JP4060091B2 - 光偏向素子及び画像表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電気信号により光の方向を変える光偏向素子、及び、この光偏向素子を利用した画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような光偏向素子は、外部からの電気信号により光の光路を偏向、すなわち、入射光に対して出射光を平行にシフトするか、ある角度をもって回転させるか、あるいは、その両者を組合せて光路を切り換えるための光学素子である。
【0003】
液晶材料を用いた光偏向素子としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0004】
まず、特開平6−18940号公報には、光空間スイッチの光の損失を低減することを目的に、人工複屈折板からなる光ビームシフタが提案されている。
【0005】
また、ピクセルシフト素子としては、特許第2939826号公報、特開平6−324320号公報、特開2000−193925公報に開示の技術が知られている。
【0006】
ここでいうピクセルシフト素子とは、少なくとも画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が二次元的に配列された画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材の間の光路を偏向する光偏向素子とを有し、サブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示することで、画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示する画像表示装置において、光偏向素子として使用されるデバイスである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のピクセルシフト素子では、構成が複雑であるために、製造コストが高く、装置が大型化してしまい、また、光量損失、光学ノイズが多いという不具合があることに鑑み、本出願人は、これらの不具合を解決し、簡易な構成で、製造コストが低く、装置を小型化でき、また、光量損失、光学ノイズが少ない光偏向素子を提案している。
【0008】
すなわち、特願2001−14321(平成13年1月23日出願、本出願時において未出願公開)では、透明な一対の基板と、この基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層と、この液晶に電界を加える為の電極とを備えている光偏向素子を提案している。
【0009】
また、特願2001−287907(平成13年9月20日出願、本出願時において未出願公開)では、このような光偏向素子において、所望の光路シフト方向に対して略平行に配置された複数本の電極ライン群を有し、ある時刻における各電極ラインに印加する電圧値を段階的に異なる値に設定する光偏向素子を提案している。
【0010】
しかしながら、特願2001−287907の明細書に開示の技術においては、ホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層を用いているため、液晶層が充填されている一対の基板の板面と垂直の方向から電界をかけることができず、必ず基板の板面方向から電界をかけなければならない。
【0011】
そのため、基板の全面に渡って均一な横電界を発生させようとすると、印加する電圧の最大値と最小値との差は極めて大きな値とならざるをえない。例えば、特願2001−287907の明細書において、発明の実施の形態として、2mmの間隔に200Vの電圧を印加する例が開示されているが、素子寸法として、仮にこの間隔を40mmとしたときには4000Vの電位差が必要になることになる。このような高電位差を得るためには電源に負荷がかかるばかりでなく、これを高速でスイッチングした場合には、周辺への電磁ノイズの影響も無視できなくなるという不具合がある。
【0012】
この発明の目的は、基板の板面方向に電界を加えるために必要な駆動電圧を抑制し、電源の負荷を軽減し、周辺への電磁ノイズの影響も低減することである。
【0013】
この発明の別の目的は、駆動電圧の抑制を簡易な手段で実現し、かつ、光偏向素子を透過する光の損失を低減することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、一対の透明な基板と、この基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相からなる液晶層と、この液晶層に対し前記基板の板面方向に電界を加えて液晶層を透過する光の光路を偏向する電極と、を備え、前記液晶層は、前記電界の方向に複数に分割されていて、前記電極は、この液晶層の各分割部分に個別に電界を加える光偏向素子において、前記液晶層は、自発分極の極性の異なる2種類の液晶が前記各分割部分の境界部で前記電界方向に交互に現れるものであり、前記電極は、前記各分割部分の境界部と前記液晶層の前記電界方向の両端部とにそれぞれ設けられていることを特徴とする光偏向素子である。
【0015】
したがって、液晶層は電界の方向に複数に分割されていて、この液晶層の各分割部分に個別に電界を加えるので、基板の板面方向に電界を加えるために必要な駆動電圧を抑制することができ、電源の負荷を軽減し、周辺への電磁ノイズの影響も低減することができる。
また、液晶の分割方向に並ぶ各電極に交互に極性の異なる電圧を印加するだけで、液晶層の各分割部分の電界方向も液晶自発分極の極性に対応して交互に入れ替わるので、駆動電圧の抑制が簡易な手段で実現でき、また、各分割部分の境界部を狭くして、光偏向素子を透過する光の損失を低減することができる。
【0016】
なお、各分割部分の液晶は全て同種のものを使用する必要はなく、自発分極の極性の異なる2種類以上の液晶を用いて、各分割部分で液晶の種類が異なるようにしてもよい。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記一対の基板は、各液晶層の分割部分において同一の一対の基板である。
【0018】
したがって、光偏向素子の構成を簡易にすることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記一対の基板の少なくとも一方の前記液晶層側の表面には、前記液晶層の各分割部分の境界部をなす前記基板と一体成形された凸部が形成されている。
【0022】
したがって、液晶層の各分割部分の境界部を形成するためにフォトリソグラフィー技術を採用することができるので、境界部に極めてギャップ精度のよいスペーサを兼用させることができ、また、境界部の幅を充分に狭く形成できるので、光偏向素子を透過する光の損失を低減することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記一対の基板の少なくとも一方の前記液晶層側の表面には、前記液晶層の各分割部分の境界部をなす前記基板上に光硬化樹脂材料で形成された凸部が設けられている。
【0024】
したがって、液晶層の各分割部分の境界部形成に、基板のエッチングの工程を必要としないため、製造コストを低減することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記電極は、前記各分割部分の境界部と前記液晶層の前記電界方向の両端部とにそれぞれ介装されていて、前記境界部では前記凸部の少なくとも一部を形成している。
【0026】
したがって、電極と境界部とを別々に形成する場合に比べて、工程数を減少させて、製造コストを低減することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、隣り合う前記電極間の前記液晶層をそれぞれ複数に分割する位置に、液晶層ごとに1又は複数本の電極がさらに形成されている。
【0028】
したがって、液晶層の各分割部分をさらに複数に分割する位置に設けられている1又は複数本の電極に適切な電圧を印加することにより、液晶層に加えられる電界の分布を均一にすることができる。
【0029】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかの一に記載の発明において、前記液晶層は、コーン角が略等しくなる温度域を有している2種類の液晶を分割部分ごとに交互に配置してなる。
【0030】
したがって、2種類の液晶層でそれぞれ逆方向の電界が加えられても、ほぼ同方向に液晶分子の方向をそろえることができるので、良好な光偏向を行うことができる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、画像フィールドを時間的に更に細分割した複数個の画像サブフィールドごとに照明光を画像情報に基づいて空間光変調して画像光として出射する画像表示素子と、この画像表示素子と同期し、前記画像サブフィールドごとに駆動される前記画像表示素子の各画素から入射されてくる画像光の光路を偏向して前記画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示する請求項1〜7のいずれかの一に記載の光路偏向素子と、を備えている画像表示装置である。
【0032】
したがって、請求項1〜7のいずれかの一に記載の発明と同様の作用、効果を奏する。
【0033】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施の形態である画像表示装置の概要を示す概念図である。図1において、符号1は、照明用の光源であり、白色あるいは任意の色の光を高速にON、OFFできるものであるならば、いかなる種類や型の光源であっても利用することができる。たとえば、LEDランプやレーザ光源、あるいは、白色のランプ光源などを2次元アレイ状に配列して、かかる光源に対して高速動作するシャッタを組合せたものなどを照明用の光源として用いることができる。
【0034】
符号2は、光源から出た光を均一に画像表示素子3に照射させるための照明装置であり、拡散板2a、コンデンサレンズ2bなどから構成される。
【0035】
符号3は、照明装置2から入射した均一の照明光を、画像フィールドを時間的に更に細分割した複数個の画像サブフィールドごとに、画像情報に基づいて空間光変調して、画像光として出射する画像表示素子である。画像表示素子3としては、透過型液晶ライトバルブ、反射型液晶ライトバルブ、DMD素子などを用いることができる。
【0036】
符号4は、前記画像サブフィールドごとに、画像表示素子3から出射される画像光の光路を偏向して、偏向画像光として出射する光偏向素子である。該光偏向素子4により、画像サブフィールドごとの光路の偏向量に応じて、スクリーン6上に投射される画像表示位置がずらされる状態となる画像パターンを表示させることが可能となり、画像表示素子3の実際の画素数を見かけ上増倍した画素数として、画像表示させることができる。
【0037】
符号5,6は、画像表示素子3に表示された画像パターンを観察するための光学部材であり、符号5は投射レンズ、符号6はスクリーンである。さらに、符号7は光源1を駆動するための光源駆動手段であり、符号8は画像表示素子3を駆動するための表示駆動手段であり、符号9は光偏向素子4を駆動するための光偏向駆動手段である。また、符号10は、光源駆動回路7、表示駆動回路8、光偏向駆動回路9などを含め画像表示装置の全体を制御するための画像表示制御回路である。
【0038】
次に、図1に示す画像表示装置の基本的な動作について説明する。光源駆動回路7で制御されて光源1から放射された光は、拡散板12aにより均一化された照明光となり、コンデンサレンズ2bにより、光源駆動回路7と同期して動作する表示駆動回路8により制御されている画像表示素子3をクリティカルに照明する。ここでは、画像表示素子3の例として、透過型液晶パネル、すなわち、透過型液晶ライトバルブを用いている。透過型液晶ライトバルブからなる画像表示素子3により空間光変調された照明光は、画像光として光偏向素子4に入射され、光偏向素子4から出射された出射光は、偏向画像光として、投射レンズ5で拡大された後、スクリーン6に投射される。すなわち、透過型液晶ライトバルブからなる画像表示素子3の画像光の出射側に配置されている光偏向素子4によって、画像光は、光偏向駆動回路9からの駆動信号に応じて、画素の配列方向に任意の距離だけシフト(偏向)された偏向画像光として出射されて、投射レンズ5を介して、スクリーン6上に投射される。
【0039】
なお、図1においては、透過型液晶ライトバルブからなる画像表示素子3の直後に、光偏向素子4を配置しているが、光偏向素子4の配置位置はかかる場合に限定されるものではなく、スクリーン6の直前などに配置することとしても良い。ただし、スクリーン6付近に配置する場合、光偏向素子4を形成する光偏向素子の大きさや、更には、光偏向素子を形成する透明電極の配設ピッチなどを、光偏向素子4の配置位置における画面サイズや画素サイズに応じて設定することが必要になる。
【0040】
しかし、いかなる配置位置に光偏向素子4を配置する場合であっても、前記偏向画像光の光路のシフト(偏向)量は、画素ピッチの整数分の1であることが望ましい。すなわち、画素の配列方向に対して2倍の画素増倍を行なう場合は、偏向画像光の光路のシフト量は、画素ピッチの1/2とし、配列方向に対して3倍の画素増倍を行なう場合は、画素ピッチの1/3とすることが望ましい。また、光偏向素子4の構成によって、偏向画像光の光路のシフト量が画素ピッチよりも大きくなる場合には、光路のシフト量を画素ピッチの(整数倍+整数分の1)の距離に設定してもよい。
【0041】
この光偏向素子4を画素配列方向の縦横2次元に用いることにより、例えば2倍の画像増倍を行なう光偏向素子を2枚用いることにより、図2に示すように、見かけ上の画素4倍の効果が得られ、使用した透過型液晶ライトバルブの解像度以上の高精細な画像を表示することができる。また、光偏向素子4の構成によってシフト量が大きくなる場合には、シフト量を画素ピッチの(整数倍+整数分の1)の距離に設定しても良い。いずれの場合も、画素のシフト位置に対応したサブフィールドの画像信号で透過型液晶ライトバルブである画像表示素子3を駆動する。
【0042】
なお、図1では、単板の透過型液晶ライトバルブと単色LEDランプを用いた単色の画像表示装置を示したが、3原色の光源1と、照明装置2と、3枚の画像表示素子3とを用いて、3原色の画像を混合してフルカラー画像を表示させることもできる。また、単板の画像表示素子3を時間順次に三原色光で照明するフィールドシーケンシャル方式でもフルカラー画像を表示することができる。この場合、三色の光源1からの光路をクロスプリズムで混合して照明しても良いし、白色ランプ光源1と回転カラーフィルターの組合せで、時間順次の三原色光を生成してもよい。
【0043】
以下では、図1に示す画像表示装置などに適用する光偏向素子4等について詳細に説明する。
【0044】
図3は、光偏向素子4の一構成例の斜視図である。図3において、13a,13b,13cはそれぞれガラスなどで構成された一対の透明な基板である。この一対の基板13a,13b,13cそれぞれの少なくとも片側には、内側面に配向膜12a,12b,12cが形成されており、この配向膜12a,12b,12cと他方の基板13a,13b,13c(又は、他方の配向膜12a,12b,12c)との間には、キラルスメクチックC相の、例えば、強誘電液晶からなる液晶層11a,11b,11cが充填されている。この液晶層11a,11b,11cの自発分極は、液晶層11aと11cとが同極性(マイナス)であり、液晶層11bが液晶層11a及び11cと逆極性(プラス)となるように設定されている。
【0045】
光偏向素子4には、基板13a,13b,13cの面方向に電界が発生するように電極14a,14b,14c,14dが配置される。各電極14a,14b,14c,14dは、いずれも多数本のライン状の電極が並列した構成(ライン電極)であり、本例の場合、各液晶層11a,11b,11cの境界部にそれぞれ電極14b,14cが、また、液晶層の両端部にそれぞれ電極14a,14dが設けられている。すなわち、電極14a,14bは強誘電液晶層11a及び基板13aを基板13aの面方向から挟み、電極14b,14cは強誘電液晶層11b及び基板13bを基板13bの面方向から挟み、電極14c,14dは強誘電液晶層11c及び基板13cを基板13cの面方向から挟むように、それぞれ配置される。
【0046】
これらの電極14a,14b,14c,14dには、光路偏向駆動回路9により電圧が印加される。そして、電極14a,14b,14c,14dの電位は、電極14a,14b間、電極14b,14c間、電極14c,14d間の各液晶層11a,11b,11cの極性に対して、それぞれ一定方向に電界が向くように決定されている。この例では、液晶層11aと11cとが同極性(マイナス)であり、液晶層11bが液晶層11a及び11cと逆極性(プラス)となるように設定されているので、例えば、電極14a,14cに同電位(+Vボルト)を印加し、電極14b、14dには、これと絶対値が等しく極性の異なる電圧(+Vボルト)を印加することができる(図4(a))。これによって、液晶層11aと11cにはほぼ同等の電界がかけられ、液晶層11bにはこれと反対方向の電界がかけられる。
【0047】
また、画像表示制御回路10による光路偏向駆動回路9の制御により、所定時間毎に各液晶層11a〜11cへの電界の印加方向を反転させるようにすれば、図5(a)に示すように、2方向の光シフトを行なうことが可能となる(図5(a)において、矢印aは光シフトがないときの光の進行方向、矢印b,b´は2方向の光シフトのそれぞれの光の進行方向)。
【0048】
この際、図6に示すように、印加電圧を単純に逆転させることで電界方向を反転させることができ(図6中の電位を示す実線から破線に、あるいは、破線から実線に切り換える)、液晶分子スイッチング及び光シフト方向反転が容易に行なえる。また、印加電圧の極性を反転させることで、液晶分子を電気的に中和させることが可能となるため、いわゆる焼付き現象を防ぐ効果もある。なお、図4,図6において、電位を示す実線と破線が直線とはならないのは、液晶を挟む電極14a,14b,14c,14dが理想的な面積無限大の平行平板ではないからである。
【0049】
ところで、スメクチック液晶は、液晶分子の長軸方向が層状に配列してなる液晶分子であり、この層の法線方向(層法線方向)と液晶分子長軸方向が一致している液晶をスメクチックA相、法線方向と一致していない液晶をキラルスメクチックC相と呼んでいる。
【0050】
キラルスメクチックC相強誘電液晶は、一般的に外部電界が働かない状態において各層毎に液晶ダイレクタ方向が螺旋的に回転している、いわゆる螺旋構造をとり、キラルスメクチックC相反強誘電性液晶は各層毎に液晶ダイレクタが対向する方向を向く。これらキラルスメクチックC相よりなる液晶は、不斉炭素を分子構造に有し、これによって自発分極しているため、この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方向に液晶分子が最配列することで,光学特性が制御される。この光偏向素子4では、強誘電性液晶を例として説明を行なうが、反強誘電性液晶も適用することができる。
【0051】
キラルスメクチックC相強誘電液晶の構造は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キラル部などよりなる。主鎖構造としてはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシエチレンなどが利用可能である。スペーサは、分子回転を担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるためのものであり、適当な長さのメチレン鎖等が選ばれる。また、カイラル部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結合する結合部には、−COO−結合等が選ばれる。
【0052】
ホメオトロピック配向のための配向法としては、従来から行われている方法を適用することができる。すなわち、1.ずり応力法、2.磁場配向法、3.温度勾配法、4.SiO斜法蒸着法、5.光配向法等を用いることができる(その詳細については、例えば、“竹添、福田著「強誘電性液晶の構造と物性」コロナ社刊、p.235”を参照)。
【0053】
また、キラルスメクチックC相は、スメクチックA相やネマチック液晶に比較してきわめて高速な応答性を有しており、サブmsの速度でのスイッチングが可能であるという特徴がある。特に、電界方向に対して液晶ダイレクタ方向が一義的に決定されるため、スメクチックA液晶に比べ、ダイレクタ方向制御が容易であり、扱いやすい。
【0054】
以下、図1に示す光偏向素子4の動作を、図7を参照して説明する。図7は、図1の液晶層11a,11b,11cの液晶配向を模式的に示したものである。なお、配向膜12a〜12cや基板13a,13b,13cは図示を省略し、電極14a〜14dと液晶層11a〜11cのみを示している。電極14a〜14dからは、前記したとおり、隣り合う液晶層11a,11b,11c毎に異なる方向の電界が発生しており、これを矢印15a,15b,15cで示している。液晶層11a,11cは負の自発分極を有する液晶からなり、液晶層11bは正の自発分極を有する液晶からなる。図7に示すように、自発分極の方向は電界方向に依存しており、液晶分子21はいずれの場合も同じ方向(図7では右上がりの方向)に傾斜している。前記のように電界を反転させれば、液晶分子の方向も反対(右下がりの方向)を向く。
【0055】
入射光は直線偏光であり、偏向方向は図7中上下の矢印で示すとおり上下方向であって(以後同様に偏光方向については上下あるいは左右の矢印で入射光に重ねて示す)、その偏光方向は電界方向に略直交するように設定される。図7において、直交座標系を図示するように、入射光の方向をX方向、電界をかける方向をY方向、偏向方向をZ方向としたとき(なお、図3、図5においても同様)、液晶層11a〜11c内のXZ断面において、図7に示すとおり液晶分子21は、その電界方向によって,第1の配向状態または第2の配向状態のいずれかの状態をとって分布する。θは液晶回転軸からの液晶分子21の傾き角である(以後、単に傾き角と呼ぶ)。液晶の自発分極Psが負であり、Y軸正方向(図7における紙面上向き)に電界Eがかかっているものとすると、液晶ダイレクタは液晶回転軸が略X方向であるため、XZ面内において図7中右上がり(第1の配向状態)に向く。液晶の自発分極Psが正であり、Y軸負方向(図7における紙面下向き)に電界Eがかかっているときも、同様に、液晶ダイレクタは液晶回転軸が略X方向であるため,XZ面内において図7中右上がり(第1の配向状態)になる。
【0056】
以上のように異なる極性の液晶とこれを駆動する電界を制御することで、液晶分子を同方向に揃えることが可能となり、素子全域に渡り均一な光路シフトが実現する。
【0057】
図7の構成におけるY方向の位置と電位の大きさとの関係を、図4(a)に示す。液晶層を従来と同様の単一の層とし(これを液晶層11dとする)、これに図2の場合と同等の電界を印加しようとする場合は、図4(b)に示すように、3倍の電圧を加えなければならないため、本実施の形態における光偏向素子4の場合は、低電圧化の効果はきわめて大きい。
【0058】
次に、光偏向素子4に光を透過させる場合の光シフトについて説明する。液晶分子21の長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をnoとすると、入射光として、偏光方向をY軸方向にもつ直線偏向を選び、X軸正方向に入射光が進むとき、光は液晶内で常光として屈折率noを受け直進し図中a方向に進む。すなわち光偏向は受けない。
【0059】
一方、偏光方向がZ軸方向である直線偏光が入射するとき、入射方向の屈折率は液晶ダイレクタ方向及び屈折率no,neの両者から求められる。より詳しくは、屈折率no,neを主軸にもつ屈折率楕円体において楕円体中心を通過する光の方向との関係から求められるが、ここでは詳細は省略する。光は屈折率no,ne及びダイレクタ方向θに対応した偏向を受け、図5中の矢印b(第1の配向状態の場合)に示す方向にシフトする。今、液晶層11a〜11cの厚み(ギャップ)をdとするとき、シフト量Sは以下の式であらわされる(これについては、例えば、“「結晶光学」応用物理学会、光学懇話会編、p.198”を参照)。
【0060】
Figure 0004060091
電界方向を反転させたとき、液晶ダイレクタは図5においてX軸を中心とした線対称の配置(第2の配向状態)を取り、偏光方向がZ軸方向である直線偏光の進行方向は図5中で矢印b´に示すとおりとなる。従って、この直線偏光に対して、電界方向を制御することで、矢印bと矢印b´の2位置の距離、すなわち、2S分の光偏向が可能となる。液晶材料の代表的物性値(no=1.6,ne=1.8)に対して得られる光偏向量について、光偏向量Sを計算した結果を図8に示す。図8のグラフでは、液晶膜厚ごとに液晶の配向角と光軸のシフト量との関係を示している。なお、図8において、100〜5μmで示しているのは液晶の膜厚である。図8においては、θ=45°付近が最も光偏向量が大きい。例えば、液晶ダイレクタの傾き角(コーン角/2)が22.5°のとき、“2・S=5(μm)”の偏向量を得るためには、液晶の厚みを32μm厚に設定すればよいことがわかる。
【0061】
液晶層11a〜11cとして使用する液晶の種類は、極性の異なる液晶を組合せるのであれば様々なものを用いることができるが、図8及び図6に示すように液晶層11a,13aに加わる電界の大きさ、方向がほぼ同じであれば、これらの位置に充填する液晶としては同一のものを用いるのが望ましい。液晶層11bには、液晶層11a,11cとは極性が異なる液晶を用いる必要があるが、さらに、光シフト量を均一化するため、液晶層11a,11cに用いる液晶とコーン角が同等である液晶を用いることが望ましい。
【0062】
この場合に、極性の異なる2種類の液晶を交互に設けることで、大面積の光偏向素子を、製造工程を煩雑にすることなく製造することが可能となる。
【0063】
液晶分子21の傾き角が22.5°、すなわち、コーン角が45°付近の強誘電性液晶材料として、自発分極が正であるものとしては、FELIX-018/000(Clariant社製)、負のものとしてはCS1029(チッソ社製)などがあり、例えば液晶層11a,13aに後者を、12aに前者を用いることができる。
【0064】
なお、図3に示す構成では、液晶は3つに分割されているが、分割数はこの限りではないことはいうまでもない。分割数を多くしたときは電極間幅を小さくできるので、より低電圧化が図れる。ただし、境界部面積(電極などが占める面積)が増大するため、光利用効率は低下する。
【0065】
図3以下の説明では、便宜上、液晶層が11a,11b,11cの3つに分割されている例で説明したが、実際は、図3を参照して説明した極性の異なる液晶からなる液晶層11aと11bとが電界方向に連続的に現れるような構成とすることができる。すなわち、図9に示すように、極性の異なる2種の液晶でそれぞれ構成された各液晶層41,42が電界の方向に交互に現れるようにストライプ状に配列し、その各液晶層41,42の電界方向の間隔を、例えば、5Vの電圧印加に対して駆動可能となるように所定の幅に設定することで、TTL(Transistor Transistor Logic)レベルでの制御が可能となる。例えば、従来のように極性が一様な液晶からなる液晶層の40mmの幅を駆動するのに、4kVの駆動電圧が必要であったとすると、例えば、各液晶層41,42の電界方向の間隔を50μm程度とすれば、TTLレベルでの駆動が可能となる。
【0066】
なお、図3の光偏向素子4の作製は、各液晶層11a〜11cを個別に作製した後、電極14a〜14dを介してこれらを貼り合わせることで、実現できる。
【0067】
本実施の形態の画像表示装置では、以上説明した光偏向素子4を使用する。そして、光偏向素子4を通過する光がケラレることなく光偏向素子4を通過するためには、光偏向素子4としては、画像表示素子3の面積、画像表示素子3からの距離、光の広がり角から求められるサイズ以上の大きさが必要である。仮に、このサイズを40mmとし、光偏向素子4を駆動するための電界が100V/mmであるとすると、従来構成の光偏向素子では4000Vの電位差が必要であったが、本実施の形態の光偏向素子を用いることで、4000V/(液晶層の分割数)に低減することができる。例えば、図3、図10〜図13に示すように3分割すると、1333Vに低減することができる。従って、画像表示装置内の電源への負荷を低減すると同時に、電圧スイッチング時の電磁ノイズを低減させることができるため、周辺機器への影響を低減させることが可能となる。
【0068】
以上説明した画像表示装置によれば、その光偏向素子4において、液晶層は、液晶層11a〜11cに電界の方向に複数に分割されていて、この各分割部分11a〜11cに、電極14a〜14dにより個別に電界を加えるので、基板13a〜13cの板面方向に電界を加えるために必要な駆動電圧を抑制することができ、電源の負荷を軽減し、周辺への電磁ノイズの影響も低減することができる。
【0069】
この場合に、各液晶層11a〜11cは、同種の液晶を用いてもよいが、これだと、各液晶層11a〜11cの境界部には、その両側の液晶層にそれぞれ対応した2枚の電極を用意し、しかも、この2枚の電極に異なる電圧を印加しなければならないので、2枚の電極の間に絶縁性のスペーサなどを介装しなければならず、構成が複雑になって、製造コストが増大するのみならず、各液晶層11a〜11cの境界部の幅が厚くなって、光偏向素子4を透過する光の損失が増大する。
【0070】
そこで、前述のように、自発極性の異なる液晶からなる液晶層11a〜11cを電界の方向に交互に配置するようにすれば、液晶層11a〜11cの分割方向に並ぶ各電極14a〜14dに交互に極性の異なる電圧(+Vボルト、−Vボルト、+Vボルト、−Vボルト、…)を印加するだけで、液晶層の各分割部分11a〜11cの電界方向も、液晶の自発分極の極性に対応して交互に入れ替わるので、駆動電圧の抑制が簡易な手段で実現できる。また、各分割部分11a〜11cの境界部を狭くして、光偏向素子4を透過する光の損失を低減することができる。
【0071】
以下では、図1〜図9を参照して説明した光偏向素子4の各種変形例等について説明する。以下の説明で、図1〜図9と同一の部材等には同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0072】
図10は、光偏向素子4の別構成例の断面図である。図3の構成との相違点は、2種類以上の液晶層が、同一の基板13,13間に挟まれ、2次元的に配列されてなることである(これに伴い、配向膜も1枚の配向膜12を使用する)。よって、図3の構成のように、液晶層11a〜11cごとに別体の基板13a〜13cを用いる構成ではないので、製造工程を低減でき、また、各液晶層11a〜11cの境界部をより狭くすることができるので、光利用効率の低下を抑えられる利点がある。
【0073】
また、少なくとも一方の基板13の表面には、液晶層11a,11b,11c間の境界を形成するための凸部51が形成されている。この凸部51は、基板13がガラス材料である場合は、基板13の表面を直接フォトリソグラフィー、熱転写等の技術によって加工することで形成でき、プラスチック材料の場合は、これらの技術に加え、射出成形する際のスタンパ表面に所定形状を形成しておき、これを転写することによって形成することもできる。凸部51の表面、及び、液晶層11a,11cの電界方向外側の側部には、ライン状の電極14が形成されている。この電極14のうち、凸部51の表面に形成されるものは、基板13の表面の液晶が充填される部分をマスクした状態で、凸部51にのみ、ITO,Alなどの導電性材料をスパッタ法などで形成することで作成することができる。ITOを用いる場合は、材料が透明であるため、光利用効率の低下を抑えられ、また、周期構造にともなう回折などを抑えられる。一方、Alを用いる場合は、凸部51に入射する光を吸収するため、光偏向しない成分の光、すなわち、ノイズ光の出射を抑えることが可能となる。
【0074】
各電極14の電位や、電極14間の距離Lは、液晶の種類毎に変化させてもよい。すなわち、各液晶層11a〜11cの両側の電極14の電位と電極間距離Lとが、各液晶層11a〜11c内における電界分布を支配的に決定するため、液晶の種類に応じて、これらの組合せを適宜定めればよい。
【0075】
図10に示す光偏向素子4の製作にあたっては、凸部51を介して両基板13を密着させ、必要ギャップを確保すると同時に、凸部51をまたぐ液晶の流出を防ぐために、密着時(空セル作製時)に接着剤を用いて隙間を埋めるのが望ましい。両基板13間の空セルに対して液晶を充填するには、対象となる空セル以外を封止した状態で、個別に毛管法、真空注入法などの周知の技術を用いて行なえばよい。
【0076】
なお、マイラーフィルムなどにより、各液晶層11a,11b,11cの間の境界部を形成することも可能であるが、凸部51を用いる場合に比べると、各液晶層11a,11b,11c間の境界の幅を狭めることはできないため、光利用効率上は望ましくない。
【0077】
図11は、光偏向素子4の別構成例の断面図である。図10の構成との相違点は、境界部となる凸部51が光硬化樹脂材料で形成されていることである。
【0078】
光硬化樹脂材料よりなる凸部51を形成する方法としては、例えば、一方の基板13の表面にスピンコートなどにより光硬化樹脂の前駆体を堆積させ、これにマスク露光や紫外線描画などによりパタニングし、凸部51を形成した後、基板13対を貼り合わせる方法や、一方の基板13の表面にスピンコートなどにより光硬化樹脂の前駆体を堆積させ、基板13対を所定のギャップを保持した状態で前駆体を介して密着させ、これにレーザや電子線などにより描画することでパタニングし、凸部51を形成する方法がある。特に、後者の場合、基板13間を光硬化樹脂で密着できるため、液晶の流出等の不具合発生を抑える効果が大きい。電極14の形成法としては、図10に示す光偏向素子4の場合と同様の方法を用いることができる。
【0079】
図12は、光偏向素子4の別構成例の断面図である。図10、図11の構成との相違点は、スパッタ工程による電極14の形成に代えて、既存の金属細線を凸部51の内部に埋め込むことで、電極14を形成することである。
【0080】
その製造方法は、凸部51の硬化前に、硬化部にライン状の電極14となる金属細線を配置し、その後、光硬化させることで実現できる。金属細線を用いることで、スパッタ等の真空製膜工程を用いずに光偏向素子4を形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0081】
図13は、光偏向素子4の別構成例の断面図である。図11、図12の構成との相違点は、ライン状の電極14が、光硬化樹脂材料よりなる凸部51と、基板13との間に設けられ、また、ライン状の電極52が、隣り合う電極14,14間の液晶層11a,11b,11cをそれぞれ複数に分割する位置に、液晶層11a,11b,11cごとに1又は複数本、凸部51が形成される基板13の液晶層11a,11b,11c側に形成されていることである。
【0082】
電極52は、電極14の電位を補完し、電極14、14間の電界を均一にさせるために設けられる。電極52は、基板13に、ITO等、透明電極として形成するのが、光利用効率を低下させない点から望ましい。この場合、電極52と液晶層11a,11b,11cとの間に誘電体層を設けてもよい。
【0083】
前述したように、図4,図6において、電位を示す実線と破線が直線とはならないのは、液晶を挟む電極14a,14b,14c,14dが理想的な面積無限大の平行平板ではないからである。しかし、電極52を設けて電界を調節することにより、図14に示すように、電位を示す実線が直線となり、均一な電界が得られるようになる。
【0084】
図15は、前述した光偏向素子4の温度の制御を可能とする構成の概念図である。すなわち、光偏向素子4の液晶層11a,11b,11cの近傍の温度を検出する温度検出素子53と、この検出温度に基づいて液晶層11a,11b,11cの液晶のコーン角が略等しくなる温度域に、液晶温度を保持するための温度調節装置54とを備えている。
【0085】
温度検出素子53は、サーミスタ、熱電対などであり、温度制御回路55が温度検出素子53の検出信号に基づいて液晶層11a,11b,11cの温度を計算し、温度調節装置54をフィードバック制御する。温度調節装置54は、例えば、光偏向素子4の表面近傍に設けられたITOなどよりなる透明抵抗膜などであり、温度制御回路55により制御される電源56により電力を供給されてジュール熱による加熱を行なう。なお、温度調節装置54として、透明抵抗膜などの他、ペルチェ素子等を用いた冷却源を設けてもよい。これにより、幅広い温度での制御と狙いの温度への高速な移行が可能となる。また、温度検出素子53は、一般には透明でないため、透過光にさらされた場合、これ自体が発熱する場合があるので、遮光するのが望ましく、図15の例では、光偏向素子4のホルダー57で遮光を行っている。
【0086】
ところで、液晶のコーン角は温度とともに変化し、スメクチックC液晶相の高温側にネマチック相がある液晶の場合、通常、相転移温度Tcに近づくにつれコーン角は減少し、相転移温度Tcで消失する。
【0087】
光偏向素子4に用いる2種の液晶(ここでは、それぞれ液晶a,液晶bとする)のコーン角の温度依存性が、図16に示すように変化する場合、光偏向素子4に適用する最適な設定温度は、図16中にTsetで示される点58である。今、図8に示す光シフト特性を有する液晶材料において、2.5μm±10%を確保する場合を考える(厚み32μm)と、この範囲内に光偏向させる為に必要な液晶のコーン角(図16では、液晶配向角×2に相当)は、下限のコーン角Aminが20.5°、上限のコーン角Amaxが25.5°となり、液晶a,bともに、このコーン角を満たす温度領域、すなわち図16のハッチング部59内に温度を収めるように制御すればよい。
【0088】
図17は、光偏向素子4を駆動する光路偏向駆動回路9の回路構成例を示す回路図である。この光路偏向駆動回路9は、図13に示す光偏向素子4用のものの構成例である。すなわち、電源61は、+Vボルト及び−Vボルトの電圧を出力する電源であり、+Vボルトと−Vボルトの電圧を所定の時間幅で入れ替えて、出力端62,63から交互に出力する。出力端62には液晶層11aの外側の電極14と、液晶層11b,11c間の電極14とが接続され、出力端63には液晶層11a,11b間の電極14と、液晶層11cの外側の電極14とが接続されている。液晶層を符号11a,11b,11cの3つのみならず、図9に示す構成のように多数の液晶層41,42、…に分割する場合は、分割方向に並ぶ電極14,14,…を交互に出力端62,63に接続するようにすればよい。
【0089】
また、この例では、各液晶層11a,11b,11cを、それぞれ3つの電極52で等間隔に4つに分割している。よって、出力端62,63間の電圧(2Vボルト)を、4つの抵抗64で抵抗分割し、その各分圧を3つの電極52にそれぞれ印加するようにしている。よって、ある瞬間に+Vボルトが印加されている電極14に最も近い電極52には+V/2ボルトが印加され、−Vボルトが印加されている電極14に最も近い電極52には−V/2ボルトが印加される。また、これらの電極14,14間の電極14はGNDに接続する。
【0090】
以上の構成により、各液晶層11a,11b,11cに電界を加える5つの電極(順に、電極14、電極52,52,52、電極14)には、それぞれ、+Vボルト、+V/2ボルト、0ボルト、−V/2ボルト、−Vボルトと、−Vボルト、−V/2ボルト、0ボルト、+V/2ボルト、+Vボルトとが、所定の時間間隔で交互に印加され、図14のような電位となる。
【0091】
また、図3,図10〜図12に示す光偏向素子4のように、補助的な電極52を設けない場合は、抵抗64を設けずに、液晶層11a,11b,11cの分割方向に並ぶ電極14,14,…に、+Vボルト、−Vボルトの電圧を交互に印加し、これを所定の時間間隔で入れ替えるようにすればよい。
【0092】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明は、基板の板面方向に電界を加えるために必要な駆動電圧を抑制することができ、電源の負荷を軽減し、周辺への電磁ノイズの影響も低減することができる。また、この光偏向素子において、駆動電圧の抑制が簡易な手段で実現でき、各分割部分の境界部を狭くして、光偏向素子を透過する光の損失を低減することができる。
【0093】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、光偏向素子の構成を簡易にすることができる。
【0095】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、境界部に極めてギャップ精度のよいスペーサを兼用させることができ、また、光偏向素子を透過する光の損失を低減することができる。
【0096】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、光偏向素子の製造コストを低減することができる。
【0097】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、光偏向素子の製造コストを低減することができる。
【0098】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、液晶層に加えられる電界の分布を均一にすることが可能となる。
【0099】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかの一に記載の発明において、良好な光偏向を行うことができる。
【0100】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかの一に記載の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態である画像表示装置の全体構成の概念図である。
【図2】画像表示装置による画素シフトの説明図である。
【図3】光偏向素子の斜視図である。
【図4】光偏向素子に加えられる電界の変化のグラフである。
【図5】液晶の動作を説明する説明図である。
【図6】光偏向素子に加えられる電界の変化のグラフである。
【図7】光偏向素子の動作を説明する説明図である。
【図8】液晶の膜厚と液晶配向角に対する光軸のシフト量を示すグラフである。
【図9】自発分極方向の異なる液晶層を交互に多数配列した光偏向素子の斜視図である。
【図10】光偏向素子の他の構成例の断面図である。
【図11】光偏向素子の他の構成例の断面図である。
【図12】光偏向素子の他の構成例の断面図である。
【図13】光偏向素子の他の構成例の断面図である。
【図14】図13の光偏向素子に加えられる電界の変化のグラフである。
【図15】光偏向素子の他の構成例を示す説明図である。
【図16】図15の光偏向素子における液晶のコーン角と温度との関係を説明するグラフである。
【図17】光偏向素子の駆動回路の回路図である。
【符号の説明】
3 画像表示素子
4 光偏向素子
11 基板
11,11a〜11c 液晶層
13,13a〜13c 基板
14,14a〜14d 電極
15a〜15c 電界方向
51 凸部
52 電極

Claims (8)

  1. 一対の透明な基板と、この基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相からなる液晶層と、この液晶層に対し前記基板の板面方向に電界を加えて液晶層を透過する光の光路を偏向する電極と、を備え、前記液晶層は、前記電界の方向に複数に分割されていて、前記電極は、この液晶層の各分割部分に個別に電界を加えるものである光偏向素子であって、
    前記液晶層は、自発分極の極性の異なる2種類の液晶が前記各分割部分の境界部で前記電界方向に交互に現れるものであり、前記電極は、前記各分割部分の境界部と前記液晶層の前記電界方向の両端部とにそれぞれ設けられていることを特徴とする光偏向素子。
  2. 前記一対の基板は、各液晶層の分割部分において同一の一対の基板である、請求項1に記載の光偏向素子。
  3. 前記一対の基板の少なくとも一方の前記液晶層側の表面には、前記液晶層の各分割部分の境界部をなす前記基板と一体成形された凸部が形成されている、請求項1又は2に記載の光偏向素子。
  4. 前記一対の基板の少なくとも一方の前記液晶層側の表面には、前記液晶層の各分割部分の境界部をなす前記基板上に光硬化樹脂材料で形成された凸部が設けられている、請求項1又は2に記載の光偏向素子。
  5. 前記電極は、前記各分割部分の境界部と前記液晶層の前記電界方向の両端部とにそれぞれ介装されていて、前記境界部では前記凸部の少なくとも一部を形成している、請求項4に記載の光偏向素子。
  6. 隣り合う前記電極間の前記液晶層をそれぞれ複数に分割する位置に、液晶層ごとに1又は複数本の電極がさらに形成されている、請求項4に記載の光偏向素子。
  7. 前記液晶層は、コーン角が略等しくなる温度域を有している2種類の液晶を分割部分ごとに交互に配置してなる、請求項1〜6のいずれかの一に記載の光偏向素子。
  8. 画像フィールドを時間的に更に細分割した複数個の画像サブフィールドごとに照明光を画像情報に基づいて空間光変調して画像光として出射する画像表示素子と、この画像表示素子と同期し、前記画像サブフィールドごとに駆動される前記画像表示素子の各画素から入射されてくる画像光の光路を偏向して前記画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示する請求項1〜7のいずれかの一に記載の光路偏向素子と、を備えている画像表示装置。
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