JP4071361B2 - 電気式床暖房フロアの施工方法及び電気式床暖房フロア並びに床材 - Google Patents

電気式床暖房フロアの施工方法及び電気式床暖房フロア並びに床材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、床材施工である大工工事とコードヒーターの配設及び結線工事である電気工事とを分離して行なうことを可能とする電気式床暖房フロアの施工方法及び該施工方法により構築される電気式床暖房フロア、並びに、そこに用いられる床材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気式床暖房フロアの施工方法として、合板のような木質材の基材の表面に床表面材を貼り、基材に裏面側からコード収納用の凹溝を穿設し、凹溝にコードヒーターを挿通し、基材の裏面にクッション材を貼着してなる防音床暖房フロア材を、コンクリートスラブやフラットな下地面などの床下地に多数枚直貼りして施工するものが提案されている(特開平8−165790号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の構成の床材を用いることにより、直貼りによる防音性の高い電気式床暖房フロアが容易に施工できる。しかし、通常、この種の床材は、木質系基材の裏面にコードヒーターや接続コード及びその棒端子やコネクターなどの接続具を一体に埋め込んだ単位床材の形で工場において製造され、それが多数枚施工現場に持ち込まれて、床材の敷設作業と各単位床材のコードヒーター同志の結線作業とが行なわれ、最後に、通電テストが行われる。現場作業において、床材の敷設は大工の仕事であり、コードヒーターの電気的接続(結線)に係る諸作業は電気工事店側の作業であることから、作業効率を落とさないために、双方の作業者を同時に現場に配置することが必要とされている。
【0004】
また、各単位床材内に接続端子とコネクターなどの結線部を設けているので、その部分はコードヒーターが埋設されている部分と比較して低温となりがちであり、床暖房フロア内に温度むらが発生する。さらに、通電テストの段階で、断線、結線ミスなどが発見された場合、その箇所の単位床材を交換する必要があり、作業量からもまた床材の構造上からも、高い施工コストを必要とする。
【0005】
さらに、単位床材内でのコードヒーターの経路を長くするために、通常、幅広の床材が用いられ、そこに縦方向及び横方向の多数の凹溝が加工されるが、この凹溝加工は必ずしも容易でない。また、工場において、複雑な経路に加工された凹溝の中に、コードヒーターや接続コード及び接続端子やコネクターを埋め込みかつそこに安定的に固定させるには、長くかつ複雑な作業を必要とする。
【0006】
本発明の目的は、熱源としてコードヒーターを用いる電気式床暖房フロア及びその施工方法が持つ上記のような不都合を解消することにあり、より具体的には、大工側の作業である床材の配置作業と、電気工事店側の作業であるコードヒーターの配設、結線作業とを別個の工程として施工することを可能とし、それにより、現場施工の自由度を高めるとともに、床暖房フロアの有効暖房域での結線箇所をなくして温度むらの解消し、かつ、断線や結線ミスなどのトラブルを確実に防止することができ、それにより、施工コストを大きく低減することのできる電気式床暖房フロアの施工方法、及びそのための床材を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明による電気式床暖房フロアの施工方法は、基本的に、コードヒーターを収容できる凹溝を裏面に持つ床材を床下地上に配置する床材施工工程の後に、該床材に形成した凹溝を通して熱源であるコードヒーターを配設し連続的に結線していく電気施工工程を行なうことを特徴とする。
より具体的態様において、本発明による電気式床暖房フロアの施工方法は、コードヒーターの配設回路の形状に対応した凹溝を裏面に形成した複数の床材を床下地上に配置する工程、該配置した複数の床材の一部を取り外す工程、該取り外した床材に隣接して配置されている床材に形成された凹溝を通してコードヒーターを連続的に配設しかつ結線する工程、コードヒーターの配設(結線)終了後に前記取り外した床材を元の位置に配置する工程、とを有し、前記取り外される床材は、コードヒーター配設回路を形成するに際して、該コードヒーターを折曲させる必要のある場所又はコードヒーターを接続する必要のある場所に配置される床材とされる。
【0008】
すなわち、本発明による電気式床暖房フロアの施工方法においては、床下地上に配設すべきコードヒーターの配設パターンに応じた形状に凹溝が切られた複数の床材が工場で製造され、該床材はそのままコードヒーターなどを取り付けることなしで施工現場に搬入される。施工現場では、大工側の作業として、該複数の床材の中、直線状の凹溝が形成されている床材を各床材の凹溝が直線状に整列するようにして多数段にわたり組み付け、接着剤等を用いて床下地上に定着配置する。次に、裏面に曲線(例えば、U字状)的な凹溝が切られている床材を、その凹溝端部がすでに固定配置した床材の凹溝の端部と連続するようにして配置することにより、大工側の作業は終了する。すべての床材を床下地上に配置することにより、配置された床材の裏面にはコードヒーターのための連続した配設路が形成される。
【0009】
次の作業として、電気工事店側の作業員は、先に取り外し可能に配置した床材を取り外し、隣接した床材に形成された凹溝を通してコードヒーターを一方端から他方端まで、一回又は必要回数連続して挿通する。その後、該床材が取り外された部分を利用して、すべてのコードヒーターが電気的に連続した状態となるように必要に応じて適宜の電気コードやコネクターなどを用いて結線し、所要の通電回路を形成する。最後に、先に取り外しておいた床材をもとの位置に再配置して床暖房フロアの施工は終了する。
【0010】
その際に、好ましくは、先に取り外した床材の裏面に形成される凹溝の軌跡と略同じ軌跡が描かれた台紙を用い、該取り外した床材の位置に当該台紙を置く。そして、床材の端部から延出しているコードヒーターの折曲部あるいは接続部の形状を、該台紙に描かれた軌跡に沿うように姿勢を合わせながら、折曲あるいは接続を行なう。上記作業の後に、先に取り外しておいた床材を所定の位置に再度配置し、螺子止め等の手段により床下地に定着する。コードヒーターの軌跡は前記の台紙を用いることにより、裏面に形成された凹溝の軌跡とほぼ一致した軌跡となっており、ヒーター回路形成後の床材の取り付けは容易に行なうことができる。
【0011】
上記の説明で分かるように、本発明の電気式床暖房フロアの施工方法によれば、床材を配置する大工工事とヒーター結線回路を形成する電気工事とを完全に独立した工程として行なうことが可能となる。そのために、作業効率は向上し施工コストは低減する。また、床材は、直線状の凹溝を持つものと曲線状の凹溝を持つものとに分けることができ、かつ、曲線状の凹溝を持つものは必要とされる床材の総個数の一部であることから、床材全体としての凹溝加工作業は低減し、製造コストは低減する。
【0012】
さらに、複数枚の床材を連続してコードヒーターが通過するようにされるので、従来のように各単位床材ごとの結線部は不要となり、床暖房フロア全体を温度むらなく均一に昇温させることができる。コードヒーター同志の結線は、床面の側方位置で行えばよく、有効暖房面積を狭めることもない。
なお、上記のコードヒーター配設路は、床面全体で1つの回路系としてもよく、床面積が広い場合には、複数回路系としてもよい。さらに、コードヒーターの配設は施工すべき床面の全面に行なってもよく、部分的に行なってもよい。また、従来の場合のように、必要に応じて、周囲に通常の床材をボーダーパネルとして配置するようにしてもよい。
【0013】
好ましい態様において、一部又は全部の床材として、裏面に遮音機能を有する層が積層されている床材を用いる。さらに好ましくは、該遮音機能を有する層には、床材の裏面に形成した凹溝に沿って切り込みが形成されるか、又は、凹溝に沿って切り欠かれたものを用いる。このような床材を用いる場合には、施工された電気式床暖房フロアは、そのままで十分な遮音機能を有する。そのために、床材の表面にあらためて遮音層を形成することは不要となる。裏面に遮音機能を有しない床材を用いる場合には、予め該床材が配置される床下地面に遮音機能を有する層を形成しておくとよい。
【0014】
床材として裏面に遮音機能を有する層を積層したものを用いる場合には、例えば床材の床下地面への定着に接着剤を用いる場合でも、用いた接着剤が裏面に形成した凹溝内に侵入することはなく、凹溝内へのコードヒーターの挿通は障害なく行われる。また、床下地上に釘等の異物が残っている場合でも、該遮音機能を有する層により凹溝内に入り込むのを阻止することができ、コードヒーターが損傷を受けるのも防止できる。
【0015】
他の好ましい態様では、床材として、前記遮音機能を有する層に代えて、少なくとも裏面に形成した凹溝部分を被覆する、ポリエチレンラミネート紙、ポリオレフィン系シートのラミネート紙、あるいは、オレフィン系樹脂シートからなる裏面シートを持つ床材が用いられる。その際に、該凹溝部分に沿って細い第2の溝をさらに形成するようにしてもよい。この床材の場合も、裏面に形成した凹溝部分は裏面シートで被覆されているので、床下地面との接着に用いた接着剤が凹溝内に侵入することはなく、凹溝内へのコードヒーターの挿通は障害なく行われる。また、該裏面シートにより異物が凹溝内に入り込むのも阻止できる。さらに、第2の溝をさらに形成することにより、例えば不均一な厚みに接着剤が床下地面に塗布されたような場合に、その盛り上がり部分(余剰な接着剤)を前記第2の溝内に逃がすことができ、接着が安定する。
【0016】
好ましくは、床材はその基材の裏面に所定の深さの切り込みが形成される。それにより、床材の可撓性が増し、床下地面の不陸に容易に対応して密着性が向上する。特に、床材が端末部分に配置する床材の場合には床面への取り付け、取り外しが容易となる。
好ましくは、前記取り外される床材として、周囲の1ケ所又は数カ所に取り外し用のテープを貼着したものを用い、大工側の作業としての該床材の配置作業時に、該取り外し用のテープの端部を表面から露出した状態としておく。そうすることにより、電気工事店側の作業員は該床材を容易に取り外すことができる。コードヒーターの接続工事終了後に、該取り外し用のテープを除去した状態で該床材を元の位置に再配置する。
【0017】
本発明において、床材に形成される凹溝の長手方向の形状は、床下地上に該床材を配置した後に凹溝の一方端から他方端までコードヒーターを挿通することができる形状であればよく、好ましくは直線状の凹溝であるがそれに限られず、例えば床材の長手方向に大きな曲率で湾曲するような形状であってもよい。従って、本発明において「主にコードヒーターの直線部分」あるいは「主に直線状の凹溝」等というような場合における「主に」の語は、真に直線状のみならず、そのような大きな曲率で湾曲するような形状をも含むものとして用いられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による電気式床暖房フロアの施工方法、電気式床暖房フロア、及び、用いる床材の一実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明による電気式床暖房フロアの施工方法により施工された電気式床暖房フロアを上方から見た状態を示しており、この例では、施工床面の4周に沿った部分を除いて配置される遮音シート(すなわち、遮音機能を有する層)を持つ床材A、Aa(斜線部分)、図でその右方側辺に沿って配置される第1の端末用床材Ba、その左方側辺に沿って配置される第2の端末用床材Bb、及び、その上下の側辺に沿って配置されるやはり遮音シートを持つボーダー床材Cとが、コンクリートスラブ上に直接、又は、床下地合板上に配置されている。好ましくは、従来工法におけると同様に、床下地合板の下面には合成樹脂発泡材等の断熱材が施工される。後記するように、この状態は本発明による施工方法における床材施工工程の終了状態でもある。
【0019】
図2、図3は、前記遮音シートを持つ床材Aの一つの実施例を示している。図2aはその平面図、図2bは背面図であり、図3はその拡大して示す短辺に沿った断面図である。この例において、遮音シートを持つ床材Aは、厚さ2〜3mm程度の適宜の化粧フロア材1aと厚さ12mm程度の裏面側合板1bとの間に均熱板として機能する厚さ50μm程度のアルミ箔3を配置した3層構造であり、例えば同時熱圧成形等の手段により一体成形される。裏面側合板1bに代えてMDF基材等の他の木質材料を用いてもよい。図示しないが、アルミ箔3には、均熱作用を低下させない程度の開孔率で多数の小孔を形成し、各層の接着性を向上させようにしてもよい。図示のように、この例では、裏面側合板1bの周囲には、通常の床材の場合と同様に雄実5a、雌実5bが形成される。アルミ箔3は省略してもよい。
【0020】
裏面側合板1bの裏面には、後記するコードヒーターPを収容できる大きさの凹溝2が長辺方向に平行に複数本(この例では4本)形成されており、該凹溝2に沿って細い第2の溝2a、2aがさらに形成されている。さらに、短手方向に走る表面には達しない多数の切り込み2cが形成されており、裏面側合板1bの可撓性を向上させている。そして、前記凹溝2を覆うようにして、裏面側合板1bの裏面の全面には、例えば厚さ2〜5mm程度の不織布等からなる遮音シート4が例えば水溶性接着剤により貼着されている。好ましくは、図示のように、化粧フロア材1aの表面には突板等の適宜の表面層が形成され、かつ、疑似溝1cが設けられる。なお、遮音シート4は、従来の床材の裏面に貼着される遮音シート材料を任意に用いることができ、不織布の他に、軟質ゴムシートや軟質プラスチックシート、又は、これらの発泡シートあるいは凹凸を有するエンボスシート等が有効に利用できる。なお、この遮音シート4は厚さが2〜5mm程度がよく、2mmより薄いと所望の遮音機能が奏されず、5mmを越えると歩行感の低下を招く。前記第2の溝2a、2aは、遮音シート4を貼着する際に用いる接着剤が凹溝2内に入り込むのを阻止する機能を持っている。第2の溝2a、2aは省略してもよい。
【0021】
図4は、前記第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbを説明するものであり、この例では、両者が一体に形成された端末用床材Bとして示されている。後記するように、この端末用床材Bは施工現場において、図4cに示すように、例えば線10の位置により2分割され、図4cにおいて右側の第1の端末用床材Baと左側の第2の端末用床材Bbとに分離される。この例において、端末用床材Bは、前記した遮音シートを持つ床材Aと同じ素材、すなわち、化粧フロア材1aとアルミ箔3と裏面側合板1bとからなる3層構造をなす素材から構成される。しかし、この例では、裏面に遮音シートは設けられない。
【0022】
図示のように、裏面側合板1bの中央部分には長手方向に直交する多数の切り込み6が形成され、さらに、右辺及び左辺の近傍には、遮音シートを持つ床材Aに形成した凹溝2とほぼ同じ大きさの凹条71〜74及び81〜84が、その短辺側の側面に端部を開放してかつ4本の凹溝2と等しい間隔で形成される。そして、右辺側においては凹条71と72及び凹条73と74とは互いに連通してU字状の凹溝7a、7bを構成し、左辺側においては凹条82と83とが互いに連通してU字状の凹溝8aを構成する。さらに、上方及び下方の凹条81と84は、前記U字状の凹溝8aのU字状折曲部よりも幾分内方において長手方向に直交して形成された第3の凹溝9にまで達していると共に、途中において長手方向の側面側に向かって分岐し、全体として略ト字状の凹溝8b、8cを形成している。さらに、裏面側合板1bの4側面には、遮音シートを持つ床材Aの4周に形成した雄実5a、雌実5bに衝接することなく床材Aと連続的に接合できるように、内方への切欠き部11が形成されている。また、その短辺側の裏面には、それぞれ2本の取り外し用のテープ12が図4cによく示すように化粧フロア材1aを越えて延出する長さで貼着されている。
【0023】
図5は、前記ボーダー床材Cを示している。ボーダー床材Cは従来のフローリング床に用いられる木質系床材と同じものであってよく、この例では、床材Aと同様に、化粧フロア材1aと裏面側合板1bとを有し、裏面側合板1bの周囲には雄実2aと雌実2bが形成されると共に、裏面側合板1bの裏面全体には、床材Aと同じ遮音シート4が貼着されている。
本発明による電気式床暖房フロアの施工方法においては、施工すべき床面に必要とされる数の前記床材A、B、Cが工場で製造されて施工現場に搬入され、最初に、それらが床面上に配置される。第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbとを当初から別のものとして工場で製造するようにしてもよい。
【0024】
それらの床材を用いて図1に示す形状の床暖房フロアを施工する場合を以下に説明する。最初に、各床材A、B、Cが図6a〜cに示す手順で床面(床下地上)に配置される。すなわち、先ず、ボーダー床材Cが床面50の上辺51に沿って3枚、1列に配置される(図6a)。配置に際しては、従来のフローリング床の場合と同様に、接着剤を用いてあるいは必要に応じて雌実部分に釘打ち等を行って床面に定着させる。床材の配置に先立って、従来の床暖房フロア施工の場合と同様に、床面(床下地)上に適宜の断熱処理、均熱処理を施すようにしてもよい。
【0025】
次に、図4に示す端末用床材Bを床面の寸法に合わせて2分割し、第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbとに分離する。分離した第1の端末用床材Baを床面の右側辺に接して、かつ、裏面のU字状の凹溝7a、7bの開放端側が内側方向となるようにして配置する(図6b)。この際、第1の端末用床材Baは床面上に置くだけとして床下地に対して固定しなくてもよいが、作業の安定性を考慮して、接着剤あるいは仮固定釘等により仮固定してもよい。また、前記床材A及び床材Bの裏面に貼着した遮音シート4と同じものを予め床下地上に配置しておく。いずれの場合であっても、裏面に貼着した取り外し用のテープ12の先端が表面側に現れるようにしておく。
【0026】
なお、裏面側合板1bの中央部分には多数の切り込み6が形成されていることから、分離後の各端末用床材は、床面への配置時に側辺側となる部分が比較的曲がりやすくなっている。そのために、壁面に幅木を取り付けているような場合であっても、床面への取り付け、取り外しが容易となる。
【0027】
次に、配置した第1の端末用床材Baに接して遮音シートを持つ床材Aを3枚配置する。その際、図1及び図6cに示すように、床面の幅方向の長さに応じて、単位長さの床材Aよりも短い長さの遮音シートを持つ床材Aaも用いられる。この遮音シートを持つ床材Aaは施工現場で切断して得てもよく、当初から工場において製造しておいてもよい。遮音シートを持つ床材A、Aaは、ボーダー床材Cと同様に、接着剤を用いてあるいは必要に応じて雌実部分に釘打ち等を行って床面に定着させる。
【0028】
接着剤の塗布は、床下地材全面に行ってもよく、筋状あるいは点状に行ってもよい。また、配置時に床材A、Aaを幾分スライドさせることにより位置決めを行ってもよい。いずれの場合にも、接着剤が凹溝2内に入り込むことはない。
【0029】
次に、前記分離した第2の端末用床材Bbを遮音シートを持つ床材Aの端部と床面の左側辺との間に、かつ、底面のU字状の凹溝8aの開放端側が内側方向となるようにして配置する。必要な場合には切り込み6に沿って一部を破断して長さを調節する。この際、前記第1の端末用床材Baと同様に、第2の端末用床材Bbは床下地に対して接着固定しなくてもよく、接着剤あるいは仮固定釘等により仮固定してもよい。この場合にも、前記と同様に、床材A及び床材Bの裏面に貼着した遮音シート4と同じものを予め床下地上に配置しておく。また、裏面に貼着した取り外し用のテープ12の先端が表面側に現れるようにしておく。
以下、この作業を必要回数(この例では10回)反復し、最後に、床面50の下辺に沿って3枚のボーダー床材Cを定着して、図1に示す形状の床材施工工程、すなわち、大工側の作業は終了する。
【0030】
次に、コードヒーターの配設施工を行なう。この施工は大工ではなく電気工事店の作業員により行なわれる。作業者は、先ず、図7に示すように、表面に飛び出している取り外し用のテープ12を手で引き上げることにより、第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbを取り外し、次に、図8に示すように、所定長のコードヒーターPを、遮音シートを持つ床材Aの裏面に形成した各凹溝2を通して、一方端から他方端まで貫通させる。床材Aの凹溝2は遮音シート4により覆われているので、凹溝2内に床材Aの接着時に用いた接着剤が入り込むことはなく、コードヒーターPは円滑に凹溝2内を通過する。他方端で折り返して次の段の凹溝2を貫通させ、再度折り返す作業を、コードヒーターPの長さが許す限り行う。それにより、結線箇所のない状態で、広い床面積にコードヒーターを配設することができる。
【0031】
配設作業の効率化のために、図9に示すように、1本のコードヒーターPの長さを床面に定着した遮音シートを持つ床材Aの長さLLの2倍よりも幾分長いものとし、それをU状に折り曲げて、2本の凹溝に右端から左端に向けて挿通するようにしてもよい。以下、同様にして、隣接する2本の凹溝に対して1本のコードヒーターPを挿通していく。それにより、先に取り外した第1の端末用床材Baの場所にはコードヒーターPのU状の折曲部Puが露出し、第2の端末用床材Bbの場所にはその両端部Peが露出した状態となる。
【0032】
このようにしてすべての床材Aに形成した凹溝2にコードヒーターPを挿通した後で、そのコードヒーターP群が一つの連続した回路を形成するように端部同志の結線を行なう。床面の広さに応じて、2以上の配設回路を形成するように結線してもよい。図10は5段分の遮音シートを持つ床材Aに挿通されたコードヒーターP群で一つのコードヒーター回路を構成する場合の例であり、図において、最も上位に配置されるコードヒーターPの一方の端部Pe1は、外部プラグに接続される電源ソケットGの一方の端子に適宜の電気コードPg1を介して結線され、他方の端部Pe2は下位に位置するコードヒーターPの一端Pe3に結線される。また、そのコードヒーターPの他端はより下位に位置するコードヒーターPの一端に結線される、というようにして順次結線され、5段目の床材Aの下位に位置するコードヒーターPの他端Pex側が電気コードPg2を介して電源ソケットGの他方の端子に接続されることにより、一つのコードヒーター配設回路が形成される。この場合でも、結線部はフロアの側辺近傍にのみ位置することとなり、床暖房フロアに実質的な温度むらを生じさせることはない。なお、形成したコードヒーター配設回路と外部電源との接続は従来の電気式床暖房フロアの場合と同様に床下地材の下で行ってもよく、壁部あるいは床下地と壁部との境界位置近傍で行ってもよい。
【0033】
そのようにしてコードヒーター配設回路を形成した後に、先に取り外しておいた第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbから取り外し用のテープ12を除去し、該床材を接着剤によりあるいは必要に応じて疑似溝1c部分に釘打ちを行うことによって元の位置に固定することにより、電気工事店側の結線工事は終了する。
【0034】
先に説明した第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbの裏面に形成したU字状の凹溝7a、7b、8aの形状及び略ト字状の凹溝8b、8cの形状は、前記のようにコードヒーター配設回路を構築した場合での、第1の端末用床材Ba側及び第2の端末用床材Bb側におけるコードヒーターPの軌跡に相当するものであり、また、第2の端末用床材Bbの裏面に形成した第3の凹溝9は電気コードPg1あるいはPe2軌跡に相当するものである。従って、配設回路形成時にそれらの凹溝の形状に一致するように、コードヒーターPのU状部の軌跡及び接続部の軌跡を定め、また、場所を一致させることで、第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbの配設回路形成後の取り付けは容易となる。
【0035】
上記のようにして施工された床暖房フロアは、第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbを除き、裏面全面に遮音シートを積層した床材(A、C)で占められており、そのままで本来の遮音性能を奏する。また、第1の端末用床材Baと第2の端末用床材Bbが配置される床下地面には予め同様な遮音シートが配置してあり、その部分での遮音性能が低下することもない。また、床高さも普通の床面の高さと同じであり、格別の段差処理等も不要である。
【0036】
図11は、端末用床材Bの他の形態を示している。この端末用床材Bは図4に示したものと比較して、裏面に遮音シート4aを積層している点で異なっている。遮音シート4aの素材及び厚みは、前記床材A及びCにおける遮音シート4と同じであってよい。そして、この遮音シート4aにおいては、好ましくは端末用床材Bの裏面に形成したU字状の凹溝7a、7b、凹溝8a、8b、8c、凹溝9に沿って、裏面まで達する切り込み7x、8x、9x(7xは図示されない)が形成される。
【0037】
この端末用床材Bは図4に示したものとほぼ同様にして使用されるが、当初から裏面に遮音シート4を積層しているので、床下地面上に別途遮音シートは配置することは不要であり、作業性が向上する。コードヒーターを敷設した後に元の位置に戻す際に、上から押し付けることによって、該切り込み7x、8x、9xはコードヒーターに衝接して拡開することから、コードヒーターの凹溝内への進入は容易となる。図示しないが、この端末用床材Bにおいて、裏面の全面に遮音シート4aを貼り付けることは好ましいが、中央部分については省略することもできる。また、切り込み7x、8x、9xを予め形成することなく、施工現場で、作業員が必要となる箇所にのみナイフ等で切り込みを設けるようにしてもよい。さらに、切り込み7x、8x、9xに代えて、裏面に形成した凹溝に沿って遮音シートを切り欠くようにしてもよい。
【0038】
上記の説明は、本発明による電気式床暖房フロアの施工方法及び電気式床暖房フロア並びに床材の好ましい実施の形態の説明であって、さらに多くの変形例が存在する。例えば、各床材に設けた均熱板としての機能を果たす金属箔3は必ずしも必須でなく、省略してもよい。床材Aに形成した第2の溝も、省略可能である。取り外し用のテープも作業の効率化の観点から用いられるものであり、省略可能である。また、図示しないが、施工に際して、コードヒーターの先端に凹溝内の通過を容易とするようなガイド部材を取り付けた状態でコードヒーターの挿通を行うことは有効である。例えば、先端が先鋭化したキャップ状部材をコードヒーターの先端に取り付けてもよく、また、ピアノ線のような線材を最初に凹溝内を通過させてその先端を出口側から露出させておき、該線材の後端にコードヒーターの先端を取り付けて、線材の露出端を引き出すようにしてもよい。
【0039】
実際の暖房施工時に、該コードヒーターPのU状部の軌跡及び接続部の軌跡等を第1の端末用床材Ba及び第2の端末用床材Bbの裏面に形成した各凹溝の形状に一致させて作業を進めることは容易でない。図12はその作業を容易かつ確実に行なうために用いる台紙60の一例を示している。この台紙60の右側には第1の端末用床材Ba裏面に形成したU字状の凹溝7a、7bの軌跡がそのまま転写されて印刷模様60aとしてあり、左側には第2の端末用床材Bb裏面に形成したU字状の凹溝8a、略ト状の凹溝8b、8c及び第3の凹溝9軌跡と、コードヒーターPの互いに接続されるべき2本の端部Peがカットされるべき長さを示す目印63a、63bとが印刷されている。
【0040】
作業者は、第1の端末用床材Baを取り外した後で、図13aに示すように該台紙60を、その印刷模様60a側の先端が定着されたヒーター用床材Aの4本の凹溝2に一致するように床面上に置く。また、第2の端末用床材Bbを取り外した後で、該台紙60を、その印刷模様60b側の先端が定着されたヒーター用床材Aの4本の凹溝2に一致するように床面上に置く。
その状態で、U状に折曲した2本のコードヒーターPをヒーター用床材Aの4本の凹溝2に挿通し、そのU状部分60uを台紙60に転写された印刷模様60aと一致するように姿勢を矯正する。必要に応じて、台紙60を取り外し、図13bに示すように、第1の端末用床材Baを定着することにより作業は終了する。以下、この作業を反復する。第2の端末用床材Bb側でも同様にして作業を行う。
【0041】
このように、台紙60を用いることによりコードヒーターPの折曲部あるいは接続部での姿勢制御は容易かつ確実となり、コードヒーター結線後に取り外した端部用床材を容易に床面に定着することができる。なお、前記台紙として、裏面に均熱板を張り付けたものを用いてもよく、その場合には、該台紙は取り外されることなくそのまま床面上に残される。
【0042】
図14、図15は、床材Aの他の例であり、この床材Aは裏面に裏面シート4bを持つ。図14aはその平面図、図14bは背面図、図15は拡大して示す短辺に沿った断面図である。この例において、裏面側合板1bの裏面には、コードヒーターPを収容できる大きさの凹溝2と該凹溝2に沿って細い第2の溝2a、2aが形成されており、そして、前記凹溝2を覆うようにして好ましくはその全長にわたりポリエチレンラミネート紙のような裏面シート4bが例えば水溶性接着剤により貼着されている。他の構成は、図2、図3に示したものとほぼ同様である。裏面シート4bは、床下地面に塗布した接着剤や異物が凹溝2内に入り込むのを抑制する。裏面シート4bの素材としては、他に、ポリオレフィン系シートのラミネート紙のような複合紙や不織布、あるいは、ポリエチレンやポリプロピレンのようなオレフィン系樹脂シートそのものを有効に用いることができる。この形態の床材を用いても、上記したと同様にして電気式床暖房フロアの施工が可能であることは理解されよう。さらに、床下地面への接着剤の塗布をむらのない状態で行い、かつ、床材の床下地面への配置を慎重に行うようにすれば、床材に前記の裏面シート4b及び/又は第2の溝2aを設けなくても施工可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、床材を配置する大工工事とヒーター結線回路を形成する電気工事とを完全に独立した工程として行なうことが可能となる。そのために、作業効率は向上し施工コストは低減する。また、複数枚の床材を連続してコードヒーターが通過するようにされるので、従来のように各単位床材ごとの結線部は不要となり、床暖房フロア全体を温度むらなく均一に昇温させることが可能となる。コードヒーター同志の結線は、床面の側方位置で行えばよく、有効暖房面積を狭めることもない。
【0044】
床材は、直線状の凹溝を持つものと曲線状の凹溝を持つものとに分けることができ、かつ、曲線状の凹溝を持つものは必要とされる床材の総個数の一部であることから、床材全体としての凹溝加工作業は低減し、製造コストは低減する。
さらに、好ましい態様においては、暖房用床材のみで、本来の遮音性能を持ちかつ熱効率の良好な床暖房フロアを成形することができる。また、他の好ましい態様においては、コードヒーターを通過させるべき凹溝に接着剤や異物が入り込むことはなく、コードヒーターの配管作業が容易となると共に、異物によりコードヒーターが損傷を受けることも回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による床暖房フロアを示す平面図。
【図2】取り外される床材以外の床材である凹溝を持つ床材の一実施形態を示す図であり、aは平面図、bは背面図。
【図3】図2の床材のIII-III 線による拡大断面図。
【図4】端部用床材の一例を示す図であり、aは平面図、bは背面図、cは正面図、dは拡大した右側面図。
【図5】ボーダー用床材を示す図であり、aは平面図、bはV-V 線による断面図。
【図6】各床材の配置手順を示す図。
【図7】電気工事店側の作業の最初の手順を説明する図。
【図8】電気工事店側の作業の次の手順を説明する図。
【図9】取り外される床材以外の床材である凹溝を持つ床材にコードヒーターを挿通した状態を説明する図。
【図10】コードヒーターによる結線回路系の一例を説明する図。
【図11】端部用床材の他の例を示す図であり、aは平面図、bは正面図。
【図12】コードヒーターの配設に用いる台紙を示す図。
【図13】図12に示す台紙の使用状態を説明する図。
【図14】取り外される床材以外の床材である凹溝を持つ床材の他の例を示す図であり、aは平面図、bは背面図。
【図15】図14の床材のX−X線による拡大断面図。
【符号の説明】
A…取り外される床材以外の床材である凹溝を持つ床材(ヒーター用床材)、B…端末用床材、C…ボーター用床材、P…コードヒーター、2…床材の裏面に形成される凹溝、2a…凹溝に沿って形成される第2の溝、3…均熱板、4、4a…床材の裏面を覆う遮音シート、4b…裏面シート

Claims (2)

  1. コードヒーターを収容するための裏面に形成した1本又は複数本の凹溝と、少なくとも該凹溝部分を被覆する裏面シートとを有し、該裏面シートはポリエチレンラミネート紙、ポリオレフィン系シートのラミネート紙、あるいは、オレフィン系樹脂シートからなり、かつ前記凹溝部分に沿って形成された細い第2の溝をさらに有することを特徴とする電気式床暖房フロア用の床材。
  2. コードヒーターを収容するための1本又は複数本の凹溝を裏面に形成した基材と、該基材の裏面を覆うように配置された遮音機能を有する層とを少なくとも有し、該遮音機能を有する層は、前記1本又は複数本の凹溝に沿って切り込みが形成されるか、又は、凹溝に沿って切り欠かれていることを特徴とする電気式床暖房フロア用の床材。
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