JP4053695B2 - 論理回路の遅延故障検出方法 - Google Patents

論理回路の遅延故障検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、論理回路の遅延故障検出方法に係り、特に、計算機を構成する論理集積回路及び複数の論理集積回路を搭載する基板の製造不良を検出し、製造工程の改善、後戻り工程の削減及び製品の品質の維持を図るために使用して好適な論理回路の遅延故障検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、計算機の機能は、その殆どが集積回路に作り込まれ、計算速度等の性能は、集積回路の製造技術に大きく依存する。そして、集積回路は、低速度では完全に動作する場合にも、製品仕様に対応する高速度では動作しないような不良なものが数多く存在する。計算機等の装置としての性能を高性能に確保するためには、部品である個々の集積回路の、製品として組み上げられたときの動作速度を保証するテストが必要である。計算機を構成する集積回路は、数多くの論理素子を含み、可能な状態数は膨大である。このため、集積回路のテストは、全ての遷移信号の伝搬状態についてテストを行うようにすれば、性能を確保するために必要な条件を全て含めることができるが、この場合、テストする状態数が非常に多くなり、テストにかかる時間が長すぎて、現実的ではない。
【0003】
テストに用いる状態数を現実的な値に削減するために、一般には、不良を単純な故障モデルにより近似してテストを行っている。この方法によれば、モデル化によって、故障を回路に仮定し、回路の応答をシミュレートすることにより検査系列の有効性を評価することが可能になり、テストされていない回路部分を認識して、必要な検査系列を補うことができる。
【0004】
回路の動作速度により障害を発生するような不良に対する故障モデルには、故障動作を仮定する対象部分について大別して2種類あり、1つはゲートディレイ故障であり、もう1つはパスディレイ故障である。前者は、各素子の入出力端子毎に遅延故障を仮定し、後者は、信号遷移の発生時刻を制御できる起点から、特定時刻での信号値を観測可能な点までの、全ての伝搬経路1つづつに遅延故障を仮定する。後者の起点と観測点とは、回路の外部入出力端子や、クロックで制御された記憶素子などである。
【0005】
ゲートディレイ故障の総仮定数は、回路の構造には依存せず、各素子毎の入出力端子の伝搬経路数の総計となる。ある検査系列で、故障仮定点を信号遷移が通過し、かつ観測点に到達する場合、検出可能あると判定できる。このため、ゲートディレイ故障を仮定するモデルは、検査系列の生成や検出判定の処理で取り扱う状態の数が素子数のオーダーで済み、ほぼ完全な検出率を持つ検査系列を従来の技術の場合にも得ることができる。これに対し、パスディレイ故障の総仮定数は回路の構造に依存し、最も多くなる場合は、総素子数のほぼ指数倍になる。このため、パスディレイ故障を仮定するモデルは、全ての遷移信号伝搬経路がテスト対象に入るので、必要な状態が網羅される可能性が高いが、経路数が多くなるため、テスト生成、検出判定に多くの時間がかかり、大規模な回路では現実的なものとはいえない。
【0006】
多数の経路を効率的に取り扱う試みは数多くなされ、この種の従来技術として、例えば、[1] M. A. Gharaybeh、他著の“A Parallel-Vector Concurrent-Fault Simulator and Generation of Single-Input-Change Tests for Path-Delay Faults” IEEE Transaction on Computer-Aided Design of Integrated Circuits and Systems、Vol. 17、No. 4、pp. 873-876、1998等に記載された技術が知られている。この従来技術は、各パタンでの遷移信号の発生源を1ビットに制限し、16種類の論理値を用いて、複数の遷移信号伝搬を同時に効率的に取り扱うことができるようにするというものである。しかし、この従来技術を使用しても、テスト対象となる経路数が依然として多く、大規模な集積回路の全ての部分に対してこの従来技術を適用することは困難である。
【0007】
このような問題を回避するため、回路の性能に大きく影響すると考えられる経路を予め選んで、それらについて検査系列を生成してテストするという方法が知られている。このような方法に関する従来技術として、例えば、[2] R. S. Fetherston、他著の“Testability Features of the AMD-K6 Microprocessor” IEEE Design & Test of Computers、Vol. 15、No. 3、pp. 64-69、1998 等に記載された技術が知られている。この従来技術は、最も伝搬時間の長い5千経路と、集積回路のチップ全面から偏り無くサンプリングした長い5千経路とを対象にパスディレイ故障を仮定してテストを実施するというものである。
【0008】
一方、パスディレイ故障モデルによって経路のテスト網羅性を計算することなく、数多くの検査系列を印加することができる方法を工夫することにより、実質的に回路の動作を充分にテストしようとする方法も使用されている。この種の従来技術として、例えば、[3] B. Koenemann、他著の“Delay Test: The Next Frontier for LSSD Test Systems” Proceedings of the IEEE International Test Conference、1992、pp. 578-587 等に記載された技術が知られている。この従来技術は、集積回路内に設けた疑似乱数発生器を使用して、多数の遷移信号を伝搬させ、装置に組上がった場合の動作速度に対応する時間間隔でテストを行うという方法である。この方法の有効性については、[4] M. P. Kusko、他著の“Microprocessor Test and Test Tool Methodology for the 500MHz IBM S/390 G5 Chip” Proceedings of the IEEE International Test Conference、1998、pp. 717-726 でも議論されている。
【0009】
遅延故障を仮定して行うテストは、故障と認識される遅延時間の程度が、前述の文献[3]でも議論されているように、テスト対象回路への検査系列の印加における信号遷移の注入と観測の間のテスト時間間隔とに依存する。検査系列の遅延故障に対する検出率は、検出と判定される故障の遅延時間の程度が前記テスト時間間隔より大きな場合について定義される。従って、従来技術による検査系列の生成や検出判定の処理は、故障による遅延時間の程度がテスト時間間隔より常に大きいとして検出判定をする遷移故障を仮定することが通例である。このため、仮定される全故障の数に対する検出可能と判定される故障の数の比である検出率は、遷移故障を仮定して求められる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来技術は、何れも、実用時間内に可能な範囲で、実動作時の速度を保証するための検査系列群の探索及びそのテストを実行するために、対象とする信号伝搬経路の数を予め絞り込むか、疑似乱数になどを用いて多数の経路を同時に無作為に動作させ、必要な経路が偶然にカバーされることを期待する他ないものである。このため、前述した従来技術は、何れも、乱数でテストされにくい回路部分、すなわち、偶然には実現する確率の低い状態以外ではテストできないような回路部分があると、長期間乱数を印加し続けても、未検出で残る故障の数が多くなるという問題点を有している。このため、大規模な回路のテストは、残る故障の数も非常に多く、網羅性について完全な検査系列の生成が依然として困難である。
【0011】
素子の入出力端子の論理が故障時に“0”か“1”の何れか一方に固定される単一縮退故障モデルや、故障による遅延時間の程度がテスト時間間隔より常に大きいとして検出判定をする遷移故障モデルについて、ほぼ完全な検出率を持つ検査系列で良品と判定された集積回路であっても、装置に組み上がった状態で不良動作を呈する場合があり無視することができない。すなわち、[5] W. Needham、他著の“HIGH VOLUME MICROPROCESSOR TEST ESCAPES、AN ANALYSIS OF DEFECTS OUR TESTS ARE MISSING.” Proceedings of the IEEE International Test Conference、1998、pp. 25-34に述べられているように、既存の故障モデルにおける検出率が100%ではない故に見逃す不良もあるからである。
【0012】
しかし、装置の不良事例を多く集め、詳細を解析をすると、たとえ単一縮退故障モデルや前述の遷移故障を仮定して100%の検出率を持つ検査系列が仮に得られ、その検査系列でテストすることができたとしても、装置として動作させた場合の不良は完全には除けないことが判る。
【0013】
テスト種毎に歩留まりを求めると、そのテスト種で検出可能な不良を引き起こす欠陥の密度に相当する値を得ることができる。そのテスト種における、ある故障モデルに対する検出率を計算すると、その故障モデルに相当する不良をそのテストで見逃す数を推定することができる。故障モデルとして単一縮退故障モデルとゲートディレイの遷移故障モデルとを考え、実際の計算機装置を構成する集積回路について、検出率が100%でないために見逃す故障の数を推定し、この数と、計算機装置に組み上げたあとでの劣化ではない不良現象を引き起こす集積回路の数とを比較すると、モデル化された故障の見逃しと比べて、少なくない数の不良が残存していることが判明した。
【0014】
これら残存不良の、物理的な直接原因を究明することは困難であるが、検査系列を追加したり、不良現象を細かく分析することにより、いくつかの場合において原因が判明した。それによると、物理的原因は、論理素子の構造の欠陥であり、そこを通過する遷移信号に遅延が生ずるというゲートディレイの遷移故障モデルに準ずる場合ではあるが、遅延の時間的程度が小さいために、集積回路をテストする検査系列に含まれる故障検出経路では不良と判定される閾値に達しなかったことがわかった。検査系列は、製造工程の設備投資及び時間的な制約から、限られた回路状態しか実現されていない。これに対して、組み上げられた装置内の集積回路は、様々な状態の下で動作するので、ある素子の前記のようなわずかなディレイであっても、不良として顕現するような遷移信号伝搬経路に含まれる場合がある。
【0015】
モデル化しにくい欠陥であっても、装置の動作が遅くなるような不良現象として現れる場合が多いであろうことは、例えば、[6] P. C. Maxwell、他著の“IDDQ AND AC SCAN: THE WAR AGAINST UNMODELLED DEFECTS” Proceedings of the IEEE International Test Conference、1996、pp. 250-258 にも述べられている。従って、集積回路の品質を高く保つために、各論理素子のわずかな遅延でも検出できるような、検査系列が必要である。
【0016】
本発明の目的は、乱数列を用いるか、または、存在する全ての経路の数と比べて充分小さな数の経路を活性化する検査系列を用い、各論理素子のわずかな遅延を検出することができる論理回路の遅延故障検出方法を提供し、さらに、わずかな遅延が検出できない故障仮定点を同定し、その故障に対して検査系列を生成する手段をも提供すると共に、テストの品質の管理と、必要な性能の向上を可能にする論理回路の遅延故障検出方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば前記目的は、テスト対象論理回路の論理素子及び素子間の配線の接続情報と、各素子及び各配線の信号伝搬時間の情報とを入力し、テスト対象論理回路に含まれる第1の記憶素子群に第1の内部状態を設定し、テスト装置からテスト時間間隔の複数の遷移信号を印加し、前記第1の記憶素子群を第2の内部状態に変化させた後、第1の記憶素子群が保持する値を読み出して、期待値と比較する検査系列を生成し、前記検査系列を用いて前記回路の故障を検出する論理回路の遅延故障検出方法において、前記検査系列の生成は、テスト対象論理回路の論理素子及び素子間の配線の接続情報を入力して各素子を定義する素子表と各素子の入出力端子の接続先を記述する接続先表を作成するステップと、各素子及び各配線の信号伝搬時間の情報を入力して信号伝播時間値表を作成するステップと、前記第1の記憶素子群へ論理値を割り振って第1の内部状態を決定するステップと、前記第1の記憶素子群へ割り振られた第1の内部状態をテスト対象論理回路に設定するための検査系列を生成するステップと、テスト対象論理回路内に遅延故障を仮定するステップと、仮定する遅延故障の信号伝搬遅延の程度を表す第1のパラメータ値を設定するステップと、前記第1の記憶素子群を第1の内部状態から所定の処理により信号遷移を伴って第2の内部状態へ移行させ前記第1及び第2の内部状態における前記第1の記憶素子群の出力値を前記素子表に格納するステップと、信号遷移が前記遅延故障を仮定した故障仮定点を通る信号伝播経路を前記接続先表と前記素子表とにより探索するステップと、信号接続先表と前記素子表により遷移信号発生源記憶素子を探索し、探索した遷移信号発生源記憶素子と遷移信号到達記憶素子との各組み合わせ毎に、その間に存在する信号伝播経路上の各信号線と各素子との信号伝播時間の和を前記信号伝播時間値表より求め、求めた信号伝播時間の内から最大値を求めるステップと、前記テスト時間間隔から前記第1のパラメータ値を減じて検出判定値を求めるステップと、前記信号伝播時間の最大値が前記検出判定値より大きい場合に前記故障仮定点を検出可能と判定するステップと、前記検査系列生成ステップで生成した検査系列に対して検出可能性を判定すべき未試行の仮定故障が存在する場合に前記遅延故障仮定ステップから前記故障仮定点検出可能判定ステップまでを繰り返すステップとを有することにより達成される。
【0021】
一般に、遷移信号が故障仮定部位を通過するために要する時間が有限量増加する故障モデルの取り扱いを可能にするため、故障を仮定する回路部分の単位毎に、すなわち、経路、配線、素子毎に、故障を仮定する場合としない場合のそれぞれについての部分通過時間を算出するための情報を入力し、保持し、処理する手段を持つ。従来の故障シミュレーション技術は、故障が顕現し、故障仮定部位を通過する信号遷移が観測点にまで到達すれば、その故障は検出可能と判定していたが、本発明は、さらに故障仮定部位を通る信号遷移の発生源をたどり、発生から観測点に到達するまでの時間を、故障のある場合とない場合とのそれぞれについて算出する手段を用い、テスト時間間隔と比較することによって検出可能性を判定する。また、本発明は、検出対象となる故障群の検出に必要な経路を包含する伝搬時間が適切な経路の集合の情報を保持する手段と、検査系列の候補に対するテスト回路内の遷移信号伝搬経路が前記集合に含まれるか判定することによって、前記経路上の故障の検出可能性を判定する。
【0022】
検出可能と判定されていない故障について、検出可能な検査系列を求めるには、故障仮定部位を遷移信号が通過し、通過した遷移が観測点に到達する条件を満たす回路状態を求めることが必要である。本発明は、さらに、遷移信号の通過する経路について条件を設け、伝搬時間のより長い経路を通るように誘導する手段を用いる。テスト時間間隔を、正常な回路のテスト対象経路の遷移信号伝搬時間の最大値より小さくない値とするとき、検出のための遷移信号伝搬経路は、なるべくそのテスト時間間隔に近い、大きな伝搬時間の経路を選択する方が、少ない遅延増加量の故障についても検出の可能性が高まる。このための伝搬時間の長い経路への誘導は、次の2つの手段によって可能である。
【0023】
第1は、遷移信号の発生点となる外部入力端子または記憶素子と、遷移信号の観測点となる外部出力端子または記憶素子との組合せ毎に、伝搬時間の最大となるテスト対象経路の伝搬時間を算出し、経路中に故障を仮定する部位を持つ遷移信号の発生点と観測点との組の決定において、より時間の大きい組を採用する手段である。
【0024】
第2は、回路を構成する各素子の入力端子毎に、記憶素子または外部端子へ至る遷移信号伝搬経路の伝搬時間の最大値と、記憶素子または外部入力端子からの遷移信号伝搬経路の伝搬時間の最大値とに相当する数値を算出または保持する手段と、故障仮定部位を通過する遷移信号の伝搬先が複数ある場合に伝搬先の素子入力端子の前記数値がより大きい方を候補として選択し、各素子への前記遷移信号の流入の経路に複数の選択肢がある場合、当該素子の入力端子の前記数値がより大きい方を候補として選択する手段とである。
【0025】
前記2つの方法における伝搬経路の探索は、複数の候補の1つを選択し、その伝搬が可能かを調べ、不可能ならば別の選択肢を選んで可能性を調べる処理の繰り返しである。候補を選択する順番に伝搬時間に基づいた優先順位を付ける手段によって、可能な最も小さな遅延時間をもつ遅延故障を検出できる精度の高い検査系列を生成することができる。
【0026】
伝搬経路の探索における処理量は、回路の構造と、候補の選択順などのアルゴリズムとに依存する。最も多くなる場合、その処理量は、ほぼ回路規模の指数オーダーとなり、大規模な集積回路では検査系列の生成にかけられる時間が足りなくて、探索を打ち切らねばならなくなる場合がある。打ち切りは、例えば仮定故障毎に判断する方法等も考えられるが、伝搬経路の選択に処理を戻して、伝搬時間を元にした優先順位の選択肢の内、伝搬時間が次に長い経路を選択して、前記故障の検出のための伝搬経路探索を続行する手段を備えれば、より精度の高い検査系列を生成することができる。
【0027】
以上述べた手段によると、テスト対象回路の最も時間のかかる伝搬経路の伝搬時間に相当する時間間隔をもってテスト時間間隔としても、可能な最も精度の高い検査系列を得ることができる。互いに矛盾する値の割り振りがない複数の検査系列を重ね合わせる手段と併用すれば、時間的精度を可能な限り保った上で、少ない検査系列数で、検出率の高いテストが可能となる。
【0028】
遷移信号の伝搬時間は、遷移の始点から終点までの各経路について、別々に取り扱う必要がある。しかし、経路の数は、全ての始点から全ての終点までの通り得る素子と配線の全ての組合せ数になり非常に多い。経路の探索における選択肢は、分岐する配線の接続先素子の入力端子または素子に遷移信号が流入する入力端子の選択に他ならない。そこで、本発明は、選択の優先順位を決める伝搬時間に相当する数値を素子の入力端子毎に算出して保持する手段を用いる。これにより、伝搬時間のより長い経路の選択の処理を簡略化し処理時間を短縮できる。
【0029】
故障の検出判定手段は、故障仮定部位を通過する遷移信号が遷移の発生点から伝搬先の観測点まで伝搬するのにかかる時間とテスト時間間隔との差が、仮定する故障による遅延時間増加量と比較して小さい場合に検出可能と判定する。故障の検出率は、前記増加量を定義する数値に依存して変化する。前記の増加量の複数の数値に対応して検出率を求めて表示する手段を用いることにより、どの程度の遅延故障がどのくらい検出できる状態にあるか把握し、テストの品質を管理することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は本発明一実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャート、図2は本発明の実施形態の説明に用いるテスト対象回路例の論理的構成を示す図、図3は図2に示す記憶素子であるフリップフロップ(FF)の動作を定義する等価回路を示す図、図4は図3に示す等価回路における基本素子の動作を定義する真理値表を示す図、図5は図2に示すアドレスデコーダの動作を定義する真理値表を示す図、図6は図2に示すの回路例を記憶装置に格納する場合の情報の構造を説明する図、図7は図6における記憶素子の素子番号とスキャンアドレスとの対応を表として示す図、図8は図6に示す素子機能名毎の各入力端子から出力端子への遷移信号伝搬時間に相当する数値の例を示す図、図9は図2に示す回路例の配線毎の遷移信号伝搬時間に相当する数値の例を示す図、図10は図2に示す回路例を対象に検査系列生成を実施した場合に得られる第1の内部状態の例を説明する図、図11は図10に示す第1の内部状態から導かれる検査系列のタイムチャートを説明する図、図12は図1に示すフローにおけるステップ108での処理の詳細を説明するフローチャート、図13は図2の回路例における外部クロック入力端子でのテスト時間間隔と遷移信号発生フリップフロップのデータ出力端子から遷移信号到達フリップフロップのデータ入力端子までの信号伝搬時間との関係を説明する図である。図2、図3において、201〜212は入力端子、213〜226はフリップフロップ(FF)、227〜245はゲート素子、246はデコーダ、247はORゲート、248〜252は出力端子、302はFF素子である。
【0031】
まず、本発明の実施形態の説明に使用するテスト対象回路例について説明する。図2に示す回路例は、回路内の記憶素子であるFF213〜226にスキャン回路を通してデータの書き込みと読み出しと可能に構成されている。スキャン回路は、データ書き込みのためのアドレスデコーダ246とデータ読み出しのためのゲート247とにより構成されている。なお、図2に丸印の中に記載して示す数字は、以後の説明及び図面の中における素子番号である。
【0032】
図2に示す回路例において、スキャンアドレス入力端子P12〜P15(209〜212)に書き込み対象フリップフロップのスキャンアドレスを印加し、システムクロック入力端子P11(208)を不活性側の値、図2の例では“0”にした状態で、スキャンデータ入力端子P10(207)にデータを印加し、スキャンクロック入力端子P9(206)にクロックパルスを印加すると、前記データが前記書き込み対象フリップフロップに書き込まれる。また、スキャンアドレス入力端子209〜212に読み出し対象フリップフロップのスキャンアドレスを印加すると、読み出し対象フリップフロップの保持するデータがスキャンデータ出力端子P16(252)から観測することができる。
【0033】
各FF213〜226は、図3の論理等価回路で表わされる機能を持った素子であり、素子302の各入出力端子D、C、S、R、Qは、それぞれ、図4に示す真理値表の記述におけるD、C、S、R、Qの信号と対応している。図3に示す境界線301の入力C306を“0”にした状態で、入力SD308を“1”にし、かつ、入力SC307を一時“1”にすると、素子302に“1”が書き込まれ、出力Q303が“1”となる。また、入力C306を“0”にした状態で、入力SD308を“0”にし、かつ、入力SC307を一時“1”にすると、素子302に“0”が書き込まれ、出力Q303が“0”となる。出力q304は、入力A309が“0”のとき、常に“0”となり、入力A309が“1”のとき、出力Q303と同一の値を出力する。
【0034】
図2に示す回路例におけるFF213〜226の入出力端子D、C、SC、SD、A、Q、qはそれぞれ、図3における境界線301の信号線D305、C306、SC307、SD308、A309、Q303、q304に対応している。各記憶素子の端子SC307には、スキャンクロック入力端子P9(206)の値がゲート243の出力信号線scを介して分配され、端子SD308には、スキャンデータ入力端子P10(207)の値がゲート244の出力信号線sdを介して分配され、端子C306には、システムクロック入力端子P11(208)の値がゲート245の出力信号線c0を介してが分配される。また、端子A309には、スキャンアドレス入力端子P12〜P15(209〜212)をアドレスデコーダ246でデコードした結果のアドレス選択信号線s0〜s13の14本の内の対応する1本が接続されている。例えば、FF213は、アドレス選択信号線s0に接続されている。FF213〜226の出力q304は、その全てがゲート247の入力端子に接続され、アドレス選択信号線により選択されたFFが保持する値をスキャンデータ出力端子P16(252)から観測することができる。
【0035】
デコーダ246の動作は、図5に示す真理値表によって定義される。すなわち、入力端子へのアドレスの割り振りは、アドレスを2進数で表したときの最下位の2の0乗ビットがA0、順に、1乗ビットがA1、2乗ビットがA2、3乗ビットがA3にそれぞれ相当する。アドレス0から15が昇順に、出力端子d0からd15に対応する。例えば、FF218への書き込みや読み出しは、A0、A1、A2、A3に“1”、“0”、“1”、“0”を印加して行うことができる。
【0036】
図2に示す回路例における、スキャン機能を利用することにより、記憶素子であるFFに対する任意の内部状態の設定と観測の操作のパタンとを、各記憶素子とアドレスの対応とを認識するだけで生成することができる。従って、後述する図1に示すフローのステップ2で作成する図6の結線表例には、スキャン関連論理部分は記載せずに、代わりに、図7に示すような記憶素子のスキャンアドレスリストを作成し、後のステップで参照することとする。図7に示すスキャンアドレスリストは、図2に示す回路例におけるFF213〜226の素子番号7〜11、18〜22、34〜37のそれぞれに対応するスキャンアドレスを表としたものである。
【0037】
図6に示す図2に示す回路例の結線表は、後述する図1の処理フローにおけるステップ102で作成されるもので、素子表601と、入力先表602と、出力先表603との3部分から構成される公知の形式を有するものである。素子表601は、素子に通し番号を振り、通し番号順に並べた表であり、各素子の機能をFFであれば“ff”、論理積を取る素子であるANDゲートであれば“and”、論理和を取る素子であるORゲートであれば“or”、外部入出力端子であれば“edge”で記述する。各素子の入力端子の接続先は、入力先表602に記述される。入力先表602の中の各素子に対応する部分は、素子表の入力先表先頭位置と入力数とにより識別する。例えば、7番素子は“ff”なのでFFであり、スキャン関連論理以外で接続のある入力端子は2つあり、入力先表602の1番目から2行がこれらの記述に相当することがわかる。入力先表602の該当範囲を参照すると、そのFFの1番端子が1番素子の11番端子に繋がり、2番端子が12番素子の11番端子に繋がることがわかる。
【0038】
各素子の出力端子の接続先は、出力先表603に記述される。出力先表603の中の各素子に対応する部分は、素子表601の出力先表先頭位置と出力先数とにより識別する。例えば、7番素子は、スキャン関連論理以外の接続先が1つであり、出力先表603の7番目の1行がこの記述に相当することが判る。出力先表の該当範囲を参照すると、そのFFの11番端子が13番素子に繋がり、繋がり先の素子の入力端子に関連した情報は、入力先表602の12行目に記載されていて、接続先入力端子は1番であることがわかる。
【0039】
なお、前述において、入力端子の番号は、図2に記載された各素子の左上から順に1番から、出力端子の番号は、図2に記載された各素子の右上から順に11番から振っている。
【0040】
次に、図8、図9を参照して、図2に示す回路例における素子機能名毎の各入力端子から出力端子への遷移信号伝搬時間に相当する数値の例と配線毎の遷移信号伝搬時間に相当する数値の例とについて説明する。なお、図8、図9に示す遷移信号伝搬時間の表は、後述する図1の処理フローにおけるステップ104で作成されるものである。
【0041】
図8に示す表には、素子毎の各入力端子から各出力端子への信号遷移の伝搬時間が格納されており、各素子機能名の各入力端子1つと出力端子1つとの組に対して伝搬時間が定義されている。例えば、図8において、FFの2番端子から11番端子への伝搬時間(第5行目)は、保持する値と異なる値がデータ入力Dに存在する状態にあるとき、クロック入力Cに“0”から“1”への遷移信号が印加された瞬間から、出力端子Qに保持する値の変化が現れるまでの時間間隔である。また、FFの1番端子から11番端子への伝搬時間(第6行目)は、データ入力Dに遷移信号が到着した後、クロック入力Cに“0”から“1”への遷移信号を印加してデータ入力Dの遷移の後の値を素子内部に取り込むために、クロック入力Cの遷移信号印加をどれほどデータ入力Dの遷移信号が到着時刻から遅らせなければならないか示す値である。この値の絶対値は、その他のここに説明する伝搬時間の値を相殺する性質を持つため、負の値として示している。
【0042】
図9に示す表は、素子間の配線の遷移信号の伝搬時間を記載する表であり、各伝搬時間は、各信号線の接続先素子の入力端子に対応して格納される。各伝搬時間の通し番号は、図6により説明した入力端子が対応する入力先表602の通し番号と一致する。そして、配線の遷移信号の伝搬時間は、外部入力端子または素子の出力端子から外部出力端子または素子の入力端子への配線経路毎に定義されている。
【0043】
図10に示す図2に示す回路例を対象に検査系列生成を実施した場合に得られる第1の内部状態の例は、後述する図1の処理フローにおけるステップ105で作成されるものであり、割り振られる論理値を、FFの素子番号に対応させて定義したものである。この図10において、論理値“X”は、未割り振り(状態不明)を意味する。また、図11に示す図10に示す第1の内部状態から導かれる検査系列のタイムチャートは、後述する図1の処理フローにおけるステップ106で作成されるものであり、これについての詳細は、図1に示すフローを説明する中で説明する。
【0044】
次に、図1に示すフローを参照して、は本発明一実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明する。
【0045】
(1)ステップ101、102での処理
初めに、図2により説明したようなテスト対象回路を構成する素子と、素子との間の配線との情報を入力する。入力された記情報は、結線表に格納される。図2に示すの回路例を入力した場合、結線表は、図6により説明したようなものとなる。
【0046】
(2)ステップ103、104での処理
次に、各素子及び素子相互間の配線の信号伝搬時間の情報を入力し、信号伝搬時間の値の表を作成する。これにより、図8、図9により説明した素子機能名毎の各入力端子から出力端子への遷移信号伝搬時間に相当する数値と配線毎の遷移信号伝搬時間に相当する数値とを格納した表が作成される。
【0047】
(3)ステップ105での処理
次に、テスト対象回路内の記憶素子へ論理値を割り振り、図10により説明したような第1の内部状態を決定し、割り振られる論理値を、FFの素子番号に対応させて定義する。
【0048】
(4)ステップ106での処理
次に、ステップ105で記憶素子へ割り振られた第1の内部状態をテスト対象回路に設定するための検査系列を生成する。図10に定義した第1の内部状態から生成される検査系列の例のタイムチャートを図11に示しており、以下、これについて説明する。
【0049】
図11に示すように、図10に定義した第1の内部状態の例から生成される検査系列は30のパターンからなる。先頭から14のパターン(通し番号0〜13)は、図7により説明した記憶素子のスキャンアドレスリストを先頭行から順に参照して、各アドレスに相当する値4ビットをスキャンアドレスの外部入力端子P12〜P15に設定し、対応するアドレスのFFの素子番号の第1の内部状態での割り振られた論理値を図10の内部状態の表から取得し、この値をスキャンデータの外部入力端子P10に設定し、スキャンクロックの外部入力端子P9にパルスを設定してFF内に第1の状態作成するパターンである。アドレス10から13に対応する4つのFFには、論理値の割り当てがなく、内部状態の表には“X”が記述されているので、ここでは、便宜的に外部入力端子P10の値を“0”に固定する。
【0050】
次の2つパターン(通し番号14、15)は、それぞれ、システムクロックの外部入力端子P11にパルスを印加するパターンである。図2に示すテスト対象回路例のテスト時の動作は、通し番号14のパターンにおけるパルスの立ち上がりが各FFのクロック入力端子Cに到着した時刻から、図8に示す素子の信号伝搬時間の表の第5行目の伝搬時間が経過した後、保持する値と異なる値がデータ入力Dに存在する状態にあるFFの出力端子Qに信号遷移が発生して、回路内に伝搬するというものとなる。
【0051】
そして、通し番号15のパターンにおけるパルスの立ち上がりが各FFのクロック入力端子Cに到着した時刻に、図8に示す素子の信号伝搬時間の表の第6行目の伝搬時間を足した時刻、すなわち、この例では0.1単位時間だけ遡った時刻までに、データ入力Dに前記遷移信号が到着したFFの保持する値が、遷移後の値に反転し、テスト対象回路が第2の内部状態に到達する。遅延故障が存在するために遷移信号の実回路中の伝搬時間が、設計値である図8、図9に示す伝搬時間を超えると、データ入力Dへの前述の遷移信号の到着が遅れ、第2の内部状態は、正常な場合と異なるものとなる。
【0052】
図11に示す検査系列の次の14のパターン(通し番号16〜29)は、第2の内部状態の観測を目的とするパターンであり、先頭の14のパターン(通し番号0〜13)の場合と同様に、アドレスを順次設定するが、スキャンクロック外部入力端子P9を“0”としたまま、スキャンデータ外部出力端子P16を観測するパターンである。
【0053】
(5)ステップ107での処理
次に、テスト対象回路に遅延故障を仮定する。一例として、図2の回路例における第28番素子の第2番入力端子に遅延故障を仮定する。この場合、入力先表602上の第35行目が故障仮定点となる。
【0054】
(6)ステップ108での処理
次に、第1の内部状態及び第2の内部状態における各素子の出力信号値を求める。説明している本発明の実施形態の場合、スキャン回路を用いて第1の内部状態の設定と、第2の内部状態の観測とを行うことができる。従って、前述の第1の内部状態の設定と第2の内部状態の観測を行う検査系列部分については、テスト対象回路の応答の模擬を行う必要はない。遅延故障の顕現と伝搬に係わる遷移の発生は、通し番号14のパターンのシステムクロックのパルスの立ち上がりだけである。従って、仮定した故障の検出可能性を判定するには、前述のパルスの立ち上がりの前の第1の内部状態と、その後の第2の内部状態とにおける各素子の信号線の値を求めればよいことになる。ここでの処理の詳細は、図12に示すフローにより後述する。すなわち、外部入力端子P0〜P11まで、テスト中全て“0”に固定されるとみなして、図10に示す第1の内部状態を用いて、ここでの処理を実行し、第1及び第2の内部状態における各素子の出力値を求めた結果を図6の対応する欄に格納する。
【0055】
(7)ステップ109での処理
次に、仮定した故障の顕現と伝搬とを調べ、信号遷移が故障仮定点を通らないか、または、記憶素子に伝搬しないかを判定する。故障仮定点は、前述したように、第28番素子の第2番入力端子なので、まず、その入力先を入力先表602でたどると第26番素子となる。第26番素子は、素子表601から、第1の内部状態では“0”、第2の内部状態では“1”となって、遷移が故障仮定点を通り、ここで顕現していることが判る。次に、伝搬を調べると、第28番素子の出力値は“0”から“1”へ遷移しており、その出力先を出力先表603でたどると、第29番素子と第30番素子とに伝搬していることが判る。素子表601から、第29番素子と第30番素子との両出力は“0”から“1”へ遷移しているので、さらにその出力先を出力先表603でたどる。この結果、伝搬先は第32番、第35番、第36番の各素子であるが、第32番素子の出力は遷移を起こしていないのでさらにその先をたどることはしない。第35番素子と第36番素子とはFFであるので、前述の仮定故障は検出の可能性があり、個々での判定はnoとなる。
【0056】
(8)ステップ110での処理
ステップ109で、仮定故障は検出の可能性があると判定されたので、次に、故障仮定点を通過する信号遷移の発生源となるFFを探索する。第28番素子の第2番入力端子は、第26番素子の出力に繋がる。入力先表602から、第26番素子の2つの入力端子の接続先は、第24番素子と第21番素子とであることが判る。第21番素子は、遷移を起こしていないので、次に第24番素子の入力のみたどる。第24番素子の入力端子は第20番素子に接続され、この素子はFFであるのでここで探索を打ち切る。
【0057】
そして、前述により認識される遷移信号発生源のFFと、ステップ108によって認識される遷移信号到達FFとの各組合せ毎に、その間に存在する信号伝搬経路上の各信号線と各素子の伝搬時間の和の最大値を、図8及び図9の値から求める。説明している実施形態の場合、故障仮定点を通過する遷移信号発生源FFは第20番素子のFF220であり、遷移信号到達先FFは、第35番素子のFF224と第36番素子のFF225とである。それぞれ伝搬時間の和をとると、FF224のデータ入力端子Dへは1.5単位時間、FF225へは1.3単位時間で伝搬する値となる。
【0058】
図13に示すように、前述の信号伝搬時間の数値は、FFの出力端子Qから入力端子Dまでの伝搬時間1314、1315であり、図11の検査系列例におけるテスト時間間隔1303とは異なる。FF220の出力端子Qに信号遷移が生ずるのは、クロック外部入力端子P11に印加されたクロックパルスの立ち上がり1301が、素子245を通ってFF220のクロック入力Cに到達した1304後、さらに、図8に示す表の第5行目に定義された遅延時間、すなわちFFの遅延時間1307だけ経過した後である。FF220からFF224、225への各信号遷移の伝搬は、それぞれ時間間隔1314、1315に対応する。
【0059】
テスト対象回路が正常である場合における第2の内部状態は、前述した各信号の遷移後の値が各伝搬先のFFに取り込まれることが前提である。従って、前述の時間間隔1314、1315の各終端は、それぞれFF224、225の外部クロックパルス1302によるデータ入力端子Dからの取り込みが可能な時間範囲にあることが必要である。各FF224、225のクロック入力端子Cに外部クロックパルス1302が到達する時刻は、それぞれクロック信号分配論理の遅延時間1310、1319の後であり、データ入力端子Dへの遷移到着は、それよりさらに、図8に示す表の第6行目に定義されたFFの遅延時間1311、1318だけ遡った時点以前である、時間範囲1312、1317に入っている必要がある。
【0060】
図2に示す回路例のような同期式順序回路は、FF間のデータの転送をなるべく一定の時間間隔で設計できるように、外部クロック入力端子から各FFまでの信号伝搬時間が揃うように設計される。また同じ理由から、FFも、遅延時間が揃った種類のものが使用される。ある誤差範囲を見込むことにより、遅延時間1306、1310、1319は互いに等しく、また、遅延時間1307、1311、1318は素子の種類毎に一定とみなすことができる。従って、仮定故障の検出可能性判定と検査系列生成との処理を、FFの出力端子Qから入力端子Dまでの伝搬時間1314、1315で実行することにより、精度を特に落とすことなく、処理量の削減を図ることができる。
【0061】
説明している本発明の実施形態は、図13に示す遅延時間1306は0.4単位時間であり、遅延時間1307と1311との絶対値は等しく0.1単位時間となる。外部クロック入力端子P11におけるテスト時間間隔1303は、FFの出力端子Qから入力端子Dまでの伝搬時間の上限1312に0.2単位時間を加えることにより得ることができる。
【0062】
(9)ステップ111、112での処理
次に、仮定する遅延故障の信号伝搬遅延の程度を表す第1のパラメータを用いて、仮定した故障の検出可能性を判定する値を求め、求められた判定値を元に検出か未検出かを判定する。
【0063】
例えば、図2に示す回路例の場合、FFの出力端子Qから入力端子Dまでの全ての種類の経路の伝搬時間の最大値は1.8単位時間であるので、0.2単位時間を加え、存在しうる全ての遷移信号伝搬に対応したテスト時間間隔として2.0単位時間を用いることが考えられる。この場合、FF224への経路の伝搬時間1.5単位時間より、テスト時間間隔の方が0.3単位時間長く、FF225への経路の伝搬時間1.3単位時間より、テスト時間間隔の方が0.5単位時間長い。この結果、遅延の程度が0.3単位時間より小さい故障が当該仮定部位に存在しても、図11に示す検査系列ではこの故障を検出することができないことになる。そして、遅延の程度が0.5単位時間より大きい故障が当該仮定部位に存在する場合、FF224、225の何れを読み出しても故障を検出ことが可能である。また、遅延の程度が0.4単位時間程度の故障が当該仮定部位に存在する場合、FF224を読み出せば検出が可能であるが、FF225を読み出しても検出することができない。
【0064】
本発明の実施形態は、テスト時間間隔精度パラメータを導入して、信号遷移が伝搬時間の長い経路を通る場合に検出と判定することによって、第1の内部状態候補の取捨選択を行い、検出できる故障の遅延の大きさを小さくしている。前述した図13において、第1のパラメータの値が0.4単位時間1313、1316とすると、FF224へ伝搬する経路では故障を検出することが可能であるが、FF225へ伝搬する経路では検出と判定されない。この場合、第7番素子の保持する値を“0”に置き換えた別の第1の内部状態としても、FF224へ伝搬する経路が第29番素子238で途切れてしまうので、仮定した故障を検出することができず、検査系列として採用することができない。
【0065】
記憶素子への信号遷移の伝搬経路が確立されると、その伝搬経路上の信号線や素子の端子に対して仮定される故障は、故障による遅延が大きければ全て検出可能である。前述した第1のパラメータを導入すると、テスト時間間隔に依存して、故障が検出されない場合がある。例えば、第30番素子239の出力端子を信号遷移が通ると、その遷移が記憶素子225に伝搬時間1.3の時間単位で伝搬しているので、その出力端子に遅延故障を仮定すると検出される可能性がある。しかし、テスト時間間隔として2.0単位時間を用い、前記第1のパラメータの値が0.4単位時間であると、伝搬経路の時間的長さが1.4単位時間以上ないと故障検出と判定されない。前述の条件の元では素子239の出力端子の遅延故障を検出するためには、FF222から225への伝搬時間1.5時間単位の伝搬経路を使う検査系列を追加する必要がある。
【0066】
検査系列毎にテスト時間間隔を変える方法も考えられる。第2の内部状態にある記憶素子の内容の読み出しをFF224、225に限定すると、観測結果に影響する信号遷移は、FF220からFF224への1.5単位時間と、FF225への1.3単位時間の伝搬経路のみである。そこで、0.2単位時間を加え、テスト時間間隔として1.7単位時間を用いることが考えられる。この場合、前述した第1のパラメータの値を小さくすることができ、例えば、この第1のパラメータの値を0.1単位時間とすると、検出と判定されるFFの出力Qからデータ入力Dへの伝搬時間範囲は1.4から1.5単位時間までであり、第28番素子237の第2番入力端子の故障は検出と判定されるが、第30番素子239の出力端子の故障は未検出と判定される。
【0067】
(10)ステップ113、114での処理
次に、終了判定の処理を行う。前述したステップ105とステップ106との処理で生成した処理中の検査系列に対して検出可能性を判定すべき未試行の仮定故障が存在する場合、ステップ107の処理に戻ってステップ107から113の処理の繰り返し、その繰返しが終了した後、未検出で残っている仮定故障を検出するための別の検査系列が必要か否か判定し、必要な場合、ステップ105の処理に戻って、ステップ105〜114の処理を繰り返す。判定すべき仮定故障が存在しない場合、処理を終了する。
【0068】
次に、図12に示すフローを参照して、前述したステップ108の処理の詳細を説明する。
【0069】
(1)ステップ108の処理が開始されると、まず、この処理が最初のステップ108の処理か否かをチェックし、最初の処理であった場合、記憶素子以外の素子の出力値を不定値“X”に設定する(ステップ1201、1202)。
【0070】
(2)ステップ1201で処理が最初の処理でなかった場合、または、ステップ1202の処理後、第1の内部状態の各記憶素子の値が素子表の記憶論理値と異なる場合、そのフィールドの値を入れ替える(ステップ1203)。
【0071】
(3)値の入れ替えのあった信号線の接続先の素子の論理機能名を参照して、その素子がFFであるか、外部出力端子であるか、あるいはそれ以外かを判定する(ステップ1204、1205)。
【0072】
(4)ステップ1205の判定で、信号線の接続先の素子がFFでもなく、外部出力端子でもなかった場合、素子の出力端子の値を、素子の論理に基づいて演算し、素子表の記載論理値と異なる場合、その内部状態のフィールドの値を入れ替える(ステップ1206)。
【0073】
(5)ステップ1206の処理後、または、ステップ1205の判定で、信号線の接続先の素子がFFまたは外部出力端子であった場合、値の入れ替えがあった信号線の接続先の素子がまだあるか否かを判定する。信号線の接続先の素子がまだあった場合、ステップ1204からの処理を繰り返す(ステップ1207)。
【0074】
(6)ステップ1207で、信号線の接続先の素子がないと判定した場合、第1の内部状態の各記憶素子の値を第2の内部状態の各記憶素子の値のフィールドに複写する。そして、各FFについて、データ入力端子Dに伝搬している値と、保持している値Qとが異なる場合、第2の内部状態のフィールドの値を、データ入力端子Dに伝搬している値に入れ替える(ステップ1208、1209)。
【0075】
(7)前述したステップ1204〜1206と同一の処理を第2の内部状態のフィールドについて繰り返し、値の入れ替えのあった信号線の接続先の素子があるか否かをチェックし、値の入れ替えのあった信号線の接続先の素子がある間、ステップ1204〜1206と同一の処理を第2の内部状態のフィールドについて繰り返し、値の入れ替えのあった信号線の接続先の素子がなくなったとき処理を終了する(ステップ1210、1211)。
【0076】
次に、図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を乱数列から得る本発明の他の実施形態の方法について説明する。
【0077】
実用的な擬似乱数列を簡便なアルゴリズムで得る方法は数多く知られている。例えば、Paul H. Bardell 著の Built-In Test for VLSI: Pseudorandom Techniques(1987)には、フィードバックレジスタを用いる方法が示されている。乱数を用いる方法は、信号遷移を特定の伝搬経路に限定することができず、最も時間のかかる経路を信号遷移が伝搬する可能性が常にある。この場合、テスト時間間隔を、信号遷移の伝搬し得る経路の最大値とし、図1に示すステップ111の判定値として、テスト時間間隔から時間間隔精度パラメータを減じた値を用いればよい。図2に示す回路例の場合、第20番素子220から第34番素子223への経路が最長で、値は1.8時間単位となる。
【0078】
テスト生成の処理が容易な、乱数列や疑似乱数発生回路を用いてテストする場合に、本発明を適用することによって、遅延の程度の大きな故障しか検出することができない故障仮定部位を未検出と認識することができる。すなわち、この未検出故障仮定部位を含む信号伝搬経路にのみ信号遷移が伝搬するテストパタンを生成し、必要なテスト時間間隔でテストすれば、全ての故障仮定部位について、遅延の程度の小さな故障を検出することができる。計算量を多く必要とするテスト生成の回数を、対象となる故障仮定部位の数を減らすことによって削減し、かつ検出可能な遅延の程度を小さくすることができる。
【0079】
図14は図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を得る本発明のさらに他の実施形態の処理動作を説明するフローチャート、図15は図14に示すフローのステップ1404〜1406で、格納されまた順序付けられる経路情報の例を説明する図、図16は図14に示すフローのステップ1407で、Dアルゴリズムを用いて遷移信号伝搬の条件を求める手段を説明する図、図17は図16に示す検査キューブを元に得られた第1の内部状態の例を説明する図である。以下、図15〜図17を参照しながら図14に示すフローについて説明する。図14により説明する例は、遷移信号伝搬経路の探索に繰り返し処理が生じることによる処理時間をある範囲内に抑えるため、それぞれの探索処理を途中で放棄する判定と、判定の基準とを用意したものである。
【0080】
(1)ステップ1401〜1403での処理
最初に処理をする場合か否かを判定し、最初に処理をする場合、1つの故障についての探索試行の対象とする遷移信号伝搬経路の種類数を入力する。最初に処理ではない場合、または、後述するステップ1409の処理で、試行中の故障について別の種類の経路を選択して探索を繰り返すか、別の故障についての経路の探索処理へ移るかの決定により、別の故障についての経路の探索となった場合、まだ未検出で、未試行の故障仮定点に故障を仮定する。ここにおいて、いま、図2の回路例における第28番素子237の第2番入力、すなわち、入力先表602の第35番に故障を仮定した場合を考える。
【0081】
(2)ステップ1404での処理
次に、故障仮定点から入力側にたどり、記憶素子の出力との間の信号伝搬可能経路の伝搬時間を求め、その数値及び経路を特定する情報を格納する。すなわち、前述した故障仮定点から入力側に向かって、遷移信号の可能な伝搬元と伝搬経路とを探索すると、図15(a)に示すように情報が得られる。伝搬経路は2つあり、経路番号1501としてそれぞれs1、s2と番号を付ける。始点となる記憶素子の番号1502は、それぞれ第20番素子220と第21番素子221であり、経路の配線番号と素子番号とはそれぞれ図に示すとおりとなる。図15において、経路の配線番号と素子番号とを示す列1503の配線番号は括弧で囲まれ、素子番号と区別している。配線番号は、入力先表602の第1列に記載した番号に相当する。経路s1は、第20番素子220から始まり、第24番素子233と第26番素子235を通り、第28番素子237の第2番端子に至る。各経路の伝搬時間は、図9、図8に示した伝搬時間を参照して得ることができ、それぞれ伝搬時間の列1504に記載された。
【0082】
(3)ステップ1405での処理
次に、故障仮定点から出力側にたどり、記憶素子の出力との間の信号伝搬可能経路の伝搬時間を求め、その数値及び経路を特定する情報を格納する。すなわち、前述した故障仮定点のある第35番配線から、出力側に向かって、遷移信号の可能な伝搬先と伝搬経路を探索する。その結果は、図15(b)に示すようなものとなる。説明している例では、3種類の伝搬経路が考えられ、それぞれk1、k2、k3と番号が付けられる。
【0083】
(4)ステップ1406での処理
次に、ステップ1404で格納された経路とステップ1405で格納された経路との組について、記憶素子の出力から故障仮定点を通り、記憶素子の入力端子に到る経路の伝搬時間について長い方から順序付ける。図15(a)の経路と図15(b)との各経路の組合せについて、すなわち、記憶素子の出力端子から故障仮定点を通り、記憶素子の入力端子に至る経路について伝搬時間の値の大きな順に順序づける。結果を図15(c)に示しており、組合せは、6種類がありえることになる。
【0084】
(5)ステップ1407での処理
次に、ステップ1406で順序付けられた伝搬経路の組の未試行であるもものうち、尤も伝搬時間の大きな方から選択し、その経路を遷移信号が伝搬する条件を満たす記憶素子への論理値の割り振りを探索する。すなわち、まだ、遷移信号の伝搬条件が成立するか探索していない回路の組のうち最も伝搬時間のかかる組について、遷移信号の伝搬条件を探索する。この探索は、システムクロック入力端子P11(208)にパルスを印加し、経路始点の記憶素子の出力端子に信号遷移が発生し、この遷移が、選択された伝搬経路を伝搬し、終点の記憶素子の入力端子にまで至るような各記憶素子への論理値割り振り、すなわち、経路活性化条件を満たす第1の内部状態を求めることである。この探索は、樹下行三著「ディジタル回路の故障診断(上)」に記載されているDアルゴリズム等を応用して行うことができる。
【0085】
Dアルゴリズムは、正常時に論理的“1”、故障時に論理的“0”となる状態を表す論理値“D”及びその論理的反転値、すなわち正常時に論理的“0”、故障時に論理的“1”となる状態を表す論理値“^D”を外部出力端子まで伝搬させる条件である検査キューブを求める。例えば、“0”から“1”への信号遷移を“D”に、“1”から“0”への信号遷移を“^D”に置き換えて、Dアルゴリズムを適用することにより、信号遷移の伝搬条件を求めることができる。例として、“0”から“1”への信号遷移を伝搬させる条件を求める方法を、図15(c)に示す最長経路である第1番の組(s1、k1)を選択し、検査キューブを求めるものとして、その過程を図16(a)に示しており、これについて説明する。
【0086】
まず、経路上の素子である素子番号26、24、28、29、32番の伝搬DキューブのD交差をとる。各配線番号毎にD交差の結果を記述し、中間結果の検査キューブを第6行目に示す。Dアルゴリズムは、Dドライブが完了した状態に相当する。次に、図16に記載された番号の配線に接続する未だ入出力値が決定されていない素子(素子番号23、27)の基本キューブとD交差をとる。この結果、素子番号23についてのD交差は成功するが、素子番号27についてのD交差は、配線番号33について矛盾することがわかる。これは、第1番の組の経路を活性化する条件を満足する論理値の割り振りが存在しないことを意味する。
【0087】
(6)ステップ1408、1409での処理
ステップ1407での探索で経路を活性化する条件を満足する論理値の割り振りが存在しなかったか否かを判定する。条件を満足する論理値の割り振りが存在しなかった場合、“yes”の方へ処理が移り、他の故障を仮定するか、次に伝搬時間の長い経路について試行するかを決定する。
【0088】
(7)ステップ1407、1408での再処理とステップ1410での処理
ステップ1409で、故障あたりの試行伝搬経路種類上限数に達していない場合は、次の経路、説明している例では、図15(c)の第2番の組(s1、k2)を選択し、ステップ1407の処理に戻って、再度検査キューブを求める。この場合の検査キューブを求める過程を図16(b)に示す。Dドライブ完了後の状態に相当する中間検査キューブと第23番素子の基本キューブとのD交差をとって、図16(b)の第4行目の検査キューブを得る。配線番号第32、34、28番は、それぞれ記憶素子の第21、19、18番の出力端子に接続されており、各配線への要求値“0”、“1”、“1”をそのままそれぞれの記憶素子の第1の内部状態でとる値とする。この段階では矛盾は生じていないので、次に、遷移信号の始点である第20番の記憶素子に“0”から“1”への信号遷移を発生させ、値の割り振られた他の記憶素子(第21、19、18番)の値が変化しない条件を求める。第1の内部状態において第20番記憶素子の出力は“0”であるので、第20番記憶素子への値の割り振りは“0”である。
【0089】
クロック入力にパルスが印加された後に“1”になるのであるから、第1の内部状態において、第20番記憶素子のデータ入力端子には“1”が伝搬している必要がある。他の記憶素子(第21、19、18番)については、第1の状態で割り振られている値と同じ値がそれぞれのデータ入力端子に伝搬していれば遷移が生じない。従って、これら記憶素子のデータ入力に接続されている配線番号18、20、22、24番に対して、それぞれ、“1”、“1”、“1”、“0”を要求して、繋がる素子の基本キューブを選択してD交差を繰り返し、検査キューブを求める。
【0090】
前述の処理結果を図16(c)に示す。配線12〜16番にそれぞれ“1”、“1”、“1”、“0”、“0”が伝搬すればよく、これは接続先記憶素子第7〜10番にそれぞれ“1”、“1”、“1”、“0”が書き込まれていればよいことを示す。以上に説明したステップ1407の処理によって、候補となる6種の遷移信号伝搬経路のうち、仮定した故障を検出できる最も伝搬時間の長い経路の1つは第2番の(s1、k2)の組であり、伝搬時間が1.5時間単位で、スキャンによって書き込む第1の内部状態は図17に示す通りとなる。
【0091】
前述した本発明の実施形態による処理によれば、候補としてあげることのできる故障検出のための遷移信号伝搬経路のうちで、ある処理時間の範囲内で見つけることのできる、最も伝搬時間の長い経路を使う検査系列を作ることができ、テスト時間間隔が広くても、全ての故障仮定部位において、遅延の程度のより小さな故障を検出する確率を高めることができる。ある故障を検出するための検査系列を前述した本発明の実施形態によって生成する場合、検出可能な遅延の程度がある値であるならば検査系列の生成を放棄して、処理時間の節約を図ることも容易であり、この場合、図15(c)に例示した表の合計伝搬時間がある値より小さい要素を無効とすればよい。
【0092】
図18は図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を得る本発明のさらに他の実施形態の処理動作を説明するフローチャート、図19は図18のステップ1803の処理で得られる情報の例を説明する図、図20は図18のステップ1805〜1819での処理での検査キューブの生成過程を説明する図、図21は図18に示す処理で求められた第1の内部状態の例を示す図である。
【0093】
本発明は、テスト生成処理において、可能な最も大きい遷移信号の伝搬時間値を持つ経路を探索することによって、遅延時間の程度の小さな故障の検出能力の高い検査系列を得ることができる。この場合の処理について、図19〜図21を参照しながら図18に示すフローを説明する。
【0094】
(1)ステップ1801〜1803での処理
ステップ105の処理が開始されると、その処理が最初の処理か否かをチェックし、最初の処理の場合、矛盾打切り回数を入力し、全素子全入力端子について、記憶素子への遷移信号の伝搬経路の伝搬時間の最大値T1と、記憶素子からの遷移信号の伝搬経路の伝搬時間の最大値T2を求め、これらの和の値Tを格納する。ここでのステップ1802、1803の処理は、故障を仮定して検出経路を探索する以後のステップ1804の処理に先立って1度実行されればよい。
【0095】
以下、図2に示す回路例について、図8に示す素子遅延時間と、図9に示す配線遅延時間とを使用してステップ1803を実行した場合の例を図19を参照して説明する。
【0096】
各素子の入力端子における記憶素子への遷移信号の伝搬経路の伝搬時間の最大値T1は、記憶素子のデータ入力端子からその入力端子まで配線をたどり、経路上の各配線の遅延時間と各素子の遅延時間とを合計して得ることができる。複数の経路がある場合、数値の大きい方を選択する。例えば、図2における第29番素子238の入力端子の場合、第35番記憶素子への経路の遅延時間は0.3時間単位であるが、第34番記憶素子への経路の遅延時間は0.6時間単位であり、伝搬時間の最大値T1として、0.6時間単位を用いる。伝搬時間の最大値T1は、同一素子の入力端子については同じ値となる。
【0097】
各素子の入力端子における記憶素子からの遷移信号の伝搬経路の伝搬時間の最大値T2は、記憶素子の出力端子からその入力端子まで配線をたどり、経路上の各配線の遅延時間と各素子の遅延時間とを合計して得ることができる。複数の経路がある場合、数値の大きい方を選択する。例えば、図2における第29番素子238の第2入力端子の場合、第19番、第20番、第21番の記憶素子からの経路があり、それぞれ0.6、1.2、0.9時間単位となる。従って、伝搬時間の最大値T2として、1.2時間単位を用いる。図19に示す例ではT1とT2との合計値T1904も示している。各素子の入力端子は、配線番号に1対1に対応するので、各値は配線番号に対応させて格納される。
【0098】
(2)ステップ1804での処理
素子の入出力端子のうち、まだ故障仮定を試行していない部位を探して選択し、故障を仮定する。一度選択された故障は、試行済みとする。説明している例では、図2に示す回路例における第28番素子の第2番端子が選択されたものとする。この第28番素子の第2番端子は配線番号の第35番に対応する。ここに、“0”から“1”への遷移信号の伝搬が遅延する種類の故障を仮定する。
【0099】
(3)ステップ1805での処理
以後の処理において、信号遷移を論理値“D”または“^D”(Dの反転値)に対応させて、Dアルゴリズムを用い、故障を仮定した素子の入力端子を信号遷移が通る、可能な最も長い経路を伝搬する第1の内部状態を探索する。すなわち、まず、“0”から“1”への信号遷移を論理値“D”に対応させて、故障を仮定した素子の入力端子から出力端子へ“D”または“^D”が伝搬する伝搬Dキューブを選択する。この条件を満足する未試行のキューブが複数存在する場合、“D”または“^D”が割り振られる入力端子が前記選択肢の範囲で、伝搬時間T1とT2との和T1904が最大のキューブを選択する。
【0100】
縮退故障に対する従来のDアルゴリズムの場合、故障を仮定した素子の基本Dキューブを選択するが、ここで説明している本発明の実施形態の場合、記憶素子の出力端子を始点に記憶素子の入力端子まで、故障仮定点を通る経路に“D”または“^D”を伝搬させるので、故障仮定素子についても伝搬Dキューブを選択する。前記伝搬Dキューブを検査キューブとして、後述するステップ1806以降で必要な各素子のキューブとD交差を繰り返し、目的の第1の状態に対応する検査キューブを求める。
【0101】
(4)ステップ1806〜1808での処理
ここでのステップの処理において、含意操作、すなわち、一意に選択される基本キューブと検査キューブのD交差を行う。矛盾が生じた場合、直前の一意ではない選択における未試行の選択肢を選択して処理を繰り返す。
【0102】
(5)ステップ1809での処理
未試行の伝搬Dキューブのある方について、優先順位の高い方から選択し、検査キューブとD交差をとる。その際、前述のステップ1804または1805で別の選択がなされるまで、一度選択されたキューブは試行済みとする。前述の選択は、Dフロンティアを選択した場合、“D”または“^D”が割り振られる入力端子の伝搬時間Tが大きい方の伝搬Dキューブを選択するように行い、また、拡張Dフロンティアを選択した場合、その素子の出力端子の接続先の“D”または“^D”が割り振られる入力端子の伝搬時間Tが大きい値である拡張Dフロンティアを選択し、あるいは、“D”または“^D”が割り振られるその素子の入力端子の伝搬時間Tが大きい値である伝搬キューブを選択するように行われる。
【0103】
すなわち、“D”または“^D”を故障仮定部位から記憶素子の入出力端子へ伝搬させる。記憶素子の入力端子まで伝搬させる操作は、縮退故障に対する従来のDアルゴリズムのDドライブに相当する。記憶素子の出力端子まで遡って伝搬させる操作は、従来アルゴリズムに相当する操作が存在しないが、出力端子の接続先に“D”または“^D”が割り振られていて、入力端子にまだ割り振りがなされていない記憶素子以外の素子を従来のDフロンティアに対応させて拡張Dフロンティアとみなし、入力端子に“D”または“^D”が割り振られるように伝搬Dキューブを選択し、D交差をとる操作を繰り返し、遡って伝搬させることができる。ここでのDフロンティア及び拡張Dフロンティアの選択、及び伝搬Dキューブの選択に際しては、“D”または“^D”の伝搬する入力端子の伝搬時間T1904が、未試行の選択肢について最大となるようにする。
【0104】
(6)ステップ1810での処理
ステップ1809での処理に矛盾があるか否か、すなわち、D交差に失敗がしているか否かをチェックし、処理に矛盾があるし認識した場合、直前の一意ではない選択における未試行の選択肢を選択して処理を繰り返す。
【0105】
(7)ステップ1811〜1813での処理
ここでのステップの処理において、含意操作、すなわち、一意に選択される基本キューブと検査キューブのD交差を行う。矛盾が生じた場合、直前の一意ではない選択における未試行の選択肢を選択して処理を繰り返すが、後述するステップ1819で、ここでのステップ1812と後述のステップ1816とにおける矛盾の認識の連続回数が、ステップ1802で入力した数値を超えると、ステップ0809へは戻らず、ステップ1804か1805のうち最も後の選択で、未試行の選択肢を採用して処理を繰り返す。
【0106】
(8)ステップ1814での処理
Dフロンティアか拡張Dフロンティアが存在するか否かをチェックし、Dフロンティアと拡張Dフロンティアとが記憶素子に到達して消滅したと認識されるまで、ステップ1804から1813までの“D”または“^D”の伝搬経路の探索を続ける。
【0107】
(9)ステップ1815〜1817での処理
ステップ1814で、Dフロンティアと拡張Dフロンティアとが記憶素子に到達して消滅したことを確認すると、まず、一致操作、すなわち、基本キューブと検査キューブのD交差をとる処理において、従来のDアルゴリズムと同様に、出力端子の接続先配線には値が割り振られているが、値の割り振られていない入力端子のある素子の、一意に選択される基本キューブと検査キューブとのD交差をとる。ステップ1812と1816とにおける矛盾の認識の連続回数が、ステップ1802で入力した数値を超えると、ステップ1809へは戻らず、ステップ1804か1805のうち、最も後の選択で、未試行の選択肢を採用して処理を繰り返す。D交差のために選択できるキューブがなくなると処理は終了する。
【0108】
ステップ1805から1819までの処理における、“0”から“1”への遷移信号の伝搬が遅延する種類の故障を、第28番素子の第2番端子に仮定した場合の検査キューブの生成過程を図20(a)に示している。最終行の検査キューブにおいて、それぞれ配線番号28、29、30、32、33に論理値“1”、“D”、“0”、“0”、“1”が割り振られる。配線番号29に割り振られた論理値“D”は、接続先の第20番記憶素子が、第1の内部状態において“0”を保持していて、かつ、データ入力端子に“1”が伝搬していることを意味する。そこで、各接続先の記憶素子の第18、20、22、21、19番の入力端子、すなわち、配線番号18、22、26、24、20に、それぞれ論理値“1”、“1”、“0”、“0”、“1”を要求して、図18に示す一致操作を行うことにより必要な記憶素子の保持する値を求めることができ、図20(b)に示すような検査キューブが得られる。以上の結果から、第1の内部状態が、図21に示ように求められる。
【0109】
前述した図18による処理を行う本発明の実施形態によれば、故障仮定点を信号遷移が通る、可能な最も伝搬時間の長い経路を使った検査が可能となる。そして、この例によれば、テスト時間間隔を各故障毎に調整しないテスト方法をとっても、全ての故障について、実用上可能な範囲で最も時間精度の高いテストを行うことができる。
【0110】
図22は図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を得る本発明のさらに他の実施形態の処理動作を説明するフローチャート、図23は図22のステップ2217の処理で求められた第1の内部状態の例を示す図である。以下、これについて説明する。
【0111】
(1)ステップ2201〜2219での処理
図22に示すフローにおけるステップ2201〜ステップ2219の処理は、図18に示すフローにおけるステップ1801〜ステップ1819での処理と同一である。前述で説明した図18に示すフローにおいては、ステップ1817で、一致操作の対象となる基本キューブが存在しない場合、その時点での論理値の割り振りが1つの第1の内部状態を求めた結果となり、図1に示すフローの1回のステップ105の処理が終了する。これに対して、図22に示すフローの場合、ステップ2217で、一致操作の対象となる基本キューブがないと判定された後の処理が図18の場合と相違する。
【0112】
(2)ステップ2220〜2222での処理
ステップ2217で、一致操作の対象となる基本キューブがないと判定された後、ステップ2220で、検査キューブと既にD交差をとられているキューブが属していない素子について、まだ未検出で未試行な故障の仮定点があるか判定する。もしあれば、ステップ2221に進んで故障を仮定をする。次に、ステップ2222で、信号遷移を論理値“D”に対応させて、故障を仮定した素子の入力端子から出力端子へ、故障仮定点を経由して“D”または“^D”が伝搬する条件が成立する伝搬Dキューブを選択する。前述の条件を満足する未試行のキューブが複数存在する場合、“D”または“^D”が割り振られる入力端子が前記選択肢の範囲で、伝搬時間T1とT2との和1904が最大のキューブが選択される。ここでのステップの処理は、ステップ2205と類似するが、ステップ2205処理は、選択した伝搬Dキューブを新たな別の検査キューブとするのに対し、ステップ2221で選択した伝搬Dキューブは、その時点の検査キューブとD交差をとる。
【0113】
処理は、次に、ステップ2206へ合流し、図18に示すフローの場合と同様の処理により、論理値“D”または“^D”(Dの反転値)の伝搬と、この伝搬を可能にする記憶素子への論理値割り振りを行う。ステップ2220が成立した後はステップ2218の条件が不成立の場合でも、2219からステップ2204、ステップ2205へはフィードバックせず、ステップ2221を含む直前の選択における別の選択肢が選択される。
【0114】
前述した図22に示す処理によって求めた第1の内部状態は、複数の種類の故障に対して検出能力があり、かつ、それぞれの故障について最も時間のかかる経路を選択してテストするので、テスト時間間隔を広めにとってテストを行った場合にも、遅延の程度の小さな故障を検出することができる。
【0115】
図2に示す回路例の第23番素子232の出力端子に“0”から“1”への信号遷移が遅延する故障を仮定した場合を考えると、図22に示すフローの処理によって、信号遷移を第18番記憶素子218から第35番記憶素子224へ伝搬させる第1の内部状態が求められる。これにより求められた各記憶素子に格納すべき値を図23(a)に示す。この時点で、処理は、ステップ2216の条件が不成立となっている。第30番素子の1番入力端子には“1”が割り当てられるが、出力端子への要求はないので一致操作の対象にはなっていない。従って、第25番素子も、対応するキューブは1つもこの時点での検査キューブとD交差をとられていない。
【0116】
次の処理は、ステップ2220へ移り、さらにステップ2221で、第25番素子の出力端子に“0”から“1”への信号遷移が遅延する故障を選択して仮定する。第25番素子を経由する遷移信号の伝搬先には、第30番素子239と第31番素子240があるが、伝搬時間T1904の数値の大きい第30番素子への伝搬を選択する。これは、第30番素子239の第1番入力端子に“1”を割り振る伝搬Dキューブを選択することを意味するが、前述した通り、この時点での検査キューブの割り当てとは矛盾しないので、処理は続行される。次に処理がステップ2220に移った時点で、仮定可能な故障が存在しないと処理は終了する。この処理の終了時に得られた第1の内部状態を図23(b)に示している。
【0117】
図1に示すフローにおけるステップ103で入力する正常なテスト対象回路の各部分が持つ信号遅延時間の情報の記述形式は、より簡単化して、保持するために必要な記憶装置の容量を小さくすることができる。
【0118】
図24は図2に示す回路例に対する信号遅延時間の情報の記述例を説明する図、図25は経路の選択時に各入力端子毎に参照される伝搬時間の値を図24の情報から作成した例を示す図であり、以下、これらについて説明する。
【0119】
図24における各行の番号は、図6における入力先表602の行番号に一致する。入力先表602の各行は、各素子の各入力端子に対応する。図24に示す信号伝搬時間は、図8に例示した各入力端子から、属する素子の出力端子まで信号遷移が伝わるのにかかる時間と、図9に例示した各入力端子の配船先に接続された出力端子から当該する入力端子まで信号遷移が伝わるのにかかる時間との和となっている。記憶素子の出力端子から記憶素子の入力端子までの選択された経路の信号遷移伝搬時間の計算は、経路上の該当値を合計することにより得ることができる。
【0120】
図25に示す経路の選択時に各入力端子毎に参照される伝搬時間の値を図24の情報から作成した例において、配線番号2501、記憶素子への伝搬時間T1(2502)、記憶素子からの伝搬時間T2(2503)、記憶素子間伝搬時間合計T2504は、それぞれ、図19に示す配線番号1901、記憶素子への伝搬時間T1(1902)、記憶素子からの伝搬時間T2(1903)、記憶素子間伝搬時間合計T1904に対応し、図19の場合と同様に参照される。例えば、伝搬時間T1(2502)は、その配線番号の配線に接続された出力端子からその配線番号の配線に接続された入力端子の属する素子の出力端子を通って、何れかの記憶素子の入力端子へ至る経路について、入力端子を通る度に、該当する図24の行の数値を加算していくことにより得ることができる。
【0121】
図26は本発明の他の実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートであり、以下、これについて説明する。
【0122】
図26に示すフローにおいて、ステップ2601からステップ2604の処理は、順に、図1に示すフローにおけるステップ101からステップ104の処理と同一であり、また、ステップ2606からステップ2614の処理は、順に、図1に示すステップ106からステップ114の処理と同一である。図1に示すステップ105で保持した第1の内部状態を決める機能は、図26に示すフローにおけるステップ2605、ステップ2615、ステップ2616、ステップ2617の4つが保持する。
【0123】
図26に示すフローにおいて、ステップ2604の処理が終了した後、ステップ2605の処理で乱数列を用いて第1の内部状態を求める。そして、ステップ2606からステップ2613の処理で、その時点での未検出故障の検出可能性を判定し、さらに未検出と判定された故障があると、ステップ2614の処理で、ステップ2615の処理に移行する。ステップ15の処理で生成された最後の第1の内部状態において、検出と判定される故障の数が少なく、故障検出効率が充分でないと、ステップ2615からステップ2616へ処理が移る。故障検出効率は、例えば、全体の故障の仮定数に対する最後の第1の内部状態における検出故障数等で判定ことができる。
【0124】
ステップ2616の処理では、図18に示すフローのステップ1801からステップ1819に従って第1の内部状態を求めるが、ステップ2616の処理では、必ずしも第1の内部状態を得られるとは限らない。第1の内部状態が得られない場合、テスト生成失敗としてステップ2617の処理から終了する。
【0125】
前述したような本発明の実施形態により検査系列を求めると、処理時間がかかりすぎる場合、本発明は、乱数列を用いることにより、遅延の程度の小さな故障の検出能力を損ねることなく、第1の内部状態を決定する処理の処理時間を節約することができる。
【0126】
同一の回路に対する、同一の検査系列であっても、テスト時間間隔と、仮定する遅延故障の信号伝搬遅延の程度を表す第1のパラメータ値との差によって、検出と判定される故障の数が異なる。このような場合、複数の第1のパラメータ値を用いて、各値における検出可能な故障の数の全仮定故障数に対する比を表示すれば、遅延故障の遅延の程度の分布に対する検査系列の検出能力を評価することができる。
【0127】
図27は本発明のさらに他の実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートであり、以下、これについて説明する。
【0128】
図27に示すフローにおいて、ステップ2701からステップ2710の処理は、図1に示すフローのステップ101からステップ110の処理と同一であり、また、ステップ2713とステップ2714の処理は、図1に示すフローのステップ113からステップ114の処理と同一である。そして、図27におけるステップ2711の処理では、第1のパラメータを複数用い、各第1のパラメータ毎に検出判定値を求める。また、ステップ2712の処理では、各検出判定値毎に検出可能性を判定する。検出と判定された故障を、それ以降の処理において仮定しない制御をする場合、ステップ2707での処理において、少なくとも1つの判定値に対して未検出と判定されている故障が仮定の対象となる。
【0129】
前述までに説明した本発明の実施形態の説明から判るように、本発明の本質は、遅延故障のモデルに、故障による遅延時間増加の値を複合させ、故障の顕現に条件を設けることにある。そして、検査系列を求める場合、故障仮定点を通り、検出に関与する遷移信号伝搬経路の探索において、なるべく伝搬時間の長い経路を選択することによって、遅延時間の増加量が小さい故障をも検出することができるようにすることができる。
【0130】
また、検査系列によって検出可能な故障を判別する場合、故障仮定点を通る信号遷移の発生点から観測点までの伝搬経路の、故障を仮定しないときの伝搬時間とテスト時間間隔との差が前記故障による遅延時間増加の値と比べて充分に少ないときにのみ検出と判定し、遅延時間の増加量が小さい故障の検出ができる回路部分とできない回路部分との区別、検出能力の評価を行うことができる。
【0131】
また、検査系列を求める場合、または、検出可能な故障を判別する場合、有効となる遷移信号伝搬経路の集合は、故障による遅延時間増加の値と回路の遅延時間と、テスト時間間隔などの情報から、検査系列の生成とは独立に求めることができる。
【0132】
本発明は、予め検出に有効な伝搬経路の集合の情報を保持することによって、検査系列を求める場合または検出可能な故障を判別する場合の処理を簡単化することができる。
【0133】
図28は本発明のさらに他の実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートであり、以下、これについて説明する。この図28に示すフローは、前述した予め検出に有効な伝搬経路の集合の情報を保持することによって検査系列を求める場合または検出可能な故障を判別する場合の処理を簡単化するものである。
【0134】
図28に示すフローにおいて、ステップ2801とステップ2802との処理は、図1に示すフローにおけるステップ101とステップ102との処理に対応する。ステップ2803の処理で、故障の検出可能性を判別する場合、有効となる遷移信号伝搬経路の集合を入力する。各経路毎に、遷移信号の伝搬と観測とが成立すれば、検出と判定する故障を特定する情報も入力する。ステップ2804、ステップ2805、ステップ2806の処理は、それぞれ、図1に示すフローのにおけるステップ105、ステップ106、ステップ108の処理に対応する。そして、図1に示すフローにおけるステップ103、ステップ104、ステップ107に相当する処理は不要である。
【0135】
図28におけるステップ2807の処理では、ステップ2806で記録した遷移信号伝搬経路が、ステップ2803で入力した有効伝搬経路の集合に含まれるか否かを判別する。伝搬経路は、遷移信号発生点と観測点との各組合せについて、複数定義される。ステップ2808からステップ2809の処理では、故障の検出可能性を判定する。ステップ2807の記録において、ある記憶素子の出力端子から、ある記憶素子の入力端子まで遷移信号が伝搬している場合であって、その伝搬経路上の素子群が、ステップ2803で入力した伝搬経路集合の中の、同じ遷移発生点となる記憶素子と、観測点となる記憶素子とを持つ伝搬経路部分の経路上の素子群と同じである場合、その伝搬経路部分の故障を検出と判定する。故障は、ステップ2803の入力情報で結びつけられた伝搬経路に代表させて処理されるので、図1に示すフローにおけるステップ113に相当するステップ2810の処理では、未試行の、別の伝搬経路部分があるか否かを判定する。ステップ2811の処理は、図1に示すフローにおけるステップ114の処理に相当する。
【0136】
従来技術による検査系列生成手段は、遅延故障の遅延の程度にかかわらず検出可能と判定するので、遅延の程度が小さい故障を検出ができる検査系列となるように、検査系列を追加していくことができなかった。このため、従来、故障仮定部位の全てについて検出可能と判定される検査系列を生成し、それを用いて集積回路をテストし、良品と判定されたものだけから装置を組み立てても、遅延の程度の小さな故障が集積回路のテストで検出されずに見逃され、装置の性能をそこねる場合があった。
【0137】
前述した本発明の実施形態によれば、いずれの実施形態によっても、全ての故障仮定部位について、最も性能に影響する遷移信号伝搬経路を通して検出する検査系列を生成するので、遅延の程度は小さいが、装置の性能に影響する故障を見逃さないようにすることができる。
【0138】
また、集積回路を動作速度の設計限界近くで使用する場合、非常に小さな遅延の程度でも問題になり、そのような故障が集積回路の単位面積当たりに出現する期待値である故障密度は相対的に大きくなる。密度が高い種類の故障の見逃し数を小さく抑えるためには、その故障のモデルについての検出率が高い検査系列が不可欠である。しかし、従来技術は、最も伝搬時間の長い経路をいくつか選択して検査系列を生成するか、論理の設計者が性能に影響する部分をテストすることができる検査系列を作成するなど、遅延の程度が小さな故障に対する検出率を保証する手段が存在しなかった。
【0139】
前述した本発明の実施形態によれば、いずれの実施形態によっても、遅延の程度が小さな故障が存在すると検出できない故障仮定部位を同定し、その部位の遅延の程度が小さな仮定故障に対する検査系列を生成することができ、高速性が重要である装置の性能を保証することができる。
【0140】
本発明は、前述までに説明してきた詳細な説明によって、図面と共に記載されたが、当業者にとって、形態的あるいは詳細についての種々の他の変化が特許請求の範囲に定められた精神及び範囲から逸脱することなく実施することができる。以下に、前述の変化させられる事項を開示する。
【0141】
(1)テスト対象論理回路の論理素子及び素子間の配線の接続情報と、各素子及び各配線の信号伝搬時間の情報とを入力して、テスト対象論理回路に含まれる第1の記憶素子群を第1の内部状態に初期化し、次にテスト装置から、テスト時間間隔の複数の遷移信号を印加し、前記第1の記憶素子群を第2の内部状態に変化させた後、第1の記憶素子群の保持する値をテスト装置が読み出し、期待値と比較する検査系列を生成し、前記検査系列を用いて前記回路の故障を検出する論理回路の遅延故障検出方法において、
テスト対象論理回路を構成する論理素子及び素子間の配線の設計情報を用いて、第1の記憶素子群を第1の状態に初期化し、テスト時間間隔の複数の遷移信号を印加し、第2の状態における前記記憶素子の保持する値を読み出し、期待値と比較する検査系列を生成する第1の手段と、テスト対象論理回路内に遅延故障を仮定し、前記検査系列に対するテスト対象論理回路の論理動作を模擬し、第1の記憶素子群の内の、第1の内部状態から第2の内部状態への移行で出力端子に信号遷移を生起させ、該信号遷移をテスト対象回路内に伝搬させ、前記伝搬経路に前記故障仮定部位を含むような、第2の記憶素子またはテスト時の外部入力端子の部分群から、前記故障仮定部位における前記信号遷移がテスト対象回路内を伝搬し、前記伝搬が入力端子へ到達するような、第3の記憶素子またはテスト時の外部出力端子の部分群への経路があるか判定し、前記経路が存在する場合の、第2の記憶素子部分群の出力端子または前記外部入力端子部分群から、第3の記憶素子部分群の入力端子または前記外部出力端子部分群までの、遷移信号の伝搬経路の伝搬時間に相当する値を計算し、前記信号伝搬時間の最大値が、前記テスト時間間隔に相当する閾値と、前記閾値から仮定する遅延故障の信号伝搬遅延の程度を表す第1のパラメータ値を減じた値との間にある場合に検出可能と判定する第2の手段か、あるいは、前記第1の部分群の内、第1の内部状態と第2の内部状態との間で出力端子に信号遷移を起こす記憶素子または前記外部入力端子の部分群から、前記信号遷移が伝搬し、入力端子へ到達するような、記憶素子または前記外部出力端子の部分群へ至るテスト対象経路の遷移信号伝搬時間の最大値に相当する閾値と、前記閾値から前記第1のパラメータ値を減じた値との間にある場合に検出可能と判定する第3の手段とを備える故障シミュレーションを行って検査系列を生成し、生成された検査系列を用いて論理回路の故障を検出することを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0142】
(2)第1項記載の論理回路の遅延故障検出方法において、第1の手段が、第1の内部状態すなわちテストに関連する各記憶素子またはテスト時の外部入力端子の保持する論理値を乱数列の各項に対応させて求め、第3の手段が、テスト対象となる全ての記憶素子と外部入出力端子の相互の間の信号伝搬時間の最大値に相当する閾値と、前記閾値から第1のパラメータ値を減じた値との間にある場合に検出可能と判定することを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0143】
(3)第1項記載の論理回路の遅延故障検出方法において、第1の手段が、第1の内部状態を求める計算量の上限を規定する第2のパラメータを入力する第4の手段と、遅延故障をテスト対象回路内に仮定する第5の手段と、前記故障仮定部位の信号遷移に影響を及ぼす回路接続関係にある第4の記憶素子の部分群に含まれる第1の記憶素子またはテスト時の外部入力端子から、前記故障部位の信号遷移が伝搬し得る回路接続関係にある第5の記憶素子部分群に含まれる第2の記憶素子またはテスト時の外部出力端子までの経路の信号伝搬時間を算出する第6の手段と、第4及び第5の部分群からの、第1の記憶素子または前記外部入力端子と第2の記憶素子または前記外部出力端子の選択に複数の組合せがある場合に、前記伝搬時間のより長い組を選択し、第1の内部状態における第1の遷移信号の印加によって第1の記憶素子または前記外部入力端子の保持する値が論理的に反転する信号遷移を生じさせ、第2の状態における前記故障仮定部位の値が第1の状態における同部位の値の論理的反転値になり、第2の状態において、前記故障仮定部位の信号遷移が前記第2の記憶素子または前記外部出力端子まで伝搬する条件が成立する、第1の記憶素子部分群または前記外部入力端子への論理値の割り振りを探索し、前記割り振りに論理的矛盾が存在する場合、または、探索にかかる計算量が前記第2のパラメータの値を超えた場合、前記時間の次に長い組を選択し、前記探索を繰り返す第7の手段とを備え、これらを用いて、第1の内部状態を求めることを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0144】
(4)第1項記載の論理回路の遅延故障検出方法において、第1の手段が、第1の内部状態を求める計算量の上限を規定する第2のパラメータを入力する第4の手段と、遅延故障をテスト対象回路内に仮定する第5の手段と、記憶素子及びテスト時の外部入出力端子の間の遷移信号伝搬経路に含まれる全ての素子の入力端子に対応させて、前記各入力端子に生じる信号遷移が伝搬可能な、記憶素子または前記外部出力端子へ伝搬する複数の経路の各伝搬時間に相当する数値のうちの最大値と、前記各入力端子へ信号遷移を伝搬させることが可能な接続関係にある記憶素子の出力端子または前記外部入力端子から、前記各入力端子への複数の経路の各伝搬時間に相当する数値のうちの最大値とに対応する第1の数値を保持する第8の手段と、前記故障仮定部位に信号遷移が生じ、前記信号遷移がテスト対象回路内に伝搬し、記憶素子の入力端子または前記外部出力端子へ到達する、遷移信号伝搬経路が活性化される存在可能な第1の内部状態を探索する処理において、任意の素子出力端子における前記遷移が複数の素子入力端子に伝搬する場合に、第8の手段が保持する、前記入力端子の第1の数値がより大きな値を持つ第1の入力端子を伝搬経路のより優先度の高い候補として、出力端子に前記遷移を生ずる素子が複数の入力端子を持つ場合、第8の手段が保持する、前記入力端子の第1の数値がより大きな値を持つ入力端子を伝搬経路のより優先度の高い候補として、前記伝搬を可能にする値を伝搬経路上の素子の入力端子へ割り振り、前記伝搬経路の探索における論理値割り振りがテスト対象論理回路の動作と矛盾して実現不可能と判定されるか、前記割り振りの探索処理の計算量が前記第2のパラメータと比較して大きいと判定されたとき、前記伝搬経路候補の次に優先度の高い経路から選択することを繰り返す第9の手段とを備え、第1の内部状態を求めることを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0145】
(5)第3項または第4項記載の論理回路の遅延故障検出方法において、第5、第6または第8、第7または第9の手段とを繰り返して複数の相異なる第1の内部状態の候補を求め、各1の内部状態候補の間において、テスト対象回路内の同一の記憶素子またはテスト時の外部入端子に対する、互いに論理値の“0”と“1”とが矛盾する割り振りが存在しない場合、同一の記憶素子または前記外部入力端子に対して各第1の内部状態候補の間で論理的'1'が割り振られていて、論理的“0”が割り振られていない場合、前記記憶素子または前記外部入力端子に対して論理的“1”を割り振り、同一の記憶素子または前記外部入力端子に対して、論理的“0”が割り振られていて、論理的“1”が割り振られていない場合、前記記憶素子または前記外部入力端子に対して論理的“0”を割り振ることにより、第1の内部状態を求める手段を備えることを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0146】
(6)第1項記載の論理回路の遅延故障検出方法において、各素子及び各配線の信号伝搬時間の情報を、素子の出力端子から素子の入力端子に至る信号線の信号遷移伝搬時間の値と、前記入力端子から、前記入力端子の属する素子の出力端子まで信号遷移が伝搬する時間の値との和の値として保持し、前記入力端子を信号遷移が伝搬する経路として選択した場合の該当部分の伝搬時間の値として参照する手段を備えることを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0147】
(7)第3項または第4項記載の論理回路の遅延故障検出方法において、第1の内部状態、すなわちテストに関連する各記憶素子またはテスト時の外部入力端子の保持する論理値を乱数列の各項に対応させて求め、第1の検査系列を生成するステップを備え、前記第1の検査系列について、第3の手段が、テスト対象となる全ての記憶素子及びテスト時の外部入出力端子の相互の間の信号伝搬時間の最大値に相当する閾値を用い、第2または第3の手段が、仮定故障の検出可能性を判定し、前記判定において検出不可能と判定された仮定故障に限って、第1の手段が第2の検査系列を生成し、第1と第2との検査系列をあわせてテスト対象論理回路をテストすることを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
【0148】
(8)第1項ないし第7項のうち1項記載の論理回路の遅延故障検出方法に使用する故障シミュレーションまたは検査系列生成方法において、仮定する遅延故障の遅延時間の程度に相当する第1のパラメータの数値を1つまたは複数入力して、仮定故障の検出可能性を前記各数値毎に判定し、全ての仮定故障数に対する前記各第1のパラメータ毎の検出可能と判定される故障の数の比を求め、表示する手段を備えることを特徴とする故障シミュレーションまたは検査系列生成方法。
【0149】
(9)第8項記載の故障シミュレーションまたは検査系列生成方法において、仮定する遅延故障の遅延時間の程度に相当する第1のパラメータの数値を1つまたは複数入力して、テスト対象論理回路内に遅延故障を仮定し、検査系列に対するテスト対象論理回路の論理動作を模擬し、故障仮定部位を通る遷移信号が、故障による遅延を仮定しない場合に、観測時刻よりも前に観測点に到達し、前記部位に前記各第1のパラメータの数値に相当する故障による遅延を仮定する場合には観測時刻よりも後に観測点に到達する条件を満たす時、前記仮定故障が検出可能と判定し、全ての仮定故障数に対する前記各第1のパラメータ毎の検出可能と判定される故障の数の比を求めて表示する手段を備えることを特徴とする故障シミュレーションまたは検査系列生成方法。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、乱数列を用いるか、または、存在する全ての経路の数と比べて充分小さな数の経路を活性化する検査系列を用い、各論理素子のわずかな遅延を検出することができる論理回路の遅延故障検出方法を提供することができ、さらに、わずかな遅延が検出できない故障仮定点を同定し、その故障に対して検査系列を生成する手段をも提供すると共に、テストの品質の管理と、必要な性能の向上を可能にする論理回路の遅延故障検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態の説明に用いるテスト対象回路例の論理的構成を示す図である。
【図3】図2に示す記憶素子であるフリップフロップ(FF)の動作を定義する等価回路を示す図である。
【図4】図3に示す等価回路における基本素子の動作を定義する真理値表を示す図である。
【図5】図2に示すアドレスデコーダの動作を定義する真理値表を示す図である。
【図6】図2に示すの回路例を記憶装置に格納する場合の情報の構造を説明する図である。
【図7】図6における記憶素子の素子番号とスキャンアドレスとの対応を表として示す図である。
【図8】図6に示す素子機能名毎の各入力端子から出力端子への遷移信号伝搬時間に相当する数値の例を示す図である。
【図9】図2に示す回路例の配線毎の遷移信号伝搬時間に相当する数値の例を示す図である。
【図10】図2に示す回路例を対象に検査系列生成を実施した場合に得られる第1の内部状態の例を説明する図である。
【図11】図10に示す第1の内部状態から導かれる検査系列のタイムチャートを説明する図である。
【図12】図1に示すフローにおけるステップ108での処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図13】テスト時間間隔と遷移信号発生FFのデータ出力端子から遷移信号到達FFのデータ入力端子までの信号伝搬時間との関係を説明する図である。
【図14】図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を得る本発明のさらに他の実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【図15】図14に示すフローのステップ1404〜1406で、格納されまた順序付けられる経路情報の例を説明する図である。
【図16】図14に示すフローのステップ1407で、Dアルゴリズムを用いて遷移信号伝搬の条件を求める手段を説明する図である。
【図17】図16に示す検査キューブを元に得られた第1の内部状態の例を説明する図である。
【図18】図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を得る本発明のさらに他の実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【図19】図18のステップ1803の処理で得られる情報の例を説明する図である。
【図20】図18のステップ1805〜1819での処理での検査キューブの生成過程を説明する図である。
【図21】図18に示す処理で求められた第1の内部状態の例を示す図である。
【図22】図1に示すフローにおけるステップ105の記憶素子へ割り振る論理値を得る本発明のさらに他の実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【図23】図22のステップ2217の処理で求められた第1の内部状態の例を示す図である。
【図24】図2に示す回路例に対する信号遅延時間の情報の記述例を説明する図である。
【図25】経路の選択時に各入力端子毎に参照される伝搬時間の値を図24の情報から作成した例を示す図である。
【図26】本発明の他の実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートである。
【図27】本発明のさらに他の実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートである。
【図28】本発明のさらに他の実施形態を用いた検査系列生成の処理動作の概略を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
201〜212 入力端子
213〜226 フリップフロップ(FF)
227〜245 ゲート素子
246 デコーダ
247 ORゲート
248〜252 出力端子
302 FF素子

Claims (3)

  1. テスト対象論理回路の論理素子及び素子間の配線の接続情報と、各素子及び各配線の信号伝搬時間の情報とを入力し、テスト対象論理回路に含まれる第1の記憶素子群に第1の内部状態を設定し、テスト装置からテスト時間間隔の複数の遷移信号を印加し、前記第1の記憶素子群を第2の内部状態に変化させた後、第1の記憶素子群が保持する値を読み出して、期待値と比較する検査系列を生成し、前記検査系列を用いて前記回路の故障を検出する論理回路の遅延故障検出方法において、
    前記検査系列の生成は、
    テスト対象論理回路の論理素子及び素子間の配線の接続情報を入力して各素子を定義する素子表と各素子の入出力端子の接続先を記述する接続先表を作成するステップと、
    各素子及び各配線の信号伝搬時間の情報を入力して信号伝播時間値表を作成するステップと、
    前記第1の記憶素子群へ論理値を割り振って第1の内部状態を決定するステップと、
    前記第1の記憶素子群へ割り振られた第1の内部状態をテスト対象論理回路に設定するための検査系列を生成するステップと、
    テスト対象論理回路内に遅延故障を仮定するステップと、
    仮定する遅延故障の信号伝搬遅延の程度を表す第1のパラメータ値を設定するステップと、
    前記第1の記憶素子群を第1の内部状態から所定の処理により信号遷移を伴って第2の内部状態へ移行させ前記第1及び第2の内部状態における前記第1の記憶素子群の出力値を前記素子表に格納するステップと、
    信号遷移が前記遅延故障を仮定した故障仮定点を通る信号伝播経路を前記接続先表と前記素子表とにより探索するステップと、
    前記接続先表と前記素子表により遷移信号発生源記憶素子を探索し、探索した遷移信号発生源記憶素子と遷移信号到達記憶素子との各組み合わせ毎に、その間に存在する信号伝播経路上の各信号線と各素子との信号伝播時間の和を前記信号伝播時間値表より求め、求めた信号伝播時間の内から最大値を求めるステップと、
    前記テスト時間間隔から前記第1のパラメータ値を減じて検出判定値を求めるステップと、
    前記信号伝播時間の最大値が前記検出判定値より大きい場合に前記故障仮定点を検出可能と判定するステップと、
    前記検査系列生成ステップで生成した検査系列に対して検出可能性を判定すべき未試行の仮定故障が存在する場合に前記遅延故障仮定ステップから前記故障仮定点検出可能判定ステップまでを繰り返すステップとを有することを特徴とする論理回路の遅延故障検出方法。
  2. 前記検査系列の生成は、特定の遅延故障について前記テスト時間間隔を変更して前記遅延故障仮定ステップから前記故障仮定点検出可能判定ステップまでを繰り返すステップを有することを特徴とする請求項1記載の論理回路の遅延故障検出方法。
  3. 前記第1の記憶素子群への第1の内部状態の設定は、設定する論理値を乱数列の各項に対応させて求めて行うことを特徴とする請求項1または2記載の論理回路の遅延故障検出方法。
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