JP4052532B2 - 電磁流量計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、励磁コイルにより管路内の被測定流体に磁界を印加し、ファラディーの電磁誘導の法則により発生する流量信号を電極で検出し、信号処理して流量計測する電磁流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6に示すように、従来の電磁流量計は、通常、管路51内に一対の電極52を設け、管路51外の励磁コイル53に励磁回路54から励磁電流を流して、磁界を管路51内の被測定流体に印加し、ファラディーの電磁誘導の法則により発生する流速に比例した流量信号を一対の電極52で検出して増幅回路55に出力する。増幅回路55では、両流量信号が差(e1−e2)を取って増幅されるため、被測定流体の正流時(e1>e2)には増幅回路55の出力が正であるとすると、逆流(e1<e2)には増幅回路55の出力は負となる。
【0003】
従って、被測定流体が正流の場合は、正の出力をA/D変換器56でデジタル変換して演算回路57で演算処理し、また逆流の場合は、負の出力をA/D変換器56でデジタル変換して演算回路57で演算処理することになる。その演算結果は出力回路58から出力される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の電磁流量計では、正流および逆流の被測定流体を測定可能とする場合、電極52から得られた流量信号を増幅回路55で増幅した出力値は正から負まで幅広い信号処理や演算処理が必要となる。負の信号処理があると、電源として正負の両方を用意する必要がある。たとえば、電源として電池を用いた場合には、通常の設置ではほとんど使用されていない負電池を正電池と同等の容量で確保しなければならないため、電池本数を減らすことができない。
【0005】
この発明の目的は、従来のこのような問題点に鑑み、被測定流体が正流または逆流のいずれであっても、単電源で同じ信号処理および同じ演算処理が行える電磁流量計を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、無励磁期間を有する励磁電流を励磁コイル9a・9bに流し、それによる磁界が管路1内を流れる被測定流体に印加され、被測定流体に発生する流速に比例した流量信号を一対の電極2a・2bを介して検出し、信号処理手段5で信号処理して流量計測する電磁流量計において、管路1内を流れる被測定流体が正流であるか逆流であるかを判定する正逆判定手段10と、この正逆判定手段10の判定結果が正流の場合と逆流の場合とで励磁コイル9a・9bに流れる励磁電流の向きを切り換える励磁手段11とを備えたことを特徴とする。
【0007】
このように、管路1内を流れる被測定流体が正流である場合と逆流である場合とで、励磁コイル9a・9bに流れる励磁電流の向きを切り換えると、被測定流体に対しその流れの方向に対応した磁界が印加されるので、一対の電極2a・2bのうちの一方の電極2aの電位が他方の電極2bの電位よりも常に高電位になり、被測定流体が正流または逆流のいずれの場合にも、同じ信号処理および同じ演算処理で済む。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明を基本として、正逆判定手段10が、一対の電極2a・2bを介して検出された流量信号の変化から正流であるか逆流であるかを判定することを特徴とする。
【0009】
このような正流/逆流の判定にすると、被測定流体の正流と逆流を検知するための流れ方向検知手段を別に用意することなく、励磁コイル9a・9bに流れる励磁電流の向きをフィードバック系により自動的に切り換えることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1の発明を基本として、管路1の軸線に対する磁束の集中性および指向性を良くして安定した流量信号の検出を行うため、一対の励磁コイル9a・9bを管路1外において対向配置し、これら励磁コイル9a・9bに励磁手段11により励磁電流を同時に流すことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明よりも消費電流を低減するため、励磁手段11が、一対の励磁コイル9a・9bの1個のみ独立して励磁電流を流すことができるようになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1の発明を基本として、コストの低減や加工の容易性や小型化を図るため、励磁コイル9aを管路1外の片側のみに設置したことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、励磁コイル9aを請求項5の発明のように管路1外の片側のみに設置しただけでは、磁束の集中性および指向性が悪いという不利があるので、これを補償して安定した流量信号の検出を行うため、1個の励磁コイル9aのコア12aから管路1を挟んでその反対側までの間の管路1外で磁気回路を形成して、管路1内を通り抜ける磁束を環流させる磁気回路体13を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、信号処理精度の向上を図るため、一対の電極2a・2bの一方2bを信号処理手段5のグランド電位と等しくしたことを特徴とするもので、上記1ないし6の発明に対して適用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、この発明の後述する実施形態のいずれについても共通な構成を示す。同図において、管路1内には、一対の電極2a・2bが、管路1の軸線を挟んでそれと直交する線上に対向配置されている。これら電極2a・2bにて検出された流量信号は、増幅回路3とA/Dコンバータ4とによる信号処理手段5により信号処理、つまり増幅およびデジタル変換されてから、演算手段6にて演算され、その演算結果が出力手段7から出力される。信号処理手段5、演算手段6および出力手段7は単電源8にて動作する。
【0017】
図2は、この発明の第1の実施形態を示す。この電磁流量計では、管路1外に一対の励磁コイル9a・9bが管路1の軸線を挟んで対向されている。また、図1に示した手段の他に、正逆判定手段10と励磁手段11とが備わっている。
【0018】
一対の励磁コイル9a・9bのコア12a・12bは、一対の電極2a・2bを結ぶ線と直交する線上において対向しており、両励磁コイル9a・9bは、一対の電極2a・2bを結ぶ線にそれぞれ直交する方向に磁界を発生する。
【0019】
正逆判定手段10は、一対の電極2a・2bにて検出され、信号処理手段5にて信号処理された流量信号の変化から、管路1の被測定流体の流れが正流であるか逆流であるかを判定し、その判定結果を演算手段6および励磁手段11に通知する。
【0020】
励磁手段11は、正逆判定手段10の判定結果が正流の場合と逆流の場合とで励磁コイル9a・9bに流れる励磁電流の向きを切り換える。
【0021】
図2に示した電磁流量計において、管路1内を紙面の表から裏方向に被測定流体が流れる場合を正流、逆に紙面の裏から表方向に被測定流体が流れる場合を逆流とする。いま、正流の場合に、励磁コイル9a・9bに励磁手段11から無励磁期間を有する励磁電流が同時に供給され、コア12aからコア12bの方向に磁束が流れる磁界が被測定流体に印加されたとすると、ファラディーの電磁誘導の法則により電極2a・2bに被測定流体の流速に比例した流量信号電圧が発生する。この場合、電極2aの電位の方が電極2bの電位よりも高電位となる。
【0022】
また、管路1内の被測定流体の流れが正流から逆流に変化し、そのことが正逆判定手段10にて判定されると、励磁手段11は、励磁コイル9a・9bに流れる電流を正流時とは逆方向に切り換える。したがって、この場合には、コア12bからコア12aの方向に磁束が流れる磁界が被測定流体に印加され、ファラディーの電磁誘導の法則により電極2a・2b間に被測定流体の流速に比例した流量信号電圧が発生する。この場合も、電極2aの電位の方が電極2bの電位よりも高電位となる。
【0023】
このように、管路1内の被測定流体の流れが正流または逆流のいずれの場合も、電極2a・2b間に発生する流量信号電圧は、電極2aの電位の方が電極2bの電位よりも高電位となるため、両電極2a・2bで検出された流量信号を信号処理する信号処理手段5および演算する演算手段6は、正負両方の信号を処理する必要はなく、正の信号だけの処理で済む単一の構成で良いので、正電源のみの単電源で動作させることができる。
【0024】
図3は管路1の片側のみに励磁コイル9aを設置し、この1個の励磁コイル9aに流れる電流を、被測定流体の正流時と逆流時とで図2の例の場合と同様に切り換える実施形態を示す。このようにしても、電極2a・2b間に発生する流量信号電圧は、正流または逆流のいずれの場合も、電極2aの電位の方が電極2bの電位よりも高電位となる。
【0025】
図3のように、管路1の片側のみに励磁コイル9aを設置すると、構成は簡素になるが、コア12aからの磁束が発散して磁束の集中性および指向性が悪いという不利がある。これを補償するため、図4の実施形態は、励磁コイル9aのコア12aから管路1を挟んでその反対側までの間の管路1外で磁気回路を形成して、管路1内を通り抜ける磁束を環流させる磁気回路体13を設けている。この磁気回路体13は、管路1の回りを巡るように設置され、管路1とは反対側のコア12aの端面でコア12aと磁気的に接続されているとともに、コア12aと管路1を挟んで対向する反対側に突出部14を設けている。
【0026】
いま、図4において、管路1内の被測定流体の流れが正流であるとき、励磁コイル9aに励磁電流が流れ、磁界がコア12aから突出部14の方向に発生したとすると、管路1を横切った磁束は、突出部14から磁気回路体13を通って実線の矢印方向に循環する。管路1内の磁束は、図3の場合ではコア12aから離れると発散してしまうが、コア12aと対向する反対側に突出部14があると、これに磁束が収束するため、図3の場合と比べ安定した流量信号電圧が検出できる。
【0027】
図4において、管路1内の被測定流体の流れが逆流であるとき、励磁コイル9aに正流時とは逆方向に励磁電流が流れ、磁界が突出部14からコア12aの方向に発生すると、管路1を横切った磁束は、磁気回路体13を点線の矢印方向に通って循環する。
【0028】
したがって、電極2a・2b間に発生する流量信号電圧は、正流または逆流のいずれの場合も、電極2aの電位の方が電極2bの電位よりも高電位となるので、図2の場合と同様に、信号処理手段5および演算手段6は、正負両方の信号を処理する必要はなく、正の信号だけの処理で済む単一の構成で良いので、正電源のみの単電源で動作させることができる。
【0029】
図5は、一対の電極2a・2bの一方2bを信号処理手段5のグランド電位と等しくし、図1の場合と同様に動作させる例である。このようにすると、常に低電位となる電極2bが信号処理手段5の基準値と同電位となるので、信号処理が容易になるとともに、その精度も向上する。なお、一対の励磁コイル9a・9bの1個のみ独立して励磁電流を流すと、消費電流を低減できる。
【0030】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、管路内を流れる被測定流体が正流である場合と逆流である場合とで、励磁コイルに流れる励磁電流の向きを切り換え、被測定流体に対しその流れの方向に対応した磁界が印加されるようにしたので、一対の電極のうちの一方の電極から電位が、正流または逆流のいずれの場合も、他方の電極の電位よりも高電位になり、被測定流体が正流または逆流のいずれの場合にも、同じ信号処理および同じ演算処理で済み、単電源の信号処理で動作させることができる。
【0031】
請求項2に係る発明によれば、一対の電極を介して検出された流量信号の変化から正流であるか逆流であるかを判定するので、請求項1に係る発明による効果に加え、被測定流体の正流と逆流を検知するための流れ方向検知手段を別に用意することなく、励磁コイルに流れる励磁電流の向きをフィードバック系により自動的に切り換えることができる、という効果がある。
【0032】
請求項3に係る発明によれば、一対の励磁コイルを管路外において対向配置し、これら励磁コイルに励磁手段により励磁電流を同時に流すので、請求項1に係る発明による効果に加え、管路の軸線に対する磁束の集中性および指向性を良くして安定した流量信号が検出できる、という効果がある。
【0033】
請求項4に係る発明によれば、一対の励磁コイルの1個のみ独立して励磁電流を流すので、請求項1に係る発明による効果に加え、消費電流を低減できる、という効果がある。
【0034】
請求項5に係る発明によれば、励磁コイルを管路外の片側のみに設置したので、請求項1に係る発明による効果に加え、コストの低減や加工の容易性や小型化が図れる、という効果がある。
【0035】
請求項6に係る発明によれば、1個の励磁コイルのコアから管路を挟んでその反対側までの間の管路外で磁気回路を形成して、管路内を通り抜ける磁束を環流させる磁気回路体を設けたので、請求項5の発明のように管路外の片側のみに設置しただけでは、磁束の集中性および指向性が悪いという不利があるが、これを補償して安定した流量信号が検出できる、という効果がある。
【0036】
請求項7に係る発明によれば、一対の電極の一方を信号処理手段のグランド電位と等しくしたので、請求項1に係る発明による効果に加え、信号処理が容易になるとともに、その精度が向上する、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のいずれの実施形態にも共通な構成を示すブロック図である。
【図2】一対の励磁コイルを用いたこの発明の実施形態を示すブロック図である。
【図3】1個の励磁コイルを用いたこの発明の実施形態の要部の概要構成図である。
【図4】磁気回路体を用いたこの発明の実施形態の要部の概要構成図である。
【図5】一対の電極の一方を信号処理手段のグランド電位と等しくした、この発明の実施形態の要部の概要構成図である。
【図6】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 管路
2a・2b 電極
3 増幅回路
4 A/Dコンバータ
5 信号処理手段
6 演算手段
7 出力手段
8 単電源
9a・9b 励磁コイル
10 正逆判定手段
11 励磁手段
12a・12b コア
13 磁気回路体
14 突出部

Claims (7)

  1. 無励磁期間を有する励磁電流を励磁コイルに流し、それによる磁界が管路内を流れる被測定流体に印加され、その被測定流体に発生する流速に比例した流量信号を一対の電極を介して検出し、信号処理手段で信号処理して流量計測する電磁流量計において、前記管路内を流れる被測定流体が正流であるか逆流であるかを判定する正逆判定手段と、この正逆判定手段の判定結果が正流の場合と逆流の場合とで前記励磁コイルに流れる励磁電流の向きを切り換える励磁手段とを備えたことを特徴とする、電磁流量計。
  2. 前記正逆判定手段は、前記一対の電極を介して検出された流量信号の変化から正流であるか逆流であるかを判定することを特徴とする、請求項1に記載の電磁流量計。
  3. 一対の励磁コイルを管路外において対向配置し、前記励磁手段はこれら励磁コイルに励磁電流を同時に流すことを特徴とする、請求項1、または2に記載の電磁流量計。
  4. 一対の励磁コイルを管路外において対向配置し、前記励磁手段は、これら一対の励磁コイルの1個のみ独立して励磁電流を流すことができることを特徴とする、請求項1、または2に記載の電磁流量計。
  5. 励磁コイルを管路外の片側のみに設置したことを特徴とする、請求項1、または2に記載の電磁流量計。
  6. 前記励磁コイルのコアから管路を挟んでその反対側までの間の管路外で磁気回路を形成して、管路内を通り抜ける磁束を環流させる磁気回路体を設けたことを特徴とする、請求項5に記載の電磁流量計。
  7. 一対の電極の一方を信号処理手段のグランド電位と等しくしたことを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の電磁流量計。
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