JP4057940B2 - 太陽電池素子の製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池素子の製造装置に関し、特に表面に電極を有する太陽電池素子をはんだ融液に浸漬して電極の表面にはんだ層を形成する太陽電池素子の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、太陽電池素子の受光面電極と裏面電極は、パターンマスクを用いたスクリーン印刷法で銀ペーストを印刷して焼成することにより形成されている。この電極の表面は、複数の太陽電池素子をインナーリードで接続して使用したり、電極の長期信頼性を確保したり、抵抗を低減したりするために、はんだで被覆する。
【0003】
電極の表面にはんだ付けを行う場合、複数の太陽電池素子を金属製のウェハーキャリアにセットして自動はんだ装置でフラックスを塗布して乾燥してはんだ融液6に浸漬し、引き上げた後にフラックスを洗浄して乾燥することによって行っていた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図3は太陽電池素子の電極表面にはんだ層を形成する際に使用する一般的な製造装置を示す図である。図3において、1は太陽電池素子、2はウェハーキャリア、3はアーム、5ははんだ槽、6ははんだ融液を示す。
【0005】
複数の太陽電池素子1をセットしたウェハーキャリア2をアーム3で支持してはんだ槽5のはんだ融液6に浸漬して引き上げることによって太陽電池素子1の電極の表面にはんだ層を形成する。この方法によれば複数の太陽電池素子1の表面に同時にはんだ層を形成できるため生産性がよい。
【0006】
しかし、複数の太陽電池素子1をウェハーキャリア2にセットして速い速度ではんだ融液6に浸漬すると、比重の軽い太陽電池素子1が浮き上がってウェハーキャリア2から出たり、ウェハーキャリア2とぶつかり割れたりするという問題が発生することがあった。
【0007】
この問題を回避するには、はんだ融液6への浸漬速度を遅くすればよいが、はんだ融液6への浸漬速度を遅くすると太陽電池素子1の下方側のはんだ融液6への浸漬時間が長くなって電極の銀がはんだ融液6中に溶けだすいわゆるはんだ食われが発生し、電極強度が弱くなるという問題が発生することがあった。
【0008】
また、ウェハーキャリア2とアーム3とははんだが付着しにくい金属であるステンレス鋼で形成するのが一般的である。ステンレス鋼にはんだが付着しにくいのは表面に自然酸化膜が形成されやすく、この自然酸化膜がはんだの濡れを阻害するからである。しかし、はんだに浸漬する前に塗布するフラックスにはこの酸化膜を除去する作用があるため、長期にわたって使用を繰り返すと、ステンレス鋼表面の酸化膜が薄くなり、はんだが付着するようになってしまう。アーム3にはんだが付着すると、ウェハーキャリア2とアーム3とが付着したり、アーム3とウェハーキャリア2との間にはんだが挟まり、ウェハキャリ2をアーム3で確実に支持できないなどのトラブルが発生することがあった。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、太陽電池素子の電極の表面にはんだ層を生産性よく形成するための太陽電池素子の製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−319616号公報
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の太陽電池素子の製造装置は、表面に電極が形成された複数の太陽電池素子をウェハーキャリアに収容し、このウェハーキャリアをはんだ融液に浸漬して前記電極の表面にはんだ層を形成する太陽電池素子の製造装置において、断面が半円形状の先端部を有し、前記太陽電池素子の浮遊を防止する押さえバーを前記太陽電池素子の上部に備えることを特徴とする。また、本発明の太陽電池素子の製造装置は、前記ウェハーキャリアを保持するアームをさらに有することを特徴とする。
【0012】
上記太陽電池素子の製造装置では、前記アームと押さえバーとが金属からなり、その表面がチタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物で被覆されていることが望ましい。
【0013】
さらに上記太陽電池素子の製造装置ではアームと押さえバーがチタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物からなっていてもよい。
【0014】
また、上記太陽電池素子の製造装置では、前記アームと押さえバーとが金属からなり、その表面がエンジニアリング・プラスチックで被覆されていることが望ましい。
【0015】
さらに、上記太陽電池素子の製造装置では、前記アームと押さえバーとがエンジニアリング・プラスチックで形成されていてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る太陽電池素子の製造装置の一実施形態を説明するための図であり、図2は図1のウェハーキャリアを側面から見たときの図である。図において1は太陽電池素子、2はウェハーキャリア、3はアーム、4は押さえバー、5ははんだ槽、6ははんだ融液を示す。
【0017】
本発明の太陽電池素子の製造装置では、表面に電極が形成された複数の太陽電池素子1をウェハーキャリア2に収容し、このウェハーキャリア2をアーム3で保持してはんだ槽5の中にあるはんだ融液6に浸漬して太陽電池素子1の電極の表面にはんだ層を形成するものである。
【0018】
本発明の太陽電池素子1の製造装置では、太陽電池素子1の上部に太陽電池素子1の浮遊を防止するための押さえバー4を設けている。このようにすることにより、複数の太陽電池素子1をウェハーキャリア2にセットして速い速度ではんだ融液6に浸漬しても、この押えバー4によって太陽電池素子1の浮き上がりが阻止できる。もって、複数の太陽電池素子1を速い速度ではんだ融液6に浸漬しても、比重の軽い太陽電池素子1が浮き上がってウェハーキャリア2から出たり割れたりするという問題が発生することはない。
【0019】
この押さえバー4ははんだ融液6に浸漬する際にウェハーキャリア2に収容されている全ての太陽電池素子1を上方から押さえる構造であればよく、アーム3とは異なる駆動系に接続されていてはんだ融液6に浸漬される直前に上方から下降し、ウェハーキャリア2の中に収容されている全ての太陽電池素子1を押さえてもよいし、アーム3にとりつけておいてアーム3がウェハーキャリア2を保持するときに、同時に太陽電池素子1を押さえる構造にしてもよい。また太陽電池素子1をウェハーキャリア2に収容後、押さえバー4をウェハーキャリア2に取り付けておいてはんだ融液6に浸漬させた後、ウェハーキャリア2から太陽電池素子1を取り出す前に押さえバー4をはずすことも可能である。
【0020】
太陽電池素子1と直接接触する押さえバー4の先端部は鋭利な構造でない方がよい。これは太陽電池素子1が浮き上がったときに押さえバー4が太陽電池素子1に衝撃を与え、割れたり欠けたりすることを回避するためである。
【0021】
また、太陽電池素子1と押さえバー4の接触幅が大きすぎると、複数の太陽電池素子1をセットしたウェハーキャリア2をはんだ融液6に浸漬した際に、はんだ融液6が上方に抜けなかったり、引き上げる際に太陽電池素子1の間にはんだ融液6が入り込まなかったりして太陽電池素子1の電極表面にはんだ層が形成されない箇所が発生するという問題が起きることがある。そのため、太陽電池素子1と押さえバー4の接触幅はなるべく小さくしておく必要がある。これらの点から、太陽電池素子1と直接接触する押さえバー4の先端部はその断面が半円の形状であることが望ましい。
【0022】
アーム3と押さえバー4とは金属からなり、その表面がチタン、クロム、アルミニウムのいずれかの酸化物で被覆されていた方がよい。このようにすると金属によりその強度が確保されるとともに、表面がはんだの濡れを阻害する酸化物で形成されるため、はんだが付着しにくい。そのため、従来問題であったウェハーキャリア2とアーム3とが付着したり、アーム3とウェハーキャリア2との間にはんだが挟まり、ウェハキャリア2を確実に支持できないなどのトラブルを解消することができる。また、押さえバー4の表面をチタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物で被覆すると、押さえバー4と太陽電池素子1の付着による太陽電池素子1の割れや、押さえバー4に付着した余剰なはんだが太陽電池素子1に付着するという問題を防止できる。金属の表面をセラミックスもしくはチタン、クロム、アルミニウムのいずれかの酸化物で被覆するためには、例えば溶射などの方法で1μm程度の厚みに形成すればよい。
【0023】
また、アーム3と押さえバー4をチタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物で形成すれば、フラックスの使用を繰り返しても、酸化膜が表面のみに形成されているわけではないので、その効果が持続する。
【0024】
また、アーム3と押さえバー4を金属で形成し、その表面をエンジニアリング・プラスチックで被覆したものでもよい。ここでエンジニアリング・プラスチックとは、熱可塑性樹脂のうち高性能のものをいい、耐熱性が100℃以上、強度が500kgf/cm以上、曲げ弾性率が24000kgf/cm以上あるプラスチックのことをいう。エンジニアリング・プラスチックはいずれもはんだとの濡れ性が悪いため、アーム3や押さえバー4にはんだが付着することはなくなる。そのため従来問題であったウェハーキャリア2とアーム3とが付着したり、アーム3とウェハーキャリア2との間にはんだが挟まり、ウェハキャリア2を確実に支持できないなどのトラブルを解消することができる。また、押さえバー4の表面をエンジニアリング・プラスチックで被覆すると、押さえバー4と太陽電池素子1の付着による太陽電池素子1の割れや押さえバー4に付着した余剰なはんだが太陽電池素子1に付着するという問題を防止できる。金属の表面をエンジニアリング・プラスチックで被覆するには、溶射、浸漬、塗布、貼りつけなどさまざまな方法があり、形成する厚みはその材料に合わせて選択すればよい。
【0025】
また、エンジニアリング・プラスチックはいずれも金属より柔らかい材料であるため、太陽電池素子1と接触したとしても太陽電池素子1に与える衝撃を小さくすることができ、太陽電池素子1の割れや欠けの問題を有効に抑制することが可能になる。
【0026】
さらに、アームと押さえバーをエンジニアリング・プラスチックで形成することも可能である。このようにしてもアーム3と押さえバー4を金属で形成し、表面をエンジニアリング・プラスチックで被覆したときと同様の効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることができる。例えばアーム3は太陽電池素子1をはんだ融液6に浸漬させるためにウェハーキャリア2を支持するものであり、押さえバー4は太陽電池素子1を押さえるためのものであって、その形状はこれに限定されるものではない。
【0028】
また、本発明は多くの応用を加えることも可能である。例えばはんだの被処理物は太陽電池素子以外にもいろいろな分野の基板に応用することが可能である。また本発明によればはんだ付着防止の効果を得ることができるので、はんだ槽やその中の設置物、またウェハーキャリアに応用することも可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る太陽電池素子の製造装置によれば、ウェハーキャリアに収容した複数の太陽電池素子の上部に浮遊を防止するための押さえバーを設けたことから、複数の太陽電池素子を速い速度ではんだ融液に浸漬しても、太陽電池素子をウェハーキャリア内に確実に保持できる。
【0030】
また、アームと押さえバーを金属で形成するとともに、その表面をセラミックスもしくはチタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物で被覆すると、アームや押さえバーにはんだが付着することはなくなり、ウェハーキャリアをアームに確実に支持できるとともに、押さえバーと太陽電池素子との付着や太陽電池素子へのはんだの付着も防止できる。
【0031】
また、アームと押さえバーを金属で形成するとともに、その表面をエンジニアリング・プラスチックで被覆すると、アームや押さえバーにはんだが付着することはなくなり、アームや押さえバーにはんだが付着することはなくなり、ウェハーキャリアをアームに確実に支持できるとともに、押さえバーと太陽電池素子との付着や太陽電池素子へのはんだの付着も防止でき、さらにエンジニアリング・プラスチックは金属よりも柔らかい材料であるため、太陽電池素子と接触したとしても太陽電池素子に与える衝撃を小さくすることができ、太陽電池素子の割れや欠けの問題を有効に抑制できる。
【0032】
さらに、アームと押さえバーとをエンジニアリング・プラスチックで形成すると、アームと押さえバーを金属で形成して表面をエンジニアリング・プラスチックで被覆したときと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽電池素子の製造装置の一実施例を示す図である。
【図2】本発明に係る太陽電池素子の製造装置の一実施例を示す図であり、図1の側面図である。
【図3】従来の太陽電池素子の製造装置を示す図である。
【符号の説明】
1:太陽電池素子、2:ウェハーキャリア、3:アーム、4:押さえバー、5:はんだ槽、6:はんだ融液

Claims (6)

  1. 表面に電極が形成された複数の太陽電池素子をウェハーキャリアに収容し、このウェハーキャリアをはんだ融液に浸漬して前記電極の表面にはんだ層を形成する太陽電池素子の製造装置において、
    断面が半円形状の先端部を有し、前記太陽電池素子の浮遊を防止する押さえバーを前記太陽電池素子の上部に備えることを特徴とする太陽電池素子の製造装置。
  2. 前記ウェハーキャリアを保持するアームをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子の製造装置。
  3. 前記アームと前記押さえバーが金属からなり、その表面がチタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項に記載の太陽電池素子の製造装置。
  4. 前記アームと前記押さえバーがチタン、クロム、アルミニウムジルコニウム、タングステン、タンタル、鉄、モリブデンのいずれかの酸化物からなることを特徴とする請求項に記載の太陽電池素子の製造装置。
  5. 前記アームと前記押さえバーとが金属からなり、その表面がエンジニアリング・プラスチックで被覆されていることを特徴とする請求項に記載の太陽電池製造装置。
  6. 前記アームと前記押さえバーとがエンジニアリング・プラスチックからなることを特徴とする請求項に記載の太陽電池製造装置。
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