JP4073158B2 - 電子ビーム装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、被照射物上での電子ビームの集束性を向上させた電子ビーム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子ビーム装置として、坩堝中に収容された物質に当てることにより物質を蒸発させ、蒸発粒子を基板上に付着等させたり、或いは、加速した電子ビームをターゲットに衝突させることにより、ターゲットに溶接等の加工を行ったりする装置がある。
【0003】
図1は、この様な電子ビーム装置の一例として、電子ビーム蒸発装置の概略を示したもので、図2は図1のA−A線断面図である。
【0004】
図中1A,1Bは、永久磁石2を挟んで平行に配置された磁極板で、前記永久磁石2によりN極とS極に励磁されている。該磁極板間には、蒸発物質3が収容された坩堝4が設けられている。該坩堝の下には、電子銃5が設けられている。該電子銃はフィラメント6,グリッド7及びアノード8から成る。9はフィラメント加熱電源、10は加速電源である。尚、11はグリッド支持板である。12は環状鉄心にX方向走査用偏向コイルとY方向走査用偏向コイルが巻かれた走査用電磁コイル体で、前記電子銃5からの電子ビームの通路上に配置されている。尚、この走査用電磁コイル体は、例えば、磁極1A,1Bの間で坩堝4の近くに取り付けられた非磁性製のホルダー(図示せず)によって支持されている。13は該走査用電磁コイル体に走査用の電流を流すための走査用電源である。尚、図示しなかったが、グリッド7とフィラメント6の間には引き出し電源(図示せず)から正の引き出し電圧が印加されてる様に成っている。
【0005】
この様な装置において、電子銃5のフィラメント6から発生された電子ビームは、グリッド7により引き出され、更に、アノード8によって加速され、磁極1A,1Bが作る磁場により270°前後曲げられ坩堝4内に収容された蒸発物質3に照射される。その際、電子銃5からの電子ビームは走査用電磁コイル体12が作る二次元方向走査用磁場を通過するので、電子ビームは蒸発物質3上を二次元方向に走査することになる。この結果、蒸発物質3は電子ビームにより加熱されて蒸発し、その蒸発粒子が、例えば、坩堝4上方に配置された基板(図示せず)上に付着する。
さて、この様に電子照射により蒸発物質を蒸発させる電子銃のフィラメント(電子放出部)としては、一般に低電圧で大電力のビーム(即ち、ビーム電流の大きいビーム)が得られるように、大きいものが使用されている。例えば、図3に示す様な渦巻き状のものが用いられる。
【0006】
所で、電子照射による蒸発物質の蒸発時、蒸気の一部が電子ビームの衝撃によりイオン化する。通常、蒸発物質は金属なので、これらのイオンは+イオンである。これらの+イオンは図2に示すフィラメント6から坩堝4内の蒸発物質3の間の電子ビームの偏向軌道(実質的に導体となっている)14の中心軸Oに沿って負の電位のフィラメント6に向かう。そして、これらの+イオンは、フィラメント6の中心部分(第3図のKの部分)に当たり、該部分をスパッタしてしまう。その為に、該部分が細くなるので該部分に過電流が流れ、やがて溶断してしまい、フィラメントを新しいものに交換しなければならない。この様な溶断が蒸着操作中に起こると、その蒸着膜は不良品となるばかりではなく、この様な溶断によるフィラメントの交換は経済的にも操作的にも著しく不利である。まして、この様な溶断が短時間で起こると、極めて大きな問題となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、例えば、図4に示す様に、中心部分(前記図3のKに当たる部分)の空いたフィラメント6Aを使用すれば、この様な問題を解決することは出来る。但し、この様な構成のフイラメントでは電子量不足が心配されるので、例えば、図5に示す如く、コイル状フイラメントを環状に形成し、環の中心軸方向に電子を取り出すように成したフィラメント6Bも提案されている(特願平11−358642号)。
【0008】
しかし、図4及び図5に示す何れのフィラメントを使用した場合においても、次の様な問題がある。
【0009】
図6は中心部分の空いたフィラメント6´を使用した電子銃のフィラメント6´からの電子ビームの進む方向を示したもので、図中7´は該フィラメントに対して数10〜数100Vの引き出し電圧が印加されているグリッド、8´はフィラメント6´に対し数KV〜数100KVの加速電圧が印加されているアノードである。この様な電子銃においては、フィラメント6´とグリッド7´の間の等電位面は15に示す様に、電子光学的中心軸Oの周辺部に対応した部分がフィラメント6´側に凸の形状となる。さて、フィラメント6´が加熱されることにより該フィラメント6´から発生した熱電子は、グリット7´によって引き出され、更に、アノード8´によって加速されるわけであるが、この際、フィラメント6´から発生した熱電子は、前記フィラメント6´とグリッド7´の間に形成された等電位面15を横切るように進むので、16に示す様に、一旦電子光学的中心軸O上で交差し、そこから発散していく。従って、坩堝4内に収容された蒸発物質3上を電子ビームで二次元的に走査する場合に、単位断面積当たりの電子密度が著しく低い、いわゆる著しくぼけた電子ビームで走査されてしまい、蒸発物質の蒸発自体に支障を来す。
【0010】
本発明は、この様な問題点を解決する為になされたもので、新規な電子ビーム装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に基づく電子ビーム装置は、電子放出部の一部が空けられたフィラメント,グリッド及びアノードを有する電子銃を備えた電子ビーム装置において、前記電子放出部に空けられた空間部分において、その先端面が前記電子放出部の先端面に比べて前記アノードから離れて置するように配置された電位補正用電極を前記グリッドに取り付けたことを特徴とする。
【0012】
本発明に基づく電子ビーム装置の前記電位補正電極は前記フィラメントの材料とは異なった高融点材料から成ることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の態様の形態を詳細に説明する。
【0014】
図7(a)は本発明の主要部の一例として示した電子銃の主要部の概略図、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。
【0015】
図中20は、中心部が空けられた渦巻き状のフィラメント、21はグリッド、22はアノードで、フイラメント20の空間部20Sの中心、グリッド21の孔21Aの中心、アノード22の孔22Aの中心が、大体、電子光学的中心軸O上に位置するように、フィラメント20,グリッド21及びアノード22が互いに適当な間を開けて配列されている。前記フイラメント20の中心に空けられた空間部20Sの部分には、その先端面がフイラメント20の先端面より僅かに反アノード側に配置された棒状の電位補正用電極23が設けられている。この電位補正用電極23はイオン衝撃等に強い、例えば、炭素の如き高融点の金属から成り、グリッド21に取り付けられている。尚、前記電位補正用電極23は、前記空間部20Sにおけるグリット21とフイラメント20の間の等電位面が電子光学的中心軸Oに対しほぼ垂直になるように、その先端面の位置を調整して配置する。
【0016】
この様な電子銃を図1及び図2に示す電子ビーム蒸発装置の電子銃として使用すると、フィラメント20から発生された電子ビームは、グリッド21により引き出され、更に、アノード22によって加速され、磁極1A,1Bが作る磁場により270°前後曲げられ坩堝4内に収容された蒸発物質3に照射される。その際、電子銃5からの電子ビームは走査用電磁コイル体12が作る二次元方向走査用磁場を通過するので、電子ビームは蒸発物質3上を二次元方向に走査することになる。この結果、蒸発物質3は電子ビームにより加熱されて蒸発し、その蒸発粒子が、例えば、坩堝4上方に配置された基板(図示せず)上に付着する。
【0017】
さて、この様な電子銃においては、フイラメント20の中心に空けられた空間部20Sの部分に、その先端面がフイラメント20の先端面より僅かに反アノード側に配置され、グリッド21と同電位の棒状の電位補正用電極23が設けられているので、フィラメント20とグリッド21の間の等電位面は、図8の24に示す様に、電子ビームの中心軸Oの周辺部に対応した部分がフィラメント6´側に凸の形状とならず、この部分はほぼ中心軸Oに垂直な形状となる。従って、フィラメント20から発生した熱電子は、前記フィラメント21とグリッド21の間に形成された等電位面24を横切るように進むので、25に示す様に、電子ビームは中心軸Oにほぼ平行に進んでいく。その結果、坩堝4内に収容された蒸発物質3上を電子ビームで二次元的に走査する場合に、単位断面積当たりの電子密度が著しく高い電子ビームで走査されることになる。
【0018】
尚、前記例では、電位補正用電極23をグリッド20に取り付け、該電位補正用電極23の電位をグリッド20と同電位になるようにしているが、電位補正用電極23をフィラメント20に取り付け、電位補正用電極23の電位がフィラメント20の電位と同電位に成るようにしても良い。しかし、一般にフィラメントはW(タングステン)製であり、その電子放出面の直径が10mm〜15mm極めて小さいので、その電子放出面の中心部を空けて、そこに、フイラメントと材質の異なる(炭素の如き高融点材料)電位補正用電極を取り付けること自体極めて困難である。又、譬え、溶接等により取り付けることが出来たと仮定しても、フィラメント加熱時(大体、数1000℃前後)に電位補正用電極が取れてしまう恐れがある。
【0019】
その点、グリッド支持板を含めたグリッド全体は大きいので、該グリッドに電位補正電極を取り付けることは容易であり、しかも、フィラメントとグリッドの間の電位差は小さく、グリッドがフィラメントに対して僅かに正電位にあるので、前記正電位に対応した分、電位補正用電極の先端面がフイラメント20の先端面より、反アノード側に位置する様に配置すれば、フイラメント20とグリッド21の間の等電位面が電子ビーム中心軸Oに対してほぼに垂直になる。
【0020】
図9及び図10は、本発明の主要部の他の例として示したものである。
【0021】
図9は、図5に示す様なコイル状フイラメントを環状に形成し、環の中心軸方向に電子を取り出すように成したフィラメン25の空間部25Sに、電位補正用電極26を配置させたもので、フィラメント25とグリッド(図示せず)の間の等電位面が電子光学的中心軸にほぼ垂直になるように、該フィラメントの先端面より少し反アノード側に配置される。
【0022】
図10は、フィラメント27はコイル状に巻かれつつリング形状を成すように形成されているが、1/2程度までリング状に形成したフィラメント27の空間部27Sに、電位補正用電極28を配置させたもので、フィラメント27とグリッド(図示せず)の間の等電位面が電子光学的中心軸にほぼ垂直になるように、該フィラメントの先端面より少し反アノード側に配置される。
【0023】
尚、本発明の電子ビーム装置として電子ビーム蒸発装置を例に上げたが、電子ビーム溶接装置等の加工装置等にも本発明は適用出来ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電子ビーム装置の一例として、電子ビーム蒸発装置の概略を示したものである。
【図2】 図1のA−A線断面図である。
【図3】 従来のフィラメントの一概略例を示したものである。
【図4】 従来のフィラメントの一概略例を示したものである。
【図5】 最近提案されたのフィラメントの一概略例を示したものである。
【図6】 従来の電子銃の動作の説明に使用した図である。
【図7】 本発明の主要部を成す電子銃の一概略例を示したものである。
【図8】 本発明の主要部を成す電子銃の動作の説明に使用した図である。
【図9】 本発明の主要部を成す電子銃のフイラメントの一概略例を示したものである。
【図10】 本発明の主要部を成す電子銃のフィラメント一概略例を示したものである。
【番号の説明】
1A,1B…磁極板
2…永久磁石
3…蒸発物質
4…坩堝
5…電子銃
6,6A,6B,6′,20,25,27…フィラメント
7,7′21…グリッド
8,8′22…アノード
9…フィラメント加熱電源
O…電子光学的中心軸
10…加速電源
11…グリッド支持板
12…走査用電磁コイル体
13…走査用電源
14…偏向軌道
15,24…等電位面
20S,25S,27S…空間部
21A,22A…孔
23,26,28…電位補正用電極
Claims (4)
- 電子放出部の一部が空けられたフィラメント,グリッド及びアノードを有する電子銃を備えた電子ビーム装置において、前記電子放出部に空けられた空間部分において、その先端面が前記電子放出部の先端面に比べて前記アノードから離れて位置するように配置された電位補正用電極を前記グリッドに取り付けた電子ビーム装置。
- 前記電位補正電極は前記フィラメントの材料とは異なった高融点材料から成る請求項1に記載の電子ビーム装置。
- 前記フィラメントは渦巻き状に形成された請求項1に記載の電子ビーム装置。
- 前記フィラメントは、コイル状に巻かれて環状に形成されており、環の中心軸方向に電子を取り出すように成した請求項1に記載の電子ビーム装置。
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- 2000-09-13 JP JP2000277849A patent/JP4073158B2/ja not_active Expired - Lifetime
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