JP4068126B2 - 圧縮配向成形体 - Google Patents

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本発明は、結晶性の熱可塑性高分子材料からなる機械的強度が大きい圧縮配向成形体に関する。
従来から、合成樹脂繊維の分野では、延伸により分子を軸配向させて引張強度を向上させる技術が採用されている。また、合成樹脂フィルムの分野でも、一軸又は二軸延伸により分子を軸配向又は面配向させて、フィルム面内での一方向又は多方向の引張強度を向上させる技術が採用されている。
けれども、厚みが大きい板状ないしブロック状の合成樹脂成形体や、太い棒状ないし柱状の合成樹脂成形体においては、分子配向を利用して機械的強度を向上させる研究があまり行われていない。最近になってその必要性から、例えば生体内分解吸収性高分子材料の溶融成形物を加熱下に長軸方向に延伸して曲げ強度の大きい骨接合ピンを得る方法が提案されたが、これは希な例といえる。
しかしながら、上記の骨接合ピンのように長軸方向に延伸した棒状成形体は、分子が長軸方向[延伸軸である機械方向,MD;machine(drawn) direction]に平行に一軸配向(uniaxal orientation)しているので、この長軸方向に対して直角の方向である横方向(TD;transversal direction)との間の分子鎖(結晶)配向の異方性が大きい。そのため長軸方向の引張強度は顕著に向上するけれども、長軸方向からの引裂き力が低下し、横(斜)方向からの剪断力もまた著しく改善されることはなく、更には長軸を回転軸とする捻りの力(torque force)に比較的弱いという問題がある。
このような問題は、長軸方向に延伸した丸棒に限らず、多角形の断面をもつ柱状成形体あるいは板状成形体についても同様に言えることである。特に、延伸の度合を上げることによって高分子材料が球晶構造から繊維構造に移ってフィブリル化の度合が進むほど、その傾向が顕著になる。
また、高分子材料中に粉体フィラーが含有されていると、延伸の際に、延伸軸に沿った粉体フィラーの前部と後部に空隙部(ボイド)が生じ、成形体の密度が低下して稀薄体となるために強度が低くなるという問題もある。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、強度的に異方性が少なく、長軸方向に一軸延伸した厚みのある成形体よりも総体的に大きい強度を有し、それが粉体フィラーを含んだ複合体(paticule reinforced composites)であってもボイドが存在しない緻密な(dense)圧縮配向成形体を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明の圧縮配向成形体は、ビレット収容キャビティとその下方の有底の成形キャビティとの間に絞り部を設けた成形型であって、ビレット収容キャビティの横断面の面積が成形キャビティの横断面の面積よりも大きく、絞り部が下窄まりのテーパー面に形成された内周面又は下窄まりの傾斜面に形成された相対向する内面を備えた成形型を使用し、この成形型のビレット収容キャビティに、結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形したビレットを収容して、熱可塑性高分子材料のガラス転移点より高く溶融温度より低い結晶化温度でビレットを絞り部を通して成形キャビティに圧入充填し、成形キャビティの内面及び底面により背圧を与えて分子鎖又は結晶の配向状態と圧縮状態を維持したまま固定して得られる圧縮された高い強度をもつ成形体であって、分子鎖又は結晶が実質的に成形体の軸又は軸を含む面に向かって斜めに配向しており、分子鎖又は結晶が成形体の軸に向かって斜めに配向した成形体は軸に垂直な横断面において分子鎖又は結晶が放射状の配列形態となっており、分子鎖又は結晶が成形体の軸を含む面に向かって斜めに配向した成形体は、成形体の軸に垂直な横断面において分子鎖又は結晶が平行な配列形態となっていることを特徴とするものである。この成形体を構成する熱可塑性高分子材料は本質的に結晶性のポリマーであるから、上記のように分子鎖が配向することによって生じる結晶も同様に配向し、その形態もまた強度に関与する。本発明の圧縮配向成形体によれば、非晶領域においては分子鎖が部分的に配向し、また、結晶領域においては分子鎖(主鎖)を含む結晶が圧縮方向に配向するので、以下に分子鎖配向は結晶配向と同義語として用いるものとする。
本発明の圧縮配向成形体において、斜めに配向した分子鎖(結晶)が向かう軸は成形体の力学的な芯となる軸、つまり、成形時に加えられた外力の集中する点が材料進行方向に連続して構成される軸であり、この軸は成形体の中心又は中心をはずれた位置にある。そして、分子鎖(結晶)が向かう面は該軸を含む面であり、その両側で外力が均衡する境界面である。
本発明の圧縮配向成形体の主な態様としては、(1)分子鎖(結晶)が実質的に円柱状成形体の外周面から中心又は中心をはずれた位置にある軸に向かって斜めに配向し、円柱状成形体の横断面において放射状の配列形態となっているもの、(2)分子鎖(結晶)が実質的に角柱状成形体の各側面から中心又は中心をはずれた位置にある軸あるいは該軸を含む面に向かって斜めに配向し、角柱状成形体の横断面において放射状の配列形態となっているもの、(3)分子鎖(結晶)が実質的に板状成形体の両面から、中心又は中心をはずれた位置にある軸を含み且つ成形体両面と平行な面に向かって斜めに配向し、板状成形体の横断面において平行な配列形態となっているもの等を挙げることができる。また、本発明の圧縮配向成形体には、必要に応じて粉体フィラー(物性強化のための微細な短繊維を含む系であってもよい)が含有される。粉体フィラーとしては、成形体の用途に応じたものが使用され、例えば用途が生体材料である場合にはバイオセラミックスの粉体等が好適に使用される。
本発明の圧縮配向成形体のように、分子鎖(結晶)が実質的に成形体の力学的な芯となる軸又は該軸を含む面に向かって斜めに配向したものは、軸方向とこれに直角な横方向との間の分子鎖(結晶)配向の異方性が、長軸方向に延伸された所謂一軸延伸物に比べて少ない。そのため、曲げ強度や軸方向の引張強度だけでなく、軸方向からの引裂強度(耐縦割れ強度)、横(斜)方向からの剪断強度(耐横割れ強度)、軸を中心とする捻り強度など、種々の方向の力に対する強度が総体的に向上し、強度的に異方性の少ないものとなる。
特に、分子鎖(結晶)が中心の軸に向かって斜めに配向した円柱状又は角柱状の圧縮配向成形体は、横断面において分子鎖(結晶)が放射状の配列形態をとるので、捻り強度が顕著に向上する。そして、板状の圧縮配向成形体のなかでも、その中心をはずれた位置にある軸を含む面(成形体の両面と平行な面)に向かって分子鎖(結晶)が斜めに配向したものは、該面を挟んで両側の分子の配向角が異なるため機械的物性が両側で相違し、あたかも二枚の物性が異なる板をラミネートしたかのような板状成形体となるので、該面の偏りの位置を変化させることにより板状成形体の全体的な機械的物性を用途に応じて種々調整することができる。
また、本発明の成形体は圧縮されているので、従来の一軸延伸された非圧縮の成形体に比べると密度が高く、機械的強度が総じて大きく、表面硬度も大きい。そして、粉体フィラーを含有している成形体でも、延伸の場合のようにボイドを生じることがないので、ボイドによる強度低下を招くことはない。
上記のような本発明の圧縮配向成形体を製造する製造方法は、横断面の面積が大きいビレット収容キャビティと横断面の面積が小さい有底の成形キャビティとの間に、内周面が截頭円錐状のテーパー面とされた絞り部又は少なくとも両側内面が平面状の斜面とされた絞り部を有する成形型を使用し、この成形型のビレット収容キャビティに、結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形した本質的に非晶質であるビレットを収容して、熱可塑性高分子材料のガラス転移点よりも高く溶融温度よりも低い結晶化温度で、該ビレットを絞り部を通して有底の成形キャビティに所謂冷間にて圧入充填することを特徴とするものである。
この製造方法のように、結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形したビレットを、成形型のビレット収容キャビティから結晶化温度で絞り部を通して有底の成形キャビティに圧入充填すると、ビレットが絞り部を通過する際に絞り部のテーパー面又は斜面との摩擦抵抗によって大きな剪断力が生じ、これが分子を配向させる材料進行方向(MD:Mechanical Direction)及び横方向(TD:Transversal Direction)の外力として作用するため、分子鎖(結晶)がビレットのMD軸又は該軸を含む面に向かって斜めに配向しつつ圧縮される。そして、成形キャビティに充填された後も、成形キャビティの内面や底面により背圧を受けるので、成形体は上記の分子鎖(結晶)配向及び圧縮状態を維持したまま固定される。従って、得られる成形体は圧縮されて緻密質になり、分子鎖(結晶)が成形体の軸又は該軸を含む面に向かって斜めの角度をもった配向体の形状を維持することになる。その場合、分子鎖(結晶)の配向角[成形体の軸又は該軸を含む面に対する分子鎖(結晶)の配向角]は、絞り部のテーパー面又は斜面の傾斜角と、双方のキャビティの横断面の面積比に近似して本質的に定まる。この点については後で詳しく説明する。
また、上記のようにビレットを結晶化温度で圧入充填すると、圧入充填性が良好で、分子の配向が効果的に行われ、結晶化度も意のままに調整することができる。
上記の製造方法では、成形型の中心の軸に対する絞り部のテーパー面又は斜面の傾斜角を10〜60°に設定し、且つ、ビレット収容キャビティの横断面の面積を成形キャビティの横断面の面積の1.5〜6倍に設定することが望ましい。傾斜角が10°未満であると、ビレットとテーパー面又は傾斜面との摩擦抵抗による大きな剪断力が生じにくく、ビレットの外周部が滑べりやすくなるため、成形体内部まで分子鎖(結晶)の配向が効果的に達成できない。また、傾斜角が60°より大きくなると、ビレットの圧入に高圧力が必要となるため圧入充填作業が困難となり、あえて圧入しても、スティックスリップ(stick slip)現象による分子鎖配向の不均質化や充填不良によるクラック等が発生しやすくなるので、満足な圧縮配向成形体を得ることが容易でない。
一方、ビレット収容キャビティーの横断面の面積が成形キャビティーの横断面の面積の1.5倍より小さい場合は、得られる圧縮配向成形体の変形比R=So/S(但し、Soはビレットの断面積、Sは圧縮配向成形体の断面積)が実質的に1.5より小さくなるものであり、分子鎖(結晶)の配向性や材料の圧縮率が低いので、機械的強度を大幅に向上させることが難しくなる。逆に、6倍より大きくしても、樹脂の流れがそれに見合った程度に良くないので、ビレットの圧入充填が困難であり、また、分子鎖の配向が過度になってフィブリル化現象をおこし、フィブリル間で裂けやすい成形体となる。
特に、絞り部のテーパー面又は斜面の傾斜角を15〜45°に設定し、ビレット収容キャビティの横断面の面積を成形キャビティの横断面の面積の2〜3.5倍に設定すると、ビレットの圧入充填が効果的であり、分子鎖(結晶)の圧縮配向性及び配向角度、圧縮の程度が良好なものが得られ、MDとTDの異方性が少なく機械的強度が総体的に優れた圧縮配向成形体を得ることができる。
また、絞り部のテーパー面の傾斜角がテーパー面の全周に亘ってもしくは任意の部分で漸次変化した成形型を使用すると、成形体の中心を外れた位置にある軸に向かって分子鎖(結晶)が斜めに配向している円柱状の圧縮成形体が得られ、絞り部の少なくとも一つの斜面の傾斜角が他の斜面の傾斜角と異なっている成形型を使用すると、成形体の中心を外れた位置にある軸に向かって分子鎖(結晶)が斜めに配向している角柱状の圧縮配向成形体が得られる。特に、絞り部の相対向する斜面の一方の傾斜角が他方の傾斜角と異なる成形型を使用する場合は、前述した板状成形体のように両側で分子鎖(結晶)の配向角度及びそれに伴う機械的物性が異なる圧縮配向成形体を得ることができる。
更に、この製造方法では、粉体フィラーを配合した結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形したビレットを用いても、上記のように圧縮できるので、粉体フィラーの周囲に本質的にボイドのない圧縮配向成形体を得ることができる。
尚、従来の固体押出法のように、ダイスの絞り口からビレットを冷間で押出す方法の場合は、絞り口を通過する際にビレットが圧縮され分子鎖が配向するが、絞り口を出た時点で材料周囲からの圧力が解除されるので、バラス効果などの影響によって圧縮による拘束力が緩和する所謂戻り現象が生じ、押出成形物の圧縮率が低下し、分子配向が乱れる。従って、本発明の圧縮配向成形体と同様に配向した成形体は得られず、高い機械的強度を有する押出成形物を得ることはできない。
以上の説明から明らかなように、本発明の圧縮配向成形体は、分子鎖(結晶)が実質的に成形体の軸又は該軸を含む面に向かって斜めに配向しているので、軸方向とこれに直角な横方向との分子鎖(結晶)配向の異方性が少なく、そのため曲げ強度、引張強度、引裂強度、剪断強度、捻り強度など、種々の方向の力に対する機械的強度が全般的に顕著に向上し、緻密質で表面硬度も向上するといった優れた効果を奏する。
そして、本発明の圧縮配向成形体を製造する製造方法は、上記のように機械的強度に優れた圧縮配向成形体を容易に製造することができ、分子鎖(結晶)の配向角の調節やそれに基づく成形体の機械的物性の調節も簡単に行うことができるといった顕著な効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
図1は本発明の一実施形態に係る円柱状の圧縮配向成形体について、その縦断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図、図2は同円柱状の圧縮配向成形体について、その横断面おける分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。
この圧縮配向成形体1は、結晶性の熱可塑性高分子材料からなる圧縮された円柱状の成形体であって、図示のように分子鎖Mが実質的に成形体1の外周面から中心の軸Lに向かって斜め下方に配向したものであり、この分子鎖配向に伴って結晶も同様に配向したものである。換言すれば、この成形体1は、中心の軸Lの周りに放射状の配列形態をとる分子鎖(結晶)Mの多数の配向の基準軸が連結して略円錐状の面を構成し、この略円錐状の面が成形体中心の軸L方向に配向したものであり、かかる結晶はまた円柱体の長さの方向(TD)にも並んでいるものと見ることもできる。
このように分子鎖(結晶)が軸Lに対して斜め下方に配向した円柱状の圧縮配向成形体1は、緻密質で密度や表面硬度が高く、軸L方向とこれに直角な横方向との間の分子鎖(結晶)配向の異方性が少ないため、曲げ強度や引張強度だけでなく、引裂強度や剪断強度など、種々の方向の機械的強度が全般に向上し、しかも、横断面において分子鎖(結晶)Mが軸Lの周りに放射状の配列形態をとるため、捻り強度もまた向上する。
この圧縮配向成形体1の中心の軸Lに対する分子鎖(結晶)Mの配向角は、10〜60°程度に調節することが重要である。傾斜角が10°より小さくなると、中心の軸Lに平行な一軸配向に近い分子鎖(結晶)配向形態となり、軸L方向とこれに直角な横方向との分子鎖(結晶)配向の異方性が大きくなるので、種々の方向の機械的強度を全般に向上させることが難しくなる。また、分子鎖(結晶)Mの配向角が60°より大きい成形体は、後述するように圧入が困難であるために製造が容易でなく、クラック等が発生するので均一な成形体が得難い。特に、分子鎖(結晶)Mの配向角を10〜35°程度に調節した成形体1は、分子鎖(結晶)配向の異方性が小さく、種々の方向の機械的強度が全般に顕著に向上するので極めて好ましい。なお、分子鎖(結晶)Mの配向角は、後述するように成形型の絞り部のテーパー面の傾斜角と、ビレット収容キャビティと成形キャビティの横断面の面積比率を変えることによって容易に調整できる。
この圧縮配向成形体1の原料となる熱可塑性高分子材料は、結晶性で直鎖状のポリマーであれば全て使用可能であり、成形体の用途に応じて種々のものが選択使用される。例えば、その用途が骨接合用のピン、ロッド、スクリューなどである場合には、初期の粘度平均分子量が10万〜70万程度、好ましくは15万〜60万程度の生体内分解吸収性のポリ乳酸や各種のポリ乳酸共重合体(例えば乳酸−グリコール酸共重合体等)が好適に使用され、また、用途が工業用のスクリューなどである場合には、超高分子量ポリエチレンが好適に使用される。また、これ以外にも、結晶相とガラス相からなるポリエチレンテレフタレート(Tg:69℃、Tm:230℃)、ポリアミド(Tg:40〜50℃、Tm:225〜265℃)、結晶相とゴム相からなるポリプロピレン(Tg:−20℃、Tm:165℃)、ポリ4メチルペンテン−1(Tg:29℃、Tm:250℃)などが挙げられる。
圧縮配向加工が適用できる樹脂は、基本的に常温でのポリマーの相が結晶相とゴム相、結晶相とガラス相から成るものであり、その加工温度は通常の溶融成形の温度よりも低いガラス転移点(Tg)と融点(Tm)の中間の軟化温度(Ts)よりもやや低い温度を選択して行うことができる。常温にてかかる相をもつ樹脂は、本成形法にて成形された後に適度な分子間力によって各々の該相を形成して形状を保持することができる。但し、結晶相のみ、ガラス相のみからなるポリマーも、この方法を適用できないことはないが、成形体は剛(硬)いけれども粘弾性が不足するため変形に対して脆いので、容易に欠けたり、割れたりする欠点を有し、用途によって望ましくないことが多い。尚、圧縮配向成形体1に靭性をもたせるため、或は、製造時の塑性変形を容易にするために、非晶性の熱可塑性高分子材料を適量混合して使用してもよい。
また、この圧縮配向成形体1には、用途に応じて粉体フィラー(不図示)を均一に含有させてもよい。このように粉体フィラーを含有させても、成形体1は圧縮されているので粉体フィラーの周りに空隙部(ボイド)が存在せず、機械的強度の低下は生じない。粉体フィラーとしては、その粒子又は粒子の集合塊の大きさが0.1〜300μm程度であるものを使用することができるが、圧縮成形体を切削加工などの後加工により細部が薄い部分をもつような精緻な加工物(例えば骨接合用スクリュー)に仕上げ、これが高い機械的強度をもつことを要求する場合には0.1〜50μm程度の細かい粒子又はその集合塊を選択して用いる必要がある。しかし、細部をもたず、頗る高い強度を要求されない成形体の場合は、50〜300μm程度の粒子又はその集合塊を均一に分散して用いることができる。
粉体フィラーの含有量は10〜70wt%程度とすることが望ましい。10wt%未満では粉体フィラーを入れた効果が少なく、70wt%を越えると量が多すぎるので、得られる成形体は脆弱なものとなる。
粉体フィラーは圧縮配向成形体1の用途に適したものを選択して含有させればよく、例えば用途が骨接合材やその他のインプラント材料である場合には、骨との結合性を有するバイオセラミックスの粉体を含有させることが望ましい。また耐熱性の向上が要求される用途にはシリカ、ベントナイト、炭酸カルシウム等を、導電性が要求される用途にはカーボンブラック、ポリアニリン等を、熱伝導性が要求される用途にはアルミナ等を、耐摩耗性が要求される用途にはグラファイト等を、それぞれ含有させるのが良い。
上記の円柱状圧縮配向成形体1は、図7に示すような成形型2、即ち、大径円筒状のビレット収容キャビティ2aと、小径の有底円筒状の成形キャビティ2cとの間に、内周面が下窄まりのテーパー面に形成された絞り部2bを同軸的に設け、加圧用の雄型2dをビレット収容キャビティ2a(以下、収容キャビティという)に挿入するようにした成形型2を使用して、以下の要領で製造される。
まず、結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形して、収容キャビティ2aの内径と略同一の直径を有する円柱状のビレット10を造り、図7に示すように該ビレット10を収容キャビティ2aに収容する。ビレット10を造る方法としては溶融押出成形法が好ましく採用されるが、射出成形法や圧縮成形法などの他の成形法を採用してもよい。但し、これらの予備成形体はTm以下、Tg以上の温度で加工しやすくするために、基本的に非晶質体となるような条件で成形される必要がある。これらの方法は、生体内分解吸収性の熱可塑性高分子材料の場合は、分子量低下を抑えるために、その融点より少し高い温度条件と、押出可能な最小限の圧力条件を採用することが重要である。例えば、高分子材料として既述した10万〜70万程度の粘度平均分子量を有するポリ乳酸(PLLA)を溶融押出成形してビレットを造る場合には、融点以上で220℃以下、好ましくは200℃以下の温度条件と、260kg/cm以下、好ましくは170〜210kg/cm程度の圧力条件を採用するのがよい。また、粉体フィラーを含有する圧縮配向成形体を製造する場合は、粉体フィラーを均一に配合した熱可塑性高分子材料を同様に溶融成形して、予備成形体であるビレット10を造り、これを収容キャビティ2aに収容すればよい。
次いで、雄型2dを連続的又は断続的に加圧しながら収容キャビティ2aに圧挿することによって、ビレット10を熱可塑性高分子材料のガラス転移点より高く溶融温度より低い結晶化温度で図8に示すように絞り部2bを通して有底の成形キャビティ2cに連続的又は断続的に圧入充填する。このとき、成形キャビティ2c内部の空気は、成形キャビティ2cの底部に形成した微小孔(不図示)から自然に抜くようにする。
このように圧入充填すると、ビレット10が絞り部2bを通過する際に、絞り部2bのテーパー面との間に摩擦抵抗による大きな剪断力が生じ、これが分子鎖(結晶)を配向させるMD方向及びTD方向の外力として作用するため、分子鎖(結晶)が成形型2の中心の軸Lcに向かって斜め下方に配向しながら圧縮され、結晶化が進行する。そして、成形キャビティ2cに充填された後も、成形キャビティ2cの内面や底面により背圧を受け、上記の分子鎖(結晶)配向及び圧縮状態を維持したまま成形体1が固定される。従って、得られる円柱状の成形体1は圧縮されて緻密質になり、既述したように分子鎖(結晶)Mが外周面から成形体の中心の軸Lに向かって斜め下方に配向することになる。
その場合、分子鎖(結晶)の配向角(成形体の力学的な芯となる軸に対する分子鎖(結晶)の配向軸の角度)は、絞り部2bのテーパー面の傾斜角(成形型2の中心の軸に対する傾斜角)と、双方のキャビティ2a,2cの横断面の面積比によって近似的に定まる。即ち、図9に示すように、収容キャビティ2aの半径をR、成形キャビティ2cの半径をr、成形型の中心の軸Lcに対する絞り部2bのテーパー面の傾斜角をθ、双方のキャビティ2a,2bの横断面の面積比をA=R/rとし、ビレットの外周部の点Xがテーパー面に沿って軸Lc方向に距離dだけ圧入される間に中心の軸Lc上の点Yが圧入される距離をDとすると、分子鎖(結晶)は線分Lmの方向に配向すると考えられる。この線分Lmの方向に配向した分子鎖(結晶)の配向角(軸Lcに対する配向角)をθmとすると、tanθm=r/D−dとなり、D−d=A・dであるから、tanθm=r/A・d[式1]となる。d=(R−r)/tanθであるから、これを[式1]に代入すると、tanθm=rtanθ/A(R−r)[式2]となり、R=r・A0.5であるから、これを[式2]に代入すると、tanθm=tanθ/A(A0.5−1)[式3]となる。
即ち、分子鎖(結晶)は上記の[式3]が成立する配向角θmで軸に対して斜めに配向することになり、テーパー面の傾斜角θが大きくなるほど、分子鎖(結晶)の配向角θmは大きくなり、双方のキャビティの横断面の面積比Aが大きくなるほど、分子鎖(結晶)の配向角が小さくなる。従って、テーパー面の傾斜角θと面積比Aを変えることによって、分子鎖(結晶)を所望の配向角θmに調節することができる。
しかし、ビレット10の圧入充填作業のしやすさ、分子鎖(結晶)の配向性等を考慮すると、絞り部2bのテーパー面の傾斜角θを10〜60°に設定し、且つ、収容キャビティ2aの横断面の面積を成形キャビティー2cの横断面の面積の1.5〜6倍に設定して、得られる圧縮配向成形体1の変形比R=So/S(但し、Soはビレット10の断面積、Sは圧縮配向成形体1の断面積)を実質的に1.5〜6.0とすることが望ましい。テーパー面の傾斜角θが10°未満であると、ビレット10とテーパー面との摩擦抵抗による大きな剪断力が生じにくく、ビレット10の外周部が滑べりやすくなり、成形体1内部まで効率良く分子鎖(結晶)を配向させることが困難となる。逆に、傾斜角θが60°より大きくなると、ビレット10の圧入に高圧力が必要となるため圧入充填作業が困難となり、あえて圧入しても、スティックスリップ(stick slip)現象による分子鎖(結晶)配向の不均質化やクラック等が発生しやすくなるので、満足な圧縮配向成形体1を得ることが容易でない。また、収容キャビティー2aの横断面の面積が成形キャビティー2cの横断面の面積の1.5倍より小さい場合は、圧縮率が低いため分子鎖(結晶)の配向性が乏しくなり、機械的強度を大幅に向上させることが難しくなる。逆に、6倍より大きくすると、ビレット10の圧入充填が困難になり、しかも配向が過度になってフィブリル化するため、フィブリル間で裂けやすい成形体1となる。
特に、絞り部2bのテーパー面の傾斜角θを15〜45°に設定し、且つ、収容キャビティー2aの横断面の面積を成形キャビティー2cの横断面の面積の2〜3.5倍に設定する場合は、ビレット10の圧入充填性、分子鎖(結晶)の配向性及び配向角、圧縮性等が良好となり、異方性が少なく機械的強度に優れた圧縮配向成形体1を容易に得ることができるので極めて好ましい。
ビレット1の圧入充填は、熱可塑性高分子材料の種類によってはガラス転移点(Tg)より低い室温(Tgが室温よりも高いポリマーの場合)で行うこともできるが、圧入充填性の容易さ、分子鎖(結晶)の配向の効果、および結晶化度の調整等を図るためには、収容キャビティ2a内でビレット1をガラス転移温度(Tg)から溶融温度(Tm)までの間の結晶化温度(Tc)を選んで加熱して、キャビティ2b内へ圧入充填することが肝要である。従って、熱可塑性高分子材料がポリ乳酸あるいは乳酸とグリコール酸の共重合体のような結晶性ポリマーである場合には、効果的な結晶化温度域である80〜110℃範囲の任意の温度を選んで圧入充填するのが適当である。
また、この場合のビレット1を圧入充填するための圧力はポリマーによって異なるが、通常は4000kgf/cm以下、好ましくは2000kgf/cm以下である。4000kgf/cmを超えて過激に圧入すると、剪断力とそれによる発熱によって分子量が大幅に低下すること、結晶化が充分に行われず、その配向相も安定な系を形成しないことなどから、かえって高強度の圧縮配向成形体1が得難くなる。
圧入速度は、成形型の内面に滑りを良くする特殊な表面処理を施さない場合は8〜80mm/minが適当である。これより遅い速度で圧入すると、ビレット10の未だ成形キャビティ2cに圧入されていない部分までが結晶化の進行によって硬化し、圧入が困難となる。一方、上記より速い速度で圧入充填すると、スティックスリップが生じ、不均質な成形体1が得られるので良くない。
得られる圧縮配向成形体1の結晶化度は、該成形体1の変形比R、圧入時の温度、圧力、時間(圧入速度)等によって変化し、一般に変形比Rが大きく、温度が高く、圧力が大きく、時間が長くなるほど、結晶化度は高くなる。ポリ乳酸およびその共重合体の場合の圧縮配向成形体1の結晶化度は30〜60%の範囲にあることが望ましく、このような結晶化度の圧縮配向成形体1は、高分子の結晶相と非晶相の比率のバランスが良好で、結晶相による強度及び硬度の向上と、非晶相による柔軟性とがよく調和されるため、結晶相のみの場合のような脆さがなく、非晶相のみの場合のような強度のない弱い性質も現れない。そのため、靭性があり、総合的に強度が充分高い成形体となる。結晶化度が30%未満では、一般に結晶による強度の向上が期待できない。一方、結晶化度が高くなればそれに応じて強度は向上するが、60%より高くなると却って靭性の欠如により衝撃等を受けたときに容易に破壊するという脆い性質が著しく発現する。また、生体内での分解が遅くなり、これはインプラントの分解特性としては好ましいものではない。このような理由から、ポリ乳酸およびその共重合体のような生体内分解吸収性の熱可塑性ポリマーの場合は、圧縮配向成形体1の変形比Rや圧入時の温度、圧力、時間などを前記の範囲内でコントロールしたり、圧入充填後に結晶化温度で短時間熱処理することによって、圧縮配向成形体1の結晶化度を30〜60%に調節することが望ましいのである。そして、それらの圧縮配向成形体1のより望ましい結晶化度の範囲は40〜50%である。
上述のようにして成形された円柱状の圧縮配向成形体1は、冷却後に成形型2から取出され、圧縮配向されていない余白材料部分1aが切除される。そして、無加工のまま、或はスクリュー、釘、円筒状物などの所望の形状に切削加工されて、種々の用途に使用される。
図3は本発明の他の実施形態に係る板状の圧縮配向成形体について、その縦断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図、図4は同板状の圧縮配向成形体について、その横断面おける分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。
この板状の圧縮配向成形体1は、図示のように、結晶性の熱可塑性高分子材料の分子鎖(結晶)Mが成形体1の両面から中心の軸を含む面Pに向かって斜め下方に配向し、横断面において平行な配列形態をとるものである。この面Pは板状成形体1の両面と平行で板状成形体1を厚み方向に二等分する位置にあり、面Pの両側の分子Mの配向角は互いに等しくなっている。かかる板状圧縮配向成形体1も、面P方向とこれに直角の横方向との分子配向の異方性が小さく、且つ、圧縮により緻密質になっているため、種々の方向の機械的強度が全般的に優れている。尚、この板状成形体1には粉体フィラーを含有させても勿論よい。
このような板状の圧縮配向成形体1は、横断面の面積が大きい広幅の長方形の収容キャビティ2aと、横断面の面積が小さな狭幅の長方形の成形キャビティ2cとの間に、両側内面(相対向する両長辺側の内面)が等しい傾斜角の斜面とされた絞り部2bを有する成形型2を使用し、結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形した厚肉板状のビレット10を収容キャビティ2aに収容して、雄型2dによりビレット10を結晶化温度で絞り部2bを通して成形キャビティ2cに連続的又は断続的に圧入充填すると製造することができる。このように圧縮配向された成形体1は、絞り部2bの両側の斜面によって材料が内側斜め下方に向かう力を受け、その両側からの力が均衡する部分が成形体両面と平行な上記の面Pとなる。
以上の実施形態は、円柱状と板状の圧縮配向成形体を製造する場合についてのものであるが、角柱状の圧縮配向成形体を製造する場合は、横断面の面積が大きい角筒状の収容キャビティ2aと、横断面の面積が小さい有底角筒状の成形キャビティ2cとの間に、側面が下窄まりの斜面に形成された絞り部2bを同軸的に設けた成形型2を使用して、角柱状のビレット10を収容キャビティ2aに収容し、同様に雄型2dを圧入することにより、ビレット10を結晶化温度で絞り部2bを通して成形キャビティ2cに連続的又は断続的に圧入充填すれば良い。このように圧入充填すると、分子鎖(結晶)が実質的に成形体の各側面から成形体の力学的な芯をなす中心の軸あるいは該軸を含む面に向かって斜めに配向し、横断面において放射状の配列形態をとる角柱状の圧縮配向成形体が得られる。尚、角柱状成形体は四角柱状のものに限らず、三角柱状のものや五角以上の多角柱状のものとしてもよいことは言うまでもない。
図5は本発明の更に他の実施形態に係る板状の圧縮配向成形体について、その縦断面における分子の配向状態を示す概念図、図6は同板状の圧縮配向成形体について、その横断面おける分子の配向状態を示す概念図である。
この板状の圧縮配向成形体1は、図示のように、結晶性の熱可塑性高分子材料の分子鎖(結晶)Mが成形体1の両面から、中心より片面側へ偏位した面Pに向かって斜め下方に配向し、横断面において平行な配列形態をとるものである。この面Pは、成形体1の中心をはずれた位置にある軸を含み且つ板状成形体1の両面と平行な面であり、この面Pの両側の分子鎖(結晶)Mの配向角は互いに異なっている。
かかる板状の圧縮配向成形体1は、面P方向とこれに直角の横方向との分子鎖(結晶)配向の異方性が小さく、且つ、圧縮により緻密質になっているため、種々の方向の機械的強度が全般的に優れていることは勿論であるが、更に、面Pを挟んで両側の分子鎖(結晶)Mの配向角が異なるため機械的物性が両側で相違し、あたかも二枚の物性が異なる板をラミネートしたかのような板状成形体となるので、面Pの偏りの位置を変化させることにより板状成形体1の全体的な機械的物性を用途に応じて種々調整することが可能である。尚、この板状成形体1には粉体フィラーを含有させても勿論よい。
このような板状の圧縮配向成形体1は、横断面の面積が大きい長方形の収容キャビティ2aと、横断面の面積が小さな狭幅の長方形の成形キャビティ2cとの間に、両側内面(相対向する両長辺側の内面)が互いに異なる傾斜角の斜面とされた絞り部2bを有する成形型2を使用し、前記の板状圧縮配向成形体の場合と同様に、厚肉板状のビレット10を結晶化温度で絞り部2bを通して成形キャビティ2cへ圧入充填することにより製造することができる。そして、絞り部2bの両側の斜面の傾斜角を変えることにより、面Pの偏りの位置と分子鎖(結晶)Mの配向角を任意に調節することができる。
同様に、成形型として、図7及び図8に示す成形型2の絞り部2bのテーパー面の傾斜角がテーパー面の全周に亘ってもしくは任意の部分で漸次変化した成形型を使用して円柱状の圧縮配向成形体を製造すると、成形体の中心を外れた位置にある軸に向かって分子鎖(結晶)が斜め下方に配向し、その配向角が成形体全周に亘って又は部分的に漸次変化した円柱状成形体が得られる。そして、成形型として絞り部の少なくとも一つの斜面の傾斜角が他の斜面の傾斜角と異なる成形型を使用して角柱状の圧縮配向成形体を製造すると、分子鎖(結晶)が成形体の各側面から、中心を外れた位置にある軸又は該軸を含む面(横断面が横長の多角形である角柱状成形体の場合)に向かって斜めに配向し、その配向角が絞り部の各斜面の傾斜角に応じて異なる角柱状の圧縮配向成形体が得られる。
以下、本発明の更に具体的な実施例を説明する。
粘度平均分子量が40万のポリL乳酸を押出機にて190℃で溶融押出し、直径が13mm、長さが50mm、粘度平均分子量が30万の円柱状のビレットを得た。
このビレットを成形型の13mmの直径を有する円筒状の収容キャビティに入れて110℃に加熱し、テーパー面の傾斜角が45°の絞り部を通して、直径が8.5mm、長さが92mmの円筒状の成形キャビティに圧入充填することにより、成形キャビティと同様のサイズを有する円柱状の圧縮配向成形体(変形比R=2.3)を得た。
そして、この圧縮配向成形体を切削加工することにより、直径が3.2mm、長さが40mmの骨接合ピンを製造し、その曲げ強度、密度、結晶化度、破壊トルク値を測定した。その結果を下記の表1に示す。尚、曲げ強度は三点曲げ試験法[JIS K 7203(1982)]によって測定し、密度は成形体の大きさと重量から算出し、結晶化度は示差走査型熱量計(DSC)による分析結果から算出し、破壊トルク値はトルク試験機(ネジテスター、シンポ工業株式会社製)で測定したものである。
また、比較のために、長軸方向に延伸加工した延伸倍率が2.3倍のポリL乳酸の同形状の骨接合ピンについて同様の物性を測定し、その結果を表1に併記した。
Figure 0004068126
表1に示すように、本発明の圧縮配向された骨接合ピンは、延伸による骨接合ピンと比較して曲げ強度が高く、密度も大きい緻密なものであった。また、破壊トルク値についても、本発明の骨接合ピンの方が延伸による骨接合ピンより大きく、このことから本発明の骨接合ピンは捻り強度が向上していることが明らかとなった。
分子の配向状態を調べるために、図10に示すように、実施例1で溶融成形した円柱状ビレット10にその中心軸と直交する貫通孔を穿孔し、着色した同ポリ乳酸の細い線材11を該貫通孔に挿入した。そして、このビレット10を成形型の収容キャビティ内にて110℃で加熱し、テーパー面の傾斜角が45°の絞り部を通して、直径が7.8mm、長さが95mmの円筒状の成形キャビティに圧入充填することにより、成形キャビティと同様のサイズを有する円柱状の圧縮配向成形体(変形比R=2.8)を得た。
得られた圧縮配向成形体1は、図11に示すように線材11が略V字状に屈曲し、線の巾が軸L方向に拡大されていた。これにより、分子鎖(結晶)が成形体の外周面側から中心の軸Lに向かって斜めに配向していることが裏付けられた。
次に、この圧縮配向成形体1の分子の配向角を、前記の[式3]を用いて、面積比A=2.8、テーパー面の傾斜角θ=45°として算出し、実際に得られた圧縮配向成形体1の線材11の傾斜角θの実測値と対比したところ、計算値は約28°、実測値は約30°であり、両者はほぼ一致していた。
粘度平均分子量が40万のポリL乳酸を押出機にて190℃で溶融押出しすることにより、巾10mm、厚み4mm、長さ50mmのプレート状のビレットを得た。
このビレットを成形型の幅10mm、厚み4mmの矩形筒状の収容キャビティに入れて110℃に加熱し、相対向する両側(両長辺側)斜面の一方の斜面の傾斜角が45°、他方の斜面の傾斜角が15°である絞り部を通して、幅10mm、厚み1.6mm、長さ110mmの矩形筒状の成形キャビティに圧入充填することにより、成形キャビティと同様のサイズを有するプレート状の圧縮配向成形体(変形比R=2.5)を得た。
そして、この圧縮配向成形体を長さ50mmに切断して、幅10mm、厚み1.6mmの骨接合プレートを製造し、その曲げ強度を、前記の傾斜角が15°の斜面より絞った面と、傾斜角が45°の斜面より絞った面に力を加えてそれぞれ測定した。その結果、傾斜角15°の斜面より絞った面に力を加えて測定した場合は234MPaの曲げ強度であったのに対して、傾斜角45°の斜面より絞った面に力を加えて測定した場合は248MPaであった。
このことは、斜面の傾斜角の違いによって、圧入充填時の摩擦により受ける剪断力が異なるため、プレート内部のポリマーの分子鎖配向が15°側と45°側で異なる配向となり、あたかも物性の異なる2種類のプレートがラミネートされたような構造を持っていると考えられる。つまり、45°側は圧入充填時に受ける剪断力、及び圧入圧力が大きいため、15°側と比較してより緻密になっていると思われる。このように両面の物性が異なるプレートは、ポリL乳酸のガラス転移温度以上の温度(例えば80℃の熱水)で曲線に変形して任意の生体の部位に合った形状をつくる際に、変形側を選択することでより精巧な加工を容易にするので効果的である。
次に、絞り部の斜面の傾斜角が二面とも45°である成形型を用いて同様の変形度、サイズを有する骨接合用プレートを製造し、その曲げ強度を測定した。その結果、曲げ強度は256MPaであり、上記のプレートの強度を上回った。従って、プレートの両面より均一に配向し、緻密質な圧縮配向成形体となっている。
粘度平均分子量が8.5万の高密度ポリエチレン(三菱油化(株)製)を押出機にて230℃で溶融押出し、横断面が一辺10mm角の正方形で長さが50mmの角柱状の低結晶化ビレットを得た。
次いで、このビレットを一辺が10mmの角筒状の収容キャビティに入れて95℃に加熱し、四方の斜面の傾斜角が15°の絞り部を通して、横断面が一辺5.8mm角の正方形で長さ120mmの角筒状の成形キャビティに圧入充填することにより、成形キャビティと同様のサイズを有する角柱状の圧縮配向成形体(変形比R=3.0)を得た。
そして、この圧縮配向成形体の引張り強度を測定した。但し、引張り試験方法はJIS K 7113(1981)に準じて行った。
また、上記ビレットを圧縮配向成形体と同様のサイズの角柱状に切削加工し、同様に引張り強度を測定した。
その結果、切削加工したビレットが19.6MPaであったのに対し、圧縮配向成形体は32.4MPaに向上していた。
粘度平均分子量40万のPLLAを実施例1と同様の方法と条件で押出して、粘度平均分子量が30万のビレットを得た。次いで、このビレットを成形型の直径13mmの円筒状の収容キャビティに入れ、テーパー面の傾斜角が45°の絞り部を通して、直径10.6mm、長さ60mmの円筒状の成形キャビティに実施例1と同様の条件で圧入充填し、変形比Rが1.5の円柱状の圧縮配向成形体を得た。この成形体から切削加工により直径3.2mm、長さ40mmのピンを作製し、実施例1と同様の物性試験(破壊トルク試験を除く)を行った。その結果、曲げ強度は168MPa、密度は1.250g/cm2、結晶化度は44.7%であり、変形比Rと同じ延伸倍率で一軸延伸した延伸物よりも曲げ強度や密度が向上していた。
実施例5で得たPLLAのビレットを、成形型の直径13.0mmの円筒状の収容キャビティに入れ、テーパー面の傾斜角が15°の絞り部を通して、直径5.3mm、長さ220mmの成形キャビティに実施例1と同様の条件で圧入充填し、変形比Rが6.0のPLLA圧縮配向成形体を得ることを試みた。しかし、圧入充填には10000kgf/cmの非常に高い圧力を必要とし、得られた成形体はクラックを有していた。
同様に変形比Rが5.5の場合の試作を行ったが、クラックは部分的に存在するのみであった。しかし、金型の表面を滑りやすくする処理を施すと良質の圧縮配向成形体が得られた。
平均粒径1.84μmのハイドロキシアパタイト(900℃焼成)が均一に30重量%分散された粘度平均分子量40万のポリL−乳酸を押出機にて185℃で溶融押出して、直径13.0mm、長さ40mm、粘度平均分子量が25万の円柱状のビレットを得た。
このビレットを成形型の13.0mmの直径を有する円筒状の収容キャビティに入れて107℃に加熱し、テーパー面の傾斜角が15°の絞り部を通して、直径が7.8mm、長さが90mmの円筒状の成形キャビティに圧入充填することにより、成形キャビティと同様のサイズを有する粉体フィラー入りの円柱状圧縮配向成形体(変形比R=2.8)を得た。この成形体について実施例1と同様にして曲げ強度、密度、結晶化度を測定したところ、曲げ強度は280MPa、密度は1.50g/cm3、結晶化度は42.5%であり、優れた曲げ強度を有していた。
本発明の一実施形態に係る円柱状の圧縮成形体において、その縦断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。 同実施形態の円柱状の圧縮成形体において、その横断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。 本発明の他の実施形態に係る板状の圧縮成形体において、その縦断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。 同実施形態の板状の圧縮成形体において、その横断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。 本発明の更に他の実施形態に係る板状の圧縮成形体において、その縦断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。 同実施形態の板状の圧縮成形体において、その横断面における分子鎖(結晶)の配向状態を示す概念図である。 本発明の製造方法の一実施形態において、ビレットを成形型の成形キャビティに圧入充填する前の状態を示す断面図である。 同実施形態において、ビレットを成形型の成形キャビティに圧入充填した後の状態を示す断面図である。 分子鎖(結晶)の配向角を求めるための説明図である。 分子鎖(結晶)の配向状態を調べるために製作した円柱状のビレットの断面図である。 同ビレットを用いて得られた円柱状の圧縮成形体の断面図である。
符号の説明
1 圧縮配向成形体
2 成形型
2a 収容キャビティ
2b 絞り部
2c 成形キャビティ
2d 雄型
10 ビレット
θm 分子鎖(結晶)の配向角
θ 絞り部のテーパー面又は斜面の傾斜角
L 成形体の軸(中心の軸)
Lc 成形型の中心の軸
M 分子鎖(結晶)
P 成形型の軸を含む面

Claims (1)

  1. ビレット収容キャビティとその下方の有底の成形キャビティとの間に絞り部を設けた成形型であって、ビレット収容キャビティの横断面の面積が成形キャビティの横断面の面積よりも大きく、絞り部が下窄まりのテーパー面に形成された内周面又は下窄まりの傾斜面に形成された相対向する内面を備えた成形型を使用し、この成形型のビレット収容キャビティに、結晶性の熱可塑性高分子材料を溶融成形したビレットを収容して、熱可塑性高分子材料のガラス転移点より高く溶融温度より低い結晶化温度でビレットを絞り部を通して成形キャビティに圧入充填し、成形キャビティの内面及び底面により背圧を与えて分子鎖又は結晶の配向状態と圧縮状態を維持したまま固定して得られる圧縮された成形体であって、
    分子鎖又は結晶が実質的に成形体の軸又は軸を含む面に向かって斜めに配向しており、分子鎖又は結晶が成形体の軸に向かって斜めに配向した成形体は軸に垂直な横断面において分子鎖又は結晶が放射状の配列形態となっており、分子鎖又は結晶が成形体の軸を含む面に向かって斜めに配向した成形体は、成形体の軸に垂直な横断面において分子鎖又は結晶が平行な配列形態となっていることを特徴とする圧縮配向成形体。
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