JP4073141B2 - ドラム式洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転するドラムを有するドラム式洗濯機に関し、特に洗濯物の乾燥を実行できるドラム式洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のドラム式洗濯機は図13、図14に示すように構成されている。図13は側面断面図であり、図14は正面図である。ドラム式洗濯機の本体外装部1の内部には、前面に開口部4aを有する水槽4が横設されている。水槽4は懸架装置7により懸架され、弾性的に支持されている。
【0003】
水槽4内にはドラム5が同軸に配設され、ドラム5の軸部5eが軸受31により回転自在に支持されている。ドラム5の軸部5eにはプーリー32が取り付けられ、ベルト33によりモータ34の回転が伝達され、ドラム5が回転駆動されるようになっている。
【0004】
本体外装部1の前面は開閉扉3によって開閉可能になっており、ドラム5内に洗濯物の出し入れができるようになっている。開閉扉3を閉じると、開口部4aの周囲に設けられたゴム等のパッキン10によって開口部4aが密閉される。ドラム5の周面には多数の小孔5aが形成されており、水槽4とドラム5との間を洗濯液が流出入できるようになっている。
【0005】
ドラム5の内面にはバッフル5bが突設され、ドラム5の回転により洗濯物を引っかけて持上げ、洗濯液中に落下させることにより洗浄が行われるようになっている。また、水槽4の周面及び前面には質量の大きなバランスウェイト28が設置され、ドラム5の高速回転時の振動を抑制するようになっている。
【0006】
本体外装部1内の上部には水道管に接続された給水パイプ12が配されている。給水パイプ12の途中に設けた給水弁13を開くと、水槽4の前面に設けられた給水ノズル15から水槽4内に給水されるようになっている。また、水槽4内の洗濯水を排水する排水口4dが水槽4の下部に設けられ、排水ポンプ18の駆動により排水されるようになっている。
【0007】
水槽4の側方には、水槽4の上部と下部とを連結する乾燥用ダクト27が設けられている。乾燥用ダクト27の経路途中にはドラム5内に温風を送出する乾燥ユニット24が設けられ、ドラム5内に送出された温風によって洗濯物が乾燥されるようになっている。
【0008】
上記構成のドラム式洗濯機は、ドラム5内に洗剤と洗濯物を入れて開閉扉3を閉じると、「洗い工程」が実行される。「洗い工程」では、まず、給水ノズル15より給水され、モータ34の駆動によりドラム5が正逆に回転する。洗濯物は水槽4の下部で浸水し、バッフル5bに引っ掛かって上方に運ばれて落下する。この時の衝撃により洗浄が行われる。
【0009】
所定の洗い時間が経過すると、続いて「すすぎ工程」が実行される。「すすぎ工程」では、排水ポンプ18の駆動によって排水口4dから洗濯水が排水される。次に、「洗い工程」と同様に、給水ノズル15より給水され、モータ34の駆動によりドラム5が回転する。これにより、すすぎが行われる。尚、すすぎ工程中に、排水後ドラム5を高速で回転させ、洗剤を遠心力により除去するすすぎ脱水動作が行われる場合もある。
【0010】
所定のすすぎ時間が経過すると、続いて「脱水工程」が実行される。「脱水工程」では、排水ポンプ18の駆動によって排水口4dから洗濯水が排水される。次に、ドラム5が高速で回転し、洗濯物に含まれる洗濯水が遠心力により排出される。
【0011】
所定の脱水時間が経過すると、「乾燥工程」が実行される。「乾燥工程」では、乾燥ユニット24によりドラム5内に温風が送出される。この温風は、洗濯物に含まれる水分を吸収し、水槽4の下方から排出される。そして、乾燥用ダクト27内に設けられた冷却器(不図示)により除湿された後、再度乾燥ユニット24により水槽4内に温風が送出されるようになっている。この動作が繰り返し行われて洗濯物が乾燥する。
【0012】
また、「脱水工程」において遠心力によって洗濯物はドラム5の内壁に張り付いているため、このまま「乾燥工程」を行うと洗濯物にシワが生じたまま乾燥される。従って、ドラム5の内壁に張り付いた洗濯物を剥離させる「剥離工程」が「乾燥工程」の前に行われている。
【0013】
「剥離工程」の動作は、特許第2895948号に開示されている。同特許によると、モータ34の正転と逆転とを繰り返し行うことにより、ドラム5を正逆回転させて、ドラム5の内壁に張り付いた洗濯物を剥離する。これにより、シワを生じることなく洗濯物の乾燥が行われるようになっている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のドラム式洗濯機によると、「剥離工程」において、モータ34は正転、逆転を繰り返す。この時、モータ34とドラム5とは、ベルト33やプーリー32により連結されており、ベルト33の伸びや、モータ34やプーリー32とベルト33との摩擦等が発生する。
【0015】
これにより、モータ34の回転に対してドラム5の回転の立ち上がりや立ち下がりが緩やかになって、正転から逆転に反転しても洗濯物に大きな力が加わらずドラム5から十分に剥離されない場合がある。このため、ドラム5の正転、逆転の回転数を大きくして洗濯物に加わる反転による力を確保する必要がある。
【0016】
その結果、「剥離工程」に時間がかかり、消費電力が大きくなる問題があった。また、モータ34を大きな回転数で正転から急に逆転させると、モータ34を損傷し、騒音が発生する問題もある。
【0017】
本発明は、短時間で洗濯物の剥離を行うとともに、モータの損傷や騒音を防止し、省電力化を図ることのできるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、回転可能に支持されて洗濯物が投入される有底筒状のドラムと、前記ドラムに直結されるとともに前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータを電気的に制動する制動手段とを備え、前記ドラムの回転により洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程を順次実行するドラム式洗濯機において、前記モータにより前記ドラムを所定の回転数で所定時間回転させた後、前記制動手段により洗濯物の量が多いほど制動率を上げるように制動して前記ドラムの内壁から洗濯物を剥離する剥離工程を、前記脱水工程後、前記乾燥工程前に実行したことを特徴としている。
【0019】
この構成によると、ドラムに直結されるモータの駆動によりドラムは回転して洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程を実行し、ドラム内に投入された洗濯物を洗濯、乾燥する。この時、脱水工程後に、ドラムを所定時間回転させた後、洗濯物の量が多いほど制動率を上げるように電気的に制動することにより、高速回転によりドラムの内壁に付着した洗濯物を剥離した後、乾燥工程が実行される。
【0020】
また本発明は、上記構成のドラム式洗濯機において、前記モータは励磁巻線を有する直流ブラシレスモータから成り、整流された電源電圧を前記直流ブラシレスモータの駆動電圧に変換するインバータ回路を備えたことを特徴としている。この構成によると、商用電源の交流電圧が整流後インバータ回路に供給され、インバータ回路により変換されて直流ブラシレスモータに駆動電圧が供給される。
【0021】
また本発明は、上記構成のドラム式洗濯機において、前記制動手段による前記モータの制動前に、前記モータの駆動電力を遮断して前記モータが慣性回転する期間を設けたことを特徴としている。この構成によると、脱水工程後、前記モータの駆動電力が遮断されて所定期間モータが慣性回転し、その後、剥離工程が実行される。
【0024】
また本発明は、上記構成のドラム式洗濯機において、前記脱水工程が終了する前に慣性により回転する前記ドラムの回転数が所定の回転数以下になった際に、前記制動手段によって前記モータを制動したことを特徴としている。この構成によると、脱水工程の終了前に慣性回転するドラムを電気的に制動した後、剥離工程が実行される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。説明の便宜上、従来例の図13、図14と同一の部分については同一の符号を付している。図1は第1実施形態のドラム式洗濯機を示す外観斜視図である。ドラム式洗濯機の外壁を形成する本体外装部1は前面が開閉扉3で開閉できるようになっている。本体外装部1の前面上部には操作キーや表示部を備えた操作パネル11が設けられている。
【0027】
図2にドラム式洗濯機の側面断面図を示すと、本体外装部1内には前面に開口部4aを有する有底筒状の水槽4が横設されている。水槽4内には有底筒状のドラム5が配されている。水槽4にはモータケース55fを介してベアリング6が一体化されている。
【0028】
ドラム5に固定される軸部5eはベアリング6に支持されて、ドラム5が回転自在になっている。軸部5eにはロータ55eが固着され、モータケース55f内にはステータ55dが固定されている。これにより、ドラム5に直結されるモータ55が構成されている。また、モータ55は3相直流ブラシレスモータから成っており、後述する制御部によって駆動電圧が供給されて駆動されるようになっている。
【0029】
ドラム5の周壁全体には小孔5aが設けられている。小孔5aは洗濯時に水槽4とドラム5との間を洗濯水が流出入できるようにしている。ドラム5の内壁面にはバッフル5bが突出して設けられ、ドラム5の回転により洗濯物を引っかけて持上げ、洗濯液中に落下させることにより洗浄が行われるようになっている。
【0030】
ドラム5の前面の開口部5cの外周縁には流体バランサー5dが設けられている。流体バランサー5dは塩水等の流体が封入されており、ドラム5の回転時に該流体が移動して洗濯物及び洗濯液の片寄りによる重心移動を打消すようになっている。流体バランサー5dはドラム5の内周縁に設けてもよい。
【0031】
ドラム5の回転軸心y−yは、水平方向に対して角度θだけドラム5の奥が下がるように傾斜されている。これにより、使用者がドラム式洗濯機の前面側に立って洗濯物を出し入れする際に、ドラム5の奥まで見通しが良くなるようになっている。
【0032】
洗濯物投入口1aと水槽4の開口部4aの周縁にはゴムや軟質樹脂等の弾性体から成るパッキン10が洗濯物を出し入れする通路を形成するように取り付けられている。パッキン10は開閉扉3を閉じたときに内周縁10aが開閉扉3の周縁に密着して通路を閉口する構造となっている。これにより、洗濯動作中の防水が行われるようになっている。また、パッキン10には蛇腹などが設けられ、水槽4の揺動に応じて撓みを生じて追従するようになっている。
【0033】
本体外装部1内の上部には水道管に接続された給水パイプ12が配されている。給水パイプ12の途中に設けた給水弁13を開くと、洗剤ケース14を介してドアパッキン10に取り付けられた給水ノズル15から水槽4内に給水されるようになっている。
【0034】
水槽4の底面より導出された排水ダクト16は、経路途中に糸屑フイルタ17aを内装した接続ケース17及び排水ポンプ18を備えており、水槽4からの洗濯液を本体外装部1の外部に排水する構成となっている。糸屑フイルタ17aは、例えば、樹脂を格子状に形成したり或いは、目の細かい繊維を袋状に形成して構成され、洗濯液中の糸屑等を集積するようになっている。そして、糸屑フイルタ17aは接続ケース17内に着脱自在に装着され、本体外装部1の前面下部から取り外すことができる。
【0035】
接続ケース17の上部にはエアートラップ22から導圧パイプ21を介して水位センサー23が設けられている。水位センサー23は、エアートラップ22内の圧力変化に応じて磁性体をコイル内で移動させる。その結果生じるコイルのインダクタンス変化を発振周波数の変化として検出し、水槽4内の水位を検知するようになっている。
【0036】
ドラム式洗濯機の図2と異なる側面断面を図3に示すと、接続ケース17の出口側には排水ダクト16bから分岐する循環ダクト19が設けられている。循環ダクト19は水槽4の開口部4aに臨むようにパッキン10に接続されており、経路途中に循環ポンプ20を備えている。
【0037】
そして、排水ポンプ18を停止して循環ポンプ20を駆動させると、水槽4、排水ダクト16a、接続ケース17、排水ダクト16b、循環ポンプ20及び循環ダクト19を通って水槽4に至る循環経路が形成される。これにより、水槽4内の洗濯液を循環経路を通して循環させ、該循環経路を通過させる間に洗濯液内の洗剤を充分溶解させるとともに、糸屑フイルター17aで糸屑等を除去する。従って、洗濯物に対する糸屑の再付着を防止することができる。
【0038】
更に異なる側面断面を図4に示すと、水槽4の上方には送風ファン25とヒータ26とから構成された洗濯物を乾燥するための乾燥ユニット24が設けられている。乾燥ユニット24は水槽4の開口部4aに臨む吹出し口4bと下部に設けられた循環口4cとを連結する乾燥用ダクト27の経路途中に配されている。また、乾燥用ダクト27の経路途中には冷却器29が配されている。
【0039】
操作パネル11の裏面に配された制御部2はドラム式洗濯機の制御を行い、その構成は図6に示すようになっている。主制御部41は、ドラム式洗濯機1の操作を行う操作部43、操作部43による入力表示やドラム式洗濯機1の運転状態を表示する表示部44、洗濯作業終了等の警報を報知するブザー45、開閉扉3の開閉状態を検知するドアスイッチ46、水槽4内の水位を検知する水位センサ23、洗濯物の乾燥状態を検知する乾燥センサ48、及び水槽4内の水温を検知する水温センサ49と信号を送受信する。
【0040】
副制御部42は、モータ55、給水弁13、排水ポンプ18及び乾燥ユニット24を後述するドライブ回路60(図7参照)により駆動制御するとともに、ホールセンサ59によってモータ55のロータ55e(図2参照)の位置信号を受信する。そして、主制御部41は、モータ55の回転に必要な制御データの送信信号S1を同期用クロックとともに副制御部42に送信する。副制御部42は、制御データを読み取った後、該クロックに同期して返信信号S2を返信する。
【0041】
副制御部42を図7の回路図を参照して説明する。商用電源51はダイオードブリッジからなる整流回路52によって全波整流されて直流電圧に変換される。該直流電圧は平滑コンデンサ53a、53bで平滑化されて安定直流電源としてインバータ回路54に供給される。インバータ回路54は6個のスイッチング素子(トランジスタ54a〜54f)を3相全波ブリッジ構成にしている。
【0042】
平滑コンデンサ53aの正側と平滑コンデンサ53bの負側との間には、トランジスタ54a,54dが直列の配され、ダイオード56a,56dが直列に配されている。同様に、トランジスタ54b,54e、トランジスタ54c,54f、ダイオード56b,56e、ダイオード56c,56fが夫々直列に接続されて3相交流に変換する。そして、上アーム用のトランジスタ54a、54b、54cと下アーム用のトランジスタ54d、54e、54fとの接続点から、夫々モータ55の励磁巻線55a、55b、55cのU相、V相、W相に接続されている。
【0043】
トランジスタ54a〜54fのベースにはドライブ回路57が接続されており、マイコン58からの駆動信号によりドライブ回路57を介してトランジスタ54a〜54fが駆動される。駆動信号は例えば図8(a)、(b)に示すPWMの信号がトランジスタ54a、54dにそれぞれ送信される。これにより、モータ55のU相に図8(c)に示す駆動電圧が出力される。
【0044】
モータ55のV相及びW相には同様の駆動電圧が夫々120゜、240゜位相が遅れるように出力される。その結果、励磁巻線55aには図8(d)に示す正弦波の電流が発生する。これによりモータ55が回転する。図8(a)〜(d)において、縦軸は振幅を表し、横軸は時間を表している。尚、励磁巻線に流れる電流値を検出する電流検出手段64が設けられ、マイコン58によって監視されるようになっている。
【0045】
駆動信号は、図9に示すような三角波のキャリア信号を用いた比較器により発生させている。比較器はマイコン58の機能として搭載されている。同図において、縦軸は振幅を表し、横軸は時間を表している。周波数fの信号の時刻tにおける位相角θは、θ=2πftで表される。キャリア信号の周期であるキャリア周期をTc、キャリア周期Tc毎のモータ55の位相角の更新量をΔθ(ロータ55eの回転角)とすると、Δθ=2πfTcラジアンとなる。
【0046】
従って、マイコン58はΔθだけ位相を進めた位置に対応する駆動信号をキャリア周期Tc毎に出力する必要がある。駆動信号の1周期(2πラジアン)を16ビット(65536)に分割すると、Δθラジアンは位相更新量α=2πfTc・(65536/2π)=65536fTcカウントになる。
【0047】
例えば、キャリア信号の周期Tcが63.5μsecで、モータ55の回転数を60Hzとすると、位相更新量α=249カウントとなる。キャリア周期Tcは、タイマ及びパルス幅p(図8(a)参照)の分解能で決められる。そして、キャリア周期Tc毎に位相更新量αを加算した累計値Nを求めて(即ち、N=N+α)、現在の位相を検知する。
【0048】
制御部2に設けられる記憶部(不図示)には、正弦波テーブルが予め記憶されている。正弦波テーブルは、2πラジアンを512分割した夫々の位相におけるパルス幅pのデータから成っており、10π/3ラジアン分(854データ)だけ記憶されている。正弦波テーブルを参照することにより、累計値Nに対応する位相(512×N/65536)におけるキャリア周期Tc毎のパルス幅pが得られる。V相及びW相についてはU相に対して夫々120゜、240゜遅れた位相角から正弦波テーブルを参照して対応するパルス幅pを得ることができる。
【0049】
モータ55が加速回転して回転数fが増加する際には、それに応じて位相更新量αを可変する必要がある。このため、ロータ55eの回転位置を検知するホールセンサ59がU相、V相、W相に対応して120゜間隔で3箇所に設けられ、モータ55の所定期間の回転数を検知するためタイマが設けられている。
【0050】
3つのホールセンサ59からはU相、V相、W相夫々の位相角によって図10(a)、(b)、(c)に示す位置信号Hu、Hv、Hwが検出される。横軸は位相角である。位置信号Hu、Hv、Hwの立ち上がり及び立ち下がり83a〜83fを検知することによって位相が60゜間隔の6つの区間D0〜D5を判別することができる。
【0051】
例えば位置信号Hwの立ち上がり83cを検知したときに(位相角120゜の地点)、位置信号Hvの立ち下がり83b(位相角60゜の地点)からの時間をタイマにより検出してタイマをリセットする。そして、累計値Nがその時の回転位置に対応する累計値Nに修正され、記憶されたデータを参照して位相角が0゜に対応するパルス幅がW相に与えられる。U相、V相についてはW相に対して夫々120゜、240゜遅れた位相角からデータを参照して、対応するパルス幅を得ることができる。
【0052】
そして、立ち下がり83bから立ち上がり83cまで(区間D1)の時間から回転数fを得て位相更新量αを求める。次に、キャリア周期Tc毎に位相更新量αを累計値Nに加算して、累計値Nからキャリア周期Tc毎の回転位置を検知する。その回転位置に応じた各パルス幅を比較器により求めてマイコン58から駆動信号を出力し、ロータ55eを回転させるようになっている。
【0053】
このようにすることで、加速、減速の場合や、洗濯物のアンバランスによって流体バランサ5dが振動を解消できずに回転速度が一定しない場合等においても位相角が60゜間隔で累計値Nを修正して、回転位置に対応する駆動信号を正確に得ることができるようになっている。
【0054】
また、起動時には累計値N及び位相更新量αが未定であるが、まず、ホールセンサ59により区間D0〜D5のいづれの状態かを検知する。例えば区間D1であれば、上記累計値Nを平均的にU相の位相角を90゜(60゜と120゜の間)に対応する値にし、位相更新量αに実験的に求めた値を代入して駆動信号を出力する。そして、位置信号Hwの立ち上がり83cを検知した時に、累計値Nを正確な値に補正することによって正常に起動可能となる。
【0055】
上記構成のドラム式洗濯機は制御部2によって図5に示す運転チャートが実行され、洗濯動作が行われるようになっている。洗濯動作を同図を参照して以下に説明する。洗濯物投入口1aより洗濯物を投入して開閉扉3を閉じると、開閉扉3の周縁にパッキン10の内周縁10aが密着して水槽4が封止される。そして、洗剤ケース14に洗剤を入れ、操作パネル11(操作部43)を操作すると制御部2からの指令により「洗い工程」、「すすぎ工程」、「脱水工程」、「乾燥工程」から成る洗濯動作が開始される。
【0056】
まず、「洗い工程」の給水動作では、開閉扉3がロックされるとともに給水弁13が開成する。給水弁13の開成に基づいて水道水は途中で洗剤ケース14を経由して給水ノズル15から洗剤とともに水槽4とドラム5内に流れ込む。そして、水槽4内の水位が所定水位に達すると、水位センサー23が検知して給水弁13が閉じられ、駆動機構9を駆動してドラム5を所定の洗いチャートにより回転制御して所定時間だけ洗い動作が行われる。
【0057】
ドラム5の回転は、洗い、すすぎ、脱水及び乾燥工程、或いは洗濯物の種類に応じた回転速度、更には反転時間や反転周期等を変えた回転チャートが設定されており、使用者による選択或いは自動的に選択されるようにプログラムされている。
【0058】
そして、「洗い工程」が終了すると、すすぎ脱水動作と攪拌すすぎ動作を交互に複数回繰返して成る「すすぎ工程」に移行する。「すすぎ工程」では、まず、排水ポンプ18が作動して、洗濯液を排水ダクト16、接続ケース17を介して本体外装部1の外部に排水する排水動作が行われる。
【0059】
排水動作が終了すると、ドラム5は第1の脱水チャートで回転して、すすぎ脱水動作が行われる。洗濯物の洗濯液は脱水回転による遠心力でドラム5の周壁に設けた小孔5aを通じて水槽4の内壁へ吐出される。該内壁を伝って水槽4内の下部に流下した洗濯液は排水ダクト16a、16bを通って外部に排水される。
【0060】
このすすぎ脱水動作中に、給水弁13を開いて給水ノズル15から水槽4内に水道水を噴射してもよい。このようにすると、水道水は遠心力により洗濯物を透過して、洗濯物に残った洗剤を効率良く除去することができる。第1の脱水チャートは、ドラム回転を途中で休止したり、回転速度を変えたりすることにより、洗剤を多く含んだ洗濯液の脱水に適したチャートになっている。
【0061】
すすぎ脱水動作が終了すると、給水動作が行われ、排水ポンプ18を停止して給水弁13を再度開く。給水弁13の開成に伴って水槽4内の水位が所定水位になると給水弁13が閉じられ、駆動機構9の駆動によりドラム5がすすぎチャートで回転し、攪拌すすぎ動作が実行される。
【0062】
この攪拌すすぎ動作中に、柔軟仕上剤収納箱(図示せず)及びこれに連通するすすぎ給水経路を別途設け、このすすぎ給水経路から柔軟仕上剤とともに給水するようにしてもよい。また、洗い動作あるいは攪拌すすぎ動作中に循環ポンプ20を駆動して水槽4内の洗濯液を循環させてもよい。
【0063】
以上のすすぎ脱水動作と攪拌すすぎ動作とを数回繰返して「すすぎ工程」が終了すると、プログラムが「脱水工程」に切り替わる。「脱水工程」ではまず、給水弁13を閉じるとともに排水ポンプ18を作動させて洗濯液を外部に排水する排水動作が行われる。
【0064】
そして、ドラム5を第2の脱水チャートで回転させて仕上げ脱水動作が行われる。仕上げ脱水動作では、洗濯液を脱水回転による遠心力でドラム5の周壁に設けた小孔5aを通じて水槽4の内壁へ吐出させる。その後、洗濯液が水槽4の内壁を下部に流下し、排水ダクト16より外部に排水される。
【0065】
「脱水工程」が終了すると、洗濯物を乾燥させる「乾燥工程」が行われるが、「乾燥工程」に先だってドラム5の内壁に張り付いた洗濯物を剥離するために、短時間の「剥離工程」(図5では不図示)が行われる。「剥離工程」では、まず、ドラム5を所定の回転数で短時間回転させる。この時間は、例えば400msec或いは、ドラム5の回転角度にして6゜程度あればよい。
【0066】
そして、ドライブ回路57によってモータ55への電力供給を遮断し、約0.1secの慣性回転期間の経過後、モータ55に電気的に急制動をかける。モータ55の駆動時には、上アーム用のトランジスタ54a〜54c及び下アーム用のトランジスタ54d〜54fを順次スイッチングしているので、そのスイッチングノイズがモータ55からホールセンサ59に伝わっている。モータ55の駆動回転状態から急制動までに慣性回転期間を設けることにより、このノイズを除去できる。そして、正確にホールセンサ59によって位置を検出した後、制動状態に移行することにより、制御による異音を抑制することができる。
【0067】
モータ55の急制動は以下の方法により行う。モータ55への電力供給が遮断されるとドラム5は慣性により回転し、励磁巻線55a、55b、55c間に図11に示すように起電力Wu、Wv、Wwが生じる。この時に下アーム用のトランジスタ54d〜54f(図7参照)をONすると、モータ55は短絡制動される。
【0068】
即ち、各励磁巻線55a、55b、55cが短絡され、励磁巻線55a、55b、55cの抵抗により電力が消費される。これにより、モータ55の運動エネルギーが消費されるためモータ55は制動されて減速される。トランジスタ54d〜54fをOFFにするとモータ55は制動されないため、トランジスタ54d〜54fをONにする時間比率(以下「制動率」という。)を可変することによって、制動する能力(以下「制動力」という)を可変することができる。
【0069】
モータ55の電気的な制動は回生制動により行ってもよい。即ち、励磁巻線55a、55b、55c間に生ずる起電力Wu、Wv、Wwによって、起電力Wu、Wv、Wwと略180゜位相の遅れた正弦波電圧をインバータ制御回路54からモータ55に供給する。これにより、モータ55により発生する電圧が電源へ回生し、モータ55を制動することが可能となる。
【0070】
更に、直流制動や発電制動等により電気的に制動を行っても良い。直流制動の場合は、例えばU相の上アームのトランジスタ54aをONし、V相、W相の下アーム用のトランジスタ54e、54fをONすることにより、電源からの電力によりモータ55に制動をかけることができる。
【0071】
また、ドラム5内の洗濯物の量が定格容量の60%以上の大容量の場合は、制動に大きなトルクを要するので、図12に示すように、制動率を80%にして制動力を高くする。そして、慣性力が大きいため、モータ55の回転数が例えば100rpmの低い回転数の時に急制動をかけても洗濯物に剥離のための力を加えることができる。従って、モータ55の駆動時間を短縮し、短時間で制動可能となる。
【0072】
洗濯物の量が定格容量の30〜50%の中容量や30%以下の小容量の場合は、制動に大きなトルクを要しないので、図12に示すように、洗濯物の量に応じて制動率をそれぞれ50%、20%にする。制動率の低下によって急制動時の振動を抑制できる。そして、モータ55の回転数が例えばそれぞれ150rpm、200rpmの高い回転数の時に急制動を行うことで洗濯物に剥離のための力を加えることができる。
【0073】
尚、ドラム5内の洗濯物の量は、モータ55の立ち上がりの回転数の推移から検出することができる。モータ55を起動すると、駆動電圧(図8(c)参照)のデューティー比及びパルス幅を回転位置に応じて可変して第1の回転数まで駆動する。モータ55の回転数が第1の回転数に到達した後、駆動電圧のデューティー比を固定し、パルス幅p(変調率)を可変して回転数を所定の第2の回転数まで上昇させる。
【0074】
この時、駆動電圧のデューティー比を固定しているので、モータ55の出力が一定になる。このため、変調率を可変して回転数を上昇させると、ドラム5の慣性モーメントが大きい場合は緩やかに加速し、ドラム5の慣性モーメントが小さい場合は急峻に加速する。従って、ドラム5が所定の第1の回転数から第2の回転数に到達するまで時間によって洗濯物の量を検出することができる。
【0075】
以上の「剥離工程」によってドラム5の内壁に付着した洗濯物が剥離される。モータ55はドラム5に直結されているので、モータ55の回転、制動に対してドラム5が追随し、短時間で洗濯物を剥離させることが可能となる。また、ドラム5の回転及び急制動は、正転、急制動、逆転、急制動のように、複数回繰り返して行っても良い。
【0076】
また、「脱水工程」終了直前のドラム5の慣性回転時において、ドラム5の回転数が例えば200rpm以下まで減速した時に急制動を行って、その後「剥離工程」を実行してもよい。このようにすると、洗濯時間を増加させることなく洗濯物の剥離の効果を向上させることが可能となる。
【0077】
この時に、前述したように洗濯物の容量に応じて制動率や制動開始時期を可変することにより、容量が大きい場合は制動時間を短縮し、容量が小さい場合は制動時の振動を抑制することができる。
【0078】
「剥離工程」が終了すると、ドラム5を乾燥チャートで回転するとともに送風ファン25及びヒータ26を駆動して「乾燥工程」を実行する。「乾燥工程」では、送風ファン25の駆動によって、ドラム5内の洗濯物の水分を吸収した空気がドラム5の小孔5a、水槽4の循環口4c、乾燥用ダクト27、送風ファン25、ヒータ26を通り、吹出し口4bよりドラム5内へ循環する。
【0079】
水分を含む空気は、乾燥用ダクト27を通過中に該乾燥用ダクト27に設けた冷却器29で冷却されることにより降温される。その結果、乾燥用ダクト27内の空気は水分の結露により除湿され、湿度の低い空気となってヒータ26に至る。
【0080】
ヒータ26で加熱された空気は温風となって吹出し口4bより水槽4内に吹き込まれ、再び洗濯物と接触して水分を吸収する。再度循環口4aから乾燥用ダクト27内に吸引されて同様に冷却器29で冷却され除湿される。この動作を繰り返すことにより洗濯物の乾燥が行われる。
【0081】
そして、ドラム5内の乾燥度を乾燥センサー48で検知し、所定値になると「乾燥工程」を終了する。この「乾燥工程」において除湿により凝縮された水分は、乾燥用ダクト27内を下降して循環口4cから排水ダクト16を介して外部に排水される。
【0082】
以上により洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程が連続で実行され、洗濯物の洗濯及び乾燥が行われる。また、操作パネル11からの設定により洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を単独で実行することも可能である。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態によると、直流ブラシレスモータから成るモータ55をドラム5に直結してドラム5を直接駆動することによって、従来のようにベルトの伸びや、プーリやモータとベルトとの摩擦等を排除することができる。
【0084】
これにより、モータ55の回転、制動に対してドラム55が的確に追随し、短時間の回転と急制動によってドラム5の内壁に付着する洗濯物に力を加えることが可能となる。従って、小さい回転数でも短時間で洗濯物を剥離させることができ、「剥離工程」の時間短縮が可能となり、モータ55の損傷や騒音を防止することができる。また、電気的な制動を短絡制動または回生制動により行うことで、制動中にモータ55に電力が供給されず消費電力を低減することができる。
【0085】
【発明の効果】
本発明によると、モータをドラムに直結してドラムを直接駆動することによって、従来のようにベルトの伸びや、プーリやモータとベルトとの摩擦等を排除することができる。これにより、モータの回転、制動に対してドラムが的確に追随し、短時間の回転と急制動によってドラムの内壁に付着する洗濯物に力を加えることが可能となる。従って、小さい回転数でも短時間で洗濯物を剥離してシワを発生させずに乾燥できる。そして、「剥離工程」が時間短縮され、洗濯時間の時間短縮が可能となる。また、モータの損傷や騒音を防止することができる。また、脱水工程終了前や制動工程時において、ドラム内の洗濯物の容量が多いほど制動率を上げるように制御するので、容量が大きい場合は制動時間を短縮し、容量が小さい場合は制動時間を長くすることなく制動時の振動を抑制することができる。
【0086】
また本発明によると、インバータ回路を備えるため直流ブラシレスモータを容易に電気的に制動可能となり、駆動電力が遮断された状態で慣性回転するモータが発生させる起電力によって、短絡制動または回生制動を行うことで、制動中にモータに電力が供給されず消費電力を低減することができる。
【0087】
また、本発明によると、モータの制動前に、モータの駆動電力を遮断して慣性回転する期間を設けることにより、モータから位置を検出する検出部に伝わるスイッチングノイズを除去できる。そして、正確に位置を検出した後、制動状態に移行することにより、制御による異音を抑制することができる。
【0088】
また、本発明によると、脱水工程終了直前のドラムの慣性回転時において急制動を行ってその後剥離工程を実行することにより、洗濯時間を増加させることなく洗濯物の剥離の効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機を示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機を示す側面断面図である。
【図3】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の他の切断面の側面断面図である。
【図4】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の更に他の切断面の側面断面図である。
【図5】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の洗濯動作を示すチャート図である。
【図6】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の制御部を示す構成図である。
【図7】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の副制御部を示すの回路図である。
【図8】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機のモータの駆動における信号波形を示す図である。
【図9】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の比較器の信号波形を示す図である。
【図10】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機のホールセンサによる位置信号を示す図である。
【図11】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の直流ブラシレスモータの起電力を示す図である。
【図12】 本発明の実施形態のドラム式洗濯機の電気制動方法を示す図である。
【図13】 従来のドラム式洗濯機の側面断面図である。
【図14】 従来のドラム式洗濯機の正面図である。
【符号の説明】
1 本体外装部
2 制御部
3 開閉扉
4 水槽
5 ドラム
9 駆動機構
10 パッキン
12 給水パイプ
13 給水弁
16 排水ダクト
17 接続ケース
18 排水ポンプ
20 循環ポンプ
23 水位センサー
24 乾燥ユニット
25 送風ファン
26 ヒータ
27 乾燥用ダクト
28 ウエイト
41 主制御部
42 副制御部
52 整流回路
54 インバータ回路
55 モータ
59 ホールセンサ
Claims (4)
- 回転可能に支持されて洗濯物が投入される有底筒状のドラムと、前記ドラムに直結されるとともに前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータを電気的に制動する制動手段とを備え、前記ドラムの回転により洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程を順次実行するドラム式洗濯機において、
前記モータにより前記ドラムを所定の回転数で所定時間回転させた後、前記制動手段により洗濯物の量が多いほど制動率を上げるように制動して前記ドラムの内壁から洗濯物を剥離する剥離工程を、前記脱水工程後、前記乾燥工程前に実行したことを特徴とするドラム式洗濯機。 - 前記モータは励磁巻線を有する直流ブラシレスモータから成り、整流された電源電圧を前記直流ブラシレスモータの駆動電圧に変換するインバータ回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
- 前記制動手段による前記モータの制動前に、前記モータの駆動電力を遮断して前記モータが慣性回転する期間を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドラム式洗濯機。
- 前記脱水工程が終了する前に慣性により回転する前記ドラムの回転数が所定の回転数以下になった際に、前記制動手段によって前記モータを制動したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
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