JP4053615B2 - オイルシール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ポンプ作用を有するオイルシールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のオイルシールとしては、図4に示すように、先細部50を含んだシールリップ51を有したものがある。この先細部50は、先端縁50Aが軸52の外周面52Aに接触させられるようになっている。上記先細部50の空気側傾斜面53には、先端縁50Aから延び、先端縁50Aに対して傾斜した複数のリブ55が形成されている。このリブ55は、空気側傾斜面53からの突出寸法は一定である。
【0003】
なお、上記リブ55の突出寸法が大きいほど、空気側に漏れ出して来た油を油側に押し戻すポンプ作用が大きくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5(A)に示すように、上記ヘリックスリブシールの先細部50を軸52に装着したときに、上記リブ55の角55Aが軸52に当たる。したがって、先細部50の油側傾斜面57を軸方向に見た様子を示す図5(B)を参照すれば分かるように、リブ55の存在に起因して軸52の外周面52Aと先細部50の先端縁50Aとの間に隙間が発生する。この隙間が大きい場合には、軸52の静止時に上記隙間を通って油側から大気側に油が漏れ出してしまうから、リブ55の突出寸法は所定値以下に制限される。
【0005】
つまり、従来は、リブ高さを制限して静止時の油洩れを防いでいたので、リブが摩耗すると急激にポンプ能力が不足するという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、静止時の油洩れを招くことなく、ポンプ能力を向上させることができるオイルシールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、径方向内方に向かって先細になっている先細部の先端が軸の外周面に接触させられるようになっている環状のシールリップを備え、このシールリップは上記先細部の空気側傾斜面に沿って延在していて軸方向に対して周方向に傾斜している複数のリブを有しているオイルシールであって、
上記複数のリブは、
上記先細部の先端縁から上記空気側傾斜面に沿って所定寸法だけ延在していて軸方向に対して周方向一方側に傾斜している第1リブと、
上記先細部の先端縁から上記第1リブの軸方向寸法よりも短い寸法だけ離れた位置から、上記先細部の先端縁から上記第1リブの軸方向寸法よりも長い寸法だけ離れた位置まで、上記空気側傾斜面に沿って所定寸法だけ延在していて軸方向に対して周方向一方側に傾斜していると共に、上記第1リブに比べて空気側傾斜面からの突出寸法が大きく、かつ、上記第1リブと接さず、かつ、上記第1リブに対して互い違いに配置された第2リブとを含んでいることを特徴としている。
【0008】
この請求項1の発明によれば、上記第2リブは第1リブよりも突出寸法が大きくて、先細部の先端縁から所定の寸法だけ離れた位置に配置されている。したがって、上記第1リブが摩耗して第1リブのポンプ能力が低下したときに、第1リブよりも突出寸法が大きな第2リブが軸に摺接してポンプ能力を発揮する。したがって、この発明によれば、第1リブの摩耗によるポンプ能力低下を第2リブが補うから、ポンプ能力不足を防止することができる。また、第2リブよりも突出寸法が小さな第1リブを上記先端縁から延在させたから、上記第1リブは上記先端縁と軸との間に、軸の静止時に油が漏れ出すような隙間を生じさせない。したがって、請求項1の発明によれば、静止時の油洩れを招くことなく、ポンプ能力を向上させることができる。
【0009】
別の見方をすれば、上記第1リブに対して第2リブを互い違いに配置しているから、第1リブを低くして第2リブを高くすることが簡単にできて、静止時の油漏れ防止とポンプ能力向上とを両立できるのである。第1リブの高さが第2リブの高さと同じならば、静止時の油漏れ防止とポンプ能力向上とを両立することはできない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0011】
実施形態〕
図1に、この発明のオイルシールの実施の形態の要部断面を示す。この実施形態は、環状のシールリップ1を備えている。このシールリップ1は、基部2とこの基部2に連なっている先細部3とを有している。この先細部3は、径方向内方に向かって先細になっている。先細部3の先端縁3Aは、軸5の外周面5Aに摺接させられるようになっている。先細部3は、空気側傾斜面6と油側傾斜面7とを有している。そして、上記空気側傾斜面6には、先細部3の先端縁3Aから空気側傾斜面6に沿って所定寸法だけ延在している複数の第1リブ8が形成されている。この第1リブ8は、周方向に所定の等間隔を隔てて配列されている。また、上記第1リブ8は、第1リブ8と先端縁3Aとが挟む角が鋭角θ1であるように傾斜している。また、この第1リブ8は、空気側傾斜面6から所定の寸法だけ突き出しており、山脈形状をなしている。
【0012】
また、上記第1リブ8と第1リブ8との間の空気側傾斜面6には、第2リブ10が形成されている。この第2リブ10は、上記第1リブ8よりも突き出し寸法が大きな山脈形状をなしており、第1リブ8と同様に、周方向に所定の等間隔を隔てて配列されている。また、この第2リブ10は、上記第1リブ8の軸方向寸法よりも短い寸法だけ上記先端縁3Aから離隔した位置から、上記鋭角θ1でもって空気側傾斜面6に沿って延在している。この第2リブ10の延在寸法は、第1リブ8の延在寸法よりも長い。
【0013】
上記構成のオイルシールは、軸5とシールリップ1が相対回転したときに、上記先端縁3Aを通って油側から大気側に漏れ出した油を、第1リブ8のポンプ作用によって油側に押し戻すことができる。
【0014】
この実施形態のオイルシールは、第2リブ10が第1リブ8よりも突出寸法が大きくて、先細部3の先端縁3Aから所定の寸法だけ離れた位置に配置されている。したがって、第1リブ8が摩耗して第1リブ8のポンプ能力が低下したときに、第1リブ8よりも突出寸法が大きな第2リブ10が軸5に摺接してポンプ能力を発揮する。したがって、この実施形態によれば、第1リブ8の摩耗によるポンプ能力低下を第2リブ10が補うから、ポンプ能力不足を防止することができる。また、第2リブ10よりも突出寸法が小さな第1リブ8を先端縁3Aから延在させたから、上記第1リブ8は先端縁3Aと軸5との間に、軸5の静止時に油が漏れ出すような隙間を生じさせない。したがって、この形態によれば、静止時の油洩れを招くことなく、ポンプ能力を向上させることができる。
【0015】
尚、この実施形態では、第2リブ10を隣接する2つの第1リブ8の間に軸方向に所定寸法だけ入り込んだ状態に配置したが、第2リブ10が第1リブ8から軸方向に離れていてもよく、第2リブ10の周方向位相と第1リブ8の周方向位相とが一致していてもよい。
【0016】
第1参考例
次に、図2に、この発明の第1参考例を示す。この第1参考例は、図1に示した第1形態の第1リブ8と第2リブ10とに替えて、図2に示した斜高リブ21を備えた点だけが、第1形態と異なる。したがって、この第1参考例では、上記実施形態と同一部分には同一番号を付して、上記実施形態と異なる点を重点的に説明する。
【0017】
このオイルシールは、空気側傾斜面6に形成された複数の斜高リブ21を有している。この斜高リブ21は、空気側傾斜面6に沿って周方向に所定の等間隔を隔てて配列されている。この斜高リブ21と先端縁3Aとが挟む角θ2は鋭角である。この斜高リブ21は、先細部3の先端縁3Aから傾斜面6に沿って延在している。この斜高リブ21の稜線21Aは底面21Bに対して傾斜していて、傾斜面6からの斜高リブ21の突出寸法は、先端縁3Aから離れている部分ほど大きくなっている。
【0018】
上記構成のオイルシールによれば、斜高リブ21は先細部3の先端縁3Aにおいて突出寸法が最小であるから、軸5の静止時に油が洩れることを防止できる。また、上記斜高リブ21の内の先端縁3Aに近い部分が摩耗したときには、斜高リブ21の内の摩耗部分に隣接する部分が軸5に摺接してポンプ能力を発揮する。したがって、リブ21が摩耗してもポンプ能力が低下することを防止できる。また、上記斜高リブ21は、上記摩耗部分に隣接した部分が軸5に摺接するから、先端部3と軸5との隙間を常に最小限に抑制でき、静止時の油洩れを防止できる。
【0019】
第2参考例
次に、図3に、この発明のオイルシールの第2参考例の要部を示す。この第2参考例は、図2に示した第1参考例の斜高リブ21に替えて、図3に示したリブ31を備えている点だけが上記実施形態と異なる。したがって、この第2参考例では、第1参考例と異なる点を重点的に説明する。
【0020】
この第2参考例のオイルシールは、空気側傾斜面6に形成された複数のリブ31を備えている。このリブ31は、空気側傾斜面6に沿って周方向に所定の等間隔を隔てて配列されている。
【0021】
上記リブ31は、平行部32と斜高部33を有している。この平行部32は、先細部3の先端縁3Aから軸方向に所定の寸法だけ延在していて空気側傾斜面6からの突出寸法が一定である。そして、斜高部33は、この平行部32の端から軸方向に所定の寸法だけ延在しており、平行部32から離れている部分ほど平行部32よりも突出寸法が大きくなるように、稜線33Aが傾斜している。
【0022】
上記構成の第2参考例は、斜高部33の先端側に所定寸法の平行部32が設けられているから、先細部3の油側傾斜面7とこの傾斜面7と同一平面上に存在する上記平行部32の先端面32Aとをカット工程で同時に製作する場合において、先細部3の大気側傾斜面6に沿ってカット位置がずれても、先端縁3Aでのリブ31の突出寸法を斜高部33の突出寸法よりも小さな平行部32の突出寸法に保つことができる。したがって、軸5の静止時の油洩れを防止することができる。また、この第2参考例は、平行部32が摩耗したときに上記斜高部33がポンプ能力を補うから、第1参考例と同様にリブ摩耗時のポンプ能力を向上できる。
【0023】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明は、シールリップの先細部の空気側傾斜面に沿って延在していて軸方向に対して周方向に傾斜している複数のリブを有しているオイルシールであって、この複数のリブは、先細部の先端縁から空気側傾斜面に沿って所定寸法だけ延在している第1リブと、先細部の先端縁から軸方向に所定の寸法だけ離れた位置から空気側傾斜面に沿って所定寸法だけ延在していて、第1リブに比べて空気側傾斜面からの突出寸法が大きな第2リブとを含んでいる。
【0024】
この請求項1の発明によれば、上記第2リブは第1リブよりも突出寸法が大きくて、先細部の先端縁から所定の寸法だけ離れた位置に配置されているから、第1リブが摩耗して第1リブのポンプ能力が低下したときに、第1リブよりも突出寸法が大きな第2リブが軸に摺接してポンプ能力を発揮する。従って、ポンプ能力不足を防止することができる。また、第2リブよりも突出寸法が小さな第1リブを上記先端縁から延在させたから、第1リブは先端縁と軸との間に、軸の静止時に油が漏れ出すような隙間を生じさせず、静止時の油洩れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のオイルシールの実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】 この発明の第1参考例の要部断面図である。
【図3】 図3は、この発明の第2参考例の要部を示す図である。
【図4】 従来のオイルシールの要部を示す断面図である。
【図5】 図5(A)は上記従来例を軸に装着した様子を部分的に示す図であり、図5(B)は上記様子を軸方向に見た様子を示す図である。
【符号の説明】
1…シールリップ、2…基部、3…先細部、3A…先端縁、5…軸、
5A…外周面、6…空気側傾斜面、7…油側傾斜面、8…第1リブ、
10…第2リブ、21…斜高リブ、31…リブ、32…平行部、
33…斜高部。

Claims (1)

  1. 径方向内方に向かって先細になっている先細部の先端が軸の外周面に接触させられるようになっている環状のシールリップを備え、このシールリップは上記先細部の空気側傾斜面に沿って延在していて軸方向に対して周方向に傾斜している複数のリブを有しているオイルシールであって、
    上記複数のリブは、
    上記先細部の先端縁から上記空気側傾斜面に沿って所定寸法だけ延在していて軸方向に対して周方向一方側に傾斜している第1リブと、
    上記先細部の先端縁から上記第1リブの軸方向寸法よりも短い寸法だけ離れた位置から、上記先細部の先端縁から上記第1リブの軸方向寸法よりも長い寸法だけ離れた位置まで、上記空気側傾斜面に沿って所定寸法だけ延在していて軸方向に対して周方向一方側に傾斜していると共に、上記第1リブに比べて空気側傾斜面からの突出寸法が大きく、かつ、上記第1リブと接さず、かつ、上記第1リブに対して互い違いに配置された第2リブとを含んでいることを特徴とするオイルシール。
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