JP4052025B2 - 内燃機関の大気圧検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の周囲環境における大気圧を検出する内燃機関の大気圧検出装置に関し、例えば、大気圧の変動を知ることによって内燃機関に供給する燃料噴射量に反映することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の大気圧検出装置に関連し、大気圧センサを用いることなく吸気圧から大気圧を検出する手法が種々提案されている。例えば、内燃機関の始動時の低回転・高負荷のときの吸気圧を大気圧として近似するもの、また、平地におけるスロットル開度と機関回転速度に対する吸気圧を記憶しておき、現在の吸気圧との差により検出するもの、更に、平地及び高地におけるスロットル開度と機関回転速度に対する吸気圧を記憶しておき、現在の吸気圧との差により検出するものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のものでは、大気圧検出の機会が少なく、また、高負荷域では精度を確保できるが低負荷域では誤差が大きく、更に、2つ以上のマップ等を記憶しておくことが必要であり工数がかかるという不具合があった。
【0004】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧を随時検出可能な内燃機関の大気圧検出装置の提供を課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の内燃機関の大気圧検出装置によれば、内燃機関が定常運転状態であるときの例えば、平地における基準大気圧と、この基準大気圧におけるスロットル開度検出手段によるスロットル開度及び機関回転速度検出手段による機関回転速度により基準吸気圧演算手段で算出される基準吸気圧とによる圧力差に対して、大気圧演算手段によって例えば、高地で同じ運転状態における吸気圧検出手段による現在の吸気圧とこれまでの大気圧との圧力差にその大気圧に応じて設定された係数を乗算した圧力値が一致するようにされることで現在の大気圧が算出される。このため、本システムでは、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧が随時検出される。
【0006】
請求項2の内燃機関の大気圧検出装置によれば、内燃機関が定常運転状態であるときの例えば、平地における基準大気圧と、この基準大気圧におけるスロットル開度検出手段によるスロットル開度及び機関回転速度検出手段による機関回転速度により基準吸気圧演算手段で算出される基準吸気圧と、大気圧演算手段によって例えば、高地で同じ運転状態における吸気圧検出手段による現在の吸気圧とから算出された圧力比に基づき現在の大気圧が算出される。このため、本システムでは、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧が随時検出される。
【0007】
請求項3の内燃機関の大気圧検出装置によれば、内燃機関が定常運転状態であるときの例えば、平地における基準大気圧と、この基準大気圧におけるスロットル開度検出手段によるスロットル開度及び機関回転速度検出手段による機関回転速度により基準吸気圧演算手段で算出される基準吸気圧と、大気圧演算手段によって例えば、高地で同じ運転状態における吸気圧検出手段による現在の吸気圧とから算出された圧力比に基準大気圧を乗算することで現在の大気圧が算出される。このため、本システムでは、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧が随時検出される。
【0008】
請求項4の内燃機関の大気圧検出装置によれば、内燃機関が各気筒毎に独立して吸入空気量が供給される独立吸気エンジンであるため、より正確に大気圧が検出される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0010】
〈実施例1〉
図1は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置が適用された二輪車における独立吸気の内燃機関及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【0011】
図1において、内燃機関1は4サイクル4気筒(#1気筒〜#4気筒)の火花点火式として構成され、その吸入空気は上流側からエアクリーナ2、吸気通路3、スロットルバルブ4を通過して吸気通路3内でインジェクタ(燃料噴射弁)5から噴射された燃料と混合され、所定空燃比の混合気として吸気ポート6からシリンダ内に供給される。また、内燃機関1のシリンダヘッドには点火プラグ7が配設され、点火タイミング毎に点火コイル/イグナイタ8から高電圧が点火プラグ7に印加され、シリンダ内の混合気に点火される。そして、内燃機関1のシリンダ内で燃焼された排気ガスは排気ポート11から排気通路12の下流側に配設された三元触媒13を通過して大気中に排出される。
【0012】
エアクリーナ2内には吸気温センサ21が配設され、吸気温センサ21によってエアクリーナ2内に流入される吸気温THA〔℃〕が検出される。また、吸気通路3には吸気圧センサ22が配設され、吸気圧センサ22によってスロットルバルブ4の下流側の吸気圧PM〔kPa:キロパスカル〕が検出される。そして、スロットルバルブ4にはスロットル開度センサ23が配設され、スロットル開度センサ23によってスロットルバルブ4のスロットル開度TA〔°〕が検出される。また、内燃機関1のシリンダブロックには水温センサ24が配設され、水温センサ24によって内燃機関1内の冷却水温THW〔℃〕が検出される。
【0013】
そして、内燃機関1のクランクシャフト(図示略)にはクランク角センサ25が配設され、クランク角センサ25からのクランク角信号によって内燃機関1の機関回転速度NE〔rpm〕が検出される。更に、内燃機関1のカムシャフト(図示略)にはカム角センサ26が配設され、カム角センサ26からのカム角信号によって内燃機関1のカムシャフト回転角θ2 〔°CA(Crank Angle:クランク角)〕が検出される。この他、車載バッテリ(図示略)には電源電圧センサ29が配設され、電源電圧センサ29によって電源電圧VB 〔V:ボルト〕が検出される。
【0014】
一方、燃料タンク31内から燃料ポンプ32で汲上げられた燃料は、燃料配管33、燃料フィルタ34、燃料配管35、デリバリパイプ36の順に圧送され、各気筒のインジェクタ5に供給される。デリバリパイプ36内の余剰燃料は、プレッシャレギュレータ37、リターン配管38の経路にて燃料タンク31内に戻される。このプレッシャレギュレータ37によってデリバリパイプ36内の燃圧(燃料圧力)と吸気圧との差圧が一定になるようにデリバリパイプ36内の燃圧が調整される。
【0015】
内燃機関1の運転状態を制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)40は、周知の各種演算処理を実行する中央処理装置としてのCPU41、制御プログラムや制御マップ等を格納したROM42、各種データ等を格納するRAM43、B/U(バックアップ)RAM44等を中心に論理演算回路として構成され、上述の各種センサからの検出信号を入力する入力ポート45及びインジェクタ5、燃料ポンプ32等の各種アクチュエータや点火コイル/イグナイタ8に各制御信号を出力する出力ポート46等に対しバス47を介して接続されている。
【0016】
次に、本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU40内のCPU41による内燃機関1の周囲環境における大気圧演算の処理手順を示す図2のフローチャートに基づき、図3及び図4を参照して説明する。ここで、図3はスロットル開度TA〔°〕及び機関回転速度NE〔rpm〕をパラメータとして基準大気圧PA0 (例えば、101.3〔kPa〕=760〔mmHg〕)における基準吸気圧PM0 〔kPa〕を算出するマップである。また、図4は大気圧PA〔kPa〕に対する大気圧係数PAKまたは仮の大気圧PAD〔kPa〕に対する大気圧係数PAKKを算出するテーブルである。なお、この大気圧演算ルーチンは所定時間毎にCPU41にて繰返し実行される。
【0017】
図2において、まず、ステップS101で、内燃機関1が定常運転状態であるかが判定される。この判定では、スロットル開度TA及び機関回転速度NEの変動が所定値以下であるときに内燃機関1が定常運転状態であるとされる。ステップS101の判定条件が成立、即ち、スロットル開度TA及び機関回転速度NEの変動が所定値以下と小さく内燃機関1が定常運転状態にあるときにはステップS102に移行し、吸気圧センサ22で検出された吸気圧PM〔kPa〕が読込まれる。次にステップS103に移行して、スロットル開度センサ23で検出されたスロットル開度TA〔°〕が読込まれる。次にステップS104に移行して、クランク角センサ25からの信号間隔に基づき算出された機関回転速度NE〔rpm〕が読込まれる。
【0018】
次にステップS105に移行して、図3に示すROM42内に予め記憶されているマップを用い、ステップS103で読込まれたスロットル開度TA及びステップS104で読込まれた機関回転速度NEに対応する基準大気圧PA0 における基準吸気圧PM0 が算出される。なお、機関回転速度NEの中間値における基準吸気圧PM0 については補間演算によって算出される。次にステップS106に移行して、図4に示すROM42内に予め記憶されているテーブルを用い、現時点においてB/URAM44内に記憶されている大気圧PAに対する大気圧係数PAKが算出される。次にステップS107に移行して、第1の大気圧増減判定値DET1 が次式(1)にて算出される。
【0019】
【数1】
DET1 ←(PA−PM)*PAK−(PA0 −PM0 ) ・・・(1)
【0020】
次にステップS108に移行して、ステップS107で算出された第1の大気圧増減判定値DET1 が「0(零)」であるかが判定される。ステップS108の判定条件が成立せず、即ち、第1の大気圧増減判定値DET1 が「0」でないときには大気圧変動があるとしてステップS109に移行し、現時点における大気圧PAに所定圧力K(例えば、0.1〔kPa〕)が加算され仮の大気圧PADが算出される。次にステップS110に移行して、図4に示すROM42内に予め記憶されているテーブルを用い、ステップS109で算出された仮の大気圧PADに対する大気圧係数PAKKが算出される。次にステップS111に移行して、第2の大気圧増減判定値DET2 が次式(2)にて算出される。
【0021】
【数2】
DET2 ←(PAD−PM)*PAKK−(PA0 −PM0 )・・・(2)
【0022】
次にステップS112に移行して、ステップS107で算出された第1の大気圧増減判定値DET1 の絶対値からステップS111で算出された第2の大気圧増減判定値DET2 の絶対値を減算した値が「0」より大きいかが判定される。ステップS112の判定条件が成立するときには現時点における大気圧PAが未だ小さいとしてステップS113に移行し、現時点における大気圧PAに所定圧力KK(例えば、0.05〔kPa〕)が加算されることで大気圧PAが更新され、本ルーチンを終了する。一方、ステップS112の判定条件が成立しないときには現時点における大気圧PAが大きくなり過ぎたとしてステップS114に移行し、現時点における大気圧PAから所定圧力KK(例えば、0.05〔kPa〕)が減算されることで大気圧PAが更新され、本ルーチンを終了する。
【0023】
一方、ステップS101の判定条件が成立せず、即ち、スロットル開度TA及び機関回転速度NEの変動が所定値を越え大きく内燃機関1が加減速運転状態にあるとき、またはステップS108の判定条件が成立、即ち、第1の大気圧増減判定値DET1 が「0」であるときには大気圧変動がないとして現時点における大気圧PAを更新することなく本ルーチンを終了する。
【0024】
次に、本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU40内のCPU41による内燃機関1の周囲環境における大気圧演算の処理手順の第1の変形例を示す図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、この大気圧演算ルーチンは所定時間毎にCPU41にて繰返し実行される。
【0025】
図5において、ステップS201〜ステップS208、ステップS210〜ステップS212については、上述の実施例におけるステップS101〜ステップS108、ステップS110〜ステップS112に対応しているため、その詳細な説明を省略する。本変形例では、ステップS209で、現時点における大気圧PAから所定圧力K(例えば、0.1〔kPa〕)が減算され仮の大気圧PADが算出される。これ以降のステップでは、この仮の大気圧PADが用いられる。
【0026】
そして、ステップS212の判定条件が成立、即ち、ステップS207で算出された第1の大気圧増減判定値DET1 の絶対値からステップS211で算出された第2の大気圧増減判定値DET2 の絶対値を減算した値が「0」より大きいときには現時点における大気圧PAが未だ大きいとしてステップS213に移行し、現時点における大気圧PAから所定圧力KK(例えば、0.05〔kPa〕)が減算されることで大気圧PAが更新され、本ルーチンを終了する。一方、ステップS212の判定条件が成立しないときには現時点における大気圧PAが小さくなり過ぎたとしてステップS214に移行し、現時点における大気圧PAに所定圧力KK(例えば、0.05〔kPa〕)が加算されることで大気圧PAが更新され、本ルーチンを終了する。
【0027】
次に、本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU40内のCPU41による内燃機関1の周囲環境における大気圧演算の処理手順の第2の変形例を示す図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、この大気圧演算ルーチンは所定時間毎にCPU41にて繰返し実行される。
【0028】
図6において、ステップS301〜ステップS308、ステップS310〜ステップS314については、上述の第1の変形例におけるステップS201〜ステップS208、ステップS210〜ステップS214に対応しているため、その詳細な説明を省略する。本変形例では、ステップS309で、現時点における大気圧PAに所定値K(例えば、1.01)が乗算され仮の大気圧PADが算出される。これ以降のステップでは、この仮の大気圧PADが用いられ、ステップS313またはステップS314で大気圧PAが更新され、本ルーチンを終了する。
【0029】
上述の実施例及び変形例のルーチンによる大気圧演算で用いられている基本となる考え方について、図7を参照して説明する。ここで、図7は高度(平地、高地)に対する圧力(大気圧、吸気圧)〔kPa〕の関係を示す特性図であり、内燃機関1の運転状態として機関回転速度NEが2000〔rpm〕でスロットル開度TAが全開時の平均吸気圧(大気圧にほぼ等しい)と、これに対して機関回転速度NEが2000〔rpm〕でスロットル開度TAが3〔°〕時の平均吸気圧とを示す。
【0030】
図7では、平地(例えば、101.3〔kPa〕=760〔mmHg〕)における基準大気圧PA0 に対応する基準吸気圧PM0 と高地において吸気圧センサ22にて検出される吸気圧PMとそのときの大気圧PAとの関係が示されている。この特性図によって、高度が変化するに伴い大気圧及び吸気圧がほぼ直線的に変化することが分かる。そして、基準大気圧PA0 と基準吸気圧PM0 との圧力差(PA0 −PM0 )に対して、大気圧PAと吸気圧PMとの圧力差(PA−PM)は相似三角形の各底辺に相当している。そこで、大気圧PAに応じた大気圧係数PAKが予め分かっておれば、平地から高地への高度変化に伴う{(PA−PM)*PAK−(PA0 −PM0 )}が「0」となるような大気圧PAが求まり、これを現在の大気圧PAとすることができるのである。
【0031】
次に、本実施例及び変形例における各種センサ信号等の遷移状況について図8のタイムチャートを参照して説明する。
【0032】
図8では、例えば、降坂時で、スロットル開度TA〔°〕の変動量は小さく殆ど変動がない状態であり、機関回転速度NE〔rpm〕の変動量は小さいながら徐々に上昇する状態にある。このように、スロットル開度TA〔°〕がほぼ一定であっても機関回転速度NE〔rpm〕が上昇することにより、上述の図3のマップからも分かるように、基準吸気圧PM0 〔kPa〕は徐々に下降し、これに連れて吸気圧PM〔kPa〕も多少変化している。この結果、大気圧PA〔kPa〕算出値は、降坂時で高度が下がっていることに合致して徐々に大きくなっている。
【0033】
このように、本実施例及び変形例の内燃機関の大気圧検出装置は、内燃機関1の吸気通路3に配設されたスロットルバルブ4の下流側に導入される吸入空気の圧力である吸気圧PMを検出する吸気圧検出手段としての吸気圧センサ22と、スロットルバルブ4の開度であるスロットル開度TAを検出するスロットル開度検出手段としてのスロットル開度センサ23と、内燃機関1の機関回転速度NEを検出する機関回転速度検出手段としてのクランク角センサ25と、内燃機関1が定常運転状態で所定大気圧を基準大気圧PA0 とするときのスロットル開度TA及び機関回転速度NEをパラメータとする吸気圧を基準吸気圧PM0 として算出するECU40内のCPU41にて達成される基準吸気圧演算手段と、基準大気圧PA0 と基準吸気圧PM0 との圧力差(PA0 −PM0 )に対して、基準吸気圧PM0 の算出時と同じ運転状態における現在の吸気圧PMとこれまでの大気圧PAまたは仮の大気圧PADとの圧力差(PA−PM),(PAD−PM)にその大気圧PAまたは仮の大気圧PADに応じて設定された大気圧係数PAK,PAKKを乗算した圧力値{(PA−PM)*PAK},{(PAD−PM)*PAKK}が一致するよう補正された大気圧を現在の大気圧PAとして算出するECU40内のCPU41にて達成される大気圧演算手段とを具備するものである。また、本実施例及び変形例の内燃機関の大気圧検出装置の内燃機関1を、各気筒毎に独立して吸入空気量を供給する独立吸気エンジンとするものである。
【0034】
したがって、内燃機関1が定常運転状態であるときの例えば、平地における基準大気圧PA0 と、この基準大気圧PA0 におけるスロットル開度センサ23によるスロットル開度TA及びクランク角センサ25による機関回転速度NEによりマップを用いて算出される基準吸気圧PM0 とによる圧力差(PA0 −PM0 )に対して、例えば、高地で同じ運転状態における吸気圧センサ22による現在の吸気圧PMとこれまでの大気圧PAまたは仮の大気圧PADとの圧力差(PA−PM),(PAD−PM)にその大気圧PAまたは仮の大気圧PADに応じてテーブルを用いて設定された大気圧係数PAK,PAKKを乗算した圧力値{(PA−PM)*PAK},{(PAD−PM)*PAKK}が一致するようにされることで現在の大気圧PAが算出される。
【0035】
つまり、基準大気圧PA0 においてスロットル開度TA及び機関回転速度NEとからマップにて算出される基準吸気圧PM0 と、現在の吸気圧PMとこれまでの大気圧PA(仮の大気圧PAD)に応じてテーブルにて設定される大気圧係数PAK(PAKK)が分かれば、上述のように平地における大気圧と吸気圧との圧力差(PA−PM),(PAD−PM)に、高地における大気圧PA(仮の大気圧PAD)と吸気圧PMとの圧力差に大気圧係数PAK,PAKKを乗算した圧力値{(PA−PM)*PAK},{(PAD−PM)*PAKK}が一致すると現在の大気圧PAと分かるのである。このため、本実施例及び変形例の内燃機関の大気圧検出装置においては、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧を随時検出することができる。
【0036】
〈実施例2〉
図9は本発明の実施の形態の第2実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU40内のCPU41による内燃機関1の周囲環境における大気圧演算の処理手順を示すフローチャートである。また、図10は図9で大気圧係数PKをパラメータとして大気圧PA〔kPa〕を算出するテーブルである。なお、本実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置が適用された二輪車における独立吸気の内燃機関及びその周辺機器の構成は、上述の第1実施例における図1の概略図と同一であるためその詳細な説明を省略する。
【0037】
図9において、ステップS401〜ステップS405については、上述の第1実施例におけるステップS101〜ステップS105に対応しているため、その詳細な説明を省略する。本実施例では、ステップS406で、ステップS405で算出された基準吸気圧PM0 と現在の吸気圧PMとの圧力比(PM0 /PM)が大気圧係数PKとして算出される。次にステップS407に移行して、図10に示すマップによって、ステップS406で算出された大気圧係数PKに対する大気圧PAが算出され、本ルーチンを終了する。なお、ステップS401で内燃機関1が定常運転状態でないときには、何もすることなく本ルーチンを終了する。
【0038】
このように、本実施例の内燃機関の大気圧検出装置は、内燃機関1の吸気通路3に配設されたスロットルバルブ4の下流側に導入される吸入空気の圧力である吸気圧PMを検出する吸気圧検出手段としての吸気圧センサ22と、スロットルバルブ4の開度であるスロットル開度TAを検出するスロットル開度検出手段としてのスロットル開度センサ23と、内燃機関1の機関回転速度NEを検出する機関回転速度検出手段としてのクランク角センサ25と、内燃機関1が定常運転状態で所定大気圧を基準大気圧PA0 とするときのスロットル開度TA及び機関回転速度NEをパラメータとする吸気圧を基準吸気圧PM0 として算出するECU40内のCPU41にて達成される基準吸気圧演算手段と、基準吸気圧PM0 とその算出時と同じ運転状態における現在の吸気圧PMとの圧力比(PM0 /PM)に基づき現在の大気圧PAを算出するECU40内のCPU41にて達成される大気圧演算手段とを具備するものである。
【0039】
したがって、内燃機関1が定常運転状態であるときの例えば、平地における基準大気圧PA0 と、この基準大気圧PA0 におけるスロットル開度センサ23によるスロットル開度TA及びクランク角センサ25による機関回転速度NEによりマップを用いて算出される基準吸気圧PM0 と例えば、高地で同じ運転状態における吸気圧センサ22による現在の吸気圧PMとから算出された圧力比(PM0 /PM)である大気圧係数PKから、テーブルを用いて現在の大気圧PAが算出される。
【0040】
つまり、基準大気圧PA0 においてスロットル開度TA及び機関回転速度NEとからマップにて算出される基準吸気圧PM0 と、現在の吸気圧PMとによる圧力比(PM0 /PM)である大気圧係数PKが分かれば、テーブルから現在の大気圧PAが算出されるのである。このため、本実施例の内燃機関の大気圧検出装置においては、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧を随時検出することができる。
【0041】
〈実施例3〉
図11は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU40内のCPU41による内燃機関1の周囲環境における大気圧演算の処理手順を示すフローチャートである。なお、本実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置が適用された二輪車における独立吸気の内燃機関及びその周辺機器の構成は、上述の第1実施例における図1の概略図と同一であるためその詳細な説明を省略する。
【0042】
図11において、ステップS501〜ステップS505については、上述の第1実施例におけるステップS101〜ステップS105に対応しているため、その詳細な説明を省略する。本実施例では、ステップS506で、現在の吸気圧PMとステップS505で算出された基準吸気圧PM0 との圧力比(PM/PM0 )に基準大気圧PA0 が乗算され大気圧PAが算出され、本ルーチンを終了する。なお、ステップS501で内燃機関1が定常運転状態でないときには、何もすることなく本ルーチンを終了する。
【0043】
このように、本実施例の内燃機関の大気圧検出装置は、内燃機関1の吸気通路3に配設されたスロットルバルブ4の下流側に導入される吸入空気の圧力である吸気圧PMを検出する吸気圧検出手段としての吸気圧センサ22と、スロットルバルブ4の開度であるスロットル開度TAを検出するスロットル開度検出手段としてのスロットル開度センサ23と、内燃機関1の機関回転速度NEを検出する機関回転速度検出手段としてのクランク角センサ25と、内燃機関1が定常運転状態で所定大気圧を基準大気圧PA0 とするときのスロットル開度TA及び機関回転速度NEをパラメータとする吸気圧を基準吸気圧PM0 として算出するECU40内のCPU41にて達成される基準吸気圧演算手段と、基準吸気圧PM0 とその算出時と同じ運転状態における現在の吸気圧PMとの圧力比(PM/PM0 )に基準大気圧PA0 を乗算して現在の大気圧PAを算出するECU40内のCPU41にて達成される大気圧演算手段とを具備するものである。
【0044】
したがって、内燃機関1が定常運転状態であるときの例えば、平地における基準大気圧PA0 と、この基準大気圧PA0 におけるスロットル開度センサ23によるスロットル開度TA及びクランク角センサ25による機関回転速度NEによりマップを用いて算出される基準吸気圧PM0 と例えば、高地で同じ運転状態における吸気圧センサ22による現在の吸気圧PMとから算出された圧力比(PM/PM0 )に基準大気圧PA0 を乗算することで現在の大気圧PAが算出される。
【0045】
つまり、基準大気圧PA0 においてスロットル開度TA及び機関回転速度NEとからマップにて算出される基準吸気圧PM0 と、現在の吸気圧PMとによる圧力比(PM/PM0 )に基準大気圧PA0 が乗算されることで現在の大気圧PAが算出されるのである。このため、本実施例の内燃機関の大気圧検出装置においては、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の周囲環境における大気圧を随時検出することができる。
【0046】
次に、本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU40内のCPU41による内燃機関1の周囲環境における大気圧演算の処理手順の変形例を示す図12のフローチャートに基づいて説明する。なお、この大気圧演算ルーチンは所定時間毎にCPU41にて繰返し実行される。
【0047】
図12において、ステップS601〜ステップS605については、上述の第3実施例におけるステップS501〜ステップS505に対応しているため、その詳細な説明を省略する。本変形例では、図13に高度に対する圧力の関係を示すように、内燃機関1の運転状態として機関回転速度NEが2000〔rpm〕でスロットル開度TAが全開時の平均吸気圧(大気圧にほぼ等しい)と、これに対して機関回転速度NEが2000〔rpm〕でスロットル開度TAが3〔°〕時の平均吸気圧とが圧力の低い側の所定圧力Aで交差する場合に対応している。つまり、所定圧力Aは例えば、低負荷時で吸気圧が実際の大気圧になるときの圧力相当に設定される。なお、このような所定圧力Aにおける交差は、一般に、高度が高くなり圧力が低くなるほど起こり易くなる。
【0048】
上述したような現象に対処するため、ステップS606で、図13に示す平均吸気圧の交差する点の所定圧力Aが考慮され、現在の吸気圧PMから所定圧力Aが減算された圧力(PM−A)とステップS605で算出された基準吸気圧PM0 から所定圧力Aが減算された圧力(PM0 −A)との圧力比{(PM−A)/(PM0 −A)}に基準大気圧PA0 から所定圧力Aが減算された圧力(PA0 −A)が乗算されて算出された圧力(PA0 −A)*{(PM−A)/(PM0 −A)}に最終的に所定圧力Aが加算されることで大気圧PAが算出され、本ルーチンを終了する。なお、ステップS601で内燃機関1が定常運転状態でないときには、何もすることなく本ルーチンを終了する。
【0049】
このため、本変形例の内燃機関の大気圧検出装置においても、大気圧センサを用いることなく、内燃機関の運転状態に対応する平均吸気圧が所定圧力で交差する場合における内燃機関の周囲環境における大気圧を随時検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態の第1実施例乃至第3実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置が適用された二輪車における独立吸気の内燃機関及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【図2】 図2は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】 図3は図2でスロットル開度及び機関回転速度をパラメータとして基準吸気圧を算出するマップである。
【図4】 図4は図2で大気圧または仮の大気圧をパラメータとして大気圧係数を算出するテーブルである。
【図5】 図5は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算の処理手順の第1の変形例を示すフローチャートである。
【図6】 図6は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算の処理手順の第2の変形例を示すフローチャートである。
【図7】 図7は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置による大気圧演算で用いられている高度に対する圧力の関係を示す特性図である。
【図8】 図8は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算処理に対応する各種センサ信号等の遷移状況を示すタイムチャートである。
【図9】 図9は本発明の実施の形態の第2実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】 図10は図9で大気圧係数をパラメータとして大気圧を算出するテーブルである。
【図11】 図11は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】 図12は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関の大気圧検出装置で使用されているECU内のCPUにおける大気圧演算の処理手順の変形例を示すフローチャートである。
【図13】 図13は図12の大気圧演算で用いられている高度に対する圧力の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 吸気通路
4 スロットルバルブ
22 吸気圧センサ
23 スロットル開度センサ
25 クランク角センサ
40 ECU(電子制御ユニット)

Claims (4)

  1. 内燃機関の吸気通路に配設されたスロットルバルブの下流側に導入される吸入空気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、
    前記スロットルバルブの開度であるスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、
    前記内燃機関の機関回転速度を検出する機関回転速度検出手段と、
    前記内燃機関が定常運転状態で所定大気圧を基準大気圧とするときの前記スロットル開度及び前記機関回転速度をパラメータとする吸気圧を基準吸気圧として算出する基準吸気圧演算手段と、
    前記基準大気圧と前記基準吸気圧との圧力差に対して、前記基準吸気圧の算出時と同じ運転状態における現在の吸気圧とこれまでの大気圧との圧力差にその大気圧に応じて設定された係数を乗算した圧力値が一致するよう補正された大気圧を現在の大気圧として算出する大気圧演算手段と
    を具備することを特徴とする内燃機関の大気圧検出装置。
  2. 内燃機関の吸気通路に配設されたスロットルバルブの下流側に導入される吸入空気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、
    前記スロットルバルブの開度であるスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、
    前記内燃機関の機関回転速度を検出する機関回転速度検出手段と、
    前記内燃機関が定常運転状態で所定大気圧を基準大気圧とするときの前記スロットル開度及び前記機関回転速度をパラメータとする吸気圧を基準吸気圧として算出する基準吸気圧演算手段と、
    前記基準吸気圧とその算出時と同じ運転状態における現在の吸気圧との圧力比に基づき現在の大気圧を算出する大気圧演算手段と
    を具備することを特徴とする内燃機関の大気圧検出装置。
  3. 内燃機関の吸気通路に配設されたスロットルバルブの下流側に導入される吸入空気の圧力である吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、
    前記スロットルバルブの開度であるスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、
    前記内燃機関の機関回転速度を検出する機関回転速度検出手段と、
    前記内燃機関が定常運転状態で所定大気圧を基準大気圧とするときの前記スロットル開度及び前記機関回転速度をパラメータとする吸気圧を基準吸気圧として算出する基準吸気圧演算手段と、
    前記基準吸気圧とその算出時と同じ運転状態における現在の吸気圧との圧力比に前記基準大気圧を乗算して現在の大気圧を算出する大気圧演算手段と
    を具備することを特徴とする内燃機関の大気圧検出装置。
  4. 前記内燃機関は、各気筒毎に独立して吸入空気量を供給する独立吸気エンジンであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の内燃機関の大気圧検出装置。
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