JP4054505B2 - 排ガス循環方式焼結操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス循環方式焼結機の操業において高水蒸気濃度の排ガス(以下、高水分排ガスと記す)を循環使用する焼結の操業方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下の説明において、排ガス中の「水分」とは、排ガス中の「水蒸気」を意味する。また例えば、「水分10%」は「乾ガス基準で水蒸気濃度10容量%」を、「酸素濃度18%」は「乾ガス基準で酸素濃度18容量%」を略記したものである。
【0003】
焼結鉱の原料は、鉄源としての粉鉄鉱石や集塵ダスト、ミルスケールなどに、媒溶剤としての石灰石、ドロマイト、燃料としての粉コークス、無煙炭などである。これらを配合したものはドラムミキサーで水やバインダーとともに転動造粒され、水分6〜7%で平均粒径3〜4mmの粒子よりなる焼結原料とされる。この焼結原料が焼結機に供給され、ドワイトロイド式焼結機(DL式焼結機)で連続焼結される。DL式焼結機で焼結鉱を製造する際には、焼結で生じる排ガスの一部を循環させるのではなく、下向きに吸引する大気(空気)のみで焼結原料中の粉コークスを燃焼させる大気吸引方式による焼結操業方法と、排ガスの一部を循環させて操業を行う排ガス循環方式による焼結操業方法とがある。
【0004】
DL式焼結機の大気吸引方式による焼結操業方法は、エンドレスに移動するパレット上に50〜60cm厚さにて焼結原料を装入し、点火炉にてコークス炉ガス、重油などの燃焼熱によって原料層表面の粉コークスに着火し、パレットの下方に連設された風箱群により原料層を上部から下部へ通過する空気によって粉コークスを燃焼させ、その燃焼熱によって焼結原料の焼結を行うものであり、パレット上の原料層が排鉱側へ移動する間に原料層の粉コークスの燃焼が上層から下層へと進み、焼結機排鉱端に達した時点で焼結を完了するようにしたものである。
【0005】
一方、排ガス循環方式による焼結操業方法は、前記大気吸引方式による操業での欠点を改善し、環境保全の点から焼結機の系外に排出する排ガス量やNOx総量の削減、さらに排ガスの熱回収、生産性の向上などを図るようにしたものであり、DL式焼結機の風箱群を焼結機長手方向に適宜分割し、焼結で生じる排ガスの一部を焼結機のパレット上へ循環させて一部大気のかわりに吸引して操業を行うものである。
【0006】
近年、排ガス循環方式の操業方法が広く採用されるようになり、その効率を改善するために種々の提案がなされている。例えば、特開平5−43951号公報に示されるように、焼結機の点火炉域と後部域のウィンドボックス(風箱)からの排ガスを、それぞれ点火炉域の排ガスは焼結機の中後部に、また後部域の排ガスは点火炉後の焼結機の前部に循環するとともに、各循環される排ガス中の酸素濃度を18%以上とした排ガス循環方法操業方法、あるいは本発明者らが特願平11−144765号明細書等に示したように、焼結機の風箱群を焼結機前部域と後部域とに2分割し、焼結機前部域の風箱群からの水分5%以上の排ガスを焼結機後部域に循環使用することにより熱源である粉コークスの燃焼効率を向上する排ガス循環操業方法などにより、エネルギーの節約および排出ガス総量の低減、ならびに焼結鉱品質、焼結歩留りの向上を図っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
DL式焼結機で大気吸引方式により焼結鉱を製造するに際して生じる排ガスの温度および水分は、焼結機の長手方向で分布をもつ。すなわち、焼結機の前部から中部においては、焼結ベッドの下部はまだ湿った原料(湿潤層)が存在するのでその湿潤層を通過した排ガスは約50〜60℃に冷却され、かつ水分を5〜16%と高濃度に含むのに対して、焼結機の後部においては、焼結ベッドの下部まで焼成が進んでいるので排ガスは焼結機の前部に比べて高温(最高約460℃)で水分も2〜3%と低い。
【0008】
したがって特開平5−43951号公報に示された排ガス循環方式焼結操業方法(図7参照)においては、焼結機後部域の排ガスの前部域のパレット上への循環率を高めると、焼結機の系外に排出される排ガス(以下、排気ガスと記す)に占める焼結機前部寄りの低温高水分の排ガスの割合が増加するため排気ガスの温度低下と水分上昇を招き、排気ガス系において排気ガス温度が酸露点を下回ってしまい結露してダクトあるいは集塵機の腐食を生じる問題がある。そのため、後部域の排ガス循環率は最大約20%(焼結機排ガス総量に対して;以下同じ)に制限されている。また焼結機前部域の排ガスの後部域のパレット上への循環率を高めると、もともと高水分の排ガスを再循環することになり、循環排ガス中の水分が約10%を超え、焼結に要する時間が延びて生産性が悪化し、あるいは焼結鉱の強度が低下して焼結歩留りが悪化する問題が生じる。そのため、前部域の排ガスの循環率も最大10%程度に制限されている。その結果、排気ガス量は、大気吸引方式焼結機の総排ガス量(=排気ガス量)の約70%にまでは低減できるが、さらに低減することは困難である。また、特願平11−144765号明細書等に示した発明においても、循環できる排ガス中の水分は11%以下に制限されるため、上記と同様、排気ガス量の削減効果が制約される問題が残っている。
【0009】
そこで本発明の目的は、排ガス循環方式による焼結操業方法において、後部域の排ガス循環率を最大に保ったまま、生産性を阻害したり焼結歩留りを悪化させることなく、水分10%以上の高水分排ガスを循環使用することができ、これにより排気ガス量をさらに削減できる排ガス循環方式焼結操業方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、焼結機の風箱群を焼結機長手方向に分割し、焼結で生じる排ガスの一部を循環させて操業を行う排ガス循環方式焼結操業方法において、焼結機の風箱群を焼結機長手方向に3分割し、焼結機の前部域の風箱群からの水蒸気を10容量%(乾ガス基準)以上含有する排ガスを点火炉後の焼結機の前部域または前中部域のパレット上に循環させるとともに、焼結機の後部域の風箱群からの排ガスを焼結機の少なくとも後部域のパレット上に循環させることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
以下、本発明の作用効果について詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の作用効果を確認するため、いわゆる焼結鍋試験装置を用いて、吸引ガス中の水分が焼結鉱強度に及ぼす影響を調査した。
【0015】
焼結鍋試験は、内径320mmの焼結鍋に、表1に示した化学組成の鉄鉱石を表2の配合率で混錬して作製した焼結原料をベッド層厚550mmに装入し、COGバーナーで点火後、吸引圧15700Paで循環排ガスを想定して調整したO2 濃度、水分および温度のガスを吸引して行った。なお、循環排ガスを想定した吸引ガスは、空気にN2 ガスを添加することによりO2 濃度を18%に調整し、さらに所定量の水蒸気を添加して目標の水分とした後、電気ヒーターにより200℃に加熱して作製した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
実施した焼結鍋試験の試験条件および各試験条件で焼成された焼結鉱の落下強度を表3に示す。なお、焼結鉱の落下強度はJIS M8711の冷間強度試験方法に基づいて測定した。一般に、同一の焼結原料を用いて同一のガス吸引条件で焼成しても焼結鍋試験装置の熱損失が大きいため、焼結鍋試験で焼成された焼結鉱(鍋試験焼結鉱)の落下強度は、実機焼結機で製造された焼結鉱(実機焼結鉱)の落下強度に比べて大幅に低くなることが知られている。本焼結鍋試験の場合には、鍋試験焼結鉱の落下強度は実機焼結鉱の落下強度より約40ポイント低くなる(例えば、鍋試験焼結鉱の落下強度35%は、実機焼結鉱の落下強度約75%に相当する)ことを注記しておく。
【0019】
【表3】
【0020】
試験No.1〜4より、点火から火落ち(焼結完了)までの全焼結時間にわたって上記の循環排ガス想定ガスを吸引ガスとした場合における、吸引ガス中の水分と焼結鍋試験で焼成された焼結鉱の落下強度との関係をみると、吸引ガス中の水分が9%以上となると焼結鉱の落下強度が急激に低下することを確認した。
【0021】
これは、吸引ガス中の水分上昇により燃焼部(ヒートフロント近傍)で以下の2つの反応式で示される水性ガス化反応および水性ガス変成反応が起こり、燃焼部付近でH2 を生成し、このH2が原料中のヘマタイト(Fe2 O3 )またはマグネタイト(Fe3 O4 )の還元を促進してウスタイト(FeO)含有量を増加させ(図3参照)、このウスタイトが原料鉱石中の脈石成分のSiO2 等と化合して低融点化合物を作って溶融し、5mm径程度のマクロな空隙を形成したため、焼結鉱の強度が低下したものと考えられる。
【0022】
C+H2 O→CO+H2 (水性ガス化反応)
CO+H2 O→CO2 +H2 (水性ガス変成反応)
一方、排ガス循環方式の実機焼結機において、風箱群を焼結機長手方向に3分割し、前部域の風箱群を点火炉入口から焼結機機長(点火炉入口から排鉱端に至る長さ)の略30%長さの位置までの風箱群とし、後部域の風箱群を点火炉入口を起点にして焼結機機長の略80%長さの位置から排鉱端に至る焼結機部分の風箱群とすると、それぞれ前部域の風箱群からの排ガスは16〜18%、後部域の風箱群からの排ガスは2〜3%の水分を含むことを確認した。なお、後部域の風箱群の分割位置を焼結機機長の略80%としたのは、前述したように、排気ガス温度の低下による排気ガス系への水分凝縮が起こらない範囲で最大の排ガス循環率約20%が得られる位置として定めたものである。
【0023】
したがって、前部域の風箱群からの高水分排ガスの量を適量にして、その高水分排ガスに後部域の風箱群からの低水分排ガス全量を混合し、その混合排ガスの水分を9%未満にすることにより、焼結鉱の落下強度を悪化させずに高い排ガス循環率(高い排気ガス削減率)での焼結機操業が可能となるものである。
【0024】
また図4は、後部域の風箱群の分割位置を上述の焼結機機長の略80%に固定したまま、前部域の風箱群の分割位置を焼結機機長の点火炉入口から0〜35%の間で変更したときの、前部域の風箱群からの排ガスと後部域の風箱群の排ガスを混合した混合排ガスの水分の変化を示したものである。図4より明らかなように、後部域の風箱群の分割位置を焼結機機長の略80%とし、前部域の風箱群の分割位置を焼結機機長の略30%までとすることにより、混合排ガスの水分を9%未満とすることができ、上記効果を得ることができるものである。
【0025】
次に、表3の試験No.5および6は、前部域の風箱からの高水分ガスを後部域の風箱からの低水分ガスと混合することなくそのまま焼結機に循環できる可能性について調査したものである。全焼結時間の前半分の時間だけ水分15%の排ガスを吸引し、後半分の時間は常温の空気を吸引した場合(試験No.5)、その焼結鉱の落下強度は、全焼結時間にわたって水分6%の排ガスを吸引した場合(試験No.2)とほぼ同等の高い値が得られるのに対して、試験No.5とは逆に全焼結時間の前半分の時間は常温の空気を吸引し、後半分の時間だけ水分15%の排ガスを吸引した場合(試験No.6)には、その焼結鉱の落下強度は、全焼結時間にわたって水分15%の排ガスを吸引した場合(試験No.4)と同程度の低い値となった。
【0026】
このように、高水分ガスを焼結の前半で吸引した場合には焼結鉱の落下強度の低下はほとんどなく、後半で吸引した場合には落下強度が著しく低下する理由は以下のように考えられる。
【0027】
焼結ベッド内の高温保持時間(加熱時に1100℃に到達した時点から冷却時に1100℃に到達した時点までの時間)は、大気吸引式、排ガス循環式にかかわらず焼結ベッドの上部では短く、下部に行くほど長くなり、また最高到達温度も焼結ベッドの上部は下部に比べて低いため、焼結ベッドの上部は下部に比べて強度が低いことが知られている。高水分ガスを焼結反応の後半でベッドに吸引した場合には、前述した水性ガス化反応等を原因とする強度低下が焼結ベッド下部において起こり、焼成後の焼結ケーキ全体の平均強度を著しく引き下げたものと想定される。一方、逆に高水分ガスを焼結の前半で吸引した場合、もともと焼結ベッド上部の最高到達温度は低いので前述の水性ガス化反応等の反応速度は小さく生成H2量も少ないためFeOへの還元量は少なく、これを原因とする強度低下の可能性は低い。逆に、水性ガス化反応等により生成したH2の伝熱係数が空気の約3倍と高いことから、これが伝熱促進に寄与して焼結ベッド上部の最高温度を上昇させた(材料とプロセス、’85−S810、p.30参照)ことにより焼結ベッド上部の強度を上昇させ、焼結ケーキ全体の平均強度を引き上げたものと考えられる。
【0028】
したがって、焼結機前部域の風箱群からの水分10%以上の高水分排ガスを焼結機の後部域ではなく、点火炉後の焼結機の前中部域のパレット上に選択的に循環させることにより、焼結鉱の強度を改善しつつ、高い排ガス循環率(高い排気ガス削減率)での焼結操業が可能となるものである。
【0029】
【実施例】
(参考例)
図1は参考発明による排ガス循環方式焼結操業方法の実施に使用される焼結機の概略説明図である。焼結機1は、駆動機によってエンドレスに移動する移動パレット2、焼結原料を移動パレット2上に積み付けるための原料供給装置3、積み付けられた焼結原料4の原料層表面の粉コークスに着火するための点火炉5、移動パレット2の下方に焼結機機長にわたって連設され、下向きの吸気によってパレット2上の原料層4の粉コークスを燃焼させるための風箱群6A、6B、6Cおよび循環ガスを移動パレット2の上方へ供給するための循環ガスフード7を備えている。
【0030】
前記風箱群は、焼結機前部域の風箱群としての第1風箱群6A、焼結機中部域の風箱群としての第2風箱群、および焼結機後部域の風箱群としての第3風箱群の3つに分割されている。高水分の排ガスを循環供給するための第1風箱群6Aは、焼結機1の点火炉入口5aから排鉱端Eに至る長さを焼結機機長とすると、点火炉入口5aより焼結機機長の略30%長さの位置までの焼結機部分に配設されたものである(風箱No.1〜No.7)。また、低水分ガスを循環供給するための第3風箱群6Cは、点火炉入口5aを起点にして焼結機機長の80%長さの位置から排鉱端Eに至る焼結機部分に配設されたものである(風箱No.23〜No.27)。一方、排気を行うための第2風箱群6Bは、前記焼結機機長の略30%の位置から略80%の位置に至る焼結機部分(すなわち第1風箱群と第3風箱群との間)に配設されたものである(風箱No.8〜No.22)。
【0031】
循環ガスフード7は、排ガスを移動パレット2上の原料層4へ導くためのものであり、点火炉入口5aを起点にして焼結機機長の略10%の位置から略80%の位置に至る焼結機部分における移動パレット2の上方に配設されている(風箱では、風箱No.3〜No.22に相当する)。したがって、第1風箱群6Aについては、点火炉排ガスを吸引する風箱群と循環ガスフード7からの循環ガスを吸引する風箱群とに分かれており、8は第1風箱群6Aからの低温の高水分ガスを循環ガスダクト11Aを介して循環ガスフード7に循環するための低温ガス循環用排風機である。また、第3風箱群6Cについては、空気を吸引する風箱群のみで構成されており、9は第3風箱群6Cからの高温の低水分ガスを循環ガスダクト11Bを介して循環ガスフード7に循環するための高温ガス循環用排風機である。なお、循環ガスダクト11Aと11Bは途中で結合された後、さらに複数の小さいダクトに分けられて循環ガスフード7全体に接続されており、前記低温の高水分ガスと前記高温の低水分ガスを混合して循環ガスフード7全体へほぼ均一に導入する。10は第2風箱群からのガスを集塵機12で清浄化した後、煙突13で大気へ放出するための主排風機である。
【0032】
焼結原料は、前述の焼結鍋試験に用いたものと同じ鉱石(表1参照)を表2と近似の配合率で配合し、ドラムミキサーで水やバインダーとともに転動造粒して水分6〜7質量%(外数)で平均粒径3〜4mmの粒子としたものを用いた。
【0033】
本実施例では、上述の設備構成において、低温ガス循環用排風機8のダンパー開度を100%から20%まで段階的に小さくして低温高水分排ガスの循環量を減らしていくことにより循環ガスフード7に導かれる前記混合排ガス中の水分を下げていき、焼結鉱の落下強度に及ぼす影響をみた。低温ガス循環用排風機8のダンパー開度100%の場合、低温高水分排ガスの水分は16〜18%であり、循環ガスフード内で測定した混合排ガスの水分は約9%となった。このときの焼結鉱の落下強度は72〜73%であった。ダンパー開度を小さくしていくと図5に示したように混合排ガスの水分は低下し、それにともなって焼結鉱の落下強度は上昇し、ダンパー開度20%のとき混合排ガスの水分は約6.5%に低下し、焼結鉱の落下強度は75〜76%に上昇した。
【0034】
なお、使用する原料鉱石の種類、粒度、配合などが異なれば適正な造粒水分量は異なり、また吸引する大気の湿度も季節、天候により変化するので、循環排ガス中の水分も変化する。したがって本実施例では、第1風箱群の分割位置を焼結機長の略30%の位置としたが、これに限るものではなく、循環排ガス中の水分に応じて適宜その分割位置を変更しうるものである。
【0035】
以上のとおり、高水分排ガスを低水分排ガスと混合し一定の水分値以下として循環することにより、焼結鉱強度を低下させることなく排ガス循環量を増加でき、排気ガス量を低減することが可能となった。
【0036】
(実施例)
図2は本発明(請求項1)による排ガス循環方式焼結操業方法の実施に使用される焼結機の概略説明図である。上記参考例の設備構成のうち、循環ガスダクトの構成のみを変更した。すなわち、循環ガスダクト11Aと11Bは途中で結合されることなく、それぞれ、循環ガスダクト11Aは複数の小さいダクトに分けられた後、循環ガスフード7の前半分(点火炉入口を起点にして焼結機機長の略10%から略50%までの部分)のみに接続され、循環ガスダクト11Bは複数の小さいダクトに分けられた後、循環ガスフード7の後半分(点火炉入口を起点にして焼結機機長の略50%から略90%までの部分)のみに接続されている。これにより、低温ガス循環用排風機からの低温の高水分ガスは焼結機の前半部のみに循環され、高温ガス循環用排風機からの高温の低水分ガスは焼結機の後半部に循環される。
【0037】
本実施例では、上述の設備構成において、低温ガス循環用排風機8のダンパー開度を100%として操業を実施したところ、図6に示すように、参考例の低温ガス循環用排風機8のダンパー開度を100%として操業した期間(低温の高水分排ガスと高温の低水分排ガスとを混合して循環ガスフード全体に吹き込んだ場合)に比べて、焼結鉱の落下強度は72〜73%から74〜76%へと上昇した。したがって、低温ガス循環量を減少させることなく(すなわち生産性を低下させることなく)焼結鉱強度を改善できることを確認した。また、図6の参考例および実施例の期間を通じて、排気ガス量は、特開平5−43951号公報記載の従来法よりさらに低減できることを確認した。
【0038】
なお本実施例では、高水分排ガスを焼結機機長の略50%までの前半部に、低水分排ガスを残りの後半部に分けて吹き込んだが、これに限るものではなく、前述した循環排ガス中の水分の変化や焼結機全体のガス量のバランスを考慮しながら適宜吹込み範囲を変更しうるものである。例えば、高水分排ガスを焼結機機長の略40%までの前部域に、低水分排ガスを残りの中後部域に分けて吹き込んでもよい。あるいは高水分排ガスを焼結機機長の略80%までの前中部域に吹込み、低水分排ガスを残りの後部域のみでなく、循環ガスフード全体に吹き込んでもよい。要するに、高水分ガスを焼結反応の後期に吹き込まないようにすることにより、前述の効果を得ることができるものである。
【0039】
以上より、高水分排ガスを焼結機の前中部域に選択的に循環することにより、生産性を下げることなく焼結鉱の強度を向上できるので、さらに高水分排ガスの循環ガス量を増加でき、排気ガス量をさらに低減して排気ガス処理の負荷を軽減できる。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による排ガス循環式焼結機操業方法によると、焼結の前半で生じる高水分の排ガスを焼結機の前中部域に選択的に循環することにより、生産性を低下することなく焼結鉱強度を上昇できるので、さらに高水分排ガスの循環量を増加でき、その結果、より効率的に、大気への排出ガス量が低減し、排ガス処理設備のコンパクト化など排ガス処理の負荷の軽減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考発明による排ガス循環方式焼結操業方法の実施に使用されるDL式焼結機の概略説明図である。
【図2】 本発明(請求項1)による排ガス循環方式焼結操業方法の実施に使用されるDL式焼結機の概略説明図である。
【図3】高水分ガス吸引時における燃焼部近傍の焼結鉱中FeO含有量の分布を示す図である。
【図4】前部域の風箱群の分割位置と前部域および後部域の風箱群からの排ガスを混合した混合排ガスの水分との関係を示す図である。
【図5】低温ガス循環用排風機のダンパー開度と混合排ガス水分および焼結鉱の落下強度との関係を示す図である。
【図6】本発明例により操業を行った期間における焼結鉱の落下強度を示す図である。
【図7】従来法による排ガス循環方式焼結操業方法の実施に使用されるDL式焼結機の概略説明図である。
【符号の説明】
1…焼結機 2…移動パレット 3…原料供給装置 4…焼結原料
5…点火炉 6A…第1風箱群 6B…第2風箱群 6C…第3風箱群
7…循環ガスフード 8…低温ガス循環用排風機
9…高温ガス循環用排風機 10…主排風機
11A、11B…循環ガスダクト 12…集塵機 13…煙突
14…焼結機の前部 15…焼結機の中後部 16…後部域
Claims (1)
- 焼結機の風箱群を焼結機長手方向に分割し、焼結で生じる排ガスの一部を循環させて操業を行う排ガス循環方式焼結操業方法において、焼結機の風箱群を焼結機長手方向に3分割し、焼結機の前部域の風箱群からの水蒸気を10容量%(乾ガス基準)以上含有する排ガスを点火炉後の焼結機の前部域または前中部域のパレット上に循環させるとともに、焼結機の後部域の風箱群からの排ガスを焼結機の少なくとも後部域のパレット上に循環させることを特徴とする排ガス循環方式焼結操業方法。
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