JP4070752B2 - 窒化アルミニウム質セラミックス基材の接合剤 - Google Patents

窒化アルミニウム質セラミックス基材の接合剤 Download PDF

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Description

本発明は、窒化アルミニウム質セラミックス基材の接合剤に関するものである。
エッチング装置、化学的気相成長装置等の半導体装置においては、いわゆるステンレスヒーターや、間接加熱方式のヒーターが一般的であった。しかし、これらの熱源を用いると、ハロゲン系腐食性ガスの作用によってパーティクルが発生することがあり、また熱効率が悪かった。こうした問題を解決するため、本出願人は、緻密質セラミックス基材の内部に、高融点金属からなるワイヤーを埋設したセラミックスヒーターを開示した(特許文献1)。このワイヤーは、円盤状基材の内部で螺旋状に巻回されており、かつこのワイヤーの両端に端子を接続する。こうしたセラミックスヒーターは、特に半導体製造用として優れた特性を有していることが判った。
セラミックスヒーターの基体を構成するセラミックスとしては、窒化珪素、窒化アルミニウム、サイアロン等の窒化物系セラミックスが好ましいと考えられている。また、セラミックスヒーター上にサセプターを設置し、このサセプターの上に半導体ウエハーを設置して、半導体ウエハーを加熱する場合がある。本出願人は、こうしたセラミックスヒーターやサセプターの基材として、窒化アルミニウムが好ましいことを開示した(特許文献2)。特に、半導体製造装置においては、エッチングガスやクリーニングガスとして、ClF等のハロゲン系腐食性ガスを多用するが、これらのハロゲン系腐食性ガスに対する耐蝕性の点で、窒化アルミニウムがきわめて高度の耐食性を有していることが確認されたからである。一方、セラミックスは加工が困難であるため、単純な形状のセラミックスを互いに接合して、複雑な形状の部品を得るための研究が継続されている。
しかし、一般にセラミックス同士の接合界面には、熱膨張率や機械的特性の異なる第三相が形成される。この第三相は、一般に、加熱冷却に伴う熱応力や、様々な機械的応力に対して破壊し易いという問題があった。特に、窒化アルミニウム質セラミックスは、窒化珪素セラミックス等と比較して、靭性が低いために、第三層の影響は深刻であった。
また、シリコンを主成分として含む化合物や、ガラスによって、窒化アルミニウム質セラミックスを接合した場合には、接合界面に残存する第三相が、NFやClF等のハロゲン系腐食性ガスのプラズマによって選択的に腐食される。こうした接合体は、半導体製造装置といった腐食環境下の使用に耐えないものとなっていた。
また、窒化アルミニウム焼結体からなる基材同士を直接接合する方法として、特許文献3においては、基材を1800℃〜1900℃に加熱し、拡散接合により一体化している。しかし、こうした拡散接合法によって窒化アルミニウム焼結体を接合するためには、非常な高温が必要であり、例えば1800〜1900℃は、もとの焼結体の焼結温度と同程度の高温である。このため、接合工程において基材が変質したり、変形したりし易い。また、約60MPa以下の低い強度の接合体しか得られていない。
特許文献4によれば、比較的強度の高い窒化アルミニウム焼結体の接合体が開示されている。しかし、この方法においても、やはりもとの基材である窒化アルミニウム焼結体の焼結温度と同程度の高温を必要とする。また、基材の接合面の粗度および平面度を0.2μm以下とするための超精密加工を必要とするが、このような加工は製造コストの上昇の原因となる。
特開平3−261131号公報 特開平5−101871号公報 特開平2−124778号公報 特開平8−13280号公報
本発明の課題は、窒化アルミニウム質セラミックスからなる基材同士を接合するのに際して、両者の接合界面に実質的に窒化アルミニウム質セラミックス相以外の第三相を介在させることなく、比較的に低い温度で強固に接合できるようにするための新しい接合剤を提供することである。
本発明は、窒化アルミニウム質セラミックスからなる複数の基材を接合するために使用する粉末状の接合剤であって、CaO:25〜45重量%、Y:5〜30重量%、残部Alの組成からなる融材粉末と窒化アルミニウム質セラミックス粉末とを含有しており、かつ窒化アルミニウム質セラミックス粉末の含有量が10重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする。
また、窒化アルミニウム質セラミックスからなる複数の基材を接合するために使用する粉末状の接合剤であって、 前記接合剤が融材粉末および窒化アルミニウム質セラミックス粉末を含有しており、前記融材粉末の組成がX−Y−Z系組成であり、前記接合剤における窒化アルミニウム質セラミックス粉末の含有量が10重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする接合剤に係るものである。(Xは、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれた一種以上の金属元素の化合物であり、Yは、希土類元素の化合物であり、Zは、アルミニウムの化合物であり、前記融材を構成する全金属元素のうち、Xを構成する前記金属元素の割合が25〜50mol%であり、Yを構成する希土類元素の割合が5〜30mol%であり、残部がアルミニウムである。)
本発明によれば、窒化アルミニウム質セラミックスからなる基材同士を、比較的に低い温度で強固に接合することが可能となる。
本発明の接合剤について、適宜図面を参照しつつ、更に詳細に説明する。
基材を構成する窒化アルミニウム質セラミックスの中には、種々の焼結助剤や着色剤などの添加剤を含有させ得る。図1(a)に模式的に示すように、基材の接合面1aと基材2の接合面2aとを対向させる。このとき、所定の接合剤3を接合面1aと2aとの間に介在させる。
この際、本発明者は、接合剤3中に、少なくとも窒化アルミニウム質セラミックスと融材とを含有させることを想到した。この融材は、基材1、2の焼結温度よりも低い温度で溶融する必要があり、特に基材1、2に対して、熱による劣化を生じさせないために、1500℃以下の融点を有しているものが好ましい。
本発明者は、基材1、2および接合剤3を、接合剤3中の融材の溶融温度以上で加熱してみた。これによって、図1(b)に示すように接合剤を溶融させる。溶融した接合剤20の一部は、基材1と2との表面を濡らして移動し、4のように膨張部分を作る。
ここで、融材の溶融の初期には、図2(a)に示すように、溶融物20が接合面1aと2aとの間にあるが、融材の融点以上の温度範囲で保持すると、溶融した接合剤20に接する基材1、2の界面近傍21が液状になってきた。例えば、Ca−Al−O共晶組成やY−Ca−Al−O共晶組成の酸化物からなる融材を使用した場合には、1415℃または1375℃付近で融材の溶融が始まり、次いで基材1、2の接合面がこの溶融物と接触し、液状化してくるものと考えられる。
しかも、接合剤中に、窒化アルミニウム質セラミックスを混在させておくことで、これが融材中に溶融してくるものと考えられる。
窒化アルミニウム質セラミックスは、いわゆる液相焼結と呼ばれる焼結プロセスを経過する。即ち、いったん窒化アルミニウム粒子が液状化した後に、冷却過程で固化するというプロセスを経過する。
ただし、基材1、2のような通常の基材を製造する際には、窒化アルミニウム質の粉末を混合し、通常は5重量%以下の焼結助剤を添加し、加熱する。この際には、窒化アルミニウム質粒子の表面近傍が溶融し、主として粒子の表面に沿って物質移動が生じ、隣接する粒子同士が、移動した溶融物によって接合する。この結果、無数の粒子が互いに強固に結合され、セラミックスの骨格が生成していく。
これに対して、接合剤3を加熱して、基材1と2との間に溶融物相5を生成させた場合には、溶融した接合剤と基材1、2との界面付近で、窒化アルミニウム粒子が液状化し、この液相を介して融材の成分の基材中への拡散が起こり、その部分の組成が変化するものと考えられる。
しかし、本発明においては、これと共に、溶融物5の中では窒化アルミニウム質セラミックスの骨材粒子がほぼ溶融し、ほぼ消失しているものと考えられる。これは、溶融物5の内部では融材の量が多いからである。
なお、窒化アルミニウム粒子が液相に溶け出す場合には、基材1、2の接合面1a、2aにおける突起部分から、優先的に溶融接合剤中へと溶け出すので、接合界面が平坦化する。この後、次の加熱工程を実施することなく冷却すると、接合剤の成分が窒化アルミニウム粒子の粒界において析出する。
融材の溶融工程(第一の工程)においては、加熱温度を融材の溶融温度以上とするが、後述する接合剤の排出が実質的に起こる温度以下とし、この段階では接合剤の排出を避けることが好ましい。
次いで、第一の工程におけるよりも温度を上昇させると、溶融した融材が実質的に基材の間から排出され、各基材が第三相を介在させることなく、連続するようになった。
しかも、融材中にほぼ溶融していた窒化アルミニウムが、冷却過程で再析出し、析出相が生成することが判明した。そして、基材1と基材2とは、この融材中から再析出した窒化アルミニウム質セラミックスの析出相を介して、窒化アルミニウム質相以外の第三相を介在させることなく、直接に強固に接合されていることを発見し、本発明を完成した。
この機構は、窒化アルミニウムが液相から固化し、窒化アルミニウム粒子が析出するときに、この粒子中からイットリウム等の焼結助剤が排出され、更には焼結体の内部から外部へと向かって排出されていく機構と類似している。ただし、このプロセスは、前記したように、窒化アルミニウム粒子の表面近傍で起こるものである。
本発明は、基材を構成する窒化アルミニウム質セラミックスの種類を問うことなく、いずれの場合にも高い接合強度が得られる。しかも、融材の溶融の過程において、窒化アルミニウム粒子の相互の拡散が容易になるため、固相接合より低い温度で接合が可能になった。
本発明は、95%以上の相対密度を有する窒化アルミニウム質セラミックスに対して特に好適である。また、基材の少なくとも一方が、ホットプレス焼結またはホットアイソスタティックプレス焼結法による焼成品である場合にも、好適である。
融材を溶融させる第一の工程、融材を排出させる第二の工程において、各温度範囲T1、T2内では、それぞれ一定温度に保持することが好ましいが、各温度範囲T1、T2内で、それぞれ温度上昇、温度降下を行っても良い。
また、第一の工程における温度範囲は、接合剤を確実に溶融させるためには1400℃以上とすることが好ましく、接合剤との界面における窒化アルミニウム粒子の液状化を促進するためには、1450℃以上とすることが一層好ましい。また、第一の工程において接合剤の排出が進行すると、接合剤の基材中への拡散ないし浸出が起こりにくくなるため、接合剤の排出を抑制するために、1650℃以下とすることが好ましい。
第二の工程における温度範囲は、接合剤の排出を促進するために、1650℃以上とすることが好ましい。また、窒化アルミニウム質の基材の変形、変質等を防止するために、1800℃以下とすることが好ましい。
第一の工程における加熱時間、第二の工程における加熱時間は、それぞれ、30分間以上、10時間以下とすることが好ましいが、適宜選択できる。
第一の工程、第二の工程における雰囲気は、非酸化性雰囲気であれば、N等の不活性ガス雰囲気でもよく、真空でも良い。ただし、第二の工程においては、真空中では、若干ではあるものの窒化アルミニウムの分解が認められたため、窒素雰囲気が特に好ましい。
接合時には、図2(b)に矢印Aで示すように加圧することが、接合強度を一層向上させる上で好ましい。加圧の効果は、実質的には5kg/cmの圧力で現れる。上限は500kg/cmであり、これを越える圧力を加えると、基材に変形やクラックが発生し易くなる。また、低温で加圧すると、基材が割れる場合がある。従って、融材が融解する温度以上で圧力を加えることが好ましい。
融材の組成は限定されないが、イットリウムを含有する系が好ましく、この場合に、融材の排出効果が特に顕著であった。この観点からは、Y−Ca−Al−O共晶組成が特に好ましく、CaO:25〜45重量%(更に好ましくは25〜40重量%)、Y:5〜30重量%(更に好ましくは15〜30重量%)および残部Alの系が特に好ましい。この中でも、37CaO−19Y−44Al共晶組成(融点1375℃)、28CaO−26Y−46Al共晶組成(融点1395℃)、43CaO−5Y−52Al組成(融点1500℃)が特に好ましい。
融材としては、他の組成系の酸化物も好適に使用できる。しかし、窒化アルミニウム質セラミックスにおいては、1650℃を越える温度では、融材の排出が進行し、融材の窒化アルミニウム中への浸出が生じにくいため、融材の融点が1650℃以下であることが好ましく、1600℃以下であることが一層好ましい。なお、上記において、接合剤の融点とは、液相が生成し始める温度を指す。
また、接合剤中には、少なくとも窒化アルミニウム質セラミックスを含有させる。この際、窒化アルミニウム質セラミックスの含有比率は、接合剤の全体を100重量%としたときに、10重量%以上とすることが好ましく、これによって窒化アルミニウム質の再析出が生じやすくなる。この観点からは40重量%以上とすることが一層好ましい。
また、90重量%以下とすることが好ましく、これによって窒化アルミニウム質セラミックスの溶融が進行し易い。ただし、窒化アルミニウム質セラミックスが接合剤の90重量%も占めている場合には、この全体は溶融しないと考えられるが、その場合でも窒化アルミニウム質セラミックス粒子の溶融が進行し、最終的に接合剤において窒化アルミニウム質セラミックス粒子の再析出が見られる。
ただし、窒化アルミニウム質セラミックスの溶融を一層進行させ、再析出する粒子の粒径を小さくかつ均一にして、接合部分の強度を向上させるためには、接合剤中の窒化アルミニウム質セラミックスの比率を80重量%以下とすることが好ましい。
融材は、化合物の形でも良く、各成分の混合物でも良い。また、接合剤の形態も限定されない。例えば、融材の粉末と窒化アルミニウム質セラミックスの粉末との混合粉末とすることが好ましいが、融材の粉末と窒化アルミニウム質セラミックスの粉末との仮焼粉末とすることもできる。

特には前述のX−Y−Z組成系の融材が好ましい。ここで、希土類元素は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの十七元素を言う。この中で、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、イッテルビウムが、融材の排出効果が特に高く、イットリウムおよびイッテルビウムが一層好ましく、イットリウムが最も好ましい。
Xを構成する金属元素としては、リチウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが特に好ましい。
X、Y、Zの各化合物としては、具体的には酸化物またはフッ化物が好ましい。酸化物またはフッ化物以外の化合物も使用できるが、この場合には、融材が溶融した時に酸化物またはフッ化物を生成するような化合物が好ましい。こうした化合物としては、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などがある。
上記において、融材の好適な組成を列挙したが、融材は次のものを含む。
(1)X化合物、Y化合物およびZ化合物からなる混合物。この場合には、X化合物、Y化合物およびZ化合物として、それぞれ、前記した酸化物、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などを使用できる。
(2)X、Y、Zのすべての成分を含有する化合物。例えば、Xを構成する金属の酸化物と、Yを構成する金属の酸化物と、Zを構成する金属の酸化物とを混合して混合物を得、この混合物を仮焼または焼成することによって、複合酸化物またはガラスを得ることができる。この複合酸化物またはガラスを融材として使用できる。
また、融材のうち、X成分とY成分との少なくとも一方が、1650℃〜1800℃における蒸気圧が0.001〜1000Paである酸化物またはフッ化物を含んでいることが好ましい。こうした酸化物またはフッ化物としては、具体的には、LiO、MgO、CaO、SrO、BaO、SrFがある。
本発明においては、基材の接合界面に、窒化アルミニウム質セラミックスの粒子の再析出相が生成する。これは、いったん融材の溶融物中に融解した窒化アルミニウムの析出によって形成されたものである。通常、基材の接合界面における窒化アルミニウム粒子の平均粒径は小さく、3.0μm以下であり、こうした液相からの細かい析出粒子が、基材の接合界面に沿って層状をなして存在している。窒化アルミニウムの全部またはかなりの部分が融材中にいったん融解し、再析出しているので、基材などに比べて未だ窒化アルミニウム粒子の成長が進行していないことによって、細かい粒子が生成するものと考えられる。
このような微構造によって、基材の接合界面付近の接合強度と気密性とは極めて向上し、基材の接合界面の強度が他の部分の強度よりも高くなるという顕著な特徴がある。また、この接合界面には、融材の残留はほとんど見られず、顕著な第三相は確認されていない。
図3は、半導体製造装置用のサセプターの保持構造を示す断面図であり、図4は図3のIV−IV線断面図である。サセプター6は、例えば円盤形状をしており、この表面6bに半導体ウエハーを設置できるようになっている。サセプター6の裏面6aに、例えば略円筒形状の保持具8の端面8aを接合する。サセプター6、保持具8は、いずれも窒化アルミニウム質セラミックスであり、両者を本発明に従って接合する。7は、リフトピンを挿通するための貫通孔である。好ましくは、保持具8の端面8a付近にフランジ部8bを形成し、本発明に従って接合を行う際に、フランジ部8bの表面8cに対して矢印Bのように圧力を加えることができる。
サセプター6の機能や構造は特に限定されず、例えば、基材中に抵抗発熱体を埋設したセラミックスヒーター、基材中に静電チャック用電極を埋設したセラミック静電チャック、基材中に抵抗発熱体と静電チャック用電極を埋設した静電チャック付きヒーター、基材中にプラズマ発生用電極を埋設した高周波発生用電極装置などを例示できる。
例えば、図3、図4に示す装置においては、サセプター6の中に抵抗発熱体(図示しない)が埋設されており、抵抗発熱体の端子12に対してケーブル10が接続されている。また、サセプター6の中に、プラズマ発生用電極または静電チャック電極として機能する平板形状の電極(図示しない)が埋設されており、この電極の端子13に対してケーブル11が接続されている。これらのケーブル10、11、端子12、13は、いずれも保持具8の内部空間9内に収容されており、半導体製造装置のチャンバー中の腐食性ガスまたはそのプラズマに対して直接接触しない。
更に、本発明は、半導体ウエハーを設置するためのサセプター、ダミーウエハー、シャドーリング、高周波プラズマを発生させるためのチューブ、高周波プラズマを発生させるためのドーム、高周波透過窓、赤外線透過窓、半導体ウエハーを支持するためのリフトピン、シャワー板等を、他の部材に接合するために使用できる。
以下、更に具体的な実験結果について述べる。
(実験1)
表1、表2に示す各実験を行って接合体を作製し、得られた接合体について、各種特性を評価した。
ただし、接合した基材1である「95%AlN」とは、5重量%のY粉末と95重量%の窒化アルミニウム粉末との混合粉末を焼結して得た焼結体である。基材2である「99.9%AlN」とは、添加剤を含まない窒化アルミニウム粉末を焼結して得た焼結体である。各基材の寸法は、20mm×20mm×10mmである。
一方、「接合剤」として、表1に示す各組成の酸化物の粉末と、AlN骨材の粉末とを準備し、混合して得た混合粉末を使用した。ここで、各粉末の履歴は、以下の通りである。
(37CaO−19Y−44Al
試薬特級のCaO、Y、Alを重量%で37CaO−19Y−44Alとなるように混合し、大気中で1600℃で溶解した後、水中に投下し、次いで、32ミクロンの篩を通るまでボールミルにて粉砕した。
(28CaO−26Y−46Al、43CaO−5Y−52Al
試薬特級のCaO、Y、Alを、重量%で各組成比率となるように混合し、乳鉢にて−32ミクロンの篩を通るまで粉砕した。
(AlN骨材)
純度99.9%の窒化アルミニウム粉末をペレット状に成形し、窒素中、1900℃で相対密度が98%以上になるまで焼結した。この焼結体を解砕し、32ミクロンの篩を通るまでボールミルにて粉砕した。
表1、表2には、酸化物粉末とAlN骨材との混合粉末の混合比率を、「重量%」の単位で表示した。
各基材の接合面を、表面粗さRaが0.2μm〜2μmとなるように、研削加工した。表1、表2に示す各組成の接合剤(混合粉末)を、各基材の接合面に、2〜200mg/cmの割合で塗布した。
各実験における接合条件は、表1、表2に示すとおりである。加圧に際しては油圧プレスを用いた。加熱の間中、接合面と垂直な方向に一軸加圧し、表1、2に示す所定の圧力を加え続けた。昇降温速度は、2000℃/時間〜30℃/時間の範囲内とした。融材の溶融時の温度T1と融材の排出時の温度T2とを、表1、2に示すように変更した。また、熱処理時の雰囲気とその圧力も表1、2に示す。
こうして得られた各実験番号の接合体(抗折棒)について、「JISR1601K 抗折試験」に基づいて接合強度を評価した。ただし、室温で、接合体を、接合界面が中心となるように加工した。
また、前記において、基材の形状を変更した。即ち、実験番号1〜10の各条件に従って、直径φ50mm×厚さ15mmの円板形状の基材と、外径36mm、内径28mm、長さ10mmの円管形状の基材とを接合した。得られた接合体を、Heリーク試験に供した。この試験に用いた試験機の測定限界は、1.0×10−8torrリットル/秒であった。ただし、表1、2の「リーク量」中の数値の単位は「torrリットル/秒」であり、1.0E−8とは「1.0×10−8」であり、1.0E−6とは「1.0×10−6」である。
また、各抗折棒を、走査型電子顕微鏡による断面観察にも供し、接合界面の様子を確認した。接合界面相は、反射電子像及びEDS(Energy Dispersion Spectroscopy)により同定した。これらの結果を表1、2に示す。
Figure 0004070752
Figure 0004070752
実験番号1(比較例)では、基材の接合強度が極めて低く、リーク量も多い。実験番号2〜7、9、10では、接合強度が高く、リーク量が少なく、装置の測定限界未満であった。
実験番号8では、AlN骨材を入れていないが、非常に強固な接合が形成されていることがわかる。しかし、本発明例の方が、接合強度がさらに著しく向上していることも判る。
次に、リーク量を測定した各接合体について、それぞれ、大気中で、50℃と700℃との間の熱サイクル試験(100サイクル)を実施した。これによって、接合体が熱衝撃、熱サイクルに耐え得るものか否かを判断した。この結果、本発明の実施例については、いずれも剥離やリーク量の低下は認められなかった。
また、リーク量を測定した実験番号3、4、5、6の各接合体を、450℃のNFプラズマ中に24時間さらした。この後、前記のようにしてリーク量を測定したところ、リーク量の劣化は認められなかった。
ここで、実験番号5の接合体(抗折棒)の接合界面近傍のセラミックス組織の反射電子像写真を、図5に示す。写真の上側から順番に、95%AlN、接合界面、99.9%AlNが並んでいる。上側の95%AlN層においては、黒く見える窒化アルミニウム粒子の粒界に、イットリアを主成分とする粒界層が白く見えている。下側の99.9%AlN層では、ほとんどが黒色の窒化アルミニウム粒子からなっており、粒界層は見えない。
界面層の厚さは、約10μmであった。ただし、界面層とその周辺において、クラックや変質層はまったく認められず、またCa−Y−Al−O系の材料が豊富な層も認められず、上下の窒化アルミニウム層のセラミックス組織と連続していることが判る。
この界面層の組成を分析した結果、窒化アルミニウムと判定された。塗布した粉末の粒径は、いずれも最大32μmであったのに対して、界面層中にある窒化アルミニウム質粒子の粒径は約2ミクロンである。つまり、界面層中の窒化アルミニウム粒子は、再析出したものであることを示している。また、界面層には酸化物は認められず、純度の異なる上側と下側との各窒化アルミニウム質基材が、良好に接合していることが判る。
実験番号2、3、4、6、7の接合体においても、上記と同様の微構造を観察した。
実験番号1においては、析出層は認められなかった。また、実験番号8においては、酸化物が接合界面から完全に排出されており、99.9%窒化アルミニウム側の結晶相と95%窒化アルミニウム側の結晶相とが隙間なく連続していることが判明した。
(実験2)
実験1と同様にして、表3、表4に示す各実験番号の条件に従って、各接合体を製造し、実験1と同様の試験に供した。ただし、実験2においては、95%AlNからなる基材同士を接合した。これらの結果を表3、4に示す。
Figure 0004070752
Figure 0004070752
実験番号11(比較例)では、基材の接合強度が極めて低く、リーク量も多い。実験番号12〜17、19、20では、接合強度が高く、リーク量が少なく、装置の測定限界未満であった。
実験番号18では、AlN骨材を入れていないが、非常に強固な接合が形成されていることがわかる。しかし、本発明例の方が、接合強度がさらに著しく向上していた。
次に、リーク量を測定した各接合体について、それぞれ、大気中で、50℃と700℃との間の熱サイクル試験(100サイクル)を実施した。この結果、本発明の実施例では、剥離やリーク量の低下は認められなかった。
また、リーク量を測定した実験番号13〜16の各接合体を、450℃のNFプラズマ中に24時間さらした。この後、前記のようにしてリーク量を測定したところ、リーク量の劣化は認められなかった。
実験番号15の接合体の接合界面近傍のセラミックス組織を示す反射電子像写真を、図6に示す。写真の上側から順番に、95%AlN/界面相/95%AlNが並んでいる。95%AlN層においては、黒く見える窒化アルミニウム粒子の粒界に、イットリアを主成分とする粒界層が白く見えている。
界面層の厚さは、約5μmであった。この界面層の組成を分析した結果、窒化アルミニウムと判定された。塗布した粉末の粒径は最大32μmであったのに対して、界面層中にある窒化アルミニウム質粒子の粒径は約2ミクロンである。つまり、界面層中の窒化アルミニウム粒子は、再析出したものであることを示している。
実験番号12、13、14、16、17の接合体においても、上記と同様の微構造を観察した。
実験番号11においては、析出層は認められなかった。実験番号18においては、酸化物が接合界面から完全に排出されており、各基材の結晶相が隙間なく連続していることが判明した。
(実験3)
実験1と同様にして、表5、表6に示す各実験番号の条件に従って、各接合体を製造し、実験1と同様の試験に供した。これらの結果を表5、6に示す。
Figure 0004070752
Figure 0004070752
実験番号21〜24では、95%AlNと99.8%AlN(0.15重量%のイットリアを添加したもの)とを接合した。いずれも接合強度、リーク量共に良好であり、析出相はAlN相であった。この中でも、接合剤中のAlNの含有量を40〜60重量%とすることによって、最も接合強度が向上することがわかった。
実験番号25、26では、99.9%AlNと99.8%AlNとを接合したが、実験番号22、23と比較しても一層接合強度が高くなっていた。実験番号27、28においては、99.9%AlN同士を接合した。これらの結果から判るように、基材中のAlNの純度が高くなると、一層接合強度が向上する傾向があり、特に99%以上の純度のAlNにおいてこの作用が著しい。
実験番号29、30においては、95%AlNの基材同士を接合するために、YまたはCaCOをAlN粉末と混合した接合剤を使用した。しかし、基材は接合しなかった。これは、YやCaCOが、1550℃では溶融せず、融材として機能しなかったためと思われる。
次に、リーク量を測定した各接合体について、それぞれ、大気中で、50℃と700℃との間の熱サイクル試験(100サイクル)を実施した。この結果、本発明の実施例では、剥離やリーク量の低下は認められなかった。
また、リーク量を測定した実験番号21〜28の各接合体を、450℃のNFプラズマ中に24時間さらした。この後、前記のようにしてリーク量を測定したところ、リーク量の劣化は認められなかった。
実験番号23の接合体の接合界面近傍のセラミックス組織を示す反射電子像写真を、図7に示す。上側から順番に、95%AlN/界面相/99.8%AlNが並んでいる。界面相の厚さは、約4ミクロンであった。
この界面層の組成を分析した結果、窒化アルミニウムと判定された。塗布した粉末の粒径は最大32μmであったのに対して、界面層中にある窒化アルミニウム質粒子の粒径は約2ミクロンである。つまり、界面層中の窒化アルミニウム粒子は、再析出したものであることを示している。やはり界面に酸化物は認められない。
(実験4:保護管付きヒーターの試作)
図3、図4に示す接合体を試作した。具体的には、モリブデン製のコイル状のヒーターと、モリブデン製のメッシュ(高周波プラズマ電極)とが埋設されている窒化アルミニウム製の円板(サセプター)6を、窒化アルミニウム製のパイプ(保持具)8に対して接合することを試みた。保持具8の寸法は、外径60mm、内径52mm、長さ210mmであった。保持具8は、AlNの純度が95%である常圧焼結品である。
接合炉には、カーボン炉材を使用したホットプレス炉を用いた。加熱は、1.5atmの窒素雰囲気中で行った。サセプター6と保持具8とを接触させ、1000℃/時間〜100℃/時間の速度で昇温させ、1550℃で1時間保持し、引き続いて1700℃で2時間保持した。1700℃で2時間保持した後は、炉内で室温まで放冷させた。試料が1300℃以上に加熱されている間、接合面を油圧プレスにより圧力60kgf/cmで加圧し続けた。
接合体を炉から取り出した後、実験1と同様にしてリーク試験を行ったところ、リーク量は1.0×10−8リットル/秒未満であった。
次いで、サセプター中に埋設されているモリブデン製のコイルとモリブデン製のメッシュとに対して、電極リードを取り付けた。コイルを通電加熱して、約25℃/分の速度で30回の昇降温(熱サイクル)を繰り返したが、変形やクラックは認められなかった。また、この熱サイクル後に、再度ヘリウムのリーク試験を行ったが、リーク量は、1.0×10−8リットル/秒未満を維持していた。
(実験5)
実験1と同様にして、表7、表8に示す各実験番号の条件に従って、各接合体を製造し、実験1と同様の試験に供した。ただし、X、Y、Zの化合物の種類、各化合物の融材中における割合(mol%)、融材と窒化アルミニウム骨材との重量比率(重量部)を、表7、8に示すように変更した。これらの結果を表7、8に示す。
Figure 0004070752
Figure 0004070752
実験番号31〜39のいずれにおいても、接合強度、リーク量共に良好であり、析出相はAlN相であった。すなわち、(Li、Ba、Ca)−(Y、La)−Al系の金属元素の組み合わせにおいて、酸化物、フッ化物のいずれを利用しても良好な結果が得られた。
次に、実験番号31〜39の各接合体について、それぞれ、大気中で、50℃と700℃との間の熱サイクル試験(100サイクル)を実施した。この結果、いずれの実施例でも、剥離やリーク量の低下は認められなかった。
また、実験番号31〜39の各接合体を、450℃のNFプラズマ中に24時間さらした。この後、前記のようにしてリーク量を測定したところ、リーク量の劣化は認められなかった。
以上述べたように、本発明によれば、窒化アルミニウム質セラミックスからなる基材同士を接合するのに際して、両者の接合界面に実質的に窒化アルミニウム質セラミックス相以外の相を介在させることなく接合できるようにするための新しい方法を提供することができる。また、比較的に低い温度で強固に接合できる。
(a)は、基材1と2とを接合する前の状態を示す正面図であり、(b)は、基材1と2との界面付近で接合剤を溶融させた状態を示す正面図である。 (a)は、基材1と2との間で接合剤を溶融させた状態を示す断面図であり、(b)は、基材1、2の接合界面の近傍が溶融した状態を示す断面図である。 サセプター6と管状の保持具8とを接合することによって作成した、サセプターの保持構造を示す一部断面図である。 図3の保持構造を示す平面図である。 実験番号5の接合体の接合界面近傍のセラミックス組織の反射電子像写真である。 実験番号15の接合体の接合界面近傍のセラミックス組織を示す反射電子像写真である。 実験番号23の接合体の接合界面近傍のセラミックス組織を示す反射電子像写真である。
符号の説明
1、2 基材
1a、2a 基材の接合面
3 接合剤
6 サセプター
8 保持具
9 保持具8の内部空間
10、11 ケーブル
12 抵抗発熱体の端子
13 電極の端子
20 溶融した接合剤
21 液状になった基材の界面近傍

Claims (3)

  1. 窒化アルミニウム質セラミックスからなる複数の基材を接合するために使用する粉末状の接合剤であって、
    CaO:25〜45重量%、Y:5〜30重量%、残部Alの組成からなる融材粉末と窒化アルミニウム質セラミックス粉末とを含有しており、かつ窒化アルミニウム質セラミックス粉末の含有量が10重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする、接合剤。
  2. 窒化アルミニウム質セラミックスからなる複数の基材を接合するために使用する粉末状の接合剤であって、
    前記接合剤が融材粉末および窒化アルミニウム質セラミックス粉末を含有しており、前記融材粉末の組成がX−Y−Z系組成であり、前記接合剤における窒化アルミニウム質セラミックス粉末の含有量が10重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする接合剤。
    (Xは、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれた一種以上の金属元素の化合物であり、Yは、希土類元素の化合物であり、Zは、アルミニウムの化合物であり、前記融材を構成する全金属元素のうち、Xを構成する前記金属元素の割合が25〜50mol%であり、Yを構成する希土類元素の割合が5〜30mol%であり、残部がアルミニウムである。)
  3. 前記のXとYとの少なくとも一方が、1650℃〜1800℃における蒸気圧が0.001〜1000Paである酸化物またはフッ化物を含んでいることを特徴とする、請求項2記載の接合剤。
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