JP4074169B2 - 超音波送受信ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、術部の前方に存在する患部を超音波観察する超音波送受信ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、癌等の悪性腫瘍の組織診断では、組織細胞を採取し、顕微鏡下で、その細胞の状態を鑑別し悪性腫瘍除去の方針を判断して来た。
【0003】
例えば早期胃癌の深達度診断は、癌組織の除去を経内視鏡粘膜切除術:EMRの適否判断をする上で重要であり、内視鏡鉗子孔から細胞採取用の鉗子を挿通させ、疑いのありそうな部分を採取し、それを顕微鏡下で細胞レベルの観察をする。そして、その観察結果から早期胃癌の深達の程度を見極め、癌組織の除去をEMRで行うかを判断するのである。
【0004】
この様に診断、治療は連続的でなく、内視鏡診断後、顕微鏡下での細胞レベルの観察結果を待って癌組織の除去方針を決めることになる。
【0005】
これに対し、顕微鏡下観察に相当する診断を内視鏡観察と同時に行えれば、診断、治療を一つの流れの中で実施することが可能となり、患者に対する苦痛が軽減され、短時間で癌組織の除去までが完了することになる。顕微鏡下観察に相当する診断方法としては、数100MHzの周波数の超音波の送受信を用い超音波センサを用い、この超音波センサの近傍に超音波造影剤と放出して組織鑑別を行なう方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図23はこのような診断方法に用いられる組織鑑別用超音波プローブの全体の構成例を示す説明図である。
【0007】
図23に示すように、組織鑑別用超音波プローブ801は、内視鏡手術等に於いて、手術中の組織鑑別を行なう超音波造影剤を超音波センサとしての超音波変換器820の近傍に放出し、術野に露出した臓器802に表在する癌803の鑑別を行うのものである。
【0008】
プローブ810は、針状体または棒状体となっている。具体的にプローブ810は、超音波変換器820を搭載した直径1mm程度の内針830とこれを保持するシース840からなる。
【0009】
超音波変換器820は、サファイア821を基板とし,圧電振動子として金(Au)の電極に挟まれた酸化亜鉛(ZnO)822を成膜し,その反対面に凹面の音響レンズ823を加工したものである。送受波する超音波の中心周波数は120MHz,音響レンズの焦点距離は500μm,レンズのF値は1とする。この内針830は駆動部850により軸周囲の回転方向,及び軸方向に機械的に走査され,これに伴って走査音響レンズ面から500μm離れた円筒形の焦点面の撮像を行う。
【0010】
内針830の超音波変換器820の搭載部分はシース840から露出している。この超音波変換器820の近傍には造影剤を放出する孔870とフラッシング用の生理食塩水を放出する孔880が開口している。
【0011】
孔870は内針830及び駆動部850の内部に配設された造影剤導出管871を介して造影剤槽872からの造影剤が導かれるようになっている。
【0012】
孔880は内針830及び駆動部850の内部に配設された生理食塩水導出管881を介して生理食塩水槽882からの生理食塩水が導かれるようになっている。
【0013】
超音波変換器820は、内針830及び駆動部850を介して送受波器861,862に接続されている。送波器861は制御装置865の制御に基づいて超音波変換器820に超音波を発信させるための電気信号を供給する。
【0014】
受波器862は、超音波変換器820が超音波を受信して変換した電気信号の超音波受信信号に対して、増幅等の信号処理を行って信号処理装置863に供給する。
【0015】
制御装置865は、受波器862、信号処理装置863及び駆動部850の制御を行う。
【0016】
信号処理装置863は、制御装置865の制御に基づいて受波器862からの超音波受信信号に対して信号処理してCモード像を得て表示装置864に表示する。
【0017】
更に、他の顕微鏡下観察に相当する診断方法としては、被検体に刺入し、超音波センサを針の長手方向に並進運動させ、超音波Bモード診断像を得たり、軸の周りに回転運動させることによって円筒面のCモード像を得たり、超音波ビームの深部方向のAモード信号からドップラー血流速度を計測するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0018】
図24はこのような診断方法に用いられる超音波診断装置の針状センサの断面図である。図24は超音波Bモード診断像を得るための構成を示している。
【0019】
図24に示すように、符号901は圧電素子であり、この圧電素子901の背面側には、背面吸音材902が設けられている。保持部材903は、細い軸状に形成されており、先端側の側面に形成された凹部904に圧電素子901及び背面吸音材902を設けている。保持部材903は、被覆ケース905に収納されている。
【0020】
被覆ケース905は、極めて細径に形成されるとともに、その先端部が鋭利に形成れていおり、被検体の組織内に容易に刺入されるようになっている。
【0021】
また、被覆ケース905には、圧電素子901から発せられる高周波超音波を減衰させることなく周囲の被検体の組織内に送出させるためのスリット906が設けられている。
【0022】
機構部910は、保持部材903を並進移動させることで、圧電素子901を並進移動させるものである。
【0023】
図25は機構部910を詳細に示す断面図である。
【0024】
図25に示すように、機構部910は、筐体911の内部にスプリング912、回転並進変換器913、モータ914、ベアリング915を収納している。前記スプリング912は、前記保持部材903をベアリング915を介して回転並進変換器913に押圧する機能を有するものである。
【0025】
回転並進変換器913は円柱を斜めに切断した斜平面を有し、モータ914の回転に同期して、前記保持部材903を矢印Bの方向に往復動させる機能を有するものである。
【0026】
超音波診断装置は、針状センサ機構部910により圧電素子901を並進移動させ、超音波Bモード診断像を得る。
【0027】
【特許文献1】
特開平11−169375号公報(第3−5頁、図1)
【0028】
【特許文献2】
特公平5−9097号公報(第2頁、図2)
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
図23乃至図25に示した従来の診断方法では、細胞を診断するための超音波センサは穿刺針の管壁側面に一体的に配置している。また、超音波ビームの走査は、超音波センサの保持部材でもある穿刺針そのものをその長手方向に並進運動させたり、長軸の周りに回転させるようになっている。これによって、周波数に応じた高分解能の超音波像を描出したり、Aモード信号からドップラー血流速度を検出することは可能になる。しかしながら、超音波センサが穿刺針の管壁側面に配置しているということは、その先に穿刺針の先端部(最初に穿刺する部分)が配置することになる。このため、細胞診において血管を傷つけることなく穿刺針先端を目的の部位まで到達させ、組織を採取するために、穿刺針を穿刺している間、常時その位置をモニタで確認できる様に、体外から超音波送受信を行う超音波診断装置で観測することが多くなり、システム全体を大規模なものにすることになる。
【0030】
また、組織鑑別の目的は、細胞核の大型化や染色性、細胞の多形性、配列性、正常組織との異形性、輪郭の明瞭性を識別することである。これに対し、図23乃至図25に示した従来の診断方法では、細胞組織に直接接している穿刺針を長手方向に並進運動させたり、長軸の周りに回転させているので、細胞に対し変形や断裂をもたらせ、細胞の配列状態等、本来の状態を擾乱させることになってしまう。
【0031】
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたもので、穿刺可能な針状体を細胞に対して相対的に変位させない状態で、超音波ビームを効率よく走査して前記針状体の先端部の穿刺状況を把握しながら細胞組織を診断することのできる超音波送受信ユニットを提供することを目的とする。
【0032】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の一態様による超音波送受信ユニットは、音響的な開口部を有し、生体組織に穿刺可能な針状体と、前記針状体の内部に設けられ、超音波ビームを前記開口部から外部に走査して反射波を受信する超音波送受波器と、前記針状体の内部に設けられ、自身が屈曲変位することにより前記超音波送受波器を振動させることが可能な屈曲用圧電振動子を有する超音波走査手段と、を備えている。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1乃至図11は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明による超音波診断装置を用いた内視鏡スコープ先端部を示す斜視図、図2は穿刺針を第1の方向から見た内部構造を示す断面図、図3は穿刺針の図2の第1の方向と直交する第2の方向から見た内部構造を示す断面図、図4は超音波送受波器の構造を示す断面図、図5は超音波ビームを走査するアクチュエータ系の駆動信号を含めた超音波診断装置の回路システムを示すブロック図、図6は屈曲用圧電振動子への駆動信号を示すグラフ、図7は第1の種類の圧電材料を用いた場合の超音波送受波器の送受波感度の周波数特性を示すグラフ、図8は第2の種類の圧電材料を用いた場合の超音波送受波器の送受波感度の周波数特性を示すグラフ、図9は5次の圧電オーバートーン応答に対する超音波振動子のインピーダンス及び位相特性を示すグラフ、図10は圧電振動子のバッキング層として用いるポーラスシリコンの音響特性を示す第1のグラフ、図11は圧電振動子のバッキング層として用いるポーラスシリコンの音響特性を示す第2のグラフである。
【0035】
(構成)
まず、図1を用いて、本実施の形態の超音波診断装置が用いられる内視鏡スコープの先端部について説明する。
【0036】
図1において、内視鏡スコープ101の先端部102には、鉗子孔103、観察窓104や照明窓105などを配設している。
【0037】
鉗子孔103からはシース106が突出している。シース106は、先端にステンレス製の穿刺針1を固定保持している。
【0038】
穿刺針1の先端部10は生体組織への穿刺を容易にする為、鋭利なテーパを有する音響的な開口部20を有している。
【0039】
次に、図2及び図3を参照して穿刺針1の内部を詳細に説明する。
図2は該音響的な開口部20が正面に(紙面に垂直)向くように配置させた状態を示している。
【0040】
図2において、穿刺針1の管状部材2はシース先端部に接続固定する固定接続台3に固定保持されている。
【0041】
穿刺針1の内部は、超音波送受波器11、弾性棒12、屈曲用圧電振動子13、変位検出用圧電素子14、配線15及び接地配線16,17が設けられている。
【0042】
超音波送受波器11は、管状部材2の内部で管状部材2の長軸に沿う様に配置し、開口部20の外側に向けて超音波ビームa1を送波し、その反射波を受波することでAモード信号の受信信号を得る。
【0043】
弾性棒12は、例えばジルコニアセラミクスから成り、超音波送受波器11をその先端で固定保持し、それを穿刺針1の管状部材2の径方向に揺動変位させる。
【0044】
屈曲用圧電振動子13は、例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)から成り、弾性棒12に接合して、超音波Bモード診断像を得るための屈曲変位を発生させる。
【0045】
変位検出用圧電振動子14は、弾性棒12に接合して、前記屈曲変位の状態を検出する。
【0046】
配線15及び接地配線16,17は、超音波送受波器11に超音波励起用信号を駆動信号として供給して超音波送受波器11を駆動し、超音波送受波器11の受信信号を伝送するためものである。
【0047】
接地配線16,17は、屈曲用圧電振動子13と変位検出用圧電振動子14の接地電極を兼ね、弾性棒12の表面に形成された接地配線16,17の端部は、細導線18,19を介して導電性の固定接続台3に接続される。
【0048】
固定接続台3には貫通孔31,32,33が形成されている。貫通孔31,32,33は絶縁部材34,35,36を介して電気端子ピン41,42,43を保持している。
【0049】
配線15、屈曲用圧電振動子13の駆動電極(図示していない)、及び変位検出用圧電振動子14の駆動電極(図示していない)は、それぞれ細導線44,45,46を経て、それぞれ電気端子ピン41,42,43に接続される。
【0050】
また、図3において、穿刺針1の管状部材2の先端部10は、斜めにカットすることで、鋭利なテーパを形成している。管状部材2の先端部10の開口部20には、樹脂製遮蔽膜21を取り付けている。
【0051】
樹脂製遮蔽膜21は、超音波を透過させる樹脂製の膜、例えばPEI(ポリエーテルイミド)の膜で形成しており、組織が穿刺針1の内部に入りこまないようにしている。
【0052】
また、この樹脂製遮蔽膜21の超音波送受波器11の直近部には微細孔22が形成されている。微細孔22は、使用前の状態では水溶性樹脂23が充填されている。
【0053】
穿刺針1は、管状部材2、固定接続台3及び樹脂製遮蔽膜21によって囲まれる空間が空洞部25になっている。
【0054】
更に樹脂製遮蔽膜21の空洞部25側の超音波送受波器11の直近部は、部分的に親水性処理24が施され、樹脂製遮蔽膜21の微細孔22を経て侵入した水滴が優先的に樹脂製遮蔽膜21と超音波送受波器11の間の空隙を埋める様に局在する。
【0055】
空洞部25は、水滴が樹脂製遮蔽膜21の微細孔22を経て侵入し易い様に陰圧状態にしてある。
【0056】
次に、図4を用いて超音波送受波器11について詳細に説明する。
図4に示すように、超音波送受波器11は、シリコン単結晶51、圧電振動子53及び音響レンズ54を含んで構成されている。
【0057】
弾性棒12の先端に接合されたシリコン単結晶51はその表面近傍50μm程度の深さまで、陽極化成等の手段で後述する音響特性を有したポーラスシリコン層52が形成されている。ポーラスシリコン層52の表面には薄膜電極55が形成されている。薄膜電極55上には、圧電振動子53が形成されている。圧電振動子53は両主面が電極形成されている。圧電振動子53の先端側の主面には音響レンズ54が形成されている。
【0058】
薄膜電極55は、図2に示した接地配線16,17に接続されている。
圧電振動子53の先端側の主面の電極には図2に示した配線15が接続されている。
【0059】
圧電振動子53には、細胞レベルの寸法に対応出来る送受信超音波周波数、例えば300MHz近傍に高次の圧電オーバートーン、例えば基本波の5倍が合致するような厚さに研磨された単結晶圧電体、たとえば44°カットニオブ酸カリウム(KNと略)または36°カットニオブ酸リチウム(LNと略)を用いている。その厚みは前者の場合48μm、後者の場合55μm程度となっている。
【0060】
次に、図5を参照して本実施の形態に関わる信号制御システムを詳細に説明する。
【0061】
図5に示すように、パルス送受信系は、超音波送受波器11と、超音波発生の為の駆動信号b1を供給するパルサ61と、及び超音波エコー信号c1を受信する為のレシーバ62とからなっている。
【0062】
パルサ61には図示していないバースト波発生器やダンピング設定やインピーダンス整合の為の図示していない直流抵抗が出力端子に並列に接続されている。
【0063】
駆動信号b1は周波数が300MHz、2〜5波のバースト波である。駆動信号b1は、狭帯域信号とし、その周波数がオーバートーン周波数に合致する様にする。
【0064】
レシーバ62には図示していないプリアンプ、アテネータ、アナログ/デジタル変換器(AD変換器)、フィルター等が含まれている。レシーバ62は受信したアナログ超音波エコー信号c1を増幅、レベル調整、雑音除去等の信号処理を行いデジタル超音波エコー信号d1に変換して出力する。
【0065】
信号処理回路63は、図示しないSTC(Sensitivity Time Control)回路、輝度調整回路等を含み、デジタル超音波エコー信号d1に対して感度の時間的調整や輝度調整を行ってデジタル超音波エコー信号e1としてスキャンコンバータ64に供給する。
【0066】
スキャンコンバータ64は、信号処理回路63の出力信号であるデジタル超音波エコー信号e1と変位検出用圧電素子14の出力信号Vsensとから超音波信号、例えばパルスピーク強度と位置信号の対応をとった画像信号f1へ変換し、この画像信号を画像処理回路65に供給する。画像処理回路65は画像信号f1に対して超音波Bモード診断像の画像処理を行い、最終的に超音波Bモード診断像をモニタ66に表示する。
【0067】
図示しない超音波送受波器変位駆動回路からは、超音波送受波器11を径方向へ変位駆動させる為の駆動信号g1を屈曲用圧電振動子13への入力する。駆動信号g1は低周波で最大振幅を有する印加電圧Vdispとなっている。この駆動信号g1による弾性棒12の屈曲振動は変位検出用圧電振動子14から検出信号h1(出力信号Vsens)が出力される構成となっている。
【0068】
このような構成により、穿刺針1、パルサ61、レシーバ62、信号処理回路63、スキャンコンバータ64及び画像処理回路65は、管状部材2により形成された穿刺針1を生体組織に刺針し、該穿刺針1から超音波を送受波して、前記生体組織の細胞を診断する超音波診断装置となっている。
【0069】
超音波送受波器11は、前記管状部材2の先端の開口部20近傍に配置され、前記超音波を超音波ビームa1として送波し、この超音波ビームa1が生体組織に当たって反射した超音波のエコー信号を受波する。
【0070】
弾性棒12及び屈曲用圧電振動子13は、前記管状部材2の内部に設けられ、前記超音波送受波器11の位置を変化させることで該超音波送受波器11からの超音波による超音波ビームa1を前記管状部材2の径方向に走査する超音波走査手段となっている。
【0071】
変位検出用圧電素子14は、前記管状部材2の内部に設けられ、前記超音波送受波器11の位置を検出し、この検出結果の位置信号を出力する位置検出手段となっている。
【0072】
パルサ61、レシーバ62、信号処理回路63、スキャンコンバータ64及び画像処理回路65は、前記位置検出手段の位置信号と前記超音波送受波器11の受信信号とから、超音波Bモード診断像を構築する診断像構築手段となっている。
【0073】
弾性棒12及び屈曲用圧電振動子13は、屈曲用圧電振動子13に加えられる交流電圧信号の周波数と電圧に応じて、特定の振幅と変位速度で振動する。この振動振幅が超音波ビームa1の走査範囲となる。
【0074】
固定接続台3は、前記穿刺針1の前記管状部材2の根元に設けられ、内視鏡スコープ101の鉗子孔103を挿通したシースの先端に着脱可能に接続する接続手段となっている。
【0075】
電気端子ピン41は、前記穿刺針1の前記管状部材2の根元に設けられ、前記超音波送受信部に電気信号を送受信するための第1の電気端子となっている。
【0076】
電気端子ピン42は、前記穿刺針1の前記管状部材2の根元に設けられ、前記超音波走査手段に走査のための駆動信号を供給するための第2の電気端子となっている。
【0077】
電気端子ピン43は、前記穿刺針1の前記管状部材2の根元に設けられ、前記位置検出手段の位置信号を出力するための第3の電気端子となっている。
【0078】
また弾性棒屈曲変位検出素子としての変位検出用圧電素子14は、前記弾性棒12との貼り合せ構造からなる圧電ユニモルフである。更にこの弾性棒12は絶縁体であり、その表面に超音波送受波器11の超音波振動子を駆動制御する為の配線15が形成されている。
【0079】
(作用)
まず、作業者は、予め図3に示す穿刺針1の先端の開口部20を水に浸し、樹脂製遮蔽膜21の一部に施した微細孔22に充填した水溶性樹脂23を溶解させ、管内部の陰圧で水滴を穿刺針1の管内の空洞部25に導入する。樹脂製遮蔽膜21の管内側送受波器11の近傍には親水性処理24が施されているので、水滴は優先的に樹脂製遮蔽膜21と超音波送受波器11の間の空隙に毛管現象で導かれ、しばらくその位置に滞在する。即ち、超音波送受波器11からの超音波a1は対象物に効率良く入反射し、超音波送受信が実現される。
【0080】
このような穿刺針1を図1に示す内視鏡スコープ101の先端部102の鉗子孔103から突出させ、生体組織表面を光学的に観測しながら穿刺部位を決定し、穿刺針1の先端部10を刺入する。
【0081】
これにより、穿刺針1の先端部10は生体組織を断裂させながら、深部へと侵入して行くが、穿刺針1の開口部20には超音波を透過する樹脂製遮蔽膜21が配設されているので、穿刺針1の内部に生体組織が入り込むことは無い。
【0082】
刺入量が少なく、生体組織表面の弾性限界にある間は、樹脂製遮蔽膜21の表面にはもとの生体組織表面が延伸した状態で接触する。
【0083】
そして、ある値以上の刺入量になると、生体組織表面は断裂し、該樹脂製遮蔽膜21の表面には生体組織断層部が接触することになる。いずれの接触状態にあっても、樹脂製遮蔽膜21によって生体組織が超音波送受波器表面に直接接触することはないので、超音波ビームa1の走査状態に危害を及ぼすものではない。
【0084】
この様に生体組織の表面または断裂した断層部が接触した状態で、図6に示すバースト波の駆動信号b1を電気端子ピン41、弾性棒12上に形成された配線15を経て、超音波送受波器11に印加すると、バースト波の駆動信号b1の周波数に相当する周波数、駆動信号b1の電圧値に相当する音圧の超音波信号の超音波ビームa1が送信される。
【0085】
尚、樹脂製遮蔽膜21より穿刺針1の内部側の空洞部25には図示しない音響結合液、例えば水が充填されていて、超音波送受波器11は、その音響結合液、樹脂製遮蔽膜21を介して生体組織に超音波を送受することになる。この様な超音波送受状態で屈曲用圧電振動子13に図6に示す交流電圧の駆動信号g1を印加すると図5に示す弾性棒12と屈曲用圧電振動子13によって構成される圧電屈曲子5は最大屈曲変位5a、5bを起こし、その先端に配置した超音波送受波器11は軌跡71に沿って変位する。超音波送受波器11の最大変位量Δxmaxは弾性棒12と屈曲用圧電振動子13のそれぞれの厚さt1、t2、印加電圧Vdisp、非線形補正係数α、横方向の圧電定数をd31として、
Δxmax=3・d31・α・Vdisp・(L/t2)2・(1+t1/t2)…(1)
となる。
【0086】
上式(1)において、例えば、d31=150×10-12[m/V]、α=2、L=10[mm]、t1=t2=0.1[mm]、t=t1+t2、Vdisp=50Vppとすると、Δxmax=0.5mmとなる。
【0087】
この時の共振周波数fresは、平均弾性率Y、平均密度ρを用いて、
【数1】
で表され、Y=8×1010[N/m2]、ρ=7.8×103kg/m3として、fres=1kHzとなる。
【0088】
従って、弾性棒屈曲変位駆動信号43の周波数をfres=1kHzに一致させると、共振時の共振尖鋭度Qが積算される変位が得られるので、穿刺針の内径寸法にほぼ等しいΔxmax=0.5mmを得る為の駆動電圧はVdisp/Qに低下出来る。
【0089】
非共振で用いる時は、Vdisp=50Vppとなる。100Hz即ち非共振駆動すると、0.5mmを10msecで往復することになり、その時間内に超音波a1のパルスを10kHz(0.1msec)で繰り返し送受する。従って、図6に示すように屈曲変位1サイクルの間に100個のパルス(P21,P22,P23…P24,P25,P26)を送受出来ることになる。0.5mmを往復する間に100個のパルスを送受するので横方向の走査ピッチは10μmとなり、走査分解能10μmが得られる。
【0090】
横方向分解能は、図4に示した音響レンズ54による焦点Z0と開口長Dと生体の音速Cmedと超音波の中心周波数fcによって決まる。
【0091】
横方向分解能δlatは、
δlat−(Cmed /fc)・(Z0/D) …(3)
で表される。
【0092】
今、Z0=0.4mm、D=0.2mm、Cmed =1500[m/sec],fc=300[MHz]とすると、δlat=10μmの横方向分解能が実現出来る。
【0093】
またこの時の深達距離Zpは、システムのダイナミックレンジDR、超音波送受波器11のトータルゲインTG、及び音響レンズによる集束利得FGの総和をその周波数fにおける生体組織の減衰αmed [dB/m/MHz]・f[MHz]で除した値で表される。これにより、Zpは深達距離0.75mmが得られることになる。
【0094】
この様に0.75mmの深さまで超音波送受波器近傍の高分解能断層像が得られることになるが、更に深部の生体組織を高分解能で診断したい時は、穿刺針を更に穿刺してゆき、最終的に各深さでの診断像を合成し、目標の深さ迄の断層像を得る。
【0095】
次に図7及び図8を用いて高次オーバートーン振動子を用いた超音波送受波器11の動作原理および作用について記述する。
【0096】
図7は圧電振動子53の材料としてPZTセラミクスを用いた場合のメーソンの等価回路を用いてパルス応答特性を計算した結果を示し、図8は圧電振動子53の材料としてKNを用いた場合のメーソンの等価回路を用いてパルス応答特性を計算した結果を示している。
【0097】
図7において、圧電振動子53の材料としてPZTセラミクスを用いた場合を示し、符号S11はPZTセラミクスの基本波応答スペクトル、符号S13はPZTセラミクスの3次のオーバートーンスペクトル、符号S15はPZTセラミクスの5次のオーバートーンスペクトル、符号S17はPZTセラミクスの7次のオーバートーンスペクトル、符号S1はPZTセラミクスの奇数次のオーバートーン次数による暫減特性である。
【0098】
図8において、圧電振動子53の材料としてKNを用いた場合を示し、符号S21はKNの基本波応答スペクトル、符号S23はKNの3次のオーバートーンスペクトル、符号S25はKNの5次のオーバートーンスペクトル、符号S27はKNの7次のオーバートーンスペクトル、符号S2はKNの奇数次のオーバートーン次数による暫減特性である。
【0099】
図7及び図8に示すように、パルス応答特性は、PZTセラミクスを用いた場合とKNを用いた場合の双方で、オーバートーン周波数f0から三次、五次に倍数が上昇するに従い標準トータルゲインが低下する暫減特性S1,S2を示す。
【0100】
一般に圧電振動子は、奇数次のオーバートーン特性を示し、振動レベルはオーバートーンの次数が大きくなるほど、単調に低下する暫減特性を示す。
【0101】
この暫減の程度は、圧電振動子の機械的品質係数Qmと強い関係があり、図7に示すソフト系PZTのPZTセラミクスを使った場合に比較し、図8に示すKNのように圧電単結晶や、大きい機械的品質係数Qmを持つ圧電振動子ほど暫減の仕方が小さくなる。即ち、圧電単結晶や、大きい機械的品質係数Qmを持つ圧電振動子を用いることにより、基本振動レベルに近いオーバートーンレベルを得ることが出来る。
【0102】
ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、それらの固溶体、タンタルニオブ酸カリウム等の単結晶圧電材料はQmが大きく、且つ圧電定数は大きいので、オーバートーン応答利用に適している。
【0103】
一方、基本波細胞診断に必要な分解能を得るために必要な周波数は数100MHzと言われていて、この周波数を効率良く利用出来る圧電振動子の厚さは基本波の場合5〜10μmである。この厚さを研磨加工するのは極めて難しい。
【0104】
このため、圧電振動子53の厚さは、5〜10μmのオーバートーンの次数倍の厚さにしている。
【0105】
そして、このオーバートーン振動周波数に一致した中心周波数を有した図6に示すバースト波を駆動信号b1とすることにより、その周波数の超音波信号が送信される事になる。さらにエコー信号も送信信号にほぼ近い波形で受信され、その周波数のオーバートーン応答が可能になる。この様にオーバートーン信号を用いる方法は圧電素子厚を基本波に相当する厚さに加工すればよく、例えば5次オーバートーンで有れば通常の基本波の時の5倍の厚さで良いことになる。尚受信時に圧電効果で発生する電荷は静電容量で除した電圧に変換される。この場合、静電容量は1/5倍となるので出力は同じ周波数の基本波で送受信する場合の1/5倍になる。以上の様に高次オーバートーンを用いることにより圧電振動子の厚さは容易に加工出来る厚さとなり、また、高次オーバートーン周波数を基本波として受信する場合のオーバートーン次数倍の電圧出力が得られることになる。
【0106】
図9は33μmKN振動子の5倍オーバートーン周波数近傍となる300MHz近傍の圧電オーバートーン応答のインピーダンスIm及び位相Phの周波数特性を示している。
【0107】
図9に示すように、33μmKN振動子の圧電オーバートーン応答は、周波数が330MHz付近で位相が0°となり、周波数が320MHz付近ででインピーダンスが最小値、周波数が340MHz付近でインピーダンスが最大値となっている。
【0108】
次に、本実施の形態でバッキング材として図4に示すポーラスシリコン層52を用いた作用について図10及び図11を用いて説明する。
【0109】
ポーラスシリコン層52は100面シリコン単結晶の片面に白金電極を形成し、これを陽極とし、該シリコン単結晶の他の面にフッ酸を接触させ、フッ酸液中に設けた白金陰極電極の間に電流を流すことにより、フッ酸が接触した側のシリコン単結晶表面に形成される。
【0110】
図10は前記したポーラスシリコン層52の音速、ポーラス度(多孔度)、ポーラスシリコン層深さ(PS深さ)とポーラスシリコン層52の化成時間との関係を示すグラフであり、右側の縦軸に音速を取り、左側の縦軸に多孔度とPS深さを取り、横軸に化成時間を取っている。
【0111】
図10に示すように、ポーラスシリコン層52の多孔度とPS深さは化成時間が0から20分弱まで化成時間に略比例して増大するが、化成時間が20分弱から60分まででは、PS深さは変化しないのに対して、多孔度は化成時間に略比例して増大する。
【0112】
このため、音速は化成時間10分以上で2000m/sと極めて小さくなっている。そして化成時間10分以上で音速の変化は少なく安定した値を示す。
【0113】
図11は前記したポーラスシリコン層52の音響インピーダンスとポーラスシリコン層52の化成時間との関係を示すグラフであり、左側の縦軸に音響インピーダンスを取り、横軸に化成時間を取っている。
【0114】
図11に示すように、音響インピーダンスも化成時間10分以上で2.5Mraylと極めて小さな値を示している。
【0115】
このポーラスシリコン層の音速、音響インピーダンスは、超音波の測定により図10及び図11に示す様に、樹脂材料並みの小ささになっていることがわかる。一般にバッキング層の音響インピーダンスは圧電振動子の音響インピーダンスと差がある程本来の周波数の振動を高効率で発生出来ることになる。本実施の形態で、ポーラスシリコン層52を用いる目的は、圧電振動子53の音響インピーダンスに比べ1桁小さな音響インピーダンスをもつバッキング材を利用し、ポーラスシリコン層52の振動を高周波で維持させることである。
【0116】
(効果)
以上の様な第1の実施の形態によれば、超音波ビームの走査を穿刺針1の径方向に行うことができ、且つ、穿刺針1の開口部20で超音波を送受するので、生体組織への穿刺状態を確実に検出でき、血管等を避けて穿刺できる。また超音波ビームの走査は穿刺針1の管状部材2の管内で行うので、超音波ビームの走査が細胞組織の配列を乱すことがなくなり、信頼性の高い細胞の鑑別診断が可能となる。さらに、数100MHzという高い周波数の超音波を高い効率で送受信出来、その超音波ビームを走査する為の屈曲変位手段共々穿刺針1内に設けることによって、生体組織に刺針した状態で、穿刺針1の先端開口部に接した生体組織の超音波像を描出できる様になる。
【0117】
これにより、穿刺針1を細胞組織に対して相対的に変位させない状態で、超音波ビームを効率良く走査して前記穿刺針1の先端部の穿刺状況を把握しながら細胞組織を鑑別診断でき、穿刺針1を用いた医療行為の効率化が図れる。
【0118】
また、第1の実施の形態では、穿刺針1は、その根元で内視鏡スコープ101の鉗子孔103を挿通したシース106の先端に着脱可能に接続する接続手段を有しているので、使い捨てが可能となる。
【0119】
また、本実施の形態では、遮蔽手段の樹脂製遮蔽膜21により、細胞片が穿刺針1の開口部20内に入り込むことを防ぐ事ができ、組織細胞の変形を最小限に抑えることが出来る。また樹脂製遮蔽膜21により、超音波ビーム走査に対する妨害を起こらないようにすることが可能となり、樹脂製遮蔽膜21の微細孔22を経て水溶液を穿刺針管内に微量導入することが可能になり、しかも樹脂製遮蔽膜21がその内側の面に親水性処理24されているので、超音波送受波器と生体組織の間が空隙状態になることを防止でき、良好な超音波画像が得られる。
【0120】
尚、第1の実施の形態では、超音波送受波器11が反射波を受波することでAモード信号を得、屈曲用圧電振動子13が超音波Bモード診断像を得るための屈曲変位を発生させ、画像処理回路65が超音波送受波器11のAモード信号に対して超音波Bモード診断像の画像処理を行うことで超音波Bモード診断像を得るように構成したが、屈曲用圧電振動子13に加えて屈曲変位に直交する屈曲変位を発生される第2の屈曲用圧電振動子を弾性棒12に設け、超音波Cモード診断像を得るための超音波ビームの走査を行い、画像処理回路65が超音波送受波器11のAモード信号に対して時間ゲートを行い超音波Bモード診断像の画像処理を行うことで超音波Cモード診断像を得るように構成してもよい。又Bモード像とCモード像を合成する画像処理を行うことにより3次元超音波画像を構築することが可能になる。
【0121】
また、第1の実施の形態では、弾性棒12は短く形成すると、穿刺針1は超音波送受波器11の超音波ビームa1の扇状に走査し、弾性棒12は長く形成すると、穿刺針1は超音波送受波器11の超音波ビームa1の直線状に走査することになる。
【0122】
図12は図1乃至図11に示した第1の実施の形態の第1の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図である。
【0123】
図12の第1の変形例の説明においては、図1乃至図11に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0124】
図12に示すように、穿刺針201の管状部材202の先端部210は、図1乃至図6に示した第1の実施の形態の先端部10に比べて、穿刺針先端の鋭利さ、即ちテーパ角度を少なくしている。
【0125】
図12に示す第1の変形例においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0126】
図13は図1乃至図6に示した第1の実施の形態の第2の変形例を示す穿刺針の側面図である。
【0127】
図13の第2の変形例の説明においては、図1乃至図6に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0128】
図1乃至図6に示した第1の実施の形態では穿刺針1の断面構造を円管としたが、図13に示すように、穿刺針221の断面構造を偏平管にしている。即ち、穿刺針221の管状部材222の断面は、略長辺形の偏平管形状になっている。
【0129】
図13に示す第2の変形例においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0130】
図14は図1乃至図6に示した第1の実施の形態の第3の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図である。
【0131】
図14の第3の変形例の説明においては、図1乃至図6に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0132】
図14に示すように、穿刺針241では、管状部材2の先端部10の開口部20に設ける遮蔽膜251の形状を、超音波送受波器11に前面側に来る前面部252の面のみ超音波送受波器11の超音波送受面に平行にしている。これにより、穿刺針241は、超音波送受波器11からの超音波が前面部252で全反射しないようになっている。
【0133】
図14に示す第3の変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、遮蔽膜251の前面部252と音波送受波器11の開口面とが平行になるので、音波送受波器11からの超音波が前面部252で全反射せず、その間に介在する水膜も平行平面となり、効率の良い超音波送受波が可能となる。
【0134】
図15は図1乃至図6に示した第1の実施の形態の第4の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図である。
【0135】
図15の第4の変形例の説明においては、図1乃至図6に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0136】
図15に示すように、穿刺針261の管状部材262の先端部270は、テーパを無くし、管軸方向に対して直交するように形成している。
【0137】
図15に示す第4の変形例においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0138】
(第2の実施の形態)
図16及び図17は本発明の第2の実施の形態に係り、図16は穿刺針1を第1の方向から見た内部構造を示す断面図、図17は穿刺針の図16の第1の方向と直交する第2の方向から見た内部構造を示す断面図である。
【0139】
図16及び図17の第2の実施の形態においては、図1乃至図6に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0140】
(構成)
図16及び図17に示すように、本実施の形態の穿刺針301で第1の実施の形態と異なる点は、超音波送受波器311の開口面351を、樹脂製遮蔽膜21と平行に配置している点である。
【0141】
また、シース先端部に接続固定する固定接続台303の基端面には、ジョイント孔352,353を形成している。
【0142】
ジョイント孔352,353はシース先端部に形成された図示しないピンが挿入されるようになっている。これにより、穿刺針301はシース先端部により安定して取り付けることが可能になる。
【0143】
(作用)
作業者は、穿刺針301を予め、その先端部を水侵させ、樹脂製遮蔽膜21の微細孔22に充填処理した水溶性樹脂23を溶解させ、該微細孔22から管内空洞部25の陰圧によって図巣していない水滴を導入し、樹脂製遮蔽膜21の管状部材2管内側に形成した親水性処理24した部分で樹脂製遮蔽膜21と超音波送受波器311の開口面351の間の空隙が水膜で満たされ超音波ビームa2は効率良く対象物に送受される。しかも超音波ビームa2は樹脂製遮蔽膜21に直交するので、遮断膜によって全反射されたり、屈折されることがない。更にこの構成では超音波送受波器11の開口面積を比較的大きくとれるので送受超音波強度を増加させることが可能となり、その分深達度が改善される。
【0144】
(効果)
以上、説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、超音波送受波器11の深達度が改善される。また、穿刺針301はシース先端部により安定して取り付けることが可能になる。
【0145】
(第2の実施の形態)
図18乃至図20は本発明の第3の実施の形態に係り、図18は穿刺針の先端側を第1の方向から見た側面図、図19は穿刺針の前記第1の方向と直交する第2の方向から見た側面図、図20は超音波送受波器の側面図である。
【0146】
図18及び図19に示すように、第3の実施の形態では、穿刺針401の断面構造を偏平管にしている。穿刺針401の管状部材402の断面は、略長辺形の偏平管形状になっている。
【0147】
穿刺針401の先端部410は生体組織への穿刺を容易にする為、鋭利なテーパを有する音響的な開口部420を有している。
【0148】
穿刺針401の内部には屈曲可能な弾性棒412やその先端に超音波送受波器411が配設された構造を持ち、管状部材402の径方向D3に超音波ビームa3を走査する。
【0149】
図20を用いて超音波送受波器411の構造について説明する。
図20に示すように、超音波送受波器411は、ジルコニアセラミクス製の弾性棒412の先端部に、第一の実施の形態に示したポーラスシリコンがその表面に形成されたバッキング層451が接続され、その表面、側面を含めて、例えば金/クロムからなり配線電極が接続された下部電極460を形成し、その上にディップ等の方法によりPZT前駆液を塗布し、乾燥、熱処理を繰り返し目標の厚さ5〜10μmに堆積し、圧電厚膜461を形成する。この後、上部電極462を形成し、接地配線463に接続する。最後に下部電極460と接地配線463の間に50V程度の直流電圧を印加し、分極処理を行う。これによって両電極に挟まれた圧電厚膜部464が圧電振動子となる。上部電極462には音響レンズ465が形成されている
圧電厚膜部464は、厚膜なので、容易に共振周波数が数100MHzの圧電変換素子が得られる。
【0150】
バッキング層451は圧電厚膜部464による圧電振動子の1/8以下の音響インピーダンスを有している。
【0151】
このバッキング層451は材料はSi単結晶表面に数10μmの厚さのポーラスシリコンを形成することによって得られる。この層の音響インピーダンスは2.5Mrayl程度であり、前記した圧電厚膜部464の単結晶圧電体の1/8以下である。
【0152】
(作用)
このような第3の実施の形態では、バッキング層451として音響インピーダンスが圧電厚膜部464による圧電振動子の1/8以下のポーラスシリコン層が配置されているので、超音波振動は圧電厚膜部464の中に効率良く閉じ込められ、振動子としての中心周波数が低下することがなくなる。圧電厚膜部464の共振周波数はPZTの場合5〜10μmの厚さがほぼ300MHzに相当する。この周波数領域であれば生体組織細胞の鑑別が可能となる。また基本波を用いて送受信するので、駆動信号は単発のパルスを使うことが出来るようになり、バースト波を用いることによる深さ方向分解能の低減を防ぐことが可能になる。
【0153】
(効果)
このような第3の実施の形態によれば、超音波送受波器411の超音波振動は圧電厚膜部464に効率良く閉じ込められ、また超音波送受波器411は基本波を用いて送受信するので、駆動信号は単発のパルスを使うことが出来き、第1の実施の形態に比べて深さ方向分解能を向上できる。
【0154】
ここで、図20では接地配線463が圧電厚膜461を介在して下部電極460と対向しているので、介在させられた圧電厚膜461も分極され圧電振動子の機能を有し、膜の鉛直方向に超音波送受してしまうことになる。図21及び図22に示す第1乃至第2の変形例はこのような問題に対応したものである。
【0155】
図21は図18乃至図20に示した第3の実施の形態の第1の変形例を示す超音波送受波器の側面図である。
【0156】
図21の第1の変形例の説明においては、図20に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0157】
図21に示すように、第1の変形例の超音波送受波器511では、接地配線463を短く形成し、上部電極462と接地配線463の間を金属の細線512で接続している。細線512は接地配線463よりも十分細く形成されている。
【0158】
このような第1の変形例によれば、下部電極460と細線512の間に介在する圧電厚膜461の面積は小さいので、介在させられた圧電厚膜461が圧電振動子の機能を発揮したとしても、膜の鉛直方向に超音波送受を十分小さくできる。
【0159】
図22は図18乃至図20に示した第3の実施の形態の第2の変形例を示す超音波送受波器の側面図である。
【0160】
図22の第1の変形例の説明においては、図20に示した第1の実施の形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略している。
【0161】
図22に示すように、第2の変形例の超音波送受波器512では、接地配線463と圧電厚膜461の間に酸化けい素等の低誘電率絶縁膜612を介在させている。
【0162】
このような第1の変形例によれば、低誘電率絶縁膜612によって、接地配線463と下部電極460の間に介在しする圧電厚膜461の分極を弱めることができ、介在させられた圧電厚膜461の圧電振動子の機能を弱め、膜の鉛直方向に超音波送受を十分小さくできる。
【0163】
尚、図20乃至図22に示した第3の本実施の形態及びその第1及び第2の変形例において、圧電厚膜461の形成方法はここに開示した方法に限定されるものではなく、例えば、ゾルゲル法、水熱合成法、電気泳動法、ジェットプリンティングシステム(JPS)法、曲面スクリーン印刷法などでも構わない。また圧電厚膜材料もPZTに限定されるものではなく、例えば酸化亜鉛、窒化アルミニウムでも構わない。また音響レンズ465では先端形状を凸面にしているが、これも平面、凹面でも、超音波ビームの指向性が損なわれない限り、表面形状を限定するものではない。
【0164】
[付記]
以上詳述したような本発明の上記実施の形態によれば、以下の如き構成を得ることができる。
【0165】
(付記項1) 管状部材により形成された穿刺針を生体組織に刺針し、該穿刺針から超音波を送受波して、前記生体組織の細胞を診断する超音波診断装置において、
前記管状部材先端の開口部近傍に配置され、前記超音波を送波し、この送信超音波による生体組織からの反射超音波のエコー信号を受波する超音波送受波器と、
前記管状部材の内部に設けられ、前記超音波送受波器の位置を変位させることで該超音波送受波器からの超音波を前記管状部材の径方向に走査する超音波走査手段と、
前記管状部材の内部に設けられ、前記超音波送受波器の位置を検出し、この検出結果の位置信号を出力する位置検出手段と、
前記位置検出手段の位置信号と前記超音波送受波器の受信信号とから、超音波Bモード診断像または超音波Cモード診断像を構築する診断像構築手段と、
を具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【0166】
(付記項2) 前記穿刺針の前記管状部材の根元に設けられ、内視鏡の鉗子孔を挿通したシースの先端に着脱可能に接続する接続手段と、
前記穿刺針の前記管状部材の根元に設けられ、前記超音波送受信部に電気信号を送受信するための第1の電気端子と、
前記穿刺針の前記管状部材の根元に設けられ、前記超音波走査手段に走査のための駆動信号を供給するための第2の電気端子、
前記穿刺針の前記管状部材の根元に設けられ、前記位置検出手段の位置信号を出力するための第3の電気端子と、
を具備したことを特徴とする付記項1に記載の超音波診断装置。
【0167】
(付記項3) 前記超音波送受波器は、前記穿刺針の軸方向に前記超音波ビームを送波させる配置としたことを特徴とする付記項1または2に記載の超音波診断装置。
【0168】
(付記項4) 前記穿刺針の管状部材の先端部に鋭利なテーパを有す開口部を形成し、この開口部に遮蔽手段を施したことを特徴とする付記項1乃至3のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0169】
(付記項5) 前記遮蔽手段には水溶液を微量導入する手段が形成されていることを特徴とする付記項4に記載の超音波診断装置。
【0170】
(付記項6) 前記水溶液を微量導入する手段は、前記遮蔽手段に施された微小孔と、この微小孔に詰まった水溶性樹脂と、前記管状部材内部の陰圧とから構成されていることを特徴とする付記項5に記載の超音波診断装置。
【0171】
(付記項7) 前記遮蔽手段の内側の面には親水性処理が施されていることを特徴とする付記項4乃至6のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0172】
(付記項8) 遮蔽手段は、前記超音波送受波器の近接部の一部において、前記超音波送受波器と平行な面を有することを特徴とする付記項4乃至7のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0173】
(付記項9) 前記超音波送受波器より送受される超音波が前記穿刺針の管状部材の先端部開口面に対し垂直方向に送受信するように配置されたことを特徴とする付記項1乃至7のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0174】
(付記項10) 前記超音波送受波器より送波される超音波ビームを前記管状部材の径方向に直線状ないし扇状に走査する手段を有することを特徴とする付記項1乃至9のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0175】
(付記項11) 前記超音波走査手段は、
前記穿刺針の管状部材の内部で前記管状部材の長軸に沿う様に配置し、前記超音波送受信素子をその先端で固定保持する弾性棒と、
この弾性棒に接合した圧電薄板からなる屈曲振動子と、
で構成されていることを特徴とする付記項1乃至10のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0176】
(付記項12) 超音波送受波器は圧電変換素子からなり、この圧電変換素子が送受する超音波の周波数が圧電基本振動周波数の奇数倍であることを特徴とする付記項1乃至11のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0177】
(付記項13) 前記圧電変換素子が単結晶圧電材料からなることを特徴とする付記項12に記載の超音波診断装置。
【0178】
(付記項14) 前記単結晶圧電材料は、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、それらの固溶体、タンタルニオブ酸カリウムの内のいずれかであることを特徴とする付記項13に記載の超音波診断装置。
【0179】
(付記項15) 前記圧電変換素子に印加する送信駆動信号が、バースト波で、その周波数が前記圧電基本振動周波数の奇数倍に等しくなる駆動手段を有することを特徴とする付記項12に記載の超音波診断装置。
【0180】
(付記項16) 前記超音波送受波器は、圧電変換素子からなり、圧電変換素子は弾性棒上にバッキング層を介して形成された下部電極と、その上に形成された圧電変換素子、更にその上に形成された上部電極とからなることを特徴とする付記項1乃至11のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0181】
(付記項17) 前記バッキング層の音響インピーダンスは、前記圧電変換素子の音響インピーダンスの1/8以下であることを特徴とする付記項16に記載の超音波診断装置。
【0182】
(付記項18) 前記バッキング層は、シリコン単結晶上に層状に形成したポーラスシリコンであることを特徴とする付記項16または17に記載の超音波診断装置。
【0183】
(付記項19) 前記圧電変換素子は、圧電厚膜であることを特徴とする付記項16乃至18のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0184】
(付記項20) 前記位置検出手段は、前記弾性棒の一部に、一体的に形成された弾性棒屈曲変位検出素子であることを特徴とする付記項11乃至19のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0185】
(付記項21) 前記弾性棒屈曲変位検出素子は、圧電変換素子で、この圧電素子と前記弾性棒との貼り合わせ構造からなる圧電ユニモルフであることを特徴とする付記項20に記載の超音波診断装置。
【0186】
(付記項22) 前記弾性棒は絶縁体であり、その表面に前記超音波送受波器を駆動制御する為の配線が形成されていることを特徴とする付記項11乃至21のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【0187】
【発明の効果】
以上述べた様に本発明の付記項1及び2に記載の超音波診断装置によれば、穿刺針を細胞に対して相対的に変位させない状態で、超音波ビームを効率良く走査して前記穿刺針の先端部の穿刺状況を把握しながら細胞組織を鑑別診断できるので、穿刺針を用いた医療行為の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る超音波診断装置を用いた内視鏡スコープ先端部を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る穿刺針を第1の方向から見た内部構造を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る穿刺針の図2の第1の方向と直交する第2の方向から見た内部構造を示す断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る超音波送受波器の構造を示す断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る超音波ビームを走査するアクチュエータ系の駆動信号を含めた超音波診断装置の回路システムを示すブロック図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る屈曲用圧電振動子への駆動信号を示すグラフ。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る第1の種類の圧電材料を用いた場合の超音波送受波器の送受波感度の周波数特性を示すグラフ。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る第2の種類の圧電材料を用いた場合の超音波送受波器の送受波感度の周波数特性を示すグラフ。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る5次の圧電オーバートーン応答に対する超音波振動子のインピーダンス及び位相特性を示すグラフ。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る圧電振動子のバッキング層として用いるポーラスシリコンの音響特性を示す第1のグラフ。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る圧電振動子のバッキング層として用いるポーラスシリコンの音響特性を示す第2のグラフ。
【図12】図1乃至図11に示した第1の実施の形態の第1の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図。
【図13】図1乃至図11に示した第1の実施の形態の第2の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図。
【図14】図1乃至図11に示した第1の実施の形態の第3の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図。
【図15】図1乃至図11に示した第1の実施の形態の第4の変形例を示す穿刺針の先端側の断面図。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る穿刺針を第1の方向から見た内部構造を示す断面図。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る穿刺針の図16の第1の方向と直交する第2の方向から見た内部構造を示す断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る穿刺針の先端側を第1の方向から見た側面図
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る穿刺針の前記第1の方向と直交する第2の方向から見た側面図
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る超音波送受波器の側面図。
【図21】図18乃至図20に示した第3の実施の形態の第1の変形例を示す超音波送受波器の側面図。
【図22】図18乃至図20に示した第3の実施の形態の第2の変形例を示す超音波送受波器の側面図。
【図23】従来の組織鑑別用超音波プローブの全体の構成例を示す説明図。
【図24】従来の超音波診断装置の針状センサの断面図。
【図25】図24の従来の超音波診断装置の機構部を詳細に示す断面図。
【符号の説明】
1 …穿刺針
2 …管状部材
3 …固定接続台
10 …先端部
11 …超音波送受波器
12 …弾性棒
13 …屈曲用圧電振動子
14 …変位検出用圧電素子
15 …配線
16,17…接地配線
20 …開口部
101 …内視鏡スコープ
102 …先端部
103 …鉗子孔
106 …シース
Claims (8)
- 音響的な開口部を有し、生体組織に穿刺可能な針状体と、
前記針状体の内部に設けられ、超音波ビームを前記開口部から外部に走査して反射波を受信する超音波送受波器と、
前記針状体の内部に設けられ、自身が屈曲変位することにより前記超音波送受波器を振動させることが可能な屈曲用圧電振動子を有する超音波走査手段と、
を備えたことを特徴とする超音波送受信ユニット。 - 前記開口部は、前記生体組織が針状体内部に入り込むことを防ぐ遮蔽膜を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波送受信ユニット。
- 前記遮蔽膜は、水溶性の充填材が充填された微細孔を有し、
前記充填材の溶解に伴い、前記微細孔から水の導入が可能であることを特徴とする請求項2に記載の超音波送受信ユニット。 - 前記超音波走査手段による前記超音波送受信器の位置の変位を検出する位置検出手段を有し、
前記超音波送受信器により受信した反射波と、前記位置検出手段により検出した位置の変位に基づき、超音波断層像を構築する診断像構築手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の超音波送受信ユニット。 - 前記超音波送受波器は、300MHz近傍に高次の圧電オーバートーンを有する厚さの単結晶圧電体を用いて構成したことを特徴とする請求項1に記載の超音波送受信ユニット。
- 前記超音波送受波器の位置を変位させる超音波送受信器変位駆動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波送受信ユニット。
- 前記針状体は、着脱可能な接続手段を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波送受信ユニット。
- 前記超音波送受波器は、バッキング材としてポーラスシリコン層を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波送受信ユニット。
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