JP4055250B2 - アミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はグリセリンのα、β位にポリオキシアルキレン鎖を持ち、γ位にアミノ基を有するポリオキシアルキレン化合物に関する。さらに詳しくは、ポリペプチド、生理活性蛋白質、酵素などへのポリオキシアルキレン修飾や脂肪乳剤、リポソームなどの薬物送達システム(以下ドラッグデリバリーシステムという。)におけるポリオキシアルキレン基の修飾など主として医薬用途に用いられる末端アミノ基を有するポリオキシアルキレン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでポリオキシアルキレングリコールの末端水酸基をアミノ基に置換した化合物は潤滑油(特公昭54−745854号公報)あるいは合成樹脂添加剤(特開昭57−36115号公報)が記載されており、幅広く利用されている。 また、近年になり、ポリオキシアルキレン化合物がドラッグデリバリーシステムの重要な担体として注目を集めるようになり、ポリオキシアルキレン化合物にアミノ基やカルボキシル基を導入した化合物についても研究が盛んに行われるようになっている。
なかでも、2本のポリオキシアルキレン鎖を持つ化合物は特開平3−72469号公報に示されているトリアジン環を介した2,4−ビス(O−メトキシポリエチレングリコール)−6−クロロ−S−トリアジン(以下「活性化PEG2」という)が知られている。また、ポリオキシアルキレン基の側鎖に多数のアミノ基を持つポリオキシアルキレン化合物も知られている。(特開平8−48764号公報)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特に、ポリオキシアルキレン化合物で修飾したリン脂質を用いた脂肪乳剤、リポソームにおいては抗原性(免疫反応性)の低減、内包した薬剤の安定性のみならず、体内滞留時間の延長効果が得られるとされている。
ところが、これら従来のアミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物は、例えば一本鎖の末端アミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物の場合、これを用いて対象物質を修飾すると、一本鎖であるが故にポリオキシアルキレンの持つ体内滞留時間の延長効果が十分に発揮できないケースが多々ある。
また、前述した活性化PEG2はトリアジン環を持つため、医薬品として体内に投与した場合、毒性が生じる可能性がある。
さらに、ポリオキシアルキレン骨格の側鎖に多数のアミノ基を持つものは、反応点がたくさんあるため、修飾反応を制御するのが難しく、単一の化合物を得ることが困難である。
【0004】
本発明の目的は、化合物ないしは薬剤の抗原性の低減および安定化のみならず、体内滞留時間の延長などの目的をもって、リン脂質を修飾するために使用され、しかも修飾されたリン脂質を用いた脂肪乳剤、リポソームの毒性が少なく、さらに副生物の生成が少ないアミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、グリセリンのα、β位にポリオキシアルキレン鎖を持ち、γ位にアミノ基を有するポリオキシアルキレン化合物が、上記した目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は式(1)で示されるアミノ基を含有するポリオキシアルキレン化合物である。
【0006】
【化2】
【0007】
(ただし、R1は水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基または炭素数1〜24のアシル基、R2は炭素数3〜4の炭化水素基、R3は炭素数1〜10の炭化水素基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、nはオキシエチレン基の平均付加モル数で1〜1000、mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数、n/(n+m)は0.8以上、オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の付加状態はブロック状またはランダム状でもよい。)
【0008】
【発明の実施の形態】
式(1)においてR1で示される炭素数1〜24の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、オクチルドデシル基、ドコシル基、デシルテトラデシル基などの直鎖または分岐状のアルキル基;芳香族炭化水素基として、ブチルフェニル基、ジブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ジノニルフェニル基、α−メチルベンジルフェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基およびクレジル基が挙げられる。
【0009】
また、炭素数1〜24のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、没食子酸などに由来するアシル基が挙げられる。
これらのなかでも、R1としては、水素原子および炭素数1〜4の直鎖のアルキル基が好ましい。なお、式(1)中にはR1が2つ存在するが、これらは同一または異なっていてもよい。
【0010】
R2で示される炭素数3〜4の炭化水素基としては、重合性不飽和基をもつ炭化水素基に由来する基、好ましくはアリル基、メタリル基など二重結合をもつ炭化水素基に由来するトリメチレン基、イソブチレン基などの直鎖または分岐状のアルキレン基などが挙げられる。
【0011】
R3で示される炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などの直鎖または分岐状のアルキレン基、フェニレン基、ベンジル基などの2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
なかでも、メチレン基およびエチレン基が好ましい。
【0012】
AOで示される炭素数3〜4のオキシアルキレン基のアルキレン部位は、直鎖または分岐状のいずれでもよく、このようなオキシアルキレン基として、たとえば、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。
【0013】
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜1000であり、mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、n/(n+m)は0.8以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0である。n/(n+m)が1.0未満の場合、オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の付加状態はブロック状でもランダム状でもよい。
【0014】
式(1)で表される本発明のアミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず式(2)
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、R2'は重合性不飽和基をもつ炭化水素基、好ましくはアリル基あるいはメタリル基などの炭素数3〜4の二重結合含有炭化水素基を示す。)
で表される化合物に、エチレンオキシド単独あるいはエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加させる。この際、化合物(2)にエチレンオキシドを付加させた後、炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加させてもよいし、エチレンオキシドと炭素数3〜4のアルキレンオキシドを混合して一度に付加反応を行ってもよい。エチレンオキシドと炭素数3〜4のアルキレンオキシドの付加モル数の比率は、全体のオキシアルキレン鎖の親水性を保つため、オキシエチレン基が80%以上になるようにする。
【0017】
具体的には、まず化合物(2)を反応釜に仕込み、窒素置換を行い、100〜140℃でアルキレンオキシド(エチレンオキシド単独、あるいはエチレンオキシドと炭素数3〜4のアルキレンオキシドとの混合物)を圧入し、反応させる。反応終了後、減圧下で未反応アルキレンオキシドを除去し、80℃に冷却し、リン酸、塩酸などの酸を加えて中和し、脱水およびろ過を行い、式(3')
【0018】
【化4】
【0019】
(式中の記号は前記と同様)
で表される化合物を得る。
必要に応じて末端水酸基をアルキル化あるはアシル化するなど、炭化水素基の導入を行って式(3'')
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、R1'は炭素数1〜24の炭化水素基または炭素数1〜24のアシル基を示し、その他の記号は前記と同様)
で表される化合物となる。
例えば、アルキル化反応は、R1で示される炭化水素基を有するアルキルハライド(ハロゲン化アルキル)、アルケニルハライドなどのアルキル化剤を、化合物(3')の水酸基に対して1.1〜3.0倍モル加え、90〜120℃で2〜5時間反応を行い、水洗し、未反応物を除去し、中和、脱水およびろ過を行う。
【0022】
アシル化の反応は、R1で示されるアシル基を有するハロゲン化アシルやカルボン酸無水物などのアシル化剤を化合物(3')の水酸基に対して1.1〜2.0倍モル加え、p−トルエンスルホン酸の存在下、110〜140℃で9時間、脱水縮合反応を行い、吸着剤処理し、脱水およびろ過を行う。
上記したハロゲン化物やカルボン酸無水物中のR1が芳香族炭化水素基である化合物を用いた場合、芳香族炭化水素基が導入される。この場合の反応条件も上記したアルキル化およびアシル化に準じる。
このようにして得た式(4)
【0023】
【化6】
【0024】
(式中の各記号は前記と同様)
で表される化合物に、式(5)
HS−R3−NH2・HCl (5)
(式中、R3は前記と同様)で表される化合物(4)中のアリル基またはメタリル基に対して1.5〜10倍モル加え、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール中で30〜40℃で3〜7時間反応させ、アミノ基の導入を行う。
反応終了後、1NNaOH水溶液でpHを9に調整した後、アルコールを留去し、反応混合物をクロロホルムやジクロロメタンなどの溶媒に溶解し、その後水洗して未反応の化合物(5)を除去する。ついで溶媒を留去したのちろ過を行い、式(1)の化合物を得る。
【0025】
本発明のアミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物は、主にアドレアマイシン、シスプラチンなどの抗癌剤を内包するドラッグデリバリーシステムの一種である脂肪乳剤、リポソームの基材であるリン脂質への化学修飾が考えられる。
ポリオキシアルキレン基で修飾されることにより、脂肪乳剤およびリポソーム自身の安定性を高めるだけでなく、血中滞留時間の延長効果が期待される。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
製造例1
グリセリンモノアリルエーテル66g(0.5モル)と水酸化カリウム1gを5リットル容オートクレーブに仕込み、系内を窒素ガスに置換した後、120℃に昇温した。次いでエチレンオキシド2440g(55モル)を圧入後、130±5℃で1時間反応を行った。次いで、窒素ガスを通じながら減圧下(200mmHg、0.5時間)、未反応のエチレンオキシドを除去し80℃まで冷却した。その後、10重量%塩酸水溶液でpHを7.0に調整し、100±5℃で100mmHg、1時間脱水を行った。次いで反応混合物を80℃に冷却し、析出した塩を濾別して化合物2380gを得た。
得られた化合物の水酸基価は22.4(計算値は23.0)、不飽和度は0.19(計算値は0.2)であった。
なお、水酸基価はJIS K−1557 6.4(1970)の方法に準じて、不飽和度はJIS K−1557 6.7(1970)の方法に準じて測定した。
化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCという。)の分析結果を図2および表1に示す。GPCの分析条件は以下の通りである。
GPCシステム:SYSTEM−11(昭和電工株式会社製)
GPCカラム:SHODEX KF−804L ×3
展開液:THF
流速:1ml/min
サンプル濃度:0.15wt%
カラムオーブン温度:40℃
【0027】
【表1】
【0028】
1H−NMRスペクトルの結果は以下の通りである。
1H−NMR(δ(ppm)、CDCl/TMS)
δ=5.2ppm (C=CH 2 )
δ=5.9ppm (−CH=)
出発原料、反応条件および分析値より、得られた化合物は式(6)
【0029】
【化7】
【0030】
で表される化合物(分子量:5009)と推定した。
【0031】
製造例2
グリセリンモノアリルエーテル66g(0.5モル)と水酸化カリウム0.6gを5リットル容オートクレーブに仕込み、系内を窒素ガスに置換した後、100℃に昇温した。次いでエチレンオキシド1340g(30モル)、プロピレンオキシド110g(2モル)を計量槽に計り取り、均一になるまで混合した。110±5℃、10kg/cm2以下の条件で計量槽よりエチレンオキシドとプロピレンオキシド混合物を8時間かけて圧入した。圧入後、一時間反応を行い、次いで、窒素ガスを通じながら200mmHgの減圧下、30分間で未反応のエチレンオキシドとプロピレンオキシドを除去した後、80℃まで冷却した。その後、10重量%塩酸水溶液でpHを7.0に調整し、100±5℃、100mmHgの条件で1時間脱水を行った。次に80℃に冷却して、析出した塩を濾別して化合物1440gを得た。
【0032】
得られた化合物の水酸基価は36.4(計算値は36.2)、不飽和度は0.30(計算値は0.32)であった。
なお、水酸基価および不飽和度は、製造例1と同様にして測定した。
GPCの分析結果を図3および表2に示す。GPCの分析条件は製造例1とした。
【0033】
【表2】
【0034】
出発原料、反応条件および上記の分析値より得られた化合物は式(7)
【0035】
【化8】
【0036】
で表される化合物(分子量:3082)と推定した。
【0037】
製造例3
製造例2で得られた式(6)の化合物1000g(0.32モル)と水酸化カリウム150gを5リットル容オートクレーブに仕込み、系内を窒素ガスに置換した後、100℃に昇温した。次いでメチルクロリド43.5g(0.84モル)を100±5℃の条件下で仕込んだ。4時間反応後、80℃に冷却し、窒素ガスを通じながら減圧下(200mmHg以下)で0.5時間、未反応のメチルクロリドを除去した。
次いで500gの水を系中に加え撹拌を行った後、静置して分層を行い下層の過剰のアルカリ分を取り除いた。その後、10重量%塩酸水溶液でpHを7.0に調整し、100±5℃、100mmHgの条件で1時間脱水を行った。次に80℃に冷却し、析出した塩を濾別して化合物955gを得た。
得られた化合物の水酸基価は0.04(計算値は0)、不飽和度は0.29(計算値は0.32)であった。
なお、水酸基価および不飽和度は製造例1と同様にして測定した。
GPCの分析結果を図4および表3に示す。GPCの分析条件は製造例1と同じとした。
【0038】
【表3】
【0039】
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(8)
【0040】
【化9】
【0041】
で表される化合物(分子量:3110)と推定した。
【0042】
実施例1
四つ口フラスコに式(5)の化合物としてアミノエタンチオール(HSCH2CH2NH2・HCl)45.4g(0.4モル)を入れ、かき混ぜながら温度を35±5℃に保持した。次いで製造例1で合成した式(6)の化合物500g(0.1モル)をメタノール500gに溶解させ、滴下ロートにより四つ口フラスコに5時間かけて滴下した。全量滴下終了後、さらに40±5℃で5時間保持して反応を続けた。反応後、1NNaOH水溶液でpHを9に調整した。
次に60±10℃、200mmHg以下の減圧下でメタノールを留去したのち、反応混合物をクロロホルム1000gに再び溶解させた。次に全量を分液ロートに移し、飽和食塩水1リットルで3回水洗し、未反応のアミノエタンチオールを除去した。次いで110±10℃、窒素雰囲気下、50mmHg以下の減圧下でクロロホルムおよび水を留去し、析出した食塩をろ過により除去し、化合物(分子量5086)472gを得た。
得られた化合物の一級アミン価は11.3(計算値は11.0)、不飽和度0.01(計算値は0)であった。
【0043】
なお、一級アミン価は塩酸滴定により求めた全アミン価の値より、サリチルアルデヒドとサンプルを反応させた後、塩酸滴定より求めた二級アミン価と三級アミン価の値を差し引いた値である。酸価の測定はJIS K−1557,6.6(1970)の方法に準じて行った。不飽和度は製造例1と同様にして測定した。
赤外線吸収スペクトルを図5に示す。
1H−NMRスペクトルの結果は以下の通りである。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=1.85ppm (−O−CH2CH 2 CH2−S−CH2CH2−NH2)
δ=2.75ppm (−O−CH2CH2CH 2 −S−CH2CH2−NH2)
δ=2.65ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH 2 CH2−NH2)
δ=3.40ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH2CH 2 −NH2)
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(9)
【0044】
【化10】
【0045】
の化合物(分子量:5086)と推定した。
【0046】
実施例2
四つ口フラスコに式(5)の化合物としてアミノメタンチオール(HSCH2NH2・HCl)40.0g(0.4モル)を入れ、かき混ぜながら温度を35±5℃に保持した。次いで製造例1で合成した式(6)の化合物500g(0.1モル)をメタノール500gに溶解させ、滴下ロートにより四つ口フラスコに5時間かけて滴下した。全量滴下終了後、さらに40±5℃で5時間保持して反応を続けた。反応後、1NNaOH水溶液でpHを9に調整した。
次に60±10℃、200mmHg以下の減圧下でメタノールを留去したのち、反応混合物をクロロホルム1000gに再び溶解させた。次に全量を分液ロートに移し、飽和食塩水1リットルで3回水洗し、未反応のアミノエタンチオールを除去した。次いで110±10℃、窒素雰囲気下、50mmHg以下の減圧下でクロロホルムおよび水を留去し、析出した食塩をろ過により除去し、化合物(分子量5074)472gを得た。
得られた化合物の一級アミン価は11.4(計算値は11.0)、不飽和度0.01(計算値は0)であった。
なお、一級アミン価および不飽和度は実施例1と同様にして測定した。
1H−NMRスペクトルの結果は以下の通りである。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=1.85ppm (−O−CH2CH 2 CH2−S−CH2−NH2)
δ=2.75ppm (−O−CH2CH2CH 2 −S−CH2−NH2)
δ=3.74ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH 2 −NH2)
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(10)
【0047】
【化11】
【0048】
の化合物(分子量:5074)と推定した。
【0049】
実施例3
四つ口フラスコに式(5)の化合物としてアミノエタンチオール(HSCH2CH2NH2・HCl)72.6g(0.64モル)を入れ、かき混ぜながら温度を35±5℃に保持した。次いで製造例2で合成した式(7)の化合物500g(0.16モル)をメタノール500gに溶解させ、滴下ロートにより四つ口フラスコに5時間かけて滴下した。全量滴下終了後、さらに40±5℃で5時間保持して反応を続けた。反応後、1NNaOH水溶液でpHを9に調整した。
次に60±10℃、200mmHg以下の減圧下でメタノールを留去したのち、反応混合物をクロロホルム1000gに再び溶解させた。次に全量を分液ロートに移し、飽和食塩水1リットルで3回水洗し、未反応のアミノエタンチオールを除去した。次いで110±10℃、窒素雰囲気下、50mmHg以下の減圧下でクロロホルムおよび水を留去し、析出した食塩をろ過により除去し、化合物(分子量3159)470gを得た。
得られた化合物の一級アミン価は17.9(計算値は17.8)、不飽和度0.02(計算値は0)であった。
なお、一級アミン価および不飽和度は実施例1と同様にして測定した。
1H−NMRスペクトルの結果は以下の通りである。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=1.85ppm (−O−CH2CH 2 CH2−S−CH2CH2−NH2)
δ=2.75ppm (−O−CH2CH2CH 2 −S−CH2CH2−NH2)
δ=2.65ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH 2 CH2−NH2)
δ=3.40ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH2CH 2 −NH2)
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(11)
【0050】
【化12】
【0051】
の化合物(分子量:3159)と推定した。
【0052】
試験例1
油成分として、精製大豆油200g、薬物としてデキサメタゾンパルミテート(以下DPALという。)4g、実施例1で得られた式(9)の化合物でPEG修飾を行った式(12)で示されるジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(以下PEG2−DSPEという。)5g、および卵黄レシチン(以下YPLという。)7gを混合して調整した脂肪乳剤を用い、この脂肪乳剤をラット静脈内に投与し(200mgTG/kg体重)、血しょう中のDPALレベルを液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果を図6に示す。
【0053】
【化13】
【0054】
比較試験例1
試験例1で使用した化合物(12)の代わりに一本鎖のポリエチレングリコールで修飾を行った式(13)で示されるジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(以下、PEG1−DSPEという。)5gを用いたこと以外は試験例1と同様に行った。その結果を図6に示す。
【0055】
【化14】
【0056】
比較試験例2
試験例1で調整された薬物含有脂肪乳剤とPEG2−DSPEを用いず、卵黄レシチン(YPL)12gを用いたこと以外は試験例1と同様に行った。その結果を図6に示す。
図6よりDPALの血しょう中レベルは、PEG2−DSPE>PEG1−DSPE>YPLの順に高い値を維持する結果が得られた。
【0057】
【発明の効果】
本発明の化合物はグリセリンのα、β位にポリオキシアルキレン鎖を持ち、γ位にアミノ基を持つ化合物であり、末端にアミノ基を有することにより、ドラッグデリバリーシステムの一環を担う、脂肪乳剤およびリポソームの成分であるリン脂質と容易に反応することができる。
また、本発明の化合物はリン脂質に修飾を行うことにより、内包したアドレアマイシン、シスプラチンなど制癌剤の免疫原生の向上、安定化のみならず、血中滞留時間の延長効果が発揮でき、毒性も少なく、さらに副生物の生成が少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で得た化合物の赤外吸収スペクトルを示す。
【図2】製造例1で得た化合物のGPCの微分積分分子量分布曲線を示す。
【図3】製造例2で得た化合物のGPCの微分積分分子量分布曲線を示す。
【図4】製造例3で得た化合物のGPCの微分積分分子量分布曲線を示す。
【図5】実施例1で得た化合物の赤外吸収スペクトルを示す。
【図6】試験例1、比較試験例1および2で得た血しょう中のDPALレベルの評価結果を示す。
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