JP4061546B2 - ろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法 - Google Patents
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(イ)従来から知られているMn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、さらに必要に応じてCu:0.05〜0.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl−Mn系アルミニウム合金を最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を15%未満の低圧下率で圧延すると圧延組織を有するアルミニウム合金薄板が得られ、この圧延組織を有するアルミニウム合金薄板を波形に加工してフィン材としてチューブにろう付けすると、ろう付け後のアルミニウム合金薄板は未再結晶組織を有し、強度の低下を阻止することができる。
(ロ)一方、質量%で(以下、%は質量%を示す)Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金は再結晶しやすい特性を有するのでろう付け中に圧延組織から再結晶組織に変化し、この再結晶組織を有する皮材は、結晶粒界の長さが低減し、溶融ろう材の侵食経路が少なくなるために耐ろう侵食性に優れている。
(ハ)前記ろう付け後の未再結晶組織を有するAl−Mn系アルミニウム合金薄板は、強度に優れているものの、ろう材が粒界に沿って薄板材の内部に侵食し易くなるところから、前記再結晶化しやすいFe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を芯材として使用し、前記Mn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、さらに必要に応じてCu:0.05〜0.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl−Mn系アルミニウム合金を皮材として使用し、前記芯材の両面に前記皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満(好ましくは、5〜10%)の低圧延率で冷間圧延することによりアルミニウム合金クラッド圧延薄板を作製し、このアルミニウム合金クラッド圧延薄板を波形に成形してフィン材として熱交換器のチューブにろう付けすると、ろう付けされた熱交換器のフィン材における芯材はろう付け中に圧延組織から再結晶組織に変化し、一方、皮材はろう付け中に圧延組織から再結晶組織に至らず、再結晶組織に至る途中の未再結晶組織に変化し、再結晶組織を有する芯材の両面に未再結晶組織を有する皮材が積層されたクラッドフィン材がろう付けされた熱交換器が得られ、この熱交換器にろう付けされたクラッドフィン材は未再結晶組織を有する皮材を有するところから強度に優れている。
(ハ)熱交換器にろう付けされたクラッドフィン材の片側の未再結晶組織を有する皮材がろう付けによりろう侵食されても、再結晶組織を有する芯材が内部に積層されているのでろう侵食を芯材が阻止し、フィン材全体が貫通するようなろう侵食は生じない。
(ニ)前記未再結晶組織は、隣接する結晶粒に関して各々の結晶方位の差が20°未満でありかつ各々の結晶粒径が20μm未満の結晶粒が50%以上存在する未再結晶組織からなり、前記再結晶組織は、隣接する結晶粒に関して各々の結晶方位の差が20°以上でありかつ各々の結晶粒径が20μm以上の結晶粒が50%以上存在する再結晶組織からなることが好ましい。
(1)質量%で(以下、%は質量%を示す)Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を芯材とし、その芯材の両面にMn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%、を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金からなる皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延するろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法、
(2)Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を芯材とし、その芯材の両面にMn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%、を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、さらにCu:0.05〜0.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金からなる皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延するろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法、に特徴を有するものである。
(3)Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなり、前記不可避不純物として含まれるZrの含有量を0.03%未満に規制した組成のアルミニウム合金からなる芯材の両面にMn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%、を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、さらに必要に応じてCu:0.05〜0.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金からなる皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延するろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法、に特徴を有するものである。
(4)前記(1)、(2)または(3)記載の製造方法で作製したろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材、に特徴を有するものである。
Fe:
Feは粗大な金属間化合物を作りやすく、それらの粗大晶出物が再結晶の核となるため、ろう付熱処理時の再結晶を促進させる効果があるので添加するが、その添加量が0.3未満では所望の効果が得られず、一方、2.0%を超えて含まれるとフィン材の自己耐食性が低下するので好ましくない。したがって、Feの含有量を0.3〜2.0%に定めた。Fe含有量の一層好ましい範囲は0.5〜1.5%である。
Zrはろう付熱処理時の再結晶を遅延させる作用があるので再結晶組織化するためには芯材には含まれないことが好ましく、不可避不純物として含まれていても可及的に少ないことが一層好ましいところからその含有量は0.03%未満であり、その含有量は0.003%未満であることが一層好ましい。
Mn:
Mnは合金の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金への固溶度が比較的高いため、ろう付熱処理時の再結晶を促進させにくい作用があるが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られないので好ましくなく、一方、Mnを2.5%より多く含有させると、鋳造時の晶出物が粗大化し、加工性が低下するために好ましくない。したがって、皮材に含まれるMnは0.1〜2.5%に定めた。Mn含有量の一層好ましい範囲は1.0〜1.7%である。
Zrはろう付熱処理時の再結晶を遅延させる効果がある。Zrの添加量を0.05〜0.3%と限定したのは、0.05%未満ではその効果が小さく、0.3%を超えると、鋳造時の晶出物が粗大化し、加工性が低下するためである。Zr含有量の一層好ましい範囲は0.10〜0.15%である。
これら成分は、いずれも微細な析出物を形成し、合金の強度を向上させる効果があるが、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%と限定したのは、Si:0.1%未満、Ni:0.05%未満では所望の効果が得られないからであり、一方、Siが1.2%を越えて含有すると融点の低下によりろう付時にフィン材が溶融してしまう可能性があるので好ましくなく、Niが1.2%を越えて含有すると自己耐食性が低下するので好ましくないためである。皮材におけるSi含有量の一層好ましい範囲は0.5〜1.0%であり、Ni含有量の一層好ましい範囲は0.5〜1.0%である。
Cuは合金の強度を向上させる効果があり、必要に応じて添加するが、その添加量を0.05〜0.5%に限定したのは、0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、0.5%を越えて添加するとフィン材の電位が貴になり、チューブとの電位差が小さくなるため、所望の犠牲陽極効果が得られないとともに、フィン材自身の自己耐食性も低下し、さらに鋳造時に割れ等が生じやすくなるために好ましくないからである。Cu含有量の一層好ましい範囲は0.10〜0.20%である。
最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧下率とした理由は、この圧下率が5%以下ではフィン材における芯材および皮材のいずれもろう付けにより再結晶せずに未再結晶組織となるため、芯材のろう侵食防止層としての役割が期待できないので好ましくなく、一方、この圧下率が15%以上になると、芯材および皮材のいずれもろう付けにより再結晶組織となるため、皮材の強度向上の役割が期待できないので好ましくない理由によるものである。
芯材のクラッド率(被覆率)は特に規定するものではないが、高強度を維持する上で70%以下が良い。また例えば板厚0.10mm以下のような薄肉材では芯材のクラッド率が低いと、ろうの侵食防止の効果が効きにくくなる可能性があるためため、望ましくは芯材クラッド率は40%以上が良く、40〜70%の範囲内にあることが好ましい。
前記アルミニウム合金クラッドフィン材は、Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を芯材として使用し、Mn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、さらに必要に応じてCu:0.05〜0.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を皮材とし、前記芯材の両面に皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延することにより製造される。
したがって、前記芯材の両面に皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚まで冷間圧延することは従来の方法と同じであるが、この発明の製造方法は、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延することを構成要件の一つとするものである。
得られた表1〜2に示される構成のクラッド圧延フィン材A〜Zを熱交換器のチューブにろう付けすることを想定して、クラッド圧延フィン材A〜Zをろう付け条件と同じ条件の窒素雰囲気中、温度:600℃、3分間保持する熱処理を施したのち、熱処理後の引張試験片の組織について、芯材および皮材の断面における任意の個所の1.6mm×1.6mmの1視野における結晶粒の方位および粒径をSEM−EBSP(EBSP: Electron Back-Scatter diffraction Pattern)により測定し、その測定結果に基づいて、隣接する結晶粒に関して各々の結晶方位の差が20°未満でありかつ各々の結晶粒径が20μm未満の結晶粒が50%以上存在する組織を未再結晶組織とし、隣接する結晶粒に関して各々の結晶方位の差が20°以上でありかつ各々の結晶粒径が20μm以上の結晶粒が50%以上存在する組織を再結晶組織として認定し、その結果を実施例1〜19、比較例1〜6および従来例から得られた結果として表3〜4に示した。さらに、下記の試験を行った。
表1〜2に示される構成のクラッド圧延フィン材A〜Zを熱交換器のチューブにろう付けすることを想定して、クラッド圧延フィン材A〜Zをろう付けする条件と同じ条件の窒素雰囲気中、温度:600℃、3分間保持の熱処理を施したのち、熱処理後のクラッド圧延フィン材から引張試験片を作製し、この引張試験片を用いて引張試験を行い、その結果を実施例1〜19、比較例1〜6および従来例の結果として表3〜4に示した。
JIS 3003で規定されている成分組成を有するアルミニウム合金板の片面にJIS 7072で規定されている成分組成を有するろう材層を形成し、他方の面にJIS 4343で規定されている成分組成を有する犠牲陽極層を形成した厚さ:0.3mmのブレージングシートを用意し、このブレージングシートのろう材面にコルゲート加工した表1〜2に示されるクラッド圧延フィン材A〜Zを組付け、これにフラックスを塗布したのち窒素雰囲気中、温度:600℃、3分間保持の条件のろう付けを行い、ろう付け部分のクラッド圧延フィン材の断面を観察することにより、表面からの最大ろう侵食深さを測定し、その結果を実施例1〜19、比較例1〜6および従来例の結果として表3〜4に示すことにより各フィン材の耐ろう侵食性を評価した。
2 ろう付け部分
3 アルミニウム合金クラッドフィン材
4 芯材
5 皮材
5´ 皮材
Claims (4)
- 質量%で(以下、%は質量%を示す)Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を芯材とし、その芯材の両面にMn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%、を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金からなる皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延することを特徴とするろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法。
- 質量%で(以下、%は質量%を示す)Fe:0.3〜2.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を芯材とし、その芯材の両面にMn:0.1〜2.5%、Zr:0.05〜0.3%、を含有し、さらに、Si:0.1〜1.2%、Ni:0.05〜1.2%の内の1種または2種を含有し、さらにCu:0.05〜0.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金からなる皮材をクラッドして合せ材を作製し、この合せ材を430〜530℃の温度で均熱処理を行った後、これを熱間圧延し、その後少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までの圧下率を5超〜15%未満の低圧延率で冷間圧延することを特徴とするろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法。
- 前記芯材は、不可避不純物として含まれるZrの含有量を0.03%未満に規制した組成のアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1または2記載のろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材の製造方法。
- 請求項1、2または3記載の製造方法で作製したことを特徴とするろう付け後強度に優れたアルミニウム合金クラッドフィン材。
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