JP4059418B2 - レーザー超音波検査方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、検査対象に光周波数が僅かに異なる二つのレーザービームを照射して干渉させ、この干渉縞に基づいて検査対象に板波超音波を発生させるとともに、この板波の反射エコーを観測することによって検査対象内部の欠陥を非破壊で検出するレーザー超音波検査装置及びレーザー超音波検査方法に関連する。
【0002】
【従来の技術】
比較的薄い鋼材の内部を非破壊で検査する方法として、タイヤ型探触子を用いて鋼材に板波(Lamb波)を発生させ、欠陥で反射されたこの板波超音波(以下、単に「板波」ともいう)の反射エコーを観測することによって、欠陥検査を行う装置が知られている。この装置については、例えば特開平9−251010号公報に開示されている。
【0003】
図6は、このタイヤ型探触子を用いた欠陥検査装置の概略を示した図である。図6において、検査対象である鋼材50は、厚さが約3mmで、例えば毎分90m(90mpm)の速度で矢印で示した長手方向に搬送されている。タイヤ型探触子51は、鋼材50の一方の側端部と接するよう配置され、鋼材50の搬送に伴って回転する。
【0004】
図7は、タイヤ型探触子51の内部を示した断面図である。タイヤ型探触子51は、鋼材50の搬送に伴って回転するタイヤ部60、回転するタイヤ部60の回転軸となる軸61、軸61に取り付けられた超音波振動子62、超音波振動子62から発せられた超音波をタイヤ部60まで伝達する伝達媒質63などからなる。軸61は固定されており、タイヤ部60を左右から閉じる蓋64,65は、タイヤ部60と共に回転するようにされているので、蓋64及び65と軸61とは互いに摺接している。伝達媒質63は、蓋64及び65によって、タイヤ部60の内部に封入されている。
【0005】
超音波振動子62から超音波が発せられると、超音波は伝達媒質63を介してタイヤ部60に達し、更にタイヤ部60と接している鋼材50に伝えられる。この超音波の周波数及びこの鋼材に対する入射角が適当な値に設定されていると、鋼材50には、板波超音波が発生する。
【0006】
板波超音波は、鋼材50を、タイヤ型探触子51が配置された方の側端部から搬送方向と直角な方向に向けて伝播し、もう一方の側端部で反射されて、再びタイヤ型探触子51のところに戻り、超音波探触子62によって観測される。この板波の伝播経路の途中に欠陥があると、板波はその欠陥によっても反射され、この反射エコーも超音波探触子62によって観測される。欠陥による反射エコーは、鋼材の側端部で反射される反射エコーよりも時間的に先行して観測されるので、これを観測することによって、鋼材の内部に欠陥があることが分かる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、板波超音波は、鋼材を伝播する途中で減衰する。この減衰量は、伝播距離が長くなるほど大きくなるため、鋼材の幅が大きくなると、それだけ伝播させるべき板波超音波の強度を高めなければならない。また、伝播距離が長くなると、粒界での反射などに起因するノイズも大きくなり、このため、検出部の感度を相当程度高くすることが必要となる。さらに、タイヤ型探触子を用いた欠陥検査装置は、鋼材上で板波超音波を発生させる位置を変えようとしても、その構成から、容易に板波超音波を発生させる位置を変えることはできない。
【0008】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものであり、その目的は、鋼材上で比較的容易に超音波を発生させる位置を変えることができるレーザー超音波装置を用いて、発生させる板波超音波の強度が比較的小さくても十分な欠陥検出を行うことができるようにすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、レーザー光源から発射される波長λ 、周波数f のレーザービームを第一のレーザービーム及び第二のレーザービームに分けて、それぞれのレーザービームを、所定速度で搬送される板状の検査対象の幅方向中央部に照射して板波超音波を発生させ、当該板波超音波の欠陥からの反射エコーを観測することによって検査対象に存在する欠陥を検出するレーザー超音波検査方法において、第一のレーザービーム及び第二のレーザービームを発するレーザー発生手順と、第一及び第二のレーザービームについて、音響光学素子を用いて第一のレーザービームの光周波数 よりも第二のレーザービームの光周波数 が大きい第一の光周波数差(f −f >0)と、第一のレーザービームの光周波数 よりも第二のレーザービームの光周波数 が小さい第二の光周波数差(f −f <0)のいずれかに設定するとともに、これらの光周波数差の切り換えを行う周波数差設定手順と、第一又は第二の光周波数差を持った第一及び第二のレーザービームを板状の前記検査対象の幅方向中央部に入射角θで対向する方向から照射して両レーザービームの干渉縞を生じさせるレーザービーム照射手順と、前記検査対象に発生した板波超音波の反射エコーを観測して欠陥検出を行う反射エコー観測手順とを備え、前記周波数差設定手順に先立ち、前記検査対象に発生させる特定のモードの板波超音波の波長λ aco と音速v aco との関係を予め求めておき、前記干渉縞の空間的な周期が当該特定のモードの板波超音波の波長λ aco と同じくなると共に前記干渉縞の移動速度が当該特定のモードの板波超音波の音速v aco と等しくなるように、第一のレーザービームの光周波数f 、第二のレーザービームの光周波数f 及び入射角θを所定の関係から設定し、前記周波数差設定手順によって第一の光周波数差と第二の光周波数差を所定の周期で切り換えることにより、反対向きに進行する二つの板波超音波を切り換えて交互に発生させ、それぞれの板波超音波の反射エコーを観測して前記検査対象に存在する欠陥を検出することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のレーザー超音波検査方法において、前記所定の関係は、前記特定のモードの板波超音波の波長をλ aco 、その音速をv aco とすると、光周波数差(f −f )及び入射角θについての、
aco =λ (f −f )/2sinθ
λ aco =λ /2sinθ
という連立方程式で表されることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の一形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の一形態に係るレーザー超音波検査装置の全体的な構成を示した図である。本実施形態の説明では、検査対象とされる鋼材1の幅方向をx軸方向、鋼材1の長手方向をy軸方向、これらの軸に垂直な方向をz軸方向とする。図1では、図の横方向(左から右に向かう方向)がx軸方向、縦方向(下から上に向かう方向)がz軸方向となっており、図1のx軸方向は鋼材1の幅方向となり、紙面に垂直なy軸方向が鋼材1の長手方向となる。鋼材1は、紙面の裏側から表側に向かう長手方向(y軸方向)に搬送される。鋼材1の厚さは、3mmとする。
【0016】
図1において、CO2 レーザー10は、超音波発生用のレーザー光源であり、パルスCO2レーザーである。CO2 レーザーは、高エネルギーのレーザービームを、繰り返し周波数1KHz以上で繰り返し発射することができるため、検査対象が絶え間なく搬送されている工場などでのオンライン検査に適している。CO2 レーザー10は数種類の波長のレーザービームを発生することができるが、ここでは、波長λ0 =10.6μmのレーザービームを用いる。このレーザービームの光周波数をf0 とすると、f0 =c[m/sec]/10.6[μm]となる(cは光速である)。
【0017】
図1において、CO2 レーザー10から発射されたレーザービームは、ビームスプリッタ11によって、ここで反射されるレーザービームとここを透過するレーザービームの二つに分けられる。ビームスプリッタ11で反射されたレーザービームは、音響光学素子(AOM)12に入射し、一方、ビームスプリッタ11を透過したレーザービームは、ミラー13を経て音響光学素子(AOM)14に入射する。
【0018】
音響光学素子12,14は、音響光学効果を利用した素子であり、ここでは、音響光学周波数シフタ(Acousto−Optic Frequency Shifter:AOFS)として用いる。音響光学素子に、発振器などから適当な周波数の電気信号を入力すると、内部に設けられた媒体が超音波振動を行い、場所によって弾性歪みや圧力が変化する。これに起因して、媒体には超音波の波長を周期とする屈折率変動が生じ、この屈折率の変動領域に光が入射すると、その光を回折させる。このとき、回折した光は超音波によるドップラーシフトを受け、一次回折光の光周波数は、入射光の光周波数から超音波の周波数分だけシフトした値となる。すなわち、入射光の光周波数をfi 、一次回折光の光周波数をfd 、超音波の周波数(発振器の信号周波数)をfa とすると、
d =fi ±fa (1)
となる。ここで、±の符号は、回折される方向によって決まる。
【0019】
本実施形態では、音響光学素子12には発振器15から、また、音響光学素子14には発振器16から、それぞれ所定の周波数の超音波信号を供給する。したがって、音響光学素子12から出射されるレーザービーム17及び音響光学素子14から出射されるレーザービーム18の光周波数は、前述の(1)式に基づいて、元々の光周波数f0 からシフトする。発振器15,16の発信周波数の具体的な値については、後述する。
【0020】
音響光学素子12から出射されたレーザービーム17と、音響光学素子14から出射されたレーザービーム18は、適当な光学系(図示せず)によって鋼材1上の共通の照射位置19に照射される。このとき、これら二つのレーザービーム17,18の中心軸は、x軸及びz軸を含む面内(x−z面内)にあるものとする。本実施形態では、この照射位置19を、鋼材1の幅方向の中央部に配置する。本実施形態のように、板波超音波を発生させるためにレーザービームを用いると、タイヤ型探触子を用いる場合に比べて、レーザービームを照射する位置を比較的容易に変えることができ、照射位置選定の自由度が高まるという利点がある。このように、照射位置19を鋼材1の幅方向の中央部に配置したことによって、後述のような効果が得られる。
【0021】
音響光学素子12から出射されるレーザービーム17の光周波数と音響光学素子14から出射されるレーザービーム18の光周波数が僅かに異なっていると、共通の照射位置19上で二つのレーザービームは干渉を起こし、x軸方向に沿って強め合うところと弱め合うことろが交互に生じる干渉縞が現れる。そして、この干渉縞は、二つのレーザービーム17,18のうちどちらの光周波数が高いかによって、x軸の正方向あるいは負方向に移動する。
【0022】
鋼材1にレーザービームが照射されると、その照射点を源とする超音波が発生する。特に、本実施形態のように、鋼材1の厚さが3mm程度という十分に薄いものである場合には、板波(「Lamb波」ともいう)と呼ばれる超音波が生じる。板波超音波は、図2に示すように、薄い板の全体が振動して伝播する超音波である。板波超音波には、図2(a)に示すように、媒質の表側の変位と裏側の変位が対称となる「Sモード」と、図2(b)に示すように媒質の表側の変位と裏側の変位が非対称となる「Aモード」がある。更に、Sモード、Aモードには、それぞれ、多数の高調波モードが存在する。板波のモードの表し方は、基本波にはS0 モード、A0 モードのように添字「0」を付けて表し、高調波にはその次数に応じた添字を付けて表す。本実施形態では、取り扱いの容易さなどから、A0モードを用いる。ただし、これは本発明の一例であり、他のモードを用いる場合も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0023】
前述の干渉縞の空間的な周期が板波超音波のあるモードの波長に一致し、かつ、干渉縞の移動速度がその板波の伝播速度に等しければ、そのモードの板波は増幅され、指向性の高い板波超音波となって、干渉縞の移動方向に伝播する。
【0024】
本実施形態では、二つのレーザービーム17,18による干渉縞を、鋼材1の表面上でx軸に沿って、x軸の正方向(図1の左から右に向かう方向)に移動させる場合と、x軸の負方向(図1の右から左に向かう方向)に移動させる場合を交互に繰り返す。このため、鋼材1の中央部から図1の右に向かって進行する板波超音波と、、鋼材1の中央部から左に向かって進行する板波超音波が交互に発生する。右に向かって進行する板波超音波は、鋼材1の右側の端部で反射されて発生位置に戻る。一方、左に向かって進行する板波超音波は、鋼材1の左端の端部で反射されて発生位置に戻る。
【0025】
このようにして発生位置に戻ってきた板波超音波の反射エコーの観測にもレーザーを利用する。図1において、アルゴン(Ar)レーザー20は、板波超音波エコー観測用のレーザー光源である。Arレーザー20から発射されたレーザービームは、ハーフミラー21及び適当な光学系(図示せず)を経て、鋼材1の表面の照射位置19に照射される。照射位置19に照射されたレーザービームの一部はここで反射され、反射光は更にハーフミラー21で反射されて、ファブリ・ペロー干渉計22に入射する。板波超音波の反射エコーが鋼材1を伝播して戻ってくると、照射位置19で反射されるレーザービームの反射波は、この超音波振動によってドップラーシフトを受け、光周波数が変位する。
【0026】
ファブリ・ペロー干渉計22は、入射光の光周波数によって、出射光の強度が図3のように変化する。すなわち、出射光強度は、ある特定の光周波数において急峻なピークを示すが、ピークの前後では速やかに低下する。このピークを示す光周波数は、ファブリ・ペロー干渉計22の共振器長を調節することによって変えることができる。そこで、曲線の傾きが最大となる光周波数(例えば図3のA点)がArレーザーの光周波数と一致するよう予めファブリ・ペロー干渉計22の共振器長を調整しておけば、光周波数の僅かな変位±Δνを、相対的に大きな透過光強度の変化±ΔIに変換できる。透過光強度は、光検出器23を用いて電気信号に変換されるので、最終的には、光周波数の変位を電気的な波形として捉えることができ、これにより板波超音波の反射エコーを観測できる。
【0027】
ところで、板波超音波の伝播経路に欠陥が存在すると、板波超音波は欠陥でも反射される。欠陥で反射されるエコーは、鋼材1の両端部で反射されるエコーよりも時間的に先行して発生源に戻る。したがって、超音波を発生させた照射位置19で反射エコーを観測して、超音波が発生してから反射エコーが観測されるまでの時間を測定することによって、鋼材1の内部における欠陥の有無を調べることができる。さらに、板波超音波の音速及び鋼材の寸法が既知であることから、欠陥の位置も特定できる。
【0028】
次に、図1の発振器15から音響光学素子12へ供給する信号および発振器16から音響光学素子14に供給する信号の周波数をどのような値とし、音響光学素子12,14から出射されるレーザービームの光周波数をどの程度シフトさせるかについて説明する。
【0029】
図4は、図1に示した二つのレーザービーム17,18と、照射位置19の近傍を拡大して示している。座標軸の取り方は、図1の場合と同様である。図4に示すように、レーザービーム17の入射角はz軸からx軸の負側に計ってθとし、レーザービーム18の入射角はz軸のx軸の正側に計ってθとする。このとき、二つのレーザービーム17,18の照射位置19における光の振幅は、
I = I1・exp i[(−k1sinθ)x ω1t] + I2・exp i[(k2sinθ)x ω2t] (2)
と表すことができる。ここで、(2)式の右辺第1項はレーザービーム17の光の振幅の変化を表し、右辺第2項はレーザービーム18の光の振幅の変化を表す。また、I1 ,I2 は、それぞれのレーザービームの最大振幅を表し、k1 ,k2 は、各レーザービームの波数を表し、ω1 ,ω2 は、各レーザービームの角周波数を表す。レーザービーム17の光周波数をf1 、波長をλ1 、レーザービーム18の光周波数をf2 、波長をλ2 とすると、これらの間には、
1 =2π/λ1 ,k2 =2π/λ2
ω1 =2πf1 ,ω2 =2πf2
λ1 =c/f1 ,λ2 =c/f2
という関係がある。
【0030】
(2)式に基づいて、照射位置19における光の強度を計算すると、
I・I* = I1 2 + I2 2 + 2I1I2cos [(2Ksinθ) x ωat] (3)
となる。ここで、K(=2π/λ0 ≒k1 ≒k2 )は、CO2 レーザー10から発射されたレーザービームの波数であり、またωa は、
ωa =ω2 −ω1 =2π(f2 −f1
である。
【0031】
(3)式の右辺第3項は、干渉縞が波のようにx軸方向に移動することを示している。そこで干渉縞の進行速度をvf 、干渉縞の波数をkf 、干渉縞の波長をλf とすると、
f =2K sinθ (4)
f =ωa /2K sinθ=λ0 (f2 −f1 )/2 sinθ (5)
と表される。なお、λ0 は、前述のように、CO2 レーザー10から放射されるレーザービームの波長である。
【0032】
(4)式から、二つのレーザービームの入射角θを変えることによって、干渉縞の波長(空間的な周期)λf (=2π/kf )を調整できることが分かる。また、(5)式から、二つのレーザービームの入射角θと、二つのレーザービームの光周波数差を適当に調整することによって、干渉縞の移動速度を変え得ることが分かる。
【0033】
そこで、まず、干渉縞の波長を所望の波長となるよう(4)式からθを決め、このθを(5)式に代入して、所望の速度vf となるように二つのレーザービームの周波数差(f2 −f1 )を決め、この周波数差(f2 −f1 )が得られるように、音響光学素子12,14に供給する信号の周波数を決定する。
【0034】
干渉縞の波長(λf =2π/kf )を特定のモードの板波超音波の波長λaco (=2π/kaco )と一致させるには、(4)式より、
λaco =λ0 /2 sinθ (6)
を満たすことが必要であり、したがって、二つのレーザービームの入射角θを(6)式から求めた値に調整すれば、干渉縞の波長λf が、発生させようとする超音波の波長λaco と一致する。
【0035】
また、干渉縞の移動速度を、特定のモードの板波超音波の音速と同じにするには、(6)式を満たすよう定められたθを(5)式に代入し、発生させようとする超音波の音速vaco が(5)式のvf と等しくなるように、二つのレーザービーム17と18の光周波数差(f2 −f1 )を設定すればよいことが分かる。さらに、(3)式から分かるように、ωaの符号によって、すなわちf1とf2大小によって、干渉縞がx軸の正方向に移動するか負方向に移動するかが決まる。
【0036】
このように、二つのレーザービームの入射角θと、周波数差(f2 −f1 )を適当に調整することによって、まず、干渉縞の空間的な周期をあるモードの板波の波長と同じくし、更に、干渉縞の移動速度が当該モードの板波の音速(伝播速度)と等しくなるようにすれば、前述のように、そのモードの板波は急激に増幅され、高い指向性でほぼ干渉縞の移動方向にのみ伝播する。
【0037】
続いて、発振器15,16の発信周波数として設定すべき具体的な値を求める。鋼材1の厚さは前述のように3mmであり、鋼材1に発生させる板波の周波数を、ここでは約2MHzとする。板厚3mmの鋼材について、A0 モードで2MHzの超音波を伝播させる場合の音速は、約2900[m/sec]である。なお、板波の波長λacoは、近似的に1.4mmとする。また、二つのレーザービーム17,18の光周波数f1 及びf2 を、
1 =f0 +40MHz
2 =f0 +fxMHz
とする。ここでは、実際の取り扱いの便宜を考慮して、40MHzというオフセットを設けて発振器15の発振周波数を固定している。
【0038】
上のf1 ,f2 の式及び(6)式を、(5)式に代入すると、干渉縞の移動速度vf は、
f =λaco (fx[MHz]−40[MHz])
となる。このvf が発生させようとするA0モードの板波の音速2900[m/sec]に一致するという条件から、発振器16の発振周波数fxを求めると、約42.07[MHz](これを「fx+」とする)となる。このとき、発振器15、発振器16の発振周波数の差fdiffは、2.07[MHz]である。したがって、発振器16の発振周波数fxをfx+=42.07[MHz]とすれば、x軸方向の正方向に進行するA0モードの板波が発生する。一方、発振器16の発振周波数fxを、42.07[MHz]の代わりに、40−fdiff=37.93[MHz](これを「fx-」とする)とすれば、x軸方向の負方向に進行するA0モードの板波が発生する。
【0039】
ところで、発振器には、40MHzもしくはそれ以上の周波数の信号を、5KHzのステップでコントロールできるものが市販されており、このような発振器を発振器15,16として用いれば、発振器15の発振周波数を40MHzに固定した状態で、発振器16の発振周波数を42.07[MHz]と37.93[MHz]との間で短時間で電子的に切り換えることは容易である。したがって、鋼材1の幅方向の中央部にレーザービーム17,18を照射した状態で、x軸に沿って正方向に進行する板波と負方向に進行する板波を短時間で交互に切り換えて発生させることは、十分に可能である。
【0040】
次に、図5を参照して、二つのレーザービーム17,18を干渉させて発生させた板波超音波の進行方向を、x軸方向の正方向と負方向の間で切り換える動作のタイミングについて説明する。図5(a)は、搬送されている鋼材1を上から見た様子を示しており、鋼材1は、一般的な値として90mpm(=1500m/sec)の速度で図の上から下に向かって搬送されているものとする。このとき、板波超音波の伝播幅を、代表的な値として15mmとする。鋼材1を隙間なく検査するためには、図の点R0で右側に向かう板波超音波を発生させたあと、鋼材が7.5mm移動した点L0で左側に向かう板波超音波を発生させ、さらに鋼材が7.5mm移動した点R1で右側に向かう板波超音波を発生させるようにする必要がある。したがって、板波超音波の向きを切り換える時間間隔は、
7.5〔mm〕÷1500〔mm/sec〕=5〔msec〕
となる。
【0041】
図6(b)は、前述の発振器16の発振周波数fxを、fx+とfx-との間で切り換えるための100Hzのパルス信号を示している。すなわち、この信号が立ち上がったときにfx=fx+ 、立ち下がったときにfx=fx-となるように発振器16の発振周波数fxを切り換えることによって、鋼材1上では、7.5mm間隔で板波超音波の発生方向が切り換えられることになる。
【0042】
ところで、従来は、鋼材の一方の端部にレーザービームを照射して板波超音波を発生させ、ここから他方の端部に向けて伝播させていた。しかし、これだと板波超音波が他端で反射して再び元の発生位置に戻るまでに伝播する距離は、鋼材1の幅の約2倍となる。
【0043】
これに対して、本実施形態に係るレーザー超音波検査装置では、鋼材1の幅方向の中央部に超音波発生用のレーザービームを照射して、ここから鋼材1の両側へ向けて超音波を発生させ、端部で反射されて戻ってきた超音波を鋼材1の幅方向の中央部で検出するようにしたことにより、板波超音波の伝播距離は鋼材1の幅とほぼ等しくなる。すなわち、板波超音波の伝播距離が、従来の2分の1に短縮される。このようにした結果、伝播経路の途中における超音波の減衰や、粒界における反射に起因するノイズの影響が小さくなり、したがって、従来と同様の装置をそのまま利用した場合でも、欠陥検出の感度を向上させることができ、また、従来と同程度の感度を得ようとする場合には、超音波発生用のレーザービームの出力を小さくすることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、板状の検査対象の中央部に二つのレーザービームを照射して板波超音波を発生させるとともに、この中央部から一方の端部へ向かう板波超音波と他方の端部へ向かう板波超音波を所定の周期で交互に発生させることにより、検査対象の側端部において板波超音波を発生させる場合に比べて、板波超音波の伝播距離を約2分に1に短縮させることができ、このため、伝播経路の途中における超音波の減衰や、粒界における反射に起因するノイズの影響が小さくなり、したがって、従来と同様のレーザー超音波検査装置をそのまま利用した場合でも、欠陥検出の感度を向上させることができ、また、従来と同程度の感度を得ようとする場合には、超音波発生用のレーザービームの出力をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係るレーザー超音波検査装置の全体的な構成を示す図である。
【図2】板波超音波の性質を説明するための概略図である。
【図3】入射光の光周波数の変化によって出射光強度がどのように変化するかを示したファブリ・ペロー干渉計の特性図である。
【図4】二つのレーザービームの照射位置の近傍を拡大して示した図である。
【図5】板波超音波の進行方向をx軸方向の正方向と負方向の間で切り換える動作のタイミングについて説明するための図である。
【図6】タイヤ型探触子を用いた欠陥検査装置の概略を示した図である。
【図7】タイヤ型探触子の内部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋼材
10 CO2 レーザー
11 ビームスプリッタ
12,14 音響光学素子(AOM)
13 ミラー
15,16 発振器
17,18 レーザービーム
19 照射位置
20 アルゴン(Ar)レーザー
21 ハーフミラー
22 ファブリ・ペロー干渉計
23 光検出器

Claims (2)

  1. レーザー光源から発射される波長λ 、周波数f のレーザービームを第一のレーザービーム及び第二のレーザービームに分けて、それぞれのレーザービームを、所定速度で搬送される板状の検査対象の幅方向中央部に照射して板波超音波を発生させ、当該板波超音波の欠陥からの反射エコーを観測することによって検査対象に存在する欠陥を検出するレーザー超音波検査方法において、
    第一のレーザービーム及び第二のレーザービームを発するレーザー発生手順と、
    第一及び第二のレーザービームについて、音響光学素子を用いて第一のレーザービームの光周波数 よりも第二のレーザービームの光周波数 が大きい第一の光周波数差(f −f >0)と、第一のレーザービームの光周波数 よりも第二のレーザービームの光周波数 が小さい第二の光周波数差(f −f <0)のいずれかに設定するとともに、これらの光周波数差の切り換えを行う周波数差設定手順と、
    第一又は第二の光周波数差を持った第一及び第二のレーザービームを板状の前記検査対象の幅方向中央部に入射角θで対向する方向から照射して両レーザービームの干渉縞を生じさせるレーザービーム照射手順と、
    前記検査対象に発生した板波超音波の反射エコーを観測して欠陥検出を行う反射エコー観測手順とを備え、
    前記周波数差設定手順に先立ち、前記検査対象に発生させる特定のモードの板波超音波の波長λ aco と音速v aco との関係を予め求めておき、前記干渉縞の空間的な周期が当該特定のモードの板波超音波の波長λ aco と同じになると共に前記干渉縞の移動速度が当該特定のモードの板波超音波の音速v aco と等しくなるように、第一のレーザービームの光周波数f 、第二のレーザービームの光周波数f 及び入射角θを所定の関係から設定し、
    前記周波数差設定手順によって第一の光周波数差と第二の光周波数差を所定の周期で切り換えることにより、反対向きに進行する二つの板波超音波を切り換えて交互に発生させ、それぞれの板波超音波の反射エコーを観測して前記検査対象に存在する欠陥を検出することを特徴とするレーザー超音波検査方法
  2. 前記所定の関係は、前記特定のモードの板波超音波の波長をλ aco 、その音速をv aco とすると、光周波数差(f −f )及び入射角θについての、
    aco =λ (f −f )/2sinθ
    λ aco =λ /2sinθ
    という連立方程式で表されることを特徴とする請求項1記載のレーザー超音波検査方法
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