JP4062079B2 - トランス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に用いるトランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来のトランスについて図面を参照しながら説明する。
【0003】
図7は従来のトランスの断面図、図8は同トランスの斜視図、図9は同トランスの分解斜視図である。
【0004】
図7〜図9において、従来のトランスは、巻軸1の中央に貫通孔2を有するとともに上下端に鍔3を有した偏平状の二つのコイルボビン4と、一方のコイルボビン4の巻軸1の外周に巻回した入力巻線5と、他方のコイルボビン4の巻軸1の外周に巻回した出力巻線6と、コイルボビン4の下端の鍔3に植設するとともに入力巻線5および出力巻線6を接続した端子7と、二つの磁脚8の間に中脚9を有した断面E字形状の分割磁心10と平板状の分割磁心10と突合せて形成した閉磁路磁心11とを備えていた。
【0005】
そして、コイルボビン4の貫通孔2に断面E字形状の分割磁心10の磁脚8をそれぞれ組み込むとともに平板状の分割磁心10を突合せてトランスを構成していた。
【0006】
また、断面E字形状の分割磁心10の中脚9は、二つの磁脚8より高さを低くして形成しており、断面E字形状の分割磁心10と平板状の分割磁心10を突合せたときに、中脚9の先端と平板状の分割磁心10との間に磁気ギャップ12を形成していた。
【0007】
そして、中脚9と磁気ギャップ12は、出力巻線6に接続した負荷(図示していない)と出力巻線6に電流が流れたときに、入力巻線5の磁束が出力巻線6に鎖交しない漏れ磁束13を通す漏れ磁路を構成していた。
【0008】
上記従来のトランスは、負荷や出力巻線6に電流が流れていないときは、磁気ギャップ12によって漏れ磁束13を通さず、負荷や出力巻線6に流れる電流の増大にともない漏れ磁路に流れる漏れ磁束13を増やして漏れリアクタンスを大きくした磁束漏洩型のトランスとして用いられていた。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−270441号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の構成では、漏れ磁路は平板状の分割磁心10と中脚9の間に磁気ギャップ12を形成しており、磁気ギャップ12は中脚9の高さを二つの磁脚の高さより低くして形成しているので、中脚9と二つの磁脚8を研磨などして高さを合わせたあとに中脚9のみ再度研磨して高さを低くする必要があり、中脚9を二度研磨するだけでなく中脚9のみを研磨するために、作業が煩雑となり生産性が悪くなるといった問題点を有していた。
【0012】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、磁気ギャップを有した漏れ磁路を形成する際に、分割磁心を研磨して磁気ギャップを形成することをなくして生産性を向上したトランスを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を有する。
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明は、特に、二つの分割磁心は巻軸部の上下端に鍔を設けるとともに前記鍔の側面に平面部を形成しており、一方の前記分割磁心の巻軸部に入力巻線を巻回するとともに他方の前記分割磁心の巻軸部に出力巻線を巻回し、二つの前記分割磁心の平面部を突合せて閉磁路を形成しており、前記入力巻線を巻回した前記分割磁心の前記鍔の厚みは少なくとも前記上下端のいずれかにおいて、前記出力巻線を巻回した前記分割磁心の鍔の厚みより大きくするとともに、前記入力巻線を巻回した前記分割磁心の前記上下端の前記鍔の間隔は、前記出力巻線を巻回した前記分割磁心の前記上下端の前記鍔の間隔より小さくした構成である。
【0015】
上記構成により、入力巻線を巻回した分割磁心の上下端の鍔の間隔が出力巻線を巻回した分割磁心の上下端の鍔の間隔より小さいので、出力巻線を巻回した分割磁心の上下端の鍔の間隔より漏れ磁束を通しやすくすることができ、入力巻線を巻回した分割磁心の上下端の鍔の間隔が磁気ギャップとなり、入力巻線を巻回した分割磁心の上端の鍔と磁気ギャップおよび下端の鍔とで漏れ磁路を構成し、出力巻線の負荷が増大したときにはその磁気ギャップにおいて漏れ磁束をより通しやすくすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態におけるトランスについて図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態におけるトランスの断面図、図2は同トランスの斜視図、図3は同トランスの分解斜視図である。
【0018】
図1〜図3において、本発明の一実施の形態におけるトランスは、二つの分割磁心21を突合せて閉磁路を形成した閉磁路磁心22と、分割磁心21に絶縁被膜付導線を巻回した巻線23とを備えている。
【0019】
そして、この二つの分割磁心21は巻軸部24の上下端に鍔25を設けるとともに鍔25の側面に平面部26を形成しており、一方の分割磁心21の巻軸部24の外周に絶縁被膜付導線を数ターン程度巻回した入力巻線27を施すとともに他方の分割磁心21の巻軸部24に入力巻線27の導線よりも細い絶縁被膜付導線を千数百ターン程度巻回した出力巻線28を施し、二つの分割磁心21の平面部26を突合せて閉磁路を形成している。
【0020】
また、入力巻線27を巻回した分割磁心21は、上端の鍔25の厚みを突合せた他方の分割磁心21の鍔25の厚みより大きくするとともに上下端の鍔25の間隔を突合せた他方の分割磁心21の上下端の鍔25の間隔より小さくしている。
【0021】
そして、出力巻線28を巻回した分割磁心21の巻軸部24の断面積29を入力巻線27を巻回した分割磁心21の巻軸部24の断面積30より小さくしている。
【0022】
これら、二つの分割磁心21は、入力巻線27を巻回した分割磁心21をMn系のフェライト材で形成し、出力巻線28を巻回した分割磁心21をNi系のフェライト材で形成しており、平面部26を除いた表面を数十μmの厚みの絶縁樹脂(図示していない)で被覆した絶縁層31を設けている。
【0023】
また、二つの分割磁心21の巻軸部24の断面形状を円形状にしている。
【0024】
そして、分割磁心21の下端の鍔25に、下端の鍔25の側面から巻軸部24までスリット32を形成し、スリット32から巻線の引き出し線33を引き出している。
【0025】
さらに、二つの分割磁心21の平面部26と反対側の下端の鍔25には、下端の鍔25の底面を載置する載置部34と、載置部34と連成するとともに下端の鍔25の平面部26と反対側の側面に巻線23の引き出し線33を接続する端子35を有した厚肉部36と、載置部34および厚肉部36と連成するとともに下端の鍔25の側面に沿わせた固定壁37とを有した端子板38を設けている。
【0026】
また、一方の端子板38の載置部34と固定壁37とを一方の分割磁心21の平面部26より外方まで設け、一方の端子板38の載置部34に他方の分割磁心21を載置してトランスを構成したものである。
【0027】
上記構成の本実施の形態のトランスについて以下その動作を説明する。
【0028】
本実施の形態のトランスは、入力巻線27を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔が出力巻線28を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔より小さいので、出力巻線28を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔より漏れ磁束39を通しやすくすることができ、入力巻線27を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔が磁気ギャップ40となり、入力巻線27を巻回した分割磁心21の上端の鍔25と磁気ギャップ40および下端の鍔25とで漏れ磁路を構成して漏れ磁路に漏れ磁束39を流すことができる。
【0029】
また、出力巻線28を巻回した分割磁心21の巻軸部24の断面積29を入力巻線27を巻回した分割磁心21の巻軸部24の断面積30より小さくしているので、出力巻線28を巻回した分割磁心21の磁気抵抗を入力巻線27を巻回した分割磁心21の磁気抵抗より大きくして入力巻線27の発生した磁束が出力巻線28を巻回した分割磁心21を通りにくくすることができ、出力巻線28に接続した負荷が増大したときに漏れ磁路に漏れ磁束39をより通しやすくすることができる。
【0030】
そして、入力巻線27を巻回した分割磁心21をコアロスの小さいMn系のフェライトコア材で形成し、巻数が多く高電圧を出力する出力巻線28を巻回した分割磁心21を絶縁抵抗の大きいNi系のフェライト材で形成しているので、高電圧に対応した効率の良いトランスを構成できる。
【0031】
このとき、特に、出力巻線28を巻回した分割磁心21を形成したNi系のフェライト材は、入力巻線27を巻回した分割磁心21を形成したMn系のフェライト材に比べて磁気抵抗が大きいので、入力巻線27の発生した磁束が磁気抵抗の高い出力巻線28を巻回した分割磁心21を通りにくくなり、漏れ磁路に漏れ磁束39をより通しやすくすることができる。
【0032】
また、二つの分割磁心21は、平面部26を除いた表面を絶縁樹脂で被覆した絶縁層31を設けているので、巻線23と分割磁心21の絶縁性を向上することができる。
【0033】
そして、分割磁心21の巻軸部24の断面形状を円形状にしているので、巻軸部24に導線を巻回するときに導線にかかる応力を小さくすることができる。
【0034】
さらに、分割磁心21の下端の鍔25に、下端の鍔25の側面から巻軸部24までスリット32を形成し、スリット32から巻線23の引き出し線33を引き出しているので、巻線23と引き出し線33のクロスオーバーをなくすことができ、出力巻線28に高電圧を発生したときの出力巻線28と引き出し線33の絶縁破壊を防止できる。
【0035】
また、端子板38に載置部34および厚肉部36とを連成するとともに下端の鍔25の側面に沿わせた固定壁37を有しているので、分割磁心21に端子板38を容易に位置決めすることができる。
【0036】
そして、一方の端子板38の載置部34と固定壁37とを一方の分割磁心21の平面部26より外方まで設け、一方の端子板38の載置部34に他方の分割磁心21を載置しているので、一方の分割磁心21を載置した端子板38に、他方の分割磁心21の下端の鍔25を載置するだけで、二つの分割磁心21の位置決めを容易に行うことができる。
【0037】
次に、上記本実施の形態のトランスを放電灯点灯装置に用いた使用例について図面を参照して説明する。
【0038】
図4は本実施の形態のトランスを放電灯点灯装置に用いた使用例を示す回路図である。
【0039】
同図において、本実施の形態のトランスは、入力巻線27を高周波の低電圧を出力する電源部41に接続し、出力巻線28を放電灯42に接続している。
【0040】
そして、本実施の形態のトランスを電源部41の出力を放電灯42が点灯するために必要な高電圧に昇圧した昇圧トランスを通して用いている。
【0041】
この放電灯点灯装置および本実施の形態のトランスの動作について説明する。
【0042】
放電灯42が点灯開始するまでは放電灯42は開放状態であるので、トランスの閉磁路磁心22には入力巻線27が発生した磁束だけが流れ、閉磁路磁心22の上下端の鍔25との間には間隔が空いているので入力巻線27が発生した磁束は全て出力巻線28を巻回した分割磁心21を通り、出力巻線28に入力巻線27と出力巻線28の巻数比に応じた高電圧が発生し、放電灯42に高電圧が印加されて放電灯42が点灯する。
【0043】
そして、放電灯42が点灯すると、放電灯42と出力巻線28に電流が流れて出力巻線28に入力巻線27が発生した磁束を打ち消す方向に磁束が発生し、入力巻線27が発生した磁束は出力巻線28を巻回した分割磁心21を通りにくくなり、入力巻線27が発生した磁束の一部は、閉磁路磁心22の上下端の鍔の間隔の小さい入力巻線27を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔の磁気ギャップ40を介して上下端の鍔25の間を通るようになり、漏れ磁束39を通した漏れ磁路を構成する。
【0044】
そして、放電灯42が負性特性であるために、放電灯42が点灯すると放電灯42のインピーダンスが減少して放電灯42と出力巻線28に流れる電流が多くなり、これにともない漏れ磁路を通る漏れ磁束39も多くなって漏れ磁束39によるトランスの漏れリアクタンスが増大する。
【0045】
この漏れリアクタンスは、出力巻線28の高電圧の出力を減少させ、放電灯42に過電流が流れることを防止したバラスト素子として機能させることができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態のトランスを放電灯42装置に用いれば、放電灯42に過電流が流れることを防止したバラスト素子の機能を備えた昇圧トランスとして用いることができる。
【0047】
このように、本発明の一実施の形態のトランスは、入力巻線27を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔が出力巻線28を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔より小さくしているので、入力巻線27を巻回した分割磁心21の上下端の鍔25の間隔を漏れ磁路の磁気ギャップ40とすることができ、漏れ磁路の磁気ギャップ40を分割磁心21を研磨するなどして形成することをなくすことができ、閉磁路磁心22の形成工程を簡素化してトランスの生産性を向上することができる。
【0048】
また、巻軸部24の上下端に鍔25を有した分割磁心21に直接巻線を巻回しているので、コイルボビンを必要とせず、さらに、漏れ磁路に従来のトランスで必要であった中脚9を必要としないので、トランスをより小型化、薄形化することができる。
【0049】
そして、本発明の一実施の形態のトランスを放電灯点灯装置の昇圧トランスに用いれば、放電灯42のバラスト素子の機能を備えることができ、放電灯点灯装置のバラスト素子をなくすことができる。
【0050】
尚、本実施の形態では、入力巻線27を巻回した分割磁心21は上端の鍔25の厚みを厚くしたもので説明したが、分割磁心の他の形状例を示した図5のように下端の鍔25の厚みを大きくしてもよく、上下端の両方の鍔25の厚みを大きくすればより漏れ磁束39をより通しやすくすることができる。
【0051】
また、入力巻線27を巻回した分割磁心21をMn系のフェライト材で形成し、出力巻線28を巻回した分割磁心21をNi系のフェライト材で形成したもので説明したが、二つの分割磁心21をMn系のフェライト材で形成すれば、Mn系のフェライト材はコアロスが小さいので、効率の良いトランスを構成できる。
【0052】
そして、二つの分割磁心21をNi系のフェライト材で形成すれば、Ni系のフェライト材は絶縁抵抗が大きいので、巻線23に入力する電圧または巻線23が出力する電圧が高電圧の場合でも巻線23と分割磁心21の絶縁性を損なうことがなく、高電圧のトランスを構成することができる。
【0053】
また、分割磁心21の巻軸の断面形状を円形状のもので説明したが、図6の本発明の一実施の形態のトランスの巻軸部の他の形状例を示した平面図に示すように、巻軸部24の断面形状を偏平形状にすれば、二つの分割磁心21を突合せて閉磁路磁心22を形成したときの底面積を小さくすることができ、よりトランスを小型化することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、二つの分割磁心は巻軸部の上下端に鍔を設けるとともに鍔の側面に平面部を形成しており、一方の分割磁心の巻軸部に入力巻線を巻回するとともに他方の分割磁心の巻軸部に出力巻線を巻回し、二つの分割磁心の平面部を突合せて閉磁路を形成しており、入力巻線を巻回した分割磁心は、上下端の鍔の少なくとも一方の厚みを突合せた他方の分割磁心の鍔の厚みより大きくするとともに上下端の鍔の間隔を突合せた他方の分割磁心の上下端の鍔の間隔より小さくした構成である。
【0055】
これにより、入力巻線を巻回した分割磁心の上下端の鍔の間隔で漏れ磁路の磁気ギャップを形成し、出力巻線の負荷が増大したときにはその磁気ギャップにおいて漏れ磁束をより通しやすくすることができ、分割磁心を研磨して磁気ギャップを形成することをなくして生産性を向上したトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態におけるトランスの断面図
【図2】 同トランスの斜視図
【図3】 同トランスの分解斜視図
【図4】 同トランスを放電灯点灯装置に用いた使用例を示す回路図
【図5】 (a)同トランスの分割磁心の他の形状例を示す断面図
(b)同トランスの分割磁心の他の形状例を示す断面図
【図6】 同トランスの巻軸部の他の形状例を示した平面図
【図7】 従来のトランスの断面図
【図8】 同トランスの斜視図
【図9】 同トランスの分解斜視図
【符号の説明】
21 分割磁心
22 閉磁路磁心
23 巻線
24 巻軸部
25 鍔
26 平面部
27 入力巻線
28 出力巻線
29 断面積
30 断面積
31 絶縁層
32 スリット
33 引き出し線
34 載置部
35 端子
36 厚肉部
37 固定壁
38 端子板
39 漏れ磁束
40 磁気ギャップ
41 電源部
42 放電灯

Claims (1)

  1. 二つの分割磁心を突合せて閉磁路磁心を形成した閉磁路磁心と、前記分割磁心に絶縁被膜導線を巻回した巻線とを備え、二つの分割磁心は巻軸部の上下端に鍔を設けるとともに前記鍔の側面に平面部を形成しており、一方の前記分割磁心の巻軸部に入力巻線を巻回するとともに他方の前記分割磁心の巻軸部に出力巻線を巻回し、二つの前記分割磁心の平面部を突合せて閉磁路を形成しており、前記入力巻線を巻回した前記分割磁心の前記鍔の厚みは少なくとも前記上下端のいずれかにおいて、前記出力巻線を巻回した前記分割磁心の鍔の厚みより大きくするとともに、前記入力巻線を巻回した前記分割磁心の前記上下端の前記鍔の間隔は、前記出力巻線を巻回した前記分割磁心の前記上下端の前記鍔の間隔より小さくしたトランス。
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