JP4076140B2 - 色誤りを補正する装置 - Google Patents
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Description
本発明はフィルムスキャニング時のフィルムの経年劣化プロセスによる色誤りを補正する装置に関する。
【0002】
カラーフィルムを保管しているあいだの経年劣化のために、エマルジョン内部の色粒子が徐々に重力にしたがって移動すること(粒子マイグレーション)により、色誤りが生じる。反転フィルムではしばしば赤の色粒子がこれに該当し、またカラーネガフィルムではイエローおよびシアンの色がこれに該当する。こうした色誤りは例えばこれらの色を含む単色の水平方向のラインの個所でその全長にわたって色が変化するといったかたちで認識される。
【0003】
粒子マイグレーションに起因する各色成分の誤りは、フィルムが異なる長さの期間保存されていた部分や異なる材料を含む部分から成るのでないかぎり、フィルム全体にわたってほぼ一定である。
【0004】
本発明の課題は、フィルムの経年劣化による色誤りを補正する装置を提供し、僅かな操作コストでできるだけ良好な補正を行えるようにすることである。
【0005】
この課題は、本発明により、スキャニングにより、画像幅全体にわたって延在する画像領域であってもとの色のほぼ同じ領域を選択して形成されたビデオ信号がフィルタへ供給され、このフィルタはノイズ成分および画像内容を抑圧するように構成されており、このフィルタの出力信号はラインメモリ素子に記憶され、記憶された出力信号が反復して読み出され、フィルムのスキャニングによって形成されたビデオ信号に対する補正回路へ補正信号として供給される装置を構成して解決される。
【0006】
特に良好な画像成分の抑圧は、本発明の1つの実施形態によれば、自己相関関数を選択された画像領域のビデオ信号に適用するフィルタを形成して達成される。このとき計算コストを低減するために、選択された画像領域のビデオ信号は自己相関関数を適用する前にローパスフィルタリングにかけられる。
【0007】
フィルムにおいてモノトーンの画像内容に適した色を有する画像領域を選択する場合には、フィルタを単にローパスフィルタのみから形成してもよい。
【0008】
補正信号を形成する際の計算コストを制限するために、本発明では、画像領域は1本から数本のラインの高さを有するものとする。
【0009】
本発明の装置の別の有利な実施形態では、ユーザは画像領域の選択を入力可能である。この場合、ユーザは適切な色を与えられている画像領域をその印象および経験に基づいて選択することができる。
【0010】
僅かなコストで済む実施形態として、選択される画像領域内に予め定められた色成分が充分な規模で存在するか否かに応じて画像領域の選択が自動的に行われる構成が挙げられる。この場合、自動的に選択された画像領域は補正信号を形成するためのスキャニングの前にオペレータに表示され、画像領域の確認または変更の機会が設けられるように構成してもよい。
【0011】
後者の実施形態では、予め調整すべき色成分はフィルムの形式に応じて定められる。カラーネガフィルムではフィルム製造の時間に応じてマゼンタおよびシアン、場合によりイエローの色成分が相当し、これはそれぞれの色粒子の定着の品質に依存して決まる。ポジフィルムでは赤の色粒子が粒子マイグレーションすることから、これが相当することが多い。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態では、種々の画像高さでの画像領域、および/または種々の画像からの画像領域、および/または種々のフィルムシーンからの画像領域が選択される。できる限り一貫して補正信号内のノイズ成分、粒子成分、および画像成分を抑圧するために、フィルムの補正時には前述の手法のバリエーションの全てを画像領域に適用することができる。ただし適切な画像内容では個々のバリエーションを省略してもよい。
【0013】
本発明の実施例を図示し、以下に詳細に説明する。図1には本発明のフィルムスキャナ装置のブロック図が示されている。図2にはフィルム保管時の赤の色粒子のマイグレーションにより発生する赤の信号Rと画像幅との依存関係が示されている。図3には選択された画像領域を有するフィルムの種々のセクションが示されている。
【0014】
図1にはフィルムスキャナのうち本発明の説明に必要な部分の概略図が示されている。ここでは、厚さが拡大されて示されているフィルム1がフィルムガイドエレメント2によって案内される。このフィルムガイドエレメントはフィルムウィンドウ3を形成する。フィルム1のスキャニングを行うために、このフィルムは例えば矢印4の方向へ運動する。ここでフィルムの層5はフィルムガイドエレメント2に接触しない側に配置されている。
【0015】
照明装置6によりフィルムは照明される。ここではフィルタ7および絞り8が設けられている。絞り8は光電流を完全に抑圧するための付加的な絞りを備えたアイリス絞りとして構成されている。解りやすくするために、図1には光電流を抑圧する絞り8は概略的にしか示していない。
【0016】
それぞれ1本ずつ照明されるラインは対物レンズ9およびカラービームスプリッタ10を用いてカラー値信号R、G、Bを形成する3つのラインセンサ11へ結像される。ラインセンサ11の出力信号はプリアンプ12を介してアナログディジタル変換器13へ供給される。変換器はそれぞれ簡単にしか示していない。
【0017】
色誤りを補正するために3つの装置17が用いられるが、そのうち1つだけが詳細に示されている。この装置はデマルチプレクサ14と、乗算補正回路15と、データバス18を介してディジタル信号プロセッサ19に接続されたメモリ装置とを有している。このメモリ装置は複数のラインメモリ素子から成っているが、解りやすくするためにそのうちの2つ21、22しか示していない。これらのラインメモリ素子にはそれぞれ1つずつクロスバー23、24が前置接続および後置接続されている。出力側16では補正されたディジタルカラー値信号が取り出される。
【0018】
クロスバー23を用いれば、それぞれ1つのラインを形成する信号をデマルチプレクサ14およびディジタル信号プロセッサ19からデータバス18を介してラインメモリ素子21、22へ選択的に書き込むことができる。いっぽうクロスバー24を用いれば、ラインメモリ素子21、22から読み出された補正回路15の信号をデータバス18を介してディジタル信号プロセッサ19へ供給することができる。個々のラインメモリ素子21、22への信号の分配を含む書き込みおよび読み出しは制御装置25によって制御され、この制御装置はさらにディジタル信号プロセッサ19からどのラインの書き込みまたは読み出しを行うかについての情報を受け取る。
【0019】
さらにディジタル信号プロセッサ19はデュアルポートRAM26を介してフィルムスキャナ全体の制御に用いられるプロセッサ27に接続されている。実際のフィルムスキャナではこのようなタスクは一般に複数のプロセッサへ分割されるが、このことは本発明の説明にとってはそれほど重要ではない。他の機能とならんで、プロセッサ27は駆動装置28を介して対物レンズのシャープなフォーカシングを調整する。さらにプロセッサ27は照明装置6を制御し、また駆動装置29を介して絞り8を制御する。
【0020】
プロセッサ27はさらに複数のモータを備えたフィルムスキャナの駆動ユニット30全体を制御する。この駆動ユニットは図1では概略的にモータのシンボルにより示されている。プロセッサ27に接続された操作装置31により通常のフィルムスキャナの操作機能のほか、本発明の装置の操作、特に画像領域の選択が可能となる。このためにフィルムは駆動ユニット30を用いて適切な画像またはフィルムシーンまで運動し、その画像領域が操作装置31の適切なアクチュエータにより選択される。相応にプロセッサ27内でマークが形成され、このマークは混合回路32を介してモニタ33へ供給されるビデオ信号に混入される。
【0021】
選択は操作装置31で例えばキーの押圧により操作され、これに応じて選択された画像領域に属するビデオ信号がデマルチプレクサ14およびクロスバー23を相応に制御することによりラインメモリ素子21、22へ読み込まれる。ユーザは次に別の画像領域を選択し、その信号を同様に記憶させる。充分な数の画像領域が選択された後、ディジタル信号プロセッサ19での相応の入力により記憶された信号のフィルタリングが開始される。
【0022】
前述のように有利には第1の段階でローパスフィルタリングが行われ、僅かな計算コストのみでこれに続く自己相関機能を実行できる。フィルタプロセスの終了時にラインメモリ素子21、22内で所望の補正信号が生じ、この信号がこれに続くフィルムスキャナの再生動作の際にラインごとに反復して読み出され、補正回路15へ供給される。モニタ33では補正回路の作用が監視される。場合により別のステップで補正の精細化が行われる。
【0023】
選択された画像領域はランダムシーケンスS(x,z,t)に相応する。ここでxは列であり、yは相対行であり、tは種々のサンプリング時点のシーケンスである。つまりS(x,z,t)は時点tでの行列(x、y)に相応する。このシーケンスはここでは統計的に処理される。特に専用の自己相関関数を用いると、列方向のシーケンスのみが解析される。
【0024】
K[(x1,y1),(x1,y2),...,(x1,yn)]:=m[S(x1,y1),S(x1,y2),...,S(x1,yn)]
ここでnは相互に連続する行の数である。期待値mは式
【0025】
【数1】
【0026】
にしたがって表される。Nは選択された領域の数であり、iは1〜Nの範囲の計数パラメータである。演算の結果は全ての関数に共通する関数成分の良好な近似値となる。
【0027】
図2には色物質粒子のマイグレーション作用の例が示されている。マイグレーションにより赤の信号Rの特性41はx=0の1つの画像縁とx=bの他の画像縁とのあいだの水平方向位置xに依存して生じている。これは画像幅全体にわたって均一に分布する赤の信号(曲線42)から偏差している。本発明ではこの偏差を補償するので、保管前に生じていた一定の赤の信号の特性に対して画像幅全体にわたって補正により再び一定の特性が得られる。
【0028】
補正に適した画像領域の選択を以下に図3に則して説明する。ここには種々のフィルムシーンを備えたフィルムの3つのセクション43、44、45が示されている。選択された画像領域はそれぞれハッチングにより区別される。画像46〜48からはそれぞれ船の色が支配的な同じ画像領域が選択され、画像49、50からは空を表す画像領域が選択された。
【0029】
同じ画像高さ(Bildhoehe; picture height)で選択された画像領域はフィルムの粒子を含むノイズを抑圧するために用いられる。異なる画像高さで選択された画像領域の評価は画像内容の抑圧に用いられる。ただしこれは、例えば当該のフィルム画像内に明らかに垂直方向に延在するパターンが存在しなかったり、フィルムの経年劣化に起因しない色特性がそれぞれのシーン内に存在する場合、多くのケースで充分ではない。したがってこの実施例では付加的に画像領域51〜53がセクション44から選択され、画像領域54〜56がセクション45から選択される。
【0030】
これに関連して、補正の品質は最終的には画像領域の選択およびフィルタリング、特にフィルタリングの計算コストに依存するということを指摘しておきたい。画像領域を適切に選択することにより、例えばフィルムシーンの選択数が少なくても良好な補正が達成される。本発明の装置ではさらに計算された補正量を適用後の試行の際に変化させ、場合により良好な結果を得られるまで複数回反復させることも可能である。
【0031】
選択された画像領域のビデオ信号は、図1に関連して説明したように、補正信号を導出するためにフィルタリングされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフィルムスキャナ装置のブロック図である。
【図2】 赤の信号Rと画像幅との依存関係を示すグラフである。
【図3】 選択された画像領域を有するフィルムの種々のセクションを示す図である。
Claims (9)
- フィルムスキャニング時にシネマフィルムの色粒子の移動による色誤りを補正する装置において、
スキャニングにより、画像幅全体にわたって延在する画像領域(51〜56)であってもとの色のほぼ同じ領域を選択して形成されたビデオ信号がフィルタ(18〜24)へ供給され、
該フィルタ(18〜24)はノイズ成分および画像内容を抑圧するように構成されており、
該フィルタの出力信号はラインメモリ素子に記憶され、記憶された出力信号が反復して読み出され、フィルムのスキャニングによって形成されたビデオ信号に対する補正回路(15)へ補正信号として供給される
ことを特徴とする色誤りを補正する装置。 - フィルタは自己相関関数を選択された画像領域(51〜56)のビデオ信号に適用する機能部により形成される、請求項1記載の装置。
- 選択された画像領域のビデオ信号は自己相関関数を適用する前にローパスフィルタリングにかけられる、請求項2記載の装置。
- フィルタはローパスフィルタを含む、請求項1記載の装置。
- 画像領域(51〜56)は1本から数本のラインの高さを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
- ユーザが画像領域(51〜56)の選択を制御可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
- 選択される画像領域(51〜56)内に予め定められた色成分が充分な規模で存在するか否かに応じて画像領域の選択が自動的に行われる、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
- 自動的に選択された画像領域は補正信号を形成するためのスキャニングの前にユーザに表示され、該ユーザに画像領域の確認または変更の機会が与えられる、請求項7記載の装置。
- 種々の連続画像からまたは種々のフィルムシーンから種々の垂直方向画像位置で画像領域が選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
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