拡散中心は、燃料の噴射時期が進角されない場合と比較して、より一層ピストンに近づくようになる。そしてこれにより、ピストンの頂部と拡散した燃料との間に挟まれる空気の量も少なくなり、その後のピストンの下降、及び気筒内への空気の流入によって、拡散した燃料が気筒の下方に移動していく際にも、拡散した燃料はピストンの頂部近傍に位置しながら下降するようになる。従って、吸気ポートから離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポートに近い部分の混合気濃度は薄くなり、同吸気ポートに吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
なお、一般に、燃料噴射時期は混合気の点火時期や吸気の状態等に合わせて設定されている。そのため、この燃料噴射時期を変更すると、気筒内の燃焼状態に少なからず悪影響を与えてしまう。そこで上記請求項5に記載の構成では、噴射圧の高圧化制御を優先して実行し、同高圧化制御によって内燃機関の吸気ポートへの燃料の吹き返しが抑制できないときには、噴射時期の進角制御を実行する。このように吸気ポートへの燃料の吹き返しが燃料噴射圧の高圧化によって抑制できないときのみに燃料噴射時期の進角を行うことにより、燃焼状態に対する悪影響を極力抑えつつ、吸気ポートに吹き返される燃料の量を減少させることができるようになる。すなわち、噴射圧の高圧化制御と噴射時期の進角制御とを、吸気弁遅閉じ制御が行われるときの燃料噴射の制御態様として、望ましいかたちで切り替えることができるようになる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜のいずれか一項に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制御手段は、当該機関の回転速度に基づいて前記噴射圧の増大度合い及び前記噴射時期の進角度合いを設定することをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、燃料噴射弁から噴射された燃料がピストンの頂部に衝突する時期と相関関係にある機関回転速度に基づいて、燃料噴射圧の増大度合い及び噴射時期の進角度合いが設定される。従って、燃料がピストンの頂部に衝突して層状に液化することによる燃料の拡散性の低下を抑えられるとともに、燃料を吸気ポートから十分離れた位置に到達させることができるようになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置を具体化した一実施形態について図1〜図9に基づき、詳細に説明する。
【0026】
図1は、これが適用される筒内噴射式のガソリン機関1とともに、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置、並びにそれらの周辺構成を示す概略構成図である。ガソリン機関1は複数の気筒を有しており、そのシリンダブロック2には、複数のシリンダ4が設けられている(図1では便宜上、1つのみを図示)。このシリンダ4内にはピストン5が設けられており、このピストン5は、コンロッド6を介して機関出力軸であるクランクシャフト7に連結されている。
【0027】
上記シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド3が取り付けられている。そして、上記シリンダ4においてピストン5の上端とシリンダヘッド3との間には、燃焼室8が形成されている。また、シリンダヘッド3には、この燃焼室8内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁35と、燃焼室8内の混合気を火花点火するための点火プラグ11とが、各気筒に対応してそれぞれ設けられている。
【0028】
また、上記シリンダヘッド3には、上記燃焼室8への吸気流路である吸気ポート9と同燃焼室8からの排気流路である排気ポート10とが、1つの気筒に対してそれぞれ設けられている。これらの吸気ポート9及び排気ポート10は、それぞれ吸気通路20及び排気通路30に接続されている。前記吸気通路20内には、アクセルペダル(図示略)の操作に基づいて駆動されるアクチュエータ22によってその開度が調整されるスロットル弁23が設けられている。このスロットル弁23の開度を変更することにより燃焼室8内へ吸入される空気量が調量されるようになっている。
【0029】
一方、前記クランクシャフト7には、タイミングベルト14を介して吸気側タイミングプーリ15と排気側タイミングプーリ16とが駆動連結されている。吸気側タイミングプーリ15には、後述する可変バルブタイミング機構19を介して吸気カムシャフト17が取り付けられている。また、排気側タイミングプーリ16には、同排気側タイミングプーリ16とともに一体回転する排気カムシャフト18が取り付けられている。
【0030】
前記燃焼室8に対応して設けられた吸気弁12及び排気弁13は、前記吸気ポート9及び排気ポート10をそれぞれ開閉する。同吸気弁12及び排気弁13は、前記吸気カムシャフト17及び排気カムシャフト18にそれぞれ設けられたカム(図示略)によって開閉動作される。また、前記クランクシャフト7が2回転すると前記吸気側タイミングプーリ15及び排気側タイミングプーリ16がそれぞれ1回転するようになっている。従って、吸気弁12及び排気弁13は、クランクシャフト7の回転に同期して、すなわちピストン5の往復移動に対応して所定のタイミングで開閉駆動される。
【0031】
また、前記の吸気側タイミングプーリ15には、可変バルブタイミング機構(以下、VVT機構という)19が設けられている。このVVT機構19は、吸気側タイミングプーリ15と吸気カムシャフト17との相対位相を油圧の作用により変更することで、吸気カムシャフト17に設けられたカムのクランクシャフト7に対する相対位相を変更する。そしてこの相対位相の変更により、吸気弁12の開閉時期は図2に例示するように進角側、あるいは遅角側に変更され、機関運転状態に応じた開閉時期にされる。
【0032】
各気筒に対応してそれぞれ設けられる前記燃料噴射弁35に燃料を分配する燃料分配管60は、高圧燃料通路61を介して高圧ポンプ62に接続されている。高圧燃料通路61には、燃料分配管60から高圧ポンプ62側に燃料が逆流することを規制する逆止弁63が設けられている。高圧ポンプ62には、低圧燃料通路64を介して燃料タンク66内に設けられた低圧ポンプ65が接続されている。
【0033】
低圧ポンプ65は、燃料タンク66内の燃料を吸引して低圧燃料通路64に吐出することにより、燃料を高圧ポンプ62に圧送する。
高圧ポンプ62は、吸気カムシャフト17に設けられたカム68により往復駆動されるプランジャ62a、同プランジャ62aを往復動可能に収容するシリンダ62bを備えている。また、シリンダ62b内に形成される加圧室62cは、低圧燃料通路64を通じて燃料が供給されるとともに高圧燃料通路61を介して燃料分配管60に接続されている。また、電磁弁62dは、低圧燃料通路64と加圧室62cとの連通を遮断する。この高圧ポンプ62において、電磁弁62dが開弁している場合、高圧ポンプ62に供給された燃料は燃料分配管60側に加圧圧送されることなく燃料タンク66側に戻される。これに対して、電磁弁62dが閉弁している場合には、高圧ポンプ62から燃料が高圧燃料通路61を通じて燃料分配管60側へ加圧圧送される。後述する制御装置(ECU)50は、燃料分配管60に取り付けられた燃圧センサ46の検出値を参照して電磁弁62dの開閉時期をフィードバック制御し、高圧ポンプ62から燃料分配管60に加圧圧送される燃料量を調節することにより、燃料分配管60内の燃料圧力を適切な圧力に調節する。なお、リターン通路67は、低圧燃料通路64における過剰な燃料を燃料タンク66に戻すための通路である。
【0034】
他方、前記ガソリン機関1には、上記の燃圧センサ46の他にも、機関運転状態を検出するための各種センサが備えられている。例えば、クランクシャフト7に近接して設けられるクランク角センサ41は、クランクシャフト7の回転に基づいてガソリン機関1の回転速度に応じた頻度のパルス信号を出力する。そして、この出力信号(パルス信号)に基づいて同ガソリン機関1(クランクシャフト7)の回転速度(機関回転速度)NE及びクランクシャフト7の回転角(クランク角)が検出される。また、吸気カムシャフト17に近接して設けられるカム角センサ42は、吸気カムシャフト17の回転に基づいて所定の回転毎に基準信号となるパルス信号を出力する。そして、クランク角センサ41及びカム角センサ42の出力信号に基づいて吸気カムシャフト17のカム角(クランクシャフト7に対する相対位相)θAが検出される。なお、このカム角θAは、前記VVT機構19によって可変とされる吸気弁12の開閉時期の進角量を表している。また、スロットル弁23の近傍に設けられるスロットル開度センサ43は、スロットル弁23の開度TA(スロットル開度TA)を検出する。また、上記スロットル弁23の上流側に設けられるエアフロメータ44により、吸気通路20を流れる吸入空気量QAが検出される。また、上記シリンダブロック2に設けられる水温センサ45により、冷却水の温度が検出される。
【0035】
上記ガソリン機関1の点火時期制御、燃料噴射量(噴射時期)制御、燃料噴射圧制御、あるいはVVT機構の位相制御等の各種制御は、制御装置(以下、ECUという)50によって行われる。このECU50は中央処理制御装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータを中心として構成されている。例えばECU50には、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)が設けられている。またECU50には、演算結果や予め記憶されたデータ等を機関停止後も保存するためのバックアップRAM、入力インターフェース、出力インターフェース等も設けられている。また、前記クランク角センサ41、カム角センサ42、スロットル開度センサ43、エアフロメータ44、水温センサ45、及び燃圧センサ46等からの出力信号は前記入力インターフェースに入力される。これら各センサ41〜46等により、ガソリン機関1の運転状態が検出される。
【0036】
一方、出力インターフェースは、各々対応する駆動回路等を介して燃料噴射弁35、点火プラグ11に高電圧を印可するイグニッションコイル(図示略)、VVT機構19を制御する油圧制御弁(図示略)、スロットル弁23のアクチュエータ22、及び電磁弁62d等に接続されている。そして、ECU50は上記各センサ41〜46等からの信号に基づき、ROM内に格納された制御プログラム及び初期データに従って、上記燃料噴射弁35や油圧制御弁、イグニッションコイル、アクチュエータ22、及び電磁弁62d等を制御する。
【0037】
さて、本実施の形態にかかるガソリン機関1では、前記VVT機構19による吸気弁遅閉じ制御、すなわち、前記ピストン5の吸気下死点よりも遅角側で吸気弁12を閉弁させる制御を行うことによって、前述したアトキンソンサイクルを実施するようにしている。このアトキンソンサイクルでは通常、吸気弁の閉弁時期がピストンの吸気下死点よりも遅れるために、圧縮行程の初期では気筒内に吸入された吸気が吸気ポート9に吹き返されるようになる。これにより、圧縮行程の実質的な開始が遅れるようになり、結果として実圧縮比を高めることなく高い膨張比を得ることが可能になっている。そして、このように膨張比を高めることができるアトキンソンサイクルでは、膨張行程での実質的なピストンストロークを長くすることができるため、燃料の持つ熱エネルギーを効率よく運動エネルギーに変換することができ、ひいてはガソリン機関1の熱効率を向上することができる。
【0038】
ところで、燃料が気筒内に直接噴射される筒内噴射式内燃機関である上記ガソリン機関1において、このようなアトキンソンサイクルを実施するときには前述のように、以下のような問題が生じる。すなわち、筒内噴射式内燃機関では、空気と燃料との混合が気筒内で行われる。このため、アトキンソンサイクルの実施によって気筒内に吸入された吸気が吸気ポートに吹き返されると、空気との混合が図られていない燃料の一部も、このとき同時に気筒外へ排出されてしまい、気筒内の混合気濃度が本来あるべき濃度とは異なるようになる。しかも、このとき排出される燃料の量にはばらつきがあるため、気筒内の混合気濃度にもばらつきが生じ、ひいては燃焼変動の増大を招いてしまう。
【0039】
そこで、本実施の形態にかかる燃料噴射制御装置では、吸気弁12の閉弁時期が遅角されることでアトキンソンサイクルが実施される際には、それに応じたかたちで燃料噴射態様を制御することで、吸気ポート9への燃料の吹き返しを抑制し、ひいては燃焼変動の増大を抑制するようにしている。
【0040】
より具体的には、アトキンソンサイクルが実施されるときには燃料噴射圧を高くして燃料の貫徹力を高める、あるいは燃料の噴射時期を進角することにより、噴射された燃料の拡散中心が吸気ポート9から離れた位置になるようにしている。こうすることによって、吸気ポート9から離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポート9に近い部分の混合気濃度は薄くなり、同吸気ポート9に吹き返される燃料の量が減少するようになる。
【0041】
なお、前記貫徹力とは、燃料噴射弁から噴射された燃料が気筒内の空気を押しのけて突き進んでいく力のことであり、燃料噴射弁から噴射された燃料はこの貫徹力によって気筒内を突き進み、その運動エネルギーが消滅したところで拡散する。このため、燃料噴射弁から噴射された燃料の到達距離は、貫徹力が大きくなるほど長くなる傾向にある。また、この貫徹力は燃料噴射圧が高くなるほど大きくなる傾向にある。従って、燃料噴射圧を高圧化することにより、噴射された燃料の拡散中心を吸気ポート9から離れた位置にすることができる。
【0042】
また、吸気行程に噴射される燃料の噴射時期が進角されると、ピストン5がより吸気上死点に近い位置にあるときに燃料噴射が行われるようになる。このため、噴射された燃料の拡散中心は、燃料の噴射時期が進角されない場合と比較して、より一層、ピストン5に近づくようになる。そしてこの拡散された燃料は、その後のピストン5の下降、及び気筒内への空気の流入によって気筒の下方に移動していく。そのため、吸気ポート9から離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポート9に近い部分の混合気濃度は薄くなり、同吸気ポート9に吹き返される燃料の量が減少するようになる。そしてこれにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大が抑制される。
【0043】
このように、燃料噴射圧の高圧化または噴射時期の進角により、吸気ポート9に吹き返される燃料の量は減少するようになる。ここで、一般に、燃料の噴射時期は混合気の点火時期や吸気の状態等に合わせて設定されるため、その時期を変更すると、気筒内の燃焼状態に少なからず悪影響を与えてしまう。そこで、本実施の形態では、基本的に、燃料噴射圧の高圧化によって吸気ポート9へ吹き返される燃料の量を減少させるようにしている。そして、燃料噴射圧の高圧化を図っても吸気ポート9への燃料の吹き返しが抑制できないときには、燃料噴射時期の進角を行うようにしている。すなわち、燃料噴射圧の高圧化を燃料噴射時期の進角よりも優先させるようにしている。こうして、燃焼状態に対する悪影響を極力抑えつつ、吸気ポート9に吹き返される燃料の量を減少させることができるようにしている。
【0044】
以下、本実施の形態にかかる燃料噴射制御装置による燃料噴射の制御処理を、図3〜図9を併せ参照して詳細に説明する。
図3は、本実施の形態にかかる燃料噴射制御装置による燃料噴射制御について、その制御手順を示したものである。ECU50はこの制御手段として図3に示す制御を行う。なお、この燃料噴射制御は、例えば所定時間毎の割り込み処理として繰り返し実行される。
【0045】
この処理が開始されると、まず、現在の機関運転状態において前記アトキンソンサイクルの実施要求、すなわち吸気弁遅閉じ制御の実行要求があるか否かが判断される(ステップS110)。例えば、前記スロットル開度TAや吸入空気量QA等に基づいて算出される機関負荷、機関回転速度NE、あるいは冷却水の温度などが所定の条件に適合している場合など、現在の機関運転状態においてアトキンソンサイクルが実施可能であると判定される場合に、上記吸気弁遅閉じ制御の実行要求があると判断される。
【0046】
そして、吸気弁遅閉じ制御の実行要求がないと判断される場合には(ステップS110でNO)、本処理を一旦終了する。
一方、吸気弁遅閉じ制御の実行要求があると判断される場合には(ステップS110でYES)、図4に示す判定処理を通じて判定されている前記燃料噴射弁の潜在貫徹力に関する判定結果が読み込まれ、この潜在貫徹力が高いか否かが判断される(ステップS120)。
【0047】
ここで、この前記潜在貫徹力の判定がどのように行われるのかについて図4を参照しつつ以下に説明する。なお、この判定手段としての処理も上記ECU50を通じて実行される。また、この潜在貫徹力の判定処理も、例えば所定時間毎の割り込み処理として繰り返し実行される。
【0048】
図4に示す判定処理が開始されると、まず、現在の機関回転速度NEが読み込まれる(ステップS210)。
次に、ピストン5の吸気上死点から吸気下死点に移動するまでに要する行程時間TSTが、機関回転速度NEから求められる(ステップS220)。この行程時間TSTは、基本的に次式(1)から求めることができる。なお、ピストン5の移動速度の変動等に応じて、この算出された行程時間TSTを補正することにより、より正確な値を算出することができる。
【0049】
行程時間TST=(2×60)/機関回転速度NE … (1)
次に、この算出された行程時間TST中に、最大噴射圧で噴射された燃料が吸気下死点に到達したピストン5の頂部に衝突するか否かが判定される(ステップS230)。
【0050】
このステップS230にて行われる判定を、図5を参照しながら説明する。まず、図5に実線で示す曲線は、クランク角に対応したピストンの位置を表している。また、同図5に一点鎖線で示す曲線は、クランク角に対応した燃料の到達位置を表している。そして、図5(a)は、機関回転速度が遅い場合における、ピストン位置と燃料の到達位置とを例示している。一方、図5(b)は、機関回転速度が速い場合における、ピストン位置と燃料の到達位置とを例示している。そして、時間TQSは、ピストン5が吸気上死点から下降を始めてから燃料噴射が開始されるまでの間の時間を表しており、この時間TQSは、ピストン5が吸気上死点から下降を始めてから燃料噴射が開始されるまでの間に回転したクランクシャフト7の回転角度と機関回転速度NEとから算出される。また、時間TQは、最大噴射圧で燃料が噴射されることにより前述した貫徹力が最大とされる場合において、燃料噴射が開始されたときに噴射された燃料が気筒内の吸気下死点に到達するまでの時間を表しており、この時間TQは、実験等により求められている。
【0051】
まず、図5(a)に示されるように、機関回転速度が遅い場合には、ピストンの移動速度も遅く、行程時間TSTも長くなる。従って、噴射された燃料(一点鎖線)は吸気下死点に到達する前のピストン5に衝突するようになる。ここで、噴射された燃料が吸気下死点に到達する前にピストン5に衝突すると、その後はピストン5の頂部で燃料が層状に液化してしまうため、同燃料の拡散性が低下してしまう。そこで、このように燃料の貫徹力が大きすぎる場合には、燃料噴射圧を低くして上記時間TQが長くなるようにすれば、吸気下死点にあるピストン5の頂部に燃料を衝突させることが可能になる。このように、少なくとも最大噴射圧で燃料を噴射することで、吸気下死点に到達したピストン5の頂部に燃料を衝突させることができるときには、次式(2)の関係が成立している。
【0052】
TQS+TQ≦TST … (2)
この、式(2)が成立するとき、すなわち、少なくとも最大噴射圧で燃料を噴射することで吸気下死点に到達したピストン5の頂部に燃料を衝突させることができる状態が、潜在貫徹力が高い状態に相当する。
【0053】
一方、図5(b)に示されるように、機関回転速度が速い場合には、ピストンの移動速度も速く、行程時間TSTも短くなる。しかし、上記時間TQ(燃料噴射が開始されたときに噴射された燃料が気筒内の吸気下死点に到達するまでの時間)は、機関回転速度の上昇に対応して変化する行程時間TST及び時間TQSの変化量ほどは大きく変化しない。そのため、ピストン5が吸気下死点に到達しても、燃料はまだ吸気下死点に到達することができず、最大噴射圧で燃料を噴射しても、吸気下死点にあるピストン5の頂部に燃料を衝突させることはできない。このようなときには、次式(3)の関係が成立している。
【0054】
TQS+TQ>TST … (3)
この、式(3)が成立するとき、すなわち最大噴射圧で燃料を噴射しても吸気下死点に到達したピストン5の頂部に燃料を衝突させることはできない状態が、潜在貫徹力が低い状態に相当する。
【0055】
このように、行程時間TST、時間TQS、及び時間TQの関係が上記式(2)の関係となる場合には(ステップS230でYES)、現在の機関回転速度NEに対する潜在貫徹力が高いと判定される(ステップS240)。
【0056】
一方、行程時間TST、時間TQS、及び時間TQの関係が上記式(3)の関係となる場合、換言すれば上記式(2)が満たされない場合には(ステップS230でNO)、現在の機関回転速度NEに対する潜在貫徹力が低いと判定される(ステップS250)。
【0057】
こうした潜在貫徹力の判定結果は、例えばECU50内の上記RAMに一時的に記憶され、図3に示す上記燃料噴射制御においてこの判定結果が利用される。さて、上述した図3のステップS120において、この判定結果に基づき燃料噴射弁の潜在貫徹力が高いと判断される場合には(ステップS120でYES)、燃料噴射圧が高圧化される(ステップS130)。そしてその後、前記VVT機構19を通じた吸気弁の遅閉じ制御が実行されて(ステップS150)、本処理が一旦終了される。
【0058】
なお、このとき高圧化される燃料噴射圧は、機関回転速度NEに基づき、ECU50のROM内に記憶された噴射圧設定マップを参照して求められる。ちなみに、機関回転速度NEが速くなるに伴って、ピストン5が吸気下死点に到達した時点での燃料の到達位置はピストン5の頂部近傍から遠くなる。そこで先の図5(a)に二点鎖線で示す曲線のように、ピストン5が吸気下死点に到達した時点で燃料をピストン5の頂部近傍に到達させるべく、この噴射圧設定マップには、機関回転速度NEが速くなるほど燃料噴射圧が高くなる傾向をもって同噴射圧が設定されている。これにより、燃料がピストン5の頂部に衝突して層状に液化した場合の拡散性の低下が抑えられるとともに、燃料が吸気ポート9から十分離れた位置に到達するようになる。
【0059】
一方、上述した図3のステップS120において、燃料噴射弁の潜在貫徹力が低いと判定される場合には(ステップS120でNO)、燃料の噴射時期が進角される(ステップS140)。そしてその後、同様に前記VVT機構19を通じた吸気弁の遅閉じ制御が実行されて(ステップS150)、本処理が一旦終了される。
【0060】
ここで、進角が行われる際の限界値について、図6を併せ参照しながら説明する。なお、この図6に実線で示す曲線は、クランク角に対応したピストンの位置を表している。また、同図6に一点鎖線で示す曲線は、燃料の貫徹力が高い場合のクランク角に対応した燃料の到達位置を表しており、二点鎖線で示す曲線は、燃料の貫徹力が低い場合のクランク角に対応した燃料の到達位置を表している。
【0061】
通常、ピストン5が上昇する圧縮行程において燃料がピストン5の頂部に衝突すると、衝突した燃料はその頂部で層状に液化してしまい、燃料の拡散性が低下してしまう。そのため、ピストン5が下降する吸気行程において、燃料噴射弁35から噴射された燃料を同ピストン5の頂部近傍に到達させる必要がある。また、吸気行程において燃料がピストン5の頂部に衝突する場合にも、衝突した燃料がピストン5の頂部で層状に液化してしまい、燃料の拡散性が低下してしまう。従って、噴射時期を吸気下死点から進角させていき、燃料が吸気行程にてピストン5に衝突し始める直前の噴射開始時期が、そのときの燃料噴射圧及び機関回転速度における進角限界値となる。
【0062】
例えば、現在の貫徹力が高く(燃料噴射圧が高く)、図6に一点鎖線にて例示するような態様で燃料が気筒の下方へ進んでいく場合には、点Aとして示す時期が進角限界値となる。また、現在の貫徹力が低く(燃料噴射圧が低く)、図6に二点鎖線にて例示するような態様で燃料が気筒の下方へ進んでいく場合には、点Bとして示す時期が進角限界値となる。このように、進角限界値は燃料の貫徹力が高いほど、換言すれば燃料噴射圧が高いほど吸気下死点に近くなる。また、機関回転速度NEが速くなるほどピストン5の下降速度も速くなるため、この機関回転速度NEの上昇に伴って噴射時期も進角しないと、燃料をピストン5の頂部近傍に到達させることができなくなる。そのため、進角限界値は機関回転速度NEが速くなるほど吸気上死点に近くなる。このような進角限界値の傾向をふまえ、前記ECU50のROM内には、機関回転速度NEが速くなるほど進角量が大きくなるように設定された進角量設定マップが記憶されている。そして、前記のステップS140(図3)での処理における噴射時期の進角量は、その時点での機関回転速度NEに基づき、この進角量設定マップを参照して求められる。
【0063】
図7〜図9に、本実施形態の作用説明として、上述した燃料噴射制御が実行されなかった場合、及び実行された場合を比較して、気筒内での燃料の拡散状態をそれぞれ例示する。
【0064】
このうち、図7は、吸気弁遅閉じ制御(アトキンソンサイクル)が行われるにも拘わらず上記燃料噴射制御が行われなかった場合の気筒内での燃料の拡散状態を模式的に示したものである。なお、同図7にL1にて示す距離は、燃料噴射が開始されたときのピストン5の吸気上死点からの距離を示している。また図8は、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、上記燃料噴射制御を通じて燃料噴射圧の高圧化が行われた場合の気筒内での燃料の拡散状態を模式的に示したものである。そして図9は、同じく吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、上記燃料噴射制御を通じて燃料噴射時期の進角化が行われた場合の気筒内での燃料の拡散状態を模式的に示したものである。なお、同図9にL2にて示す距離は、図7に示す距離L1と同様、燃料噴射が開始されたときのピストン5の吸気上死点からの距離を示しており、この距離L2は、燃料噴射時期が進角化された分だけ前記距離L1よりも短くなっている。また、図7〜図9の各図において、(a)に示される状態は、吸気行程において燃料噴射が開始されたときの気筒内の状態、(b)に示される状態は、ピストン5が吸気下死点に到達したときの気筒内の状態、(c)に示される状態は、圧縮行程において吸気弁12が閉弁される直前の気筒内の状態をそれぞれ表している。
【0065】
まず、図7に示されるように、吸気弁遅閉じ制御(アトキンソンサイクル)が行われるにも拘わらず上記燃料噴射制御が実行されなかった場合には、図7(a)に示されるように、燃料噴射弁35から噴射された燃料80は同燃料噴射弁35から十分に離れた位置まで到達することができない。そのため、混合気濃度の高い拡散燃料81は、図7(b)に示されるように、吸気ポート9に近い位置で拡散してしまい、図7(c)に示される圧縮行程において、閉弁直前の吸気弁12を介して吸気ポート9へ吹き返されてしまう。
【0066】
これに対し、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴って燃料噴射圧が高圧化される場合には、図8(a)に示されるように、上記噴射された燃料80は燃料噴射弁35からより遠くまで到達するようになる。このため、混合気濃度の高い拡散燃料81も、図8(b)に示されるように、より一層気筒の下方で、すなわち吸気ポート9から離れた位置に存在するようになる。従って、その後の圧縮行程において吸気弁12が遅閉じされる場合であれ、図8(c)に示されるように、拡散燃料81の吸気ポート9への吹き返しが抑制され、ひいては気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられるようになる。
【0067】
また、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴って燃料の噴射時期が進角化される場合には、図9(a)に示されるように、ピストン5がより上死点に近い位置にあるときに燃料噴射が行われる。このため、ピストン5の頂部近傍で燃料80が拡散するようになる。そしてこれにより、ピストン5の頂部と拡散燃料81との間に挟まれる空気の量も少なくなり、その後のピストン5の下降、及び気筒内への空気の流入によって、拡散燃料81が気筒の下方に移動していく際にも、図9(b)に示されるように、同拡散燃料81はピストン5の頂部近傍に位置しながら下降するようになる。従って、この場合も、その後の圧縮行程において吸気弁12が遅閉じされる場合であれ、図9(c)に示されるように、拡散燃料81の吸気ポート9への吹き返しが抑制され、ひいては気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられるようになる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態における筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)筒内噴射式のガソリン機関1で吸気弁12の遅閉じ制御(アトキンソンサイクル)が実行される際には、燃料噴射弁35から噴射される燃料の噴射圧を高圧化するようにしている。これにより、噴射された燃料は燃料噴射弁35からより遠くまで到達するようになり、気筒の下方、すなわち吸気ポート9から離れた位置で拡散するようになる。従って、吸気弁12が遅閉じされる場合であれ、この拡散燃料の吸気ポート9への吹き返しが抑制されるようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大も好適に抑制することができるようになる。
【0069】
(2)また、燃料噴射圧の高圧化を図っても吸気ポート9への燃料の吹き返しが抑制できないときには、燃料の噴射時期を進角化するようにしている。これにより、ピストン5がより上死点に近い位置にあるときに燃料噴射が行われるようになり、より一層、ピストン5の頂部近傍で燃料が拡散されるようになる。そして、その後のピストン5の下降、及び気筒内への空気の流入によってこの拡散された燃料が気筒の下方に移動していく際にも、拡散された燃料はピストン5の頂部近傍に位置しながら下降するようになる。従って、その後の圧縮行程において吸気弁12が遅閉じされる場合であれ、この拡散燃料の吸気ポート9への吹き返しが抑制されるようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいては燃焼変動の増大も好適に抑制することができるようになる。
【0070】
(3)上述したように、燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射圧を高圧化したり、燃料の噴射時期を進角することで前述した燃料の吹き返しは抑制することができる。ここで、一般に、燃料噴射時期は混合気の点火時期や吸気の状態等に合わせて設定されている。そのため、この燃料噴射時期を変更すると、気筒内の燃焼状態に少なからず悪影響を与えてしまう。この点、上記実施形態では、機関回転速度NEから算出することのできる前記の行程時間TST、機関回転速度NEと燃料噴射の開始時期とから算出することのできる前記の時間TQS、及び予め求められている前記の時間TQを用いて、前述した潜在貫徹力の高低を判定している。そして、この判定において潜在貫徹力が高いと判定された場合、すなわち燃料の噴射圧を増大させることにより、吸気下死点に到達したピストンに燃料を衝突させることができると判定されたときには、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴って、燃料の噴射圧を高圧化するようにしている。一方、潜在貫徹力が低いと判定された場合、すなわち燃料の噴射圧を増大させても吸気下死点に到達したピストンに燃料を衝突させることができないと判定されるときには、吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴って燃料の噴射時期を進角するようにようにしている。このように吸気ポート9への拡散燃料の吹き返しが燃料噴射圧の高圧化によって抑制できないときには、燃料噴射時期の進角を行うようにしている。このため、燃焼状態に対する悪影響を極力抑えつつ、吸気ポート9に吹き返される燃料の量を減少させることができるようになる。すなわち、燃料の噴射圧を高くする制御と燃料の噴射時期を進角させる制御とを、吸気弁遅閉じ制御が行われるときの燃料噴射の制御態様として、望ましいかたちで切り替えることができるようになる。
【0071】
(4)燃料噴射弁35から噴射された燃料80がピストン5の頂部に衝突する時期と相関関係にある機関回転速度NEに基づいて燃料噴射圧の高圧化を行う際の噴射圧を求めるようにしている。従って、燃料がピストン5の頂部に衝突して層状に液化することによる燃料の拡散性の低下が抑えられるとともに、燃料が吸気ポート9から十分離れた位置に到達するようになる。
【0072】
(5)燃料噴射弁35から噴射された燃料80がピストン5の頂部に衝突する時期と相関関係にある機関回転速度NEに基づいて燃料噴射時期の進角を行う際の進角量を求めるようにしている。従って、燃料がピストン5の頂部に衝突して層状に液化することによる燃料の拡散性の低下が抑えられるとともに、燃料が吸気ポート9から十分離れた位置に到達するようになる。
【0073】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、潜在貫徹力の高・低の判定に基づき燃料噴射圧や燃料の噴射時期を変更することにより、吸気ポート9への拡散燃料の吹き返しを抑制するようにした。この他にも、上記ガソリン機関1において、燃料噴射弁35から噴射された燃料が吸気下死点に到達したピストン5の頂部に衝突して拡散するように、燃料噴射圧及びピストンヘッドの形状等を設定する。そして、吸気弁12の遅閉じ制御によってアトキンソンサイクルが実施されるときには、燃料噴射期間の半ばに噴射された燃料がピストン5の吸気下死点において燃料噴射弁35から最も離れた位置に到達するようにその噴射時期を設定するようにしてもよい。この場合、ピストン5が吸気下死点に到達する時期の気筒内の状態は、図10に模式的に例示するような状態になる。この図10において、燃料80に「S」で示す部分は、燃料噴射の開始初期に燃料噴射弁35から噴射された燃料を表している。また同図10において、燃料80に「M」で示す部分は、燃料噴射期間の中心時期に燃料噴射弁35から噴射された燃料を表している。そして同図10において、燃料80に「E」で示す部分は、燃料噴射の終了直前に燃料噴射弁35から噴射された燃料を表している。この図10に示されるように、ピストン5の頂部に衝突した燃料は、巻き上がりながら気筒内に拡散する。このため、ピストン5が吸気下死点に到達する時期に、上記「S」の部分の燃料が燃料噴射弁35から最も離れた位置に到達するように噴射時期を設定すると、上記「E」の部分の燃料が圧縮行程初期の吸気弁12が開弁している時期に吸気ポート9に近い位置に存在してしまう。そして、主にこの「E」の部分の燃料が吸気ポート9に吹き返されてしまう。また、ピストン5が吸気下死点に到達する時期に、上記「E」の部分の燃料が燃料噴射弁35から最も離れた位置に到達するように噴射時期を設定すると、上記「S」の部分の燃料の拡散がすでに進行している。そのため、圧縮行程初期の吸気弁12が開弁している時期において、この「S」の部分に相当する拡散燃料は、吸気ポート9に近い位置に存在してしまう。従ってこの場合には、主に「S」の部分に由来する、拡散した燃料が吸気ポート9に吹き返されてしまう。一方、ピストン5が吸気下死点に到達する時期に、上記「M」の部分の燃料が燃料噴射弁35から最も離れた位置に到達するように噴射時期を設定すると次のようになる。すなわち、燃料噴射が開始されたときから前記中心時期までの間(噴射期間の前半部)に噴射された燃料と前記中心時期から燃料噴射が終了するまでの間(噴射期間の後半部)に噴射された燃料とを、バランスよく吸気ポート9から離すことができる。従って、吸気ポート9から離れた部分の混合気濃度は濃く、吸気ポート9に近い部分の混合気濃度は薄くなり、同吸気ポート9に吹き返される燃料の量が減少するようになる。これにより、気筒内の混合気濃度のばらつきが抑えられ、ひいてはガソリン機関1の燃焼変動の増大を好適に抑制することができるようになる。
【0074】
・上記実施形態における噴射圧設定マップでは、機関回転速度NEに基づいて燃料の噴射圧を設定するようにしていた。その他にも、吸気弁遅閉じ制御の実行時と非実行時とで燃料の噴射時期が変更される場合には、機関回転速度NEと吸気弁遅閉じ制御実行時の燃料噴射時期とに基づいて燃料の噴射圧を設定するようにしてもよい。
【0075】
・上記実施形態における進角量設定マップでは、機関回転速度NEに基づいて燃料の噴射時期の進角量を設定するようにしていた。その他にも、吸気弁遅閉じ制御の実行時と非実行時とで燃料の噴射圧が変更される場合には、機関回転速度NEと吸気弁遅閉じ制御実行時の燃料噴射圧とに基づいて噴射時期の進角量を設定するようにしてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、潜在貫徹力が高いと判定されたときには燃料噴射圧を高圧化し、潜在貫徹力が低いと判定されたときには燃料噴射時期を進角させるようにした。その他にも、アトキンソンサイクルが実施されるときには、燃料噴射圧を高くする制御及び燃料噴射時期を進角させる制御の両制御を併せて行うようにし、潜在貫徹力に基づいて噴射圧の高圧化度合いと噴射時期の進角度合いとのバランスを変更するようにしてもよい。この場合にも、上記実施形態及び変更例に準ずる作用効果を得ることができる。また、このときには、機関回転速度及び燃料の噴射時期に基づいて噴射圧の増大度合いを設定し、機関回転速度及び燃料の噴射圧に基づいて噴射時期の進角度合いを設定するようにしてもよい。この場合には、燃料噴射弁から噴射された燃料がピストンの頂部に衝突する時期と相関関係にある機関回転速度と燃料噴射時期とに基づいて、燃料噴射圧の増大度合いが設定される。また、燃料噴射弁から噴射された燃料がピストンの頂部に衝突する時期と相関関係にある機関回転速度と燃料噴射圧とに基づいて、噴射時期の進角度合いが設定される。従って、燃料がピストンの頂部に衝突して層状に液化することによる燃料の拡散性の低下を抑えられるとともに、燃料を吸気ポートから十分離れた位置に到達させることができるようになる。
【0077】
・上記実施形態で採用した可変バルブタイミング機構(VVT機構19)は、吸気弁12の開閉時期のみを変更する機構であったが、吸気弁の遅閉じ制御を行うための機構としては他に、吸気弁12のリフト量や作用角を変更するタイプの可変動弁機構、あるいは電磁駆動弁なども適宜採用することができる。そしてこの場合にも、上記実施形態及びその変形例に準ずる作用効果を得ることができる。
【0078】
・上記実施形態及び変形例では、ガソリン機関1に本発明にかかる燃料噴射制御装置を適用した。しかしながら、適用対象となる内燃機関はこのようなガソリン機関1に何ら限定されるものではない。要するに、吸気弁が遅閉じ制御されることでアトキンソンサイクルが実施される筒内噴射式の内燃機関であって、燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射圧や噴射時期を変更することのできる内燃機関であれば、その燃料噴射制御装置として上記実施形態及びその変形例の構成を適用することはできる。そしてこの場合にも、上記実施形態及び変形例に準ずる作用効果を得ることができる。
【0079】
その他、上記実施形態あるいはその変更例から把握することができる技術思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項3〜のいずれか一項に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制御手段は、当該機関の回転速度及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期に基づいて前記噴射圧の増大度合いを設定し、当該機関の回転速度及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧に基づいて前記噴射時期の進角度合いを設定することを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
【0080】
同構成によっても、燃料がピストンの頂部に衝突して層状に液化することによる燃料の拡散性の低下を抑えられるとともに、燃料を吸気ポートから十分離れた位置に到達させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置の一実施形態について、その概略構成を示す図。
【図2】同実施形態が適用されるガソリン機関に設けられた吸気バルブの開閉タイミングの変化態様を例示するグラフ。
【図3】同実施形態による燃料噴射制御の制御手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態による潜在貫徹力の判定にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図5】クランク角に対応するピストン位置と燃料の到達位置との関係を例示するグラフ。
【図6】燃料噴射時期の進角限界を表すグラフ。
【図7】同実施形態の制御が実行されなかった場合の気筒内での燃料の拡散状態を例示する模式図。
【図8】燃料噴射圧を高圧化する制御が行われた場合の気筒内での燃料の拡散状態を例示する模式図。
【図9】噴射開始時期を進角させる制御が行われた場合の気筒内での燃料の拡散状態を例示する模式図。
【図10】上記実施形態の変形例での気筒内での燃料の動きを例示する模式図。
【符号の説明】
1…ガソリン機関、2…シリンダブロック、3…シリンダヘッド、4…シリンダ、5…ピストン、6…コンロッド、7…クランクシャフト、8…燃焼室、9…吸気ポート、10…排気ポート、11…点火プラグ、12…吸気弁、13…排気弁、14…タイミングベルト、15…吸気側タイミングプーリ、16…排気側タイミングプーリ、17…吸気カムシャフト、18…排気カムシャフト、19…可変バルブタイミング機構(VVT機構)、20…吸気通路、21…燃料ポンプ、22…アクチュエータ、23…スロットル弁、24…燃料供給通路、30…排気通路、35…燃料噴射弁、41…クランク角センサ、42…カム角センサ、43…スロットル開度センサ、44…エアフロメータ、45…水温センサ、46…燃圧センサ、50…制御装置(ECU)、60…燃料分配管、61…高圧燃料通路、62…高圧ポンプ、62a…プランジャ、62b…シリンダ、62c…加圧室、62d…電磁弁、63…逆止弁、64…低圧燃料通路、65…低圧ポンプ、66…燃料タンク、67…リターン通路、68…カム、80…燃料、81…拡散燃料。

Claims (6)

  1. 吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御を行う制御手段を備える
    ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 前記制御手段は、当該機関の回転速度に基づいて前記噴射圧の増大度合いを設定する
    請求項1に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御、及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる制御を選択的に実行する制御手段を備え、
    前記制御手段は、前記ピストンが吸気上死点から下降を始めてから前記燃料の噴射が開始されるまでの時間(TQS)を機関出力軸の回転速度と回転角度とに基づき算出するとともに、最大噴射圧で噴射した燃料が前記気筒内の吸気下死点に到達するまでの時間(TQ)をこの算出した時間(TQS)に加算し、この加算した値(TQS+TQ)が、機関出力軸の回転速度から算出される前記ピストンの吸気上死点から吸気下死点に移動するまでに要する行程時間(TST)以下であるか否かを判定する判定手段を備え、この判定手段によって前記加算した値(TQS+TQ)が前記行程時間(TST)以下である旨判定されるときには、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い前記噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御を実行し、同判定手段によって前記加算した時間(TQS+TQ)が前記行程時間(TST)以下ではない旨判定されるときには、前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い前記噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる制御を実行する
    ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする制御、及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる制御を併せて実行する制御手段を備える
    ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 吸気弁の閉弁時期をピストンの吸気下死点よりも遅角側に設定する吸気弁遅閉じ制御が実行可能な筒内噴射式内燃機関にあって前記吸気弁が開弁状態にある吸気行程での気筒内への燃料噴射態様を制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    前記吸気弁遅閉じ制御の実行要求に伴い、前記気筒内に噴射する燃料の噴射圧を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも高くする噴射圧高圧化制御、及び前記気筒内に噴射する燃料の噴射時期を前記吸気弁遅閉じ制御の非実行時よりも進角させる噴射時期進角御を選択的に実行する制御手段を備え
    前記制御手段は、前記噴射圧高圧化制御を優先して実行し、同高圧化制御によって前記 内燃機関の吸気ポートへの燃料の吹き返しが抑制できないときには前記噴射時期進角制御を実行する
    ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 前記制御手段は、当該機関の回転速度に基づいて前記噴射圧の増大度合い及び前記噴射時期の進角度合いを設定する
    請求項3〜5のいずれか一項に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
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