JP4062023B2 - アンテナポート監視システムとその方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線通信装置のアンテナポート監視システムとその方法に関し、特に、装置アンテナポートからアンテナまでのフィーダとアンテナ自体及びその接続状態の監視システムとその方法である。
【0002】
【従来の技術】
従来のアンテナポート監視システムは、装置アンテナポートとアンテナをフィーダで接続した状態で運用しながら無線通信装置の送信電力と反射電力のレベル差を監視しており、当該レベル差が予め設定されている規定値(スレッショルド値)を越えた場合にVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)アラームを発動していた。なお、このVSWRは電圧定在波比と呼ばれ、伝送路上に発生している定在波の大きさを表す数値であり、定在波の最大電圧と最小電圧との比で表されている。
【0003】
図6は、従来のアンテナポート監視システムのブロック構成図である。図6に示すように、無線通信装置の送信信号を増幅するための送信増幅部001、反射電力を測定するための反射電力用検波回路002、検波された反射電力値をディジタル値に変換するためのA/Dコンバータ003、送信電力を測定する為の送信電力用検波回路004、検波された送信電力値をディジタル値に変換するためのA/Dコンバータ005、ディジタル化された送信電力値と反射電力値とのレベル差を計算するレベル差算出回路106、VSWRアラームを発動するかどうかの判定基準である規定値(スレッショルド値)を予め設定しているスレッショルド設定回路107、スレッショルド設定回路に設定されている規定値(スレッショルド値)を基にレベル差算出回路で計算された送信電力値と反射電力値とのレベル差がVSWRアラームに相当するかどうかを判定しているALM判定回路108から構成される。
【0004】
このように従来のアンテナポート監視システムは、装置の設置環境毎に変わる要素である送信電力と反射電力のレベル差に対してVSWRアラーム判定基準であるスレッショルド値が固定であったため、柔軟に監視することが出来なかった。例えば、アンテナにルーズコンタクトが発生してもスレッショルド値未満であればこれを検出できないとか、あるいは経年変化や周囲環境の変化に起因する特性のわずかな変化がスレッショルド値以上であればアラームの誤発動を起こしてしまうといった問題があった。
【0005】
また、図7は、図6の従来例を改善したアンテナポート監視システムのブロック構成図である。図7に示すように、送信増幅部001、反射電力用検波回路002、A/Dコンバータ003、送信電力用検波回路004、A/Dコンバータ005、レベル差算出回路106、ALM判定回路108は図6の従来例と同じであるが、図6のスレッショルド設定回路107の代わりにスレッショルド設定回路207とCPU209を設け、CPU209からスレッショルド設定回路207のスレッショルド値を変更可能としている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】
特開平5−172879号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これまで説明したように、従来のアンテナポート監視システムは、VSWRアラームを発動するかどうかの判定基準であるスレッショルド値を変更可能としており、かなりの状況改善が図られているものの、前記の問題を根本的に解決するには至らなかった。即ち、従来のアンテナポート監視システムは、装置の設置環境が変わるたびにVSWRアラームを発動するかどうかの判定基準であるスレッショルド値を再調整して設定し直す必要があり、このスレッショルド値を簡単にしかも客観的に決定する手段がなかった。
【0007】
また、送信信号のレベル変動に伴う送信電力用検波回路と反射電力用検波回路のリニアリティ(直線性)誤差がある場合、これらの検波回路のレベル差算出回路出力はリニアリティ誤差分だけ変動することになり、監視動作の安定性に影響を及ぼしていた。このため、アンテナポート監視システムの安定度を上げるためには送信電力用検波回路と反射電力用検波回路に対してダイナミックレンジやリニアリティを確保するための補償回路を付加する必要があり、また、装置検査時の調整も手間がかかって全体価格を高価にしていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、個々のアンテナポート設置環境に合わせて最適のVSWRアラーム判定基準(スレッショルド値)を簡易に決定できるアンテナポート監視システムを提供することと、送信電力用検波回路と反射電力用検波回路のリニアリティ誤差を含めたVSWRアラーム判定を行うことにより監視動作の安定度向上を図ることができるアンテナポート監視システムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、無線通信装置のアンテナポートとアンテナ及びアンテナフィーダとの接続状態を監視するアンテナポート監視システムであって、前記監視システムは、無線通信装置の設置に際してアンテナポートの正常接続状態と異常接続状態をトレーニングしてその状態情報を蓄積し、その後、無線通信装置の運用に際して蓄積されたトレーニング情報を参照しながらアンテナポートの接続正常性を判断することを具備させる。
【0010】
即ち、事前に無線通信装置の設置されている環境において、アンテナポートにおける正常接続状態と異常接続状態を測定しておき、この値を基にアンテナポートの正常性判断を行っているため、正常性判断を簡単にしかも客観的に決定することができる。
【0011】
そして、更に、前記アンテナポートの正常接続状態と異常接続状態をトレーニングする場合は、運用時の送信信号のレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングすることを具備させる。
【0012】
即ち、アンテナポート監視システムのリニアリティ誤差を含めて正常性判断を行うことができる。
【0013】
また、無線通信装置のアンテナポートにおけるVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)を監視するアンテナポート監視システムであって、前記監視システムは、無線通信装置の設置に際して当該装置のアンテナポートのVSWRをトレーニングするための試験信号を発生し、前記試験信号を使ってアンテナポートにおける異常状態と正常状態のVSWRをトレーニングし、前記トレーニングされた異常VSWRと正常VSWRの値に基づきアンテナポートのVSWRの正常性を判断するためのスレッショルドレベルを決定し、その後前記監視システムは、無線通信装置の運用に際して運用時のアンテナポートのVSWRと前記決定されたスレッショルドレベルとを比較しながらアンテナポートの正常性を判断することを具備させる。
【0014】
そして、更に、前記試験信号を使ってアンテナポートにおける異常状態と正常状態のVSWRをトレーニングする場合は、運用時の送信信号と同じレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングすることを具備させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。本発明のアンテナポート監視システムは、通信装置の初期設置工事時に簡単なトレーニングを行い、通信装置アンテナポートからアンテナまでのフィーダ系及びアンテナ系の正常な状態及び異常な状態を予め装置の記憶回路に格納しておき、運用開始後は常にこの記憶されたトレーニング情報を参照しながらアンテナポート周辺の正常性を判断するものである。
【0018】
図1は、無線通信装置の送信回路部分に本発明のアンテナポート監視システムを適用した場合のブロック構成図である。図1に示すように、無線通信装置の送信信号を増幅するための送信増幅部001、反射電力を測定するための反射電力用検波回路002、検波された反射電力値をディジタル値に変換するためのA/Dコンバータ003、送信電力を測定するための送信電力用検波回路004、検波された送信電力値をディジタル値に変換するためのA/Dコンバータ005、正常時の送信電力値及び反射電力値を一時的に保持するための正常値サンプリング回路008、異常時の送信電力値及び反射電力値を一時的に保持するための異常値サンプリング回路009、現在の送信電力値及び反射電力値を一時的に保持するための現在値サンプリング回路010、これらの保持タイミングを指示するための書き込み指示回路012、これらの一時的に保持された値を格納するための反射波特性記憶回路011、反射波特性記憶回路から読み出した値とCPUから設定された情報を基にスレッショルド値を決定するスレッショルド決定回路013、これらの値から最終的にVSWRアラームを判定するALM判定回路014、試験信号を発生するための試験信号発生回路007、試験信号を送信するか運用信号を送信するかを選択する信号選択回路006、全体を制御するCPU015から構成される。
【0019】
図2は、本発明のアンテナポート監視システムにおけるトレーニングを含む動作シーケンスフローチャート図であり、図3は、本発明のトレーニングにおける異常時及び正常時についての送信電力と反射波電力の検波出力カーブを表す図である。図2、図3に示すように、本発明のアンテナポート監視システムは、試験信号発生回路007を持っており、これをCPU015の指示で起動することによりトレーニングを行う。この時信号選択回路006は試験信号発生回路007の出力を選択し、送信回路へと出力する。
【0020】
初めに設置工事者は、図2の「異常時データ取得ルーチン」で示される異常状態のトレーニングを行う。アンテナ未接続状態(ステップS1)にて試験信号を発生し(ステップS2)、当該信号レベルは最小値とする(ステップS3)。
【0021】
この試験信号は送信増幅部001にて増幅され、アンテナポートから出力される。この時送信電力用検波回路004にて検波を行い、A/Dコンバータ005にてディジタル値に変換し、正常値サンプリング回路008、異常値サンプリング回路009、現在値サンプリング回路010の全てに並列に入力される。同時に反射電力用検波回路002にて検波を行い、A/Dコンバータ003にてディジタル値に変換し、同様に正常値サンプリング回路008、異常値サンプリング回路009、現在値サンプリング回路010の全てに並列に入力される(ステップS4)。
【0022】
書き込み指示回路012は、CPU015の指示により、異常値サンプリング回路009にトリガ信号を与え、送信波のサンプリング値と反射波のサンプリング値を反射波特性記憶回路011へ書き込む(ステップS5)。次に試験信号レベルを増加させ(ステップS6)、最終値を超えていなければ、同様に送信波のサンプリング値と反射波のサンプリング値を測定し、反射波特性記憶回路011へ書き込む。これを繰り返し、信号レベルが最終値を超えた時点で異常状態のトレーニングを完了する(ステップS7)。
【0023】
続けて設置工事者は、図2の「正常時データ取得ルーチン」で示される正常状態のトレーニングを行う。アンテナ接続状態(ステップS8)に変更して試験信号を発生し(ステップS9)、当該信号レベルは最小値とする(ステップS10)。
【0024】
この試験信号は送信増幅部001にて増幅され、アンテナポートから出力される。この時送信電力用検波回路004にて検波を行い、A/Dコンバータ005にてディジタル値に変換し、正常値サンプリング回路008、異常値サンプリング回路009、現在値サンプリング回路010の全てに並列に入力される。同時に反射電力用検波回路002にて検波を行い、A/Dコンバータ003にてディジタル値に変換し、同様に正常値サンプリング回路008、異常値サンプリング回路009、現在値サンプリング回路010の全てに並列に入力される(ステップS11)。
【0025】
書き込み指示回路012は、CPU015の指示により、正常値サンプリング回路008にトリガ信号を与え、送信波のサンプリング値と反射波のサンプリング値を反射波特性記憶回路011へ書き込む(ステップS12)。次に試験信号レベルを増加させ(ステップS13)、最終値を超えていなければ、同様に送信波のサンプリング値と反射波のサンプリング値を測定し、反射波特性記憶回路011へ書き込む。そして、これを繰り返して信号レベルが最終値を超えた時点で正常状態のトレーニングを完了する(ステップS14)。
【0026】
以上説明したトレーニングを行う事により、異常時及び正常時における送信電力と反射波電力の検波出力カーブが得られた事になる。この関係を図に表すと図3の実線のようになる。
【0027】
そして運用に入る前に設置工事者は、スレッショルドレベルのポイント設定を行う。これはVSWRアラームの発動のし易さを決定するもので、CPU015の指示により、スレッショルド決定回路013において正常時反射波特性カーブと異常時反射波特性カーブの間における任意のポイント値を設定している。即ち、少しの劣化に対しても敏感にアラームを発動させたい場合は正常時反射波特性カーブに近いポイント値に設定し、大きな劣化が起こった時のみアラームを発動させたい場合は異常時反射波特性カーブに近いポイント値に設定する(ステップS15)。この関係を図に表すと図3の破線のようになる。
【0028】
上記スレッショルドレベルのポイント設定における具体的な一例を示すと、正常時反射波特性カーブと異常時反射波特性カーブの中間にする場合は50%という値に設定し、正常時反射波特性カーブに近くする場合は30%という値に設定し、異常時反射波特性カーブに近くする場合は70%という値に設定する。
【0029】
次に運用時のシーケンスを説明する。本発明のアンテナポート監視システムは運用時にはCPU015の指示により、信号選択回路006においてTX INからの運用信号を選択して送信回路へ出力する。この時装置は図2の「アラーム監視ルーチン」で示される動作を行う(ステップS16)。
【0030】
この運用信号は送信増幅部001にて増幅され、アンテナポートから出力される。この時送信電力用検波回路004にて検波を行い、A/Dコンバータ005にてディジタル値に変換し、正常値サンプリング回路008、異常値サンプリング回路009、現在値サンプリング回路010の全てに並列に入力される。同時に反射電力用検波回路002にて検波を行い、A/Dコンバータ003にてディジタル値に変換し、同様に正常値サンプリング回路008、異常値サンプリング回路009、現在値サンプリング回路010の全てに並列に入力される。
【0031】
書き込み指示回路012は、CPU015の指示により、現在値サンプリング回路008にトリガ信号を与え、入力されたそれぞれの検出データを現在値サンプリング回路010にて一定周期で繰り返しサンプリングする(ステップS17)。サンプリングされたデータのうち、現在の送信波電力情報は反射波特性記憶回路011に入力され、この現在の送信波電力情報に対応する正常トレーニング時の反射波電力情報及び異常トレーニング時の反射波電力情報を読み出してスレッショルド決定回路013へ送る(ステップS18)。
【0032】
スレッショルド決定回路013では、反射波特性記憶回路011から送られてきた現在の送信波電力情報に対応する正常トレーニング時の反射波電力情報及び異常トレーニング時の反射波電力情報と、予めスレッショルド決定回路013内に設定されているスレッショルドレベルポイント設定情報に基づき実際のスレッショルド値が決定される(ステップS19)。
【0033】
上記スレッショルド値決定のアルゴリズムにおける具体的な一例を示すと、スレッショルド決定回路013内において、現在の送信波電力レベルに対応する異常トレーニング時の反射波電力値から現在の送信波電力レベルに対応する正常トレーニング時の反射波電力値を引き算して差分を出し、この差分にスレッショルドレベルポイント設定値を掛け合わせた値を出し、この値を現在の送信波電力レベルに対応する正常トレーニング時の反射波電力値に加えて求めた値が実際のスレッショルド値となる。
【0034】
一方、反射波電力情報はALM判定回路014に入力され、スレッショルド決定回路013からのスレッショルド値と比較され、現在の反射波電力がスレッショルド値と等しいか又は現在の反射波電力がスレッショルド値より小さい場合はVSWRアラームを発動しないで同様の動作を繰り返す(ステップS20)。
【0035】
また現在の反射波電力がスレッショルド値より大きい場合はVSWRアラームを発動する(ステップS21)。
【0036】
このように本発明の実施例は、事前に無線通信装置の設置されている環境において、アンテナポートにおける正常状態情報と異常状態情報を測定しておき、この値を基にVSWRアラームを発動するかどうかの判定基準であるスレッショルド値を設定している。また、前記スレッショルド値を決定する際の実測データは、実際の送信信号のレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングしているため、送信電力用検波回路と反射電力用検波回路のリニアリティ(直線性)誤差を含めたアラーム判定を行っている。
【0037】
(発明の他の実施例)本発明の他の実施例は、図1における試験信号発生回路007や、信号選択回路006を設けずに運用信号の送信レベルのみを使って正常時及び異常時のトレーニング処理を行い、この値を記憶回路に蓄積する。そして、この蓄積された実測データ(正常値データと異常時データ)を基にスレッショルド値を決め、運用開始後の送信電力検波出力と反射電力検波出力のレベル差と当該スレッショルド値を比較しながらアンテナポート周辺の正常性を判断するものである。
【0038】
図4は、本発明の他の実施例におけるアンテナポート監視システムのブロック構成図である。図4に示すように、送信増幅部001、反射電力用検波回路002、A/Dコンバータ003、送信電力用検波回路004、A/Dコンバータ005は図1の構成図と同じである。図1と異なる部分として、正常時の送信電力値及び反射電力値を蓄積するための正常値記憶回路306、異常時の送信電力値及び反射電力値を蓄積するための異常値記憶回路307、現在の送信電力値及び反射電力値を蓄積するための現在値記憶回路308、これらの記憶回路の動作タイミングを指示するための書き込み指示回路312、記憶された正常時の送信電力値と反射電力値のレベル差を計算するレベル差算出回路309、記憶された異常時の送信電力値と反射電力値のレベル差を計算するレベル差算出回路310、記憶された現在の送信電力値と反射電力値のレベル差を計算するレベル差算出回路311、正常時のレベル差算出回路309と異常時のレベル差算出回路310からの値とCPU315から設定された情報を基にスレッショルド値を決定するスレッショルド決定回路313、現在のレベル差算出回路311からの値とスレッショルド決定回路313からの値から最終的にVSWRアラームを判定するALM判定回路314、全体を制御するCPU315から構成される。
【0039】
図5は、本発明の他の実施例におけるトレーニングを含むアンテナポート監視動作のシーケンスフローチャート図である。図5に示すように、初めに設置工事者は、図5の「異常時データ取得ルーチン」で示される異常状態のトレーニングを行うために、アンテナ未接続状態(ステップS101)にして運用信号を発生させる(ステップS102)。
【0040】
この運用信号は送信増幅部001にて増幅されてアンテナポートから出力される。この時送信電力用検波回路004にて検波を行い、A/Dコンバータ005にてディジタル値に変換し、異常値記憶回路307に入力される。同時に反射電力用検波回路002にて検波を行い、A/Dコンバータ003にてディジタル値に変換し、同様に異常値記憶回路307に入力される。
【0041】
書き込み指示回路312は、CPU315の指示により、異常値記憶回路307にトリガ信号を与え、送信波のレベルと反射波のレベルを異常値記憶回路307へ書き込む(ステップS103)。書き込まれた送信波レベルと反射波レベルはレベル差算出回路310に送られ、その差分が計算されてスレッショルド決定回路313に送られ、異常状態のトレーニングが完了する(ステップS104)。
【0042】
続けて設置工事者は、図5の「正常時データ取得ルーチン」で示される正常状態のトレーニングを行うために、アンテナ接続状態(ステップS105)に変更して運用信号を発生させる(ステップS106)。
【0043】
この運用信号は送信増幅部001にて増幅されてアンテナポートから出力される。この時送信電力用検波回路004にて検波を行い、A/Dコンバータ005にてディジタル値に変換し、正常値記憶回路306に入力される。同時に反射電力用検波回路002にて検波を行い、A/Dコンバータ003にてディジタル値に変換し、同様に正常値記憶回路306に入力される。
【0044】
書き込み指示回路312は、CPU315の指示により、正常値記憶回路306にトリガ信号を与え、送信波のレベルと反射波のレベルを正常値記憶回路306へ書き込む(ステップS107)。書き込まれた送信波レベルと反射波レベルはレベル差算出回路309に送られ、その差分が計算されてスレッショルド決定回路313に送られ、正常状態のトレーニングが完了する(ステップS108)。
【0045】
以上説明したトレーニングを行う事により、異常時及び正常時における送信電力検波出力と反射波電力検波出力のレベル差(定在波比)が得られたことになる。
【0046】
そして運用に入る前に設置工事者は、スレッショルドレベルのポイント設定を行う。これはアラームの発動のし易さを決定するもので、CPU315の指示により、スレッショルド決定回路313において正常時のレベル差と異常時のレベル差の間における任意のポイント値を設定している。即ち、少しの劣化に対しても敏感にアラームを発動させたい場合は正常時レベル差に近いポイント値に設定し、大きな劣化が起こった時のみアラームを発動させたい場合は異常時レベル差に近いポイント値に設定する(ステップS109)。
【0047】
上記スレッショルドレベルのポイント設定における具体的な一例を示すと、正常時のレベル差と異常時のレベル差の中間にする場合は50%という値に設定し、正常時のレベル差に近くする場合は30%という値に設定し、異常時のレベル差に近くする場合は70%という値に設定する。
【0048】
上記の処理によりスレッショルド決定回路313では、レベル差算出回路309から送られてきた正常値レベル差情報及びレベル差算出回路310から送られてきた異常値レベル差情報と、予めスレッショルド決定回路313内に設定されているスレッショルドレベルポイント設定情報に基づき実際のスレッショルド値が決定される(ステップS110)。
【0049】
上記スレッショルド値決定のアルゴリズムにおける具体的な一例を示すと、スレッショルド決定回路313内において、異常トレーニング時のレベル差値から正常トレーニング時のレベル差値を引き算して差分を出し、この差分にスレッショルドレベルポイント設定値を掛け合わせた値を出し、この値を正常トレーニング時のレベル差値に加えて求めた値が実際のスレッショルド値となる。
【0050】
次に、運用時のシーケンスを説明する。本発明の他の実施例におけるアンテナポート監視システムは運用時にはTX INからの運用信号を送信回路へ送り、図5の「アラーム監視ルーチン」で示される運用動作を開始する(ステップS110)。 この運用信号は送信増幅部001にて増幅されてアンテナポートから出力される。この時送信電力用検波回路004にて検波を行い、A/Dコンバータ005にてディジタル値に変換し、現在値記憶回路308に入力される。同時に反射電力用検波回路002にて検波を行い、A/Dコンバータ003にてディジタル値に変換し、同様に現在値記憶回路308に入力される。
【0051】
書き込み指示回路312は、CPU315の指示により、現在値記憶回路308にトリガ信号を与え、送信波のレベルと反射波のレベルを現在値記憶回路308へ書き込む(ステップS111)。書き込まれた送信波レベルと反射波レベルはレベル差算出回路311に送られ、その差分を計算してALM判定回路314に送られる。
【0052】
ALM判定回路314では、送られてきた現在のレベル差情報とスレッショルド決定回路313において予め決定されているスレッショルド値とが比較され、現在のレベル差情報がスレッショルド値と等しいか又は現在のレベル差情報がスレッショルド値より小さい場合はVSWRアラームを発動しないで同様の動作を繰り返す(ステップS114)。
【0053】
また、現在の反射波電力がスレッショルドレベルより大きい場合はVSWRアラームを発動する(ステップS115)。
【0054】
このように本発明の他の実施例は、事前に無線通信装置の設置されている環境において、運用信号を使ってアンテナポートにおける正常状態情報と異常状態情報を一回だけ測定しておき、この値を基にVSWRアラームを発動するかどうかの判定基準であるスレッショルド値の設定を実施している。即ち、本発明の他の実施例における簡易な監視システムは、送信電力用検波回路と反射電力用検波回路のリニアリティが確保されているシステムに適用される。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、事前に無線通信装置の設置されている環境において、アンテナポートにおける正常状態情報と異常状態情報を測定しておき、この値を基にVSWRアラームを発動するかどうかの判定基準であるスレッショルド値を設定しているため、最適なスレッショルド値を簡単にしかも客観的に決定することができる。また、前記スレッショルド値を決定する際の実測データは、実際の送信信号のレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングしているため、送信電力用検波回路と反射電力用検波回路のリニアリティ(直線性)誤差を含めたものになっており、リニアリティ補償回路の付加なしにVSWRアラーム監視動作の安定度向上を図ることができる。
【0056】
従って、アンテナポート監視システムの回路規模や調整工数を大幅に削減できると共に、安定性の大幅な向上が達成できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無線通信装置の送信回路部分に本発明のアンテナポート監視システムを適用した場合のブロック構成図である。
【図2】本発明のアンテナポート監視システムにおけるトレーニングを含む動作シーケンスフローチャート図である。
【図3】本発明のトレーニングにおける異常時及び正常時についての送信電力対反射波電力の検波出力カーブを表す図である。
【図4】本発明の他の実施例におけるアンテナポート監視システムのブロック構成図である。
【図5】本発明の他の実施例におけるトレーニングを含むアンテナポート監視動作のシーケンスフローチャート図である。
【図6】従来のアンテナポート監視システムのブロック構成図である。
【図7】図6の従来例を改善したアンテナポート監視システムのブロック構成図である。
【符号の説明】
001 送信増幅部
002 反射電力用検波回路
003、005 A/Dコンバータ
004 送信電力用検波回路
006 信号選択回路
007 試験信号発生回路
008 正常値サンプリング回路
009 異常値サンプリング回路
010 現在値サンプリング回路
011 反射波特性記憶回路
012 書き込み指示回路
013 スレッショルド決定回路
014、108 ALM判定回路
015、209 CPU
106 レベル差算出回路
107、207 スレッショルド設定回路
Claims (4)
- 無線通信装置のアンテナポートとアンテナ及びアンテナフィーダとの接続状態を監視するアンテナポート監視システムであって、
前記監視システムは、無線通信装置の設置に際してアンテナポートの正常接続状態と異常接続状態をトレーニングしてその状態情報を蓄積し、
その後、無線通信装置の運用に際して蓄積されたトレーニング情報を参照しながらアンテナポートの接続正常性を判断するとともに、
前記アンテナポートの正常接続状態と異常接続状態をトレーニングする場合は、運用時の送信信号のレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングすることを特徴とするアンテナポート監視システム。 - 無線通信装置のアンテナポートにおけるVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)を監視するアンテナポート監視システムであって、
前記監視システムは、無線通信装置の設置に際して当該装置のアンテナポートのVSWRをトレーニングするための試験信号を発生し、
前記試験信号を使ってアンテナポートにおける異常状態と正常状態のVSWRをトレーニングし、
前記トレーニングされた異常VSWRと正常VSWRの値に基づきアンテナポートのVSWRの正常性を判断するためのスレッショルドレベルを決定し、
その後前記監視システムは、無線通信装置の運用に際して運用時のアンテナポートのVSWRと前記決定されたスレッショルドレベルとを比較しながらアンテナポートの正常性を判断するとともに、
前記試験信号を使ってアンテナポートにおける異常状態と正常状態のVSWRをトレーニングする場合は、運用時の送信信号と同じレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングすることを特徴とするアンテナポート監視システム。 - 無線通信装置のアンテナポートとアンテナ及びアンテナフィーダとの接続状態を監視するアンテナポート監視方法であって、
前記監視方法は、無線通信装置の設置に際してアンテナポートの正常接続状態と異常接続状態をトレーニングしてその状態情報を蓄積するステップと、
その後、無線通信装置の運用に際して蓄積されたトレーニング情報を参照しながらアンテナポートの接続正常性を判断するステップを有するとともに、
前記アンテナポートの正常接続状態と異常接続状態をトレーニングする場合は、運用時の送信信号のレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングすることを特徴とするアンテナポート監視方法。 - 無線通信装置のアンテナポートにおけるVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)を監視するアンテナポート監視方法であって、
前記監視方法は、無線通信装置の設置に際して当該装置のアンテナポートのVSWRをトレーニングするための試験信号を発生するステップと、
前記試験信号を使ってアンテナポートにおける異常状態と正常状態のVSWRをトレーニングするステップと、
前記トレーニングされた異常VSWRと正常VSWRの値に基づきアンテナポートのVSWRの正常性を判断するためのスレッショルドレベルを決定するステップを有し、
その後前記監視方法は、無線通信装置の運用に際して運用時のアンテナポートのVSWRと前記決定されたスレッショルドレベルとを比較しながらアンテナポートの正常性を判断するステップを有するとともに、
前記試験信号を使ってアンテナポートにおける異常状態と正常状態のVSWRをトレーニングする場合は、運用時の送信信号と同じレベル変動範囲全てに渡ってトレーニングすることを特徴とするアンテナポート監視方法。
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