JP4052458B2 - ZnO半導体びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に形成された単結晶膜からなるZnO(酸化亜鉛)半導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ZnOは、表面弾性波素子、焦電子素子、ガスセンサー、透明導電膜、バリスター等に用いられてきた優れた機能を有する材料であり、酸化物材料の薄膜成長技術の向上に伴って単結晶薄膜の成長が可能になって、ZnO薄膜による新しい応用分野が拓けつつある。
ZnO単結晶は、禁制帯幅3.4eVを有する直接遷移型の半導体で、青色から紫外域の光電子デバイス用材料として有望であり、禁制帯幅がほぼ同じGaN(窒化ガリウム)単結晶等に比べて、励起子結合エネルギーが格段に大きく(ZnO0:59meV、GaN:21meV、ZnSe:20meV)、室温においても高効率の励起子発光過程を利用した、単色性に優れた発光デバイスが実現可能である。
II族のZn(亜鉛)をMg(マグネシウム)に置き換えたZn1-XMgXOやZnをCd(カドミウム)で置き換えたZn1-YCdYにより、禁制帯幅の変化や室温での強い青色発光の報告もある。
一方、VI族のO(酸素)をSe(セレン)やS(イオウ)で置換する場合には、アニオンの電気陰性度の違いが大きいために負のボーイング(反り)を示す可能性が指摘されている。
このように、バンドギャップエンジニアリング技術を駆使すれば、ZnO系材料を用いて紫外域から可視域、赤外域までの幅広い波長範囲をカバーすることができる。
【0003】
従来、ZnO半導体としては、主に、サファイア基板上にウルツ鉱型のZnO単結晶膜を形成したのもが知られている。
このZnO半導体は、サファイア基板上に450〜700℃の温度でウルツ鉱型のZnO単結晶膜をエピタキシャル成長させて製造されるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のZnO半導体では、光電子デバイスへの利用を目的とする場合、基板のサファイアは電気的に絶縁体であるため、電極作製過程が複雑になる。
又、サファイアの熱伝導度が低いため、作動時に放熱し難く、デバイスの性能を高めることが困難となる不具合がある。
かかる不具合を解消するため、電子デバイスとして成熟しているSi(シリコン)単結晶を基板として用い、その上にZnO単結晶を成膜することが考えられるが、基板となるSi単結晶とZnO単結晶膜との間には格子不整合があるため、ミスフィット転位による結晶欠陥が多数発生し、デバイス作製時に不都合を生ずる。
【0005】
そこで、本発明は、光電子デバイスの作製に際し、電極の作製が容易であると共に、高品質とし得るZnO半導体及びその製造方法の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1のZnO半導体は、(111)面のSi単結晶基板上に厚さ20nm〜1μm程度の(111)面のc−BP単結晶層を介在して(0001)面のZnO単結晶膜が形成されていることを特徴とする。
【0007】
又、第2のZnO半導体は、第1のものにおいて、前記(111)面のc−BP単結晶層と(0001)面のZnO単結晶膜との間に厚さ5〜100nm程度のZnOの低温成長層が介在されていることを特徴とする。
【0008】
一方、第1のZnO半導体の製造方法は、(111)面のSi単結晶基板上に800〜1000℃の温度で(111)面のc−BP単結晶層を20nm〜1μm程度の厚さにエピタキシャル成長させた後、(111)面のc−BP単結晶層上に450〜700℃の温度で(0001)面のZnO単結晶膜をエピタキシャル成長させることを特徴とする。
【0009】
また、第2のZnO半導体の製造方法は、第1の方法において、前記(0001)面のZnO単結晶膜のエピタキシャル成長の前に、(111)面のc−BP単結晶上に200〜400℃の温度でZnOの低温成長層を5〜100nm程度の厚さに堆積させることを特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明の第1のZnO半導体及びその製造方法においては、(111)面のc−BP単結晶層(閃亜鉛鉱型構造のc−BPは、格子定数が(4.538オングストローム)がダイヤモンド型構造のSiの格子定数(5.431オングストローム)と比較して16.4%の違いがあるものの、Si上にヘテロエピタキシャル成長できることが知られている。)上に、その結合長と近い結合長の(0001)面のZnO単結晶膜がミスフィット転位を抑制された状態でヘテロエピタキシャル成長される上、c−BPが導電性を有している。
【0011】
又、第2のZnO半導体およびその製造方法によれば、第1のもの及び方法による作用の他、ZnO単結晶膜の結晶欠陥が低減される。
【0012】
c−BP単結晶層の厚さが、20nm未満であると、ZnO層は多結晶となる。一方、1μmを超えると、c−BP単結晶層の表面が荒れる傾向となる。
c−BP単結晶層の厚さは、50〜80nmが好ましい。
ZnO単結晶膜の厚さは、デバイスによって適宜定められるが、通常、1〜10μmが好ましい。
又、ZnOの低温成長層の厚さが、5nm未満であると、ZnO層は多結晶化する。一方、100nmを超えると、ZnO層の表面荒れをもたらす。
ZnOの低温成長層の厚さは、10〜60nmが好ましい。
【0013】
一方、c−BP単結晶層のエピタキシャル成長時の温度が、800℃未満であると、BP層は多結晶となる。一方、1000℃を超えると、BP層は立方晶でなくなる。
c−BP単結晶層のエピタキシャル成長時の温度は、850〜950℃が好ましい。
c−BP単結晶層のエピタキシャル成長用の原料としては、PH3(ホスフィン)、P26(ジボラン)が用いられる。
ZnO単結晶膜のエピタキシャル成長時の温度が、450℃未満であると、ZnOは多結晶となる。一方、700℃を超えると、ZnOは多結晶となる。
ZnO単結晶膜のエピタキシャル成長時の温度は500〜650℃が好ましい。
ZnO単結晶膜のエピタキシャル成長用の原料としては、DEZn(ジエチル亜鉛)、N2O(一酸化二窒素)が用いられる。
又、ZnOの低温成長層の堆積時の温度が、200℃未満であると、ZnOは多結晶となる。一方、400℃を超えると、ZnOは表面が荒れる。
ZnOの低温成長層の堆積時の温度は、250〜380℃が好が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るZnO半導体の実施の形態の一例を示す概念的な断面図である。
【0015】
このZnO半導体は、(111)面のSi単結晶基板1上に厚さ20nm〜1μm程度の(111)面のc−BP単結晶層2及び厚さ5〜100nm程度のZnOの低温成長層3を順に介在して厚さ1〜10μm程度の(0001)面のZnO単結晶膜4が形成されているものである。
【0016】
上記ZnO半導体においては、(111)面のc−BP単結晶層上に、その結合長に近い結合長の(0001)面のZnO単結晶膜がミスフィット転位を抑制された状態でヘテロエピタキシャル成長される上、ZnOの低温成長層により(0001)面のZnO単結晶膜の結晶欠陥が低減され、又、c−BPが導電性を有している。
【0017】
上述したZnO半導体を製造するため、先ず(111)面のSi単結晶基板をH2(水素ガス)雰囲気中において1000℃以上の温度で加熱することにより自然酸化源を除去した。
次に、(111)面のc−BP単結晶の成長を行うため、800〜1000℃の温度まで降温した後、B26及びPH3を供給して(111)面のc−BP単結晶層を20nm〜1μm程度の厚さにエピタキシャル成長させた。
【0018】
次いで、酸化物用の炉に移動させ、ZnOの低温成長層を設けるため、基板温度が200〜400℃になるようにし、DEZn及びN2Oを供給してZnOの低温成長層を5〜100nmの厚さに堆積させた。
次に、(0001)面のZnO単結晶の成長を行うため、500〜700℃の温度まで昇温した後、DEZn及びN2Oを供給して(0001)面のZnO単結晶膜を1〜10μm程度の厚さにc軸配向でエピタキシャル成長させた。
【0019】
なお、上述した実施の形態においては、(111)面のc−BP単結晶層と(0001)面のZnO単結晶膜との間にZnOの低温成長層を介在させる場合について説明したが、これに限定させるものではなく、ZnOの低温成長層を設けることなく、(0001)面のZnO単結晶膜を(111)面のc−BP単結晶層上に直に設けるようにしてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1のZnO半導体及びその製造方法によれば、(111)面のc−BP単結晶層上に、その結合長に近い結合長の(0001)面のZnO単結晶膜がミスフィット転位を抑制された状態でヘテロエピタキシャル成長成長されるので、光電子デバイスの作製に際し、格子不整合が抑制された高品質のZnO半導体を得ることができる。
その上、c−BPが導電性を有しているので、電極の作製を容易に行うことができる。
【0021】
又、第2のZnO半導体及びその製造方法によれば、第1のもの及び方法による作用効果の他、ZnO単結晶膜の結晶欠陥が低減されるので、一層高品質のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るZnO半導体の実施の形態の一例を示す概念的な断面図である。
【符号の説明】
1 Si単結晶基板
2 c−BP単結晶層
3 ZnOの低温成長層
4 ZnO単結晶膜

Claims (4)

  1. (111)面のSi単結晶基板上に厚さ20nm〜1μm程度の(111)面のc−BP単結晶層を介在して(0001)面のZnO単結晶膜が形成されていることを特徴とするZnO半導体。
  2. 前記(111)面のc−BP単結晶層と(0001)面のZnO単結晶膜との間に厚さ5〜100nm程度のZnOの低温成長層が介在されていることを特徴とする請求項1記載のZnO半導体。
  3. (111)面のSi単結晶基板上に800〜1000℃の温度で(111)面のc−BP単結晶層を20nm〜1μm程度の厚さにエピタキシャル成長させた後、(111)面のc−BP単結晶層上に450〜700℃の温度で(0001)面のZnO単結晶膜をエピタキシャル成長させることを特徴とするZnO半導体の製造方法。
  4. 前記(0001)面のZnO単結晶膜のエピタキシャル成長の前に、(111)面のc−BP単結晶層上に200〜400℃の温度でZnOの低温成長層を5〜100nm程度の厚さに堆積させることを特徴とする請求項3記載のZnO半導体の製造方法。
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