JP4073753B2 - マルチキャリア通信方法及びマルチキャリア通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple)方式を適用するマルチキャリア通信方法及びその実施に用いるマルチキャリア通信装置に関し、詳しくは携帯電話機等の送受信、デジタルTV放送等の送受信、無線LAN等の送受信に適用されるマルチキャリア通信方法及びその実施に用いるマルチキャリア通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
OFDM方式は、複数の直交する周波数の波に複数の情報を乗じて加算し、同時に送信する方式であるが、乗じる情報によっては加算した送信信号に極めて高いピークが生じ、これを送信するためには広い領域で線形性を保つ増幅器が必要とされており、装置の拡大化を招いていた。このピーク電力を抑圧する方法として、下記の論文及び特許出願が公開されている。
論文1(非特許文献1)には、送信情報を所定の変調方式に対応させてデジタル変調し、デジタル変調して得られたデータシンボル時系列を直並列変換し、直並列変換した各データシンボルの位相をランダムに回転させた状態で逆離散フーリエ変換し、得られた送信信号のピーク電力を測定して、基準を満たす位相回転量の組み合わせを採用して送信するマルチキャリア通信方法が記載されている。この方法は、SLM法と呼ばれ、位相回転量は、side informationと呼ばれる別チャネルを用いて送信される。
【0003】
論文2(非特許文献2)に記載されたピーク電力抑圧通信方法においては、各データシンボルを逆離散フーリエ変換部(IDFT部)により逆離散フーリエ変換した後のIDFT部からの出力をそれぞれブロック化し、各ブロック毎に位相を回転させてピークを抑圧する。この方法においては、ブロック数を少なくすることで、全ての回転の組合せについてピークを測定することが可能となる。そして、最小ピークに対応する位相回転を実施して送信する。この方法はPTS法と呼ばれる。
【0004】
論文3(非特許文献3)には、SLM法、PTS法を改良したものであり、位相回転量を所定の範囲に限定することで、計算量を削減するマルチキャリア通信方法が記載されている。
【0005】
論文4(非特許文献4)には、PTS法を改良したピーク電力抑圧方法が記載されている。この方法においては、パイロット信号を挿入することで、side informationを用いることなく、位相回転量の情報を送信することができる。
【0006】
また、特開平9−098146号公報(特許文献1)、特開平9−098147号公報(特許文献2)、特開平9−116521号公報(特許文献3)及び特開2001−339361号公報(特許文献4)には、論文1と同様に、所定のピーク電力を得るまで位相反転量を試行錯誤的に算出する方法が開示されている。
特開平9−107345号公報(特許文献5)には、論文2と同様に、IDFT部の出力後にブロック化し、ブロック毎にピーク電力を検出し、所定値以上のピーク電力が検出された場合には、他のブロックの極性を所定値以上のピーク電力を打ち消す方向に設定するピーク電力抑圧方法が開示されている。
特開2002−094479号公報(特許文献6)には、ピーク電力が小さくなるように、直並列変換したデータシンボルを間引いて送信する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−098146号公報
【特許文献2】
特開平9−098147号公報
【特許文献3】
特開平9−116521号公報
【特許文献4】
特開2001−339361号公報
【特許文献5】
特開平9−107345号公報
【特許文献6】
特開2002−094479号公報
【非特許文献1】
アール・ダブリュー・ボーム,アール・エフ・エッチ・フィッシャー,ジェイ・ビー・ヒューバー(R.W.Bauml,R.F.H.Fischer and J.B.Huber ),「リデューシング・ザ・ピーク・ツー・アヴァリッジ・パワー・レイショ・オブ・マルチキャリア・モデュレーション・バイ・セレクティッド・マッピンング」(Reducing the peak-to-average power ratio of multicarrier modulation by selected mapping) ,エレクトロニクス(Electronics) レター(Lett.),Vol.32,No.22,pp.2056-2057,1996
【非特許文献2】
エス・エッチ・ミューラー,アール・ダブリュー・ボーム,アール・エフ・エッチ・フィッシャー,ジェイ・ビー・ヒューバ(S.H.Muller,R.W.Bauml,R.F.H.Fischer and J.B.Huber), 「オウ・エフ・ディー・エム・ウイズ・リデュースト・ピーク・ツー・アヴァリッジ・パワー・レイショ・バイ・マルチプル・シグナル・リプリゼンテーション」(OFDM with Reduced Peak-to-Average Power Ratio by Multiple Signal Representation) ,アナルズ・オブ・テレコミュニケーションズ(Annals of Telecommunications),Vol.52,No.1-2,pp58-67,1997
【非特許文献3】
レオナルド・ジェイ・チミニ,ネルソン・アール・ゾーレンバーガー(Leonald J.Cimini,Nelson R.Sollenberger),「ピーク・ツー・アヴァリッジ・パワー・レイショ・リダクション・オブ・アン・オウ・エフ・ディー・エム・シグナル・ユージング・パーシャル・トランスミット・シーケンス」Peak-to-Average Power Ratio Reduction of an OFDM Signal Using Partial Transmit Sequence),アイ・イー・イー・イー・コミュニーションズ・レターズ(IEEE Communications Letters,Vol.4,No.3,2000
【非特許文献4】
タケオ・フジイ,マサオ・ナカガワ(Takeo Fujii,Masao Nakagawa),「ウエイティング・ファクター・エスティメーション・メソッズ・フォア・パーシャル・トランスミット・シーケンシーズ・オウ・エフ・ディー・エム・ツー・リデュース・ピーク・パワー(Weighting Factor Estimation Methods for Partial Transmit Sequences OFDM to Reduce Peak Power ,アイ・イー・アイ・シー・イー・トランズ・コミュン(IEICE TRANS.COMMUN.) , Vol.E85-B,No.1,2002
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の論文1、特開平9−098146号公報、特開平9−098147号公報、特開平9−116521号公報及び特開2001−339361号公報に開示されたピーク電力抑圧方法においては、ピーク電力抑圧性が不十分であるとともに、ランダムに位相反転量を設定するのを複数回繰り返し、ピーク電力が最小となる位相反転量のパターンを選択するので、多くの試行錯誤が必要であり、計算量の増大を招いていた。
論文2及び特開平9−107345号公報に開示されたピーク電力抑圧方法においては、各ブロック毎に位相反転量を設定するのを前提とし、全ての位相反転の組合せを全探索して最適な位相反転量を決定する。
また、ブロック数が少ない場合には計算量は少ないが、ピーク抑圧性が低下する。ピーク抑圧性が低い場合、増幅器で増幅した場合に、増幅器の上限利得に対応して信号のピーク部分が削られてしまい、通信品質が劣化する。大型の増幅器を用いた場合、装置全体が大型化するという問題が生じる。
ブロック数が多い場合、指数関数的に組合せの数が増えるので、全探索すると所定の時間内に処理を終了させることができないという問題があった。
【0009】
論文3及び論文4のピーク電力抑圧方法は、論文1及び2を改良するものとして提案されているが、上述の問題は解決されおらず、ピーク電力の抑圧性は不十分であった。
特開2002−094479号公報に開示されたピーク電力抑圧方法においては、デジタルを変調する方法としてBPSK(Binariphase Phase Shift Keying)が提案されているが、デジタルTV放送で用いられる64QAM(Quadrature Amplitude Modulation) では1波当たりの伝送bit数が多く、この方法のようにデータシンボルを間引く方法では、伝送能力が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、送信信号のピーク電力を抑圧するデータシンボルの位相反転量を求めることを目的とする目的関数の最小化問題を、ニューラルネットワークにより解くことにより、良好な伝送能力及び通信品質を維持した状態でピーク電力を良好に抑圧して通信することができ、増幅器の小型化を図ることができるマルチキャリア通信方法及びマルチキャリア通信装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記位相反転量をブロックごとに決定することにより、ニューロンの数を減じ、ニューロンの内部状態の更新時間を短縮し、ニューロンを動作させるための手段を小型化することができるマルチキャリア通信方法及びマルチキャリア通信装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、送信情報をデジタル変調する前に、送信情報の時系列をブロック毎に分割し、その先頭にパイロット信号を挿入することにより、side informationを用いることなく、位相反転量情報を送信情報と同時に送信することができるマルチキャリア通信方法及びマルチキャリア通信装置を提供することを目的とする。
【0012】
そして、本発明は、評価関数の値を確実に小さくし、かつ、ニューラルネットワークを構成し易い式を変形した目的関数につき、その最小化問題をニューラルネットワークにより解くことにより、さらに良好な解が得られ、ピーク電力をさらに良好に抑圧することができるマルチキャリア通信方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記最小化問題をホップフィールドニューラルネットワークにより解くことにより、ニューロンの出力が収束することが保障されているので、内部状態の更新毎に、より良好な解であるか否かの判断をすることを要しないマルチキャリア通信方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記最小化問題をカオスニューラルネットワークにより解くことにより、局所最適解から脱出する能力を有するので、さらに良好な近似解が得られてピーク電力を良好に抑圧することができるマルチキャリア通信方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1発明のマルチキャリア通信方法は、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調するマルチキャリア通信方法において、予め、逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧する前記位相反転量を求めるための目的関数を定義し、位相反転量は、各データシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、各データシンボルの位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作すべく構成しておき、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルが出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求める過程と、該過程により求めた助変数に基づきニューロンを動作させ、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作過程と、該ニューロン動作過程により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定過程と、該位相反転量決定過程により決定された位相反転量に、データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程と、前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルに、前記位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程とを含むことを特徴とする。
【0016】
第2発明のマルチキャリア通信方法は、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調するマルチキャリア通信方法において、予め、送信情報をデジタル変調して得られたデータシンボルを直並列変換してブロック毎に出力すべく構成し、逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧するブロック毎の位相反転量を求めるための目的関数を定義し、前記位相反転量は、ブロック内のデータシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、前記位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作すべく構成しておき、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルがブロック毎に出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求める過程と、該過程により求めた助変数に基づきニューロンを動作させて、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作過程と、該ニューロン動作過程により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定過程と、該位相反転量決定過程により決定された各ブロックの位相反転量に、当該ブロックの各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程と、前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルをブロック毎に出力する離散フーリエ変換過程と、該離散フーリエ変換過程により出力された各ブロックの各データシンボルに、当該ブロックの位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程とを含むことを特徴とする。
【0017】
第3発明のマルチキャリア通信方法は、第2発明において、送信情報をデジタル変調する前に、前記送信情報の時系列をLQ−qビット毎のブロックに分割し、その先頭のqビットにパイロット信号を挿入する過程と、前記離散フーリエ変換により出力された各ブロックの先頭シンボルに対して仮のデジタル復調を施し、パイロット信号に乗じられた各ブロックの位相反転量情報を復調して出力する位相反転量情報復調過程と、前記離散フーリエ変換過程により出力された各ブロックの各データシンボルに、前記位相反転量情報復調過程により得られた当該ブロックの位相反転量を乗じて、データシンボルの位相を反転させる過程と、受信情報を復調した後に、パイロット信号を除去する過程とを含むことを特徴とする。但し、L:ブロックのデータシンボル数、Q:1データシンボル当たりのビット数、q:1以上Q以下の整数とする。
【0018】
第4発明のマルチキャリア通信方法は、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記ニューロン動作過程は、ニューラルネットワークの繰り返し計算回数tを0に初期化し、各ニューロンの出力に−1から1までの範囲の乱数を初期値として与える過程と、前記助変数に基づきニューロンを動作させて、t回目の各ニューロンの出力を得る状態更新過程と、前記出力が収束したか否かを判断する第1判断過程と、該第1判断過程により前記出力が収束していないと判断した場合に、tが予め設定した所定値であるか否かを判断する第2判断過程と、前記第2判断過程によりtが前記所定値でないと判断した場合に、状態更新を繰り返す過程とを含み、前記位相反転量決定過程は、前記第1判断過程により前記出力が収束したと判断した場合に、又は前記第2判断過程によりtが前記所定値であると判断した場合に、前記出力に基づき前記位相反転量を決定することを特徴とする。
【0019】
第5発明のマルチキャリア通信方法は、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記ニューロン動作過程は、ニューラルネットワークの繰り返し計算回数tを0に初期化し、各ニューロンの出力に−1から1までの範囲の乱数を初期値として与える過程と、前記助変数に基づきニューロンを動作させて、t回目の各ニューロンの出力を得る状態更新過程と、該状態更新過程により得られた前記出力に基づき前記位相反転量を仮決定する過程と、該過程により仮決定した位相反転量に基づいて前記評価関数の値を求める過程と、該過程により得られた前記評価関数の値が、これまでに保存された位相反転量に基づく評価関数の値の最良値より良いか否かを判断する過程と、該過程により最良値より良いと判断した場合に、前記位相反転量を保存する保存過程と、tが予め設定した所定値であるか否かを判断する判断過程と、該判断過程によりtが前記所定値でないと判断した場合に、状態更新を繰り返す過程とを含み、前記位相反転量決定過程は、前記判断過程によりtが前記所定値であると判断した場合に、前記保存過程により保存された前記最良値に対応する位相反転量を実際に使用する位相反転量に決定する過程であることを特徴とする。
【0020】
第1乃至第5発明においては、送信信号のピーク電力を抑圧する各データシンボルの位相反転量を求めることを目的とする目的関数の最小化問題を、ニューラルネットワークにより解くので、ピーク電力を良好に抑圧できる位相反転量を求めることができる。従って、データシンボルを間引くことなく、良好な通信品質及び良好な伝送能力を有した状態で、ピーク電力を良好に抑圧して通信することができ、増幅器の小型化を図ることができる。
【0021】
第2発明においては、ブロック毎に位相反転量を決定するので、ニューロンの数を減じ、ニューロンの内部状態の更新時間を短縮し、ニューロンを動作させるための手段を小型化することができる。
第3発明においては、各ブロックの先頭にパイロット信号を挿入するので、side informationを用いることなく、位相反転量の情報を送信情報と同時に送信することができる。
【0022】
第6発明のマルチキャリア通信方法は、第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記目的関数は、次の式を元関数とすることを特徴とする。
【0023】
【数2】
【0024】
第6発明においては、評価関数の値を確実に小さくし、かつ、ニューラルネットワークを構成し易い、上述の式を変形した目的関数につき、その最小化問題をニューラルネットワークにより解くので、さらに良好な解が得られ、ピーク電力をさらに良好に抑圧することができる。
【0025】
第7発明のマルチキャリア通信方法は、第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記ニューラルネットワークは、ホップフィールドニューラルネットワークであることを特徴とする。
【0026】
第7発明においては、ニューロンの出力が収束することが保障されているので、内部状態の更新毎に、より良好な解であるか否かの判断をすることを要しない。
【0027】
第8発明のマルチキャリア通信方法は、第1乃至第3、第5及び第6発明のいずれかにおいて、前記ニューラルネットワークは、カオスニューラルネットワークであることを特徴とする。
【0028】
第8発明においては、局所最適解から脱出する能力を有するので、良好な近似解が得られる。
【0029】
第9発明のマルチキャリア通信装置は、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調すべく構成されているマルチキャリア通信装置において、逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧する位相反転量を求めるための目的関数を定義し、位相反転量は、各データシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、各データシンボルの位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作させて、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作手段と、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルが出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求め、該助変数を前記ニューロン動作手段手段へ出力する手段と、前記ニューロン動作手段により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定手段と、該位相反転量決定手段により決定された位相反転量に、各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段と、前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルに、前記位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段とを備えることを特徴とする。
【0030】
第10発明のマルチキャリア通信装置は、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調すべく構成されているマルチキャリア通信装置において、送信情報をデジタル変調して得られたデータシンボルを直並列変換してブロック毎に出力する手段と、逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧するブロック毎の位相反転量を求めるための目的関数を定義し、前記位相反転量は、ブロック内のデータシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、前記位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作させて、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作手段と、デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルがブロック毎に出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求め、求めた助変数を前記ニューロン動作手段へ出力する手段と、前記ニューロン動作手段により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定手段と、該位相反転量決定手段により決定された各ブロックの位相反転量に、当該ブロックの各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段と、前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルをブロック毎に出力する離散フーリエ変換手段と、該離散フーリエ変換手段により出力された各ブロックの各データシンボルに、当該ブロックの位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段とを備えることを特徴とする。
【0031】
第11発明のマルチキャリア通信装置は、第10発明において、送信情報をデジタル変調する前に、前記送信情報の時系列をLQ−qビット毎のブロックに分割し、その先頭のqビットにパイロット信号を挿入する手段と、前記離散フーリエ変換手段により出力された各ブロックの先頭シンボルに対して仮のデジタル復調を施し、パイロット信号に乗じられた位相反転量情報を復調して出力する位相反転量情報復調手段と、前記離散フーリエ変換手段により出力された各ブロックのデータシンボルに、前記位相反転量情報復調手段により得られた当該ブロックの位相反転量を乗じて、データシンボルの位相を反転させる手段と、受信情報を復調した後に、パイロット信号を除去する手段とを含むことを特徴とする。
但し、L:ブロックのデータシンボル数、Q:1データシンボル当たりのビット数、q:1以上Q以下の整数とする。
【0032】
第9乃至第11発明においては、送信信号のピーク電力を抑圧する各データシンボルの位相反転量を求めることを目的とする目的関数の最小化問題を、ニューラルネットワークにより解くべく構成されているので、ピーク電力を良好に抑圧することができる位相反転量を求めることができる。従って、データシンボルを間引くことなく、良好な通信品質及び良好な伝送能力を有した状態で、ピーク電力を良好に抑圧して通信することができ、増幅器の小型化を図ることができる。
【0033】
第10発明においては、ブロック毎に位相反転量を決定すべく構成されているので、ニューロンの数を減じ、ニューロンの内部状態の更新時間を短縮し、ニューロンを動作させるための手段を小型化することができる。
第11発明においては、ブロック毎にパイロット信号を挿入すべく構成されているので、side informationを用いることなく、位相反転量の情報を送信情報と同時に送信することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るマルチキャリア通信装置の送信機を示すブロック図である。
この送信機は、デジタル変調部1、S/P(直並列)変換部2、最適位相反転量算出部3、位相反転部4、逆離散フーリエ変換部(IDFT部)5、P/S変換部6、反転情報変調部(PM部)7、並びにD/A変換部及び高周波回路8を備える。
【0035】
デジタル変調部1は、送信情報(0又は1の2値データ)を予め決めておいた複素平面上の点(信号点)に写像し、複素シンボル(データシンボル)を生成する。
図2は、デジタル変調の一例としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying )の信号点配置を示した図である。QPSKの場合、送信したい情報を2bit ずつの組にし、図2の複素平面上の信号点配置に従って、それぞれに対応する複素シンボルを決定する。送信情報が0,0,1,0,1,1…の場合、それぞれ1+j,1−j,−1−j,…(j=√−1。それぞれの複素数を複素シンボルという)に変調される。本実施の形態に係るマルチキャリア通信装置のデジタル変調部1においては、QPSKに限らず、BPSK、8PSK、16QAM、64QAM、256QAM等の種々のデジタル変調方式に対応可能である。
【0036】
S/P変換部2は、デジタル変調部1により得られた複素シンボル時系列を、N個を1つの組として並列に出力する。以後、この組をフレームという。Xn を複素シンボルを表すものとし、各フレームをX=(X0 ,X1 ,… ,XN-1 )と表記する。
S/P変換部2の出力をIDFT部5に入力するときに、各シンボルに適当な位相反転を施すと、最終の送信信号のピークを低く抑えることができる。最適位相反転量算出部3は、この反転量のp=(p0 ,p1 ,…,pN-1 )(pn は複素シンボルXn を反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数)をS/P変換部2の出力Xより算出する。この演算はニューラルネットワークにより実現される。演算の詳細は後述する。
【0037】
位相反転部4は、最適位相反転量算出部3によって算出された位相反転量pに従って複素シンボルXをそれぞれ反転させる。具体的には、乗算回路からなり、(p0 X0 ,p1 X1 ,…,pN-1 XN-1 )を出力する。
IDFT部5は、位相反転部4により得られた信号(p0 X0 ,p1 X1 ,…,pN-1 XN-1 )を入力として、次式によって定義される線形変換を実行し、送信信号ベクトルY=(Y0 ,Y1 ,… ,YN-1 )を算出して出力する。
【0038】
【数3】
【0039】
P/S変換部6は、IDFT部5により得られた1フレームの送信信号ベクトルY=(Y0 ,Y1 ,… ,YN-1 )を時系列に並べて出力する。
反転情報変調部(PM部)7は、位相反転量p=(p0 ,p1 ,…,pN-1 )を受信側に送信するために、所定のデジタル変調を施す。
【0040】
D/A変換部及び高周波回路8は、P/S変換部6により得られた送信信号時系列に対しD/A変換、直交変調等の必要な処理を施し、アップコンバータを介して所定の周波数帯(A)で送信する。また、同時に反転情報変調部7の出力に同様にD/A変換等を施し、(A)と異なる周波数帯(B)にアップコンバージョンして送信する。
【0041】
図3は、実施の形態1に係るマルチキャリア通信装置の受信機を示すブロック図である。
受信機は、高周波回路及びA/D変換部11、S/P変換部12、離散フーリエ変換部(DFT部)13、反転情報復調部(PD部)14、位相反転部15、P/S変換部16、デジタル復調部17を備える。
【0042】
高周波回路及びA/D変換部11は、周波数帯(A)の信号をダウンコンバージョンし、直交復調とA/D変換を施し、受信信号時系列を生成する。
S/P変換部12は、周波数帯(A)から得られた受信信号時系列をN個1組のチルダY=(チルダY0 ,チルダY1 ,… ,チルダYN-1 )として並列にし、DFT部13へ出力する。
反転情報復調部(PD)14は、高周波回路及びA/D変換部11が、周波数帯(B)の信号をダウンコンバージョンし、直交復調等の処理を施して生成したデータをデジタル復調し、位相反転量チルダp=(チルダp0 ,チルダp1 ,…,チルダpN-1 )を生成する。位相反転量チルダpは、位相反転量pと同一の値を示す。
【0043】
DFT部13は、離散フーリエを実行する。具体的な計算は、次の位相反転部15における計算と合わせて定義する。
位相反転部15は、次式に従い、DFT部13の出力に反転情報復調部14の出力を乗じ、算出したチルダX=(チルダX0 ,チルダX1 ,… ,チルダXN-1 )を出力する。
【0044】
【数4】
【0045】
P/S変換部16は、チルダX=(チルダX0 ,チルダX1 ,… ,チルダXN-1 )を複素シンボル時系列に整列する。
デジタル復調部17は、P/S変換部16により得られた複素シンボル時系列をデジタル復調し、受信情報を復調する。
【0046】
以下に、最適位相反転量算出部3が、IDFT部5により生成される送信信号ベクトルYのピーク電力を十分に抑圧できる位相反転量pを算出する方法について説明する。
ピーク電力は、次式PAPR(Peak-to-average power ratio) によって評価される。このPAPR値が小さくなるように位相反転量pを決定することでピークを抑圧することができる。
【0047】
【数5】
【0048】
PAPR値が小さくなる位相反転量pを決定するために、次式の実数値関数を定義する。ここで、pn (n=0,…,N−1)(pn は複素数)の大きさは1となるように決定する。
【0049】
【数6】
【0050】
この関数を目的関数として、J( p* ) =0を満たすp* を発見できれば、ピーク電力を最も抑圧する位相反転量であることが保障される。しかしこの関数は多峰性であるので、原理的には全探索以外に解を探索できない。従って効率的な大域探索手法が必要である。
ところで、pn を複素数ではなく、実数pn =+1又はpn =−1のいずれかであると限定することで、この目的関数の最小化問題は組合せ最適化問題となる。目的関数J(p)は、係数が全て実数であるようなpn に関する4次多項式として次式のように再定義できる。
【0051】
【数7】
【0052】
ここで、Anm,Bnm,cは、次式で定義される実数である。
【0053】
【数8】
【0054】
組合せ最適化問題の近似解法としてホップフィールドニューラルネットワーク(Hopfield neural network, HNN)と、カオスニューラルネットワーク(Chaotic neural network,CNN)とがある。
ニューラルネットワークは多入力1出力素子であるニューロンが多数結合した構造を有する。HNNの各ニューロンは次式の動作式により並列にその状態を更新する。
【0055】
【数9】
【0056】
ここで、xi (t)、ui (t)は第i番目のニューロンの時刻t(計算回数t回目)における出力及び内部状態、Timは第m番目のニューロンから第i番目のニューロンへの結合荷重(シナプス結合)、Ii は第i番目ニューロンのしきい値を示すパラメータ、εは所定の定数である。
このネットワークにおいて、Tim=Tmi(対称結合)とTii=0(自己結合なし)の条件が全てのニューロンについて満たされているとき、次式で定義されるエネルギー関数がニューロンの状態更新に伴って必ず減少する(正確には非増加)ことが保障されている。
【0057】
【数10】
【0058】
これは、ニューロンの内部状態の動作式がエネルギー関数を用いて次のように表現できることに起因する。
【0059】
【数11】
【0060】
また、各ニューロンの出力は+1又は−1であり、かつエネルギー関数の極小点であるような点に収束することが保障されている。従って、この性質を利用して組合せ最適化問題を解くことができる。
【0061】
ニューラルネットワークのエネルギーが組合せ最適化問題の目的関数と同じであれば、このネットワークを動作させ、収束後のニューロンの状態を取り出すだけでその状態に対応する点が目的関数の極小点であるといえる。多くの場合、目的関数は多くの谷を持つ。ニューラルネットワークは必ずエネルギーを減少させる方向にしか状態更新できないので(最急降下法と同等である)、最初のネットワークの状態により必ず最小点を探索できるという保障はないが、所定の処理により良好な近似解を得ることができる。
【0062】
上述のエネルギー関数はニューロンの出力xi (t)に関する2次関数として定義されているが、xi (t)の二乗以上の項(xi k (t),k≧2)を含まない高次の多項式の関数である場合、上述の性質を有し、組合せ最適化問題の解法に利用できる。二乗項以上の項を削除しない場合、xi (t)が必ず+1又は−1に収束するとは保障できず、組合せ最適化問題の解として無意味な解(無効解)を出力してしまうことがある。
【0063】
J(p)はpi に関する4次関数である。この多項式からpi 2 ,pi 3 ,pi 4 の項を省くことができればHNNを用いてJ(p)を最小とするpを発見できる可能性がある。単純に二乗項以上の項を削除すると当然目的関数が変形し、問題の意味が変質するが、この目的関数のpi の取り得る値は+1又は−1であり、pi 2 及びpi 4 は必ず1であるので、単純な式変形により二乗項を削除することができる。
例えば、2pi 2 pm pk のような項があれば、pi 2 =1であるので、2pm pk のように変形しても元の目的関数の意味を変質させない。このような変形を行ってできた関数をバーJ(p)とすると、この関数からHNNの動作式は次式で定義できる。
【0064】
【数12】
【0065】
この動作式に従って、N個のニューロンを動作させれば、x(t)(tは無限大)をpとすればJ(p)を十分に小さくすることができ、ピーク電力を抑圧できる。
【0066】
次に、目的関数の二乗項を削除する変形及びHNNの動作式の導出方法について説明する。
N=3の場合
例としてN=3の場合の目的関数の変形方法及びHNNの導出方法について説明する。
まず、変形前の目的関数J(p)は数7の式より次式のように定義できる。
【0067】
【数13】
【0068】
ここで、Σ内の第1、2、3、7、8、9項はp0 2、p1 2、p2 2を含み、p0 2=p1 2=p2 2=1であるので、次式のように変形できる。
【0069】
【数14】
【0070】
次に、次式のようにDnij を定義する。
【0071】
【数15】
【0072】
これを用いて式を展開すると、次式のようになる。
【0073】
【数16】
【0074】
ここで、第2式から第3式への変形にはp0 2=p1 2=p2 2=1を用いる。
数16の式の目的関数は定数項としてDn01 2+Dn12 2+Dn20 2を有しているが、この項を省略した次の目的関数バーJ(p)を考えると、この関数の最小点を与える(p0 ,p1 ,p2 )は数16の式の目的関数のそれと当然一致する。
【0075】
【数17】
【0076】
従って、この関数をピーク電力抑圧問題の目的関数と再定義し、これを用いてHNNを構成する。2つのニューロンx0 、x1 、x2 を用意し、次式
【0077】
【数18】
【0078】
より次の動作式によって動作させる。
【0079】
【数19】
【0080】
xi (0)(i=0,1,2)に適当な初期値を与え、xi (t)が収束するまで上述の微分方程式に従って状態更新を繰り返すと、J(p)の準最適解p=x(∞)が得られる。
【0081】
一般のNの場合
二乗項を削除する前の目的関数は数7の式より次式のように表される。
【0082】
【数20】
【0083】
二乗項を削除した目的関数は次式のように表される。
【0084】
【数21】
【0085】
HNNの動作式は、次式のように表される。
【0086】
【数22】
【0087】
上述のように二乗項の削除のために状態更新式は極めて複雑になる。
HNNは上述したように原理的には最急降下法と同等であるので、局所最適解に一旦陥るとそこから脱出できず、解の精度が悪い。CNNはカオス的な振る舞いによって局所最適解から脱出する能力を有しているので、HNNと比較して良好な近似解を得ることができる。CNNの動作式を次式に示す。ここで、rは0から1までの間の定数、ε1 ,ε2 は所定の定数である。
【0088】
【数23】
【0089】
CNNは、その動作方程式内に自己結合の項が内在するので、HNNのように目的関数の二乗項を削除する必要はない。また、CNNは解を発見しても必ず収束するとは限らないので、状態更新毎に解であるか否かの判定を要する。
【0090】
次に、最適位相反転量算出部3で実行される具体的なアルゴリズムについて説明する。
〔実施例1〕
図4は、実施例1における最適位相反転量算出部3の位相反転量の算出処理を示すフローチャートである。
まず、最適位相反転量算出部3は、S/P変換部2から入力した複素シンボルベクトルX=(X0 ,X1 ,… ,XN-1 )を用いて、Anm,Bnm(n,m=0,…,N−1)及びcを求め、パラメータ(助変数)を設定する(ステップS1)。
【0091】
【数24】
【0092】
次に、ニューラルネットワークの繰り返し計算回数tを0に初期化し、実数変数xi (t),ui (t)(i=0,…,N−1)に−1から+1の範囲の乱数を初期値として与える(ステップS2)。xi (t)は第i番目のニューロンの出力に対応する。
【0093】
そして、t=t+1とし(ステップS3)、次式に従って、xi (t)(i=0,…,N−1)の状態更新を行う(ステップS4)。
ここで、バーJ(p)は上述した目的関数である。
【0094】
【数25】
【0095】
バーJ(p)のpi による偏微分は、次式で表される。
【0096】
【数26】
【0097】
次に、次式
【0098】
【数27】
【0099】
か否かを判定し、xが収束しているか否かを判断する(ステップS5)。
ステップS5において、xが収束したと判断した場合、ステップS4で得られたx(t)=(x0 (t),…,xN-1 (t))から位相反転量p=(p0 ,p1 ,…,pN-1 )を次式により決定して(ステップS6)を処理を終了する。
【0100】
【数28】
【0101】
ステップS5において、xが収束していないと判断した場合、tが予め設定した繰り返し計算回数の上限であるか否かを判断する(ステップS7)。
ステップS7において、tが繰り返し計算回数の上限であると判断した場合、処理をステップS6に進める。
ステップS7において、tが繰り返し計算回数の上限でないと判断した場合、処理をステップS3に戻す。
【0102】
〔実施例2〕
〔実施例1〕のステップS3における式を次式に置き換えて処理を実施する。この動作式による場合はxの収束性が向上する。ここで、ε′は正の定数である。
【0103】
【数29】
【0104】
〔実施例3〕
図5は、実施例3における最適位相反転量算出部3の位相反転量の算出処理を示すフローチャートである。
まず、〔実施例1〕と同様にして、パラメータを設定する(ステップS11)。
次に、〔実施例1〕と同様にして、ニューラルネットワークの初期化を実施する(ステップS12)。また、PAPRbest=∞とする。
そして、t=t+1とし(ステップS13)、次式に従って、xi (t)(i=0,…,N−1)の状態更新を行う(ステップS14)。
【0105】
【数30】
【0106】
ステップS14で得られたx(t)=(x0 (t),…,xN-1 (t))から位相反転量p′(t)=(p0 ′(t),…,pN-1 ′(t))を次式により仮決定する(ステップS15)。
【0107】
【数31】
【0108】
p′(t)を用いて数3の式よりYn を求め、数5の式よりPAPRを求めてPAPR(t)とする(ステップS16)。
ステップS17において、PAPR(t)がPAPRbestより小さいか否かを判断する。
ステップS17において、PAPR(t)がPAPRbestより小さいと判断した場合、そのPAPR(t)をPAPRbestとして保存し、また、そのp′(t)を位相反転量pとして保存し(ステップS18)、ステップS19に処理を進める。
ステップS17において、PAPR(t)がPAPRbestより大きいと判断した場合、ステップS19に処理を進める。
【0109】
ステップS19において、tが予め設定した繰り返し計算回数の上限であるか否かを判断する。
tが繰り返し計算回数の上限である場合、処理をステップS20に進める。
tが繰り返し計算回数の上限でない場合、処理をステップS13に戻す。
【0110】
ステップS20において、保存されたpの最良解を解として決定し、処理を終了する。
【0111】
〔実施例4〕
〔実施例3〕のステップS14における式を次式に置き換えて処理を実施する。この動作式による場合は計算量が削減する。
【0112】
【数32】
【0113】
〔実施例5〕
CNNを用いる。
〔実施例3〕のステップS14における式を次式に置き換えて処理を実施する。ここで、rは0から1までの間の定数である。また、ε1 、ε2 は所定の定数である。
【0114】
【数33】
【0115】
〔実施例6〕
CNNを用いる。
〔実施例3〕のステップS14における式を次式に置き換えて処理を実施する。ここで、rは0から1までの間の定数である。また、ε1 、ε2 は所定の定数である。
【0116】
【数34】
【0117】
図6乃至図8は、実施の形態1のマルチキャリア通信装置を用いて、Pr{PAPR>PAPRth}とPAPRthとの関係を調べた結果を示したグラフである。
サブチャネル数Nは、図6、図7、図8それぞれ128、256、1024である。また、図6、図7、図8は、それぞれ実施例2、実施例5、実施例5のマルチキャリア通信装置を用いて、Pr{PAPR>PAPRth}とPAPRthとの関係を調べたものである。
ここで、PAPRthとはPAPRを増幅器の利得(単位dB)に換算したものであり、Pr{PAPR>PAPRth}はPAPRが所定のPAPRth値を超える確率である。PAPR値が小さい程、ピーク電力抑圧性が良好であり、増幅器の倍率を小さくし、増幅器を小型化できることを示す。図中、実線は実施の形態1のマルチキャリア通信装置を用いて、HNN法又はCNN法により位相反転量を決定した場合の結果、破線は従来のマルチキャリア通信装置を用いて、SLM法により位相反転量を決定した場合の結果を示す。Mは、SLM法については試行錯誤の回数、CNN法については繰り返し計算回数を表す。
【0118】
図6乃至図8より、本発明のマルチキャリア通信装置を用いてHNN法又はCNN法により位相反転量を決定することにより、SLM法以上にピーク電力を抑圧できることが判る。特に、CNN法においては、Mの数が同一である場合、より小さいPAPRth値について、PAPRが該PAPRth値を超える確率が小さくなっており、ピーク電力の抑圧性が向上して増幅器を小型化することができることが判る。
【0119】
実施の形態2.
図9は実施の形態2に係るマルチキャリア通信装置の送信機を示すブロック図である。図中、図1と同一部分は同一符号を付してある。
【0120】
この実施の形態に係るマルチキャリア通信装置の送信機は、パイロット信号挿入部(PS部)9を有する。
パイロット信号挿入部9は、送信情報にパイロット信号を挿入する。送信情報の時系列をLQ−1〔bit(ビット)〕毎のブロックに分割し、その先頭にパイロット信号(PS)「1」を挿入する。ここで、Qは後段のデジタル変調部1の変調率〔bit/simbol〕を、Lは位相反転部4のブロックサイズを示す。
【0121】
S/P変換部2は、デジタル変調部1が出力した複素シンボル時系列をN個を1組として取り込み、これを要素数LのM個のブロックに分割し(N=M×L)、このM個のブロックを並列に出力するように構成されている。
以下、N個の複素シンボルの組をフレームと呼び、要素をL個ずつ分割したものをブロックという。フレーム内の第n番目の(n=0,1,…,N−1)の複素シンボルをXn と表し、フレーム全体をX=(X0 ,X1 ,… ,XN-1 )と表記する。この表記によると、フレーム内の第m番目の複素シンボルXm は、第
【0122】
【数35】
【0123】
ブロックに属すると表現でき、第k番目のブロックに属する複素シンボルは、(XkL,XkL+1,… ,XkL+L-1)と表現できる。簡単のためにNはLで割り切れるように選ぶ。
【0124】
最適位相反転量算出部3は、各ブロック毎の位相反転量p=(p0 ,p1 ,…,pM-1 )をS/P変換部2の出力Xより算出する。ここで、pk は第k番目のブロックに属する複素シンボル(XkL,XkL+1,… ,XkL+L-1)を反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数である。最適位相反転量算出部3はニューラルネットワークにより実現される。具体的な実現方法は後述する。
【0125】
位相反転部4は、最適位相反転量算出部3によって算出された位相反転量p=(p0 ,p1 ,…,pM-1 )に従って、複素シンボルX=(X0 ,X1 ,… ,XN-1 )をそれぞれ反転させる。具体的には、単純な乗算回路によって実現され、複素シンボルXm は、位相反転量
【0126】
【数36】
【0127】
によって反転させられ、
【0128】
【数37】
【0129】
として出力される。
【0130】
IDFT部5は、位相反転部4で得られた信号
【0131】
【数38】
【0132】
を入力して、次式によって定義される線形変換を実行し、出力Y=(Y0 ,Y1 ,… ,YN-1 )を出力する。
【0133】
【数39】
【0134】
D/A変換部及び高周波回路部8は、P/S変換部6により得られた送信信号時系列に対しD/A変換、直交変調等の必要な処理を施し、アップンバータを介して所定の周波数帯で送信する。
【0135】
図10は実施の形態2に係るマルチキャリア通信装置の受信機を示すブロック図である。図中、図1と同一部分は同一符号を付してある。
この受信機の高周波回路及びA/D変換部11は、周波数帯の信号をダウンコンバージョンし、直交復調とA/D変換を施し、受信信号時系列を生成する。
【0136】
反転情報復調部(PD部)14は、DFT部13から得られた複素シンボル時系列をLシンボル毎にM個のブロックに分割し、各ブロックの先頭シンボルに対して仮のデジタル復調を施し、先頭ビットを位相反転量チルダp=(チルダp0 ,チルダp1 ,…,チルダpM-1 )として復調する。
位相反転部15は、次式に従い、DFT部13の出力にPD部14の出力を乗じ、チルダX=(チルダX0 ,チルダX1 ,… ,チルダXN-1 )を出力する。
【0137】
【数40】
【0138】
パイロット信号除去部(RP部)18は、デジタル復調部17の出力時系列内にLbit 毎に挿入されているパイロット信号を除去し、情報信号のみを出力する。
【0139】
以下に、最適位相反転量算出部3が、IDFT部5により生成される送信信号ベクトルYのピーク電力を十分に抑圧できる位相反転量pを算出する方法について説明する。
実施の形態2においては、実施の形態1と比較して、複素シンボルをM個のブロックに分割し、それぞれのブロックに対して位相反転量を決定するため、目的関数を、次のように再定義する。
【0140】
【数41】
【0141】
ここで、Anm,Bnm,cは、数8の式により定義される。Anm′,Bnm′は次式で定義される実数である。
【0142】
【数42】
【0143】
次に、最適位相反転量算出部3で実行される具体的なアルゴリズムについて説明する。
〔実施例7〕
実施例7における最適位相反転量算出部3の位相反転量の算出処理は、実施の形態1の図5に示すフローチャートの処理と同様にして実施する。実施の形態1と比較して、パラメータが異なり、ニューロンの出力を各ブロックの位相反転量に見立てる点が異なる。
まず、最適位相反転量算出部3は、S/P変換部2から入力した複素シンボルベクトルX=(X0 ,X1 ,… ,XN-1 )を用いて、数42の式によりAnm′,Bnm′(n=0,…,N−1,m=0,…,M−1)及びcを求め、パラメータ(助変数)を設定する(ステップS11)。
【0144】
次に、ニューラルネットワークの繰り返し計算回数tを0に初期化し、実数変数xi (t),ui (t)(i=0,…,M−1)に−1から+1の範囲の乱数を初期値として与える(ステップS12)。xi (t)は第i番目のニューロンの出力に対応する。
そして、t=t+1とし(ステップS13)、次式に従って、xi (t)(i=0,…,M−1)の状態更新を行う(ステップS14)。
【0145】
【数43】
【0146】
ステップS14で得られたベクトルx(t)=(x0 (t),…,xM-1 (t))から位相反転量p′(t)=(p0 ′(t),…,pM-1 ′(t))を次式により仮決定する(ステップS15)。
【0147】
【数44】
【0148】
p′(t)を用いて数3の式よりYn を求め、数5の式よりPAPR(t)を算出し(ステップS16)、PAPR(t)がPAPRbestより小さいか否か判断する(ステップS17)。ステップS17において、PAPR(t)がPAPRbestより小さいと判断した場合、そのPAPR(t)をPAPRbestとして保存し、また、その位相反転量p′(t)を位相反転量pとして保存し(ステップS18)、ステップS19に処理を進める。
ステップS17において、PAPR(t)がPAPRbestより大きいと判断した場合、ステップS19に処理を進める。
【0149】
ステップS19において、tが予め設定した繰り返し計算回数の上限であるか否かを判断する。
tが繰り返し計算回数の上限である場合、処理をステップS20に進める。
tが繰り返し計算回数の上限でない場合、処理をステップS13に戻す。
【0150】
ステップS20において、保存されたpの最良解を解として決定し、処理を終了する。
【0151】
〔実施例8〕
実施例8においては、実施例7の数43の式を次式に置き換えて処理を実施する。この動作式による場合は、実施例7より計算量が削減する。
【0152】
【数45】
【0153】
〔実施例9〕
CNNを用いる。
実施例7の数43の式を次式に置き換えて処理を実施する。ここで、rは0から1までの間の定数である。また、ε1 、ε2 は所定の定数である。
【0154】
【数46】
【0155】
〔実施例10〕
CNNを用いる。
実施例7の数43の式を次式に置き換えて処理を実施する。ここで、rは0から1までの間の定数である。また、ε1 、ε2 は所定の定数である。
【0156】
【数47】
【0157】
実施の形態1においては、位相反転量情報を送信するために周波数帯(B)を用いているが、実施の形態2においては、パイロット信号を送信情報に挿入させることにより周波数帯(B)が不要となる。
この実施の形態2においても、ピーク電力を良好に抑圧できることが確認された。
【0158】
なお、実施の形態2においては、送信情報の時系列をLQ−1ビット毎のブロックに分割し、その先頭にパイロット信号を挿入する場合につき説明しているが、これに限定されるものではなく、前記時系列をLQ−qビット毎のブロックに分割し、その先頭のq(1以上Q以下の整数)ビットにパイロット信号を挿入することにしてもよい。
【0159】
また、実施の形態2においては、最適位相反転量算出部3の位相反転量の算出処理を、実施の形態1の図5に示すフローチャートの処理と同様にして行った場合につき説明しているが、これに限定されるものではなく、位相反転量の算出処理を、実施の形態1の図4に示すフローチャートの処理と同様にして行うことにしてもよい。
【0160】
以上のように、本発明においては、送信信号のピーク電力を抑圧する複素シンボルの位相反転量を求めることを目的とする目的関数の最小化問題を、ニューラルネットワークにより解く過程を含むので、良好な伝送能力及び通信品質を維持した状態でピーク電力を良好に抑圧して通信することができ、増幅器の小型化を図ることができる。
【0161】
なお、実施の形態1及び2においては、送信機及び受信機の各構成部(S/P変換部2及び位相反転部4等)をハードウエアにより構成した場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、ソフトウエアを用いて構成することにしてもよい。
【0162】
【発明の効果】
以上、詳述したように、第1乃至第5発明による場合は、送信信号のピーク電力を抑圧する各データシンボルの位相反転量を求めることを目的とする目的関数の最小化問題を、ニューラルネットワークにより解くので、ピーク電力を良好に抑圧できる位相反転量を求めることができる。従って、データシンボルを間引くことなく、良好な通信品質及び良好な伝送能力を有した状態で、ピーク電力を良好に抑圧して通信することができ、増幅器の小型化を図ることができる。
【0163】
第2発明による場合は、ブロック毎に位相反転量を決定するので、ニューロンの数を減じ、ニューロンの内部状態の更新時間を短縮し、ニューロンを動作させるための手段を小型化することができる。
第3発明による場合は、各ブロックの先頭にパイロット信号を挿入するので、side informationを用いることなく、位相反転量情報を送信情報と同時に送信することができる。
【0164】
第6発明による場合は、評価関数の値を確実に小さくし、かつ、ニューラルネットワークを構成し易い、上述の式を変形した目的関数につき、その最小化問題をニューラルネットワークにより解くので、さらに良好な解が得られ、ピーク電力をさらに良好に抑圧することができる。
【0165】
第7発明による場合は、ホップフィールドニューラルネットワークにより組合せ最適化問題を解くので、ニューロンの出力が収束することが保障されており、内部状態の更新毎に、より良好な解であるか否かの判断をすることを要しない。
【0166】
第8発明による場合は、カオスニューラルネットワークにより組合せ最適化問題を解くことで、局所最適解から脱出する能力を有するので、良好な近似解が得られる。
【0167】
第9乃至第11発明による場合は、送信信号のピーク電力を抑圧する各データシンボルの位相反転量を求めることを目的とする目的関数の最小化問題を、ニューラルネットワークにより解くので、ピーク電力を良好に抑圧できる位相反転量を求めることができる。従って、データシンボルを間引くことなく、良好な通信品質及び良好な伝送能力を有した状態で、ピーク電力を良好に抑圧して通信することができ、増幅器の小型化を図ることができる。
【0168】
第10発明による場合は、ブロック毎に位相反転量を決定すべく構成されているので、ニューロンの数を減じ、ニューロンの内部状態の更新時間を短縮し、ニューロンを動作するための手段を小型化することがきる。
第11発明による場合は、ブロック毎にパイロット信号を挿入すべく構成されているので、side informationを用いることなく、位相反転量情報を送信情報と同時に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るマルチキャリア通信装置の送信機を示すブロック図である。
【図2】デジタル変調の一例としてQPSKの信号点配置を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るマルチキャリア通信装置の受信機を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1における最適位相反転量算出処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例3における最適位相反転量算出処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1のマルチキャリア通信装置を用いて、HNN法により位相反転量を決定して通信した場合のPr{PAPR>PAPRth}とPAPRthとの関係を調べた結果を示したグラフである。
【図7】実施の形態1のマルチキャリア通信装置を用いて、CNN法により位相反転量を決定して通信した場合のPr{PAPR>PAPRth}とPAPRthとの関係を調べた結果を示したグラフである。
【図8】実施の形態1のマルチキャリア通信装置を用いて、CNN法により位相反転量を決定して通信した場合のPr{PAPR>PAPRth}とPAPRthとの関係を調べた結果を示したグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2に係るマルチキャリア通信装置の送信機を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るマルチキャリア通信装置の受信機を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 デジタル変調部
2 S/P変換部
3 最適位相反転量算出部
4 位相反転部
5 IDFT部
6 P/S変換部
7 PM部
9 PS部
12 S/P変換部
13 DFT部
14 PD部
15 位相反転部
16 P/S変換部
17 デジタル復調部
18 RP部
Claims (11)
- デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、
送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調するマルチキャリア通信方法において、
予め、逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧する前記位相反転量を求めるための目的関数を定義し、位相反転量は、各データシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、各データシンボルの位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作すべく構成しておき、
デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルが出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求める過程と、
該過程により求めた助変数に基づきニューロンを動作させ、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作過程と、
該ニューロン動作過程により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定過程と、
該位相反転量決定過程により決定された位相反転量に、各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程と、
前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルに、前記位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程と
を含むことを特徴とするマルチキャリア通信方法。 - デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、
送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調するマルチキャリア通信方法において、
予め、送信情報をデジタル変調して得られたデータシンボルを直並列変換してブロック毎に出力すべく構成し、
逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧するブロック毎の位相反転量を求めるための目的関数を定義し、前記位相反転量は、ブロック内のデータシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、前記位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作すべく構成しておき、
デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルがブロック毎に出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求める過程と、
該過程により求めた助変数に基づきニューロンを動作させて、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作過程と、
該ニューロン動作過程により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定過程と、
該位相反転量決定過程により決定された各ブロックの位相反転量に、当該ブロックの各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程と、
前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルをブロック毎に出力する離散フーリエ変換過程と、
該離散フーリエ変換過程により出力された各ブロックの各データシンボルに、当該ブロックの位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる過程と
を含むことを特徴とするマルチキャリア通信方法。 - 送信情報をデジタル変調する前に、前記送信情報の時系列をLQ−qビット毎のブロックに分割し、その先頭のqビットにパイロット信号を挿入する過程と、
前記離散フーリエ変換により出力された各ブロックの先頭シンボルに対して仮のデジタル復調を施し、パイロット信号に乗じられた各ブロックの位相反転量情報を復調して出力する位相反転量情報復調過程と、
前記離散フーリエ変換過程により出力された各ブロックの各データシンボルに、前記位相反転量情報復調過程により得られた当該ブロックの位相反転量を乗じて、データシンボルの位相を反転させる過程と
受信情報を復調した後に、パイロット信号を除去する過程と
を含む請求項2記載のマルチキャリア通信方法。
但し、L:ブロックのデータシンボル数、Q:1データシンボル当たりのビット数、q:1以上Q以下の整数とする。 - 前記ニューロン動作過程は、
ニューラルネットワークの繰り返し計算回数tを0に初期化し、各ニューロンの出力に−1から1までの範囲の乱数を初期値として与える過程と、
前記助変数に基づきニューロンを動作させて、t回目の各ニューロンの出力を得る状態更新過程と、
前記出力が収束したか否かを判断する第1判断過程と、
該第1判断過程により前記出力が収束していないと判断した場合に、tが予め設定した所定値であるか否かを判断する第2判断過程と、
前記第2判断過程によりtが前記所定値でないと判断した場合に、状態更新を繰り返す過程とを含み、
前記位相反転量決定過程は、前記第1判断過程により前記出力が収束したと判断した場合に、又は前記第2判断過程によりtが前記所定値であると判断した場合に、前記出力に基づき前記位相反転量を決定する過程である請求項1乃至3のいずれかに記載のマルチキャリア通信方法。 - 前記ニューロン動作過程は、
ニューラルネットワークの繰り返し計算回数tを0に初期化し、各ニューロンの出力に−1から1までの範囲の乱数を初期値として与える過程と、
前記助変数に基づきニューロンを動作させて、t回目の各ニューロンの出力を得る状態更新過程と、
該状態更新過程により得られた前記出力に基づき前記位相反転量を仮決定する過程と、
該過程により仮決定した位相反転量に基づいて前記評価関数の値を求める過程と、
該過程により得られた前記評価関数の値が、これまでに保存された位相反転量に基づく評価関数の値の最良値より良いか否かを判断する過程と、
該過程により最良値より良いと判断した場合に、前記位相反転量を保存する保存過程と、
tが予め設定した所定値であるか否かを判断する判断過程と、
該判断過程によりtが前記所定値でないと判断した場合に、状態更新を繰り返す過程とを含み、
前記位相反転量決定過程は、前記判断過程によりtが前記所定値であると判断した場合に、前記保存過程により保存された前記最良値に対応する位相反転量を実際に使用する位相反転量に決定する過程である請求項1乃至3のいずれかに記載のマルチキャリア通信方法。 - 前記ニューラルネットワークは、ホップフィールドニューラルネットワークである請求項1乃至6のいずれかに記載のマルチキャリア通信方法。
- 前記ニューラルネットワークは、カオスニューラルネットワークである請求項1乃至3、5及び6のいずれかに記載のマルチキャリア通信方法。
- デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、
送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調すべく構成されているマルチキャリア通信装置において、
逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧する前記位相反転量を求めるための目的関数を定義し、位相反転量は、各データシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、各データシンボルの位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作させて、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作手段と、
デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルが出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求め、該助変数を前記ニューロン動作手段手段へ出力する手段と、
前記ニューロン動作手段により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定手段と、
該位相反転量決定手段により決定された位相反転量に、各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段と、
前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルに、前記位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段と
を備えることを特徴とするマルチキャリア通信装置。 - デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルにつき、位相反転量を決定し、決定した位相反転量に基づいて位相を反転させた後、全データシンボルを逆離散フーリエ変換し、変換後の各データを並直列変換して得られた送信信号時系列に対して、D/A変換及び直交変調を含む処理を施し、該処理により得られた信号を所定の周波数帯にアップコンバージョンして送信し、
送信した前記信号をダウンコンバージョンし、直交復調及びA/D変換を含む処理を施して得られた受信信号時系列を直並列変換し、離散フーリエ変換して得られた各データシンボルにつき、前記位相反転量の情報に基づき位相を復元した上で並直列変換し、該変換により得られたデータシンボル時系列をデジタル復調して受信情報を復調すべく構成されているマルチキャリア通信装置において、
送信情報をデジタル変調して得られたデータシンボルを直並列変換してブロック毎に出力する手段と、
逆離散フーリエ変換後の各送信信号の絶対値の最大値に基づく送信信号のピーク電力の抑圧性評価関数に基づいて、前記ピーク電力を抑圧するブロック毎の位相反転量を求めるための目的関数を定義し、前記位相反転量は、ブロック内のデータシンボルを反転させるとき−1、反転させないとき+1をとる2値変数とした上で、前記位相反転量をニューロンの出力に見立てて、前記位相反転量の組合せ最適化問題をニューラルネットワークにより解くために、前記目的関数の位相反転量に対する微分と、前記ニューラルネットワークのエネルギー関数のニューロンの出力に対する微分とが一致するように定義した、ニューロンの内部状態の動作式に従ってニューロンを動作させて、ニューロンの状態更新を所定回数繰り返すニューロン動作手段と、
デジタル変調した送信情報を直並列変換して得られた各データシンボルがブロック毎に出力された場合に、前記データシンボルの実数部及び虚数部に基づき、前記動作式の助変数を求め、求めた助変数を前記ニューロン動作手段へ出力する手段と、
前記ニューロン動作手段により得られた各ニューロンの出力に基づき、前記位相反転量を決定する位相反転量決定手段と、
該位相反転量決定手段により決定された各ブロックの位相反転量に、当該ブロックの各データシンボルを乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段と、 前記離散フーリエ変換して得られた各データシンボルをブロック毎に出力する離散フーリエ変換手段と、
該離散フーリエ変換手段により出力された各ブロックの各データシンボルに、当該ブロックの位相反転量を乗じてデータシンボルの位相を反転させる手段と を備えることを特徴とするマルチキャリア通信装置。 - 送信情報をデジタル変調する前に、前記送信情報の時系列をLQ−qビット毎のブロックに分割し、その先頭のqビットにパイロット信号を挿入する手段と、
前記離散フーリエ変換手段により出力された各ブロックの先頭シンボルに対して仮のデジタル復調を施し、パイロット信号に乗じられた位相反転量情報を復調して出力する位相反転量情報復調手段と、
前記離散フーリエ変換手段により出力された各ブロックの各データシンボルに、前記位相反転量情報復調手段により得られた当該ブロックの位相反転量を乗じて、データシンボルの位相を反転させる手段と
受信情報を復調した後に、パイロット信号を除去する手段と
を備える請求項10記載のマルチキャリア通信装置。
但し、L:ブロックのデータシンボル数、Q:1データシンボル当たりのビット数、q:1以上Q以下の整数とする。
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