JP4056641B2 - 移動物体観測システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は飛行物体などの移動物体を捕捉する移動物体観測システムに係り、特に、移動物体が複数に分離してしまうような場合においても、その中の主要な移動物体を誤ることなく捕捉することができる移動物体観測システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図13は特開平9−303992号公報に開示された従来の移動物体観測システムの構成を示すシステム構成図である。図において、56は赤外線カメラ、57は微分回路、58は速度ベクトル検出回路、59は二値化回路、60は撮像面積検出回路、61は輝度分布検出回路、62はデータ処理回路、63はジンバル装置、64はデータベース部、65は照合部、66は分離処理部である。
【0003】
次に動作について説明する。
赤外線カメラ56により撮像された赤外線画像は、微分回路57において微分処理され、この微分処理された赤外線画像に基づいて速度ベクトル検出回路58は当該画像中の輝点の角速度ベクトルを算出する。また、上記赤外線画像は二値化回路59において適当な閾値に基づいて二値化処理され、撮像面積検出回路60は、上記微分画像と当該二値化画像とに基づいて各輝点の撮像面積を算出する。更に、輝度分布検出回路61は、上記赤外線画像の中の所定の輝度レベル以上の輝点を検出して、この輝点の背景に対する輝度レベルを算出する。
【0004】
そして、データ処理回路62には、これら輝点の角速度ベクトル情報、各輝点の撮像面積情報、輝点の背景に対する輝度レベル情報とともに、ジンバル装置63から対象物との相対速度情報が入力される。このデータ処理回路62のデータベース部64には以上の入力情報に対応する情報が記憶されており、照合部65はこのデータベース部64の記憶情報と入力情報との照合処理を行い、分離処理部66はこの照合結果として得られた複数の対象物の輝点の中から1つの目標とする輝点を特定する。
【0005】
なお、これら一連の処理においては、例えばデータベース部64に弾道ミサイルの角速度ベクトルを記憶させ、分離処理部66では輝点の角速度ベクトルがこの記憶した角速度ベクトルと大きく異なる場合には当該輝点を目標物候補から排除するとの条件に設定すれば、惑星や人工衛星などの角速度ベクトルがずっと小さい移動物体の輝点を目標物候補から排除することができる。
【0006】
また、他にもデータベース部64に弾頭部の推定角速度ベクトルを記憶させ、分離処理部66では輝点の角速度ベクトルがこの記憶した角速度ベクトルと最も一致するものを目標物候補とするとの条件に設定すれば、図14に示すように移動途中においてブースタやシェラウドと分離する弾頭部以外の輝点を目標物候補から排除することができる。なお、図14は移動途中においてブースタ、シェラウドおよび弾頭部に分離する移動物体の分離後の相対位置関係を示す分離状態説明図である。図において、67はブースタ、68は弾頭部、69はそれぞれシェラウドである。そして、同図(a)は分離直後の状態を示し、同図(b)は分離してから所定時間経過した後の状態を示している。
【0007】
従って、移動物体観測システムの観測範囲を通過するように移動する移動物体が複数に分離してしまうような場合には、その中の主要な移動物体の情報を予めデータベース部64に記憶させておくことにより、当該主要な移動物体を捕捉することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の移動物体観測システムは以上のように構成されているので、赤外線画像内において検出された輝度分布が予めデータベース部64に登録された輝度分布と一致した場合に初めて移動物体を判定することができるので、データベース部64に予め登録されていない移動物体や弾頭部などの主要移動物体を判定することはできず、しかも、赤外線カメラ56において所定の輝度分布が形成される程に移動物体が接近しなければその判定を行なうことができないなどの課題があった。
【0009】
また、従来の移動物体観測システムは例えば所定の輝度を有する画素の角速度ベクトルに基づいて移動物体を判定することになるが、このような判定方法では、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体を輝点の分布に基づいて区別することができず、そのような状況において主要移動物体を判定することはできない。
【0010】
図15および図16はこのような複数の移動物体の移動方向と従来の移動物体観測システムの観測状況との関係を説明する説明図である。これらの図において、70,71はそれぞれ略同一方向に移動する移動物体、72は移動物体観測システム、73,74はそれぞれ各移動物体70,71の輝点である。また、これらの図において、(a)は位置関係図、(b)は赤外線画像である。そして、図15(a)に示すように複数の移動物体70,71が赤外線カメラ56の視野角方向に分離して存在する場合には、同図(b)に示すように各移動物体70,71毎に分離した輝点73,74が観測されるが、図16(a)に示すように複数の移動物体70,71が赤外線カメラ56の一方向に重なって存在する場合には、同図(b)に示すように各移動物体70,71が1つに重なった輝点73,74として観測されてしまう。そして、このような後者の赤外線画像では、輝点の角速度ベクトルなどに基づいて分離処理をしたとしても、複数の移動物体70,71の中から主要移動物体を分離することはできない。
【0011】
そこで、発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、移動物体が移動中に複数に分離する場合、分離後の複数の近接した移動物体同士の衝突などの不具合をさけるため、第一に、打ち上げ方向に移動させたい主要移動物体は分離前の一体的な移動物体においてその進行方向前部に配置されること、第二に、分離時に、移動方向前部に位置する主要移動物体には進行方向へ移動する力が、移動方向後部に位置する移動物体には進行方向とは逆向きへ移動する力がそれぞれ作用することなどの暗黙的なルールが存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体を区別し主要移動物体を判定することができ、しかも、登録されていない移動物体の主要移動物体を遠方において判定することができる移動物体観測システムを得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る移動物体観測システムは、一体的な移動物体が移動中に複数に分離した後の主要移動物体とその他の移動物体とを検出する移動物体観測システムにおいて、観測範囲を周期的に走査し、各周期毎の受信データを出力するレーダと、各周期毎の受信データから上記主要移動物体とその他の移動物体を含む複数の移動物体を検出する検出手段と、各周期毎の受信データにおける上記複数の移動物体の位置および距離を演算し、これらを位置ベクトルとして出力する位置ベクトル演算手段と、各周期毎の受信データにおける上記複数の移動物体を複数の受信データの間で関連付け、この関連に基づいて各移動物体の移動速度および移動方向を判定し、これらを速度ベクトルとして出力する速度ベクトル演算手段と、上記複数の移動物体毎に、それぞれの移動物体の位置ベクトルと、前記複数の移動物体の速度ベクトルの平均である単位長さの平均速度ベクトルとの内積を演算し、この内積が最も大きい値である移動物体を主要移動物体として判定する判定手段と、上記判定された主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する出力手段とを備えたものである。
【0017】
この発明に係る移動物体観測システムは、主要移動物体を追尾する移動観測手段を設け、上記移動観測手段は、当該移動観測手段の推進力を発生させる推進装置と、出力手段から出力される出力情報に基づいて、上記推進装置の推進出力を、当該移動観測手段が上記主要移動物体に接近するよう制御する推進装置制御回路と、上記主要移動物体を観測する赤外線センサアレイとを備えたものである。
【0018】
この発明に係る移動物体観測システムは、移動観測手段が、赤外線センサアレイの画像に基づいて推進出力を補正制御するものである。
【0019】
この発明に係る移動物体観測システムは、出力手段が、赤外線センサアレイの画像に基づいて推進出力を補正制御するものである。
【0020】
この発明に係る移動物体観測システムは、速度ベクトルに基づいて赤外線センサアレイの画像内の主要移動物体を判定し、これに基づいて推進出力を補正制御するものである。
【0021】
この発明に係る移動物体観測システムは、赤外線センサアレイの代わりに光学センサアレイを用いたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、1は観測範囲を周期的に走査しつつ、電波の送受信を行なう送受信アンテナ(レーダ)、2は高周波の観測電波を出力する送信機(レーダ)、3は受信電波を増幅検波してそれに応じた受信データを生成する受信機(レーダ)、4は観測電波を送受信アンテナ1に供給するとともに送受信アンテナ1の受信電波を受信機3に供給する切替器(レーダ)である。
【0023】
5は受信データが入力されるとともにCFAR(Constant False Alarm Rate)処理などを行い、この受信データに観測電波の散乱波が含まれている場合には、これを移動物体の検出信号として出力する検出回路(検出手段)である。
【0024】
6はこの検出信号が入力され、検出信号が入力されたタイミングに対応する送受信アンテナ1の向きおよび観測電波の出力タイミングから当該検出タイミングまでの期間に基づいて上記散乱波が発生した移動物体の位置までの距離および方向を演算し、これらを位置ベクトルrrとして出力する位置ベクトル算出回路(位置ベクトル演算手段)である。なお、この位置ベクトルrrは、送受信アンテナ1と移動物体の距離をr、観測電波を受信した時のアジマス角をθe、エレベーション角をθaとした場合、下記式(1)のように表される。
【0025】
【数1】
【0026】
7は位置ベクトルが入力されるとともにカルマンフィルタなどの追尾処理を行い、この新たな位置ベクトルと1つ前の走査周期における位置ベクトルとの関連付け(相関)を行い、これらのベクトル変位量に基づいてその走査周期の間における移動物体の速度の大きさおよび方向を演算し、これらを速度ベクトルとして出力する追尾回路(速度ベクトル演算手段)である。なお、2つの位置ベクトルの観測時間の時間差をΔtとした場合、当該期間における移動物体の速度ベクトルvvは下記式(2)のように表される。
【0027】
【数2】
【0028】
8は上記位置ベクトルと単位長さの平均速度ベクトルとの内積を演算し、この内積演算結果を出力する内積演算回路(判定手段)である。なお、各移動物体の位置ベクトルおよび速度ベクトルをそれぞれrrk(k=1,2,・・・)およびvvk(k=1,2,・・・)とした場合、単位長さの平均速度ベクトルvvaおよび各内積演算値rakは下記式(3)および式(4)のように表される。
【0029】
【数3】
【0030】
【数4】
【0031】
9は各走査周期毎に、その周期内に複数の内積演算結果が入力された場合には、その内積値が最も大きい値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する主要目標位置推定回路(判定手段、出力手段)である。
【0032】
次に動作について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1による移動物体観測システムの動作を説明する動作説明図である。図において、10は地上、11は移動物体の発射位置、12は移動物体の軌道、13は移動物体の到達位置、14はこの発明の実施の形態1による移動物体観測システム、15はこの移動物体観測システム14の観測範囲である。また、16は発射位置11(時刻t=0)におけるブースタ、17はこの発射位置11(時刻t=0)におけるブースタ16とその頭部において一体化されて1つの移動物体を構成する主要部、18は軌道12上の分離時刻(t=t1)におけるブースタ、19はこの分離時刻において当該ブースタ18と分離された主要部、20は観測範囲15(時刻t=t2)において捕捉されたブースタ(移動物体)、21はこの観測範囲において捕捉された主要部(移動物体、主要移動物体)である。なお、分離位置においてブースタ18と主要部19とを切り離す場合には、バネや推進装置を用いて、主要部19には進行方向へ移動する力が、ブースタ18には進行方向とは逆向きへ移動する力がそれぞれ作用するのが一般的である。
【0033】
そして、移動物体観測システム14が観測範囲15を周期的に走査している状態で、発射位置11からブースタ16および主要部17が打ち上げられ、時刻(t=t1)において主要部19とブースタ18とが分離され、これら複数の移動物体である主要部21とブースタ20とが別々の走査タイミングにおいて観測範囲15に進入すると、これら移動物体20,21により反射された観測電波が送受信アンテナ1を介して受信機3に入力され、検出回路5から主要部21とブースタ20とのそれぞれに対して別々の検出信号が出力される。
【0034】
位置ベクトル算出回路6は、各検出信号が入力される度に、その検出信号が入力されたタイミングに対応する送受信アンテナ1の向きおよび観測電波の出力タイミングから当該検出タイミングまでの期間に基づいて前述の散乱波が発生した移動物体20,21の位置までの距離および方向を演算し、これらを位置ベクトルとして出力する。また、追尾回路7は、各位置ベクトルが入力される度に、この新たな位置ベクトルと1つ前の走査周期における位置ベクトルとの関連付けを行い、これらのベクトル変位量に基づいて、その走査周期の間における移動物体20,21の速度の大きさおよび方向を演算し、これらを速度ベクトルとして出力する。更に、内積演算回路8は、各検出信号毎にこれら位置ベクトルと単位長さの平均速度ベクトルとの内積を演算し、この内積演算結果を出力する。
【0035】
そして、主要目標位置推定回路9は、各走査周期毎に、その周期内に複数の内積演算結果が入力された場合には、その内積値が最も大きい値である移動物体21を主要移動物体として判定し、この主要移動物体21に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する。
【0036】
図3はこの発明の実施の形態1による移動物体観測システム14が複数の移動物体20,21を検出した場合の主要移動物体の判定動作原理を説明する説明図である。図において、22は今回新たに演算した主要部21の位置ベクトル、23は前回の周期において演算した主要部21の位置ベクトル、24はこれら2つの位置ベクトル22,23の差である主要部21の速度ベクトル、25は今回新たに演算したブースタ20の位置ベクトル、26は前回の周期において演算したブースタ20の位置ベクトル、27はこれら2つの位置ベクトル25,26の差であるブースタ20の速度ベクトル、28はこれら主要部21およびブースタ20の単位長さの平均速度ベクトルである。そして、内積演算回路8は、前回の位置ベクトル23,26と単位長さの平均速度ベクトル28との内積を演算し、この内積演算結果を出力する。
【0037】
そして、同図に示すように、進行方向前方に位置する主要部21の方が前回の位置ベクトル23と単位長さの平均速度ベクトル28との内角が大きいので、主要部21の位置ベクトル23とブースタ20の位置ベクトル26との大きさにほとんど差が無いことや、分離直後の状態では主要部21の速度ベクトル24とブースタ20の速度ベクトル27はその方向および大きさが略一致していることからすれば、主要部21の方が内積値が大きくなり、主要目標位置推定回路9は、主要部21を主要移動物体として判定し、この主要部21に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力することになる。
【0038】
以上のように、この実施の形態1によれば、検出回路5が各周期毎の受信データから1乃至複数の移動物体20,21を検出し、位置ベクトル算出回路6が各移動物体20,21の位置および距離を演算して位置ベクトル22,25,23,26を出力し、追尾回路7が各周期毎の受信データを複数の受信データの間で関連付けてこれに基づいて各移動物体20,21の各速度ベクトル24,27,28を出力し、内積演算回路8がこれら各移動物体の位置ベクトル22,25,23,26と単位長さの平均速度ベクトル28との内積を演算し、主要目標位置推定回路9が最も内積値が大きい移動物体21の情報を出力するようにしたので、移動物体20,21の位置ベクトル22,25,23,26や速度ベクトル24,27,28の違いに基づいて各移動物体20,21を区別し、その中から最も内積の大きい移動物体21を主要移動物体として判定することができる効果がある。
【0039】
従って、移動物体観測システム14の観測範囲15を通過するような複数の移動物体20,21の中から例えば主要移動物体21を区別することができ、しかも、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21においてもそれらの位置(距離)の違いに基づいて正しく判定することができる効果がある。
【0040】
また、内積演算に基づいて主要移動物体21を判定するようにしているので、移動物体20,21の輝度分布情報などを一々登録する必要が無い。しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であるため、画像処理などに頼る必要が無くなって、距離および方向を測定するレーダ1,2,3,4と組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体21を遠方において正確に判定することができる効果もある。
【0041】
更に、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体21を判定する場合のように、主要移動物体21が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0042】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、29は各走査周期毎に、その周期内に複数の位置ベクトルが入力された場合には、その大きさが最も小さい値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する主要目標位置推定回路(判定手段、出力手段)である。これ以外の構成は実施の形態1と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に動作について説明する。
1つの走査周期において、位置ベクトル算出回路6が複数の位置ベクトル23,26を出力すると、主要目標位置推定回路29は、各位置ベクトルの大きさの比較を行い、その大きさが最も小さい値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する。
【0044】
そして、図3に示したように、ブースタ20と主要部21とからなる移動物体が遠方から接近し、その途中で分離された場合、ブースタ20よりも主要部21が移動方向前方に位置するので、その距離は当然に短くなる。従って、主要目標位置推定回路29は、主要部21を主要移動物体として判定し、この主要部21に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力することになる。これ以外の動作は実施の形態1と同様であり説明を省略する。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、検出回路5が各周期毎の受信データから1乃至複数の移動物体20,21を検出し、位置ベクトル算出回路6が各移動物体20,21の位置および距離を演算して位置ベクトル23,26を出力し、主要目標位置推定回路29が最も位置ベクトルの値が小さい移動物体21の情報を出力するようにしたので、移動物体の位置ベクトル23,26の違いに基づいて各移動物体20,21を区別し、その中から最も大きさの小さい移動物体21を主要移動物体として判定することができる効果がある。
【0046】
従って、移動物体観測システム14の観測範囲15を通過するような複数の移動物体20,21の中から例えば主要部21を区別することができ、しかも、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21をそれらの距離の違いに基づいて区別し、分離後に進行方向前方に位置する移動物体21、すなわち主要移動物体を上記距離に基づいて正しく判定することができる。
【0047】
また、距離の大小に基づいて主要移動物体21を判定するようにしているので、移動物体20,21の輝度分布情報などを一々登録する必要が無い。しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であるため、画像処理などに頼る必要が無くなって、レーダ1,2,3,4と組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体21を遠方において正確に判定することができる効果がある。
【0048】
更に、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体21が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0049】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、30は検出信号が入力され、検出信号が入力されたタイミングの受信電波の周波数シフト量であるドップラー周波数を演算して出力するドップラー周波数算出回路(ドップラー周波数演算手段)、31は各走査周期毎に、その周期内に複数の位置ベクトルが入力された場合には、このドップラー周波数が最も高い値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する主要目標位置推定回路(判定手段、出力手段)である。なお、上記ドップラー周波数fdは、移動物体のラジアル速度をv(送受信アンテナ1に近づく方向を正とする)、観測信号の送信周波数をf、光の速度をcとした場合、下記式(5)のように表される。
【0050】
【数5】
【0051】
これ以外の構成は実施の形態1と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
次に動作について説明する。
検出回路5から検出信号が出力されると、位置ベクトル算出回路6が位置ベクトルを演算して出力し、これと共に、ドップラー周波数算出回路30がそのタイミングの受信電波の周波数シフト量であるドップラー周波数を演算して出力する。
【0053】
主要目標位置推定回路31は、1つの走査周期において複数の位置ベクトルが入力されると、各ドップラー周波数の比較を行い、その周波数が最も高い値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する。
【0054】
そして、図3に示したように、ブースタ20と主要部21とからなる移動物体が遠方から接近し、その途中で分離された場合、ブースタ20よりも主要部21が移動方向前方において高速に移動してくるので、そのドップラー周波数は当然に高くなる。従って、主要目標位置推定回路31は、主要部21を主要移動物体として判定し、この主要部21に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力することになる。これ以外の動作は実施の形態1と同様であり説明を省略する。
【0055】
以上のように、この実施の形態3によれば、検出回路5が各周期毎の受信データから1乃至複数の移動物体20,21を検出し、位置ベクトル算出回路6が各移動物体20,21の位置および距離を演算して位置ベクトル23,26を出力し、ドップラー周波数算出回路30が各移動物体20,21のドップラー周波数を演算して出力し、主要目標位置推定回路31が最もドップラー周波数が高い移動物体21の情報を出力するようにしたので、移動物体20,21の移動速度の違いに基づいて各移動物体20,21を区別し、その中から最も速度の速い移動物体21を主要移動物体として判定することができる効果がある。
【0056】
従って、移動物体観測システム14の観測範囲を通過するような複数の移動物体20,21の中から例えば主要部21を区別することができる。しかも、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21をそれらの移動速度の違いに基づいて区別し、分離後に最も進行方向前方への速度が速い移動物体21、すなわち主要移動物体を上記ドップラー周波数に基づいて正しく判定することができる。
【0057】
また、ドップラー周波数に基づいて主要移動物体21を判定するようにしているので、移動物体20,21の輝度分布情報などを一々登録する必要が無い。しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であるため、画像処理などに頼る必要が無くなって、レーダ1,2,3,4と組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体21を遠方において正確に判定することができる。
【0058】
更に、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体21が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0059】
実施の形態4.
図6はこの発明の実施の形態4による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、32は各走査周期毎に、その周期内に複数の位置ベクトルが入力された場合には、このドップラー周波数が最も高い値で且つ位置ベクトルが小さい値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する主要目標位置推定回路(判定手段、出力手段)である。
【0060】
なお、このような判定は、例えば下記式(6)のJkを最大とするものを主要移動物体として判断するようにすればよい。同式において、rkは各移動物体の距離、raveは複数の移動物体の距離の平均値、fdkは各移動物体のドップラー周波数、fdaveは複数の移動物体のドップラー周波数の平均値、αおよびβはそれぞれ適当な重み係数である。
【0061】
【数6】
【0062】
これ以外の構成は実施の形態3と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
次に動作について説明する。
主要目標位置推定回路32は、1つの走査周期において複数の位置ベクトルが入力されると、各ドップラー周波数の大きさおよび位置ベクトルの大きさの比較を行い、ドップラー周波数が最も高い値で且つ位置ベクトルが小さい値である移動物体を主要移動物体として判定し、この主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する。
【0064】
そして、図3に示したように、ブースタ20と主要部21とからなる移動物体が遠方から接近し、その途中で分離された場合、ブースタ20よりも主要部21が移動方向前方において高速に移動してくるので、そのドップラー周波数は当然に高くなり、しかも、距離も短くなる。従って、主要目標位置推定回路32は、主要部21を主要移動物体として判定し、この主要部21に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力することになる。これ以外の動作は実施の形態3と同様であり説明を省略する。
【0065】
以上のように、この実施の形態4によれば、検出回路5が各周期毎の受信データから1乃至複数の移動物体20,21を検出し、位置ベクトル算出回路6が各移動物体20,21の位置および距離を演算して位置ベクトルを出力し、ドップラー周波数算出回路30が各移動物体20,21のドップラー周波数を演算して出力し、主要目標位置推定回路32が最もドップラー周波数が高く距離の近い移動物体21の情報を出力するようにしたので、移動物体20,21の距離および速度の違いに基づいて各移動物体20,21を区別し、その中から最も距離が小さく且つドップラー周波数の高い移動物体21を主要移動物体として判定することができる効果がある。
【0066】
従って、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21をそれらの距離および速度の違いに基づいて区別し、分離後に進行方向前方において高速に移動する移動物体21、すなわち主要移動物体を上記距離およびドップラー周波数に基づいて正しく判定することができる。
【0067】
また、これら距離の大小およびドップラー周波数の高低に基づいて主要移動物体21を判定するようにしているので、移動物体20,21の輝度分布情報などを一々登録する必要が無い。しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であるため、画像処理などに頼る必要が無くなって、レーダ1,2,3,4と組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体21を遠方において正確に判定することができる。
【0068】
更に、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体21が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム14自体に向かって移動する複数の移動物体20,21を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0069】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、33は遠方の移動物体を観測することができる基地センサ局、34はこの基地センサ局33の指令に基づいて発射され、上記移動物体を追尾する移動センサ局(移動観測手段)である。
【0070】
基地センサ局33において、35は主要目標位置推定回路9からの主要移動物体の位置情報や出力情報などの出力情報が入力され、当該主要移動物体を追尾する移動センサ局34の発射指令を出力する移動センサ局発射指示回路、36はこの発射指令に基づいて移動センサ局34を発射する移動センサ局発射回路、37はこの発射指令などを記憶する記憶回路、38は発射された移動センサ局34に対する進路指示信号を出力する移動センサ局進路指示回路、39はこの進路指示信号を電波として放射する通信用アンテナである。これ以外の構成は実施の形態1と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
移動センサ局34において、40は上記進路指示信号を受信する通信用アンテナ、41は受信した進路指示信号に基づいて推進出力制御信号を生成する推進装置制御回路、42はこの推進出力制御信号に応じた推進力を発生させる推進装置である。また、43は配列された多数の赤外線センサからなり、移動センサ局34の前方の赤外線画像を撮像する赤外線センサアレイ、44はこの赤外線画像の移動物体に応じた輝点を判別し、進路補正信号を生成する検出回路であり、上記推進装置制御回路41はこの進路補正信号に応じて推進出力制御信号に応じた推進力の微調整を行う。
【0072】
次に動作について説明する。
基地センサ局33が移動物体を捕捉すると、それに関する位置情報や速度情報が主要目標位置推定回路9から出力され、移動センサ局発射指示回路35は当該移動物体に対して移動センサ局34を発射するように発射指示を出力し、この発射指示に従って移動センサ局発射回路36は移動センサ局34を発射する。これとともにこの発射指示は記憶回路37に記憶される。
【0073】
この移動センサ局34発射後において、基地センサ局33は続けて当該移動物体の観測を続け、それに関する位置情報や速度情報が移動センサ局進路指示回路38に入力され続ける。そして、この移動センサ局進路指示回路38は通信用アンテナ39を介して発射した移動センサ局34に対して進路指示信号を出力する。なお、記憶回路37の記憶内容をチェックするようにすれば、移動センサ局発射指示回路35による発射/未発射の制御を行なうことができる。移動センサ局34の通信用アンテナ40がこの進路指示信号を受信すると、推進装置制御回路41が進路指示信号に基づいて推進出力制御信号を生成し、推進装置42はこの推進出力制御信号に応じた推進力を発生し、指定された方向に移動センサ局34は移動する。これにより移動センサ局34はそれ自身の赤外線センサアレイ43において観測対象たる移動物体を補足していなくとも、その移動物体に対して接近することができる。
【0074】
そして、赤外線センサアレイ43の赤外線画像に移動物体による輝点が観測されると、検出回路44はこの輝点に接近するように進路補正信号を生成し、推進装置制御回路41はこの進路補正信号に応じて推進出力制御信号に応じた推進力の微調整を行う。これにより、移動センサ局34はそれ自身の赤外線センサアレイ43において観測対象たる移動物体を補足した状態となれば、その移動物体に対して自身の制御により接近することができる。
【0075】
図8はこの発明の実施の形態5による移動物体の観測制御の利点を説明する説明図である。図において、45はブースタ(移動物体)、46は主要部(移動物体、主要移動物体)、47は確認されていない主要部である。そして、同図(a)に示すように、移動センサ局34はその赤外線画像においてブースタ45および主要部46が共に観測されていれば、例えばその形状判定などにより主要部46を追尾して観測することができるが、実際には、ブースタ45の大きさが主要部46よりも大きい場合が殆どであり、このような場合には、同図(b)に示すように、まずブースタ45だけが観測されてしまうことになり、赤外線画像のみに頼った推進力制御では移動センサ局34はこの時点でブースタ45を追尾してしまうことになる。しかしながら、この実施の形態5では主要部46へ向かう進路指示信号が基地センサ局33から出力され、この進路指示信号が入力された場合には移動センサ局34の進路はそれに基づいて決定されることになり、この進路指示信号により移動センサ局34の進路を矯正することができ、ひいてはブースタ45のみを補足した状態であったとしても同図(a)の状態となるまで強制的に移動センサ局34を移動させることができるので、確実に主要部46を追尾観測することができる。
【0076】
以上のように、この実施の形態5によれば、赤外線センサアレイ43を具備するとともに出力情報に基づいて推進出力を補正制御する移動センサ局34を備えたので、この移動センサ局34を所定の移動物体46に対して発射し、この進行方向を出力情報に基づいて補正制御することができ、当該所定の移動物体46にこの移動センサ局34を確実に接近させ、この赤外線センサアレイ43の画像情報に基づいて移動物体46を詳細に観測することができる効果がある。
【0077】
また、移動物体46を遠方において正確に判定することができるレーダ1,2,3,4と組み合わせて赤外線センサアレイ43を具備する移動センサ局34を使用しているので、赤外線センサアレイ43の画像に基づいて移動物体46の有無を判定し観測するような場合に比べて、早く移動センサ局34を移動させて移動物体46の詳細な観測を早期に開始することができる。また、赤外線センサアレイ43には、移動物体46からの距離が遠くなるに従って方位や方向の分解能が劣化したり、大気や雲、雨などの大気条件に応じて伝播中の減衰量が増大するなどの特性があるが、このような問題による遠距離観測の不都合を克服し、赤外線センサアレイ43による精密な観測を早期に且つ遠距離において確実に実施することができる効果がある。
【0078】
この実施の形態5によれば、移動センサ局34が、赤外線センサアレイ43の画像に基づいて推進出力を補正制御するので、赤外線センサアレイ43の画像情報に所定の移動物体46が観測されている状態になれば、それを観測し続けるように移動センサ局34の移動方向を制御することができ、ひいては上記所定の移動物体46に接近させつつ、観測し続けることができる効果がある。
【0079】
なお、この実施の形態5では実施の形態1の構成に基づいて主要移動物体46の出力情報を生成するようにしているが、その他の実施の形態2から実施の形態4のうちのいずれの構成を前提としても以上のべた効果を得ることができる。
【0080】
実施の形態6.
図9はこの発明の実施の形態6による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、48はこの赤外線画像の移動物体に応じた輝点を判別するとともに、この輝点情報および赤外線画像を出力する検出回路、49は受信した進路指示信号に基づいて推進出力制御信号を生成するとともに、上記輝点情報および赤外線画像を通信用アンテナ40を介して基地センサ局33に送信する推進装置制御回路、50は上記輝点情報および赤外線画像に基づいて補正された進路指示信号を移動センサ局34に出力する移動センサ局進路指示回路である。これ以外の構成は実施の形態5と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
次に動作について説明する。
赤外線センサアレイ43の赤外線画像において移動物体に基づく輝点が観測されると、検出回路48において輝点情報が生成され、これら輝点情報および赤外線画像が推進装置制御回路49から基地センサ局33に対して送信される。基地センサ局33の移動センサ局進路指示回路50は、この輝点情報および赤外線画像に基づいて、出力情報に基づいて生成した進路指示情報を補正し、これを進路指示信号として出力する。これ以外の動作は実施の形態5と同様であり説明を省略する。
【0082】
以上のように、この実施の形態6によれば、移動センサ局進路指示回路50が、赤外線センサアレイ43の画像に基づいて推進出力を補正制御するので、赤外線センサアレイ43の画像情報に所定の移動物体が観測されている状態になれば、それを観測し続けるように移動センサ局34の移動方向を制御することができ、ひいては上記所定の移動物体を接近しつつ観測し続けることができる効果がある。
【0083】
実施の形態7.
図10はこの発明の実施の形態7による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、51は赤外線画像に複数の輝点が観測された場合に、基地センサ局33から送信される速度ベクトルに基づいて主要移動物体を判定し、当該主要移動物体に対して接近するような進路補正信号を出力する主要目標位置推定回路であり、推進装置制御回路41はこの進路補正信号に応じて推進出力制御信号に応じた推進力の微調整を行う。これ以外の構成は実施の形態5と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
次に動作について説明する。
主要目標位置推定回路51は、検出回路44から出力される輝点情報に基づいて当該輝点たる移動物体に対して接近するような進路補正信号を出力する。特に、検出回路44から複数の輝点情報が出力された場合には、基地センサ局33から送信される速度ベクトルに基づいて主要移動物体を判定し、当該主要移動物体に対して接近するような進路補正信号を出力する。そして、推進装置制御回路41はこの進路補正信号に応じて推進出力制御信号に応じた推進力の微調整を行う。
【0085】
図11はこの実施の形態7における主要移動物体判別方法を説明する動作説明図である。同図(a)は基地センサ局33、移動センサ局34、ブースタ20および主要部21などの移動物体の位置関係を示す相互位置関係説明図、同図(b)は同図(a)の状態で赤外線センサアレイ43により観測される赤外線画像である。これらの図において、52はブースタ20に対応する輝点、53は主要部21に対応する輝点、54は基地センサ局33で得られる移動物体20,21の速度ベクトルvvを赤外線画像へ写像した写像速度ベクトルである。なお、この赤外線画像は視野内の温度分布を赤外線センサアレイ43の視野角方向において分離した濃淡画像(白から黒になるほどに振幅が大きくなるような濃淡画像)である。また、一般的に赤外線画像は、赤外線センサアレイ43を中心とし、且つ当該赤外線センサアレイ43と被測定物である移動物体20,21との距離を半径とする球面に当該被測定物20,21を投影した画像であるが、ここでは当該赤外線センサアレイ43の観測方向を法線方向とする平面に当該被測定物20,21が投影されているものとして、その被測定物20,21の位置(方向および距離)を考えている。このような近似をしても、赤外線センサアレイ43の視野角が狭い場合には誤差が問題となることはない。このような近似平面における直交二軸の方向ベクトルをそれぞれss,ttとし、移動センサ局34の単位速度ベクトルをvvmとした場合、これらの間には下記式(7)の関係が成立する。
【0086】
【数7】
【0087】
これ以外は図2と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
そして、同図に示すように、主要目標位置推定回路51は、赤外線画像内に複数の輝点が観測された場合には、上記写像した速度ベクトル54の最も先端側に位置する輝点を主要移動物体21の位置として特定し、この主要移動物体21に対して接近するような進路補正信号を出力する。なお、赤外線画像内に写像された写像速度ベクトル54(vvm)は下記式(8)のように表され、各輝点(移動物体)52,53と移動センサ局34との相対位置ベクトルをrrik、各輝点(移動物体)52,53と移動センサ局34との相対速度ベクトルをvviとした場合、その相対的な内積rikは下記式(9)のように表される。そして、この相対的な内積rikの値が最も大きい輝点53を主要移動物体21の位置として特定すればよい。なお、以上の式において「・」はベクトル内積演算を意味する。
【0089】
【数8】
【0090】
【数9】
【0091】
これ以外の動作は実施の形態5と同様であり説明を省略する。
【0092】
以上のように、この実施の形態7によれば、速度ベクトルに基づいて赤外線センサアレイ43の画像内の主要移動物体21を判定し、これに基づいて推進出力を補正制御するので、例えば赤外線センサアレイ43の画像内に分離した複数の移動物体20,21が観測された場合、その中の最も先頭側に位置する輝点53を主要移動物体21として判定し、それを観測し続けるように移動センサ局34の移動方向を制御することができ、ひいては上記所定の主要移動物体21に接近しつつ、観測し続けることができる効果がある。
【0093】
実施の形態8.
図12はこの発明の実施の形態8による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。図において、55は光学センサアレイであり、検出回路44はこの光学センサアレイ55の光学画像の中から移動物体に対応する輝度情報などを生成する。これ以外の構成は実施の形態7と同様であり同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
次に動作について説明する。
光学センサアレイ55から出力される光学画像中に移動物体に対応する輝度情報などが検出されると、検出回路44から当該移動物体に対応する位置情報が出力される。主要目標位置推定回路51はこの位置情報に基づいて進路補正信号を出力し、これに応じて推進力が制御される。また、複数の位置情報が出力された場合には、主要目標位置推定回路51は写像された速度ベクトルに基づいて主要移動物体を特定し、これに応じて推進力が制御される。これ以外の動作は実施の形態7と同様であり説明を省略する。
【0095】
以上のように、この実施の形態8によれば、赤外線センサアレイ43の代わりに光学センサアレイ55を用いたので、移動センサ局34が太陽などを移動物体と誤認してそれに接近するように移動してしまうことなどを防止することができる効果がある。
【0096】
なお、これ以外にも、ミリ波イメージャー、レーダなど目標物を視野角方向において分解した画像が得られるものであれば移動センサ局34のセンサアレイとして利用することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、一体的な移動物体が移動中に複数に分離した後の主要移動物体とその他の移動物体とを検出する移動物体観測システムにおいて、観測範囲を周期的に走査し、各周期毎の受信データを出力するレーダと、各周期毎の受信データから主要移動物体とその他の移動物体を含む複数の移動物体を検出する検出手段と、各周期毎の受信データにおける上記複数の移動物体の位置および距離を演算し、これらを位置ベクトルとして出力する位置ベクトル演算手段とともに、各周期毎の受信データにおける複数の移動物体を複数の受信データの間で関連付け、この関連に基づいて各移動物体の移動速度および移動方向を判定し、これらを速度ベクトルとして出力する速度ベクトル演算手段と、複数の移動物体毎に、それぞれの移動物体の位置ベクトルと複数の移動物体の速度ベクトルの平均である単位長さの平均速度ベクトルとの内積を演算し、この内積が最も大きい値である移動物体を主要移動物体として判定する判定手段とを設け、出力手段がこの主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力するので、移動物体の位置ベクトルや速度ベクトルの違いに基づいて各移動物体を区別し、その中から最も内積の大きいものを主要移動物体として判定することができる効果がある。
【0098】
従って、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体をそれらの位置(距離)の違いに基づいて区別し、分離後に進行方向前方に位置する移動物体、すなわち主要移動物体を上記位置ベクトルと速度ベクトルとの内積に基づいて正しく判定することができる。また、内積演算に基づいて主要移動物体を判定するようにしているので、移動物体の輝度分布情報などを一々登録する必要が無く、しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であれば画像処理などに頼る必要が無くなり、レーダと組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体を遠方において正確に判定することができる。従って、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0100】
従って、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体をそれらの距離の違いに基づいて区別し、分離後に進行方向前方に位置する移動物体、すなわち主要移動物体を上記距離に基づいて正しく判定することができる。また、距離の大小に基づいて主要移動物体を判定するようにしているので、移動物体の輝度分布情報などを一々登録する必要が無く、しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であれば画像処理などに頼る必要が無くなり、レーダと組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体を遠方において正確に判定することができる。従って、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0102】
従って、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体をそれらの移動速度の違いに基づいて区別し、分離後に最も進行方向前方への速度が速い移動物体、すなわち主要移動物体を上記ドップラー周波数に基づいて正しく判定することができる。また、ドップラー周波数に基づいて主要移動物体を判定するようにしているので、移動物体の輝度分布情報などを一々登録する必要が無く、しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であれば画像処理などに頼る必要が無くなり、レーダと組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体を遠方において正確に判定することができる。従って、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0104】
従って、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体をそれらの距離および速度の違いに基づいて区別し、分離後に進行方向前方において高速に移動する移動物体、すなわち主要移動物体を上記距離およびドップラー周波数に基づいて正しく判定することができる。また、これら距離の大小およびドップラー周波数の高低に基づいて主要移動物体を判定するようにしているので、移動物体の輝度分布情報などを一々登録する必要が無く、しかも、このような相互比較処理に基づく判定方法であれば画像処理などに頼る必要が無くなり、レーダと組み合わせて使用することができ、それにより主要移動物体を遠方において正確に判定することができる。従って、従来のように赤外線センサアレイ上の写像画像のみに基づいて予め設定した輝度分布や角速度との一致判定により主要移動物体を判定する場合のように、移動物体が接近しなければその判定を行なうことができない、あるいは、移動物体観測システム自体に向かって移動する複数の移動物体を区別することができないなどの問題が生じることはない効果がある。
【0105】
この発明によれば、主要移動物体を追尾する移動観測手段を設け、上記移動観測手段は、当該移動観測手段の推進力を発生させる推進装置と、出力手段から出力される出力情報に基づいて、上記推進装置の推進出力を、当該移動観測手段が上記主要移動物体に接近するよう制御する推進装置制御回路と、上記主要移動物体を観測する赤外線センサアレイとを備えたので、この移動観測手段を所定の移動物体に対して発射し、この進行方向を出力情報に基づいて補正制御することができ、当該所定の移動物体にこの赤外線センサアレイを具備する移動観測手段を接近させ、この赤外線センサアレイの画像情報に基づいて移動物体を詳細に観測することができる効果がある。
【0106】
また、移動物体を遠方において正確に判定することができるレーダと組み合わせて使用されているので、その分早く移動観測手段を移動させ、移動物体の詳細な観測を開始することができる効果もある。
【0107】
この発明によれば、移動観測手段が、赤外線センサアレイの画像に基づいて推進出力を補正制御するので、赤外線センサアレイの画像情報に所定の移動物体が観測されている状態になれば、それを観測し続けるように移動観測手段の移動方向を制御することができ、ひいては上記所定の移動物体を接近しつつ、観測し続けることができる効果がある。
【0108】
この発明によれば、出力手段が、赤外線センサアレイの画像に基づいて推進出力を補正制御するので、赤外線センサアレイの画像情報に所定の移動物体が観測されている状態になれば、それを観測し続けるように移動観測手段の移動方向を制御することができ、ひいては上記所定の移動物体を接近しつつ、観測し続けることができる効果がある。
【0109】
この発明によれば、速度ベクトルに基づいて赤外線センサアレイの画像内の主要移動物体を判定し、これに基づいて推進出力を補正制御するので、例えば赤外線センサアレイの画像内に分離した複数の移動物体が観測された場合、その中の主要移動物体を判定し、それを観測し続けるように移動観測手段の移動方向を制御することができ、ひいては上記所定の移動物体を接近しつつ、観測し続けることができる効果がある。
【0110】
この発明によれば、赤外線センサアレイの代わりに光学センサアレイを用いたので、移動観測手段が太陽などを移動物体と誤認して、それに接近するように移動してしまうことなどを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による移動物体観測システムの動作を説明する動作説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による移動物体観測システムが複数の移動物体を検出した場合の主要移動物体の判定動作原理を説明する説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図5】 この発明の実施の形態3による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態4による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態5による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図8】 この発明の実施の形態5による移動物体の観測制御の利点を説明する説明図である。
【図9】 この発明の実施の形態6による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図10】 この発明の実施の形態7による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図11】 この実施の形態7における主要移動物体判別方法を説明する動作説明図である。
【図12】 この発明の実施の形態8による移動物体を観測する移動物体観測システムの構成を示すブロック図である。
【図13】 従来の移動物体観測システムの構成を示すシステム構成図である。
【図14】 移動途中においてブースタ、シェラウドおよび弾頭部に分離する移動物体の分離後の相対位置関係を示す分離状態説明図である。
【図15】 複数の移動物体の移動方向と従来の移動物体観測システムの観測状況との関係を説明する説明図である(その1)。
【図16】 複数の移動物体の移動方向と従来の移動物体観測システムの観測状況との関係を説明する説明図である(その2)。
【符号の説明】
1 送受信アンテナ(レーダ)、2 送信機(レーダ)、3 受信機(レーダ)、4 切替器(レーダ)、5 検出回路(検出手段)、6 位置ベクトル算出回路(位置ベクトル演算手段)、7 追尾回路(速度ベクトル演算手段)、8 内積演算回路(判定手段)、9,29,31,32 主要目標位置推定回路(判定手段、出力手段)、20,45 ブースタ(移動物体)、21,46 主要部(移動物体、主要移動物体)、30 ドップラー周波数算出回路(ドップラー周波数演算手段)、34 移動センサ局(移動観測手段)、43 赤外線センサアレイ、55 光学センサアレイ。
Claims (6)
- 一体的な移動物体が移動中に複数に分離した後の主要移動物体とその他の移動物体とを検出する移動物体観測システムにおいて、
観測範囲を周期的に走査し、各周期毎の受信データを出力するレーダと、
各周期毎の受信データから上記主要移動物体とその他の移動物体を含む複数の移動物体を検出する検出手段と、
各周期毎の受信データにおける上記複数の移動物体の位置および距離を演算し、これらを位置ベクトルとして出力する位置ベクトル演算手段と、
各周期毎の受信データにおける上記複数の移動物体を複数の受信データの間で関連付け、この関連に基づいて各移動物体の移動速度および移動方向を判定し、これらを速度ベクトルとして出力する速度ベクトル演算手段と、
上記複数の移動物体毎に、それぞれの移動物体の位置ベクトルと、前記複数の移動物体の速度ベクトルの平均である単位長さの平均速度ベクトルとの内積を演算し、この内積が最も大きい値である移動物体を主要移動物体として判定する判定手段と、
上記判定された主要移動物体に関連する位置情報や速度情報を出力情報として出力する出力手段とを備えた移動物体観測システム。 - 主要移動物体を追尾する移動観測手段を設け、
上記移動観測手段は、
当該移動観測手段の推進力を発生させる推進装置と、
出力手段から出力される出力情報に基づいて、上記推進装置の推進出力を、当該移動観測手段が上記主要移動物体に接近するよう制御する推進装置制御回路と、
上記主要移動物体を観測する赤外線センサアレイとを備えたことを特徴とする請求項1記載の移動物体観測システム。 - 移動観測手段は、赤外線センサアレイの画像に基づいて推進出力を補正制御することを特徴とする請求項2記載の移動物体観測システム。
- 出力手段は、赤外線センサアレイの画像に基づいて推進出力を補正制御することを特徴とする請求項2記載の移動物体観測システム。
- 速度ベクトルに基づいて赤外線センサアレイの画像内の複数の移動物体からの主要移動物体を判定し、これに基づいて推進出力を補正制御することを特徴とする請求項2から請求項4のうちのいずれか1項記載の移動物体観測システム。
- 赤外線センサアレイの代わりに光学センサアレイを用いたことを特徴とする請求項2から請求項5のうちのいずれか1項記載の移動物体観測システム。
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