JP4054529B2 - 内燃エンジンの燃料噴射制御方法 - Google Patents
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Description
本発明は、少なくとも触媒排気ポットに連結された内燃エンジンに関し、特にこのようなエンジンの燃料噴射制御方法に関する。
【0002】
エンジンに噴射する燃料量を、排気ガスの組成、特に排気ガスの酸素濃度と関連して補正する装置の使用は公知である。このため、酸素濃度は、ラムダセンサ(sonde lambda)またはEGOセンサと呼ばれる公知の非線形センサで測定される(EGOは、排気ガス酸素(Exhaust Gas Oxygen)の英語呼称である。)。このようなセンサは、排気ガスを処理する触媒排気ポットの上流に配置され、センサから供給される信号は、少なくとも反作用ループを介在させることによって、エンジンのシリンダに噴射される燃料量の補正に用いられる。
【0003】
「単純空燃比ループ」と呼ばれる方法は、触媒ポットの上流に設置された1個のラムダセンサから発生されるリッチまたはリーンの情報に基づいている。このループは、一般に比例−積分型の補正回路を用い、必要に応じて「リッチ−リーン」の跳躍と「リーン−リッチ」の跳躍との間の比例項の非対称化(dissymetrisation)によって補正する。
【0004】
また、それぞれ触媒排気ポットの上流と下流に設置された2個のラムダセンサから発生される情報に基づく、「二重空燃比ループ」と呼ばれる方法も考えられる。上流のセンサと、上流ループと呼ばれる上流のセンサによる補正は、単純空燃比ループのモデル上で、空燃比の移行における迅速な反応を可能にする。下流のセンサは、よりフィルタされているが、より正確で、触媒の効果をよりよく表している情報を供給する。従って、下流のセンサから発生される電圧は、上流のセンサによって導入された補正に重畳される遅延補正の形成に使用され、上流ループの調整の平均空燃比にバイヤスをかけることを可能にする。
【0005】
フランス国出願第2 740176号明細書には、このような空燃比ループの実施の形態が記載されている。
【0006】
一般に、汚染物質の存在をなくす触媒の最適効果は、触媒ポットの中に蓄えられる酸素の量が平衡状態に達したときに確保される。触媒ポットへ流入するガスの酸素濃度を増加または減少させることによって、このような触媒ポットの中に蓄えられる酸素の量を調整することができる。下流のセンサは、この平衡状態に到達したか否かを指示することを可能にし、平衡状態に到達していない場合には、燃焼室内の空気・燃料混合物をリッチまたはリーンにする必要がある。
【0007】
必要な空燃比の補正が微小な場合には、この空燃比の補正を実行する前に二重空燃比ループが起動され、触媒ポットの中に蓄えられる酸素の量を所望のレベルに戻す。
【0008】
それに反して、触媒ポットの中に蓄えられる酸素の量が平衡状態の量から程遠く、空燃比の補正が非常に重要である場合には、現在知られているタイプの二重空燃比ループは、この空燃比補正を急速に適用するのに充分な力を有していない。実際、この二重空燃比ループは、いずれにしても化学量論的状態に近い状態に留まるところの、上流の空燃比の制御の平均空燃比の修正を可能にする遅延補正ではありえない。このような状態が、触媒について「過渡的な」ときには、上流ループのこの純粋な単純補正はもはや充分でない。有効性が不十分になるのみならず、そのうえ、空燃比の制御における不安定が付随するところの、積分項の「ドリフト」に陥りやすい。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決することを目的とする。
【0010】
本発明の目的は、特に燃料噴射の遮断からの復帰時またはフル負荷による燃料富化時において重要な空燃比の補正を確保することにある。
【0011】
また本発明は、空燃比制御の開始後に、触媒ポットの状態と燃料噴射量を補正する種々の項とが、迅速に安定状態に達することを目的とする。従って、これは、触媒ポットまたは酸素センサの種々の診断方法の活用を可能にする。
【0012】
このため、本発明は、内燃エンジンに少なくとも触媒排気ポットが連結されており、上記触媒排気ポットの上流に、上記触媒排気ポットに流入するエンジンの排気ガスの組成の成分を示す第1の信号の発生に適した第1のセンサが配置され、上記触媒排気ポットの下流に、上記触媒排気ポットから流出するエンジンの排気ガスの組成の成分を示す第2の信号の発生に適した第2のセンサが配置された、上記内燃エンジンの燃料噴射制御方法を提案する。上記第1の信号と上記第2の信号から、燃料噴射量を補正する補正値を定める。
【0013】
本発明の一般的な1つの特徴によれば、上記第1のセンサの上記第1の信号を、上記第1のセンサがリッチ状態にあるかリーン状態にあるかが決定されるように、燃焼室に存在する空気・燃料混合物の、略1に等しい空燃比に相当する、予め定められた参照値と比較する。上記第1の信号が、上記予め定められた参照値を超える場合には、上記第1のセンサはリッチ状態にあり、逆の場合にはリーン状態にある。他方では、上記第2の信号を、上記燃料混合物の空燃比の1に隣接する範囲を定義する、予め定めた上限値及び予め定めた下限値と比較する。そこで、上記第2のセンサについての、3つの状態、すなわちリッチ状態(上記第2の信号が上記上限値を超える)、リーン状態(上記第2の信号が上記下限値を下回る)、化学量論的状態(上記第2の信号が上記上限値と上記下限値の間にある)、を決定する。
【0014】
上記第2のセンサが化学量論的状態にある場合には、上記第1の信号と上記第2の信号とを用いて上記補正値を決定する。上記第1のセンサと上記第2のセンサがともにリッチ状態にあるかともにリーン状態にある場合には、上記第1の信号のみを用いて上記補正値を決定する。また、上記第1のセンサと上記第2のセンサがそれぞれリッチ状態とリーン状態、またはリーン状態とリッチ状態にある場合には、上記第2の信号のみを用いて上記補正値を決定する。
【0015】
換言すれば、本発明の本質的な特徴は、上記下流のセンサから発生される情報に大きな重要性を与えることにある。
【0016】
例えば、燃料噴射の遮断からの復帰時には、触媒排気ポットは酸素飽和状態になる。そこで、下流のセンサから発生される電圧は、燃料がリーンである空気・燃料混合物に相当する微小な値になる。この状態で、上流のセンサも同様に空気・燃料混合物がリーンであることを示す信号を供給するなら、空燃比ループは、上流のセンサによって発生される信号から、例えば比例−積分型の補正を用いて、空気・燃料混合物を当然富化する。反対に、上流のセンサが空気・燃料混合物がリッチであることを示していても、触媒の酸素が十分に一掃され、下流のセンサの電圧が化学量論的領域の下限を示す敷居値まで再び高くなるまで、例えば比例−積分型の補正を用いて、下流のセンサによって発生される信号から、やはり空気・燃料混合物の富化を継続する。次いで、始めて、従来技術において記載した二重空燃比ループのドリフトと不安定とを回避しながら、二重空燃比ループが始動される。
【0017】
換言すれば、本発明によれば、下流のセンサによる補正は、下流のセンサがエンジンの作用によって化学量論的状態にない状態になっている場合にのみ実施される。
【0018】
上記下限値を上記第2のセンサが上記化学量論的状態とリーン状態との間を通過する方向によって異なる値に選定することは特に有利である。実際には、上記第2のセンサが、リーン状態から化学量論的状態へ通過する場合には上記下限値を高めに選定し、化学量論的状態からリーン状態へ通過する場合には上記下限値を低めに選定する。化学量論的状態からリーン状態へ通過する場合の、上記下限値をより低く選定(例えば150mV)すると、逆方向の通過の頻度が少なくなり、空燃比ループが過度的な不安定に影響されにくくなる。
【0019】
リーン状態から化学量論的状態への通過は、例えば、長時間の燃料噴射の遮断の後の復帰に相当する。上記下限値をより高く(たとえば350mVに)選定すると、エンジン出力の保証水準へのより急速な復帰が可能になる。
【0020】
同様に、上記上限値を上記第2のセンサが上記化学量論的状態とリッチ状態との間を通過する方向によって異なる値に選定することは特に有利である。有利には、特にフル負荷時の燃料濃度からの復帰に相当する、リッチ状態から化学量論的状態への通過の場合は、750mVのオーダの上限値を選定する。
【0021】
本発明の内燃エンジンの燃料噴射制御方法の1つの実施の形態によれば、上記第1の信号を用いる補正段階においては、第1の比例利得と第1の積分利得とを有する比例−積分型の第1の補正手段を用いて上記補正値を決定する。上記第2の信号のみを用いる補正段階においては、第2の比例利得と第2の積分利得とを有する比例−積分型の第2の補正手段を用いて上記補正値を決定する。また、上記第1の信号と上記第2の信号とを用いる補正段階においては、上記第1の補正手段と、第3の比例利得と第3の積分利得とを有し、上記第2の信号とエンジンの動作点に依存する指示信号との差を入力として受ける比例−積分型の第3の補正手段とを用いて上記補正値を決定する。
【0022】
この第3の補正は、例えば、上記第1の補正手段の上記第1の比例利得への、上記第3の補正手段から発生される補正項の付加を含む。有利には、上記第1の信号を用いる上記補正段階から離れる各回ごとに、上記第3の補正手段の上記第3の積分項をゼロに戻す。これは、上記補正項の値をゼロに戻すことを可能にする。
【0023】
上記第1の比例利得と上記第2の比例利得とを等しくすることが望ましい。同様に、上記第1の積分利得と上記第2の積分利得とを等しくすることが望ましい。何故なら、第1の比例利得と第1の積分利得は、一般に、自動車に使用したときの運転性と快適性とについて実証済みのものであるからである。上記第1の比例利得と上記第2の比例利得とを等しくし、上記第1の積分利得と上記第2の積分利得とを等しくすると、追加の較正が避けられる。
【0024】
実施の形態の変形として、上記第2の積分利得をゼロにする。これは、特に下流のセンサ(第2のセンサ)がリーン状態にあり、上流のセンサ(第1のセンサ)がリッチ状態にある時に、噴射燃料量の補正値における変動を特に制限する。
【0025】
本発明の内燃エンジンの燃料噴射制御方法の1つの実施の形態によれば、上記第2の信号のみを用いる上記補正段階においては、時間経過の各瞬間に、上記第2の積分利得と、上記時間経過の各瞬間と上記補正段階の開始の瞬間との間の経過時間との積に等しい、その時点の積分値を計算する。そこで、上記その時点の積分値を、予め定めた最小値及び最大値と比較する。上記その時点の積分値が、上記最小値または上記最大値に到達した場合には、上記積分値をこの到達した値、すなわち上記最小値または上記最大値に固定する。また、上記第2の信号のみを用いる上記補正段階から上記第1の信号のみを用いる上記補正段階へ移行する際に、先に決定された上記補正値から上記積分値を差し引く。
【0026】
これは、噴射燃料量の補正値の変動の制限を可能にする。
【0027】
上記第2の信号のみを用いる上記補正段階から離れる各回ごとに、上記積分値をゼロに戻してもよく、上記第2のセンサが化学量論的状態へ移行したときには、上記積分値をゼロに戻すことが望ましい。こうすれば、特に上流のセンサから発生されるノイズの変動に起因する、上流のセンサから発生される第1の信号の変動に影響されにくくなる。
【0028】
本発明の、その他の利点及び特徴は、本発明を限定するものではない実施の形態の詳細な説明と添付図面を検討することにより明らかとなるであろう。
【0029】
図1は、本発明の内燃エンジンの燃料噴射制御方法の実行を可能にする空燃比制御装置の概要を示す図である。
【0030】
図2及び図3は、上流のセンサと下流のセンサの、空燃比対電圧の特性を示す図である。
【0031】
図4a〜dは、燃料噴射量の補正値と、積分値と、上流のセンサと下流のセンサによって発生される2つの測定値の時間的変化を示す図である。
【0032】
図1において、CLCは、一般に自動車に搭載され、エンジンMOTにおける燃料噴射量QYを指示する電子計算機を示す。このエンジンの排気ガスは触媒型の排気ポットである触媒排気ポットCATによって濾過され、大気中へ排出される。第1のセンサ(上流のセンサ)SD1は、触媒排気ポットCATの入口に設置され、通常は酸素を含む排気ガスの主要成分の濃度を測定する。このセンサは非線形型で、通常ラムダセンサまたはEGOセンサと呼ばれている。
【0033】
第1のセンサSD1に類似の第2のセンサ(下流のセンサ)SD2は、触媒排気ポットCATの出口に設置され、同様に通常は酸素を含む排気ガスの主要成分の濃度を測定する。
【0034】
電子計算機CLCは、エンジンの動作点(回転数Rgと負荷Ch)との関連で燃料噴射量を定める公知のオープンループの制御手段MCBOを含む。このオープンループの制御手段MCBOから供給される燃料噴射量へ、第1のセンサSD1と第2のセンサSD2からそれぞれ発生される測定信号である第1の信号V1と第2の信号V2とを用いる空燃比ループから発生される補正値KCLが乗算される。以下に、実際に3つの反作用ループ、すなわち第1の反作用ループB1、第2の反作用ループB2、第3の反作用ループB3からなるこの空燃比ループについてより詳細に説明する。
【0035】
図1に示す電子計算機CLCの一部であるオープンループの制御手段MCBOは、例えばこの電子計算機CLCの中心部におけるソフトウエアとして作製される。
【0036】
上流のセンサSD1は、第1の信号V1(端子における電圧)を発生し、第1の信号V1は、第1の比較回路CMP1へ印加される。第1の信号V1は、第1の比較回路CMP1において、センサの特性に依存し、化学量論状態が満たされるときのセンサの電圧に相当する参照値である転換値Vbと比較される。この転換値Vbは、典型的には450mVのオーダである。
【0037】
第1の信号V1が転換値Vbの上に位置するか下に位置するかによって、上流のセンサSD1が「リッチ」状態または「リーン」状態にあると定義する(図2)。
【0038】
同様に、下流のセンサ(第2のセンサ)SD2は、第2の信号V2を発生し、第2の信号V2は、第2の比較回路CMP2へ印加される。第2の信号V2は、第2の比較回路CMP2において、上限値VS2および下限値VS1と比較される。この上限値VS2と下限値VS1は、典型的には600mVのオーダである下流のセンサの転換値の両側に位置する。第2の信号V2が上限値VS2を超える場合には、下流のセンサSD2はリッチの状態にあるといい、下限値VS1を下回る場合には、下流のセンサSD2はリーンの状態にあるという。第2の信号V2が上限値VS2と下限値VS1の間に含まれる場合には、下流のセンサSD2は、化学量論的と呼ばれる3番目の状態にある(図3)。
【0039】
上限値VS2の値は、例えば750mVであり、一方下限値VS1の値は、下流のセンサSD2のリーン状態と化学量論的状態との間の通過方向によって、例えば350mVまたは150mVである。
【0040】
どのセンサについても、リッチ状態(またはリーン状態)は、センサの観点から、燃料がリッチ状態(またはリーン状態)にあることを意味する。
【0041】
第1の反作用ループ(上流ループ)B1は、古典的に、周知の比例−積分型の、第1の補正手段COR1からなる。第1の補正手段COR1は、比例利得Kp1と積分利得Ki1とを有する。
【0042】
第1の比較回路CMP1の出力端は、第1の補正手段COR1の入力端へ、転換値Vbに対する測定電気信号V1の位置に応じて1または−1の値を持つ第1のバイナリ信号SGN1を伝達する。
【0043】
第1の補正手段COR1の出力端は、第1の補正信号KCL1を発生する。
【0044】
後でより詳細に説明する、第2の制御信号SC2によって制御される第2の開閉器I2によって図式的に示される特定の動作状態においては、第1の補正手段COR1の比例項+Kp1または−Kp1へ、周知の比例−積分型の、比例利得Kp3と積分利得Ki3とを有する、第3の補正手段COR3によって供給される補正項OFSを加える。第3の補正手段COR3の入力は、下流のセンサSD2から発生される第2の信号V2と、エンジンの動作点(回転数Rgと負荷Ch)に応じてメモリ表TABから供給される指示信号である保証電圧Vacとの差から形成される。
【0045】
この第3の反作用ループB3が活性化されたときには、第1の反作用ループ(上流ループ)B1とともに、2重空燃比ループを形成する。
【0046】
第2の反作用ループ(下流ループ)B2は、第2の比較回路CMP2と、比例利得Kp2と積分利得Ki2とを有する比例−積分型の第2の補正手段COR2とからなる。周知のこの第2の補正手段COR2は、第2の比較回路CMP2の出力である第2のバイナリ信号SGN2を入力として受ける。この第2のバイナリ信号SGN2は、第2のセンサがリッチ状態にあるか、化学量論的状態にあるか、あるいはリーン状態にあるかに応じて、+1、0、−1の値をとる。
【0047】
また、電子計算機CLCは、第1の比較回路CMP1と第2の比較回路CMP2の出力をそれぞれ入力として受け、起動するべき異なった作動ループを活性化するように、それぞれ第1の開閉器I1と第2の開閉器I2とを制御する、第1の制御信号SC1と第2の制御信号SC2とを出力として発生する制御手段MCCを有している。
【0048】
より正確には、本発明の一般的なやり方では、下流のセンサSD2が化学量論的状態にある場合には、第1の反作用ループB1と第3の反作用ループB3とを2重に起動する。換言すれば、燃料噴射量の補正値KCLは、第1のセンサSD1と第2のセンサSD2によって発生される第1の信号V1と第2の信号V2とから出発して、積分利得Ki1と、比例利得+Kp1または−Kp1と補正項OFSとの和に等しい比例利得との比例−積分補正を用いて補正される。
【0049】
下流のセンサSD2が化学量論的状態になく、上流のセンサSD1の状態と同じである時、つまり両センサがリーン状態またはリッチ状態にある時には、第2の反作用ループB2と第3の反作用ループB3を非活性化し、上流のセンサSD1から発生される第1の信号V1を用いて、第1の補正手段COR1と積分利得Ki1及び比例利得Kp1の助けを借りて、補正値KCLの値を決定する(第1の反作用ループ(上流ループ)B1)。
【0050】
反対に、下流のセンサSD2が化学量論的状態になく、上流のセンサSD1の状態と異なる状態にある時には、下流のセンサSD2から発生する第2の信号V2のみを用いる第2の反作用ループ(下流ループ)B2へ転換する。この場合、補正値KCLは第2の補正信号KCL2に等しくなり、第2の補正手段COR2の比例利得Kp2と積分利得Ki2から得られる。
【0051】
図4a〜dを用いて、空燃比の補正を再度より詳細に説明する。
【0052】
空燃比ループの開始時に、上流のセンサ及び下流のセンサがリーン状態にあると仮定する。この場合、上流ループB1が活性化され、比例利得Kp1と積分利得Ki1を使って補正が実行される。
【0053】
より詳細には、空燃比ループの開始時には、補正値KCLは、+Kp1に等しい高さ跳躍し、これに傾斜がKi1の線形変化が引き続く。
【0054】
上流のセンサはリッチ状態に変わるが、下流のセンサはリーン状態に留まる場合には、第2の反作用ループ(下流ループ)B2が活性化され、比例利得はKp2に、積分利得はKi2に転換する。この例においては、比例利得Kp1と比例利得Kp2は等しいと仮定する。これが、転換時に補正値KCLの跳躍がない理由である。
【0055】
この転換の後に、補正値KCLに傾斜がKi2の線形変化が引き続く。
【0056】
一方、第2の反作用ループ(下流ループ)B2の開始の際には、各瞬間の期間tについて、積分利得Ki2と、第2の反作用ループ(下流ループ)B2の開始点のからの経過時間との積に等しい積分値AI2を計算する。
【0057】
経過時間Tにおいて、積分値AI2が予め定めた最大値に達したときには、補正値KCLが安定するように、この積分値AI2を一定の値に固定する。
【0058】
補正値KCLは、下流のセンサが化学量論的状態に変わるまで一定値に保たれる。下流のセンサが化学量論的状態に変わる瞬間に、補正値KCLは、−2Kp1−BMに等しい−Ksだけ跳躍する。
【0059】
次いで、最初の間は上流のセンサがリッチ状態にあることを考慮して、−Ki1に等しい傾斜を有する変換を補正値KCLに加え、次に、上流のセンサがリーン状態に変わるときには、2(Kp1+OFS)に等しい跳躍と、それに傾斜が+Ki1の線形変換が引き続く、第1の反作用ループB1と第3の反作用ループB3とからなる、2重空燃比ループが起動される。
【0060】
本発明による従来の燃料噴射制御方法の有利な変形は、化学量論的状態から遠ざける傾向を有する第2の反作用ループB2による補正を開始する前に、エンジンが化学量論的状態で良好に作動することを可能にする。
【0061】
この本発明の有利な変形によれば、事前、すなわち空燃比ループの開始時点と現時点との間に、少なくとも第1の信号V1が、リッチ状態からリーン状態またはその逆に遷移したときしか、第2の信号V2のみを用いる補正フェーズは実行されない。第2の信号V2のみを用いる補正フェーズは、第1の信号V1のみを用いる第1の反作用ループB1による補正の欠陥を是正するために適用するものである。
【0062】
このように、少なくとも上流のセンサの遷移をインプットすることによって、エンジンが化学量論的状態で良好に作動することが可能になり、下流のセンサの信号による補正によってもたらされる化学量論的状態からの遠ざかりが、燃焼室における空気・燃料混合物がリッチ過ぎる状態またはリーン過ぎる状態にある場合に開始されることはない。
Claims (11)
- 内燃エンジンに少なくとも触媒排気ポットが連結されており、
上記触媒排気ポット(CAT)の上流に、上記触媒排気ポットに流入するエンジンの排気ガスの組成の成分を示す第1の信号(V1)の発生に適した第1のセンサ(SD1)が配置され、
上記触媒排気ポット(CAT)の下流に、上記触媒排気ポットから流出するエンジンの排気ガスの組成の成分を示す第2の信号(V2)の発生に適した第2のセンサ(SD2)が配置され、
上記第1の信号と上記第2の信号から、燃料噴射量を補正する補正値(KCL)を定める上記内燃エンジンの燃料噴射制御方法において、
上記第1のセンサの上記第1の信号(V1)を、上記第1のセンサがリッチ状態にあるかリーン状態にあるかが決定されるように、燃焼室に存在する空気・燃料混合物の略1に等しい空燃比に相当する、予め定められた参照値(Vb)と比較し、
上記第2の信号(V2)を、上記第2のセンサが化学量論的状態、リッチ状態またはリーン状態にあるかが決定されるように、上記空気・燃料混合物の空燃比の1に隣接する範囲を定義する、予め定めた上限値(VS2)及び予め定めた下限値(VS1)と比較し、
上記第2のセンサが化学量論的状態にある場合には、上記第1の信号(V1)と上記第2の信号(V2)とを用いて上記補正値(KCL)を決定し、
上記第1のセンサと上記第2のセンサがともにリッチ状態にあるかともにリーン状態にある場合には、上記第1の信号(V1)のみを用いて上記補正値(KCL)を決定し、
上記第1のセンサと上記第2のセンサがそれぞれリッチ状態とリーン状態、またはリーン状態とリッチ状態にある場合には、上記第2の信号(V2)のみを用いて上記補正値(KCL)を決定する、
ことを特徴とする内燃エンジンの燃料噴射制御方法。 - 上記化学量論的状態とリッチ状態との間の上記第2のセンサの通過の方向によって異なる上記上限値(VS2)を選定し、
上記化学量論的状態とリーン状態との間の上記第2のセンサの通過の方向によって異なる上記下限値(VS1)を選定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。 - 上記第1の信号を用いる補正段階においては、第1の比例利得と第1の積分利得とを有する比例−積分型の第1の補正手段(COR1)を用いて上記補正値を決定し、
上記第2の信号(V2)のみを用いる補正段階においては、第2の比例利得と第2の積分利得とを有する比例−積分型の第2の補正手段(COR2)を用いて上記補正値を決定し、
上記第1の信号と上記第2の信号とを用いる補正段階においては、上記第1の補正手段(COR1)と、第3の比例利得と第3の積分利得とを有し、上記第2の信号とエンジンの動作点に依存する指示信号(Vac)との差を入力として受ける比例−積分型の第3の補正手段(COR3)とを用いて上記補正値を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。 - 上記第1の比例利得(Kp1)と上記第2の比例利得(Kp2)とが等しいことを特徴とする請求項3に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
- 上記第1の積分利得(Ki1)と上記第2の積分利得(Ki2)とが等しいことを特徴とする請求項3または4に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
- 上記第2の積分利得(Ki2)がゼロであることを特徴とする請求項3または4に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
- 上記第2の信号のみを用いる上記補正段階においては、
時間経過の各瞬間に、上記第2の積分利得(Ki2)と、上記時間経過の各瞬間と上記補正段階の開始の瞬間との間の経過時間(T)との積に等しい、その時点の積分値(AI2)を計算し、上記その時点の積分値を予め定めた最小値及び最大値(BM)と比較し、上記その時点の積分値が、上記最小値または上記最大値に到達した場合には、上記積分値をこの到達した値に固定し、上記第2の信号のみを用いる上記補正段階から上記第1の信号のみを用いる上記補正段階へ移行する際に、先に決定された上記補正値から上記積分値(AI2)を差し引く、
ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1つに記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。 - 上記第2のセンサ(SD2)が化学量論的状態へ移行したときには、上記積分値をゼロに戻すことを特徴とする請求項7に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
- 上記第2の信号のみを用いる上記補正段階から離れる各回ごとに、上記積分値(AI2)をゼロに戻すことを特徴とする請求項7に記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
- 上記第1の比例利得(Kp1)への、上記第3の補正手段から発生される補正項(OFS)の付加を含み、上記第1の信号を用いる上記補正段階から離れる各回ごとに、上記第3の補正手段の上記第3の積分利得(Ki3)をゼロに戻すことを特徴とする請求項3から9のいずれか1つに記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
- 一方では上記第1のセンサと上記第2のセンサがそれぞれリッチ状態とリーン状態にあるか、それぞれリーン状態とリッチ状態にあり、他方では上記第1のセンサがすでに前もって少なくとも1回はリーン状態からリッチ状態へ、またはリッチ状態からリーン状態へ移行している場合には、上記第2の信号(V2)のみを用いて上記補正値(KCL)を決定し、
上記第1のセンサがすでに前もって1回もリーン状態からリッチ状態へ、またはリッチ状態からリーン状態へ移行していない場合には、上記第1の信号(V1)のみを用いて上記補正値を決定する、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の内燃エンジンの燃料噴射制御方法。
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