JP4059691B2 - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物に関し、更に詳しくは、潤滑油添加剤の一種である特定の硫黄系極圧添加剤を加工助剤としてゴムに配合したゴム組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ゴム用加工助剤として、脂肪酸エステルや油脂を硫黄や塩化硫黄により架橋し、ゲル化させた油脂重合体、いわゆる“ファクチス”が使用されている。しかし、これには、硬度、モジュラスが低下するという問題がある。当該特定の硫黄系添加剤を、ゴム用加工助剤としてゴムに配合した先行技術は見当たらない。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明では、特定の硫黄系添加剤をゴムに加工助剤として配合することにより、ゴム硬度の低下を抑制しつつ、ムーニー粘度を低下させるという加工性を向上させたゴム組成物を提供することを目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、硫黄加硫可能なジエン系ゴム１００重量部に対して、後記する特定の多硫化脂肪酸エステル（Ａ）および多硫化油脂（Ｂ）の群から選ばれる硫黄系添加剤の少なくとも一種を１〜５０重量部配合してなるゴム組成物が提供される。
【０００６】
【発明の実施の形態】
本発明では、従来から潤滑油添加剤の一種としてとして使用されてきた後記特定の多硫化脂肪酸エステル（Ａ）および多硫化油脂（Ｂ）の硫黄系添加剤を、硫黄加硫可能なジエン系ゴムに配合すると、ゴム硬度の低下が抑制され、かつムーニー粘度が低下するという加工性の向上が見られることを始めて見出したものである。
【０００７】
本発明のゴム組成物に使用される硫黄加硫可能なジエン系ゴム成分には、天然ゴム（ＮＲ）、およびジエン系合成ゴムとしての、例えば、ポリイソプレンゴム（ＩＰ）、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム（ＳＢＲ）、各種ポリブタジエンゴム（ＢＲ）、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム（ＮＢＲ）、ブチルゴム（ＩＩＲ）等が使用される。これらは、単独で、あるいは２種以上のゴム混合物として使用することができる。天然ゴムとジエン系合成ゴムの２種以上のゴム混合物として使用する場合には、天然ゴムの配合比率が２０〜１００重量％であるゴム組成物とすることが所望の目的を達成する上で好ましい。
【０００８】
本発明のゴム加工剤として選定使用される硫黄系添加剤としては、以下の式（Ｉ）〜（ＩＩＩ）で表される多硫化脂肪酸エステル（Ａ）および式（ＩＶ）、（Ｖ）で表される多硫化油脂（Ｂ）から選ばれる少なくとも一種の多硫化化合物が用いられる。
（Ａ）多硫化脂肪酸エステル
【化３】

（Ｂ）多硫化油脂
【化４】

【０００９】
前記多硫化化合物は、いずれも市販の公知の化合物であり、これが単独で、または任意の混合物として使用されてよい。この多硫化化合物に含まれる硫黄含有量は重量比で５〜５０重量％であり、また、該多硫化化合物中に含まれる平均硫黄分子数は２〜６であることが、製品が高硬度で、かつ加工時におけるムーニー粘度が低いという本発明の作用効果を達成する上で好ましい。そして、この配合量は、総量で１〜５０重量部、より好ましくは３〜３０重量部が好適であり、この配合量が少ないと所望の作用効果を発揮できず、また、逆に多過ぎると、所望の硬度およびモジュラスが得られないので好ましくない。
【００１０】
本発明のゴム組成物には、前記した成分に加えて、通常のカーボンブラックやシリカなどの補強剤、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤が配合されて用いられる。かかる配合物は、一般的な方法で混練、加硫してゴム組成物とし、加硫または架橋製品とすることができる。これら添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【００１１】
本発明のゴム組成物は、これを空気入りタイヤにおけるトレッド、ビードフィラー、サイドウォール、カーカス、リムクッション、ベルトクッション、エッジカバーシート、ベルトエッジクッション等の各部材に使用する時は、その特性を有効に発揮するので、極めて有用である。
【００１２】
【実施例】
以下、標準例、実施例および比較例によって本発明を更に説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例によって限定するものでないことは言うまでもない。
【００１３】
試験サンプルの作製
以下の表１に示す配合における加硫促進剤と硫黄を除く成分を、１.７リットルの密閉式バンバリーミキサーで５分間混練し、１６５±５℃に達した時に放出したマスターバッチに加硫促進剤と硫黄を８インチのオープンロールで混練してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物のムーニー粘度を測定した。次いで、このゴム組成物を１５×１５×０.２ｃｍの金型中で、１６０℃で２０分間プレス加硫して目的とする試験片を作製し、これにより硬さ（Ｈｓ）および引張強さを測定、評価した。
【００１４】
試験方法
１）ムーニー粘度：ＪＩＳ Ｋ６３００に準拠して、１００℃にて測定した。標準例を１００として、指数で評価した。指数の低い方が粘度が低く、加工性が優れていることを示す。
２）硬さ（Ｈｓ）：ＪＩＳ Ｋ６３００に準拠して、室温にて測定した。標準例を１００として、指数で評価した。指数の高い方が硬さが大きく、優れていることを示す。
３）引張強さ（Ｍ１００）：ＪＩＳ Ｋ６２５１に準拠して、１００％モジュラス（Ｍ１００）ＭＰaを測定した。標準例を１００として、指数で評価した。指数の高い方が引張強さが大きく、優れていることを示す。
【００１５】
標準例１〜２、実施例１〜９および比較例１〜６
結果を表１に示す。
【表１】

【００１６】
【表２】

【００１７】
【発明の効果】
上記表１の結果よりみて、本発明の硫黄系添加剤を加工助剤に使用した実施例のゴム組成物では、ムーニー粘度が標準例の何も添加しないものよりも低くてゴム加工性が改良されていながら、硬さおよび引張強さの点では低下しておらず、むしろ向上していることがわかる。これに比して、従来での加工助剤のアロマ系オイルを用いた比較例では、ムーニー粘度が下がって加工性は向上するも、硬さおよび引張り強さの点で、大きく低下していることがわかる。よって、本発明のゴム組成物は、その硬度および機械的特性の低下を抑制しつつ、その加工性を向上させていることから、特に、空気入りタイヤの各部材にこれを使用すれば、極めて有用である。

Claims (2)

1. 硫黄加硫可能なジエン系ゴム１００重量部に対して、以下の式（Ｉ）〜（ＩＩＩ）で表される多硫化脂肪酸エステル（Ａ）および以下の式（ＩＶ）、（Ｖ）で表される多硫化油脂（Ｂ）の群から選ばれる硫黄系添加剤の少なくとも一種を１〜５０重量部配合してなるゴム組成物。
   （Ａ）多硫化脂肪酸エステル
   

   

   （Ｂ）多硫化油脂
   

   
2. 前記ジエン系ゴムにおける天然ゴムの配合比率が２０〜１００重量％である、請求項１に記載のゴム組成物。