JP4064144B2 - グレートーンマスクの欠陥検査方法及び欠陥検査装置、並びにフォトマスクの欠陥検査方法及び欠陥検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グレートーンマスクや微細パターンを含むフォトマスクの欠陥検査方法及び欠陥検査装置等に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大型LCD用マスクの分野において、グレートーンマスクを用いてマスク枚数を削減する試みがなされている(月刊FPD Intelligence,1999年5月)。
ここで、グレートーンマスクは、図6(1)に示すように、透明基板上に、遮光部1と、透過部2と、グレートーン部3とを有する。グレートーン部3は、例えば、グレートーンマスクを使用する大型LCD用露光機の解像限界以下の遮光パターン3aを形成した領域であって、この領域を透過する光の透過量を低減しこの領域による照射量を低減してフォトレジストの膜厚を選択的に変えることを目的として形成される。3bはグレートーン部3における露光機の解像限界以下の微細透過部である。遮光部1と遮光パターン3aはともにクロムやクロム化合物等の同じ材料からなる同じ厚さの膜から通常形成されている。透過部2と微細透過部3bはともに、透明基板上において遮光膜等が形成されていない透明基板の部分である。
グレートーンマスクを使用する大型LCD用露光機の解像限界は、ステッパ方式の露光機で約3μm、ミラープロジェクション方式の露光機で約4μmである。このため、例えば、図6(1)でグレートーン部3における透過部3bのスペース幅を3μm未満、露光機の解像限界以下の遮光パターン3aのライン幅を3μm未満とする。上記大型LCD用露光機で露光した場合、グレートーン部3を通過した露光光は全体として露光量が足りなくなるため、このグレートーン部3を介して露光したポジ型フォトレジストは膜厚が薄くなるだけで基板上に残る。つまり、レジストは露光量の違いによって通常の遮光部1に対応する部分とグレートーン部3に対応する部分で現像液に対する溶解性に差ができるため、現像後のレジスト形状は、図6(2)に示すように、通常の遮光部1に対応する部分1’が例えば約1.3μm、グレートーン部3に対応する部分3’が例えば約0.3μm、透過部2に対応する部分はレジストのない部分2’となる。そして、レジストのない部分2’で被加工基板の第1のエッチングを行い、グレートーン部3に対応する薄い部分3’のレジストをアッシング等によって除去しこの部分で第2のエッチングを行うことによって、1枚のマスクで従来のマスク2枚分の工程を行い、マスク枚数を削減する。
【0003】
従来、遮光部及び透過部のみからなるマスクの検査方法としては、例えば、2つの光学系を用いてマスクパターン同士を比較する比較検査方法がある。以下、その方法について具体的に説明する。
図7(1)は、遮光部1に白欠陥11(ピンホール)、透過部2に黒欠陥12(スポット)が発生した状態を示し、矢印は比較検査装置の一方のレンズ(以下、上レンズという)の走査の様子を示す。
図7(2)は、上記レンズの走査線に沿って得られる透過率信号13を示す。透過率信号13は、例えば各レンズユニット内に配置されたCCDラインセンサによって検出する。透過率信号13のレベルは、遮光部1でB、透過部2でWであり、遮光部1の透過率を0%、透過部2の透過率を100%、にそれぞれ設定する。透過率信号13は、パターンのエッジ(遮光部と透過部との境界)で生じるパターンエッジライン信号(パターン形状信号)で基本的に構成され、欠陥が発生した場合は、遮光部1に発生した白欠陥信号11’、透過部2に発生した黒欠陥信号12’が現れる。
図7(3)は、図7(1)と同じパターンであって欠陥が発生していない場合に、他方のレンズ(以下、下レンズという)で得られる透過率信号13’を示す。
図7(4)は、各レンズで得られた透過率信号を引き算(差分)して求めた差信号14である。より具体的には、図7(2)の透過率信号13から図7(3)の透過率信号13’を引き算して求めた差信号である。差信号14では、各レンズの透過率信号からパターンエッジライン信号が除かれ、パターン欠陥信号11’、12’のみが抽出される。
図7(5)は、パターン欠陥信号のみを抽出した差信号14において、遮光部1及び透過部2の欠陥を抽出するのに必要な閾値を設定し、プラス側の閾値15aで白欠陥が、マイナス側の閾値15bで黒欠陥がそれぞれ検出された状態を示す。閾値は低くすれば検出感度が上がるが、疑似欠陥を検出しないレベルに設定する必要がある。
どちらのレンズにどのような欠陥が発生したかを見極めるためには、例えば、上レンズの回路では下レンズの信号と比較し(上レンズの信号から下レンズの信号を引き算し)、上レンズの遮光部1に白欠陥が発生した場合はプラス側、上レンズの透過部2に黒欠陥が発生した場合はマイナス側に欠陥信号が出ることによって、上レンズの白欠陥、黒欠陥を検出する(上記図7(2)〜(5))。同様に、例えば、下レンズの回路では上レンズの信号と比較し(下レンズの信号から上レンズの信号を引き算し)、下レンズの遮光部1に白欠陥が発生した場合はプラス側、下レンズの透過部2に黒欠陥が発生した場合はマイナス側に欠陥信号が出ることによって、下レンズの白欠陥、黒欠陥を検出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の比較検査方法は、遮光部及び透過部のみからなる従来のマスクを検査するための装置であるため、グレートーン部を有するグレートーンマスクを検査するのに適していない。
詳しくは、従来の比較検査方法は、グレートーンマスクを検査するにあたり、以下のような問題点がある。
即ち、グレートーン部の欠陥信号は、欠陥自体が微小であるために弱く、従来の比較検査装置を用いた場合、その閾値を通常の遮光部の検査に用いる閾値よりも下げなければ検出が困難である。しかしながら、例えばグレートーン部が、グレートーンマスクを使用する露光機の解像限界以下の微細パターンを形成した領域である場合、この微細パターンに対応して図8に示すように、グレートーン部に特有のベース信号レベル(ノイズバンド)16を生じる。比較検査においては各レンズで得られた透過率信号を引き算(差分)して差信号を求め、パターン欠陥信号のみを抽出しているが、グレートーン部における微細遮光パターン間に若干のパターンずれが生じた場合、ベース信号レベルが増幅され(最大2倍)、本来欠陥となるべきではないものが欠陥(疑似欠陥)として検出されてしまうため、閾値を下げることが不可能であり、高感度の検査ができないという問題点がある。
さらに、従来の比較検査は、白欠陥や黒欠陥を検査するものであるため、グレートーンマスクにおいて最も重要な要素である透過率の保証まで行うことが困難である。即ち、例えば、マスク全域において、グレートーン部の遮光パターンの線幅が設計寸法に対してアンダー(線幅大)又はオーバー(線幅小)であって透過率の許容値を超えている場合や、グレートーン部を構成する半透過膜の透過率が許容値を超えている場合、比較検査においては各レンズで得られた透過率信号を引き算して差信号を求めているので、差が現れず、このような透過率欠陥を検出できないという問題がある。このことは、特にグレートーン部に形状欠陥がない場合に問題となる。さらに、グレートーン部においてはその透過率さえ許容範囲であれば欠陥として検出する必要はないが、従来の比較検査では、あくまでも形状欠陥として検出されるため、従来の検査で検出されたものであっても、透過率が許容範囲である場合もあった。その結果、本来欠陥として検出しなくてもよいものまで検出してしまい、検査の正確性(能力)に問題点があった。
また、同様の問題が、例えば、TFTチャンネル部形成用フォトマスク等の微細パターンを有するフォトマスクや、線幅が3μm以下のライン&スペースのような微細かつ高精度なパターンを有するフォトマスクについても言える。例えば、TFTチャンネル形成用フォトマスクにおいては、TFTチャンネル部の微細化に伴い、急激な勢いでパターンの微細化の傾向にある。このようなパターンについても、従来の方法を用いて検査を行った場合、検査機のステージの振動や上下レンズの画像ずれによる疑似欠陥、その他微細パターンに特有の疑似欠陥が発生してしまい、疑似欠陥が検出されないレベルに感度を落とすと欠陥検出保証レベルの感度がとれないという問題があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、本出願人は、先に、比較による検査ではなく、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号について、予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する方法(以下、単眼透過率検査と呼ぶ)について、出願を行った(特願2001−244071号)。
以下、この方法の具体例を説明する。
図9(1)は、遮光部1、透過部2、グレートーン部3、5のいずれにもに欠陥が発生していない場合を示し、矢印は検査装置のレンズの走査方向(検査方向)を示す。
図9(2)は、上記走査方向に沿って得られる透過率信号7を示す。透過率信号は、遮光部1で透過率0%、透過部2で透過率100%、グレートーン部3、5で透過率50%である。
ここで、図9(2)に示すように、例えばグレートーン部における透過率欠陥の閾値(上限側8a、下限側8b)を設け、これらの閾値を超えた場合にグレートーン部において透過率欠陥が発生したと判断する。
この場合、図9(2)に示すように、通常の遮光部及び透過部における透過率欠陥の閾値(透過部側9a、遮光部側9b)をさらに設け、これらの閾値を超えた場合に遮光部又は透過部において透過率欠陥が発生したと判断することによって、遮光部における遮光性の低下欠陥や透過部における透過性の低下欠陥などの、半透過性の透過率欠陥を同時に検出できるため好ましい。
さらにこの場合、グレートーン部用の透過率欠陥抽出閾値8a、8bと通常の遮光部及び透過部の透過率欠陥抽出閾値9a、9bとによって形成される透過率欠陥域10a、10bを用いることで、検査領域によらず透過率欠陥を検出できる。つまり、この透過率欠陥域10a、10bに入っていれば、検査領域によらず透過率欠陥があると判断できる。
上記検査方法によれば、透過率自体の直接検査を行うことができ、したがって、グレートーン部における透過率保証を行うことができる。
また、パターン認識をしない検査方法であるため、微細パターン検査時に特有のパターン形状に起因する疑似欠陥が発生する問題(閾値を下げることができない問題)を回避でき、したがって、閾値を下げることが可能で、グレートーンマスクや微細パターンを含むフォトマスクの要求精度(スペック)を満たす感度を得ることが可能である。
また、パターンの比較に基づくパターン欠陥信号ではなく、透過率信号について予め設けた透過率欠陥抽出閾値を用いているので、比較検査において透過率信号同士の差信号をとることによって問題となる微細パターンに特有のベース信号レベルの増幅の問題(閾値を下げることができない問題)を回避でき、したがって、閾値を下げることが可能で、グレートーンマスクや微細パターンを含むフォトマスクの要求精度を満たす感度を得ることが可能である。
さらに、比較対象物を必要としないため、単眼による検査が可能である。さらに、グレートーン部用の透過率欠陥抽出閾値を変更することによって、ユーザーが使用するグレートーンマスクの露光条件に合わせた透過率保証が可能となる。
【0006】
しかしながら、上記のような単独の透過率信号及びその透過率欠陥抽出閾値を用いて透過率自体の直接検査を行う単眼透過率検査では、パターン認識をしない検査方法であるため、遮光部及び透過部の形状欠陥(白欠陥、黒欠陥)の検査を行うことが困難である。従って、遮光部、透光部、及びグレートーン部を有するグレートーンマスクにおいて高精度な検査を行うためには、パターン認識を伴う比較検査とパターン認識を伴わない透過率検査の両方を行う必要があり、多くの検査時間を要するという問題があった。同様の問題が、例えば、TFTチャンネル部形成用フォトマスク等の微細パターンを有するフォトマスクや、線幅が3μm以下のライン&スペースのような微細かつ高精度なパターンを有するフォトマスクについても言える。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、遮光部と、透過部と、グレートーン部とを有するグレートーンマスクにおいて、短時間でかつ高精度な欠陥検査を行うことができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成を有する。
(構成1) 遮光部と、透過部と、透過量を調整した領域であってこの領域を透過する光の透過量を低減してフォトレジストの膜厚を選択的に変えることを目的とするグレートーン部とを有するグレートーンマスクの欠陥検査方法であって、少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域については、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号を用い、パターンの比較に基づくパターン欠陥信号について予め設けたパターン欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する比較検査手法によって欠陥を検出し、
少なくともグレートーン部については、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号について予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する手法によって欠陥を検出することを特徴とするグレートーンマスクの欠陥検査方法。
(構成2) 前記グレートーン部が、グレートーンマスクを使用する露光機の解像限界以下の遮光パターンを形成した領域からなることを特徴とする構成1記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。
(構成3) 遮光部と、透過部と、微細パターン部とを有するフォトマスクの欠陥検査方法であって、
少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域については、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号を用い、パターンの比較に基づくパターン欠陥信号について予め設けたパターン欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する比較検査手法によって欠陥を検出し、
少なくとも微細パターン部については、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号について予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する手法によって欠陥を検出することを特徴とするフォトマスクの欠陥検査方法。
(構成4) 前記微細パターン部が、比較検査が困難な微細パターンであることを特徴とする構成3記載のフォトマスクの欠陥検査方法。
(構成5) 前記グレートーン部における検査は、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号が複数の透過率検出手段を用いて得られた場合に、それぞれ別々に独立して検査を行うことを特徴とする構成1〜4のいずれかに記載のフォトマスクの欠陥検査方法。
(構成6) 遮光部と、透過部と、透過量を調整した領域であってこの領域を透過する光の透過量を低減してフォトレジストの膜厚を選択的に変えることを目的とするグレートーン部とを有するグレートーンマスクの欠陥検査装置であって、
マスク内に形成されたパターンを走査し、透過率信号を検出する手段と、
遮光部、透過部とグレートーン部とのいずれの領域であるかを識別する手段と、
少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域については、前記マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号を用い、パターンの比較に基づくパターン欠陥信号について予め設けたパターン欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する比較検査手法によって欠陥を検出する手段と、
少なくともグレートーン部については、前記マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号について予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する手法によって欠陥を検出する手段と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
(構成7) 遮光部と、透過部と、微細パターン部とを有するフォトマスクの欠陥検査装置であって、
マスク内に形成されたパターンを走査し、透過率信号を検出する手段と、
遮光部、透過部と微細パターン部とのいずれの領域であるかを識別する手段と、
少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域については、前記マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号を用い、パターンの比較に基づくパターン欠陥信号について予め設けたパターン欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する比較検査手法によって欠陥を検出する手段と、
少なくとも微細パターン部については、前記マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号について予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する手法によって欠陥を検出する手段と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
(構成8) 構成1又は2記載の方法を用いて欠陥検査を行う欠陥検査工程を有することを特徴とするグレートーンマスクの製造方法。
(構成9) 構成3又は4記載の方法を用いて欠陥検査を行う欠陥検査工程を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、図1を用いて本発明の検査方法を説明する。
工程1:遮光部、透光部、グレートーン部を有するグレートーンマスクの透過率信号を得る。
工程2:工程1で得られた透過率信号を比較検査用の欠陥判定回路に入力し、比較検査が行われる。
工程3:工程1で得られた透過率信号について遮光部・透光部とグレートーン部との何れの領域の透過率信号かを識別し、グレートーンレベルにある透過率信号のみを抽出する。
工程4:工程3で抽出された透過率信号を透過率検査用の欠陥判定回路に入力し、透過率検査が行われる。
【0010】
工程1について詳しく説明する。
この工程においては、工程2における比較検査に用いることができるような透過率信号を得る。即ち、工程2における比較検査が同一マスク内の同じパターン同士を比較する検査である場合は、比較対象となる同じパターンのそれぞれの透過率信号を2つの透過率検出手段を用いて検出(2本のレンズで測定)し、工程2における比較検査がパターンとデータを比較する検査である場合は、1つの透過率検出手段(1本のレンズ)でパターンの透過率信号を得る。
【0011】
次に、工程2においては、例えば、次に説明するようなパターン同士の比較を行う比較検査のような、通常の比較検査が行われる。図2(1)は、遮光部1に白欠陥11(ピンホール)、透過部2に黒欠陥12(スポット)、グレートーン部3に白欠陥6(パターン欠落)が発生した状態を示し、矢印は比較検査装置の一方のレンズ(上レンズ)の走査の様子を示す。図2(2)は、上記走査線に沿って得られる透過率信号7を示す。透過率信号の7レベルは、遮光部1でB、透過部2でW、グレートーン部3でGであり、遮光部1の透過率を0%、透過部2の透過率を100%、にそれぞれ設定する。透過率信号7は、パターンのエッジ(遮光部、透過部、グレートーン部の各境界)で生じるパターンエッジライン信号(パターン形状信号)で基本的に構成され、欠陥が発生した場合は、遮光部1に発生した白欠陥信号11’、透過部2に発生した黒欠陥信号12’、グレートーン部3に発生した白欠陥信号6’等が現れる。図2(3)は、図2(1)と同じパターンであって欠陥が発生していない場合に、他方のレンズ(下レンズ)で得られる透過率信号7’を示す。なお、グレートーン部3は微細L&Sパターンであるため、この微細パターンに対応して図8に示すようにグレートーン部に特有のベース信号レベル6’’(ノイズバンド)を生じる。図2(4)は、各レンズで得られた透過率信号を引き算(差分)して求めた差信号である。より具体的には、図2(2)の透過率信号7から図2(3)の透過量信号7’を引き算して求めた差信号8である。差信号8では、各レンズの透過量信号からパターンエッジライン信号が除かれ、パターン欠陥信号11’、12’、6’のみが抽出される。図2(5)は、パターン欠陥信号のみを抽出した差信号8において、遮光部1及び透過部2の欠陥を抽出するのに必要な閾値(プラス側9a、マイナス側9b)を設定した状態を示す。ここでは、グレートーン部3の欠陥を抽出することができない。
【0012】
次に、工程3について詳しく説明する。
遮光部・透過部とグレートーン部とのいずれの領域であるかを識別する方法としては、例えば、工程1で得られた透過率信号に基づいて、いずれかのレンズにおける透過率信号のレベルが、遮光部レベル(透過率0%)、透過部レベル(透過率100%)、グレートーンレベル(透過率50%前後)にあるかを識別する方法がある。図3(1)は遮光部、透過部及びグレートーン部を有するフォトマスクを示し、矢印は検査装置のレンズの走査方向(検査方向)を示す。ここでは、図3(2)に示されるように、ある一定の中間域の透過率をグレートーン領域抽出用閾値として設定し、その閾値を超えない透過率信号7をグレートーン領域の透過率信号として抽出する。
なお、上記グレートーン部における透過率欠陥の閾値は、図8に示すグレートーン部に特有のベース信号レベル16を超えるレベルに透過率欠陥抽出閾値を設定することが好ましい。これにより、グレートーン部に特有のベース信号レベルの影響を排除できる。この場合、透過率欠陥抽出閾値はベース信号レベル16の中心値を基準に設けることが好ましい。また、グレートーン部の許容透過率の上限及び下限に透過率欠陥抽出閾値を設定することによって、グレートーン部の透過率保証が可能となる。
【0013】
次に工程4において行われる検査は以下のとおりである。
工程4においては、1本のレンズの場合は1つの透過率信号について以下の検査を行い、2本のレンズの場合はそれぞれの透過率信号について別々に以下の検査を行う。
工程3において抽出された透過率信号について、図4(1)は、グレートーン部に欠陥が発生していない場合を示し、矢印は検査装置のレンズの走査方向(検査方向)を示す。図4(2)は、上記走査方向に沿って得られる透過率信号7を示す。透過率信号は、グレートーン部で例えば透過率50%である。そして、図4(2)に示すように、例えばグレートーン部における透過率欠陥の閾値(上限側8a、下限側8b)を設け、これらの閾値を超えた場合にグレートーン部において透過率欠陥が発生したと判断する。
図5(1)は、グレートーン部に欠陥がある場合を示し、図5(2)に示すように、欠陥部分の透過率レベルに変化が現れ、この透過率変化が透過率欠陥の閾値を超えた場合にグレートーン部において透過率欠陥が発生したと判断する。
【0014】
上記において、工程2と工程3〜4については、同一の装置で同時に行うことができる。
【0015】
次に、本発明の検査装置について説明する。
本発明の検査装置は、マスク内に形成されたパターンを走査し、透過率信号を検出する手段を有する。
具体的には、例えば、マスクの一側に設けられたレンズと、マスクの他側に設けられた平行光源(レンズに対応するスポット光源又はマスク全面照射光源)と、マスクとレンズとを相対的に移動させマスクの全領域を走査する手段(通常はマスクステージ移動手段)とを有し、この平行光源及び受光レンズによってマスク内に形成されたパターンを走査し、例えば各レンズユニット内に配置されたCCDラインセンサによって、透過率信号を検出する。
本発明の検査装置は、レンズが1本である単眼検査機の場合と、レンズが2本以上である複眼検査機の場合と、がある。複眼検査機の場合、例えば、マスク内に形成された同一パターン部分を2本のレンズでそれぞれ走査し、各レンズに対応する透過率信号をそれぞれ検出する機構、及び、マスク内に形成された同一パターン部分に各レンズを位置合わせする機構等を有する。
本発明の装置には、比較検査用の欠陥判定回路を有する。具体的には、パターン同士を比較して検査する場合は、2つの透過率検出手段(2本のレンズ)で得られる2つの透過率信号を相互に引き算(差分)して差信号を得る回路(差分回路)である。比較検査がパターンとデータを比較する検査である場合は、1つの透過率検出手段(1本のレンズ)で得られる1つの透過率信号とデータとを相互に引き算(差分)して差信号を得る回路(差分回路)である。比較検査用の欠陥判定回路では、少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域について検査を行う。
さらに、本発明の装置には、透過率検査用の欠陥判定回路を有する。透過率検査用の欠陥判定回路では、少なくともグレートーン部について検査を行う。具体的には、グレートーン領域における透過率信号がグレートーン部用の透過率欠陥域に入った場合、グレートーン部の透過率欠陥と判定する。単眼検査機の場合、1本のレンズで得られる1つの透過率信号について透過率検査用の欠陥判定回路を1つ有する。複眼検査機の場合、2本のレンズで得られる2つの透過率信号についてそれぞれ別々に独立して検査を行うために、透過率検査用の欠陥判定回路を2つ有する。
本発明の装置には、遮光部・透過部とグレートーン部とのいずれの領域であるかを識別する手段(例えば識別回路等)を有する。
【0016】
なお、本発明は上述した実施の形態等に限定されるものではない。
例えば、グレートーン部が半透過膜で構成されている場合であっても、本発明の適用が可能である。
また、上記実施例においては、グレートーンマスクのグレートーン部の検査について述べたが、本発明はそれに限らず、例えば、TFTチャンネル部形成用フォトマスク等、上記グレートーン部と同様の微細パターンを含むフォトマスクについても適用可能である。
さらに、本発明では、図10(1)に示すようなグレートーン部を走査して得られる透過率信号について、図10(2)のような周期的な変動がある場合に、その信号を平坦化するためのぼかし処理を施すことによって、図10(3)のような透過率信号とすることができ、本来の透過率特性である例えば50%付近の均一な透過率信号を得ることができる。尚、本発明のぼかし処理とは、測定領域において最も信号が平坦化するようなポイントに、得られた信号をぼかす処理であり、このぼかし処理は、従来から画像処理において用いられているぼかし機能等を利用することができる。そして、このぼかし処理した信号をもとに透過率欠陥検査を行うことにより、グレートーンマスクのグレートーン部や微細パターンを含むフォトマスクについて、ぼかし処理をしない場合に透過率信号の疑似欠陥として検出されてしまう箇所を疑似欠陥として検出することなく検査することが可能となる。従って、ぼかし処理をしない場合に透過率信号の疑似欠陥として検出されてしまう箇所について透過率保証が可能となる。また、グレートーンマスクのグレートーン部や微細パターンを含むフォトマスクについて、ぼかし処理をしない場合に透過率信号の疑似欠陥として検出されてしまう箇所について線幅エラーに基づく透過率欠陥の検出や微小突起欠陥に基づく透過率欠陥の検出が可能となる。
【0017】
尚、LCD製造用グレートーンマスクの場合、サイズが大きくその分検査に時間がかかるので、比較検査と透過率検査の両方を別々に行う検査方法では実用的でなく、したがって、本発明の欠陥検査方法はLCD製造用グレートーンマスクを実用化する上で必要不可欠である。このようなことは、LCD(液晶ディスプレイ)製造用マスクに限らず、他の表示ディバイスや、TFTチャンネル部形成用フォトマスク等の微細パターンを有するフォトマスクや、線幅が3μm以下のライン&スペースのような微細かつ高精度なパターンを有するフォトマスク等についても同様である。ここで、LCD製造用マスクには、LCDの製造に必要なすべてのマスクが含まれ、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、低温ポリシリコンTFT、カラーフィルタなどを形成するためのマスクが含まれる。他の表示ディバイス製造用マスクには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの製造に必要なすべてのマスクが含まれる。また、微細パターンを含むフォトマスクとしては、LCD製造用フォトマスクや有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表示ディバイス製造用フォトマスクであって、TFTチャンネル部やコンタクトホール部などを形成するための微細パターンを有するフォトマスク等を挙げることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、遮光部と、透過部と、グレートーン部とを有するグレートーンマスクにおいて、短時間でかつ高精度な欠陥検査を行うことができる方法及び装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の欠陥検査方法の概要を説明するための図である。
【図2】実施の形態における工程2を説明するための図である。
【図3】実施の形態における工程3を説明するための図である。
【図4】実施の形態における工程4(欠陥のない場合)を説明するための図である。
【図5】実施の形態における工程4(欠陥がある場合)を説明するための図である。
【図6】グレートーンマスクを説明するための図であり、(1)は部分平面図、(2)は部分断面図である。
【図7】従来の欠陥検査方法を説明するための図である。
【図8】グレートーン部に特有のベース信号レベルを説明するための図である。
【図9】本願出願人による先の出願に係る欠陥検査方法を説明するための図である。
【図10】透過率信号のぼかし処理を説明するための図である。
【符号の説明】
1 遮光部
2 透過部
3 グレートーン部
3a 遮光パターン
3b 透過部
3c 半透過膜
5 グレートーン部
7 透過率信号
8 差信号
8a グレートーン部用の透過率欠陥抽出閾値(上限)
8b グレートーン部用の透過率欠陥抽出閾値(下限)
9a 透過部用の透過率欠陥抽出閾値
9b 遮光部用の透過率欠陥抽出閾値
11 白欠陥
12 黒欠陥
13 透過率信号
Claims (11)
- 遮光部と、透過部と、透過量を調整した領域であってこの領域を透過する光の透過量を低減してフォトレジストの膜厚を選択的に変えることを目的とするグレートーン部とを有するグレートーンマスクの欠陥検査方法であって、
前記遮光部、透光部、グレートーン部を有するグレートーンマスク内のパターンを走査して透過率信号を得て、
少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域については、マスク内の同一パターン同士の比較又はパターンとデータの比較に基づく前記透過率信号の差信号により、予め設けたパターン欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する比較検査手法によって欠陥を検出し、 少なくともグレートーン部については、前記透過率信号により、前記透過率信号について予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する手法によって欠陥を検出することを特徴とするグレートーンマスクの欠陥検査方法。 - 前記走査によって透過率信号を得る際、同一マスク内において比較対象となる同一パターンのそれぞれの透過率信号を、2つの透過率検出手段によって検出し、
前記同一パターン同士の比較は、上記得られた2つの透過率信号の差信号を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。 - 前記走査によって透過率信号を得る際、1つの透過率検出手段を用いて、1つの透過率信号を検出し、
前記パターンとデータの比較は、得られた透過率信号とデータの比較による差信号を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。 - 前記グレートーン部が、グレートーンマスクを使用する露光機の解像限界以下の遮光パターンを形成した領域からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。
- 前記グレートーン部が、半透過膜で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。
- グレートーン部についての前記欠陥検出に先立ち、前記走査によって得た透過率信号について識別を行って、グレートーンレベルにある透過率信号のみを抽出し、
抽出した前記透過率信号を、前記透過率欠陥の閾値を用いた欠陥検出に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。 - 前記比較検査手法による欠陥検出と、前記透過率欠陥の閾値を用いた欠陥検出とは、同時に行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。
- 前記グレートーン部における検査は、マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号が複数の透過率検出手段を用いて得られた場合に、それぞれ別々に独立して検査を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のグレートーンマスクの欠陥検査方法。
- 遮光部と、透過部と、透過量を調整した領域であってこの領域を透過する光の透過量を低減してフォトレジストの膜厚を選択的に変えることを目的とするグレートーン部とを有するグレートーンマスクの欠陥検査装置であって、
マスク内に形成されたパターンを走査し、透過率信号を検出する手段と、
遮光部、透過部とグレートーン部とのいずれの領域であるかを識別する手段と、
少なくとも遮光部及び透過部が形成されている領域については、前記マスク内のパターンを走査して得られる透過率信号を用い、同一パターン同士の比較又はパターンとデータの比較に基づく前記透過率信号の差信号により、パターン欠陥信号について予め設けたパターン欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する比較検査手法によって欠陥を検出する手段と、
少なくともグレートーン部については、前記透過率信号により、前記透過率信号について予め設けた透過率欠陥の閾値を用いて欠陥を検出する手法によって欠陥を検出する手段と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。 - 前記透過率信号について、信号を平坦化するぼかし処理を施す手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の欠陥検査装置。
- 請求項1から8のいずれかに記載の方法を用いて欠陥検査を行う欠陥検査工程を有することを特徴とするグレートーンマスクの製造方法。
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