JP4052859B2 - ヒ素吸着剤と水溶液中のヒ素吸着除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ヒ素吸着剤と水溶液中のヒ素の吸着除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
河川や湖沼水域のヒ素による汚染問題の例は国内外で多くみられ、特に海外ではバングラディッシュの例が大きく報道されている。この地の土壌はヒ素を豊富に含んでおり、ヒ素で汚染された井戸水を飲料水として利用している現地住人にはヒ素による皮膚障害や疾患が多くみられる。バングラディッシュの中でも最も被害が深刻といわれるNawabganj districtでは、飲料水中のヒ素濃度が0.01〜1mg/l(WHOの水質基準0.01mg/l)にも達すると報告されているが実質的な対策は行われていないのが現状である。一方、国内におけるヒ素汚染問題は主に廃鉱山からの廃水によるものである。島根県の笹ヶ谷鉱山では、閉山後の坑道からの廃水により鉱山の周辺の河川水中のヒ素濃度は環境基準値を越える0.08〜1.3mg/lであったと報告されている。また、北海道の旧幌別硫黄鉱山周辺では弁景川へのヒ素を多量に含む強酸性水の流出により、1975年までは河川水中のヒ素濃度が大きく環境基準値を越えていた。これに対して、壮瞥町による坑口の封鎖や坑内水の中和処理施設の設置などの鉱害対策により、1981年以降は当初のヒ素濃度0.2mg/lに対して10分の1の約0.02mg/lにまで低下したと報告されている。しかしながら、この処理施設で中和とヒ素の共沈除去のために用いられるライムケーキ、消石灰および炭酸カルシウムの使用総量は年間4〜5万トンに達し、これによって発生する多量の沈殿物の処理場の確保と年間約3億円の経費を必要とすることが大きな問題となっている。ヒ素による水質汚染問題は、上記の他にも地熱発電所からの廃水や産業廃棄物によるものなど数多く存在する。しかしながら、現在、主として行われている共沈法には処理後の廃棄物処理や経費の問題などがあり、これに代わるヒ素の処理法としてヒ素吸着剤による処理方法が期待されている。特に、三価のヒ素を酸化剤の添加によって比較的吸着しやすい五価のヒ素に酸化する過程を省いて直接3価のヒ素を吸着できる新規な吸着物質を実現することは、経済的なヒ素除去技術を確立するうえで価値があるものと考えられる。
【0003】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、五価のヒ素はもちろんのこと、従来困難とされてきた三価のヒ素をも効率的に除去することが可能な、新しい技術手段を提供することを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、ビスマスを含むマンガンの酸素化合物からなるヒ素吸着剤であって、ビスマスを含むマンガンの酸素化合物は、ビスマスまたはその化合物と、マンガンまたはその化合物と、の混合物の焼成物を酸処理したものであり、前記混合物はビスマスとマンガンの混合モル比が0.001:1から1:1の範囲で混合されたものであることを特徴とするヒ素吸着剤を提供する。
【0005】
そしてこの出願の発明は、上記の発明について、第2には、ビスマスは、マンガンの酸素化合物の表面の一部に分布して配設されていることを特徴とするヒ素吸着剤を、第3には、ビスマスの化合物が炭酸酸化ビスマスであって、マンガンの化合物が炭酸マンガンであることを特徴とするヒ素吸着剤を、第4には、ビスマスを含むマンガンの酸素化合物が粉砕されたものであることを特徴とするヒ素吸着剤を、第5には、炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末との混合物が100℃〜450℃の温度において焼成されたものであることを特徴とするヒ素吸着剤を、第6には、200℃近傍の温度において焼成されたものであることを特徴とするヒ素吸着剤を、第7には、ビスマスとマンガンの混合モル比が0.01:1から1:1の範囲であることを特徴とするヒ素吸着剤を提供する。
【0006】
そして、この出願の発明は、第8には、上記の発明において、ビスマスを含むマンガンの酸素化合物が担体物質に担持もしくは担体物質に充填されていることを特徴とするヒ素吸着剤を提供する。
【0008】
さらに、この出願の発明は、第9には、前記のヒ素吸着剤を、ヒ素を含有する水溶液と接触させて、水溶液中のヒ素を吸着除去することを特徴とする水溶液中のヒ素の吸着除去方法を提供し、第10には、ヒ素を吸着した吸着剤を酸処理して、ヒ素を酸溶液中に脱着させ、ヒ素を脱離した吸着剤を再利用可能とすることを特徴とするヒ素吸着剤の再生方法をも提供する。
【0009】
以上のとおりのこの出願の発明によるマンガンを主成分とする酸素化合物は、吸着剤法以外の従来手法のもつ経済性の低さの問題を解決し、さらに従来の吸着剤法では効率的な除去が技術的に困難であった三価のヒ素をも極めて短時間に効率良く吸着除去できるといった特徴を有している。たとえばこの発明による吸着剤の場合には、吸着剤1グラムあたりの三価のヒ素吸着量は50mgにも達する。また、ヒ素を吸着した吸着剤を希硫酸などの酸溶液と接触させることによって簡易に吸着ヒ素を酸溶液中に回収でき、吸着剤は再利用が可能になるという特徴も有している。
【0010】
そして、この出願の発明は、三価のヒ素である亜ヒ酸のみならず、五価のヒ素であるヒ酸に対しても有効であることも重要な特徴である。一般に工業廃水中のヒ素は五価のヒ酸の形態で溶存するケースが多いことから、三価の亜ヒ酸だけでなく、五価のヒ酸に対しても有効であることは、この出願の発明がヒ素含有廃水の処理において広い適用性を有していることを意味している。
【0011】
さらに、以上のような、この発明の吸着剤は優れた性能を示すと共に、吸着剤による浄水方法の長所でもある、処理対象となる水溶液の電解質濃度を上げずにすむという長所を併せもつ。すなわち、吸着剤の主成分であるマンガンとビスマスが処理対象のヒ素水溶液中に、ほとんど溶出しないという特徴を有している。
【0012】
また、これまで粉末状吸着剤の保持方法としては、PVC等を用いて造粒したのちカラム等に充填してやる手法が一般的とされている。しかしながら、この従来の方法ではPVCとの接着面が生ずるために、吸着剤粒子と処理対象の液体との接触面積が小さくなり、結果としてカラムがもつ処理能力の低下をまねいていた。そこで、この発明では、たとえば、無灰パルプまたはガラスウールなどの繊維質等の担体物質を用いて、粉末状吸着剤を保持する手法を新たに開発し、上述した従来手法の短所を改善している。
【0013】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが以下にその実施の形態について説明する。
【0014】
まず、この出願の発明が提供するマンガン化合物は、その機能としてヒ素吸着性を有している。そして、このものは、ビスマス(Bi)を含むマンガン(Mn)の酸素化合物あって、しかもマンガンを主成分としている。そしてこの出願の発明のマンガン化合物において、ビスマスは、マンガンの酸素化合物の表面に一部に分布して配設されていることがより好ましい形態として例示される。なお、「酸素化合物」との規定については、酸化物または複合酸化物等としての酸化物、あるいはこれを主とした、炭酸基等の酸素含有基を有するものを意味している。そしてこのマンガンの酸素化合物とは、代表的に焼成物として得られるものを考慮することができるが、これに限定されることはない。
【0015】
たとえば、焼成については、通常は、100℃〜500℃程度の温度において、ビスマスまたはその化合物とマンガンあるいはその化合物とが上記のようなマンガンの酸素化合物を構成するようにしている。この焼成においては、大気中あるいは酸素雰囲気中において、上記のとおりの酸素化合物の生成が可能な原料物質として、金属ビスマスまたはその各種の化合物や金属マンガンまたはその各種の化合物を用いることができる。より具体的に、この化合物としては、たとえば、硫化物、臭化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物等であって、固体状の粉末等として存在するものが好適に用いられる。ゾル−ゲル法によって沈殿生成されたものであってもよい。
【0016】
この出願の発明のマンガン化合物は、より代表的には、炭酸酸化ビスマスの粉末と炭酸マンガンの粉末を混合し、これを混合粉末として、あるいは成形体として100〜450℃、好ましくは170℃〜250℃、より限定的には200℃近傍の温度範囲で焼成したものが例示される。ここで、200℃近傍とは、200±20℃程度の温度範囲を示すものとして理解することができる。この代表例の炭酸酸化ビスマスと炭酸マンガンをはじめとする原料物質の混合割合は、ヒ素吸着性能の点においては、モル比で、ビスマス:マンガンが0.001:1〜1:1の範囲とすることが好ましい。そして、ヒ素吸着の通常的な実施環境下においては、0.01:1〜1:1の範囲、より限定的には0.01:1〜0.5:1の範囲のものとすることを好適な例として示すことができる。
【0017】
一方で、この出願の発明のマンガン化合物は、焼成物として得られるのもに限定されることはなく、たとえば、マンガンの酸素化合物を含む溶液にビスマスが加えられて乾燥脱水されたものとしても実現されるのである。より具体的には、たとえば、過マンガン酸カリウムと硫酸マンガンを硫酸浴中で混合攪拌して二酸化マンガンを含む溶液を調整し、これにたとえば硝酸ビスマスを加えて攪拌しながら、200℃で乾燥脱水して得られるもの等が例示される。この場合のビスマスとマンガンの割合については、前記と同様にすることができる。
【0018】
このようなこの出願の発明のヒ素吸着性のマンガン化合物は、ヒ素吸着剤としては、マンガン化合物を酸処理によって活性化することも有効である。たとえばこの酸処理は、希硝酸、希硫酸、希塩酸等を用いて行うことができ、この酸処理によって、この出願の発明のマンガン化合物のヒ素吸着性能は著しく向上されることになる。
【0019】
さらにヒ素吸着剤としてのこのマンガン化合物は、焼成物については、たとえば原料を混合粉末あるいは成形体としてから焼成することができ、所望の比表面積を有する焼成物として得ることが可能とされている。
【0020】
また、このマンガン化合物は、任意のタイミングにおいて所望の大きさに粉砕し、比表面積を調整して利用することなども可能である。したがって、上記の酸処理による活性化を施すことのほかに、焼成物を粉砕して比表面積を調整することによっても、このマンガン化合物の吸着性能を向上させることができる。
【0021】
このようなこの出願の発明のヒ素吸着剤は、無灰パルプやガラスウール等の担体物質を保持材として、これに担持、あるいは充填して、水溶液中のヒ素の吸着除去に使用することもできる。
【0022】
従来技術では、水中の三価のヒ素を酸化剤の投与によって処理しやすい五価のヒ素に酸化した後、処理していた。この従来の方法では水中の電解質濃度が増加することによる水質の悪化が問題となり、さらには経済性も低いため、水中の三価のヒ素を直接的に吸着処理できる吸着剤の開発が望まれていた。この出願の発明では、たとえば、マンガン化合物にビスマス化合物を少量添加して焼成する等して得られるビスマスを含みマンガンを主成分とする金属酸化物を、より好適には酸処理した後、ヒ素廃水に適用することによって、五価のヒ素の場合だけでなく、三価のヒ素に対する高性能で経済的な吸着処理を実現することができる。なお、三価のヒ素の吸着については、この発明の実証実験において、ヒ素水溶液のpHと酸化還元電位の測定から亜ヒ酸(HAsO2)の状態にあるヒ素の場合として確認している。
【0023】
また、ガラスウール等を吸着剤保持材として用いることにより、カラムの繰り返し使用時の耐薬品性が優れた粉末状吸着剤の保持層が得られる。また、無灰パルプを吸着剤保持材として用いることにより、カラムを繰り返し使用後、廃棄する際に焼却炉等で焼却処分することが可能となる。この時、粉末吸着剤を抱き込んだ保持層の体積の大半を占める無灰パルプはほぼ完全に燃焼し、焼却後は吸着剤の成分のみが残渣として残ることになる。
【0024】
以上のとおり、この出願の発明によれば、五価のヒ素の場合はもちろんのこと、従来技術では水中からの除去が困難とされてきた三価のヒ素を効率的に吸着できる新規な吸着剤が提供される。この吸着剤は、吸着剤1g当たりの最大ヒ素吸着量が50mg以上に達する高い性能を示す。
【0025】
この発明による吸着剤をヒ素水溶液に適用するに当たっては、たとえば以下の手順によると最も効果が大きい。このことは後述の実施例より明らかである。
【0026】
(a)炭酸マンガン粉末MnCO3(特級試薬)と炭酸酸化ビスマス粉末Bi2(CO3)O2(特級試薬)とを重量比1:0.1〜0.2の割合で混合し、電気炉を用いて200℃で4時間30分焼成することで、ビスマスを含みマンガンを主成分とする金属酸化物を合成する。
【0027】
(b)(a)で得られたビスマスを含みマンガンを主成分とする金属酸化物を濃度0.5mol/l程度の希硝酸に懸濁させて、残留炭酸成分を気化して除去する。ついで純水で洗浄して付着している希硝酸を除去する。
【0028】
(c)(b)で得られた試料を乾燥機を用いて100℃程度で1時間乾燥処理する。以上の操作によって吸着剤が製造される。
【0029】
(d)吸着剤使用時は、(c)の吸着剤をヒ素水溶液に接触させる。必要に応じて、濃度0.5mol/l程度の希硝酸に懸濁させて30分〜1時間程度攪拌した後、ろ取し、純水で洗浄した後、ヒ素水溶液に懸濁させることができる。
【0030】
(e)ヒ素水溶液中のヒ素濃度が排水基準値である0.1mg/lまで低下した後、吸着剤をろ過などの手法によってヒ素水溶液中から回収する。浄化された廃水は公共用水域への放流が可能となる。
【0031】
(f)回収したヒ素吸着後の吸着剤に濃度0.5mol/l程度の希硫酸を少量加え、30分程度攪拌することによって、希硫酸中に吸着ヒ素を脱着して濃縮する。
【0032】
(g)ヒ素を脱着した後の本吸着剤は再びヒ素に対する吸着能力を回復するため、再びヒ素水溶液と接触させて再使用する。
【0033】
また、以上の例示では吸着剤を粉体のままでヒ素水溶液に懸濁させているが、工業化の際には必要に応じて造粒したり、必要に応じて適切な大きさに粉砕したり、また、多孔質体に担持させてカラムに充填し、カラムにヒ素水溶液を通水することによってヒ素を除去する応用も可能である。
【0034】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0035】
【実施例】
実施例1:吸着剤の合成とヒ素吸着
〔吸着剤の合成〕
炭酸マンガンMnCO3粉末(特級試薬)と炭酸酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末(特級試薬)との混合比を数段変えて充分に混合した。混合した各混合粉体を20g程度、それぞれ磁製ルツボに移し、電気炉を用いて400℃で4.5h焼成した後、室温まで放冷した。焼成の結果得られたビスマスを含みマンガンを主成分とする金属酸化物を吸着剤として用いてヒ素吸着実験を実施し、最も高い吸着量が得られる最適な炭酸マンガンMnCO3粉末と炭酸酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末との混合重量比を求めた。また、炭酸酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末を混合しない、炭酸マンガンMnCO3粉末のみを同条件で焼成して得られたマンガン酸化物と吸着性能を比較することによってビスマスを添加する効果を確認した。
【0036】
次に、焼成温度を150℃、200℃、250℃、300℃と数段階変化させて4.5h焼成した後、室温まで放冷し、その結果得られたビスマスを含みマンガンを主成分とする金属酸化物を吸着剤として用いてヒ素吸着実験を実施することで最適な焼成温度を調べた。
【0037】
なお、ここで得られたビスマスを含みマンガンを主成分とする吸着剤と、炭酸マンガン粉末の焼成物は、全て、粒径1〜10μm、比表面積は50m2/g程度であった。
〔ヒ素吸着実験の方法〕
試薬As2O3から調製された三価のヒ素含有の全濃度が1000mg/lのヒ素標準液(和光純薬工業製)をイオン交換水で希釈して、濃度が10mg/l、20mg/l、および40mg/lのヒ素溶液を1000ml作成してそれぞれの実験に供した。またヒ素水溶液のpH調節には水酸化ナトリウム水溶液を用いた。次に、上述の合成によって得た吸着剤1.0gを電子天秤で秤量し、0.5mol/lの希硝酸(希硫酸、または希塩酸でも可)1000mlに懸濁させて1時間かく拌した。かく拌後、孔径0.6mmのガラス繊維ろ紙(GS25アドバンテック東洋(株))を用いて吸引ろ過を行い、イオン交換水1000mlで通水洗いを実施した(以下、この操作を酸処理と呼ぶ)。酸処理の結果得られる活性化した吸着剤をヒ素水溶液に懸濁させて1時間かく拌した。かく拌中、5分、10分、20分、30分および60分経過時にヒ素水溶液からサンプルを20mlずつろ取した。ろ取には、孔径0.2μmのディスポーサブルメンブランフィルタ(DISMIC−25アドバンテック東洋(株))を用いた。ろ取した各サンプル中のヒ素濃度をICP発光分析装置(ICPS−1000III 島津製作所(株))で測定し、ヒ素水溶液中のヒ素濃度の時間推移を調べた。
〔ヒ素吸着量と原料混合比〕
ヒ素吸着剤を合成するに当たり、前記のとおり、炭酸マンガンMnCO3粉末(特級試薬)と炭酸酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末(特級試薬)との混合比を変えて、最適な混合比を検討した。焼成温度は400℃とした。その結果を図1に示した。図1から最も高い吸着量が得られる最適な混合比は、混合重量比がMnCO3:Bi2(CO3)O2=1:0.1〜0.2程度であることが判明した。これに対して、ビスマスを添加しない場合である混合比が1:0のマンガン酸化物では吸着量がビスマスを添加した場合に比べて著しく低く、ビスマスの混合によってヒ素吸着性能が向上することが判明した。
【0038】
X線回折パターンにより確認したところ、重量比が上記のとおり1:0.1〜0.2の焼成物の場合には、酸化ビスマスと炭酸酸化ビスマスのピークと、2θの値が37deg付近でアモルファスマンガン酸化物によるものと考えられるブロードなピークが認められた。
〔ヒ素吸着量と焼成温度〕
ヒ素吸着剤を合成するに当たり、炭酸マンガンと炭酸酸化ビスマスの混合粉体を電気炉を用いて焼成した際の、焼成温度の違いに対するヒ素吸着量の変化を検討した。その結果を図2に示した。図2から、焼成温度が300℃程度の場合に高い吸着量が得られることがわかる。しかしながら、吸着操作終了後にヒ素水溶液中に懸濁している吸着剤をろ取し、重量を計量したところ、初期重量である1gから重量が半分近くに減少していることがわかった。この吸着剤重量の減少は、焼成後に得られる吸着剤中に原料試薬である炭酸マンガンが残留しており、吸着剤の酸処理の際に炭酸成分が気化して抜けることに起因するものと考えられる。この重量の減少量を考慮して図2を補正すると図3のように200℃の焼成によって得られた吸着剤が最も高い吸着量を示すことが明らかとなった。
〔ヒ素吸着量とpH〕
ヒ素吸着量が除去対象の水溶液のpHによってどのような影響を受けるかを調べた。その結果、図4のようにヒ素水溶液のpHが弱酸性の場合に良好なヒ素吸着を示すことが明らかとなった。よって、除去対象となるヒ素水溶液のpHを予め弱酸性に調整しておくと効率的なヒ素除去が行えるものと考えられる。
〔吸着剤からヒ素の脱着方法〕
吸着剤に吸着したヒ素は希硫酸などの酸と接触させると良好な脱着性を示す。脱着に用いる酸溶液の種類と脱着率の関係を図5に示した。図5より、希塩酸あるいは希硫酸を用いた場合に高い脱着が可能なことがわかる。
〔水溶液中のヒ素濃度と吸着量〕
水溶液中のヒ素濃度が吸着量に与える影響を図6に示した。この図6から明らかなように、ヒ素濃度が高まるにしたがって吸着量も増加する。
〔実際のヒ素廃水への適用例〕
合成した吸着剤が、実際の三価のヒ素を含有するヒ素廃水に対して有効かどうかを確認した。処理対象としたのは、現在稼働中の地熱発電所において生じている廃水である。この排水中にはヒ素が3.5mg/lの濃度で存在している。この廃水の成分とpHを表1に示した。表1から分かるように、この廃水はヒ素以外にも多成分を含む。実際では、この廃水1lに対して、上記の混合重量比が1:0.2で200℃で焼成した1gの吸着剤を濃度0.5mol/lの希硝酸で酸処理後、廃水に懸濁させて1時間攪拌した。得られた結果を図7に示した。図7から、廃水中のヒ素濃度は初期値の3.5mg/lからわずか5分以内で排水基準値の0.1mg/l以下に減少しており、本吸着剤が実際のヒ素廃水に対しても極めて有効であることが証明された。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例2:
〔無灰パルプまたはガラスウールを用いた粉末状吸着剤の保持と吸着〕
工業化の際には必要に応じて造粒したり多孔質体に担持させてカラムに充填し、カラムにヒ素水溶液を通水する事によってヒ素を除去することができる。
(1)粉末状吸着剤の保持方法
純水に太さ1μm程度の無灰パルプまたはガラスウールを適量を加え、十分に攪拌する。使用する無灰パルプまたはガラスウールの太さは、保持する吸着剤粒子の大きさに依存する。たとえば直径が1〜数十μm程度の吸着剤粒子を保持対象とする。次に、吸着剤を加えてさらに攪拌する。ここで、吸着剤の性質に応じて必要な場合には塩酸、硝酸などの鉱酸を加えて所定の時間攪拌する。この鉱酸を加えて攪拌する処理によって吸着剤粒子の表面が活性化される。
【0041】
ガラスウールを用いる場合には吸着カラムをつくる筒の上部より少量ずつ上述の懸濁液を加え、その都度下部からポンプなどで完全に吸引して液を排出する。これを目的の厚さになるまで繰り返しガラスウール繊維が粉末状吸着剤を抱き込んだ保持層を成形させる。
【0042】
一方、無灰パルプを用いる場合には、吸着カラムをつくる筒の上部から上述の懸濁液を注ぎ入れ、下部から徐々に液体を排出させながらカラムの筒中でパルプと吸着剤が均一に沈降するよう棒などで攪拌しながら無灰パルプ繊維が粉末状吸着剤を抱き込んだ保持層を成形させる。
(2)保持方法による実施例
以下は、前項で述べた吸着方法に対して本保持方法を適用したヒ素含有水処理の実施例である。
【0043】
a)吸着カラム法
この手法は、半導体工場などから排出される三価のヒ素を含有するヒ素廃水をターゲットとした実施例である。図8に示したように廃水タンクからポンプを用いて吸着カラムに廃水を圧入してヒ素を除去する方法であり、連続的かつ大量に廃水を処理することが可能である。なお、ポンプと吸着カラムの間にはバルブを設け、吸着カラムへの送液量を制御する。また、吸着カラムは密閉されており、ヒ素吸着剤と大気との接触を防いで吸着剤の乾燥による吸着カラムの性能低下を防止している。図9には、この手法によるヒ素廃水処理の実施結果を示した。この実施結果は、吸着カラムの直径2cm、カラム長さ10cmの円筒形のカラムを用いて、1ppmのヒ素水溶液を300ml/hの速度で通水処理した実験結果から得られたものである。
【0044】
b)吸着マット法
この手法は、バングラディッシュなどにおいて生じている深刻な飲料水のヒ素汚染に対する浄水技術として考案した実施例である。電源などを一切必要としない簡易な浄水手法として期待される。図10に示す処理装置は、取水栓のついた外枠とヒ素吸着マットおよび従来から家庭用ろ過槽などにも用いられている木炭および砂・小石等から構成されている。この装置の特徴として、構造が単純であり壊れにくく、外枠と吸着マットのみを現地に供給することでヒ素の浄水が可能になる点があげられる。小石層および砂層では水中の懸濁微粒子を取り除き、また木炭層においては有機物等を除去し、さらにヒ素吸着マットにおいてヒ素を吸着除去することにより安全な飲料水が手軽に得られる。その他、構造上の特徴としてヒ素吸着マットの設置位置により取水栓の位置を高くすることで常に吸着マットが水中にあるようにしていることがあげられる。これによって、吸着マットと大気との接触によって吸着剤が乾燥し、結果として吸着マットの性能劣化が生じることを防いでいる。
【0045】
なお、吸着マットには、あらかじめ鉱酸によって活性化処理されたヒ素吸着剤が保持されている。吸着マットと大気との接触による吸着剤の性能劣化を防ぐために、吸着マットは外枠部分とは別に充分に水分を吸わした状態で空気を抜いて密封する必要がある。本装置を使用する現地までは、吸着マットをフィルムなどで密閉状態にして送付し、使用開始時にフィルムを剥がして開封し、外枠の中に敷き、その上から図のように砂、小石、木炭を充填して使用する。
【0046】
c)吸着パック法
この手法は、b)の手法に対して、より簡易性・利便性を高めることを目的とし、携帯型のヒ素浄水手法として考案された実施例である。この手法の実施例を図11に示した。吸着パック中には通水性をよくするための少量のガラスウールまたは無灰パルプ等の繊維室とヒ素吸着剤が封入されており、処理対象の水に投げ入れ、処理対象水を攪拌することによってヒ素が吸着除去される。
【0047】
吸着パック中のヒ素吸着剤は、あらかじめ鉱酸によって活性化処理され、湿潤状態でビニール袋等で密封されている。この密封によって、ヒ素吸着剤の吸着能力は長期にわたって保持される。吸着パックの使用時には密封袋を破って吸着パックを取り出すことによって即時に利用できる。図12にこの手法の実施結果を示す。図12では、三価のヒ素含有水1リットルに1個の吸着パック投入して攪拌した際のヒ素濃度の低下の様子が見られる。
【0048】
実施例3:
〔工業廃水からのヒ酸(五価のヒ素)の除去〕
(実験廃水)
表2に示したような成分をもつ実際の工業廃水からヒ素(V)の除去を上記の混合重量比が1:0.2で200℃で焼成した吸着剤を用いて試みた。ヒ素濃度は0.028mg/lであり、環境基準の0.01mg/lを上回っている。酸化還元電位の測定により、この廃水中のヒ素はヒ酸であることを確認した。
【0049】
【表2】
【0050】
(実験条件)
実験廃水1リットルに対し、0.5規定の濃度の硝酸によって酸処理した吸着剤1.44gを懸濁させて攪拌した。吸着剤懸濁後5min、15min、30min、60min、120min経過時に実験廃水のサンプルを濾取し、通常のICP発光分析と比較して分析感度の高い水素化物発生装置付きのICP発光分析装置によって実験廃水中のヒ素濃度の変化を調べた。
(実験結果)
図13に示したように、横軸の攪拌時間の経過とともにヒ素濃度は低下し、吸着剤懸濁後30分で環境基準値の0.01mg/lをクリアした。よって、この発明の吸着剤は表2のように種々の他成分が共存する実際の工業廃水中からヒ素(V)を除去することにも有効であることが確かめられた。
【0051】
実施例4:
〔人工ヒ素(V)廃水からのヒ素の除去〕
(実験廃水)
試薬Na2HAsO4を純水に溶解させて、人工ヒ素(V)廃水3リットルを作成した。ヒ素濃度は10mg/lとし、pHは水酸化ナトリウム水溶液の添加によってpH7に調節した。
(実験条件)
0.5規定の硝酸で30分酸処理した実施例3の吸着剤1gを純水で洗浄した後、実験廃水に懸濁させて1時間攪拌した。
(実験結果)
1時間経過時の実験廃水中のヒ素濃度をICP発光分析装置で調べたところ、ヒ素濃度は7.2mg/lに低下していた。実験廃水から吸着剤を濾取し、重量を計測した結果は0.5gであった。これらの結果から、吸着剤単位重量当たりのヒ素(V)の吸着量を算出すると、16.8mg/gという値が得られた。この値は、試薬As2O3を用いて調合したヒ素(III)を含む人工亜ヒ酸廃水を用いて実施した実験とほぼ同等な実験結果であり、この発明の吸着剤が三価のヒ素だけでなく、五価のヒ素にも同様に有効な吸着剤であることを示すものである。
【0052】
実施例5:
〔吸着剤表面におけるヒ素の吸着状態の観察〕
この出願の発明の吸着剤へのヒ素の吸着状態を観察するために、大量のヒ素を吸着させた吸着剤を用意した。
【0053】
吸着剤としては、炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末とをモル比でBi:Mn=0.1:1となるように混合し、200℃で4時間半焼成した焼成物を、0.5mol/lの希硝酸で30分間攪拌処理し、25μmのガラス濾紙に濾手して水洗したものを用いた。この吸着剤0.7gを精秤し、原子吸光分析用ヒ素標準液から調整した40mg/lの高濃度の人工ヒ素含有水1Lに懸濁させ、攪拌しながら200時間ヒ素を吸着させた。
【0054】
除去処理開始から200時間後のヒ素の濃度は、図14に示したように約7.2mg/lであり、単純に計算して、吸着剤1gあたり約46.8gのヒ素を吸着している。
【0055】
このヒ素を吸着した吸着剤の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)観察し、その結果を図15に示した。またこのSEM像に対応する部分をエネルギー分散型X線分光(EDS)分析により調べ、吸着剤の表面におけるMn,As,Biの分布状態を観察した。その結果をそれぞれ図16(a)〜(c)に示した。これらの図から、吸着剤の表面でBiが偏在していること、またAsは吸着剤の表面にBiが偏在する場所を除いてほぼ均一に存在していることが確認された。
【0056】
また、ヒ素吸着前の吸着材、ヒ素吸着後の吸着剤、およびヒ素吸着後にアルゴンイオンエッチングして表面を数10nm程度削った吸着剤について、X線光電子分光(XPS)分析を行ない、その結果をそれぞれ図17(a)〜(c)に示した。(a)と比較して、(b)のヒ素吸着後の吸着剤についてはAs3d軌道電子の結合エネルギーが44.9eVに見られ、三価の状態にあるヒ素が吸着されていることが確認された。また、(c)の表面を削った吸着剤についてはこのスペクトルが観察されないことから、この吸着剤は、内部気孔などではなくごく表面においてヒ素を吸着していることが予想される。
【0057】
以上のことから、この出願の発明の吸着剤は、主にマンガンの存在する位置に3価の状態でヒ素を吸着していることがわかった。
【0058】
実施例6:
〔バングラディッシュ井戸水からのヒ素の除去〕
炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末とをモル比でBi:Mn=0.1:1となるように混合し、200℃で4時間半焼成した焼成物を、0.5mol/lの希硝酸で30分間攪拌処理した後、25μmのガラス濾紙に濾手して水洗することで、この出願の発明のヒ素吸着剤を得た。
【0059】
まず、この吸着剤についての基本的なヒ素吸着能を確認するために、原子吸光分析用ヒ素標準液から調整した人工ヒ素水溶液を用いて吸着試験を行い、吸着等温線を作成した。その結果を図18に示した。この吸着剤の吸着特性はラングミュア型に分類され、平衡濃度25mg/lで飽和吸着に到達することが確認された。
【0060】
また人工ヒ素水溶液のpHを変化させ、平衡時のpHと分配係数Kdとの関係を図19に示した。なお、分配係数Kdは次式にしたがって算出したものである。
【0061】
Kd=(吸着剤1gあたりのヒ素吸着量/mol)÷
(人工ヒ素水溶液1cm 3 中に残存するヒ素の量/mol)
図19より、この吸着剤については、酸性からアルカリ性までの広いpH領域で吸着能を示し、特に人工ヒ素水溶液がpH4.5付近でKd値が最大となり最もヒ素吸着能が高くなることがわかった。
【0062】
次に、図20に示すように、上記酸処理後の吸着剤2gを無灰パルプ1.5gに担持させて内径2cmのクロマト管に充填し、カラムタイプのヒ素吸着剤とした。
【0063】
このカラムに、1mg/l,pH5.0の人工ヒ素水溶液を、通水速度100ml/1.0時間で通水する破過試験を行い、その結果を図21に示した。このカラムの場合のヒ素処理能力が、1mg/lの人工ヒ素水溶液について35lであることがわかった。
【0064】
そして、次に、前記と同じカラムを用い、バングラディッシュの井戸水からヒ素を除去することをことを試みた。この水は、ダッカの西、インドとの国境付近にあるChapai Nawabganjiにおける井戸で採取したものである。なお、カラムへの井戸水の通水速度は100ml/10minとした。カラム通水の前後における井戸水の各成分の濃度変化を測定し、表3に示した。ここで、As,Mn,Biの濃度については水素化物発生装置つきICP発光分析装置((株)島津製作所製:ICPS−1000III)を、その他の成分の濃度についてはイオンクロマトグラフ((株)島津製作所製:イオンクロマトグラフPIA−1000,)を用いて測定した。
【0065】
【表3】
【0066】
井戸水に含まれる砒素の濃度は、初期濃度の0.01mg/lから検出限界値以下の濃度にまで低下したことが確認された。このように、この出願の発明の吸着剤によって、バングラディッシュの井戸水、あるいはそれ以上の濃度のヒ素を含む水から、ほぼ完全にヒ素を除去できることが示された。
【0067】
実施例7:
〔酸処理をしない吸着剤によるヒ素の除去〕
炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末とをモル比でBi:Mn=0.1:1となるように混合し、200℃で4時間半焼成した焼成物を、酸処理せずに、そのままメノウ乳鉢で平均粒径が1/2程度になるように軽く粉砕して、この出願の発明のヒ素吸着剤とした。
【0068】
この吸着剤0.5gを、原子吸光分析用ヒ素標準液から調整した10mg/lのヒ素水溶液に入れ、マグネチックスターラーで120分間攪拌した後、ヒ素水溶液中のヒ素濃度をICP発光分析装置により測定した。その結果、ヒ素水溶液の濃度は4.1mg/lにまで低下したことが確認された。吸着試験終了後に吸着剤を回収し、乾燥させた時の重量を測定したところ0.39gであった。これらの結果から、吸着剤1gあたりに吸着されているヒ素の量は約30mgであり、酸処理をした吸着剤について同様の吸着試験をした場合の結果の35mg/gに比較して、遜色のない値であることかわかった。
【0069】
以上のことから、この出願の発明の吸着剤についても、その比表面積を増大させることで、ヒ素吸着能を向上できることが確認された。そして、たとえば酸処理のためのコストや、酸処理により吸着剤重量の目減りといった問題を解消するために、吸着剤の比表面積を適切に調整することが有効であることも示された。
【0070】
実施例8:
〔異なる原料から製造した吸着剤によるヒ素の除去〕
硫酸マンガンと硫酸ビスマスとをモル比でMn:Bi=1:0.1となるように混合し、400℃で4時間半焼成してこの出願の発明のヒ素吸着剤とした。得られた吸着剤の粒径は1〜10μm、比表面積は50m2/g程度であった。
【0071】
このものは、上記実施例に示したような炭酸酸化ビスマスと炭酸マンガンとを焼成して得られる吸着剤とほぼ同じ物質であると認められ、また、より安価に作製できるものの、ヒ素吸着能については7割程度であった。一方の、ビスマスを含まないマンガン酸化物の焼成物に比較すると、約2倍以上の高いヒ素吸着能を有することが確認された。したがって、原料として炭酸酸化ビスマスと炭酸マンガンを用いるとより吸着性能の高いヒ素吸着剤を得ることができることがわかった。また、この出願の発明の吸着剤をより安価に製造するためには、原料として、硫酸マンガンや硫酸ビスマス等を用いることも有効であることがわかった。
【0072】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、五価のヒ素をはじめ、従来困難とされてきた三価のヒ素をも廃水等から効率的に除去することが可能な、新しい技術手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭酸マンガンと炭酸酸化ビスマスの混合重量比に対するヒ素吸着量の関係を例示した図である。
【図2】焼成温度とヒ素吸着量との関係を例示した図である。
【図3】図2において補正後の関係を例示した図である。
【図4】初期pHとヒ素吸着量との関係を例示した図である。
【図5】脱着率と吸着時間との関係を例示した図である。
【図6】水溶液ヒ素濃度とヒ素吸着量との関係を例示した図である。
【図7】攪拌時間とヒ素濃度との関係を例示した図である。
【図8】吸着カラムによる排水処理を例示した概要図である。
【図9】吸着カラム法によるヒ素排水処理の結果を例示した図である。
【図10】吸着マットによる簡易な浄水法を例示した概要図である。
【図11】吸着パックによる携帯用浄水法を例示した概要図である。
【図12】吸着パック法による排水処理の結果を例示した図である。
【図13】五価のヒ素含有廃水についての処理結果を例示した図である。
【図14】40mg/lの人工ヒ素含有水に吸着剤を入れたときのヒ素濃度の経時変化を例示した図である。
【図15】ヒ素を吸着した吸着剤の表面をSEM観察した結果を例示した図である。
【図16】EDS分析により、図15のSEM像に対応する部分における(a)Mn,(b)As,(c)Biの分布状態を例示した図である。
【図17】(a)ヒ素吸着前の吸着材、(b)ヒ素吸着後の吸着剤、および(c)ヒ素吸着後にアルゴンイオンエッチングして表面を数10nm程度削った吸着剤について、X線光電子分光(XPS)分析を行なった結果を例示した図である。
【図18】吸着剤のヒ素吸着等温線を例示した図である。
【図19】吸着剤の吸着平衡時のpHと分配係数Kdとの関係を例示した図である。
【図20】カラムタイプのヒ素吸着剤の構成を例示した図である。
【図21】カラム通水試験における破過曲線を例示した図である。
Claims (10)
- ビスマスを含むマンガンの酸素化合物からなるヒ素吸着剤であって、ビスマスを含むマンガンの酸素化合物は、ビスマスまたはその化合物と、マンガンまたはその化合物と、の混合物の焼成物を酸処理したものであり、前記混合物はビスマスとマンガンの混合モル比が0.001:1から1:1の範囲で混合されたものであることを特徴とするヒ素吸着剤。
- ビスマスは、マンガンの酸素化合物の表面の一部に分布して配設されていることを特徴とする請求項1記載のヒ素吸着剤。
- ビスマスの化合物が炭酸酸化ビスマスであって、マンガンの化合物が炭酸マンガンであることを特徴とする請求項1または2記載のヒ素吸着剤。
- ビスマスを含むマンガンの酸素化合物が粉砕されたものであることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のヒ素吸着剤。
- 炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末との混合物が100℃〜450℃の温度において焼成されたものであることを特徴とする請求項3または4に記載のヒ素吸着剤。
- 200℃近傍の温度において焼成されたものであることを特徴とする請求項5記載のヒ素吸着剤。
- ビスマスとマンガンの混合モル比が0.01:1から1:1の範囲であることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載のヒ素吸着剤。
- ビスマスを含むマンガンの酸素化合物が担体物質に担持もしくは担体物質に充填されていることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載のヒ素吸着剤。
- 請求項1ないし8いずれかのヒ素吸着剤を、ヒ素を含有する水溶液と接触させて、水溶液中のヒ素を吸着除去することを特徴とする水溶液中のヒ素の吸着除去方法。
- 請求項9の方法によりヒ素を吸着した吸着剤を酸処理して、ヒ素を酸溶液中に脱着させ、ヒ素を脱離した吸着剤を再利用可能とすることを特徴とするヒ素吸着剤の再生方法。
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