JP4071037B2 - β−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物の作出方法および当該方法により作出される変異微生物ならびにその利用 - Google Patents

β−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物の作出方法および当該方法により作出される変異微生物ならびにその利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、β−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物の作出方法および当該方法により作出される変異微生物ならびに当該変異微生物の産生するβ−ガラクトシダーゼの糖転移反応を利用したガラクトオリゴ糖の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β−ガラクトシダーゼ(EC番号 3.2.1.23)はβ−ガラクトシド結合を加水分解する酵素であり、一般的にはラクトースに作用し、ガラクトースとグルコースを遊離させるものである。このβ−ガラクトシダーゼの中には、加水分解作用と同時に糖転移活性を持つものが知られており、このような酵素をラクトースに作用させると、遊離するガラクトース残基が残存ラクトースに転移し、ガラクトシルラクトース等のガラクトオリゴ糖を生成する。(Jpn. J. Dairy and Food Sci., 34巻、6号、169ページ1985年)。
【0003】
このガラクトオリゴ糖はヒトの消化酵素では消化されないが、ビフィズス菌には利用されるヒト難消化性の糖質であって、経口摂取することにより、腸内有用菌であるビフィズス菌の増殖を活発にすることが知られている。(Bifidobateria Microflora, 2巻、17ページ 1983年)。また、これらガラクトオリゴ糖の中でも特に4'−ガラクトシルラクトース(以下、「4'−GL」という)は、人に投与したとき顕著なビフィズス菌増殖効果があることが認められ、4'−GL比率が高いガラクトオリゴ糖の製法が望まれていた(日本食品工業学会誌、第36巻 第11号 p.898−902)。
【0004】
上記したようなガラクトオリゴ糖への糖転移活性の高い、β−ガラクトシダーゼを生産する微生物として、酵母であるクリプトコッカス・ローレンティーが分離されており、これをラクトースに作用させる4'−GLを主成分とするガラクトオリゴ糖の生産が行なわれている(J. Ferment. Bioeng., 70巻、301ページ 1990年)。また、特開平7−236480号公報では、糖転移活性の高い新規β−ガラクトシダーゼおよび該β−ガラクトシダーゼを微生物により製造する方法が開示されている。しかしながら、これらの微生物が産生するβ−ガラクトシダーゼの活性は極めて弱く、工業的なガラクトオリゴ糖生産ではコスト高になるという問題があった。
【0005】
一方、昆虫の腸管より分離された酵母ブレラ(現分類ではスポロボロマイセス)・シンギュラリス(以下、「ブレラ・シンギュラリス」という)が産生するβ−ガラクトシダーゼは、ラクトースに作用させると4'−GL比率の高いガラクトオリゴ糖を合成することが知られている。しかしながら、ブレラ・シンギュラリスが産生するβ−ガラクトシダーゼは少量で、工業的な生産で利用できるレベルではなかった。また、ブレラ・シンギュラリスの産生するβ−ガラクトシダーゼは微生物あたりの活性が弱く、これを用いてガラクトオリゴ糖を生産するには微生物が多量に必要となる。そのため、当該微生物を用いてガラクトオリゴ糖を製造した場合には、微生物由来の不純物がガラクトオリゴ糖に混入し、濁りや酵母臭が出るといった問題を生じていた。そして、このガラクトオリゴ糖の濁りや酵母臭による品質低下を回避するためには、精密濾過やイオン交換等の煩雑な処理が不可欠であった。
【0006】
ところで、一般に微生物はグルコースを炭素源とした場合に最良の増殖を示し、酵素等の生産性が著しく高くなる。しかしながら、グルコース等の糖はカタボライトリプレッション(異化産物抑制)を引き起こし、微生物からのβ−ガラクトシダーゼ等の誘導酵素の発現を抑え、その生産性は著しく低下してしまうことがある。例えば、上記のブレラ・シンギュラリスをグルコースを炭素源として培養すると、カタボライトリプレッションが引き起こされるため、β−ガラクトシダーゼの生産性は低いものとなる。また、グルコースの代替炭素源としてラクトース等を用いた場合は、カタボライトリプレッションは起きないが、グルコースと比較して微生物の増殖が弱いため、β−ガラクトシダーゼの収量が低くなるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、一般の培地に含まれる糖類によるカタボライトリプレッションを受けることのないβ−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物の作出方法や、当該作出方法により作出される変異微生物および当該変異微生物の産生するβ−ガラクトシダーゼを利用したガラクトオリゴ糖の製造方法の提供をその課題とするものである。また、特に本発明は、β−ガラクトシダーゼを産生する微生物の中でも人投与時の生理効果が高いとされている4’−GL比率の高いガラクトオリゴ糖を合成することのできるβ−ガラクトシダーゼを産生するブレラ・シンギュラリスについて、その酵素産生能を高めることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、カタボライトリプレッションを受けにくいβ−ガラクトシダーゼ高産生微生物は、例えばグルコースに代えて栄養源とならないグルコースアナログ等の糖アナログを含有する培地中であっても、このものが産生するβ−ガラクトシダーゼにより、ラクトースを分解してグルコースを得るため、生育可能であることに気づいた。そして、この事実を利用すれば、目的とするβ−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物を効率よく作出することができることを見出した。また、この作出方法により得られるβ−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物を利用することによりガラクトオリゴ糖の工業的生産が可能であることを見出した。更に、β−ガラクトシダーゼ高産生微生物としてブレラ・シンギュラリスを用いた場合には、β−ガラクトシダーゼにより合成されるガラクトオリゴ糖の高い4’−GL比率を維持できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、次の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするβ−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物の作出方法。
(a)β−ガラクトシダーゼを産生する親微生物に変異処理を施す工程
(b)変異処理が施された微生物を、親微生物のβ−ガラクトシダーゼ産生を抑制する糖のアナログ物質およびラクトースを含有する培地中で培養する工程
(c)上記工程(b)で培養された微生物を、再度、親微生物のβ−ガラクトシダーゼ産生を阻害する糖を唯一の炭素源とする培地で培養し、当該微生物中からβ−ガラクトシダーゼを産生する微生物を選択する工程
【0010】
また、本発明は前記作出方法により得られる変異微生物を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は前記変異微生物をグルコース培地で培養することを特徴とするβ−ガラクトシダーゼの製造方法を提供するものである。
【0012】
また更に、本発明は前記変異微生物由来のβ−ガラクトシダーゼとラクトースとを反応させることを特徴とするガラクトオリゴ糖の製造方法を提供するものである。
【0013】
更にまた、本発明はβ−ガラクトシダーゼ活性が微生物の湿重量1gあたり1U以上であるブレラ属に属する微生物を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のβ−ガラクトシダーゼ高産生微生物は、次の工程(a)〜(c)を含む方法により作出される。
(a)β−ガラクトシダーゼを産生する親微生物に変異処理を施す工程、
(b)変異処理が施された微生物を、親微生物のβ−ガラクトシダーゼ産生を抑制する糖(以下、「抑制糖」ということがある)のアナログ物質(以下、「糖アナログ」という)およびラクトースを含有する培地中で培養する工程、
(c)上記(b)工程で培養した微生物を、再度抑制糖を唯一の炭素源とする培地で培養し、当該微生物中からβ−ガラクトシダーゼを産生する微生物を選択する工程
【0015】
本発明において使用される、β−ガラクトシダーゼを産生する親微生物としては、β−ガラクトシダーゼを産生し、グルコースやラクトース等の糖類を資化することのできる微生物であれば、とくに限定されることなく、種々のものが使用される。これらの微生物の例としてはブレラ属、クリベロマイセス属、リポマイセス属、キャンディダ属、クリプトコッカス属、ステリグマトマイセス属、スポロボロマイセス属、ベンシントニア属、バリストスポロマイセス属、フェロマイセス属、フィブロバシディウム属、シロバシディウム属、ティレショプシス属、イターソニリア属、ティレシア属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ハンセヌラ属、ロドトルラ属、デバリョマイセス属、ピキア属、トルロプシス属等の酵母が挙げられ、特にブレラ属、ステリグマトマイセス属、スポロボロマイセス属、クリベロマイセス属、クリプトコッカス属、ロドトルラ属、リポマイセス属が好ましい。このうち、特に好ましく用いられる微生物の例としては、ブレラ・シンギュラリス (Bullera singularis(現分類では、スポロボロマイセス・シンギュラリス(Sporobolomyces singularis))(JCM 5356)が挙げられ、このものは理化学研究所微生物系統保存施設(〒351-0198 埼玉県和光市広沢2−1)から有償で入手することが可能である。
【0016】
本発明の(a)工程において行われる変異処理は、物理的処理、化学的処理等の何れでもよく、その処理法には特に限定されない。このうち、物理的処理としては紫外線照射、ガンマ線照射などの方法が挙げられ、また化学的処理としては、ニトロソグアニジン(以下、「NTG」という)、エチルメタンスルホネート(以下、「EMS」という)、亜硝酸等による処理が挙げられる。上記の手段の中でもNTG処理はβ−ガラクトシダーゼ産生能の増加につながる変異誘発活性が著しく高く特に好ましい。
【0017】
これら変異処理を施す場合には、変異処理後の微生物の生存率が1%以下となる程度の強度であることが好ましい。具体的には、紫外線照射であれば15W殺菌灯から距離10cmで30秒以上照射処理を施すことが好ましく、EMS処理であればEMS濃度が2%以上で1時間程度処理を施すことが好ましく、NTGであればNTG濃度が300μg/ml以上、特に300〜400μg/mlで1時間程度処理を施すことが好ましい。
【0018】
次に、工程(b)として、工程(a)で変異処理が施された微生物を、糖アナログとラクトースを含有する培地中で培養する。
【0019】
この工程で用いられる培地は、糖アナログを含み、炭素源としては、ラクトース以外のものを含まないものである。それ以外の培地成分については、特に制約はなく、窒素源として酵母エキス、ポリペプトン、カザミノ酸、トリプチケース、コーンスティープリカー、大豆加水分解物、硫安、硝酸カリ、尿素等を添加することができ、特に増殖性の面から酵母エキスの添加が望ましい。
【0020】
上記培地に添加される糖アナログとしては、グルコースアナログ、フルクトースアナログ等が挙げられ、グルコースアナログを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。このうち、グルコースアナログとしては、D−グルコサミン、D−グルコサミン−6−フォスフェート、N−アセチル−D−グルコサミン、D−グルコソン、2−デオキシ−D−グルコース、6−デオキシ−D−グルコース、2−デオキシ−D−グルコース−6−フォスフェート、6−デオキシ−6−フルオローD−グルコース、6−ホスホ−D−グルコニックアシッド、1,5−アンハイドロ−D−グルコシトール−6−フォスフェート、β−グルコース−1,6−ジフォスフェート、α−D−グルコ−ピラノシド等が挙げられ、特に2−デオキシ−D−グルコースが好ましい。フルクトースアナログとしては、1−デオキシフルクトース、6−デオキシフルクトースが挙げられる。これら糖アナログは、変異処理に使用した親株が増殖できない濃度で培地に加えればよく、一般には、0.5〜10g/l程度の濃度、好ましくは1〜5g/lの濃度で添加すればよい。
【0021】
上記培地における培養条件は特に制約はなく、対象とする微生物の好ましい培養条件とすればよい。一般的な培養条件としては、pH4.0〜8.0が好ましく、特に5.0〜7.0が好ましい。また、培養温度は20〜40℃が好ましく、特に25〜30℃が好ましい。更に、攪拌を行う場合は、振とう方式はロータリーもしくはレシプロ方式が好ましく、その速度は100〜200rpmが好ましく、特に120〜150rpmが好ましい。培養槽を用いる場合には、攪拌翼の回転数は200〜500rpmが好ましく、特に300〜400rpmが好ましい。また、通気量は、0.5〜2.0vvmが好ましく、特に1.0〜1.5vvmが好ましい。
【0022】
この工程(b)により生育した微生物は、糖アナログの存在にも関わらずβ−ガラクトシダーゼを産生し、ラクトースを分解したグルコースを炭素源として生育した微生物であり、糖アナログのカタボライトリプレッションを実質的に受けない変異微生物ということができるものである。
【0023】
具体的に工程(b)を、変異処理を施したブレラ・シンギュラリスを用い、グルコースアナログとしての2−デオキシグルコースを添加したラクトース培地で培養した場合を例に挙げると次の通りである。すなわち、ラクトース培地に5.0g/l以上の2−デオキシグルコースを存在させ、27℃で約2週間程度培養すれば、2−デオキシグルコース耐性のブレラ・シンギュラリスが、直径2〜3ミリメーターのコロニーとして寒天プレート表面に生育してくる。このものは、2−デオキシグルコースの存在下でもβ−ガラクトシダーゼを産生し、ラクトースを分解したものであるから、この2−デオキシグルコース(およびグルコース)によるカタボライトリプレッションを受けないものといえる。一方、生育することができなかったブレラ・シンギュラリスは2−デオキシグルコース耐性のないものであり、2−デオキシグルコース(グルコース)のカタボライトリプレッションを受けるものといえる。
【0024】
なお、ここで工程(a)により取得された微生物を工程(b)の糖アナログを添加した培地中で培養する工程を行わず、変異処理の後に全数分離を行う場合には、ほとんど同一形質の微生物しか得ることができない。これに対して、本発明の工程(b)の糖アナログを添加した培地で培養することによるポジティブセレクションを行うと、β−ガラクトシダーゼを高産生する微生物を高頻度に取得することができる。
【0025】
更に、工程(c)として、工程(b)で取得した微生物を、再度、抑制糖(親微生物のβ−ガラクトシダーゼ産生を抑制する糖)を唯一の炭素源とする培地で培養し、当該微生物中からβ−ガラクトシダーゼを産生する微生物を選択する。
【0026】
ここで抑制糖とは、例えば工程(b)で糖アナログとしてグルコースアナログを用いた場合にはグルコースであり、フルクトースアナログを用いた場合にはフルクトースである。この工程(c)で用いる培地としては、この抑制糖を唯一の炭素源として使用する以外は、通常の培地成分を添加したものを使用することができる。また、培養も通常の微生物の培養に準じて行うことができ、特に培養をプレート上で行うマイクロカルチャーシステムを用いて行うことが好ましい。
【0027】
この培養後に、培養された微生物中から、β−ガラクトシダーゼを産生する微生物を選択するが、この選択方法には特に制約はなく、公知のβ−ガラクトシダーゼ検出方法を利用することができる。
【0028】
上記検出方法の一例としては、微生物の産生するβ−ガラクトシダーゼとオルトニトロフェニル−β−ガラクトピラノシドとを反応させた後、波長420nmで吸光度を測定する方法が挙げられ、例えば、その吸光度が0.2以上であるものを本発明のβ−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物として選択することができる。
【0029】
より具体的に、β−ガラクトシダーゼ活性の測定は以下の手順により行うことができる。すなわち、適当量のβ−ガラクトシダーゼまたは微生物をpH4.0〜6.0の緩衝液に懸濁・希釈する。また、オルトニトロフェニル−β−ガラクトピラノシド(ONPG)を同pHの緩衝液に溶解して12.5mMの溶液を調整する。このONPG溶液0.8mlにβ−ガラクトシダーゼもしくは微生物懸濁液0.2mlを添加・混合し、30℃で正確に10分間反応させた後に0.25M炭酸ナトリウム溶液4ml加えて、反応停止と発色を行う。ONPG溶液に緩衝液のみを加えたものを試薬ブランクにする。また、β−ガラクトシダーゼもしくは微生物懸濁液を添加・混合すると同時に上記と同様に反応停止・発色を行うものを反応初発液とする。これらを遠心分離(3,600rpm、10分)し、上清の420nmにおける吸光度を分光光度計で測定すればよい。なお、β−ガラクトシダーゼ活性を測定するための試薬としては上記オルトニトロフェニル−β−ガラクトピラノシドに限定されず、これと換算しうる試薬を使用しても何ら問題はない。
【0030】
上記工程(a)〜(c)により、目的とするβ−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物を得ることができるが、よりβ−ガラクトシダーゼの産生能の高い変異微生物を得るために、更にスクリーニングを繰り返してもよい。
【0031】
上記スクリーニング方法の一例を示せば次の通りである。まず、上記工程(a)〜(c)により得られたβ−ガラクトシダーゼ高産生微生物(1次スクリーニング微生物)のうちの有望株と、工程(b)で用いたグルコース培地100mlを300ml容フラスコに入れて、振とう培養する。培養後、微生物の増殖性とβ−ガラクトシダーゼ活性を指標にして有望株選択し、2次スクリーニングとする。この2次スクリーニングの培養においては糖アナログを入れなくて良いが、必要に応じて少量添加することも可能である。
【0032】
次に、2次スクリーニングで絞り込まれた有望株と、工程(c)で用いた1.5lのグルコース培地を2.5lの培養槽に入れて培養する。培養後、微生物の増殖特性、β−ガラクトシダーゼ生産性を指標にして最終候補株を絞り込む(3次スクリーニング)。この3次スクリーニングにおいても糖アナログを入れなくて良いが、必要に応じて少量添加することも可能である。この培養槽を用いた培養では酸素が十分に配給できるので、培地中のグルコースが完全に消費されて微生物濃度が極めて高くなり、β−ガラクトシダーゼの生産性も極めて高くなる。
【0033】
以上説明した、本発明の作出方法により、β−ガラクトシダーゼ高産生変異微生物(以下、「本発明微生物」という)を得ることができる。このうち、具体的に、親株としてブレラ・シンギュラリス(JCM 5356)を用い、上記工程(a)〜(c)により得られた本発明微生物の例としては、ブレラ・シンギュラリスISK−#3A5、同#2C5、同 #4B4、同 #4B5、同 #4D4、同 #6A4、同 #6A6、同 #6B6、同 #5A1、同 #5A5、同 #5B1、同 #5D6、同 #6B2が挙げられる。
【0034】
また、上記ブレラ・シンギュラリスISK−#4D4を用い、更にスクリーニングを行うことにより得られた本発明微生物としては、ブレラ・シンギュラリスISK−##1A3、同##1C1、同##1C5、同##2A1、同##2B5、同##2B6、同##3B3、同##4B4、同##5B3、同##5C3、同##5D3が挙げられる。
【0035】
なお、上記で得られた本発明微生物のうち、ブレラ・シンギュラリス ISK−#4D4、ブレラ・シンギュラリス ISK−#5A5およびブレラ・シンギュラリス ISK−##2B6を2002年4月10日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番地 1 中央第6)にそれぞれFERM P−18818、FERM P−18819およびFERM P−18817として寄託した。
【0036】
上記で得られる本発明微生物の生化学的性状を下記表1に示す。なお、本発明微生物は染色体DNAの多型解析およびSDS−PAGEによる発現タンパクの比較により親株であるブレラ・シンギュラリス(JCM 5356)由来のものであることがわかっている。
【0037】
【表1】
Figure 0004071037
【0038】
上記で得られる本発明微生物は、グルコースまたはラクトース、好ましくはグルコースを含む培地で培養した場合にβ−ガラクトシダーゼを高産生することができる。具体的には波長660nmにおける微生物懸濁液の吸光度を基準にすれば、吸光度1あたりβ−ガラクトシダーゼ活性が5.0U以上であり、微生物の湿重量を基準にすれば、1gあたり1.0U以上であり、微生物の乾燥重量を基準にすれば、1gあたり14U以上である。本明細書において、湿重量とは乾燥重量の5.0/0.35倍量のことである。湿重量は、以下の方法により測定する。まず、一定量の培養液を遠心分離(5,000rpmまたは4,000gで10分間)し、デカンテーションまたはアスピレーターで上清を除く。次いでイオン交換水で微生物を洗浄し、上記の遠心分離によって上清を除く(この操作を2回繰り返す)。更に、得られた微生物を一定量取り、微生物の重量をそのまま秤量したものを湿重量とする。また、乾燥重量は前記湿重量を測定した微生物を100℃で一晩乾燥させて、乾燥物の重量を秤量したものである。なお、湿重量は乾燥重量0.35に対し、5.0程度となるが、処理条件の影響等のため重量の安定性が低いので、乾燥重量の5.0/0.35倍量として算出することが好ましい。
【0039】
なお、微生物懸濁液の酵素活性値、酵素自体の活性値は下記式により算出した(1分間に1μMのオルトニトロフェノールを遊離する酵素量を一単位(U)と定義した。)
【0040】
【式1】
Figure 0004071037
【0041】
以上説明した本発明微生物由来のβ−ガラクトシダーゼとラクトースとを反応させることにより、ガラクオリゴ糖を製造することができる。具体的に、本発明微生物由来のβ−ガラクトシダーゼとは、本発明微生物の生菌および死菌そのものまたはこれらを破砕して得られる粗酵素抽出液もしくはこの粗酵素抽出液を精製して得られるβ−ガラクトシダーゼ等のことをいう。
【0042】
ガラクトオリゴ糖を製造するのに適した本発明微生物としては、グルコースまたはラクトースで培養した場合に、波長660nmにおける微生物懸濁液の吸光度を基準として、吸光度1あたりβ−ガラクトシダーゼ活性が5U以上のものであり、さらに10U以上が好ましい。また、微生物の湿重量を基準にした場合は、1gあたり1U以上であればオリゴ糖製造に適し、さらに2U以上が好ましい。更に、微生物の乾燥重量を基準にすれば、1gあたり14U以上であればオリゴ糖製造に適し、さらに28U以上が好ましい。なお、ブレラ・シンギュラリスの場合、OD660:湿重量(g/l):乾燥重量(g/l)=1.0:5.0:0.35の関係がほぼ成立する。上記の如き、活性値がクリアできれば、微生物由来の不純物が少なくて、濁りや酵母臭のない高品質ガラクトオリゴ糖を製造することが可能となる。
【0043】
具体的に本発明微生物を用いてガラクトオリゴ糖を製造するには、本発明の微生物を緩衝液で洗浄後、微生物の湿重量あたり含まれるβ−ガラクトシダーゼ活性を測定する。ガラクトオリゴ糖生成反応は10〜60%のラクトース溶液で可能であり、特に40〜50%が好ましい。また、ガラクトオリゴ糖生成反応に必要なβ−ガラクトシダーゼは、ラクトース1gあたり0.05〜0.5Uであるが、特にラクトース1gあたり0.3〜0.4Uが好ましい。反応温度は30〜70℃で行うことが可能であり、40〜50℃が特に好ましい。pHは3.0〜7.0の範囲で行うことが可能であり、特に4.0〜6.0が好ましい。反応時間は24〜96時間の行うことが可能である。この際、高速液体クロマトグラフィーなどでオリゴ糖組成を経時的に測定することが好ましい。このような本発明微生物を用いれば、グルコースを炭素源として培養した場合のみならず、ラクトースを炭素源とした場合でも高いβ−ガラクトシダーゼ産生量を得られた。
【0044】
また、本発明微生物、上記粗酵素抽出液またはβ−ガラクトシダーゼをイオン交換体、多孔性セラミック、ゲル、膜、アルギン酸、グルタルアルデヒド、光硬化樹脂、活性炭などの担体に固定化してオリゴ糖生成反応に供することも可能である。また更に、本発明の微生物から、β−ガラクトシダーゼ遺伝子をクローニングして、大腸菌、枯草菌、各種酵母、糸状菌、植物、昆虫、動物および無細胞系で組み換えタンパクとして発現させて、上記反応に供することも可能である。
【0045】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【0046】
実 施 例 1
変異処理条件の検討:
ブレラ・シンギュラリス(JCM 5356:理化学研究所微生物系統保存施設から有償で入手)を下記条件の紫外線照射、エチルメタンスルホネート(EMS)、ニトロソグアニジン(NTG)で変異処理を行い、致死曲線を作成した。変異処理方法は、「生物工学実験書」(培風館)を参照した。紫外線照射は15W殺菌灯から10cmの距離で30秒、EMSは2%(V/V)の濃度で1時間、NTGは200μg/mlの濃度で1時間処理すると、生存率が1%以下になった(図1〜3)。生存微生物あたりの変異株出現確率が最も高いのは、経験的に生存率が1%以下のときであるので、ブレラ・シンギュラリスの変異処理は上記の条件周辺で行った。
【0047】
実 施 例 2
2−デオキシグルコース耐性株の取得:
ブレラ・シンギュラリスをNTG濃度、100、200、300および400μg/mlで処理し、糖アナログとしての2−デオキシグルコースを5g/l含む下記培地(1)のプレート上に塗抹した。約2週間後、直径1〜2ミリメーターの2−デオキシグルコースに耐性のある株(以下、「耐性株」という)のコロニーが形成されるので上記のNTG濃度ごとに、滅菌爪楊枝で36株ずつピックアップして保存用プレートに植え継いだ(合計144株)。
【0048】
培地(1)の組成:
(成分) (g/l)
ラクトース 50
酵母エキス 10
リン酸1カリウム 1.0
硫酸マグネシウム7水和物 0.5
寒天 20
糖アナログ 5
【0049】
実 施 例 3
耐性株のβ−ガラクトシダーゼ活性の検討:
実施例2で取得した144株の耐性株を下記培地(2)に各々一白金耳接種し、マイクロカルチャーシステム(スミロンMBSSキット4F:住友ベークライト製)で3日間培養して培養液を得た。各培養液の微生物濃度(660nm)とβ−ガラクトシダーゼ活性(420nm)を測定した。微生物濃度は培養液の660nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。また、β−ガラクトシダーゼ活性は以下の手順により測定した。まず、OD660nm=10〜40に相当する微生物をpH4.0の50mMリン酸・クエン酸緩衝液に懸濁・希釈する。また、オルトニトロフェニル−β−ガラクトピラノシド(ONPG)を同pHの緩衝液に溶解して12.5mMの溶液を調整する。このONPG溶液0.8mlに微生物懸濁液0.2mlを添加・混合し、30℃で正確に10分間反応させた後に0.25M炭酸ナトリウム溶液4ml加えて、反応停止と発色を行う。ONPG溶液に緩衝液のみを加えたものを試薬ブランクにする。また、微生物懸濁液を添加・混合すると同時に上記と同様に反応停止・発色を行うものを反応初発液とする。これらを遠心分離(3,600rpm、10分)し、上清の420nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。また、β−ガラクトシダーゼ活性値は前記式により算出した。
【0050】
上記で得られた微生物濃度(660nm)を横軸に、β−ガラクトシダーゼ活性(420nm)を縦軸にプロットし、上方領域にプロットされる変異株をβ−ガラクトシダーゼ高産生株(以下、「高産生株」という)とした。一方、2−デオキシグルコースによるポジティブセレクションを行わず、変異処理のあと全数分離したした場合は、ほとんど同一形質の株(親株)しか取得できなかった(図4)。この結果、グルコースのアナログ物質である2−デオキシグルコースによるポジティブセレクションを行った場合は、上方領域にプロットされる高産生株が高頻度に取得され(図5)、β−ガラクトシダーゼ高産生株の単離には2−デオキシグルコースによるポジティブセレクションが極めて有効であることが分かった。
【0051】
培地(2)の組成:
(成分) (g/l)
グルコース 50
酵母エキス 10
リン酸1カリウム 1.0
硫酸マグネシウム7水和物 0.5
【0052】
実 施 例 4
β−ガラクトシダーゼ高産生株の出現確率の検討:
β−ガラクトシダーゼ高産生株(420nmの吸光度が0.2以上のもの)の出現確率に及ぼすNTG濃度(0〜400μg/mlの範囲)の影響を調べた。実施例2で取得した2−デオキシグルコース耐性株では、NTG濃度300μg/ml以上、特に300〜400μg/mlで変異処理を行ない、生存率が1%以下であるときβ−ガラクトシダーゼ高力価変異株の出現確率が著しく高かった(図6)。
【0053】
実 施 例 5
β−ガラクトシダーゼ高産生株の一次評価:
実施例2で取得したβ−ガラクトシダーゼ高産生株を、培地(1)から糖アナログと寒天を抜いた培地(以下、「ラクトース培地」という)または培地(2)(以下、「グルコース培地」という)の100mlとともに300mlフラスコに取り、振とう培養(27℃、120rpm)を行い、増殖特性とβ−ガラクトシダーゼの生産性を比較・評価した。親株についても同様に培養を行った。
【0054】
この結果、親株および高産生株の両者とも、ラクトース培地での培養よりもグルコース培地での培養の方が良好な増殖を示した(表2)。親株はグルコース培地での培養の場合、β−ガラクトシダーゼの微生物あたりの活性(以下、「比活性」という)および生産性が、ラクトース培地での培養の1/3程度に低下するが、高産生株はラクトース培地での培養よりもグルコース培地での培養の方がβ−ガラクトシダーゼの比活性および生産性が高かった(表3)。この現象は、これらの高産生株はグルコースに対するカタボライトリプレッションが欠損していることを示している。しかしながら、高産生株においてはラクトース培地においても親株と比べて極めて高いβ−ガラクトシダーゼの生産性が得られ、高産生株が何れの培地においても良好な生産性を有することが分かった。これら高産生株のうちグルコース培地での培養で良好な増殖を示し、β−ガラクトシダーゼの比活性および生産性が高い、#4D4、#5A5、#5D6、#6A6を有望株としてピックアップした。
【0055】
【表2】
Figure 0004071037
【0056】
【表3】
Figure 0004071037
【0057】
実 施 例 6
β−ガラクトシダーゼ高産生株の二次評価:
実施例4で選択した、#4D4、#5A5、#5D6、#6A6を2.5lのミニジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製)を用いて、1.6lのグルコース培地で培養試験を行った。また、対象として親株も平行して培養した。前培養は100mlのグルコース培地を用い、300mlの三角フラスコで振とう培養することにより行い、この全量約100mlをミニジャーファーメンターに接種した。本培養時の攪拌翼の回転数は375rpm、通気量は1vvmに設定した。pHコントロールは行わず、消泡剤として滅菌したシリコンを適時添加した。培養中のサンプリングを経時的に行い、増殖(OD;660nm)、β−ガラクトシダーゼ活性(前述の方法で測定)、グルコース濃度(グルコーステストCII−テストワコー:ムタロターゼ・GOD法で測定)をモニタリングした(図7〜図10)。増殖特性およびβ−ガラクトシダーゼの生産性は、#4D4が最も優れていた。#5A5は#4D4に比べて増殖は遅いが、β−ガラクトシダーゼ活性が高い有望株であった。
【0058】
実 施 例 7
β−ガラクトシダーゼ高産生株#4D4の第2世代株の取得:
実施例5で増殖特性及びβ−ガラクトシダーゼが最も優れていたブレラ・シンギュラリス#4D4を実施例2〜5記載の方法で再度育種し、有望株を選抜した。合計672株の中から、有望株11株を選び出しグルコース培地で増殖特性、β−ガラクトシダーゼ生産性および微生物の湿重量あたりのβ−ガラクトシダーゼ活性を評価した(表4)。##2B6が第2世代変異株の中で最もβ−ガラクトシダーゼ生産性が優れていた。
【0059】
【表4】
Figure 0004071037
【0060】
第1世代変異株#4D4と第2世代変異株##2B6を実施例5記載のミニジャーファーメンターで培養し、増殖特性とβ−ガラクトシダーゼ生産性を比較した。##2B6は#4D4に比べて、若干増殖が遅いものの、β−ガラクトシダーゼ生産性および比活性が1.2倍で、有望株であることがわかった。
【0061】
実 施 例 8
β−ガラクトシダーゼ高産生株を用いたガラクトオリゴ糖の製造:
実施例5および7で得られたブレラ・シンギュラリス#4D4、#5A5、#5D6、#6A6および親株を50mMリン酸・クエン酸緩衝液で洗浄し、微生物の湿重量あたりのβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した(表5)。
【0062】
まず、16gのラクトースを50mlの三角フラスコに秤取り、適量の50mMリン酸・クエン酸緩衝液を加えて加熱溶解する。次いでこのラクトース溶液を45℃まで冷却して、β−ガラクトシダーゼ活性が6.4Uに相当するブレラ・シンギュラリス微生物を添加し、均一になるまで懸濁する。この懸濁液を45℃でインキュベートし、経時的にサンプリングした。サンプルは10分間の遠心分離(15,000rpm)で微生物を沈殿させ、上清をイオン交換水で希釈し、常法により除タンパク処理を行なった後、ポアサイズ0.45μmのフィルターで濾過した。得られたサンプルの糖組成をHPLCで分析し、クロマトグラムの面積比から糖組成を算出した。その結果を表6に示す。HPLCによる分析条件は下記に示した。親株、#4D4、#5A5、#5D6および#6A6のすべての株でガラクトオリゴ糖の生成が確認され、糖組成にも違いがないことが確認できた。なお、微生物の湿重量は、5〜40mlの培養液を遠心分離(5,000rpmまたは4,000gで10分間)後、デカンテーションまたはアスピレーターで上清を除き、イオン交換水で微生物を洗浄し、上記と同条件の遠心分離によって、上清を除く操作を2回繰り返すことにより得られた微生物を秤量することにより測定した。また、微生物の乾燥重量は前記湿重量を測定した微生物を100℃で一晩乾燥させて、乾燥物の重量を秤量することにより測定した。各々の重量を測定した結果、湿重量は乾燥重量の14.3倍であった。
【0063】
【表5】
Figure 0004071037
【0064】
【表6】
Figure 0004071037
【0065】
HPLCによる糖組成分析条件
カラム :Shodex SUGAR KS−802
(8mmφ×300mm、昭和電工製)
ガードカラム:Shodex SUGAR KS−G
(6mmφ×50mm、昭和電工製)
移動相 :精製水
流速 :0.5ml/min
カラム温度 :80℃
試料注入量 :10マイクロリッター
検出器 :示差屈折計 RI−98(ラボシステム機器製)
【0066】
実 施 例 9
β−ガラクトシダーゼ高産生株を用いて製造したガラクトオリゴ糖
の評価:
実施例8で製造したガラクトオリゴ糖液(遠心分離によって微生物を除去した糖液)を評価した。濁り、酵母臭、粘度の各項目について下記評価基準により評価した(表7)。#5A5、#4D4および##2B6において良好な評価結果が得られた。これは、#4D4および#5A5のβ−ガラクトシダーゼ活性が高いため微生物の添加量が少く、ガラクトオリゴ糖に含まれる微生物由来の不純物が少なくなったためと考えられる。
【0067】
濁 り :
<評価基準>
+++ : とても濁っている。
++ : 濁っている。
+ : 若干濁っている。
± : 濁りはほとんど認められない。
【0068】
酵 母 臭 :
<評価基準>
+++ : 非常に酵母臭が強い。
++ : 酵母臭がする。
+ : 若干酵母臭がする。
± : 酵母臭がほとんどしない。
【0069】
粘 度 :
<評価基準>
+++ : 極めて粘度が高い。
++ : 粘度が高い。
+ : 若干粘度が高い。
± : 粘度が低い。
【0070】
【表7】
Figure 0004071037
【0071】
実 施 例 10
β−ガラクトシダーゼ高産生株の多型解析:
上記実施例で得られたβ−ガラクトシダーゼ高産生株の染色体DNAをIsoplant(ニッポンジーン製)により抽出した。抽出された染色体DNAにはRNA及びタンパクが多量に混入していたので、RNase処理およびフェノール・クロロホルム抽出を行い純粋なDNAを得た。陽性対照としてブレラ・シンギュラリスの親株、陰性対照にクリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)を用いた。
【0072】
PCR用の試薬 (μl)
10X PCRバッファー 25
dNTP mix 20
Taq 4
primer(100pmol/μl) 4
ddH20 190
【0073】
上記のバッファーを20〜50μlのPCRチューブに分注後、10μg/mlのテンプレートDNAを1μl添加した。サーマルサイクラーはRAPDプログラムを使用した。3種類のプライマーで増幅した結果、ブレラ・シンギュラリス変異株は全て親株と同一パターンを示した。また、クリベロマイセス・ラクティスは完全に別パターンを示した(図11)。従って、得られたβ−ガラクトシダーゼ高産生株は親株由来であることが証明された。
【0074】
PCRプライマー
プライマーA: 5'−CCGCAGCCAA−3'
プライマーB: 5'−AACGCGCAAC−3'
プライマーC: 5'−GCGGAAATAG−3'
【0075】
実 施 例 11
SDS−PAGEによる発現タンパクの比較:
培地(2)で培養したβ−ガラクトシダーゼ高産生株を等張液に懸濁し(OD660=20、1.5ml)、Usukizyme(和光純薬製)処理を37℃で30分間行った。この高産生株を等張液で二度洗浄した後、−80℃で急速凍結を行った。凍結微生物に200μlのレムリバッファー(Laemmli Buffer)とグラスビーズ(Φ0.35〜0.50mm)を少量加え、5分間ボルテックスした後、湯浴で10分間ボイルした。遠心分離によって、グラスビーズと細胞残屑(cell debris)を沈殿させ、その上清をタンパク抽出液とした。次いでこの上清を5μlずつ12%のアクリルアミドゲルにアプライし、電気泳動をした。陽性対照としてβ−ガラクトシダーゼ高産生株の親株(ブレラ・シンギュラリス)、陰性対照にクリベロマイセス・ラクティスを用いた。β−ガラクトシダーゼ高産生株は、親株とほぼ同じタンパク発現パターンを示し、クリベロマイセス・ラクティスとは完全に異なった(図12)。このことから、得られたβ−ガラクトシダーゼ高産生株の生化学性状は親株とほぼ同じと考えられる。
【0076】
【発明の効果】
本発明のβ−ガラクトシダーゼ高産生微生物の作出方法により作出された微生物は、グルコース等によるカタボライトリプレッションを受けることなく、β−ガラクトシダーゼを高産生するものであり、糖転移活性を有するものも含まれる。
【0077】
従って本発明の微生物の産生するβ−ガラクトシダーゼを利用すれば、高品質なガラクトオリゴ糖を工業的に有利に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ブレラ・シンギュラリスに紫外線照射処理を施した際の致死曲線を示す図面である。
【図2】 ブレラ・シンギュラリスにEMS処理を施した際の致死曲線を示す図面である。
【図3】 ブレラ・シンギュラリスにNTG処理を施した際の致死曲線を示す図面である。
【図4】 全数分離によって得られたブレラ・シンギュラリス変異株の分布を示す図面である。
【図5】 2−デオキシグルコースによるポジティブセレクションによって得られたブレラ・シンギュラリス変異株の分布を示す図面である。
【図6】 β−ガラクトシダーゼを高産生するブレラ・シンギュラリス変異株の出現確率を示す図面である。
【図7】 ブレラ・シンギュラリス変異株の増殖特性を示す図面である。
【図8】 ブレラ・シンギュラリス変異株のグルコース消費を示す図面である。
【図9】 ブレラ・シンギュラリス変異株のβ−ガラクトシダーゼ生産を示す図面である。
【図10】 ブレラ・シンギュラリス変異株のβ−ガラクトシダーゼ比活性を示す図面である。
【図11】 ブレラ・シンギュラリス変異株の遺伝的多型解析を示す図面である。
【図12】 ブレラ・シンギュラリス変異株のタンパク質発現パターンを示す図面である。
以 上

Claims (9)

  1. 次の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするβ−ガラクトシダーゼ高産生変異スポロボロマイセス・シンギュラリスの作出方法。
    (a)β−ガラクトシダーゼを産生するスポロボロマイセス・シンギュラリスに変異処
    理を施す工程
    (b)変異処理が施されたスポロボロマイセス・シンギュラリスを、2−デオキシ−D
    −グルコースを1〜5g/lおよびラクトースを含有する培地中で培養する工程
    (c)上記工程(b)で培養されたスポロボロマイセス・シンギュラリスを、再度、
    ルコースを唯一の炭素源とする培地で培養し、当該スポロボロマイセス・シンギ
    ュラリス中からβ−ガラクトシダーゼを産生するスポロボロマイセス・シンギュ
    ラリスを選択する工程
  2. 工程(a)の変異処理が、1mlあたり300μg以上の濃度のニトロソグアニジンによる変異処理である請求項第1項記載の作出方法。
  3. 工程(c)のβ−ガラクトシダーゼを産生する微生物の選択を、当該微生物の産生するβ−ガラクトシダーゼとオルトニトロフェニル−β−ガラクトピラノシドとを反応させた後、波長420nmで吸光度を測定することにより行う請求項第1項または第2項記載の作出方法。
  4. 工程(a)で用いられるβ−ガラクトシダーゼを産生するスポロボロマイセス・シンギュラリスが、スポロボロマイセス・シンギュラリス(JCM5356)である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の作出方法。
  5. 請求項第1項ないし第項の何れかの項記載の作出方法により得られるβ−ガラクトシダーゼ活性が、微生物の湿重量1gあたり1U以上であるスポロボロマイセス・シンギュラリス
  6. 請求項第5項記載のスポロボロマイセス・シンギュラリスをグルコース培地で培養することを特徴とするβ−ガラクトシダーゼの製造方法。
  7. 請求項第5項記載のスポロボロマイセス・シンギュラリス由来のβ−ガラクトシダーゼとラクトースとを反応させることを特徴とするガラクトオリゴ糖の製造方法。
  8. β−ガラクトシダーゼ活性が微生物の湿重量1gあたり1U以上であるスポロボロマイセス・シンギュラリス
  9. スポロボロマイセス・シンギュラリス ISK−#4D4(FERM P−18818)、スポロボロマイセス・シンギュラリス ISK−#5A5(FERM P−18819)またはスポロボロマイセス・シンギュラリス ISK−##2B6(FERM P−18817)である請求項第8項記載のスポロボロマイセス・シンギュラリス
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