光ディスク装置は、情報の記録再生にレーザ光を用いる。再生時には、レーザ光を情報記録面(以下、単に媒体とも呼ぶ)に集光し、記録マークによって変調された反射光をフォトディテクタにより電気信号に変換して情報を再生する。媒体への情報記録は、高い光パワーの集光ビームを記録面に照射し、微少領域の温度を上げることによって、記録マークを形成する。
記録品質を高めるためには、マーク形状、特にエッジ位置を正確に制御する必要があり、マークを記録するパワーを精密に制御することが必要である。これは、記録時に記録パワーのずれや媒体の感度のばらつきが生じている場合には、その記録された情報を読み出すと、再生波形にアシンメトリが発生し、再生性能が劣化するためである。
図13は、媒体上に形成された記録マークの一例を示している。同図において、(a)は、理想記録マークの状態を、(b)は、理想より短い記録マークの状態を、(c)は、理想より長い記録マークの状態をそれぞれ示している。アシンメトリは、主に記録されたマーク形状に依存して発生し、(b)及び(c)に示すように、マークの線方向のエッジ位置が破線で示す適正な位置からずれることによって発生する。
アシンメトリの発生を抑えるためには、記録パワーを含むパラメータを最適化する必要がある。パラメータ最適化に関する技術としては、特許文献1や特許文献2に記載された技術がある。特許文献1に記載の技術では、通常記録領域とは別の領域で試し書きを行ってパラメータを最適化する。また、特許文献2に記載の技術では、最短周期の細密パターンと最長周期の最疎パターンとを組み合わせたパターンを記録し、再生時の両パターンに相当する波形の平均レベルの差を検出して、それがほぼゼロとなる(シンメトリがとれる)ように記録パワーをトレーニングする。
また、再生時に、アシンメトリによって発生するオフセットを補正し、アシンメトリの影響を低減する技術としては、特許文献3に記載の技術がある。この技術では、再生信号から直流成分を除去した信号Sに対して、ピーク値P及びボトム値Bをそれぞれ求め、これらの値に応じてオフセット調整値(P+B)×k(kは定数)を算出し、それに含まれる高周波成分を減衰した信号を、オフセット調整信号として信号Sに加えることでオフセット値を調整し、再生時におけるアシンメトリの影響によるDCオフセットを抑制する。
ここで、高密度記録された情報を再生する方式として、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式と呼ばれる信号処理技術が知られている。PRML方式は、パーシャルレスポンス波形等化と最尤検出とを組み合わせたものであり、再生チャネルを考慮した最尤検出器の特性を最大限に引き出すために、再生信号を波形等化によって補正し、その後、最尤検出する。
PR方式のうちで最も簡単なPR1方式(PR(1,1)方式)を用いてPRML検出する場合の動作を簡単に説明する。PR1方式では、符号系列“0100”に対してヘッドから読み出された信号を、FIR(Finite Impulse Response)フィルタに代表される等化器によって、符号間干渉を利用し“0110”となるように波形等化を行う。これにより、記録符号“0,1”に対し、等化後には“0,1,2”の3値のレベルとなる。通常の伝送系ではACカップリングされるため、以降では、この基準レベルを“−1,0,1”に読み替える。
記録符号akに対するPR1方式の復号器の入力信号系列xkは、図14に示すような等化器の出力に合わせた“−1,0,1”の3値の基準レベルで2状態の遷移をする。図15は、PR1方式のトレリス線図を示している。図15に示すトレリス線図は、図14に示す状態遷移図を時間軸上に展開したものでる。トレリス線図の各時刻のパスの長さをブランチメトリックと呼び、状態S(k−1)=Si(i=0,1)から状態S(k)=Sj(j=0,1)に遷移するブランチメトリックは、下記の式(1)で与えられる。
式(1)
lk 00=(xk−(−1))2
lk 01=(xk−0)2
lk 10=(xk−0)2
lk 11=(xk−1)2
ビタビアルゴリズムでは、トレリス線図でのある時刻kでの1つの状態に入力する2本のパスのうち、時刻k−1までのパスの長さの総和と、時刻kで入力されたxkの値とから、それぞれのパスを通った場合のパスの長さを計算し、より小さいパスを選択する操作を行う。ある時刻において、各状態に至るパスの長さの最小値をパスメトリックといい、PR1方式のメトリックは、下記の式(2)で与えられる。
式(2)
mk(S0)=min{mk−1(S0)+lk 00,mn−1(S1)+lk 10}
mk(S1)=min{mk−1(S0)+lk 01,mk−1(S1)+lk 11}
式(2)において、例えばmk(S0)は、時刻kにおいて状態S0に遷移するパスの長さの最小値を示している。すなわち、時刻k−1に状態S0に遷移するまでのパスメトリックと、時刻k−1において状態S0から時刻kにS0に遷移するブランチメトリックの和と、時刻k−1に状態S1に遷移するまでのパスメトリックと、時刻k−1において状態S1から時刻kにS0に遷移するブランチメトリックの和とのうちで、値が小さいほうが選択される。各時刻において、式(2)のメトリックを持つパスのみが最尤パスとなる可能性を有するパスとして残され、パスメトリックが更新される。こうして残されたパスを生き残りパスと呼び、生き残りパスを過去に溯っていくと、ある時点でパスが1本にマージする確率が高くなる。マージしたパスを最尤パスとして復号し、検出データが得られる。
特開平6−195713号公報
特開平7−153078号公報
特開2001−84702号公報
PRML方式は、高密度記録された情報や分解能が低い信号を再生することに適している。しかしながら、等化器として一般的に用いられるFIRフィルタのような線形フィルタでは、非線形を有するアシンメトリの影響を低減できない。また、ビタビ復号器の入力基準レベルは、アシンメトリのような非線形歪に対応できるように設定されていない。アシンメトリのある再生波形は、パターンの粗密に対応した正と負のピークレベルが中央となる基準レベルに対して対称にならない、つまり正負のピークレベルの中心がパターンの粗密によって異なるという非線形な現象が生じる。
例えば、PR1ML方式では、ビタビ復号器の入力基準レベルは“−1,0,1”となる。しかし、アシンメトリのある波形の場合には、入力波形が、例えば“−0.8,0.1,1.2”となる可能性がある。この場合、正しい基準レベルに対して、誤差が“−0.2,0.1,0.2”とそれぞれ異なっており、オフセット補正では完全な補正は行うことができない。各時刻において誤差が生じると、誤ったパスが選択される可能性が高くなり、検出精度を劣化させるという問題がある。また、記録密度が高くなることによって、再生信号は符号間干渉が増加することから、検出精度の低下を抑えるために高次のPRML方式を用いることがある。この場合、ビタビ復号器の基準レベルは増加し、その間隔は狭くなるため、同じアシンメトリ量でも、相対的にそのずれは大きくなり再生性能が劣化する可能性がある。
特許文献1や特許文献2では、記録時に、アシンメトリができるだけ発生しないように、記録パワーを含むパラメータを設定している。しかし、記録時にアシンメトリの影響を抑え切れなかった場合には、再生時にアシンメトリに対する補償を行うことができないため、検出精度が劣化する可能性がある。また、特許文献3に記載の技術では、再生信号のピーク値及びボトム値に基づくオフセット調整値によってアシンメトリを補償しているが、アシンメトリを有する再生波形は、振幅のピークレベルの絶対値が大きくなる程、すなわち、比較的周期の長いパターンで振幅の大きな波形のそのピーク、又はボトム(負のピーク)に近づく程、正常なレベルからのずれが大きくなるため、アシンメトリに対する補償効果は十分ではない。
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、再生信号にアシンメトリがある場合でも、最尤検出の検出性能を向上させることができる情報信号再生装置、方法、及び、光ディスク再生装置を提供することを目的とする。
本発明の情報信号再生装置は、最尤検出を用いて情報記録媒体から読み出された再生信号をチャネルビットデータ列に復号する情報信号再生装置であって、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルと、最尤検出における複数の基準レベルのうちの中央の基準レベルとが一致するように、前記再生信号をオフセット補正するオフセット補正器と、前記オフセット補正器によって補正された再生信号を最尤検出によって復号し、前記チャネルビットデータ列を生成する最尤検出器とを備えることを特徴とする。
本発明の情報信号再生装置では、オフセット補正器により、情報記録媒体から読み出された再生信号を、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルが、最尤検出における中央の基準レベルに一致するようにオフセット補正し、最尤検出器により、オフセット補正された再生信号から、最尤検出により、チャネルビットデータ列を得る。情報記録媒体から読み出した再生信号にアシンメトリがある場合、再生信号に含まれる最短周期信号の信号レベルが、最尤検出における中央の基準レベルからずれるオフセットずれが発生する。最尤検出の検出性能は、再生信号のオフセットずれに対して敏感である。本発明の情報信号再生装置では、オフセット補正器で、再生信号のオフセットずれを補正することにより、最尤検出の性能を向上することができ、最尤検出器で、チャネルビットデータ列を正しく復号することができる。
本発明の情報信号再生装置は、前記チャネルビットデータ列から、該チャネルビットデータ列に対応する前記最尤検出器の理想入力であるレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成器と、前記レプリカ信号が前記最尤検出における中央の基準レベル付近にあるとき、前記最尤検出器の入力信号と前記レプリカ信号との差を誤差信号として出力する誤差算出器とを備えており、前記オフセット補正器は、前記誤差信号に基づいてオフセット補正を行う構成を採用できる。再生信号がアシンメトリの影響を受ける場合には、そのアシンメトリの影響は、中央の基準レベルから離れるほど強くなる。従って、各時点における再生信号とレプリカ信号との差を全て用いてオフセット補正すると、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出における中央の基準レベルに一致させることは困難である。再生信号に含まれる最短周期信号に相当する中央の基準レベルにあるときの再生信号とレプリカ信号との差のみを誤差情報として用いることで、オフセット補正器により、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出における中央の基準レベルに一致させることができる。
ところで、オフセット補正器で、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出における中央の基準レベルに一致するようにオフセット補正する際には、最短周期信号に対応する再生信号レベルと、それに対応するレプリカ信号の信号レベルとの差を求め、これを誤差情報として用いればよい。しかしながら、その場合には、再生信号に含まれる最短周期信号の数が少ない場合には、得られる誤差情報が少なく、オフセット補正の精度を確保できないことも考えられる。ここで、再生信号のエッジ部分では、最尤検出の中央の基準レベルを横切ることになるが、このレベルも、最短周期信号と同様なレベルの信号として、最尤検出器に入力されることになる。そこで、レプリカ信号が中央の基準レベル付近となるときの再生信号の信号レベルとレプリカ信号の信号レベルとの差を、誤差情報として用いる。このようにすることで、誤差情報のサンプル数を増やすことができ、オフセット補正の精度を高めることができる。
本発明の情報信号再生装置では、前記誤差算出器は、前記レプリカ信号が前記中央の基準レベル、又は、前記中央の基準レベルに上下に隣接する基準レベルにあるときに、前記最尤検出器の入力信号と前記レプリカ信号との差を誤差信号として出力する構成を採用できる。PR1MLでは、基準レベルが3つであるため、レプリカ信号が中央の基準レベルにあるときの再生信号の信号レベルとレプリカ信号の信号レベルとの差を誤差情報として用いることで、オフセット補正器において、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出における中央の基準レベルに一致するようにオフセット補正することができる。より高次のPRMLでは、基準レベル数が増えるため、レプリカ信号が中央の基準レベル付近にあるときの再生信号とレプリカ信号との差を、誤差情報として用いる。例えば、基準レベルが5以上であるときには、基準レベル数に応じて、中央レベルと、その上下に隣接する複数の基準レベルにあるときの再生信号とレプリカ信号との差を誤差情報として用いる。このようにすることで、誤差情報のサンプル数を確保でき、オフセット補正の精度を高めることができる。
本発明の情報信号再生装置は、前記オフセット補正器によって補正された再生信号が、所定のパーシャルレスポンス(PR)特性となるように等化する等化器を更に備え、前記最尤検出器は、該等化器の出力をチャネルビットデータ列に復号する構成を採用できる。この場合、例えばFIRフィルタを用いて構成された等化器を用いて再生信号を波形等化することで、最尤検出の検出性能を向上させることができる。
本発明の情報信号再生装置では、前記最尤検出器が、ビタビアルゴリズムに従って最尤検出を行う構成を採用できる。この場合、最尤検出に要する計算量を削減させることができ、最尤検出器の回路構成を単純化できると共に、最尤検出に要する時間を短縮できる。
本発明の情報信号再生装置は、前記オフセット補正器の出力信号のアシンメトリ量を検出し、該検出したアシンメトリ量に基づいてアシンメトリ補正して前記最尤検出器に入力するアシンメトリ補正器を更に備える構成を採用できる。この場合、前記アシンメトリ補正器は、前記検出したアシンメトリ量に基づいて、前記オフセット補正器の出力信号のアシンメトリが減少するように、前記オフセット補正器の出力信号を非線形変換して補正することが好ましい。このようにすることで、最尤検出器に、アシンメトリ補正した再生信号を入力することができ、最尤検出器において、最尤検出の検出性能を更に向上させることができる。
本発明の情報信号再生装置では、前記アシンメトリ補正器は、前記オフセット補正器の出力信号の最大レベルを検出する最大レベル検出手段と、前記オフセット補正器の出力信号の最小レベルを検出する最小レベル検出手段と、前記最大レベルと前記最小レベルの中心レベルを検出する中心レベル検出手段とを備え、該中心レベルの値に基づいて前記アシンメトリ量を検出する構成を採用できる。
本発明の情報信号再生装置では、前記アシンメトリ補正器は、前記オフセット補正器の出力信号の瞬時値の絶対値と、前記検出したアシンメトリ量とを乗算した値に基づいて、アシンメトリの補正量を決定する構成を採用できる。或いは、前記アシンメトリ補正器は、前記オフセット補正器の出力信号の瞬時値の2乗と、前記検出したアシンメトリ量とを乗算した値に基づいて、アシンメトリの補正量を決定する構成を採用できる。通常、アシンメトリの影響は、中央レベルから離れるに従って大きくなる。従って、アシンメトリ補正では、中央レベルから離れるに従って補正量を大きくすることで、アシンメトリを正しく補正することができる。
本発明の情報信号再生装置は、前記アシンメトリ補正器の出力信号から同期タイミングを生成するPLL回路を備えており、前記アシンメトリ補正器は、前記PLL回路が非同期状態にあるときには、前記アシンメトリの補正量を0又は直前の値にホールドする構成を採用できる。この場合、PLL同期が外れて最尤検出器が誤りを出力し、それによってオフセットがずれ、アシンメトリ検出値がずれ、誤ったアシンメトリ補正を行うことで、PLLが再同期しなくなる事態を回避することができる。
本発明の光ディスク再生装置は、光ディスクに光学的に記録された情報を再生する光ディスク再生装置であって、上記本発明の情報信号再生装置を備えることを特徴とする。
本発明の情報信号再生方法は、最尤検出を用いて情報記録媒体から読み出された再生信号をチャネルビットデータ列に復号する情報信号再生方法であって、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルと、最尤検出における複数の基準レベルのうちの中央の基準レベルとが一致するように、前記再生信号をオフセット補正するオフセット補正ステップと、前記オフセット補正ステップによって補正された再生信号を最尤検出によって復号し、前記チャネルビットデータ列を生成する最尤検出ステップとを備えることを特徴とする。
本発明の情報信号再生方法では、オフセット補正ステップで、情報記録媒体から読み出された再生信号を、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルが、最尤検出における中央の基準レベルに一致するようにオフセット補正し、最尤検出ステップで、オフセット補正された再生信号から、最尤検出により、チャネルビットデータ列を得る。最尤検出の検出性能は、再生信号のオフセットずれに対して敏感である。本発明の情報信号再生方法では、オフセット補正ステップで、再生信号のオフセットずれを補正することにより、最尤検出の性能を向上することができ、最尤検出ステップで、チャネルビットデータ列を正しく復号することができる。再生信号がアシンメトリの影響を受ける場合には、そのアシンメトリの影響は、中央の基準レベルから離れるほど強くなる。従って、各時点における再生信号とレプリカ信号との差を全て用いてオフセット補正すると、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出における中央の基準レベルに一致させることは困難である。再生信号に含まれる最短周期信号に相当する中央の基準レベルにあるときの再生信号とレプリカ信号との差のみを誤差情報として用いることで、オフセット補正ステップにおいて、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出における中央の基準レベルに一致させることができる。
本発明の情報信号再生方法は、前記チャネルビットデータ列から、該チャネルビットデータ列に対応する最尤検出の理想入力であるレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成ステップと、前記レプリカ信号が最尤検出における中央の基準レベル付近にあるとき、前記最尤検出ステップの入力信号と前記レプリカ信号との差を誤差信号として出力する誤差算出ステップとを更に備えており、前記オフセット補正ステップは、前記誤差信号に基づいてオフセット補正を行う構成を採用できる。
本発明の情報信号再生方法では、前記誤差算出ステップは、前記レプリカ信号が前記中央の基準レベル、又は、前記中央の基準レベルに上下に隣接する基準レベルにあるときに、前記最尤検出ステップの入力信号と前記レプリカ信号との差を誤差信号として出力する構成を採用できる。例えば、基準レベルが5以上であるときには、基準レベル数に応じて、中央レベルと、その上下に隣接する複数の基準レベルにあるときの再生信号とレプリカ信号との差を誤差情報として用いることにより、誤差情報のサンプル数を確保でき、オフセット補正の精度を高めることができる。
本発明の情報信号再生方法は、前記オフセット補正ステップと前記最尤検出ステップとの間に、前記オフセット補正された再生信号のアシンメトリ量を検出するアシンメトリ量検出ステップと、該検出したアシンメトリ量に基づいてアシンメトリ補正するアシンメトリ補正ステップとを更に備えることが好ましい。また、前記アシンメトリ補正ステップでは、前記オフセット補正された再生信号のアシンメトリが減少するように、前記オフセット補正された再生信号を非線形変換することが好ましい。この場合、最尤検出ステップにおいて、アシンメトリ補正した再生信号を用いて最尤検出を行うことにより、最尤検出の検出性能を更に向上させることができる。
本発明の情報信号再生装置、方法、及び、光ディスク再生装置では、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルと最尤検出における中央の基準レベルとが一致するように再生信号をオフセット補正し、オフセット補正された再生信号を用いて最尤検出を行う。このようにオフセット補正することにより、オフセットずれに起因する最尤検出の検出性能の劣化を防ぐことができ、最尤検出の検出性能を向上させることができる。また、オフセット補正後にアシンメトリ補正する構成を採用する場合には、アシンメトリの影響を排除して、最尤検出の検出性能を更に向上させることができる。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の情報信号再生装置の構成を示している。この情報信号再生装置10は、情報記録媒体に記録された情報を再生する記録再生装置に組み込まれ、A/D変換器11、オフセット補正器12、アシンメトリ補正器13、PLL回路14、最尤検出器15、及び、誤差算出器16を有する。
A/D変換器11は、図示しない、CDやDVDなどの記録媒体から読み出された再生信号をディジタル信号に変換する。オフセット補正器12は、A/D変換器11の出力を、誤差算出器16が出力する誤差情報に基づいてオフセット補正する。アシンメトリ補正器13は、オフセット補正器12の出力を入力し、アシンメトリを検出して、これを補正する。最尤検出器15は、アシンメトリ補正器13の出力から、チャネルビットデータ列を検出する。誤差算出器16は、アシンメトリ補正器13の出力と、最尤検出器15が出力するチャネルビットデータ列とに基づいて、オフセット補正器12でオフセット補正する際に使用される誤差情報を生成する。
PLL回路14は、アシンメトリ補正器13の出力を入力する。PLL回路14は、図示しない位相比較器、ループフィルタ、D/A変換器、及び、VCOを含み、A/D変換器11と共に、位相同期ループを形成する。これによりA/D変換器11のサンプリングクロックは、再生信号に位相同期する。PLL回路14には、D/A変換器とVCOに代えて、NCO(Numerical Controlled Oscillator)を用いることができる。或いは、A/D変換器11を固定レートで動作させ、位相比較器直前でリサンプルする構成とすることもできる。
図2は、誤差算出器16の構成を示している。誤差算出器16は、レプリカ信号生成器61と、減算器62と、セレクタ制御信号生成器63と、セレクタ64と、遅延器65とを備える。レプリカ信号生成器61は、最尤検出器15が生成するチャネルビット列を入力し、そのチャネルビット列に対応する最尤検出器15の理想入力(レプリカ信号)を生成する。レプリカ信号生成器61は、例えば、図3に示すようなFIRフィルタにより構成され、タップ係数を、想定するPRチャネルの係数にしてレプリカ信号を出力する。或いは、チャネルビット列のパターンに対するレプリカ信号の変換テーブルを用意しておき、これに基づいてレプリカ信号を生成する構成としてもよい。
遅延器65は、アシンメトリ補正器13の出力を所定時間だけ遅延し、アシンメトリ補正器13の出力と、レプリカ信号との間の位相を調整する。減算器62は、位相調整されたアシンメトリ補正器13の出力と、レプリカ信号生成器61が生成したレプリカ信号との差を出力する。セレクタ制御信号生成器63は、セレクタ64の出力を制御するセレクタ制御信号を生成する。セレクタ64は、減算器62の出力と固定値“0”とを入力し、セレクタ制御信号に基づいて、減算器62の出力又は固定値“0”を、誤差情報として出力する。或いは、固定値“0”に代えて、セレクタ制御信号の切り替わり直前の減算器62の出力をホールドして出力してもよい。
図4は、誤差算出器16における各部の信号波形の様子を示している。誤差算出器16には、再生信号に相当するアシンメトリ補正器13の出力(a)と、最尤検出器15が出力するチャネルビット列とが入力される。レプリカ信号生成器61は、チャネルビット列を、それに対応する最尤検出器15の入力として想定される理想入力に変換し、レプリカ信号(b)を出力する。この例では、PR(1,2,2,2,1)チャネルを想定しており、最尤検出器15の基準レベルは、“0、±0.25、±0.5、±0.75、±1”の9レベルとなり、レプリカ信号も9レベルのうちの何れかとなる。減算器62は、アシンメトリ補正器13の出力(a)とレプリカ信号(b)との差分を演算して出力する(c)。
ここで、アシンメトリ補正器13の出力(a)に含まれる最短周期信号のタイミングにおける、減算器62の出力、つまり、最短周期信号の信号レベルとレプリカ信号(理想入力)との差は、最短周期信号のオフセットずれ量に相当する。このため、セレクタ制御信号生成器63に、再生信号に含まれる最短周期信号のタイミングで減算器62の出力を出力させるセレクタ制御信号を生成させ、セレクタ64から、最短周期信号に対応する誤差情報を出力させる構成とすることで、オフセット補正器12において、A/D変換器11の出力(再生信号)を、再生信号に含まれる最短周期信号の信号レベルが最尤検出器15の中央基準レベルに一致するようにオフセット補正することができる。
しかしながら、オフセット補正器12で、最短周期信号に対応する誤差情報のみを用いてオフセット補正をする場合には、誤差情報のサンプル数が少なく、オフセット補正の精度を高めることができないことも考えられる。再生信号には、図4の(a)に示すように、中央基準レベルを横切るエッジ部分が多く含まれている。レプリカ信号が中央基準レベルを横切る際のアシンメトリ補正器13に出力の信号レベルは、最短周期信号の再生信号レベルと同様に、最尤検出器15に入力されることになる。そこで、セレクタ制御信号生成器63に、レプリカ信号が中央基準レベルとなるタイミングで、減算器62の出力を出力させるセレクタ制御信号を生成させ、誤差算出器16から、最短周期信号に対応する誤差情報、及び、エッジ部分に対応する誤差情報を出力させる。このようにする場合には、オフセット補正に用いる誤差情報のサンプル数を増やすことができ、オフセット補正の精度を向上することができる。
PR1MLでは、レプリカ信号は、−1、0、1の3値を取るため、誤差算出器16から、中央レベル(0)に対応する誤差情報のみを出力させ、オフセット補正器12において、この誤差情報を用いてオフセット補正することで、アシンメトリがある場合でも、再生信号に含まれる最短周期信号の信号レベルを、高い精度で中央レベルに合わせ込むことができる。一方、高次のPRMLでは、基準レベル数が増加する。そこで、誤差算出器16から、中央レベル付近に対応する誤差情報を出力させて、誤差情報のサンプル数を確保し、オフセット補正の精度を向上させる。
ところで、高次のPRMLにおいて、サンプル数を増やすために、中央レベルから離れた基準レベルに対応した誤差情報を用いると、中央レベルから離れた基準レベルに対応した誤差情報ほどアシンメトリの影響を受けるため、アシンメトリ補正器13の動作を開始させたときや、アシンメトリがある時点でずれた場合等では、オフセット補正の精度は低くなると考えられる。そこで、基準レベル数が5以上となる高次のPRMLでは、最尤検出器15の基準レベルの数に応じて、レプリカ信号が、中央レベルとその上下の隣接レベルとを含む3レベルの何れかであるときに、セレクタ64から減算器62の出力を出力させるように構成することが望ましい。
セレクタ制御信号生成器63は、レプリカ信号(b)が中央レベル付近にあるとき、より詳細には、中央レベル“0”又はその隣接レベル“±0.25”にあるとき、セレクタ制御信号“1”を出力し、それ以外のときには、“0”を出力する(d)。セレクタ64は、セレクタ制御信号が“1”のときは減算器62の出力を選択して出力し、セレクタ制御信号が“0”のときには固定値“0”を選択して出力する。これにより、セレクタ64は、レプリカ信号が中央レベル“0”又はその隣接レベル“±0.25”にあるときに、アシンメトリ補正器13の出力とレプリカ信号との差分を出力し、それ以外のときは、固定値“0”を出力する(e)。
図5は、オフセット補正器12の構成を示している。オフセット補正器12は、積分器25と、乗算器26と、減算器27とを有する。積分器25は、誤差算出器16の出力を入力し、積分する。乗算器26は、積分器25の出力に、所定の値を乗算し、これをオフセット値として出力する。減算器27は、A/D変換器11の出力から、乗算器26が出力したオフセット値を減算して出力する。オフセット補正器12、アシンメトリ補正器13、最尤検出器15、及び、誤差算出器16は一つの閉ループを形成しており、オフセット補正器12は、最尤検出器15の入力に含まれる最短周期信号のDCレベルが、最尤検出器15の中央基準レベルに合うように、オフセット補正する。
図6は、オフセット補正器12における各部の信号波形の様子を示している。オフセット補正器12は、A/D変換器11の出力(a)と、誤差算出器16の出力(b)とを入力する。ここで、図4(a)では、クロックごとの離散値となるA/D変換器11の出力を補完して連続信号として示しており、図6に示すA/D変換器の出力(a)は、図4の(a)に示す信号波形のように変化する、クロックごとの離散値を時間軸(横軸)方向に圧縮して示している。例えば、図6(a)における中央基準レベル付近の信号は、図4(a)における中央レベル付近の信号に対応しており、これは、最短周期信号のDCレベルに対応する。
誤差算出器16の出力(b)は、積分器25によって積算され、乗算器26を介してオフセット補正値として出力される(c)。減算器27は、A/D変換器11の出力(a)から、オフセット補正値(c)を減算して出力する(d)。誤差算出器16が出力する誤差情報(b)は、前述したように、レプリカ信号が中央レベル付近にあるときの、レプリカ信号とアシンメトリ補正器13の出力との差である。従って、この誤差情報を用いてオフセット補正をすることで、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルを、最尤検出器15の中央基準レベルに合せることができる(d)。
図7(a)及び(b)は、それぞれ再生波形のアイパターンを示している。同図(a)は、理想的な記録マークに対する再生波形を示しており、同図(b)は、理想よりずれた記録マークに対する再生波形を示している。なお、同図における縦軸は、理想的な再生波形の最大/最小レベルが±1となるように規格化している。同図(a)に示すように、理想的な記録マークに対する再生波形では、アイパターンは各時刻で振幅値が“0、±0.25、±0.5、±0.75、±1”の9レベルを基準に分布しており、各々の基準の間隔は等間隔になっている。従って、最尤検出器15の基準レベルをこの9レベルにすることで良好な検出が期待できる。
一方、図7(b)に示すように、理想よりずれた記録マークに対する再生波形では、中央レベル(0)から離れた振幅の大きな波形、すなわち周期の長いパターンに対応した波形が、中央レベルから離れるほど、つまり、ピーク、又はボトムレベルに近くなる程、9つの基準レベルに対する波形各点のレベルのずれが大きくなっている。従って、アシンメトリを補正せずに、理想的な記録マークの再生波形の場合(同図(a))と同様の基準レベルで最尤検出を行うと、アシンメトリにより基準レベルに対して誤差が生じ、誤ったパスが選択される可能性が高くなり、検出精度が劣化する。
図8は、アシンメトリ補正器13の構成を示している。アシンメトリ補正器13は、最大レベル検出器31、最小レベル検出器32、中央レベル算出器33、ローパスフィルタ(LPF)34、乗算器35、及び、補正器36を備える。最大レベル検出器31は、オフセット補正器12が出力するオフセット補正後の信号から、所定の時間間隔でピークレベルを検出する。また、最小レベル検出器32は、オフセット補正後の信号から、所定時間間隔でボトムレベルを検出する。中央レベル算出器33は、最大レベル検出器31が出力するピークレベルと、最小レベル検出器32が出力するボトムレベルとの中央レベルを出力する。
LPF34は、中央レベル算出器33の出力を平滑化して出力する。乗算器35は、LPF34の出力に固定ゲインを乗算してアシンメトリ量を算出する。この乗算器35は、オフセット補正器12の前段にAGC(Auto Gain Controller)を配置した場合には不要である。補正器36は、以下に説明するように、乗算器35が出力するアシンメトリ量をパラメータとした非線形関数により、オフセット補正器12の出力を補正して出力する。
アシンメトリの影響は、振幅の絶対値の大きさに伴い増大するが、その関係は線形ではなく、振幅の絶対値の大きさに伴い非線形に変化する。従って、アシンメトリを補正するための補正器36の非線形関数は、乗算器35によって算出されたアシンメトリ量をβ、補正器36の入力信号Sinとし、補正器36の出力をSoutとすると、
Sout=Sin−β×|Sin−β| (3)
又は、
Sout=Sin−β×(Sin−β)2 (4)
とすることができる。このように、入力信号Sinに対して、β×{(Sin−β)の大きさ}により、信号の符号及び振幅に応じて非線形に補正量を変化させて、加減算することによって、信号Sinにおけるアシンメトリの影響を低減することができる。なお、式(4)は、式(3)に比べてこのアシンメトリの影響を更に考慮した式であり、補正の精度も上がる。しかし、通常では、式(3)を用いた補正で十分効果が得られると考えられる。また、非線形関数として、より高次の関数を用いることもできるが、その場合には、LSI化する場合に、回路的な制約が増加することになる。
図9は、アシンメトリ補正器13の動作図を示している。アシンメトリ補正器13は、図中の右下に示すような入力に対して、最大レベルSmaxと最小レベルSminとを検出し、これらの値から中央レベルScenを算出し、LPF34を介してアシンメトリ量βを得る。補正器36におけるアシンメトリの補正関数としては、アシンメトリ量と、入力信号振幅とに応じて、図中の右上に示すような、式(3)に対応する非線形関数を用いる。このような補正関数を用いることにより、補正器36は、図中左上に示すようなアシンメトリの影響が低減された信号Soutを出力する。
図10は、アシンメトリ補正器13の出力のアイパターンを示している。図7(b)に示すようなアシンメトリのある波形をアシンメトリ補正器13に入力し、アシンメトリ補正器13でアシンメトリを補正すると、図10に示すようなアシンメトリの影響が低減された信号波形が得られる。図10では、理想的な記録マークに対する再生信号波形(図7(a))と同様に、アイパターンは各時刻で振幅値が“0、±0.25、±0.5、±0.75、±1”の9レベルを基準に分布しており、各々の基準の間隔は等間隔になっている。このため、図7(a)の場合と同様の最尤検出器15の基準レベルで、検出精度を高めることができる。
ところで、PLL回路14は、アシンメトリ補正器13の出力から位相情報を生成するため、アシンメトリがずれている場合でも位相誤差を生成することができる利点はある。しかし、一旦同期が外れると、最尤検出器15が誤りを出力し、それによってオフセット補正器12がオフセットを正しく補正できず、アシンメトリ補正器13が誤って検出したアシンメトリ量に基づいてアシンメトリ補正する可能性がある。また、この状態でアシンメトリ補正器13の出力から位相情報を取り出すと、PLL回路14が再同期しなくなる可能性がある。このようなことを回避するため、PLL回路14の同期外れを検出する位相同期検出器を設け、同期外れを検出した場合には、アシンメトリ補正量を0又は直前の値にホールドするように設定することが好ましい。この場合には、位相同期が外れた状態で、誤って検出されるアシンメトリ量に基づくアシンメトリ補正を防ぐことができる。
最尤検出器15の入力(アシンメトリ補正器13の出力)と、最尤検出器15の基準レベルとの誤差は、アシンメトリ補正器13の出力と、最尤検出器15が出力するチャネルビット列から逆算した理想入力(レプリカ信号)との差で算出できる。誤差算出器16は、レプリカ信号が最尤検出器15の中央レベル付近にあるときに、アシンメトリ補正器13の出力と基準レベルとの誤差を出力し、オフセット補正器12は、その誤差に基づいて、オフセットを補正する。このように、誤差算出器16から、中央付近の基準レベルの期間だけ誤差を出力し、この誤差が0となるように閉ループを組むことで、再生信号の最短周期信号のDCレベルを、最尤検出器15の中央の基準レベルと一致させることができる。
アシンメトリずれがない線形な信号の場合には、再生信号の最長周期信号のピークレベルとボトムレベルの中央レベルは、最短周期信号のDCレベルと一致する。しかし、アシンメトリずれがある場合には、両者は一致せず、アシンメトリ値が大きい程、両者の差は開く。これは、長いマーク/スペースほど、アシンメトリの影響を受けることに起因する。アシンメトリ量は、このピークレベルとボトムレベルとのレベル差を用いることで、特殊なパターンを記録せずとも、その極性も含めて検出することができる。アシンメトリ補正器13は、所定間隔で、オフセット補正器12によってオフセットが補正された再生信号のピークレベルとボトムレベルの中央レベルの平均を算出する。この平均値は、上記2レベルの差、すなわちアシンメトリ量に対応する。
一般に、アシンメトリによる波形の歪み量は、図7(b)に示すように、最短周期信号のDCレベルから離れた振幅値ほど大きく、また、その極性及び歪みの強さはアシンメトリずれ量に依存する。アシンメトリ補正器13は、その特性を補償するように、非線形関数を用いて、アシンメトリによる再生信号の波形歪みを補正する。本実施形態では、オフセット補正器12によって、再生信号に含まれる最短周期信号のDCレベルと最尤検出器15における中央レベルとが一致するようにオフセット補正した後、アシンメトリ補正器13で、オフセット補正後の再生信号からアシンメトリ量を検出し、アシンメトリ補正する。このようにすることで、最尤検出器15に、アシンメトリによる非線形歪を低減した信号を入力することができ、最尤検出器15の検出性能を向上できる。
図11は、本発明の第2実施形態の情報信号再生装置を含む光ディスク再生装置の構成を示している。光ディスク再生装置50は、A/D変換器11、オフセット補正器12、アシンメトリ補正器13、PLL回路14、誤差算出器16、光ヘッド17、等化器19、タップ係数補正器20、及び、ビタビ復号器21を備える。光ディスク媒体18は、図示しないスピンドルモータによって等角速度回転或いは等線速度回転を行う。光ヘッド17は、図示しないサーボ回路によってディスク面と対物レンズの距離、及び、ディスク案内溝と集光スポットの半径位置がそれぞれ正確に制御され、ディスク上に記録された情報マークに集光スポットを照射する。ディスク面からの反射光は、情報マークの有無により反射率或いは偏光が変化し、これを図示しない検出器により検出することで再生信号が得られる。
A/D変換器11は、光ディスク媒体18からの再生信号をディジタル信号に変換する。オフセット補正器12は、図5に示すオフセット補正器12と同様な動作により、A/D変換器11の出力を、誤差算出器16の出力に基づいてオフセット補正する。アシンメトリ補正器13は、図8に示すアシンメトリ補正器13と同様な動作により、オフセット補正器12の出力のアシンメトリを補正する。PLL回路14は、アシンメトリ補正器13の出力と、A/D変換器11のサンプリングクロックとが再生信号に位相同期するように制御する。アシンメトリ補正器13の出力をPLL回路14に入力する前に、図示していないAGCによって、信号振幅が一定となるようにゲイン制御を行う構成とすることもできる。
等化器19は、アシンメトリ補正器13の出力を、タップ係数補正器20によって制御されたタップ係数により、後段のビタビ復号器21が規定するPR特性となるように等化する。等化器19は、入力信号のSNR(Signal to Noise Ratio)及びチャネル特性がほぼ一定の場合には、タップ係数補正器20を用いないで、固定の係数で等化してもよい。ビタビ復号器21は、等化器19の出力を入力して最尤検出を行い、チャネルビットデータ列を出力する。
誤差算出器16は、等化器19の出力と、ビタビ復号器21が出力するチャネルビットデータ列とを入力し、図2に示す誤差算出器16と同様な動作により、誤差情報を出力する。より詳細には、まず、チャネルビットデータ列をそれに対応するビタビ復号器21の入力として想定される信号(レプリカ信号)に変換する。次いで、等化器19とレプリカ信号との差を算出し、その差を、レプリカ信号がビタビ復号器21の基準レベルの中央レベル近傍の場合にのみ出力する。誤差算出器16の出力は、オフセット補正器12及びタップ係数補正器20にフィードバックされる。タップ係数補正器20は、等化器19の出力と誤差算出器16の出力との差が最小となるように、タップ係数を補正し、これを等化器19に出力する。
本実施形態では、等化器19を用いて、再生信号が所望のPR特性となるように等化して、ビタビ復号器21により、チャネルビットデータ列を得る。例えば、高密度化したDVDなどでは、再生信号が、所望のPR特性からずれることが多い。このような場合には、等化器19を用いて再生信号を等化し、その後、ビタビ復号器21によって最尤検出を行うことにより、光ディスク媒体18から情報を再生することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
図12は、本発明の第3実施形態の情報信号再生装置を含む光ディスク再生装置の構成を示している。本実施形態の光ディスク再生装置は、アシンメトリ補正器13を有しない点で、図11に示す第2実施形態の光ディスク再生装置と相違する。光ディスク媒体18からの再生信号は、A/D変換器11でディジタル信号に変換され、オフセット補正器12でオフセット補正され、等化器19で等化されて、ビタビ復号器21に入力される。
ビタビ復号器21の検出性能は、入力信号のオフセットずれに対して敏感である。このため、アシンメトリによってオフセットずれが生じると、検出性能が劣化する。本実施形態では、誤差算出器16及びオフセット補正器12により、ビタビ復号器の基準レベルの中央レベル近傍における誤差情報に基づいて、オフセットを補正する。このように、アシンメトリにより生じるオフセットずれだけを補正することでも、ある程度の検出性能向上が実現できる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の情報信号再生装置及び光ディスク再生装置は、上記実施形態例にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。