JP4075089B2 - ラクチドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸プレポリマーを解重合して乳酸の環状二量体であるラクチドを製造する方法に関し、より詳しくは、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を得ることのできるラクチド製造方法に関する。
【0002】
ラクチドは、生分解性ポリマーであるポリ乳酸の製造原料として特に有用なものである。
【0003】
【従来の技術】
従来より、ラクチドの製造方法としては、乳酸を例えば減圧下、加熱することにより脱水縮合させ、比較的低分子量の乳酸プレポリマーを合成し、次いでこの乳酸プレポリマーを触媒存在下、減圧下で加熱して解重合することによってラクチドを生成させ、これを蒸気として反応系外に取り出す、いわゆる反応蒸留法が知られている。
【0004】
この方法では、乳酸プレポリマー合成の際に、プレポリマー中に未反応の乳酸や乳酸鎖状二量体、乳酸鎖状三量体、乳酸鎖状四量体などの低分子オリゴマーが含まれる。そのため、解重合工程において、これらの乳酸低分子成分がラクチドに転化されることなく、ラクチドと共に蒸気として反応系外に取り出され、ラクチド留分中のラクチド含有率が低下する。
【0005】
例えば、特開昭63−101378号公報記載のラクチド製造法によれば、得られるラクチドの純度は概して低く、精製操作が必要であった。
【0006】
また、特表平7−500091号公報記載の方法によれば、得られる蒸留物中のラクチド含有率は、56〜84%程度と低く、また、全ラクチド中における目的とするLL−ラクチド含量も90〜92%程度であり、光学純度もやや低い、という問題があった。
【0007】
ラクチド含有率を高めるために、乳酸プレポリマー合成の反応時間を長くして、乳酸の低分子成分を低減させることが考えられる。確かにこの方法は、ラクチド含有率の向上には有効であるが、反応時間を長くすることで反応物が長時間高温に晒されることになり、得られるラクチドの光学純度が低下するという問題が生じる。すなわち、例えばL−乳酸を原料としてL−乳酸プレポリマーを合成する場合、合成工程中の長時間の加熱によりラセミ化が起こり、乳酸プレポリマー鎖中にはD−乳酸構成単位も含まれる。その結果、プレポリマー解重合工程において、目的とするLL−ラクチド以外に、L−乳酸とD−乳酸の環状二量体であるメソ−ラクチドやD−乳酸の環状二量体であるDD−ラクチドが生成してしまい、ラクチドの光学純度が低下する。また、D−乳酸を原料としてD−乳酸プレポリマーを合成する場合には、目的とするDD−ラクチド以外に、メソ−ラクチドやLL−ラクチドが生成してしまう。このように、乳酸プレポリマー合成の反応時間を長くすると、得られるラクチドの光学純度が低下してしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を得ることのできるラクチド製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、乳酸の脱水縮合により得られた乳酸プレポリマーをそのまま解重合するのではなく、乳酸プレポリマー中に含まれる低分子成分を留去しておくことによって、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を、経済的に効率良く製造し得ることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のラクチドの製造方法は、乳酸プレポリマーを解重合してラクチドを製造する方法であって、第1工程において、触媒非存在下、原料の乳酸プレポリマー中に含まれる低分子成分の少なくとも一部を、フラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器を用いて5Torr以下の圧力、150〜300℃の温度で蒸発させて留去し、第2工程において、この低分子成分の少なくとも一部が除去された乳酸プレポリマーを、解重合触媒存在下、解重合温度に加熱すると共に前記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力に減圧して、ラクチドを気化させて捕集することを特徴とする。
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明における原料としての乳酸プレポリマーは、乳酸モノマーを脱水縮合することによって得られる、重量平均分子量500〜10000、好ましくは500〜5000の重合体である。脱水縮合は、例えば、乳酸モノマーを減圧(一般に5〜20Torr程度)下で加熱(一般に120〜170℃)して行うことができる。また、乳酸プレポリマーは、L−乳酸、D−乳酸、これらの混合物のいずれの乳酸モノマーから得られたものであっても良い。
【0012】
この乳酸プレポリマーには通常、低分子成分として、4〜7重量%程度の未反応乳酸; プレポリマー合成中に生成する0.1〜0.5重量%程度のラクチド、5〜15重量%程度の乳酸鎖状二量体、5〜10重量%程度の乳酸鎖状三量体、5〜10重量%程度の乳酸鎖状四量体等の乳酸の低分子オリゴマー; 及び0.1〜0.5重量%程度の水が含まれている。
【0013】
本発明においては、第1工程において、原料の乳酸プレポリマー中に含まれる上記低分子成分の少なくとも一部を触媒非存在下で留去する。低分子成分の留去は、公知のフラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器を用いて行う。フラッシュ蒸発器は、混合液を加熱し一部を蒸発させ、蒸気と残液とを十分に接触させて、両相の組成が平衡に達した時に気液を分離する方式のものであり、その形状は特に限定されるものではない。また、薄膜型蒸発器は、混合液を加熱面に沿って流下させ、薄膜状として一部を蒸発させる方式のものであり、その形状は特に限定されるものではない。
【0014】
本発明においては、フラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器内の温度は、150〜300℃とする。180〜250℃が好ましい。150℃よりも低温では、低分子成分の留出に時間がかかる。一方、300℃よりも高温では、ラセミ化反応が促進され、ラクチドの光学純度の低下を招く。
【0015】
フラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器内の圧力は、5Torr以下とする。3Torr以下が好ましい。圧力の下限値は、真空ポンプの性能にもよるが、0.1Torr程度である。5Torrを超える圧力では、上記の温度範囲において、低分子成分の留出速度が遅く、滞留時間が長くなるため、ラセミ化反応が促進され、ラクチドの光学純度の低下を招く。フラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器内の滞留時間は、通常、30秒以下が好ましい。
【0016】
このような操作条件によって、蒸発させられた低分子成分を、蒸発器に取り付けられた凝縮器により凝縮させる。そして、低分子成分が取り除かれた乳酸プレポリマーを蒸発器の受器に受け、次の解重合工程に供する。
【0017】
低分子成分の凝縮は、好ましくは2段階で行うことができる。すなわち、蒸発器外部に凝縮器2基を直列に配置しておき、第1凝縮器で、蒸発させられた低分子成分のうち、乳酸及び/又は乳酸の低分子オリゴマーを、前記蒸発器内圧力における乳酸の凝縮点以下且つ水の凝縮点を超える温度で凝縮させる。この温度は、蒸発器内圧力が例えば3Torrの場合、40〜60℃程度とすれば良い。次いで第2凝縮器で、蒸発させられた水を、前記蒸発器内圧力における水の凝縮点以下の温度で凝縮させる。この温度は、蒸発器内圧力が例えば3Torrの場合、−20〜0℃程度とすれば良い。
【0018】
このように分別凝縮を行なった場合、凝縮捕集された乳酸及び/又は乳酸の低分子オリゴマーを、乳酸プレポリマーの合成原料として再利用することが可能となる。
【0019】
この第1工程において、乳酸プレポリマーの低分子成分含量を、乳酸:5重量%程度、乳酸鎖状二量体:3重量%程度、乳酸鎖状三量体:3重量%程度、乳酸鎖状四量体:3重量%程度にまで減量させておくことが好ましい。
【0020】
第1工程の原料として光学活性なL−又はD−乳酸から合成されたL−又はD−乳酸プレポリマーを用いた場合には、ラセミ化を起こすことなく、L−又はD−乳酸プレポリマーを回収することができる。
【0021】
続いて第2工程において、第1工程で低分子成分の少なくとも一部が除去された乳酸プレポリマーを、解重合触媒存在下、解重合温度に加熱すると共に前記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力に減圧して、ラクチドを気化させて捕集する。
【0022】
この解重合反応に用いる触媒は、乳酸の重合用触媒であって、特に限定されるものではないが、通常、周期律表IA族、 IIIA族、IVA族、IIB族、IVB族およびVA族からなる群から選ばれる金属または金属化合物からなる触媒である。
【0023】
IA族に属するものとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属と弱酸の塩(例えば、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、オクチル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、乳酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、オクチル酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等)等を挙げることができる。
【0024】
IIIA族に属するものとしては、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等を挙げることができる。
【0025】
IVA族に属するものとしては、例えば、有機スズ系の触媒(例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズ等)の他、粉末スズ、酸化スズ、ハロゲン化スズ等を挙げることができる。
【0026】
IIB族に属するものとしては、例えば、亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物等を挙げることができる。
【0027】
IVB族に属するものとしては、例えば、テトラプロピルチタネート等のチタン系化合物、ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物等を挙げることができる。
【0028】
VA族に属するものとしては、例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物、酸化ビスマス(III) 等のビスマス系化合物等を挙げることができる。
【0029】
これらの中でも、スズまたはスズ化合物からなる触媒が活性の点から好ましく、オクチル酸スズが特に好ましい。
【0030】
これら触媒の使用量は、原料の乳酸プレポリマーに対して0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%程度である。
【0031】
解重合反応は、通常の縦型反応槽を用いて行なっても良いし、分子蒸留装置を用いて行なっても良い。分子蒸留装置としては、ポットスチル型、流下膜型、遠心型等が挙げられるが、連続式で広く工業的に用いられているのは、流下膜型、遠心型装置である。遠心型分子蒸留装置は、遠心力を利用して加熱面上に蒸発物質の膜を広げる方式のものであり、流下膜型分子蒸留装置は、蒸発物質を加熱面に沿って流下させ、薄膜状とする方式のものである。
【0032】
解重合温度は、160〜300℃、好ましくは180〜260℃、より好ましくは190〜250℃に設定する。この温度が160℃未満であると、ラクチドの留出が難しくなり、かなりの高真空度を要する。一方、温度が300℃を超えると、ラセミ化、着色の原因となりやすい。
【0033】
解重合装置内の圧力は、上記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力であり、通常1〜50Torr程度である。より低圧とした方が加熱温度を低くすることができるので好ましく、従って好ましくは1〜20Torr、より好ましくは1〜10Torr、さらに好ましくは1〜5Torrである。
【0034】
また、解重合装置における滞留時間は、ラセミ化を防ぐ観点から、できるだけ短い方が好ましく、通常は、1時間以下とする。分子蒸留装置を用いると、この時間を10分以下、好ましくは3分以下、より好ましくは1分以下にできるので好ましい。
【0035】
このような操作条件によって、生成したラクチドを蒸気として解重合反応系外に取り出し捕集することができる。ラクチドの捕集は、解重合装置に取り付けられた凝縮器により容易に行うことができる。
【0036】
本発明によれば、乳酸等の低分子成分が留去された乳酸プレポリマーを解重合するので、乳酸単量体や鎖状二量体等の混入が非常に少なく、高ラクチド含有率(例えば、ラクチド留分中のラクチド含有率:85〜95%)のラクチド留分を得ることができる。また、本方法によれば、乳酸プレポリマー合成の反応時間を長くする必要がないので、ラセミ化を抑えることができ、原料として光学活性なL−又はD−乳酸から合成されたL−又はD−乳酸プレポリマーを用いた場合には、高い光学純度のLL−又はDD−ラクチド(例えば、光学純度:90〜98%eeのLL−ラクチド)を得ることができる。
【0037】
本発明の方法で製造されたラクチドは高純度のものであるが、必要によりさらに精製した後、ポリ乳酸への重合反応に利用することもできる。精製は、例えば、特開平6−256340号公報「ラクチドの溶融結晶化精製」、特開平7−118259号公報「ラクチドの精製法及び重合法」等に記載の方法に従って行うことができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例における各種分析は次のように行なった。
【0039】
<乳酸プレポリマーの重量平均分子量>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
カラム:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体充填GPCカラム
検出波長:RI
【0040】
<乳酸プレポリマー及びラクチドの光学純度>
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により求めた。
カラム:シリカゲル充填DLアミノ酸分離用カラム
検出波長:UV 210nm
【0041】
<乳酸由来の低分子成分の含量>
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により求めた。
カラム:合成ポリマー系逆相分配型ゲル充填カラム
検出波長:UV 210nm
【0042】
<水の含量>
カール・フィッシャー水分率計(容量法)により求めた。
【0043】
[実施例1]
(第1工程)
第1工程で用いた装置の概略構成を、図1を参照して説明する:
図1において、フラッシュ蒸発器(2) は、原料の乳酸プレポリマー滴下用のプレポリマータンク(1) 、攪拌翼、温度計(3) 及び圧力計(4) を備えた容量2Lのガラス製セパラブルフラスコであり、マントルヒータで加熱され、真空ポンプ(5) で減圧されるようにされている。また、蒸発器(2) の外部に第1凝縮器(7) 及び第2凝縮器(8) が配設され、蒸発器(2) の底部に受器(6) としてガラス製セパラブルフラスコが接続されている。
【0044】
本実施例では、原料の乳酸プレポリマーとして、重量平均分子量1700、光学純度98.5%ee、表1に示す各低分子成分含量のL−乳酸プレポリマーを用いた。
【0045】
原料の乳酸プレポリマー261.8gを予め200℃に加温融解しておき、プレポリマータンク(1) から平均8.4g/minの速度でフラッシュ蒸発器(2) に供給した。蒸発器(2) 内を圧力3Torr、温度200℃に保ち、第1凝縮器(7) の温度を90℃、第2凝縮器(8) の温度を−30℃に設定した。蒸発器(2) において、蒸発成分と液成分とに気液分離し、蒸発成分のうち、乳酸及び乳酸の低分子オリゴマーを第1凝縮器(7) で凝縮させ、蒸発水を第2凝縮器(8) で凝縮させ、一方、液成分を受器(6) に回収した。
【0046】
原料プレポリマーの滴下開始から、留出物を凝縮させ、液成分を回収するのに、31minの操作時間を要した。留出物は13.4gであり、回収液成分総量は245.0gであった。
【0047】
原料プレポリマー、回収乳酸プレポリマー及び留出物の分析結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から、この第1工程において、光学純度をほとんど低下させることなく、低分子成分含量が低減された乳酸プレポリマーが回収されたことが分かる。特に、乳酸単量体、乳酸鎖状二量体、乳酸鎖状三量体の含量が低減された。これらの低減分は、留出物として得られている。
【0050】
(第2工程)
次に、この回収乳酸プレポリマーの解重合を行なった。回収乳酸プレポリマー200gを容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに仕込み、触媒としてオクチル酸スズ1gを加え、常圧、160℃で1時間攪拌した。その後、5Torr、200℃の条件下で、ラクチドを留出させ、凝縮器で捕集した。留出時間を2時間とし、180.9gのラクチド留分を得た。このラクチド留分の分析結果を表2に示す。
【0051】
[比較例1]
実施例1と同じ原料L−乳酸プレポリマー200gを用い、第1工程を行なわずに、直接第2工程を行なった。第2工程の操作は、実施例1の第2工程と全く同様に行ない、178.4gのラクチド留分を得た。このラクチド留分の分析結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2から、実施例1では比較例1に比べ、ラクチド留分の収量が多く、光学純度の低下を招くことなく、目的とするLL−ラクチドの含量が約8%も高い。そして、乳酸単量体、乳酸鎖状二量体等の含量が非常に少ない。
【0054】
以上より、解重合に先立って、フラッシュ蒸発によって原料乳酸プレポリマーから乳酸単量体、乳酸鎖状二量体等の低分子成分を除去しておくことは、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を得るために、非常に有効であることが明らかである。
【0055】
[実施例2]
(第1工程)
第1工程で用いた装置の概略構成を、図2を参照して説明する:
図2において、薄膜蒸発器(12)(2−03型WIPRENE、神鋼パンテック社製)は、原料の乳酸プレポリマー滴下用のプレポリマータンク(11)、熱電対(13)及び圧力計(14)を備え、真空ポンプ(15)で減圧されるようにされている。また、蒸発器(12)の外部に第1凝縮器(17)及び第2凝縮器(18)が配設され、蒸発器(12)の底部に受器(16)としてガラス製セパラブルフラスコが接続されている。蒸発器(12)内の加熱域はマントルヒータで加熱されるものであり、また、ジャケットとローターとの間隔を5mmに設定して、プレポリマーを薄膜化することにより、伝熱効率を高めるようにした。
【0056】
本実施例では、原料の乳酸プレポリマーとして、重量平均分子量1800、光学純度98.6%ee、表3(及び表4)に示す各低分子成分含量のL−乳酸プレポリマーを用いた。第1工程については、以下に示す操作条件Aと操作条件Bの2通りの操作を行なった。
【0057】
(操作条件Aの第1工程)
原料の乳酸プレポリマー323gを予め160℃に加温融解しておき、プレポリマータンク(11)から14.7g/minの速度で、薄膜蒸発器(12)内の液重量を一定に保つように供給した。蒸発器(12)内を圧力3Torr、温度160℃に保ち、第1凝縮器(17)の温度を100℃、第2凝縮器(18)の温度を0℃に設定した。蒸発成分のうち、乳酸及び乳酸の低分子オリゴマーを第1凝縮器(17)で凝縮させ、蒸発水を第2凝縮器(18)で凝縮させ、一方、液成分を受器(16)に回収した。
【0058】
原料プレポリマーの滴下開始から、留出物を凝縮させ、液成分を回収するのに、22minの操作時間を要した。留出物は22.3gであり、回収液成分総量は268gであった。
【0059】
原料プレポリマー、回収乳酸プレポリマー及び留出物の分析結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3から、この操作条件Aの第1工程において、低分子成分含量が低減された乳酸プレポリマーが回収されたことが分かる。特に、乳酸単量体の含量が低減された。
【0062】
(操作条件Bの第1工程)
薄膜蒸発器(12)内を圧力3Torr、温度200℃とした以外は、上記操作条件Aの場合と全く同様に操作を行なった。
【0063】
原料プレポリマーの滴下開始から、留出物を凝縮させ、液成分を回収するのに、10minの操作時間を要した。留出物は4.8gであり、回収液成分総量は233gであった。
【0064】
原料プレポリマー、回収乳酸プレポリマー及び留出物の分析結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4から、この操作条件Bの第1工程において、低分子成分含量が低減された乳酸プレポリマーが回収されたことが分かる。操作条件Aに比して特に、乳酸二量体、乳酸三量体の含量がより低減され、より好適な操作条件であった。従って、次の第2工程では、この操作条件Bで得られた回収乳酸プレポリマーを用いた。
【0067】
(第2工程)
次に、実施例1と同様にして、操作条件Bの回収乳酸プレポリマーの解重合を行なった。回収乳酸プレポリマー50gを容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに仕込み、触媒としてオクチル酸スズ0.25gを加え、常圧、160℃で1時間攪拌した。その後、5Torr、200℃の条件下で、ラクチドを留出させ、凝縮器で捕集した。留出時間を2時間とし、43.4gのラクチド留分を得た。このラクチド留分の分析結果を表5に示す。
【0068】
[比較例2]
実施例2と同じ原料L−乳酸プレポリマー50gを用い、第1工程を行なわずに、直接第2工程を行なった。第2工程の操作は、実施例2の第2工程と全く同様に行ない、42.9gのラクチド留分を得た。このラクチド留分の分析結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5から、実施例2では比較例2に比べ、ラクチド留分の収量が多く、光学純度の低下を招くことなく、目的とするLL−ラクチドの含量が約8%も高い。そして、乳酸単量体、乳酸鎖状二量体等の含量が非常に少ない。
【0071】
以上より、解重合に先立って、薄膜蒸発によって原料乳酸プレポリマーから乳酸単量体、乳酸鎖状二量体等の低分子成分を除去しておくことは、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を得るために、非常に有効であることが明らかである。
【0072】
【発明の効果】
本発明のラクチド製造方法によれば、上述のように、第1工程において、原料乳酸プレポリマー中に含まれる乳酸等の低分子成分をフラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器を用いて5Torr以下の圧力、150〜300℃の温度で蒸発させて留去しておき、第2工程において、この低分子成分含量が低減された乳酸プレポリマーを解重合するので、乳酸単量体や鎖状二量体等の乳酸低分子成分の混入が非常に少なく、高ラクチド含有率のラクチド留分を製造することができる。また、本方法によれば、ラセミ化を抑えることができ、原料としてL−又はD−乳酸プレポリマーを用いた場合には、高い光学純度のLL−又はDD−ラクチドを製造することができる。
【0073】
また、本発明のラクチド製造方法は、ラクチド含有率を高めるために、乳酸プレポリマー合成の反応時間を長くする必要もないので、全体としての工程時間の短縮という観点からも、非常に有効な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法の第1工程で用いる装置例の概略構成を示す図である。
【図2】 本発明の方法の第1工程で用いる装置例の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
(1)(11) …プレポリマータンク
(2) …フラッシュ蒸発器
(12)…薄膜蒸発器
(3) …温度計
(13)…熱電対
(4)(14) …圧力計
(5)(15) …真空ポンプ
(6)(16) …受器
(7)(17) …第1凝縮器
(8)(18) …第2凝縮器
Claims (5)
- 乳酸プレポリマーを解重合してラクチドを製造する方法であって、第1工程において、触媒非存在下、原料の乳酸プレポリマー中に含まれる低分子成分の少なくとも一部を、フラッシュ蒸発器又は薄膜蒸発器を用いて5Torr以下の圧力、150〜300℃の温度で蒸発させて留去し、第2工程において、この低分子成分の少なくとも一部が除去された乳酸プレポリマーを、解重合触媒存在下、解重合温度に加熱すると共に前記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力に減圧して、ラクチドを気化させて捕集することを特徴とする、ラクチドの製造方法。
- 第1工程において、蒸発させられた低分子成分のうち、乳酸及び/又は乳酸の低分子オリゴマーを、前記圧力における乳酸の凝縮点以下且つ水の凝縮点を超える温度で凝縮させ、次いで、蒸発させられた水を前記圧力における水の凝縮点以下の温度で凝縮させることを特徴とする、請求項1に記載のラクチドの製造方法。
- 凝縮された乳酸及び/又は乳酸の低分子オリゴマーの少なくとも一部を、乳酸プレポリマーの合成原料として再利用することを特徴とする、請求項2に記載のラクチドの製造方法。
- 原料の乳酸プレポリマーが、光学純度90%ee以上のL−乳酸プレポリマー又は光学純度90%ee以上のD−乳酸プレポリマーであることを特徴とする、請求項1〜3項のうちのいずれか1項に記載のラクチドの製造方法。
- 第2工程において、解重合触媒として、周期律表IA族、 IIIA族、IVA族、IIB族、IVB族およびVA族からなる群から選ばれる金属または金属化合物からなる触媒を用いることを特徴とする、請求項1〜4項のうちのいずれか1項に記載のラクチドの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34659296A JP4075089B2 (ja) | 1996-12-09 | 1996-12-09 | ラクチドの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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