JP3812204B2 - カルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はトリグリセリンの中央にカルボキシル基または活性化されたカルボキシル基を導入したポリオキシアルキレン化合物に関する。さらに詳しくは、ポリペプチド、生理活性蛋白質、酵素などへのポリオキシアルキレン修飾や、リポソーム、ポリマーミセルなどの薬物送達システム(以下ドラッグデリバリーシステムという)におけるポリオキシアルキレン修飾など、主として医薬用途でのポリオキシアルキレン修飾に用いられる末端カルボキシル基を有するポリオキシアルキレン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでポリオキシアルキレングリコールの末端水酸基をカルボキシル基に置換した化合物は、たとえば特公昭63−4877号公報には潤滑油として、あるいは特開昭63−182343号公報には合成樹脂添加剤として記載されており、幅広く利用されている。
近年になり、ポリオキシアルキレン化合物は、ドラッグデリバリーシステムの重要な担体として注目を集めるようになり、ポリオキシアルキレン化合物にアミノ基やカルボキシル基を導入した化合物についても研究が盛んに行われるようになっている。なかでも、2本のポリオキシアルキレン鎖を持つ化合物として、特開平3−72469号公報に示されているトリアジン環を介した2,4−ビス(O−メトキシポリエチレングリコール)−6−クロロ−S−トリアジン(以下「活性化PEG2」という)が知られている。また、ポリオキシアルキレン基の側鎖に多数のカルボキシル基を持つポリオキシアルキレン化合物も知られている(特開平8−48763号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特に、ポリオキシアルキレン化合物にて修飾した化合物ないしは薬剤(例えば、蛋白質、生理活性物質、DNA等)、該修飾を利用するドラッグデリバリーシステムにおいては、▲1▼抗原性(免疫反応性)の低減、▲2▼化合物ないしは薬剤としての安定性の増加、▲3▼体内滞留時間の延長などの効果が得られるとされている。
ところが、これら従来のカルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物は、例えば一本鎖の末端カルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物の場合、これを用いて対象物質を修飾すると、一本鎖であるが故に、ポリオキシアルキレンの持つ抗原性の低減、対象物質の安定化などの性能が十分に発揮できないケースが多々ある。
【0004】
また、前述した活性化PEG2はトリアジン環を持つため、医薬品として体内に投与した場合、毒性が生じる可能性がある。
さらに、ポリオキシアルキレン骨格の側鎖に多数のカルボキシル基を持つものは、反応点が多数あるため修飾反応を制御するのが難しく、単一の化合物を得ることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、化合物ないしは薬剤の抗原性の低減、安定化、体内(血中)滞留時間の延長などの目的をもって、化合物ないしは薬剤を修飾するために使用され、しかも修飾された化合物ないしは薬剤は毒性が少なく、さらに副生物の生成が少ないカルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トリグリセリンの中央の水酸基にカルボキシル基およびN−ヒドロキシコハク酸イミドまたはp−ニトロフェノールで活性化したカルボキシル基を導入したポリオキシアルキレン化合物が、上記した目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、式(1)で示されるカルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物である。
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基または炭素数1〜24のアシル基、R2は炭素数3または4の炭化水素基、R3は炭素数1〜10の炭化水素基、AOは炭素数3または4のオキシアルキレン基、Yは水素原子、式(2)あるいは式(3)で示される活性基を示し、nはオキシエチレン基の平均付加モル数で1〜1000であり、mは炭素数3または4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で0〜250であり、n/(n+m)は0.8以上であり、オキシエチレン基と炭素数3または4のオキシアルキレン基の付加状態はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
【発明の実施の形態】
式(1)において、R1で示される炭素数1〜24の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、オクチルドデシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、デシルテトラデシル基などの直鎖または分岐状のアルキル基、芳香族炭化水素基として、ブチルフェニル基、ジブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ジノニルフェニル基およびα−メチルベンジルフェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、およびクレジル基などが挙げられる。
【0012】
また、炭素数1〜24のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、没食子酸などに由来するアシル基が挙げられる。
これらのなかでも、R1としては、水素原子および炭素数1〜4の直鎖のアルキル基が好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。なお、式(1)中にはR1が4つ存在するが、これらは同一または異なっていてもよい。
【0013】
R2で示される炭素数3または4の炭化水素基としては、重合性不飽和基をもつ炭化水素基に由来する基、好ましくはアリル基、メタリル基など二重結合をもつ炭化水素基に由来する基、トリメチレン基、ブチレン基等の直鎖または分岐状のアルキレン基などが挙げられる。
【0014】
R3で示される炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびトリメチレン基などの直鎖または分岐状のアルキレン基、フェニレン基および式(4)で示される2価の芳香族炭化水素基が挙げられ、メチレン基およびエチレン基が好ましい。
【0015】
【化7】
【0016】
AOで示される炭素数3または4のオキシアルキレン基のアルキレン部分は、直鎖または分岐状のいずれでもよく、このようなオキシアルキレン基として、たとえば、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。
【0017】
Yは水素原子、式(2)または式(3)で示される活性基であるが、対象物質との反応性の点から式(2)および式(3)で示される活性基が好ましい。
nはオキシエチレン基の平均付加モル数で1〜1000であり、mは炭素数3または4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で0〜250であり、n/(n+m)は0.8以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上である。
オキシエチレン基と炭素数3または4のオキシアルキレン基の付加状態はブロック状でもランダム状でもよい。
【0018】
式(1)で示される本発明のカルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、式(5)
【0019】
【化8】
【0020】
(式中、R2'は重合性不飽和基をもつ炭化水素基、好ましくはアリル基あるいはメタリル基などの炭素数3または4の二重結合含有アルキル基を示す。)
で示される化合物に、エチレンオキシド単独、あるいはエチレンオキシドおよび炭素数3または4のアルキレンオキシドとを付加させる。この際、式(5)で示される化合物にエチレンオキシドを付加させた後、炭素数3または4のアルキレンオキシドを付加させてもよいし、エチレンオキシドと炭素数3または4のアルキレンオキシドとを混合して一度に付加反応を行ってもよい。エチレンオキシドと炭素数3または4のアルキレンオキシドの付加モル数の比率は、修飾化時に修飾率が低下する恐れがあるので、オキシエチレン基が80%以上となるようにする。
【0021】
具体的には、まず式(5)で示される化合物を反応釜に仕込み、窒素置換を行い、100〜140℃でエチレンオキシド単独、あるいはエチレンオキシドと炭素数3または4のアルキレンオキシドとの混合物であるアルキレンオキシドを圧入し、反応させる。反応終了後、減圧下で未反応アルキレンオキシドを除去し、80℃に冷却し、リン酸、塩酸などの酸を加え中和し、脱水および濾過を行い、式(6')
【0022】
【化9】
【0023】
(式中の記号は前記と同義)
で示される化合物を得る。
必要に応じて末端水酸基をアルキル化あるいはアシル化するなど、炭化水素基の導入を行って、式(6'')
【0024】
【化10】
【0025】
(式中、R1'は炭素数1〜24の炭化水素基または炭素数1〜24のアシル基を示し、その他の記号は前記と同義)
で示される化合物となる。
例えば、アルキル化反応は、R1で示される炭化水素基を有するアルキルハライド(ハロゲン化アルキル)、アルケニルハライドなどのアルキル化剤を、化合物(6')の水酸基に対して1.1〜3.0倍モル加え、90〜120℃で2〜5時間反応を行い、水洗し、未反応物を除去し、中和、脱水および濾過を行う。アシル化の反応は、R1で示されるアシル基を有するハロゲン化アシルやカルボン酸無水物などのアシル化剤を、式(6')で示される化合物の水酸基に対して1.1〜2.0倍モル加え、p−トルエンスルホン酸存在下、110〜140℃で9時間、脱水縮合反応を行い、吸着剤処理し、脱水、濾過する。
【0026】
上記のハロゲン化物やカルボン酸無水物中のR1が芳香族炭化水素基である化合物を用いた場合、芳香族炭化水素基が導入される。この場合の反応条件も上記したアルキル化およびアシル化に準じる。
このようにして得た式(6)
【0027】
【化11】
【0028】
(式中の各記号は前記と同義)
で示される化合物に、式(7)
HS−R3−COOH (7)
(式中R3は前記と同義)
で示される化合物を、式(6)で示される化合物中のアリル基またはメタリル基に対して1.5〜10倍モル加え、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール中で30〜40℃で3〜7時間反応させ、カルボキシル基の導入を行う。
反応終了後、アルコールを留去し、反応混合物をクロロホルムやジクロロメタンなどの溶媒に溶解し、その後水洗して未反応の式(7)で示される化合物を除去する。ついで溶媒を留去し、濾過し、式(1)で示される化合物(ただし、式中のYは水素原子)を得る。
【0029】
その後、例えばジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンなどの溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド存在下で、N−ヒドロキシコハク酸イミドまたはp−ニトロフェノールを30〜40℃で反応させ、濾過後、イソプロピルアルコールやヘキサンで晶析を行うことによって、カルボキシル基が活性化された式(1)(ただし、式中のYは式(2)または(3)で示される活性基)の化合物となる。
【0030】
本発明のカルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物は、例えば(1)抗腫瘍蛋白質であるアスパラギナーゼ、アルギナーゼなどに対する修飾、(2)代謝異常酵素であるアデノシンデアミナーゼ、インスリン、ウリカーゼなどに対する修飾、(3)抗原蛋白質である免疫グロブリン、血清アルブミンなどに対する修飾、(4)抗炎症酵素であるカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼなどに対する修飾、(5)血液成分蛋白質であるアルブミン、顆粒球コロニー刺激因子などに対する修飾に使用することが考えられる。
【0031】
また、ドラッグデリバリーシステムへの利用としては、制癌剤であるアドリアマイシン、シスプラチンなどを内包するリポソームの基材であるリン脂質への化学修飾などが考えられる。
いずれも、ポリオキシアルキレン基で修飾されることにより、免疫原性の向上、薬物の安定化、血中滞留時間の延長などの効果が期待される。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
製造例1
トリグリセリルモノアリルエーテル140g(0.5モル)と水酸化カリウム1gを5リットル容オートクレーブに仕込み、系内を窒素ガスに置換した後、120℃に昇温した。次いでエチレンオキシド2360g(54モル)を圧入後、130±5℃で1時間反応を行った。次いで、窒素ガスを通じながら減圧下(200mmHg、0.5時間)で未反応のエチレンオキシドを除去し、80℃まで冷却した。その後、10重量%塩酸水溶液でpHを7.0に調整し、100±5℃で100mmHg、1時間脱水を行った。次いで反応混合物を80℃に冷却し、析出した塩を濾別して化合物2410gを得た。
得られた化合物の水酸基価は、45.2(計算値は44.9)、不飽和度は0.19(計算値は0.2)であった。
なお、水酸基価は、JIS K−1557 6.4(1970)の方法に準じて、不飽和度は、JIS K−1557 6.7(1970)の方法に準じて測定した。
化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
1H−NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=5.2ppm (C=CH 2 )
δ=5.9ppm (−CH=)
出発原料、反応条件及び上記の分析値より、得られた化合物は式(8)
【0033】
【化12】
【0034】
で示される化合物(平均分子量:4965)と推定した。
【0035】
製造例2
トリグリセリルモノアリルエーテル140g(0.5モル)と水酸化カリウム0.6gを5リットル容オートクレーブに仕込み、系内を窒素ガスに置換した後、100℃に昇温した。次いでエチレンオキシド1320g(30モル)、プロピレンオキシド116g(2モル)を計量槽に計り取り、均一になるまで混合した。
110±5℃、10kg/cm2以下の条件で計量槽よりエチレンオキシドとプロピレンオキシド混合物を8時間かけて圧入した。圧入後、1時間反応を行い、次いで、窒素ガスを通じながら200mmHgの減圧下、30分間で未反応のエチレンオキシドとプロピレンオキシドを除去した後、80℃まで冷却した。その後、10重量%塩酸水溶液でpHを7.0に調整し、100±5℃、100mmHgの条件で1時間脱水を行った。次に80℃に冷却して、析出した塩を濾別して化合物1505gを得た。
得られた化合物の水酸基価は72.0(計算値は71.2)、不飽和度は0.30(計算値は0.32)であった。
なお、水酸基価および不飽和度は、製造例1と同様にして測定した。
出発原料、反応条件及び上記の分析値より、得られた化合物は式(9)
【0036】
【化13】
【0037】
で示される化合物(平均分子量:3117)と推定した。
【0038】
製造例3
製造例2で得られた式(9)の化合物1000g(0.32モル)と水酸化カリウム150gを、5リットル容オートクレーブに仕込み、系内を窒素ガスに置換した後、100℃に昇温した。次いでメチルクロリド87.0g(1.68モル)を100±5℃の条件下で仕込んだ。4時間反応後、80℃に冷却し、窒素ガスを通じながら減圧下(200mmHg以下)で0.5時間、未反応のメチルクロリドを除去した。
次いで500gの水を系中に加え撹拌を行った後、静置して分層を行い下層の過剰のアルカリ分を取り除いた。その後、10重量%塩酸水溶液でpHを7.0に調整し、100±5℃、100mmHgの条件で1時間脱水を行った。次に80℃に冷却し、析出した塩を濾別して化合物947gを得た。
得られた化合物の水酸基価は0.07(計算値は0)、不飽和度は0.28(計算値は0.32)であった。
なお、水酸基価および不飽和度は製造例1と同様にして測定した。
出発原料、反応条件及び上記の分析値より、得られた化合物は式(10)
【0039】
【化14】
【0040】
で示される化合物(平均分子量:3173)と推定した。
【0041】
実施例1
四つ口フラスコに式(7)の化合物としてメルカプト酢酸(HSCH2COOH)37g(0.4モル)を入れ、攪拌しながら温度を35±5℃に保持した。次いで製造例1で合成した式(8)の化合物500g(0.1モル)をメタノール500gに溶解させ、滴下ロートにより四つ口フラスコに5時間かけて滴下した。全量滴下終了後、更に40±5℃で5時間保持して反応を続けた。
次に60±10℃、200mmHg以下の減圧下でメタノールを留去したのち、反応混合物をクロロホルム1000gに再び溶解させた。次に全量を分液ロートに移し、飽和食塩水1リットルで3回水洗し、未反応のメルカプト酢酸を除去した。次いで110±10℃、窒素雰囲気下、50mmHg以下の減圧下でクロロホルムおよび水を留去し、析出した食塩を濾過により除去し、化合物(分子量:5045)470gを得た。
得られた化合物の酸価は11.5(計算値は11.1)、不飽和度0.02(計算値は0)であった。
なお、酸価はJIS K−1557,6.6(1970)の方法に準じて測定し、不飽和度は製造例1と同様にして測定した。
赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
1H−NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=1.85ppm (−O−CH2CH 2 CH2−S−CH2−COOH)
δ=2.75ppm (−O−CH2CH2CH 2 −S−CH2−COOH)
δ=3.2ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH 2 −COOH)
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(11)
【0042】
【化15】
【0043】
で示される化合物と推定した。
【0044】
実施例2
四つ口フラスコに式(7)の化合物としてメルカプト酢酸(HSCH2COOH)59g(0.64モル)を入れ、かき混ぜながら温度を35±5℃に保持した。次いで製造例3で合成した式(10)の化合物500g(0.16モル)をメタノール500gに溶解させ、滴下ロートにより四つ口フラスコに5時間かけて滴下した。全量滴下終了後、更に40±5℃で5時間保持して反応を続けた。次に60±10℃、200mmHg以下の減圧下でメタノールを留去したのち、クロロホルム1000gに再び溶解させた。次に全量を分液ロートに移し、飽和食塩水1リットルで3回水洗し、未反応のメルカプト酢酸を除去した。次いで110±10℃、窒素雰囲気下、50mmHg以下の減圧下でクロロホルムおよび水を留去し、析出した食塩を濾過により除去し、化合物(分子量:3253)468gを得た。
得られた化合物の酸価は17.7(計算値は17.2)、不飽和度0.03(計算値は0)であった。
1H−NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=1.85ppm (−O−CH2CH 2 CH2−S−CH2−COOH)
δ=2.75ppm (−O−CH2CH2CH 2 −S−CH2−COOH)
δ=3.2ppm (−O−CH2CH2CH2−S−CH 2 −COOH)
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(12)
【0045】
【化16】
【0046】
で示される化合物と推定した。
【0047】
実施例3
四つ口フラスコに式(7)の化合物として3−メルカプトプロピオン酸(HSCH2CH2COOH)42g(0.4モル)を入れ、攪拌しながら温度を35±5℃に保持した。次いで製造例1で合成した式(8)の化合物500g(0.1モル)をメタノール500gに溶解させ、滴下ロートにより四つ口フラスコに5時間かけて滴下した。全量滴下後、更に40±5℃で5時間保持して反応を続けた。
次に60±10℃、200mmHg以下の減圧下でメタノールを留去したのち、クロロホルム1000gに再び溶解させた。次に全量を分液ロートに移し、飽和食塩水1リットルで3回水洗し、未反応の3−メルカプトプロピオン酸を除去した。次いで110±10℃、窒素雰囲気下、50mmHg以下の減圧下でクロロホルムおよび水を留去し、析出した食塩を濾過により除去し、化合物(分子量:5059)481gを得た。
得られた化合物の酸価は11.4(計算値は11.1)、不飽和度0.02(計算値は0)であった。
1H−NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
δ=1.85ppm(−O−CH2CH 2 CH2−S−CH2CH2−COOH)
δ=2.75ppm(−O−CH2CH2CH 2 −S−CH2CH2−COOH)
δ=2.85ppm(−O−CH2CH2CH2−S−CH 2 CH2−COOH)
δ=2.81ppm(−O−CH2CH2CH2−S−CH2CH 2 −COOH)
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(13)
【0048】
【化17】
【0049】
で示される化合物と推定した。
実施例4
四つ口フラスコに実施例1で得られた式(11)の化合物300g(0.06モル)とジメチルホルムアミド450gを入れ、かき混ぜながら温度を50℃まで昇温し溶解した。次いで温度を35±5℃まで冷却し、窒素雰囲気下でN−ヒドロキシコハク酸イミド8.3g(0.07モル)、ジシクロヘキシルキシルカルボジイミド14.7g(0.07モル)を加え2時間反応を行った。
反応終了後、加圧濾過を行い得られた溶液に、−10℃に冷却したイソプロピルアルコール5リットルを加え、0.5時間、室温で撹拌を行い、ポリオキシアルキレン化合物の結晶を析出させた。得られた結晶を減圧濾過により分取した後、再び−10℃に冷却した後に、イソプロピルアルコール5リットルを加え、0.5時間洗浄を行った。減圧濾過により再び結晶を取り出した後、ヘキサン10リットルを加え洗浄を行った。
最後に得られた結晶を真空乾燥機を使用して35℃、50mmHg以下で4時間真空乾燥を行い、化合物(分子量:5162)253gを得た。
赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
1H−NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H−NMR(δ(ppm),CDCl/TMS)
【0050】
【化18】
【0051】
出発原料、反応条件および上記の分析値より、得られた化合物は式(14)
【0052】
【化19】
【0053】
で示される化合物と推定した。
同様に、前記のN−ヒドロキシコハク酸イミドの代わりにp−ニトロフェノールを反応させて、式(3)で示される活性基をもつ化合物を得た。
【0054】
試験例1
L−アスパラギナーゼ10mgを含む0.1Mホウ酸緩衝液(pH10)2mlに、実施例4で得られた式(14)の化合物をアスパラギナーゼ分子中のアミノ基に対して15倍モル比加え、37℃で1時間反応させた。常法により精製し、白色粉末の修飾アスパラギナーゼを得た。分子量は40万であり、アミノ基の分析の結果、50個が結合していたので、付加部分の分子量50×5162=約25.8万とアスパラギナーゼの分子量13.4万との合計値とほぼ一致した。このものは抗体との結合能は完全に消失しているが、酵素活性はA法で35%、B法で40%保持していた。これらの結果を表1に示す。
なお、アスパラギナーゼ分子中の結合したアミノ基の数の測定は、トリニトロベンゼンスルホン酸を用いて測定を行った。
また、酵素活性の測定は、L−グルタミン酸−オキザロ酢酸トランスアミナーゼを用い、リンゴ酸の生成に伴うNAD+の変化量を分光学的に測定する方法(A法)及びアスパラギン酸とヒドロキシアミン共存下における同酵素によるアスパラギン酸ヒドロキサメートの生成を塩化第二鉄による発色させる方法(B法)により測定した。
更に抗原性の測定は、ウサギをL−アスパラギナーゼで免役した杭血清を用い、抗原−抗体反応により生ずる沈澱量を測定する方法により行い、抗体との結合能(抗原性)を測定した。
【0055】
比較試験例1
L−アスパラギナーゼ10mgを含む0.1Mホウ酸緩衝液(pH10)2mlに式(15)
【0056】
【化20】
【0057】
の化合物をアスパラギナーゼ分子中のアミノ基に対して11倍モル比加え、37℃で1時間反応させた。常法により精製し、白色粉末の修飾アスパラギナーゼを得た。分子量は42万であり、アミノ基の分析結果、54個が結合していたので、付加部分の分子量54×5200=約28万とアスパラギナーゼの分子量13.4万との合計値とほぼ一致した。そして、このものは抗体との結合能は35%になった。酵素活性はA法で15%、B法で22%保持していた。これらの結果を表1に示す。
なお、アスパラギナーゼ分子中の結合したアミノ基の数の測定は、トリニトロベンゼンスルホン酸を用いて測定を行った。
また、酵素活性の測定は、L−グルタミン酸−オキザロ酢酸トランスアミナーゼを用い、リンゴ酸の生成に伴うNAD+の変化量を分光学的に測定する方法(A法)及びアスパラギン酸とヒドロキシアミン共存下における同酵素によるアスパラギン酸ヒドロキサメートの生成を塩化第二鉄による発色させる方法(B法)により測定した。
更に抗原性の測定は、ウサギをL−アスパラギナーゼで免役した杭血清を用い、抗原−抗体反応により生ずる沈澱量を測定する方法により行い、抗体との結合能(抗原性)を測定した。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
本発明の化合物はトリグリセリンの中央の水酸基にカルボキシル基あるいは活性化されたカルボキシル基を有するため、ポリペプチド、生理活性蛋白質、酵素等のアミノ基や水酸基と容易に反応することができ、かつ4本のポリオキシアルキレン鎖によって、当該物質の抗原性の低減、安定化、体内(血中)滞留時間の延長等の性能が発揮でき、毒性も少なく、さらに副生物の生成が少ないカルボキシル基含有ポリオキシアルキレン化合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で得た化合物の赤外吸収スペクトルを示す。
【図2】実施例1で得た化合物の赤外吸収スペクトルを示す。
【図3】実施例4で得た化合物の赤外吸収スペクトルを示す。
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