JP4057934B2 - センサ付き切削工具およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は切削加工に使用する工具とその製造方法に関し、特に損耗センサを備えたセンサ付き切削工具とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
切削加工において、切削工具の逃げ面摩耗の大きさは、一般的に工具寿命の判定基準となる。そのため、切削加工中にインプロセスで速やかに逃げ面の摩耗量を推定することは、高精度加工を維持する上で大変重要である。しかし、加工中に工具の摩耗を直接観察することは作業環境上大変難しい。
【0003】
従来、かかる切削工具の摩耗量を測定する方法として、加工を中止して工具を一旦はずして工具顕微鏡などで測定したり、あるいは加工中にインプロセスで摩耗量を知りたい場合は、工具の摩耗に付随して起こる他の現象(切削力や振動の変化など)を工作機械上の加工点付近に設置したセンサで検出して、検出信号に何らかの信号処理を行って摩耗量を推定しているが、従来の方法では摩耗の定量的な量を求めることが困難であったり、十分な感度や信頼性が得られなかった。
【0004】
そこで、特許文献1では、図5に示すように、超硬合金やサーメットなどの導電性母材25の表面に絶縁性の酸化アルミニウムからなる絶縁層22と、導電層23からなるセンサ回路をコーティングして工具を形成し、被削材と工具との間に電圧をかけ、絶縁層22が摩耗し導電性母材25が露出したとき、すなわち寿命になると電流が流れることを利用した工具寿命の検知方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、絶縁層としてCVD法またはPVD法で酸化アルミニウム層を1層成膜することによって、センサ回路間の絶縁を確保でき、センサ回路を多層化できるため、センサ機能のエラーを防止できることが提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のように、絶縁層22を超硬合金やサーメットなどの導電性母材25のような熱膨張係数が異なる母材にCVD法やPVD法で酸化アルミニウム層を1層のみ成膜する場合、成膜後に酸化アルミニウムからなる絶縁層22中に導電性母材25まで通じる微細な亀裂(クラック)20が発生し、絶縁層22の上に導電層23を作製した場合、そのクラック20を通じて母材25と導電層23が短絡してしまい、センサ回路が機能しないという問題があった。
【0007】
そこで、本出願人は、先に特許文献3にて、絶縁層の構成を、化学蒸着法、またはイオンプレーティング法やスパッタリング法等の物理蒸着法等の薄膜形成法で酸化アルミニウム層や窒化アルミニウム層等の絶縁性薄膜を多層成膜した構造とすることによって、絶縁層の絶縁性を向上させることを提案した。
【0008】
しかしながら、特許文献3の方法によれば、絶縁層を多層化とすることで絶縁層の絶縁性は向上するものの、絶縁層を含めた硬質被覆層全体の付着強度および切削性能の点では各絶縁層の材質および特性は適正化されておらず、センサ付き切削工具としての耐摩耗性、耐欠損性および耐剥離性等の切削性能が不十分であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、正確かつ安定に工具切刃の異常状態を検知して高いセンサ機能を有し、かつ切削工具として十分な切削性能を有するセンサ付き切削工具を提供することである。
【0010】
〔特許文献1〕
特開昭59−81043号公報
〔特許文献2〕
特開昭62−88552号公報
〔特許文献3〕
特開2002−292504号
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題について検討した結果、導電性母材表面に形成される絶縁層を特定条件に制御された酸化アルミニウム層にて構成することで、高い絶縁性と高い付着力とを兼ね備えた絶縁層となり、工具寿命を安定して正確に検知できて高いセンサ機能を有するとともに、高い切削性能を発揮する優れた性能を有するセンサ付き切削工具となることを知見した。
【0012】
すなわち、本発明のセンサ付き切削工具は、導電性母材の表面絶縁層を形成し、該絶縁層表面に導電層から成るセンサ回路を形成してなるセンサ付き切削工具であって、前記絶縁層は、化学蒸着法によって2層以上連続して成膜された酸化アルミニウム層を備えるとともに、複数回の酸化アルミニウム成膜工程間に、成膜された前記酸化アルミニウム層の成膜温度よりも200℃以上低い温度で冷却することにより形成されており、前記絶縁層の電気抵抗値が1kΩ以上であり、かつ、前記絶縁層の前記導電性母材との付着強度が60N以上であることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、前記絶縁層と前記導電性母材との間に、(Ti)C(ただし、M:Al、Zr、Cr、Siの群から選ばれる少なくとも1種、0<a≦1、0≦b<1、a+b=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の単層または2種以上の複層からなる下地層を設けることにより、絶縁層の付着強度をさらに高めることができるとともに、硬質被覆層全体としての耐欠損性を向上させることができる。
【0016】
また、前記酸化アルミニウム層の各層の厚みが0.5〜5μmであることが、絶縁層の絶縁性を安定して確保できる点で望ましく、前記絶縁層の総厚みが1〜10μmであることが絶縁性および工具としての耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。
【0017】
さらに、本発明のセンサ付き切削工具の製造方法は、導電性母材の表面絶縁層を形成し、該絶縁層の表面に導電膜からなるセンサ回路を形成したセンサ付き切削工具の製造方法において、前記絶縁層は、化学蒸着法によって2層以上連続して成膜された酸化アルミニウム層を備えるとともに、複数回の酸化アルミニウム成膜工程間に、成膜された酸化アルミニウム層を、当該酸化アルミニウム層の成膜温度よりも200℃以上低い温度で冷却する冷却工程を備えることを特徴とするものであり、かかる製造方法によって作製された前記絶縁層は高い絶縁性と高い付着強度を有して硬質被覆層全体として耐欠損性および耐摩耗性に優れることから、高機能のセンサ付き切削工具となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、各請求項に係る発明の実施形態としてスローアウェイチップを例として図1〜4を用いて説明する。なお、図1〜4において、1はセンサ付き切削工具、2は絶縁層、3は導電層、4、4a、4bおよび4cは酸化アルミニウム層、5は導電性母材、7は下地層をそれぞれ示している。
【0019】
図1、図2に示されるセンサ付き切削工具1は、導電性母材5の表面に絶縁層2を成膜し、さらにその表面に導電層3からなるセンサ回路9を設けているセンサ付スローアウェイチップである。
【0020】
本発明によれば、絶縁層2が、付着強度が60N以上で、かつ電気抵抗値が1kΩ以上の酸化アルミニウム層4からなることが大きな特徴であり、これによって、絶縁層2が高い絶縁性と高い付着力とを兼ね備えたものとなり、工具寿命を安定して正確に検知できて高いセンサ機能を有するとともに、高い切削性能を発揮する優れた性能を有するセンサ付き切削工具1となる。
【0021】
つまり、絶縁層2の付着強度が60Nより低いと、切削による衝撃によって容易に絶縁層2が剥離してしまい、切削工具1としての耐摩耗性、耐欠損性が低下して切刃が早期に寿命となってしまうとともに、センサ回路9をなす導電層3をも剥離してセンサ機能が失われる。また、電気抵抗値が1kΩより低いと、センサ回路9の下に存在する導電性母材5を介したノイズ信号によってセンサ回路9内の流れる規定のセンサ信号を検出できなくなりセンサ検知性能が低下する。
【0022】
なお、本発明における付着強度はスクラッチ試験によって求めることができ、すなわち、薄膜表面を触針(東京ダイヤモンド工具製作所社製(もしくはナノテック社製)ダイヤモンド接触子:N2−1487)によって引っかいたときに膜が剥離し始めた時点の付加力を指す。また、本発明における電気抵抗値の測定は図4に示すように、導電性母材5と導電層3とにテスター8の端子を当てて導電性母材5と導電層3間の電気抵抗値を測定し、これを絶縁層2の電気抵抗値とする。
【0023】
ここで、絶縁層2が化学蒸着法によって2層以上連続して形成された酸化アルミニウム層からなることにより、上記絶縁層2の付着強度が60N以上で、かつ電気抵抗値が1kΩ以上の特性を両立することができる。
【0024】
すなわち、絶縁層2の材質として、化学蒸着法にて作製した酸化アルミニウム層4を用いることによって、付着強度が良好で耐摩耗性がよく、被削材と反応しにくい絶縁層を作製することができ、センサ付き切削工具として十分な切削性能を備えることができる。しかしながら、本来絶縁性のよい酸化アルミニウムであるが、図5に示すように、通常の化学蒸着法で酸化アルミニウム層24を単層で成膜した場合、ピンホールやクラック等の欠陥20が多く発生してしまうため、導電層23と導電性母材25との間で短絡してしまい、センサ回路9が機能しなくなってしまう。
【0025】
そこで、本発明によれば、図2に示すように化学蒸着法で作製した酸化アルミニウム層4aの直上に化学蒸着法にて酸化アルミニウム層4bを、酸化アルミニウム層4bの直上に化学蒸着法にて酸化アルミニウム層4cを順次成膜して多層化することで、酸化アルミニウム層4aおよび4bに生成した欠陥10が酸化アルミニウム層4bおよび4cによって埋められて導電性母材5の表面全体を絶縁層2にて覆うことができることから、導電層3を成膜しても導電性母材5とセンサ回路9の導電層3とが接触して短絡することがなくなり、安定したセンサ回路9の動作を保障することができる。
【0026】
また、本発明によれば、絶縁層2の成膜方法においては、化学蒸着法により、850℃以上の第1の成膜温度で1層目の酸化アルミニウム層4aを成膜した後、一旦炉内を前記第1の成膜温度に対して200℃以上低い温度に冷却し、再度850℃以上の第2の成膜温度に昇温して2層目(4b)の成膜を行うように複数回の成膜工程間に冷却工程を設けながら複数層の酸化アルミニウム層4a〜4cを成膜して絶縁層2を形成することが重要であり、上記成膜温度よりも200度以上低い温度まで降温する冷却工程を設けながら絶縁層2を成膜することによって、先に成膜された酸化アルミニウム層(4a、4b)中に成膜中に発生した応力の開放およびそれに伴う欠陥10の生成、および後に成膜する酸化アルミニウム層(4b、4c)による欠陥10の補填効果が発揮され、さらには残留応力が適度に開放されることによって絶縁層4aの導電性母材5(および後述する下地層7)との密着力をより高めることができる。
【0027】
すなわち、先の酸化アルミニウム層を成膜した後、一旦炉内を先の成膜温度に対して200℃以上低い温度に冷却することなく次の成膜を行うと、先の酸化アルミニウム層内に残存する残留応力を開放することができず、絶縁層2全体、場合によってはその上の導電層の成膜が終了して冷却する際に酸化アルミニウム層4a〜4c内に残存した残留応力が一気に開放されて酸化アルミニウム層4a〜4c全層、換言すれば絶縁層2全体にわたって貫通するような欠陥が発生して絶縁層2の絶縁性が損なわれることになる。
【0028】
なお、上記酸化アルミニウム層4の成膜条件は、キャリアガスとしてHを用い、反応ガスとしてCO、HCl、AlCl、HSを用い、成膜温度は850℃以上、特に850℃〜1100℃、炉内圧力は4kPa〜30kPaの間で成膜することが望ましい。
【0029】
ここで、酸化アルミニウム層4は2層だけでも十分な効果は得られるが、3層、4層と重ねることでより安定した絶縁性が期待できる。さらに、アルミナの優れた耐摩耗性や、被削材と反応しにくいという特性によって、切削性能を維持または向上させることができる。
【0030】
ここで、層厚みが薄いほど熱膨張によるクラックの発生が軽減されるため、酸化アルミニウム層4の各層(4a〜4c)の厚みを0.5〜5μm、特に1〜3μmとすることが、欠陥10の発生が抑えられ、短絡の要因が減少する効果をもつため望ましい。また、絶縁層2の絶縁性の安定性と膜剥離の防止のために絶縁層2の総厚みが1〜10μm、特に3〜6μmであることが望ましい。
【0031】
さらに、酸化アルミニウム層4中に存在する酸化アルミニウム粒子にかかるモーメントを小さくして酸化アルミニウム層4に発生するクラックを防止して付着強度および耐欠損性の低下を防止するとともに、工具としての耐摩耗性を向上させるため、酸化アルミニウム層4中の酸化アルミニウム粒子の平均粒径が0.5〜5μm、特に1〜4μmであることが望ましい。
【0032】
(導電性母材5)
本発明のセンサ付き切削工具に使用する導電性母材5としては、酸化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体、サーメット、超硬合金、立方晶窒化ホウ素質焼結体(CBN/Cubic Boron Nitride)、ダイヤモンド焼結体(PCD/Polycrystalline Diamond)等の抵抗値が10−2Ω・cm以下の材質が使用される。
【0033】
酸化アルミニウム質焼結体としては、TiCを2〜40重量%、Fe、Ni、Coの酸化物のうち少なくとも1種を0.01〜5.0重量%、残部がAlおよび不可避不純物からなる酸化アルミニウム質焼結体が好適に使用される。
【0034】
窒化珪素質焼結体としては、AlをAl換算で1.5〜10mol%、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物を30〜80mol%、残部が窒化珪素と希土類酸化物を窒化珪素に対して10重量%以下、不純物的酸素をSiO換算で10mol%以下の割合から成る窒化珪素質焼結体が好適に使用される。
【0035】
サーメットとしては、Tiを炭化物、窒化物あるいは炭窒化物換算で50〜80重量%、周期律表第6a族元素を炭化物換算で10〜40重量%の割合で含有するとともに(窒素/(炭素+窒素))で表される原子比が0.4〜0.6の範囲内にある硬質相成分70〜90重量%と、鉄族金属から成る結合相成分10〜30重量%とから成るTiCN基サーメットが好適に使用される。
【0036】
超硬合金としては、硬質相と結合相で構成されるものなどがあり、硬質相は、炭化タングステン、または炭化タングステンの5〜15重量%を周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物で置換したものなどからなり、結合相は、Co等の鉄族金属を5〜15重量%の割合で含有したものが好適に使用される。
【0037】
(下地層7)
また、本発明においては、絶縁層2と導電性母材5との間に、(Ti)C(ただし、M:Al、Zr、Cr、Siの群から選ばれる少なくとも1種、0<a≦1、0≦b<1、a+b=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)、特に、TiC、TiN、TiCNおよびTiAlNの単層または2種以上の複層からなる下地層7を設けることにより、絶縁層2の付着強度をさらに高めることができるとともに、下地層7、絶縁層2および導電層3の硬質被覆層全体としての耐欠損性を向上させることができる。ここで、下地層7の厚みは0.1μm〜10μmであることが絶縁層2の付着力向上およびチップ1の耐欠損性の点で望ましい。
【0038】
なお、これらの下地層7は、CVD法やイオンプレーティング、スパッタリング等のPVD法の成膜法によって形成されることが望ましい。
【0039】
(導電層3)
本発明に使用される導電層3は、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等の周期律表4a、5a、6a族金属、Co、Ni、Fe等の鉄族金属、あるいはAlなどの金属材料やTiC、VC、NbC、TaC、Cr、MoC、WC、WC、TiN、VN、NbN、TaN、CrN、TiCN、VCN、NbCN、TaCN、CrCN等の周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、(Ti、Al)Nの群から選ばれる少なくとも1種で形成される。この中でも、特にTiNは被削材と反応せず、センサの電気抵抗値が常に所定値を示し、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること、被削材の加工表面に反応生成物による傷が形成されるのを有効に防止できること、耐酸化性に優れ、酸化物生成によるセンサの電気抵抗値の変化がなく、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること等の理由から好適に使用し得る。
【0040】
導電層3は、その厚みを0.05μm以上とすることで、スローアウェイチップの摩耗度合いや欠損を正確に検出するためにセンサの電気抵抗を得ることができる。また20μm以下とすることで、導電層3中への応力の発生を抑制し、導電層3の密着性を高めることができる。
【0041】
この導電層3は、CVD法やイオンプレーティング、スパッタリング、蒸着等のPVD法、めっき法等を採用することによってスローアウェイチップの母材のほぼ全面に所定厚みに導電層3を被着し、その後、レーザ加工によって、導電層3を所定パターンに加工してセンサ回路9を形成する。センサ幅は一般的には0.01mm〜0.5mmでよいが、寿命設定により任意の幅に設定することができる。これにより電気絶縁性のよいセンサ回路9を作製することができる。
【0042】
上述した構成からなる本発明のセンサ回路付き切削工具は、絶縁性と導電性母材との付着力に優れることから、切削工具の切刃の損耗状態を検知可能な損耗センサ付き切削工具として好適である。
【0043】
センサ付き切削工具1の好適例であるスローアウェイチップについて図3の概略斜視図に示すが、スローアウェイチップ1は多角形状をなす主面にすくい面および載置面を設け、側面に逃げ面を設けた略平板状であり、その表面に切刃をなすコーナー部12の逃げ面稜線近傍を含んでセンサ回路9を設けている。また、図3のスローアウェイチップ1ではすべてのコーナー部12がセンサ機能を有するパターンにてセンサ回路9が形成されている。
【0044】
また、本発明では図3に示したような略多角形板状のスローアウェイチップのみならずソリッド工具にも適応可能であり、また、棒状部の先端に切刃を有するようなバータイプのチップ、エンドミル、ドリル、フライス工具等への応用も可能である。
【0045】
【実施例】
実施例として下記に示す作製方法にてセンサ付き切削工具(スローアウェイチップ)作製した。
【0046】
母材として、Co:8重量%、Ta:5重量%、Ti:3重量%、残部がWCからなる超硬合金を準備した。この超硬合金表面に表1に示す下地層を成膜した後、表1に示す材質、成膜方法、成膜温度、各層を成膜する間の冷却温度、成膜温度と冷却温度との温度差、絶縁層の成膜層数、各層の厚み、絶縁層全体の総厚みの条件で絶縁膜を成膜した。なお、表1の各成膜方法については以下の条件は一定とした。
【0047】
▲1▼ CVD法による酸化アルミニウム層の作製には、キャリアガスとしてHを用い、反応ガスとしてCO、HCl、AlClを用い、炉内圧力は20kPaで行った。各層の厚みは成膜時間を変更して調整した。
【0048】
▲2▼ アークイオンプレーティング法による窒化アルミニウム層の作製には、ターゲットに純度99.9%のアルミニウムを使用し、バイアス−30V、アーク電流値150A、窒素雰囲気、圧力4Paにて成膜した。
【0049】
▲3▼ スパッタリング法による酸化アルミニウム層の作製には、ターゲットに酸化アルミニウムを使用して、Ar雰囲気の高周波スパッタリング装置でプレスパッタリングを3分、母材のエッチングを12分、ターゲットのプレスパッタリングを15分行った。
【0050】
▲4▼ スパッタリング法による酸化ジルコニウム層の作製には、ターゲットに酸化ジルコニウムを使用して、Ar雰囲気の高周波スパッタリング装置でプレスパッタリングを3分、母材のエッチングを12分、ターゲットのプレスパッタリングを15分行った。
【0051】
その後、上記絶縁層を成膜したものに対して、導電膜としてアークイオンプレーティング法でTiNを1μm成膜した後、レーザ加工によってセンサ回路を作製し、試料No.1〜9のセンサ付スローアウェイチップを作製した。
【0052】
得られたスローアウェイチップについて、各種層厚みおよび組織状態を、層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)および/または光学顕微鏡にて1000倍〜50000倍に拡大して測定した。SEMによる測定では装置は日本電子製JSM−6340Fにて行った。
【0053】
また、付着強度は市販の自動スクラッチ試験機を用いて測定した。装置はナノテック社製CSEM−REVETESTを使用した。テーブルスピード10mm/minで荷重スピードを100N/minでダイヤモンド接触子(東京ダイヤモンド工具製作所社製ダイヤモンド接触子:N2−1487)に荷重をかけてゆき、被膜が剥離したときの荷重を付着強度とした。
【0054】
電気絶縁性の調査は図4に示す方法で行った。すなわち、導電性母材5と導電膜3にテスター8の端子を当てて、導電性母材5と導電層3との間の電気抵抗値を測定した。なお、テスター8の端子間の距離は5mmとし、各試料の任意5点について測定した平均値を絶縁抵抗値とした。テスターの計測値が2000kΩ以上の電気抵抗値は便宜上2000kΩとして平均値を計算した。テスターはカスタム社製デジタルマルチメーターCDM−2000を使用した。さらに、切削性能は下記の3つの切削条件にてそれぞれ耐摩耗性および耐欠損性、耐膜剥離性を評価した。評価結果は表1に示した。
【0055】
≪切削条件≫
・耐摩耗性
切削速度 250m/min
送り 0.3mm/rev
切り込み 2.0mm
被削材 SCM435
切削状態 切削液あり(エマルジョン)
評価結果 試料の逃げ面摩耗幅が0.2mmになる時の切削時間を示した。
【0056】
・耐欠損性
切削速度 200m/min
送り 0.45mm/rev
切り込み 1.5mm
被削材 SCM440 4本溝
切削状態 切削液あり(エマルジョン)
評価結果 試料が欠損するまでの切削時間を示した。
【0057】
・耐膜剥離性
切削速度 250m/min
送り 0.3mm/rev
切り込み 2.0mm
被削材 SCM435 4本溝
切削状態 切削液あり(エマルジョン)
評価結果 1分間切削して逃げ面における膜剥離した数を評価。各試料につき10個ずつ評価し、その中で膜が剥離しなかった数を百分率で表した。
【0058】
(数字が大きいほど耐膜剥離性良好)
【表1】
Figure 0004057934
【0059】
表1より、絶縁層を化学蒸着法にて成膜し、2層以上連続した酸化アルミニウム層の多層膜とした試料No.1〜4では、絶縁性もよく、膜剥離の発生も抑制されて付着強度も強く、また、耐摩耗性および耐欠損性も良好だった。特に、下地層を配したものは特に付着強度がよかった。なお、試料No.1〜4について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて絶縁層である酸化アルミニウム層の平均粒径を測定した結果、2μmであった。
【0060】
これに対して、化学蒸着法にて成膜し、2層以上連続した酸化アルミニウム層の多層膜としたが、2層目以降のアルミニウム層を成膜するときに200℃以上温度差で冷却しなかった試料No.5では、付着強度は60N以上あり、切削試験も良好な結果であったが、絶縁抵抗値が低く、センサ回路を機能させることができなかった。
【0061】
また、本発明の膜構成である化学蒸着法による酸化アルミニウム層の多層膜以外の膜構成とした試料No.6、7では、絶縁抵抗値は十分な値であったが、付着強度が大きく劣ってしまい、耐欠損性、耐摩耗性共に悪かった。
【0062】
一方、絶縁層を化学蒸着法以外の成膜法にて酸化アルミニウム層を単層で成膜した試料No.9では、絶縁抵抗値は1kΩ以上あったが、付着強度が十分ではなく、切削性能も悪かった。なお、スパッタ法またはPVD法で成膜した絶縁層の平均粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)にて測定した結果、0.1μmより小さいものであることがわかった。
【0063】
他方、絶縁層を化学蒸着法で成膜した酸化アルミニウム層の単層とした試料No.10では、絶縁抵抗値が低く、センサ機能が働かなかった。
【0064】
【発明の効果】
以上、詳述したとおり、本発明を用いることで、高い絶縁性と高い付着力とを兼ね備えた絶縁層となり、工具寿命を安定して正確に検知できて高いセンサ機能を有するとともに、高い切削性能を発揮する優れた性能を有するセンサ付き切削工具となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンサ付き切削工具における膜構成の一例を示す断面模式図である。
【図2】図1におけるA部の拡大模式図である。
【図3】(a) センサ付き切削工具の一実施形態を示す概略上方斜視図である。
(b) センサ付き切削工具の一実施形態を示す概略下方斜視図である。
【図4】電気抵抗値の測定方法の概略を示す図である。
【図5】従来のセンサ付き切削工具を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1:センサ付き切削工具
2:絶縁層
3:導電層
4:酸化アルミニウム層
4a:第1層目の酸化アルミニウム層
4b:第2層目の酸化アルミニウム層
4c:第3層目の酸化アルミニウム層
5:導電性母材
7:下地層
8:テスター
9:センサ回路
10:絶縁層のクラックやピンホール等の欠陥部
12:コーナー部
A:酸化アルミニウム層によって埋められた欠陥部

Claims (8)

  1. 導電性母材の表面絶縁層を形成し、該絶縁層表面に導電層から成るセンサ回路を形成してなるセンサ付き切削工具であって、
    前記絶縁層は、化学蒸着法によって2層以上連続して成膜された酸化アルミニウム層を備えるとともに、複数回の酸化アルミニウム成膜工程間に、成膜された前記酸化アルミニウム層の成膜温度よりも200℃以上低い温度で冷却することにより形成されており、
    前記絶縁層の電気抵抗値が1kΩ以上であり、かつ、前記絶縁層の前記導電性母材との付着強度が60N以上であることを特徴とするセンサ付き工具。
  2. 前記酸化アルミニウム層の成膜温度が850℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付き切削工具。
  3. 前記導電性母材と前記絶縁層の間には下地層が形成されており、
    前記下地層は、(Ti)C(ただし、M:Al、Zr、Cr、Siの群から選ばれる少なくとも1種、0<a≦1、0≦b<1、a+b=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の単層または2種以上の複層からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ付き切削工具。
  4. 前記酸化アルミニウム層の各層の厚みが0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサ付き切削工具。
  5. 前記絶縁層の総厚みが1〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサ付き切削工具。
  6. 導電性母材の表面絶縁層を形成し、該絶縁層の表面に導電膜からなるセンサ回路を形成したセンサ付き切削工具の製造方法において、
    前記絶縁層は、化学蒸着法によって2層以上連続して成膜された酸化アルミニウム層を備えるとともに、複数回の酸化アルミニウム成膜工程間に、成膜された酸化アルミニウム層を、当該酸化アルミニウム層の成膜温度よりも200℃以上低い温度で冷却する冷却工程を備えることを特徴とするセンサ付き切削工具の製造方法。
  7. 前記酸化アルミニウム層の成膜温度が850℃以上であることを特徴とする請求項6に記載のセンサ付き切削工具の製造方法。
  8. 前記導電性母材と前記絶縁層の間に下地層が形成する工程を備えており、
    前記下地層は、(Ti )C (ただし、M:Al、Zr、Cr、Siの群から選ばれる少なくとも1種、0<a≦1、0≦b<1、a+b=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の単層または2種以上の複層からなることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のセンサ付き切削工具の製造方法。
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