以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は第1の実施の形態の画像表示装置の要部のレイアウトを示す図であり、図1では垂直水平方向に2画素分ずつの要部を図示している。本実施の形態の画像表示装置では、配線用基板1の主面上に水平方向に延在された複数本のアドレス線ADD0、ADD1が形成され、さらに図示しない層間絶縁膜を介して垂直方向に延在された複数本のデータ線DLR0〜DLB1が形成されている。配線用基板1は例えばガラス基板や、合成樹脂又は絶縁層で被覆された金属基板、或いはシリコン基板等の半導体製造に汎用な基板であり、アドレス線やデータ線を求められる精度で形成可能な基板であればどのような基板であっても良い。
アドレス線ADD0、ADD1は導電性の優れた金属材料層や半導体材料層と金属材料層の組み合わせ等によって形成され、その線幅は図1に示すように発光ダイオードのサイズMに比較して広い幅にすることができる。これは次に説明するように、一個の前記発光素子の占有面積が25μm2以上で10000μm2以下とされた微小なサイズの発光ダイオードを実装していることから実現できるものであり、従って、順次画素を走査して所要の画像を出力させる場合のアドレス線自体の抵抗による遅れを極力低減することができる。このアドレス線ADD0,ADD1は水平方向に延長されており、各画素当たり1本のアドレス線が通過する。従って、水平方向に隣接する画素同士では共通のアドレス線が選択に用いられる。
データ線DLR0〜DLB1は、アドレス線と同様に、導電性の優れた金属材料層や半導体材料層と金属材料層の組み合わせ等によって形成され、その線幅は図1に示すように配線用基板1の専有面積の約半分程度を占めるように形成することもできる。このような広い線幅もアドレス線と同様に、一個の発光素子の占有面積が25μm2以上で10000μm2以下とされ微小なサイズの発光ダイオードを実装しているために可能である。これらデータ線DLR0〜DLB1は垂直方向に延長されており、各画素当たり発光ダイオードの数に応じて3本のデータ線が使用されている。例えば、図中左上の画素の発光ダイオードは、赤色発光ダイオードDR00、緑色発光ダイオードDG00、および青色発光ダイオードDB00からなり、データ線DLR0〜DLB0も各発光色ごとに設けられている。データ線DLR0〜DLB1は垂直方向に隣接する画素の同じ発光色のダイオードの間では共通のデータ線が利用される。
本実施の形態の画像表示装置は、発光ダイオードをマトリクス状に配列して、所要の画像信号(映像信号すなわち動画用信号を含む。以下同様。)に応じた発光を行う。この駆動方法としては、アクティブマトリクス型液晶表示装置と同様の点順次または線順次方式で本実施の形態の画像表示装置は駆動される。発光ダイオードは、例えば、青色及び緑色の発光ダイオード用としてサファイヤ基板上に成長された窒化ガリウム系のダブルヘテロ構造多層結晶を用いることができ、赤色の発光ダイオード用として砒化ガリウム基板上に成長された砒化アルミニウムガリウムまたは燐化インジウムアルミニウムガリウム系のダブルヘテロ構造多層結晶を用いることができる。発光ダイオードは互いに波長を異ならせた3つの発光素子の組からなる画素を構成するが、異なる波長の組は赤、緑、青に限らず、他の色の組であっても良い。
本実施の形態の画像表示装置においては、各画素内において、水平方向に赤色の発光ダイオードDR00、DR01、DR10、DR11、次いで緑色の発光ダイオードDG00、DG01、DG10、DG11、次いで青色の発光ダイオードDB00、DB01、DB10、BG11が並んでいる。例えば、図中左上の画素の発光ダイオードは、赤色発光ダイオードDR00、緑色発光ダイオードDG00、および青色発光ダイオードDB00の順にダイオードが配列されており、これら3つの発光ダイオードが1つの画素の組を構成する。
ここで、各発光ダイオードは、例えばそれぞれ略正方形の形状を有し、非パッケージ状態のまま或いは微小パッケージ状態(例えば1mmサイズ以下程度)のまま実装されるチップ構造を有している。図1のレイアウト図では、発光ダイオードの詳細な層構造について図示しないが、それぞれ発光ダイオードの平面形状は略正方形であり、その略正方形の発光ダイオードチップを実装することで、発光ダイオードのマトリクス状の配列が構成されている。各発光ダイオードの位置は、アドレス線ADD0、ADD1とデータ線DLR0〜DLB1の交差位置に対応した位置になっており、各発光ダイオードはアドレス線に接続した電極パット部11を介して電気的にアドレス線に接続され、同様に、データ線に接続した電極パット部12を介して電気的にデータ線に接続される。電極パッド部11は垂直方向に延在する小さい帯状領域であり、電極パッド部12は水平方向に延在する小さい帯状領域である。各発光ダイオードはこれら電極パッド部11、12を介して電気的にアドレス線およびデータ線に接続され点順次或いは線順次の方式で駆動される。
一個の発光ダイオードの素子占有面積は25μm2以上で10000μm2以下であることから、略正方形の各発光ダイオードのサイズは、その一辺が5ミクロンから100ミクロン程度のサイズとされる。このような微小なサイズを以って配線用基板に実装される発光ダイオードとして、各発光ダイオードは微小パッケージ状態または非パッケージ状態のまま配線用基板1に実装される。各ダイオードの製造のために、好ましくは後述の発光ダイオードの製造方法を用いて製造することができる。一方、本実施の形態の画像表示装置では、その一画素当たりのピッチが垂直方向でVであり、水平方向でHであって、例えば0.1ミリメートルから1ミリメートルの範囲に設定される。これは動画用(テレビジョン受像機、ビデオ機器、ゲーム機器)や情報用(例えばコンピュータ用)の画像表示装置としては、対角サイズで30cmから150cmのものが適当であり、その画素数がRGBを合わせて1画素とした場合で概ね30万画素から200万画素程度のものが実用上望ましく、また、人間の視覚特性からも、直視型の画像表示装置として画素ピッチを0.1ミリメートル(個人用高精細表示)から1ミリメートル(数人用動画表示)とすることが好ましいためである。従って、発光ダイオードをその一辺が5ミクロンから100ミクロン程度のサイズとした場合では、各発光ダイオードの占有面積に対する当該画像表示装置上の一画素分の占有面積の比が10以上40000以下であることが好ましく、さらに10以上10000以下であることがより好ましい。
通常の画像表示装置の発光素子は、典型的には0.3ミリメール角のサイズが樹脂パッケージ前のチップサイズであり、それに樹脂パッケージを施した場合には、1ミリメートルを越えることになる。従って、例えば画素ピッチを仮に5ミリとした場合には、前記各発光ダイオードの占有面積に対する画像表示装置上の一画素分の占有面積の比が1〜2程度の数値に納まることになり、本実施の形態の如き各発光ダイオードの占有面積に対する画像表示装置上の一画素分の占有面積の比の範囲として好ましくは10以上40000以下であり、さらに好ましくは10以上10000以下の範囲であって、本実施の形態の範囲からは通常の典型的な画像表示装置はその比の範囲が外れたものとなっている。
このような微細なチップサイズの発光ダイオードを用いることが本実施の形態の画像表示装置の背景にあるが、微細なチップサイズであっても十分な輝度が得られることが次のように示される。すなわち、屋内用表示装置としては、その十分な輝度として必要な値は500cd/m2程度であり、これを光出力に換算すると赤色、緑色、青色の各色とも概ね5W/m2となる。これを画像表示装置で実現するためには、計算上は1つの発光ダイオードの平均光出力を0.017μWから1.7μWの範囲であれば良い。ここで信頼性については通常発光ダイオードと同等と仮定して考えてみると、その駆動電流密度を同等にした場合に、多少のマージンを加えても1平方ミクロンから100平方ミクロン程度のサイズを発光ダイオードが有していれば良く、配線用基板に実装される発光ダイオードとして、一個の発光ダイオードの占有面積を25μm2以上で10000μm2以下に設定することは信頼性と輝度の面で十分なものとなる。
微小サイズのまま実装される各発光ダイオードは、上述の如きサイズを有しており、後述する製造方法のように、素子形成用基板上に形成され、その後チップ毎に分離されて非パッケージ状態または微小パッケージ状態を以って実装されるものである。ここで非パッケージ状態とは、樹脂成形などのダイオードチップの外側を覆うような処理を施していない状態を指す。また、微小パッケージ状態とは薄い肉厚の樹脂などに被覆された状態であるが、通常のパッケージサイズよりも小さいサイズ(例えば1mm以下程度のもの)に収まっている状態を指す。後述の製造方法で詳述されるように、本実施の形態の画像表示装置に用いられる発光ダイオードはパッケージがない分またはパッケージが微小な分だけ微細なサイズで配線用基板上に実装される。
次に、図2及び図3を参照しながら、第2の実施の形態の画像表示装置について説明する。本実施の形態は前記第1の実施の形態の画像表示装置の変形例であり、特に各発光ダイオードに電気的に接続する電流保持回路がチップ状に実装されている例である。
図2のレイアウト図では、本実施の形態の画像表示装置の内の1画素分(V1xH1)の構造が示されている。第1の実施の形態のものと同様な配線用基板21上に水平方向に延在されるアドレス線ADDと2本の電源線PW1、PW2が所要の間隔で形成されている。これらアドレス線ADDと2本の電源線PW1、PW2は、導電性の優れた金属材料層や半導体材料層と金属材料層の組み合わせ等によって形成され、その線幅は発光ダイオードや電流保持回路のチップのサイズに比較して広い幅とされる。また、同じ画素内には垂直方向に各発光ダイオード毎の信号線DLR、DLG、DLBが所要の間隔で形成されており、これら信号線DLR、DLG、DLBもアドレス線ADDと同様の構造、寸法で形成されている。
本実施の形態に係る画像表示装置では、発光ダイオードDR、DG、DBがマトリクス状に配列され、所要の画像信号に応じた発光を行う。当該画素において、赤色発光ダイオードDR、緑色発光ダイオードDG、および青色発光ダイオードDBの順にダイオードが配列されており、これら3つの発光ダイオードが1つの画素の組を構成する。各発光ダイオードDR、DG、DBはそれぞれ略正方形の微小なサイズを以って実装されたチップ構造を有していることは前述の実施の形態と同様である。各発光ダイオードDR、DG、DBは電源線PW1と電源線PW2の間の領域に実装される。
そして、本実施の形態の画像表示装置においては、各発光ダイオードDR、DG、DBに電気的に接続され各発光ダイオードDR、DG、DBを流れる電流保持するための電流保持回路PTが各素子毎に形成されている。この電流保持回路PTは、後述するトランジスタと容量を有する回路構成からなる回路であり、特に電流保持回路PTは個別のチップ状に形成され微小なサイズを以って配線用基板21に実装されたものである。本実施例では、各発光ダイオードDR、DG、DBと電流保持回路PTを形成した前記電流保持回路チップが略同一のチップサイズを有しており、一個の発光ダイオードの素子占有面積は25μm2以上で10000μm2以下とされ、且つ一個の電流保持回路PTのチップの占有面積も同様に25μm2以上で10000μm2以下とされる。このような略同一のチップサイズとすることで、同じ実装工程での実装が可能となり、製造工程を容易に実現することができる。これら各電流保持回路PTは電源線PW1とアドレス線ADDの間の領域に形成される。
各発光ダイオードDR、DG、DBと電流保持回路PTの間および各信号線DLR、DLG、DLBやアドレス線ADD、電源線PW1、PW2の間には、配線の必要から配線部22〜26が形成される。配線部22は垂直方向を長手方向とする帯状小領域であり、発光ダイオードと電源線PW2を接続する。配線部23は垂直方向を長手方向とする帯状領域であり、発光ダイオードDR、DG、DBとその発光ダイオードDR、DG、DBを駆動する電流を保持するための電流保持回路PTの間をそれぞれ接続する。配線部24は発光ダイオードから水平に延在された後、電源線PW1に接続するために垂直に延在された帯状の領域であり、電流保持回路PTと電源線PW1の間を接続する。配線部25は垂直方向を長手方向とする帯状の小領域であり、電流保持回路PTとアドレス線ADDの間を接続する。配線部26は水平方向に延在された帯状の小領域であり、電流保持回路PTと信号線DLR、DLG、DLBの間をそれぞれ接続する。これら各配線部22〜26は各発光ダイオードDR、DG、DBを微小なサイズを以って配線用基板に実装する場合に、後述するような接合用導電材を載置することができるものであり、電流保持回路PTのチップを同様に微小なサイズを以って配線用基板に実装する場合にも後述するような接合用導電材を載置することができるものである。
図3は図2示す本実施の形態の画像表示装置の回路図である。図中、ダイオード31が発光ダイオードであり、画像信号に応じて所定の色の発光を行う。なお、ダイオード31は赤、緑、青の3色であり、水平方向で並ぶ3つのダイオード31が1つの画素を構成しているが、図3の回路図中は説明を簡素化するために色の区別をせずに示している。このダイオード31に接続されたトランジスタ32、33と容量34が電流保持回路を構成する。電源線PW1と電源線PW2の間でダイオード31と直列にトランジスタ32が接続され、トランジスタ32がオン状態の場合に限り、ダイオード31は発光する。電源線PW1と電源線PW2の一方は接地電圧を供給し他方は電源電圧を供給する。このトランジスタ32のゲートには容量34の一方の端子とスイッチングトランジスタとして機能するトランジスタ33のソース・ドレイン領域の一方が接続する。このトランジスタ33の他方のソース・ドレイン領域は画像信号が供給される信号線DLに接続され、該トランジスタ33のゲートは水平方向に延在するアドレス線ADDに接続される。
アドレス線ADDはシフトレジスタ回路36によって選択的にレベルが切り替えられる構造となっており、例えば複数のアドレス線の一本だけが高レベルにシフトして、その水平アドレスが選択されたことになる。信号線DLは画像(映像)信号を各発光ダイオード31に伝えるための配線であり、各発光ダイオード311つに対して一本の信号線DLが対応する。アドレス線ADDはシフトレジスタ回路36によって選択的にレベルシフトされるが、信号線DLはシフトレジスタ・トランスファゲート回路35によって走査され、選択された信号線DLにはシフトレジスタ・トランスファゲート回路35を介して画像信号が供給される。
トランジスタ32のゲートに接続され且つトランジスタ33の一方のソース・ドレイン領域に接続する容量34は、トランジスタ32のゲートの電位をトランジスタ33がオフ状態となった際に維持する機能を有する。このようにトランジスタ33がオフとなった場合でも、ゲート電圧を維持できるために、発光ダイオード31を駆動し続けることが可能である。
ここで簡単に動作について説明する。水平のアドレス線ADDにシフトレジスタ回路36から電圧を印加してアドレスを選択すると、その選択されたラインのスイッチングトランジスタ33がオン状態となる。その時に、垂直方向に延在されている信号線DLに画像信号を電圧として加えると、その電圧がスイッチングトランジスタ33を介してトランジスタ32のゲートに到達するが、同時に容量34にもそのゲート電圧が蓄電され、その容量34がトランジスタ32のゲート電圧を維持するように動作する。水平方向のアドレス線ADDの選択動作が停止した後、すなわち選択にかかるアドレス線の電位が再び低レベルに遷移して、トランジスタ33がオフ状態となった場合でも、容量34はゲート電圧を維持しつづけ、原理的には次のアドレス選択が生ずるまで、容量34は選択時のゲート電圧を保持し続けることが可能である。この容量34がゲート電圧を維持している間は、トランジスタ32はその維持された電圧に応じた動作を行い、発光ダイオード31に駆動電流を流し続けることも可能である。このように発光ダイオード31の発光している時間を長く保つことで、個々の発光ダイオードの駆動電流を低くしても画像全体の輝度を高くすることができる。
次に、後述の本発明の画像表示装置およびその製造方法の理解を容易にするために、参考例に係る画像表示装置およびその製造方法を、図43乃図51を参照しながら説明する。
この参考例の製造方法は、発光素子を封止材に埋め込む構成を除いて、本発明の実施の形態にも適用できる。
図43に示すように、初めにサファイヤ基板51を用意し、図示しない低温、高温のバッファ層を形成した後、第2導電型クラッド層52、活性層53、第1導電型クラッド層54が順次積層される。サファイヤ基板51が素子形成用基板となる。ここで第2導電型クラッド層52、活性層53、第1導電型クラッド層54は、例えは青色や緑色発光ダイオードを製造する場合には、窒化ガリウム系結晶成長層とすることができる。このような各層の成長によって、サファイヤ基板51上にはpn接合を有したダブルヘテロ構造の発光ダイオードが形成される。
次に、図44に示すように、フォトリソグラフィー技術を用い、さらに蒸着と反応性イオンエッチングを利用して、第2導電型クラッド層52に接続するようにn型電極55が形成され、さらに第1導電型クラッド層54に接続するようにp型電極56も形成される。各電極55、56が各素子毎に形成されたところで、各素子の周囲を分離するように分離溝57が形成される。この分離溝57のパターンは一般的に残される発光ダイオードを正方形状とするために格子状となるが、これに限定されず他の形状でも良い。この分離溝57の深さはサファイヤ基板51の主面が露出する深さであり、第2導電型クラッド層52は該分離溝57によって分離されたものとなる。正方形状とされる発光ダイオードのサイズは、その占有面積が25μm2以上で10000μm2以下とされる程度の大きさであり、一辺のサイズは従って5μm乃至100μmである。
図45に示すように、一時保持用基板60を用意する。この一時保持用基板60は各発光ダイオードを転写する場合に保持するための基板である。この一時保持用基板60の表面には粘着材層61が塗布されており、その粘着材層61の表面62を既に分離溝57が形成された発光ダイオード側に圧着する。すると、粘着材層61の表面62には各発光ダイオードの表面側が粘着することになる。
次に、図46に示すように、エネルギービームとしてエキシマレーザー光などの高出力パルス紫外線レーザーをサファイヤ基板51の裏面側から表面側に透過するように照射する。この高出力パルス紫外線レーザーの照射によって、サファイヤ基板51と結晶層である第2導電型クラッド層52等の界面近傍での例えば窒化ガリウム層が窒素ガスと金属ガリウムに分解し、その第2導電型クラッド層52とサファイヤ基板51の間の接合力が弱くなり、その結果、図47に示すように、サファイヤ基板51と結晶層である第2導電型クラッド層52との間を容易に剥離することができる。
サファイヤ基板51を剥離した後、各発光ダイオードは素子分離された状態で一時保持用基板60の粘着材層61に保持され、図48に示すように、その第2導電型クラッド層52の面を吸着用治具70で吸着する。吸着用治具70の吸着部72が第2導電型クラッド層52の裏面に接したところで、当該吸着用治具70に設けられた吸着孔71の内部圧力を減圧することで必要な吸着が行われる。
吸着にかかる発光ダイオードの第2導電型クラッド層52の裏面が十分に吸着したところで、吸着用治具70を一時保持用基板60から離し、図49に示すように吸着にかかる発光ダイオードを個別に一時保持用基板60から外す。
ここまでが個別の小さなサイズの発光素子の製造方法となるが、引き続いて、配線用基板に実装することで画像表示装置が製造される。図50は、配線用基板80に吸着用治具70に吸着されている発光ダイオードを実装する直前の状態を示す図であり、この発光ダイオードは、一個の素子の占有面積が25μm2以上で10000μm2以下とされる微小なサイズを以って構成されている。この段階では、配線用基板80が既に用意されており、この配線用基板80上には所要の信号線やアドレス線、電源線や接地線などの配線電極81が既に形成されている。配線用基板80は、例えばガラス基板や、合成樹脂又は絶縁層で被覆された金属基板、或いはシリコン基板等の半導体製造に汎用な基板であり、アドレス線やデータ線を求められる精度で形成可能な基板であればどのような基板であっても良い。配線電極81上には、接合用導電材82が形成されている。この接合用導電材82は圧着されることで変形しながら且つ電気的な接続を果たす材料であれば良い。
次に、図51に示すように、吸着用治具70を配線用基板80に近づけ、所要の位置に発光ダイオードを圧着させて当該発光ダイオードを実装する。この非パッケージ状態の発光ダイオードの圧着によって接合用導電材82は変形するが、確実に固定されて実装を完了する。このような発光ダイオードの実装作業を全部のダイオードについて繰り返し行うことでマトリクス状に画素が配列された画像表示装置が完成する。電流保持回路についても同様の非パッケージ状態のまま実装することができ、電流保持回路を有する回路構成も容易に製造することができる。
この参考例の画像表示装置の製造方法を用いることで、窒化ガリウム基板上に形成する発光ダイオードやシリコン基板上に形成する発光ダイオードや回路素子の微小チップ化には、レーザーなどの手段が不要であり、基板裏面からの研磨、研削、化学エッチングや分離溝形成のためのエッチッグの組み合わせによって微小チップを形成できる。
なお、上述の参考例では、発光ダイオードを1つずつ吸着して実装する例を説明したが、複数の吸着部を形成した治具を使用することで、その生産性を向上させることも可能であり、シリコン基板や化合物半導体基板上に素子を形成する場合には、エネルギービームの照射に限定されず、基板裏面からの研磨、研削、化学エッチングを用いても良い。
発光素子であるLED(発光ダイオード)は高価である為、上述のように1枚のウエハから数多くのLEDチップを製造することによりLEDを用いた画像表示装置を低コストにできる。すなわち、LEDチップの大きさが約300μm角のものを、上記のように数十μm角のLEDチップにし、それを接続して画像表示装置を製造すれば画像表示装置の価格を下げることができる。
一方、各素子を集積度高く形成し、各素子を広い領域に転写などによって離間させながら移動させ、画像表示装置などの比較的大きな表示装置を構成する技術が有り、例えば米国特許第5438241号に記載される薄膜転写法や、特開平11−142878号公報に記載される表示用トランジスタアレイパネルの形成方法などの技術が知られている。米国特許第5438241号では基板上に密に形成した素子が粗に配置し直される転写方法が開示されており、接着剤付きの伸縮性基板に素子を転写した後、各素子の間隔と位置をモニターしながら伸縮性基板がX方向とY方向に伸張される。そして伸張された基板上の各素子が所要のディスプレイパネル上に転写される。また、特開平11−142878号公報に記載される技術では、第1の基板上の液晶表示部を構成する薄膜トランジスタが第2の基板上に全体転写され、次にその第2の基板から選択的に画素ピッチに対応する第3の基板に転写する技術が開示されている。
ところが前述のような技術では、次のような問題が生ずる。まず、前述の基板上に密に形成したディバイスを粗に配置し直す転写方法は、伸縮性基板の伸長時の不動点(支点)がディバイスチップの接着面のどの位置になるかによって、ディバイス位置が最小でチップサイズ(≧20μm)だけずれるという本質的な問題を抱えている。そのために、ディバイスチップ毎の精密位置制御が不可欠になる。したがって、少なくとも1μm程度の位置合わせ精度が必要な高精細TFTアレイパネルの形成には、TFTディバイスチップ毎の位置計測と制御を含む位置合わせに多大な時間を要する。さらに、熱膨張係数の大きな樹脂フィルムへの転写の場合には、位置決め前後の温度/応力変動によって位置合わせ精度が損なわれ易い。以上の理由から、量産技術として採用することには極めて大きな問題がある。
また、特開平11−142878号に記載される技術では、最終的な転写の後に配線電極などが作成される。ところが、高速動作や低コスト化のための高集積化によって薄膜トランジスタや発光素子などの素子サイズを小さくすることが求められており、素子を所要の画素ピッチの位置に配設した後で、配線層などを形成する場合では、微細化された素子チップが広げられた領域に配設されている状態で配線を形成する必要があり、素子の位置精度の問題から配線不良などの課題が新たに噴出することになる。
そこで、微細加工された素子をより広い領域に転写する際に、転写後も位置合わせ精度が損なわれることもなく、また配線不良などの問題も解決できる画像表示装置の製造方法が必要になる。
次に、本発明の画像表示装置及びその製造方法に適用される、二段階拡大転写法、樹脂形成チップ、発光素子、発光素子の配列方法について説明すると共に、これらを適用した本発明に係る画像表示装置及びその製造方法の実施の形態について説明する。
[二段階拡大転写法]
二段階拡大転写法は、高集積度をもって第一基板上に作成された素子を第一基板上で素子が配列された状態よりは離間した状態となるように一時保持用部材に転写し、次いで一時保持用部材に保持された前記素子をさらに離間して第二基板上に転写する二段階の拡大転写を行う。なお、本実施形態では転写を2段階としているが、素子を離間して配置する拡大度に応じて転写を三段階やそれ以上の多段階とすることもできる。
図4と図5はそれぞれ二段階拡大転写法の基本的な工程を示す図である。まず、図4の(a)に示す第一基板90上に、発光素子である素子92を密に形成する。素子を密に形成することで、各基板当たりに生成される素子の数を多くすることができ、製品コストを下げることができる。第一基板90は例えば半導体ウエハ、サファイヤ基板などの素子形成可能な基板であるが、各素子92は第一基板90上に直接形成したものであっても良く、他の基板上で形成されたものを配列したものであっても良い。
次に図4の(b)に示すように、第一基板90から各素子92が図中破線で示す一時保持用部材91に転写され、この一時保持用部材91の上に各素子92が保持される。ここで隣接する素子92は離間され、図示のようにマトリクス状に配される。すなわち素子92はx方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写されるが、x方向に垂直なy方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写される。このとき離間される距離は、特に限定されず、一例として後続の工程での樹脂部形成や電極パッドの形成を考慮した距離とすることができる。一時保持用部材91上に第一基板90から転写した際に第一基板90上の全部の素子が離間されて転写されるようにすることができる。この場合には、一時保持用部材91のサイズはマトリクス状に配された素子92の数(x方向、y方向にそれぞれ)に離間した距離を乗じたサイズ以上であれば良い。また、一時保持用部材91上に第一基板90上の一部の素子が離間されて転写されるようにすることも可能である。
一時保持用部材91への素子92の転写は、後述するように、所要の吸着用治具やアクチュエーターなどを用いた機械的手段を使用して行うようにすることもでき、或いは熱や光によって軟化、硬化、架橋、劣化などの反応を生ずる樹脂などを塗布した上で熱や光を局所的に照射して剥離や接着などを生じさせて選択的に転写を行うようにしても良い。さらには、熱や光と機械的手段の組み合わせで転写するようにしても良い。一時保持用部材91と第一基板90の面同士を対峙させて転写することが一般的ではあるが、一旦、第一基板90から素子92をチップ毎にばらばらに分離し、個々の素子92を改めて一時保持用部材91に並べるようにしても良い。
このような第一転写工程の後、図4の(c)に示すように、一時保持用部材91上に存在する素子92は離間されていることから、各素子92ごとに素子周りの樹脂の被覆と電極パッドの形成が行われる。素子周りの樹脂の被覆は電極パッドを形成し易くし、次の第二転写工程での取り扱いを容易にするなどのために形成される。電極パッドの形成は、後述するように、最終的な配線が続く第二転写工程の後に行われるため、その際に配線不良が生じないように比較的大き目のサイズに形成されるものである。なお、図4の(c)には電極パッドは図示していない。各素子92の周りを樹脂93が覆うことで樹脂形成チップ94が形成される。素子92は平面上、樹脂形成チップ94の略中央に位置するが、一方の辺や角側に偏った位置に存在するものであっても良い。
次に、図4の(d)に示すように、第二転写工程が行われる。この第二転写工程では一時保持用部材91上でマトリクス状に配される素子92が樹脂形成チップ94ごと更に離間するように第二基板95上に転写される。この転写も第一転写工程と同様に、所要の吸着用治具やアクチュエーターなどを用いた機械的手段を使用して行うようにすることもでき、或いは熱や光によって軟化、硬化、架橋、劣化などの反応を生ずる樹脂などを塗布した上で熱や光を局所的に照射して剥離や接着などを生じさせて選択的に転写を行うようにしても良い。さらには、熱や光と機械的手段の組み合わせで転写するようにしても良い。
第二転写工程においても、隣接する素子92は樹脂形成チップ94ごと離間され、図示のようにマトリクス状に配される。すなわち素子92はx方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写されるが、x方向に垂直なy方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写される。第二転写工程によって配置された素子の位置が画像表示装置などの最終製品の画素に対応する位置であるとすると、当初の素子92間のピッチの略整数倍が第二転写工程によって配置された素子92のピッチとなる。ここで第一基板90から一時保持用部材91での離間したピッチの拡大率をnとし、一時保持用部材91から第二基板95での離間したピッチの拡大率をmとすると、略整数倍の値EはE=n×mであらわされる。拡大率n、mはそれぞれ整数であっても良く、整数でなくともEが整数となる組み合わせ(例えばn=2.4でm=5)であれば良い。
第二基板95上に樹脂形成チップ94ごと離間された各素子92には、配線が施される。この時、先に形成した電極パッド等を利用して接続不良を極力抑えながらの配線がなされる。この配線は素子92が発光ダイオードなどの発光素子であるから、p電極、n電極への配線を含む。
次に、図5は図6の二段階拡大転写法の変形例であり、第一基板90a上から一時保持用部材91aへの転写方法が異なる実施形態である。図5の(a)に示すように第一基板90a上に発光素子92が密に形成される。複数の素子92は第一基板90a上ではマトリクス状に配列されており、第一基板90a自体は図4の第一基板90と同様に例えば半導体ウエハ、サファイヤ基板などの素子形成可能な基板であるが、各素子12は第一基板90上に直接形成したものであっても良く、他の基板上で形成されたものを配列したものであっても良い。
このように複数の素子92を第一基板90a上にマトリクス状に形成したところで、一時保持用部材91aへ素子92を離間しながら転写する。この場合には、第一基板90aと一時保持用部材91aが対峙するように保持され、第一基板90a上のマトリクス状に配列された複数の素子92を間引きするように転写する。すなわち、第一基板90a上のある素子92を転写する場合、その隣接した周囲の素子92は転写しないで、所要距離だけ離間した位置の素子92が第一基板90aと当該一時保持用部材91aが対峙している間に転写される。隣接した周囲の素子92はこの間引き転写で第一基板90aに残されるが、別個の一時保持用部材に対して転写することで、密に形成した素子92を無駄にすることなく有効に活用される。
一時保持用部材91aへの素子92の転写は、後述するように、所要の吸着用治具やアクチュエーターなどを用いた機械的手段を使用して行うようにすることもでき、或いは熱や光によって軟化、硬化、架橋、劣化などの反応を生ずる樹脂などを塗布した上で熱や光を局所的に照射して剥離や接着などを生じさせて選択的に転写を行うようにしても良い。さらには、熱や光と機械的手段の組み合わせで転写するようにしても良い。
このような第一転写工程の後、図5の(c)に示すように、一時保持用部材91a上に存在する素子92は離間されていることから、各素子92ごとに素子周りの樹脂93の被覆と電極パッドの形成が行われ、続いて図5の(d)に示すように、第二転写工程が行われる。この第二転写工程では一時保持用部材91a上でマトリクス状に配される素子92が樹脂形成チップ94ごと更に離間するように第二基板95上に転写される。これら素子周りの樹脂93の被覆と電極パッドの形成と第二転写工程は図4を用いて説明した工程と同様であり、二段階拡大転写の後で所要の配線が形成される点も同様である。
これら図4、図5に示した二段階拡大転写法においては、第一転写後の離間したスペースを利用して電極パッドや樹脂固めなどを行うことができ、そして第二転写後に配線が施されるが、先に形成した電極パッド等を利用して接続不良を極力抑えながらの配線がなされる。従って、画像表示装置の歩留まりを向上させることができる。また、本実施形態の二段階拡大転写法においては、素子間の距離を離間する工程が2工程であり、このような素子間の距離を離間する複数工程の拡大転写を行うことで、実際は転写回数が減ることになる。すなわち、例えば、ここで第一基板90、90aから一時保持用部材91、91aでの離間したピッチの拡大率を2(n=2)とし、一時保持用部材91、91aから第二基板95での離間したピッチの拡大率を2(m=2)とすると、仮に一度の転写で拡大した範囲に転写しようとしたときでは、最終拡大率が2×2の4倍で、その二乗の16回の転写すなわち第一基板のアライメントを16回行う必要が生ずるが、本実施形態の二段階拡大転写法では、アライメントの回数は第一転写工程での拡大率2の二乗の4回と第二転写工程での拡大率2の二乗の4回を単純に加えただけの計8回で済むことになる。即ち、同じ転写倍率を意図する場合においては、(n+m)2=n2+2nm+m2であることから、必ず2nm回だけ転写回数を減らすことができることになる。従って、製造工程も回数分だけ時間や経費の節約となり、特に拡大率の大きい場合に有益となる。
[間引き転写の他の例]
図6は図5の(a)と(b)で示した間引き転写の他の一例を示す図である。間引き転写は転写元の基板と転写先の基板(部材)を対峙させて選択的に素子を転写することで行われるが、転写先の基板(部材)を大きなサイズとすることで、転写元の基板上に有る素子の全部を転写先の基板(部材)に移動させることが可能である。
図6は第一転写工程での拡大率3の場合の例を示しており、第一基板90cを単位とすると一時保持用部材91cは3の二乗の9倍の面積を有する。このため転写元の基板である第一基板90c上に有る素子92の全部を転写するために、全部で9回の転写が行われる。第一基板90c上にマトリクス状に配される素子92を3×3のマトリクス単位毎に分けて、その中の1つの素子92が一時保持用部材91cに順次転写されて最終的に全体の素子92が転写される。
図6の(a)は第一基板90c上の素子92の中3×3のマトリクス単位毎で第1番目の素子92が一時保持用部材91cに転写されるところを模式的に示しており、図6の(b)は3×3のマトリクス単位毎で第2番目の素子92が一時保持用部材91cに転写されるところを模式的に示している。第2番目の転写では、第一基板90cの一時保持用部材91cに対するアライメント位置が図中垂直方向にずれており、同様の間引き転写を繰り返すことで、素子92を離間させて配置することができる。また図6の(c)は3×3のマトリクス単位毎で第8番目の素子92が一時保持用部材91cに転写されるところを模式的に示しており、図6の(d)は3×3のマトリクス単位毎で第9番目の素子92が一時保持用部材91cに転写されるところを模式的に示している。この3×3のマトリクス単位毎で第9番目の素子92が転写された時点で、第一基板90cには素子92がなくなり、一時保持用部材91cにはマトリクス状に複数の素子92が離間された形式で保持されることになる。以降、図4、図5の(c)、(d)の工程により、二段階拡大転写が実行される。
[樹脂形成チップ]
次に、図7および図8を参照して、一時保持用部材上で形成され、第二基板に転写される樹脂形成チップについて説明する。樹脂形成チップ100は、離間して配置されている素子101の周りを樹脂102で固めたものであり、このような樹脂形成チップ100は、一時保持用部材から第二基板に素子101を転写する場合に使用できるものである。
素子101は後述するような発光素子の例である。樹脂形成チップ100は略平板上でその主たる面が略正方形状とされる。この樹脂形成チップ100の形状は樹脂102を固めて形成された形状であり、具体的には未硬化の樹脂を各素子101を含むように全面に塗布し、これを硬化した後で縁の部分をダイシング等で切断することで得られる形状である。略平板状の樹脂22の表面側と裏面側にはそれぞれ電極パッド103、104が形成される。これら電極パッド103、104の形成は全面に電極パッド103、104の材料となる金属層や多結晶シリコン層などの導電層を形成し、フォトリソグラフィー技術により所要の電極形状にパターンニングすることで形成される。これら電極パッド103、104は発光素子である素子101のp電極とn電極にそれぞれ接続するように形成されており、必要な場合には樹脂102にビアホールなどが形成される。
ここで電極パッド103、104は樹脂形成チップ100の表面側と裏面側にそれぞれ形成されているが、一方の面に両方の電極パッドを形成することも可能である。電極パッド103、104の位置が平板上ずれているのは、最終的な配線形成時に上側からコンタクトをとっても重ならないようにするためである。電極パッド103、104の形状も正方形に限定されず他の形状としても良い。
このような樹脂形成チップ100を構成することで、素子101の周りが樹脂102で被覆され平坦化によって精度良く電極パッド103、104を形成できるとともに素子101に比べて広い領域に電極パッド103、104を延在でき、次の第二転写工程での転写を吸着治具で進める場合には取り扱いが容易になる。後述するように、最終的な配線が続く第二転写工程の後に行われるため、比較的大き目のサイズの電極パッド103、104を利用した配線を行うことで、配線不良が未然に防止される。
[発光素子]
図9に本実施形態で使用される発光素子の構造を示す。図9の(a)が発光素子断面図であり、図9の(b)が平面図である。この発光素子はGaN系の発光ダイオードであり、たとえばサファイヤ基板上に結晶成長される素子である。このようなGaN系の発光ダイオードでは、基板を透過するレーザー照射によってレーザーアブレーションが生じ、GaNの窒素が気化する現象にともなってサファイヤ基板とGaN系の成長層の間の界面で膜剥がれが生じ、素子分離を容易なものにできる特徴を有している。
まず、その構造については、GaN系半導体層からなる下地成長層111上に選択成長された六角錐形状のGaN層112が形成されている。なお、下地成長層111上には図示しない絶縁膜が存在し、六角錐形状のGaN層112はその絶縁膜を開口した部分にMOCVD法などによって形成される。このGaN層112は、成長時に使用されるサファイヤ基板の主面をC面とした場合にS面(1−101面)で覆われたピラミッド型の成長層であり、シリコンをドープさせた領域である。このGaN層112の傾斜したS面の部分はダブルへテロ構造のクラッドとして機能する。GaN層112の傾斜したS面を覆うように活性層であるInGaN層113が形成されており、その外側にマグネシウムドープのGaN層114が形成される。このマグネシウムドープのGaN層114もクラッドとして機能する。
このような発光ダイオードには、p電極115とn電極116が形成されている。p電極115はマグネシウムドープのGaN層114上に形成されるNi/Pt/AuまたはNi(Pd)/Pt/Auなどの金属材料を蒸着して形成される。n電極116は前述の図示しない絶縁膜を開口した部分でTi/Al/Pt/Auなどの金属材料を蒸着して形成される。なお、図11に示すように下地成長層111の裏面側からn電極取り出しを行う場合は、n電極116の形成は下地成長層111の表面側には不要となる。
このような構造のGaN系の発光ダイオードは、青色発光も可能な素子であって、特にレーザーアブレーションよって比較的簡単にサファイヤ基板から剥離することができ、レーザービームを選択的に照射することで選択的な剥離が実現される。なお、GaN系の発光ダイオードとしては、平板上や帯状に活性層が形成される構造であっても良く、上端部にC面が形成された角錐構造のものであっても良い。
[発光素子の配列方法]
次に、図10から図12までを参照しながら、発光素子の配列方法について説明する。発光素子は図9に示したGaN系の発光ダイオードを用いている。
先ず、図10に示すように、第一基板121の主面上には複数の発光ダイオード122がマトリクス状に形成されている。発光ダイオード122の大きさは約20μm程度とすることができる。第一基板121の構成材料としてはサファイヤ基板などのように光ダイオード122に照射するレーザーの波長の透過率の高い材料が用いられる。発光ダイオード122にはp電極などまでは形成されているが最終的な配線は未だなされておらず、素子間分離の溝122gが形成されていて、個々の発光ダイオード122は分離できる状態にある。この溝122gの形成は例えば反応性イオンエッチングで行う。このような第一基板121を図10に示すように一時保持用部材123に対峙させて選択的な転写を行う。
一時保持用部材123の第一基板121に対峙する面には剥離層124と接着剤層125が2層になって形成されている。ここで一時保持用部材121の例としては、ガラス基板、石英ガラス基板、プラスチック基板などを用いることができ、一時保持用部材121上の剥離層124の例としては、フッ素コート、シリコン樹脂、水溶性接着剤(例えばPVA)、ポリイミドなどを用いることができる。また一時保持用部材123の接着剤層125としては紫外線(UV)硬化型接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤のいずれかからなる層を用いることができる。一例としては、一時保持用部材123として石英ガラス基板を用い、剥離層124としてポリイミド膜4μmを形成後、接着剤層125としてのUV硬化型接着剤を約20μm厚で塗布する。
一時保持用部材123の接着剤層125は、硬化した領域125sと未硬化領域125yが混在するように調整され、未硬化領域125yに選択転写にかかる発光ダイオード122が位置するように位置合わせされる。硬化した領域125sと未硬化領域125yが混在するような調整は、例えばUV硬化型接着剤を露光機にて選択的に200μmピッチでUV露光し、発光ダイオード122を転写するところは未硬化でそれ以外は硬化させてある状態にすれば良い。このようなアライメントの後、その位置の発光ダイオード122をレーザーにて第一基板121の裏面から照射して発光ダイオード122を第一基板121からレーザーアブレーションを利用して剥離する。GaN系の発光ダイオード122はサファイヤとの界面で金属のGaと窒素に分解することから、比較的簡単に剥離できる。照射するレーザーとしてはエキシマレーザー、高調波YAGレーザーなどが用いられる。
このレーザーアブレーションを利用した剥離によって、選択照射にかかる発光ダイオード122はGaN層と第一基板121の界面で分離し、反対側の接着剤層125の未硬化領域125yに発光ダイオード122のp電極部分を突き刺すようにして転写される。他のレーザーが照射されない領域の発光ダイオード122については、対応する接着剤層125の部分が硬化した領域125sであり、レーザーも照射されていないために 一時保持用部材123側に転写されることはない。なお、図10では1つの発光ダイオード122だけが選択的にレーザー照射されているが、nピッチ分だけ離間した領域においても同様に発光ダイオード122はレーザー照射されているものとする。このような選択的な転写によっては発光ダイオード122第一基板121上に配列されている時よりも離間して一時保持用部材123上に配列される。
次に、選択的な発光ダイオード122の第一基板121から一時保持用部材123への転写を行ったところで、図11に示すように未硬化領域125yの接着剤層125を硬化させて発光ダイオード122を固着させる。この硬化は熱や光などのエネルギーを加えることで可能である。発光ダイオード122は一時保持用部材123の接着剤層125に保持された状態で、発光ダイオード122の裏面がn電極側(カソード電極側)になっていて、発光ダイオード122の裏面には樹脂(接着剤)がないように除去、洗浄されているため、電極パッド126を形成した場合では、電極パッド126は発光ダイオード122の裏面と電気的に接続される。
接着剤層125の洗浄の例としては酸素プラズマで接着剤用樹脂をエッチング、UVオゾン照射にて洗浄する。かつ、レーザーにてGaN系発光ダイオードをサファイヤ基板からなる第一基板121から剥離したときには、その剥離面にGaが析出しているため、そのGaをエッチングすることが必要であり、NaOH水溶液もしくは希硝酸で行うことになる。その後、電極パッド126をパターニングする。このときのカソード側の電極パッドは約60μm角とすることができる。電極パッド126としては透明電極(ITO、ZnO系など)もしくはTi/Al/Pt/Auなどの材料を用いる。透明電極の場合は発光ダイオードの裏面を大きく覆っても発光をさえぎることがないので、パターニング精度が粗く、大きな電極形成ができ、パターニングプロセスが容易になる。
図12は一時保持用部材123から発光ダイオード122を第二の一時保持用部材127に転写して、アノード電極(p電極)側のビアホール130を形成した後、アノード側電極パッド129を形成し、樹脂からなる接着剤層125をダイシングした状態を示している。このダイシングの結果、素子分離溝131が形成され、発光ダイオード122は素子ごとに区分けされたものになる。素子分離溝131はマトリクス状の各発光ダイオード122を分離するため、平面パターンとしては縦横に延長された複数の平行線からなる。素子分離溝131の底部では第二の一時保持用部材127の表面が臨む。第二の一時保持用部材127上には剥離層128が形成される。この剥離層128は例えばフッ素コート、シリコン樹脂、水溶性接着剤(例えばPVA)、ポリイミドなどを用いて作成することができる。第二の一時保持用部材127は、一例としてプラスチック基板にUV粘着材が塗布してある、いわゆるダイシングシートであり、UVが照射されると粘着力が低下するものを利用できる。一時保持部材127の裏面からエキシマレーザーを照射する。これにより、例えば剥離層124としてポリイミドを形成した場合では、ポリイミドと石英基板の界面でポリイミドのアブレーションにより剥離が発生して、各発光ダイオード122は第二の一時保持部材127側に転写される。
このプロセスの例として、第二の一時保持用部材127の表面を酸素プラズマで発光ダイオード122の表面が露出してくるまでエッチングする。まずビアホール130の形成はエキシマレーザー、高調波YAGレーザー、炭酸ガスレーザを用いることができる。このとき、ビアホールは約3〜7μmの径を開けることになる。アノード側電極パッドはNi/Pt/Auなどで形成する。ダイシングプロセスは通常のブレードを用いたダイシング、20μm以下の幅の狭い切り込みが必要なときには上記レーザーを用いたレーザーによる加工を行う。その切り込み幅は画像表示装置の画素内の樹脂からなる接着剤層125で覆われた発光ダイオード122の大きさに依存する。一例として、エキシマレーザーにて幅約40μmの溝加工を行い、チップの形状を形成する。
次に、機械的手段を用いて発光ダイオード122が第二の一時保持用部材127から剥離される。図13は、第二の一時保持用部材127上に配列している発光ダイオード122を吸着装置133でピックアップするところを示した図である。このときの吸着孔135は画像表示装置の画素ピッチにマトリクス状に開口していて、発光ダイオード122を多数個、一括で吸着できるようになっている。このときの開口径は、例えば約φ100μmで600μmピッチのマトリクス状に開口されて、一括で約300個を吸着できる。このときの吸着孔135の部材は例えば、Ni電鋳により作製したもの、もしくはSUSなどの金属板132をエッチングで穴加工したものが使用され、金属板132の吸着孔135の奥には、吸着チャンバ134が形成されており、この吸着チャンバ134を負圧に制御することで発光ダイオード122の吸着が可能になる。発光ダイオード122はこの段階で樹脂からなる接着剤層125で覆われており、その上面は略平坦化されており、このために吸着装置133による選択的な吸着を容易に進めることができる。
図14は発光ダイオード122を第二基板140に転写するところを示した図である。第二基板140に装着する際に第二基板140にあらかじめ接着剤層136が塗布されており、その発光ダイオード122下面の接着剤層136を硬化させ、発光ダイオード122を第二基板140に固着して配列させることができる。この装着時には、吸着装置133の吸着チャンバ134が圧力の高い状態となり、吸着装置133と発光ダイオード122との吸着による結合状態は解放される。接着剤層136はUV硬化型接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤などによって構成することができる。発光ダイオード122が配置される位置は、一時保持用部材123、127上での配列よりも離間したものとなる。そのとき接着剤層136の樹脂を硬化させるエネルギーは第二基板140の裏面から供給される。UV硬化型接着剤の場合はUV照射装置にて、熱硬化性接着剤の場合はレーザーにて発光ダイオード122の下面のみ硬化させ、熱可塑性接着剤場合は、同様にレーザー照射にて接着剤を溶融させ接着を行う。
また、第二基板140上にシャドウマスクとしても機能する電極層137を配設し、特に電極層137の画面側の表面すなわち当該画像表示装置を見る人がいる側の面に黒クロム層138を形成する。このようにすることで画像のコントラストを向上させることができると共に、黒クロム層138でのエネルギー吸収率を高くして、選択的に照射されるビーム153によって接着剤層136が早く硬化するようにすることができる。この転写時のUV照射としては、UV硬化型接着剤の場合は約1000mJ/cm2を照射する。
図15はRGBの3色の発光ダイオード122、141、142を第二基板140に配列させ絶縁層139を塗布した状態を示す図である。図13および図14で用いた吸着装置133をそのまま使用して、第二基板140にマウントする位置をその色の位置にずらすだけでマウントすると、画素としてのピッチは一定のまま3色からなる画素を形成できる。絶縁層139としては透明エポキシ接着剤、UV硬化型接着剤、ポリイミドなどを用いることができる。3色の発光ダイオード122、141、142は必ずしも同じ形状でなくとも良い。図15では赤色の発光ダイオード141が六角錐のGaN層を有しない構造とされ、他の発光ダイオード122、142とその形状が異なっているが、この段階では各発光ダイオード122、141、142は既に樹脂形成チップとして樹脂からなる接着剤層125で覆われており、素子構造の違いにもかかわらず同一の取り扱いが実現される。
図16は配線形成工程を示す図である。絶縁層139に開口部145、146、147、148、149、150を形成し、発光ダイオード122、141、142のアノード、カソードの電極パッドと第二基板140の配線用の電極層137を接続する配線143、144、151を形成した図である。このときに形成する開口部すなわちビアホールは発光ダイオード122、141、142の電極パッド126、129の面積を大きくしているのでビアホール形状は大きく、ビアホールの位置精度も各発光ダイオードに直接形成するビアホールに比べて粗い精度で形成できる。このときのビアホールは約60μm角の電極パッド126、129に対し、約φ20μmのものを形成できる。また、ビアホールの深さは配線基板と接続するもの、アノード電極と接続するもの、カソード電極と接続するものの3種類の深さがあるのでレーザーのパルス数で制御し、最適な深さを開口する。その後、保護層を配線上に形成し、画像表示装置のパネルは完成する。このときの保護層は図16の絶縁層139と透明エポキシ接着剤などの同様の材料が使用できる。この保護層は加熱硬化し配線を完全に覆う。この後、パネル端部の配線からドライバーICを接続して駆動パネルを製作することになる。
上述のような発光素子の配列方法を用いた画像表示装置及びその製造方法によれば、一時保持用部材123に発光ダイオード122を保持させた時点で既に、素子間の距離が大きくされ、その広がった間隔を利用して比較的サイズの電極パッド126、129などを設けることが可能となる。それら比較的サイズの大きな電極パッド126、129を利用した配線が行われるために、素子サイズに比較して最終的な装置のサイズが著しく大きな場合であっても容易に配線を形成できる。また、本実施形態の発光素子の配列方法では、発光素子の周囲が硬化した接着剤層125で被覆され平坦化によって精度良く電極パッド126,129を形成できるとともに素子に比べて広い領域に電極パッド126,129を延在でき、次の第二転写工程での転写を吸着治具で進める場合には取り扱いが容易になる。また、発光ダイオード122の一時保持用部材123への転写には、GaN系材料がサファイヤとの界面で金属のGaと窒素に分解することを利用して、比較的簡単に剥離できる。
他の実施の形態としては、図10〜図16の画像表示装置の製造方法を、図4、図5あるいは図6で示した発光素子を第一基板(素子形成用基板)から一時保持用部材を経て、第二基板(配線用基板)に実装する形態に転用して画像表示装置を得ることができる。このときには、第二の一時保持用部材が省略される。
ところで、発光ダイオードなどの発光素子をマトリクス状に配列して素子を構成した画像表示装置を製造する場合、配線用基板上に個々の発光素子を実装して製造する装置がいくつか知られている。
図17は発光ダイオードの実装形態として、特許第2895566号の明細書および図面に開示される発光ダイオードである。この素子は同一面側に正負一対の電極部を有するいわゆるフリップチップ方式の発光ダイオードの例であり、リードフレーム200は間隔を隔てて並列に配設された正負一対の電極を形成するリード部材201、206により構成されている。両リード部材201、206にはそれらの先端部202、207に発光チップ190を載置する平坦部203、208が形成されている。また、平坦部203、208に続く側周面にはそれら平坦部203、208から外側に傾斜して反射部204、209が一体的に形成されている。GaN青色発光チップである発光チップ190の各電極部分ははんだバンプ205を介して負極となるリード部材201および正極となるリード部材206にそれぞれ接合されている。
図18は特開平9−293904号公報において説明されるチップタイプLED(発光ダイオード)の例を示す。これは導電層を形成した絶縁性のセラミックス支持部材211の上にLED素子213を載置し、LED素子213の電極214と電極端子212をワイヤー215でワイヤーボンディングし、キャビティー内に封止樹脂216を満たして固化した構造を有する。
図19は同じく特開平9−293904号公報に開示されるチップタイプLEDの例である。セラミックスの支持部材221に一対の電極端子222が形成されており、LED素子223の表面の一対の電極224は導電性のろう材225によりフリップチップ接続されている。LED素子223はセラミックス支持部材と強固に接着させるためにLED素子と支持体の隙間に封止樹脂226が注入されている。
しかしながら、このような発光ダイオードをマトリクス状に配列して画像表示装置を製造する場合、発光ダイオードを個別にパッケージに収納してから、平面型画像表示装置などへの組み立てのためにアレイ状に複数の発光ダイオードを並べて実装する必要が生じている。LEDチップはウエハの状態から個々のチップ毎にダイシングされ、それぞれパッケージに封止されるために、1個のLEDチップはベアチップの状態でサブミリ角の大きさであり、パッケージに収納した状態では数ミリ程度のサイズがある。その結果、一画素の大きさも大きくなって解像度が低下してしまい、高精細で小型の画像表示装置は容易には組み立てられないものとされていた。また、発光ダイオードがGaN系の窒化物半導体である場合、通常サファイヤ基板上に発光ダイオードを形成するため、パッケージはサファイヤ基板の厚みよりも厚い厚みになっていた。
次に、高精細な画像表示を可能とし、しかも短時間で製造でき且つ製造プロセス上のコストも削減可能である発光素子の実装方法を工夫した画像表示装置及びその製造方法の他の実施の形態について説明する。
例1
図20は発光素子の実装方法を工夫した画像表示装置の一例を示す要部断面図である。本例の画像表示装置は、図20に示すようにフルカラー対応のカラー画像表示装置231であり、個々の発光素子として赤、緑、青のそれぞれの発光が可能な発光ダイオードをマトリクス状に配列したものである。
本例の画像表示装置231においては、ガラス基板もしくはプラスチック基板からなる配線用基板240の基板主面241には、あらかじめ所要の配線パターンを有して形成された配線層247、248が形成されている。ここで配線層248はp電極に信号を供給するための配線であり、配線層247はn電極に信号を供給するための配線である。これら配線層247、248の一方は共通化することもできる。
配線層248上には、結晶成長時の状態とは倒置して配設された結晶成長層243がp電極244を介して配されている。結晶成長層243は後述するように、選択成長によってマスク層の窓部を介し、倒置されて上側に位置してなる下地成長層245から成長した層である。この結晶成長層243はウルツ鉱型の結晶構造を有する窒化物半導体材料であるシリコンドープのGaN層を材料とし、その傾斜した側面がS面(1−101面)で覆われた六角錐形状を呈する。また、図20は断面図であるため、結晶成長層243の断面は倒置した略正三角形形状となる。
この結晶成長層243には活性層をn型半導体層とp型半導体層で挟んだ発光領域が形成される。活性層は倒置した六角錐形状の最外郭近くに形成される。本例では、隣接する発光素子の活性層のバンドギャップエネルギーは異なっていて、それぞれ赤色、緑色、青色のいずれかの発光色に対応したものとなっているが、その他の構造や寸法はほぼ同一である。
六角錐形状の結晶成長層243は結晶成長時の向きと比べて基板主面の法線方向において上下逆となるように配線用基板240上に実装される。従って、六角錐形状の底面が丁度上面となり、上面が光の取出し側となる。詳しくは、六角錐形状の結晶成長層243は結晶成長時に用いられる図示しないマスク層の窓部を介して下地成長層245とつながっており、そのマスク層の窓部がそのまま光の取出し口となる。
下地成長層245は選択成長の種層として機能するが、マスク層の窓部を介して結晶成長層243とも接続して下地成長層245の平坦な上面は光取出し面250としても利用される。さらに下地成長層245はn電極側の配線の一部としても機能し金属層からなるn電極249と結晶成長層243の間の電流経路となる。n電極249は発光素子の倒置によって下地成長層245の下部に位置するが、結晶成長層243がn電極249よりは大きく成長した層であることから、n電極249の下部にバンプ246を形成して、結晶成長層243と高さを合わせるようにしている。バンプ246はメッキ工程などを利用して形成される接続部であり、電解もしくは無電解によりCu、Niなどのバンプを約10ミクロンの高さで形成したものであり、その表面は酸化防止のために約0.1ミクロンのAuメッキが施されている。バンプ246の下部は実装時に基板主面241上に配設された配線層247に接続する。
バンプ246の周囲や配線層247、248の周囲、さらには結晶成長層243の周囲には素子の機能の上では空隙部が形成されるが、その空隙部は本例の画像表示装置では封止材となる熱硬化接着剤や紫外線硬化型接着剤などの接着剤からなる接着剤層242で充填される。
図21は本例の画像表示装置に実装される個々の発光ダイオードを示す図であり、(A)が素子の断面図であり、(B)が素子の上面図である。図20に示した画像表示装置では複数の配列される発光ダイオードがそれぞれ倒置されて実装されるため、図21のものとは基板主面の法線方向において上下逆となる。
ここで図21に示す発光ダイオードについて説明すると、配線用基板240とは異なる例えばサファイヤ基板などの成長用基板を用い、好ましくは下地成長層245上に六角錐形状または六角台形形状の結晶成長層243を形成するのに選択成長法が用いられる。結晶成長層243を選択成長によって形成する場合、容易に結晶成長層243は基板主面に対して傾斜した例えばS面などの傾斜結晶面を有した構造を呈する。特にS面はC+面の上に選択成長した際に見られる安定面であり、比較的得やすい面であって六方晶系の面指数では(1,−1,0,1)面である。このS面について、窒化ガリウム系化合物半導体で結晶層を構成した場合には、S面でのボンド数は最も多いものとなる。従って、実効的にV/III 比が上昇することになり、積層構造の結晶性の向上に有利である。また、基板と異なる方位に成長すると基板から上に伸びた転位が曲がることもあり、欠陥の低減にも有利となる。
ここで結晶成長層243は、第1導電型層、活性層251、及び第2導電型層252からなる発光領域を形成可能な材料層であれば良く、特に限定されるものではないが、その中でもウルツ鉱型の結晶構造を有することが好ましい。このような結晶層としては、例えばIII族系化合物半導体やBeMgZnCdS系化合物半導体、BeMgZnCdO系化合物半導体を用いることができ、更には窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体、窒化アルミニウム(AlN)系化合物半導体、窒化インジウム(InN)系化合物半導体、窒化インジウムガリウム(InGaN)系化合物半導体、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系化合物半導体を好ましくは形成することができ、特に窒化ガリウム系化合物半導体などの窒化物半導体が好ましい。なお、本発明において、InGaN、AlGaN、GaNなどは必ずしも、3元混晶のみ、2元混晶のみの窒化物半導体を指すのではなく、例えばInGaNでは、InGaNの作用を変化させない範囲での微量のAl、その他の不純物を含んでいても本発明の範囲であることはいうまでもない。
この結晶層の選択成長方法としては、種々の気相成長法を挙げることができ、例えば有機金属化合物気相成長法(MOCVD(MOVPE)法)や分子線エピタキシー法(MBE法)などの気相成長法や、ハイドライド気相成長法(HVPE法)などを用いることができる。その中でもMOCVD法によると、迅速に結晶性の良いものが得られる。MOCVD法では、GaソースとしてTMG(トリメチルガリウム)、TEG(トリエチルガリウム)、AlソースとしてはTMA(トリメチルアルミニウム)、TEA(トリエチルアルミニウム)、Inソースとしては、TMI(トリメチルインジウム)、TEI(トリエチルインジウム)などのトリアルキル金属化合物が多く使用され、窒素源としてはアンモニア、ヒドラジンなどのガスが使用される。また、不純物ソースとしてはSiであればシランガス、Geであればゲルマンガス、MgであればCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)、ZnであればDEZ(ジエチルジンク)などのガスが使用される。MOCVD法では、これらのガスを例えば600°C以上に加熱された基板の表面に供給して、ガスを分解することにより、InAlGaN系化合物半導体をエピタキシャル成長させることができる。
具体的な選択成長法としては、下地成長層245の上に薄いマスク層を形成し、そのマスク層を選択的に開口して窓領域を形成することでも、選択成長が可能である。マスク層は例えば酸化シリコン層或いは窒化シリコン層によって構成することができる。窓領域はマスク層に形成される開口部であり、例えば六角形とすることができるが、他の形状、たとえば円形状、正方形状、三角形状、矩形状、菱形、楕円形状およびこれらの変形形状などの種種の形状にすることができる。マスク層の窓領域からの選択成長では、横方向に結晶成長が進むことから、貫通転位を抑える利点も生ずる。
本例の画像表示装置に用いられる発光ダイオードにおいては、活性層251は傾斜した結晶面に平行な面内に延在され且つ第1導電層と第2導電層252に挟まれた構造とされる。活性層252は結晶成長層243に形成されるが、結晶成長層243に形成されるとは、結晶成長層243に対して半導体層を積層する場合と、結晶成長層の内部や表面の形成する場合の両方を含む。
第1導電型はp型又はn型のクラッド層であり、第2導電型はその反対の導電型である。例えば結晶成長層をシリコンドープの窒化ガリウム系化合物半導体層によって構成した場合では、n型クラッド層をシリコンドープの窒化ガリウム系化合物半導体層によって構成し、その上にInGaN層を活性層251として形成し、さらにその上にp型クラッド層としてマグネシウムドープの窒化ガリウム系化合物半導体層を形成してダブルヘテロ構造をとることができる。活性層251であるInGaN層をAlGaN層で挟む構造とすることも可能である。また、活性層251は単一のバルク活性層で構成することも可能であるが、単一量子井戸(SQW)構造、二重量子井戸(DQW)構造、多重量子井戸(MQW)構造などの量子井戸構造を形成したものであっても良い。量子井戸構造には必要に応じて量子井戸の分離のために障壁層が併用される。活性層251をInGaN層とした場合には、特に製造工程上も製造し易い構造となり、素子の発光特性を良くすることができる。さらにこのInGaN層は、窒素原子の脱離しにくい構造であるS面の上での成長では特に結晶化しやすくしかも結晶性も良くなり、発光効率を上げることが出来る。
結晶成長層243上に形成されるp電極244は活性層251に電流を注入するための電極であるが、本例においては、傾斜した結晶面を有する傾斜結晶面の表面に被着されて、最終的には発光ダイオード素子自体が倒置されることから、p電極244は上向きに開いた反射膜としても機能し、発光ダイオード素子自体が倒置される構造から光取出し効率の向上を図ることができる。
本例の画像表示装置においては、各発光ダイオード素子が結晶成長時とは倒置されて配線用基板240上に配設される。この時、平坦な下地成長層245の上面が結晶成長層243の活性層251からの光の光取出し面250として機能し、p電極244の反射膜としての機能も手伝って光取出し効率を高くすることができる。結晶成長層243は選択成長による六角錐形状を有するが、n電極249側にはバンプ246が配設されており、発生した光の光取出し面250として機能する各素子毎の下地成長層245をほぼ面一にすなわち水平に同じ高さに保つことができ、さらに接着剤242で周囲を固めることで結晶成長層243などが傾いてしまうような問題も未然に防止できる。
各発光ダイオード素子は素子完成後に実装されるため、たとえば欠陥のある素子を実装しないようにすることで、画像表示装置の全体に歩留まりは向上する。また、バンプ246によって素子は正負一対の電極が配線用基板240側に集められた構造になり、電極が光取出しのための面積を減ずることもない。この点から本例の画像表示装置は高精細なカラー表示が可能であり、製造プロセス上も選択成長の利点を巧妙に取り込んだものとなっている。
なお、本例の画像表示装置において、n電極249やバンプ246などは隣接するダイオード間で共通としても良く、また、下地成長層245は隣接する素子間で共通で分離されていない構造であっても良い。また、本例では、画像表示装置はカラー表示であるとしたが、2色表示の装置や、RGB以外の発光色の組み合わせにかかる画像表示装置であっても良い。また、各ダイオードを駆動するための選択トランジスタなどを配線用基板240上に配することも可能である。
例2
本例は、例1の画像表示装置の異なる構造の発光ダイオードを用いた構造の装置である。本例の画像表示装置は、図22に示すように、配線用基板260の基板主面261上に配線層268、269が形成され、それら配線層268、269上にはそれぞれバンプ266、267が形成され、バンプ266、267の上側にはp電極264、n電極265を介して結晶成長層263が接続されている。結晶成長層263は略平板状であり、図示しない活性層が延在されており、p電極264、n電極265を活性層を挟む第1導電層、第2導電層に電気的に接続するように形成した後、倒置され、結晶成長層263の下面に位置するp電極264、n電極265がバンプ266、267の上部に接続する。バンプ266、267の周囲は例1と同様に熱硬化接着剤や紫外線硬化型接着剤などの接着剤からなる接着剤層262で充填されている。
本例の画像表示装置においては、p電極264、n電極265がバンプ266、267に接続され、光を発生させる結晶成長層263を水平に同じ高さに保つことができ、さらに接着剤層262で周囲を固めることで結晶成長層263などが傾いてしまうような問題も未然に防止できる。また、各発光ダイオード素子は素子完成後に実装されるため、たとえば欠陥のある素子を実装しないようにすることで、画像表示装置の全体に歩留まりは向上する。また、バンプ266、267によって素子は正負一対の電極が配線用基板260側に集められた構造になり、電極が光取出しのための面積を減ずることもない。この点から本実施の形態に係る画像表示装置は高精細なカラー表示が可能である。
例3
本例は例1の画像表示装置の製造方法の例であり、図23乃至図31を参照しながらその工程順に説明する。
図23に示すように、C面を主面とするサファイヤ基板からなる成長用基板270が使用され、その成長用基板270上に低温と高温のバッファ層などからなる下地成長層271が形成され、その下地成長層271を覆ってシリコン酸化膜または窒化膜からなるマスク層が形成され、そのマスク層には結晶成長させる領域に対応して窓領域が形成される。次いで、窓領域からの選択成長による結晶成長から側面が傾斜したS面で覆われた六角錐形状の結晶成長層272が得られ、この結晶成長層272に図示しない第1導電層、活性層、および第2導電層が形成され、さらに、p電極273が例えばNi/Pt/Auなどの多層金属膜によって構成され、n電極274が例えばTi/Al/Pt/Auなどの多層金属膜によってマスク層を開口した部分に形成される。p電極273は例えば蒸着によって形成されるが、他方のn電極274はリフトオフなどの手法を用いて形成される。
このようにp電極273とn電極274を形成した後、成長用基板270上の下地成長層271は素子毎に分離される。この素子毎の分離には例えば反応性イオンエッチングが用いられる。各素子のチップサイズについて、例示すると、素子自体は例えば20ミクロン角程度のサイズであるが、チップのピッチは約25ミクロン程度となる。
次に、成長用基板270の全面にレジスト層275を形成し、この時のレジスト層275の厚みをp電極273の頂点部分の高さと同程度とする。次いでレジスト層275の前記n電極274に対応した領域を開口し、図24に示すように開口部276を当該レジスト層275に形成して底部に前記n電極274を臨ませる。
レジスト層275の開口部276に、バンプ277をメッキ工程などを利用して形成する。すなわち、このバンプ277はメッキ工程などを利用して形成される接続部であり、電解もしくは無電解によりCu、Niなどのバンプを約10ミクロンの高さで形成したものであり、その表面は酸化防止のために約0.1ミクロンのAuメッキが施されている。メッキバンプ277の形成後、図25に示すように、レジスト層275が除去される。
レジスト層275の除去後、図26に示すように、例えばガラス基板などによって構成される転写用基板280上に転写材278が塗布されたものを用意し、先のバンプ277を形成した成長用基板270を転写用基板280に対向させる。ここで転写材278は粘着材などであり、次に照射されるレーザー光の波長に対して吸収の低い材料が好ましい。これはレーザー光によるアブレーションが低く、分離した発光素子の位置精度が良好となるからである。成長用基板270と転写用基板280の主面同士を対向させたところで、成長用基板270の裏面すなわち発光素子の裏面からKrFエキシマレーザー或いは三倍波YAGレーザーなどのレーザー光を照射する。このレーザー光の照射によって下地成長層271と成長用基板270の界面には、窒素が発生し、発光ダイオードは素子ごと分離される。
このレーザー光の照射によって分離された各発光ダイオードは、図27に示すように、転写材278に埋められながら転写用基板280に一時的に保持される。このとき、丁度、成長用基板270が剥がれた面である下地成長層271の上面には、Ga層281が付着している。この下地成長層271の上面は光取出し面となることから、Ga層281を除去する必要があり、エッチングなどが施される。このエッチングはアルカリ系、もしくは酸系にいずれでも良いが、転写材278の密着強度が低下することのないようにエッチング液が選定される。
画像表示装置はRGBの単色の発光素子を規則的は配列させて構成されることから、図28に示すように、配線用基板の電極ピッチに合わせて、選択的に転写用基板280から発光素子を取り出す。これは転写用基板280の基板上に保持された発光ダイオードは同一で単色の発光波長を有するとの前提によるものであり、異なる発光波長の素子を実装するためには、たとえば複数枚の転写用基板280が使用される。本例では、選択的な発光素子の取り出しのために、吸着ヘッド282が使用される。吸着ヘッド282の先端部284には、吸引孔283が形成され、先端部284にピッチは配線用基板の電極ピッチに沿ったものとなっている。吸着ヘッド282の先端部284は吸引孔283の周囲で平坦とされ、その平坦な部分に発光素子の光取出し面となる下地成長層271の上面が吸着される。この吸着作業は、個々の素子毎に行うことも可能であるが、本例のように、配線用基板の電極ピッチに合わせて複数の発光素子を同時に吸着させるようにすることもでき、本例を利用することで製造プロセスを簡略化して製造コストを低減できる。
配線用基板の電極ピッチに合致した複数の発光素子は、図29に示すように、配線用基板290のところまで運ばれ、該配線用基板290の主面に垂直な方向から基板主面に対して各素子が接着される。配線用基板290の主面には予め配線層291、292が形成されており、吸着ヘッド282が各素子を配線用基板290の主面に圧着した後、開放すると各発光素子は配線用基板290に仮接着される。配線用基板290の主面には接着剤293が塗布されており、各素子を配線用基板290の主面で保持するのに寄与する。ここで接着剤293は例えば熱硬化型接着剤や紫外線硬化型接着剤である。
このような配線用基板290の主面への搬送を3原色の各素子について行うと、図30に示す状態となる。この時点で隣接する素子は発光する光に波長は異なるものとされる。各素子はバンプ277を用いて基板主面に対して水平に維持されたまま確実に実装される。
次いで、図31に示すように加圧ヘッド295を各素子の光取出し側である下地成長層271の上面から押し付け、接着剤293を硬化させる。接着剤293が熱硬化型接着剤の場合には、加圧ヘッド295としてパルスヒートで加熱する加熱加圧ヘッドとすることができ、紫外線硬化型接着剤の場合には加圧しながら配線用基板290の裏面側から紫外線を照射することが望ましい。または、加圧ヘッド295をガラスや石英ガラスなどの光透過材料で構成し、上側から紫外線を照射するようにすることもできる。
本例の画像表示装置の製造方法においては、配線用基板290の電極ピッチに合わせた複数の発光素子が一括して配線用基板290の主面に実装されるため、その製造コストを低減できるとともに短時間での製造が可能である。また、各素子はバンプ277を用いて確実に水平に実装され、傾いたりすることもなく、またアライメントのためのマージンも小さくて良くなることから、高精度に発光素子を配列されることができ、また、バンプ277を用いて確実な電気配線や、光取出し効率の最大化も図ることができる。
また、転写用基板280に保持されている状態で、発光素子の検査を行うことができ、不良な素子を早期に除去して歩留まりを改善できる。また、Ga層の除去を配線用基板290への実装前に行うことができ、エッチングで配線用基板290を損傷するような問題も回避できる。
例4
本例は、図32および図33に示すように、配線用基板の電極ピッチに合わせて発光素子を形成し、直接配線用基板に実装する例である。
図32に示すように、成長用基板305上には配線用基板の電極ピッチに合わせて発光素子が形成されている。発光素子は前述の実施の形態と同様に下地成長層311上に六角錐状の結晶成長層312が形成され、結晶成長層312上にはp電極313が下地成長層311上には更にn電極314が形成され、p電極313と高さを同程度とするためのバンプ315が形成されている。成長用基板305上には複数の発光素子が形成され、その間隔が配線用基板301の電極層303、302のピッチに対応したものとなっている。
発光素子が形成された成長用基板305を配線用基板301と対向させ、成長用基板305の裏面からKrFエキシマレーザー或いは三倍波YAGレーザーなどのレーザー光を照射することで、下地成長層311と成長用基板305の界面には、窒素が発生し、発光素子は素子ごと分離され、配線用基板301に保持される。
図33は発光素子が配線用基板301に保持された状態を示しており、以後、他の波長の発光素子についても実装を行い、接着剤307を硬化させることで画像表示装置が完成する。このときGa層316が下地成長層311の上面に形成されていることから、接着剤層307が紫外線硬化型の場合では、配線用基板301の裏面側から紫外線を照射する。接着剤層307が熱硬化型の場合では、例3と同じ条件での硬化工程で良い。接着剤層307が硬化した後でGa層316を除去することで、配線用基板301へのダメージを著しく低減できる。
例5
本例は、図34に示すように、配線用基板の電極ピッチに合わせて選択的にレーザー光を照射して、発光素子を直接配線用基板に実装する例である。
図34に示すように、成長用基板328上には発光素子が複数形成されており、発光素子は前述の例と同様に下地成長層327上に六角錐状の結晶成長層324が形成され、結晶成長層324上にはp電極326が下地成長層327上には更にn電極が形成され、p電極326と高さを同程度とするためのバンプ325が形成されている。
一方、配線用基板320の主面には電極層321、322が所要のピッチで形成されており、成長用基板328と配線用基板320が対向して保持された状態で、配線用基板の電極ピッチに合わせてレーザービームが照射される。成長用基板328の裏面からKrFエキシマレーザー或いは三倍波YAGレーザーなどのレーザー光を照射することで、下地成長層327と成長用基板328の界面には、窒素が発生し、発光素子は素子ごと分離され、配線用基板320に保持されるが、レーザービームの照射が電極ピッチに合わせた選択的なものであるために、成長用基板328上の全部の発光素子が分離するわけではなく、配線用基板の電極ピッチに合わせた単色の素子だけが確実に転写される。この工程を他の波長の素子に対して繰り返すことで画像表示装置が完成する。レーザー光は単一ビームをスキャンする方法と、単一ビームで成長用基板と配線用基板を移動する方法とがある。
例6
本例は2回転写用基板を用いて実装する例であり、本例を図35乃至図39を参照しながら説明する。
図35に示すように、成長用基板336上には発光素子を構成するように、下地成長層332上に六角錐状の結晶成長層333が形成され、結晶成長層333上にはp電極334が下地成長層332上には更にn電極が形成され、p電極334と高さを同程度とするためのバンプ335が形成されている。成長用基板336上には発光素子は配線用基板の電極ピッチに合わせて離間している。この成長用基板336は転写用基板330と対向するように保持され、成長用基板336の裏面からレーザー光を照射することで、発光素子は素子ごと分離され、転写用基板330に転写される。転写用基板330にはこの時シリコン樹脂などからなる転写材331が形成されていて、この転写材331により、発光素子は素子ごとに保持される。
次に、図36に示すように、Ga層の除去により、転写用基板330に光取出し面が外側となる形で保持され、さらに図37に示すように、転写材340が上面に塗布された第2の転写用基板341が貼り合わせられる。この場合において、転写材340は例えば紫外線硬化型粘着材であり、第2の転写用基板341はガラスもしくは石英ガラスである。
次に、最初の転写用基板330が剥がされることで、図38に示すように、発光素子は第2の転写用基板341に転写される。
そして図39に示すように、配線用基板342の主面には電極層343、344が所要のピッチで形成されているところで、第2の転写用基板341と配線用基板342が対向して保持された、配線用基板の電極ピッチに合わせてレーザービームが照射される。成長用基板328の裏面からレーザー光を照射することで、転写材340のアブレーションにより発光素子は素子ごと分離され、配線用基板342に保持される。この転写はレーザービームの照射が電極ピッチに合わせた選択的なものであるために、成長用基板328上の全部の発光素子が分離するわけではなく、配線用基板の電極ピッチに合わせた単色の素子だけが確実に転写される。この工程を他の波長の素子に対して繰り返し、配線用基板342上の接着剤345を硬化させて画像表示装置が完成する。なお、転写材340のアブレーションの残さが発光素子裏面に付着しているときは洗浄もしくは研磨の工程を付加する。
例7
本例は例6の変形例であり、図40に示すように、第2の転写用基板350上の転写材351には、発光素子を構成するように、下地成長層353上に六角錐状の結晶成長層354が形成され、p電極と高さを同程度とするためのバンプ355が形成されているが、第2の転写用基板350上において、発光素子は配線用基板の電極ピッチに合わせて離間しているのではなく、製造上で便宜なピッチで配されている。なお、その他の工程においては例6と実質的に同じである。
次いで、図41に示すように、第2の転写用基板350の裏面からレーザー光を選択的に照射することで、転写材351のアブレーションにより発光素子は素子ごと分離され、配線層362、363を有する配線用基板360に保持される。この転写はレーザービームの照射が電極ピッチに合わせた選択的なものであるために、全部の発光素子が一度に分離するわけではなく、配線用基板の電極ピッチに合わせた単色の素子だけが確実に転写される。この工程を他の波長の素子に対して繰り返し、配線用基板360上の接着剤361を硬化させて画像表示装置が完成する。なお、転写材351のアブレーションの残さが発光素子裏面に付着しているときは洗浄もしくは研磨の工程を付加する。
例8
本例は、n電極配線とp電極配線を結晶成長層について上下に分けて形成した画像表示装置の例である。本例の画像表示装置は、図42に示すように、配線用基板370の基板主面371上にp電極配線372が形成され、そのp電極配線372の上端に接続する形で、六角錐形状の傾斜した傾斜結晶面を有する結晶成長層374がその周囲の接着剤層373に埋め込まれて支持されている。結晶成長層374には図示しない第1導電層、活性層、第2導電層が形成されており、この結晶成長層374は結晶成長時とは倒置した形で接着剤層373に支持されている。結晶成長層374の傾斜結晶面に平行な面にはp電極375が形成されており、結晶成長層374の上側には、結晶成長時に用いた平板状の下地成長層376が存在し、この下地成長層376の上面側が光取り出し面377とされ、この下地成長層376の光取り出し面377において、発光領域となる第1導電層、活性層、第2導電層の積層部とは基板主面371の法線方向で重ならない下地成長層376の角部にはn電極配線378が形成され電気的に接続されている。このn電極配線378の一部は前記接着剤層373上にも延在されており、たとえば樹脂層からなる接着剤層373が硬化した後、n電極配線378が所要のパターンに形成される。n電極配線378はポリイミドなどの樹脂層からなる保護層379によって被覆されている。
本例の画像表示装置においては、p電極、n電極の双方が結晶成長面側に存在する発光素子とは異なり、少なくともn電極配線378は下地成長層376の光取り出し面377側に位置するために、配線の分だけ発光素子のチップサイズを小さくすることができる。また、n電極配線378とp電極配線372は結晶成長層374について上下に分けて形成され、3次元的に離れることになるので、短絡することがなくなり配線幅を広く形成することが可能になる。したがって、配線の形成も容易に行うことができる。
なお、上述の例では、バンプをCu,NiにAuのコートをしたものとして説明したが、半田バンプによる接続であっても良い。発光素子の電極上のバンプは半田メッキ、もしくは半田蒸着によって形成され、配線用基板に保持される接着剤の代わりにフラックスを用いて、配線用基板に予め塗布しておくことができる。発光素子はそのフラックスの粘着性により配線用基板上に保持される。3色の発光素子が剥離・転写されたら、配線用基板を一括してリフローして配線用基板と発光素子を接続しても良い。この時は配線用基板はリフロー炉に入れることになるので、ガラス基板を使用する。接続後はフラックス洗浄を行い、封止材をチップと配線用基板の間に入れて、封止材を硬化させる。半田を用いた接続の場合は、接続抵抗が低抵抗になり、半田溶融時のセルフアライメントにより発光素子のアライメント精度が改善され、画素ピッチが配線電極のパターニング精度と一致するようになるので、画素ピッチが一定になり、画像表示装置は高精細なものとなる。発光素子の修理をする場合は封止材の注入前に発光素子の点灯検査を行い、不良が発生した場合にはその発光素子の局部加熱により、半田バンプを溶融して修理をする。
本例1から8係る画像表示装置においては、発光素子の結晶成長層が基板主面の法線方向において結晶成長時とは倒置されることから、電極側を結晶成長層の上側に形成した場合であっても倒置によって配線用基板に対峙する下側に位置することになり、配線用基板上に配線層を形成することで、実装の際に容易に電気的接続を図ることができる。従って、パッケージ形態する必要がなく、高密度に発光素子を配列することもできる。
また、本例1から8に係る画像表示装置の製造方法においては、結晶成長層が選択成長によって形成されるため、簡単に基板主面に対して傾斜した傾斜結晶面を有する結晶成長層を形成することができ、従って、結晶成長層を倒置した場合に、光に取り出し窓を上面とすることが容易となる。また、前記第2導電層と接続する第2電極を成長用基板からの高さがほぼ同程度となるようにすることで、配線用基板との電気的な接続を確実で容易なものとすることができる。
本発明において画像表示装置とは、発光ダイオード(LED)、半導体レーザーなどの発光素子を用いた表示装置(ディスプレイ装置)であれば良く、発光素子が配線用基板上に配列されて、他の電子機器などに組み込まれる構造のものから、更に例示的には、テレビジョン受像機、ビデオ再生装置、コンピューターのなどの電子機器のモニター、ゲーム機器の出力装置、電子家電などのモニターなどを含み、また、比較的小さいサイズのものでは、自動車搭載型案内装置、携帯電話、携帯情報端末、録画装置や監視装置などのモニター画面などであっても良い。
なお、前述の図10〜図15に係る素子の配列方法は、参考例として液晶制御素子の配列にも適用できる。
[液晶制御素子の配列方法]
次に、図52から図57までを参照しながら、参考例である液晶制御素子の配列方法について説明する。液晶制御素子とは、最終製品として液晶パネルを形成した際に液晶の配向状態を制御する薄膜トランジスタである。
先ず図52に示すように、石英ガラス基板などの第一基板161上にアモルファスシリコン膜162が形成される。このアモルファスシリコン膜162は後の工程で犠牲となる剥離膜である。このアモルファスシリコン膜162上には下地絶縁膜としてシリコン酸化膜163が形成され、その上に薄膜トランジスタ164がマトリクス状に密に形成される。薄膜トランジスタ164はポリシリコン膜上にゲート酸化膜、ゲート電極を形成して、ポリシリコン膜にソース・ドレイン領域を形成したものである。これら薄膜トランジスタ164は素子分離されており、例えば反応性イオンエッチングなどの方法によって素子分離用の溝がアモルファスシリコン膜162の一部を露出する程度に形成される。
次に図53に示すように、このような第一基板161を一時保持用部材165に対峙させて選択的な転写を行う。一時保持用部材165の第一基板161に対峙する面には剥離層166と接着剤層167が2層になって形成されている。ここで一時保持用部材165の例としては、ガラス基板、石英ガラス基板、プラスチック基板などを用いることができ、一時保持用部材165上の剥離層166の例としては、フッ素コート、シリコン樹脂、水溶性接着剤(例えばPVA)、ポリイミドなどを用いることができる。また一時保持用部材165の接着剤層167としては紫外線(UV)硬化型接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤のいずれかからなる層を用いることができる。
一時保持用部材165の接着剤層167は、硬化した領域167sと未硬化領域167yが混在するように調整され、未硬化領域167yに選択転写にかかる薄膜トランジスタ164が位置するように位置合わせされる。硬化した領域167sと未硬化領域167yが混在するような調整は、例えばUV硬化型接着剤を露光機にて選択的に露光し、薄膜トランジスタ164を転写するところは未硬化でそれ以外は硬化させてある状態にすれば良い。このようなアライメントの後、その位置の薄膜トランジスタ164をレーザーにて第一基板161の裏面から照射して薄膜トランジスタ164を第一基板161からレーザーアブレーションを利用して剥離する。照射するレーザーとしてはエキシマレーザー、高調波YAGレーザーなどが用いられる。
このレーザーアブレーションを利用した剥離によって、選択照射にかかる薄膜トランジスタ164は反対側の接着剤層167の未硬化領域167yに転写される。他のレーザーが照射されない領域の薄膜トランジスタ164については、対応する接着剤層167の部分が硬化した領域167sであり、レーザーも照射されていないために一時保持用部材165側に転写されることはない。なお、図27では1つの薄膜トランジスタ164だけが選択的にレーザー照射されているが、nピッチ分だけ離間した領域においても同様に薄膜トランジスタ164はレーザー照射されて転写されているものとする。このような選択的な転写によって薄膜トランジスタ164は第一基板161上に配列されている時よりも離間して一時保持用部材165上に配列される。
次に、選択的な薄膜トランジスタ164の第一基板161から一時保持用部材165への転写を行ったところで、図54に示すように未硬化領域167yの接着剤層167を硬化させて固着させる。この硬化は熱や光などのエネルギーを加えることで可能である。薄膜トランジスタ164は一時保持用部材165の接着剤層167に保持された状態で、確実に保持される。
図55に示すように、次に一時保持用部材165から第2の一時保持用部材168に薄膜トランジスタ164を転写する。第2の一時保持用部材168は薄膜トランジスタ164の薄膜半導体層側を第二基板上に載せるために使用され、特に薄膜トランジスタ164の表裏が問題とならない場合には、第2の一時保持用部材168は使用しなくとも良い。一時保持用部材165から第2の一時保持用部材168に転写される場合には、個々の薄膜トランジスタ164で分離できるように、分離溝167gが形成される。分離溝167gの底部は剥離層166まで至っている。または、分離溝167gは剥離層166も分離する。
この剥離層166で剥離させることで、一時保持用部材165から第2の一時保持用部材168に薄膜トランジスタ164を転写し(図56)、続いて、図示しない吸着手段によって第二基板上に離間しながら転写する(第二転写工程)。この工程は前述の発光素子の配列方法における図13によって示す工程と同様である。
最後に、図57に示すように、ガラス基板や透明プラスチック基板などの第二基板176上に、薄膜トランジスタ164を離間して形成し、ゲート電極線とソース電極、ドレイン電極を形成して、薄膜トランジスタ164のソース、ドレインと接続する。その上に透明電極膜172、配向膜173を形成し、反対側には対向基板169とその表面に透明電極膜175、配向膜174を形成したものを対峙させ、液晶を封入して液晶パネルを作成する。第二基板176上の薄膜トランジスタ164は液晶の制御素子として機能する。第二基板176上で薄膜トランジスタ164は二段階の拡大転写によって十分に離間されており、第一転写工程と第二転写工程のそれぞれで離間した転写が行われる。本実施形態の二段階拡大転写法では、同じ転写倍率を意図する場合においては、第一転写工程と第二転写工程の拡大率をn倍、m倍とすると、1回でそれだけ拡大する場合に比べて、(n+m)2=n2+2nm+m2であることから、必ず2nm回だけ転写回数を減らすことができることになる。従って、製造工程も回数分だけ時間や経費の節約となり、特に拡大率の大きい場合に有益となる。
なお、図4、図5に示した二段階拡大転写法は参考例として、素子92を発光素子以外の他の素子例えば液晶制御素子、光電変換素子、圧電素子、薄膜トランジスタ素子、薄膜ダイオード素子、抵抗素子、スイッチング素子、微小磁気素子、微小光学素子から選ばれた素子若しくはその部分、これらの組み合わせなどであっても良い。液晶制御素子とは、最終製品として液晶パネルを形成した再に液晶の配向状態を制御する薄膜トランジスタなどの素子である。液晶制御素子の場合における配線は、選択信号線、電圧線や、配向電極膜などの配線等を含む。第1基板90、90aは、半導体ウエハ、ガラス基板、石英ガラス基板、サファイヤ基板、プラスチック基板などの素子形成可能な基板を用いることができる。各素子は第一基板上に直接形成したものであっても良く、他の基板上で形成されたものを配列したものであっても良い。
なお、図7及び8に示した樹脂形成チップは、参考例として発光素子に限らず他の素子であっても適用できる。上記したように、両方の電極パッドは、樹脂形成チップの一方の面に形成することも可能であり、例えば薄膜トランジスタの場合ではソース、ゲート、ドレインの3つの電極があるため、電極パッドを3つ或いはそれ以上形成することもできる。