JP4051781B2 - 可変焦点距離レンズ鏡筒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は可変焦点距離レンズ鏡筒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術に係る可変焦点距離レンズのレンズ群駆動機構として、鏡筒の長さや径を大きくすることなく沈胴のための移動量を大きくし、カメラの薄型化を実現するものが特開平10−31150号公報に開示されている。これは、多条ネジのメスヘリコイドネジ部の一部にネジの谷部の幅を広げた拡幅部を形成し、この拡幅部の螺旋に沿う方向の長さ寸法を、メスヘリコイドネジと螺合するオスヘリコイドネジの山部の螺旋に沿う方向の長さと等しくするものである。これにより、ネジの谷部の幅を広げていない部分におけるリードの比較的小さいネジ嵌合と、谷部の幅を広げているところにおけるリードの比較的大きいネジ嵌合とを得ることができる。つまり、オスヘリコイドネジの山部に関して螺旋に直角な断面での寸法を「幅」と定義し、螺旋に沿う方向の長さを「長さ」と定義したときに、オスヘリコイドネジとメスヘリコイドネジとは「幅」または「長さ」で螺合する。そして「幅」で螺合する場合にはリードの比較的小さなネジ嵌合状態が得られ、「長さ」で螺合する場合にはリードの比較的大きなネジ嵌合状態が得られる。以上のようにして、相異なる二つのリードを有する複合リードねじを得ることができる。
【0003】
また、レンズ群を駆動するヘリコイドネジやカムの部品点数を削減する技術として特開平3−209445号公報に記載されるものがある。これは、一つのカム環中にカム溝とリードねじとを形成するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した複合リードネジとカム溝とを一つのカム環の円筒内周面に重ねて形成しようとすると、リードの変化する部分、すなわちメスヘリコイドネジの谷の屈曲部をカム溝が横断する場合があり、このときにヘリコイドネジの屈曲部の側壁がカム溝によって分断され、欠損した状態となる。
【0005】
上述した「幅」で螺合しているオスヘリコイドネジの山部が、分断された屈曲部にさしかかると、屈曲部が欠損した状態となっているために「長さ」で螺合する状態に切り替わらずに直進し、メスヘリコイドネジの谷部から逸脱してカム溝に落ち込んでしまうことがあった。この結果、カム環の回転作動がロックされてしまい、可変焦点距離レンズの変倍動作が不可能となってしまう場合があった。
【0006】
本発明は、複合リードネジを有するネジとカム溝とを一つのカム筒に重ね合わせて設けることが可能で、この複合リードネジに螺合するヘリコイドネジの山が複合リードねじの谷部から逸脱することのない可変焦点距離レンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の内周面を展開して示す図1に対応付けて以下の発明を説明する。
(1) 請求項1に記載の発明は、第1の深さbを有する有底のカム溝3d2と;第1のリードを有する第1のリードネジ3b1の谷部と第2のリードを有する第2のリードネジ3c1の谷部とが屈曲部3e1を介して接続されて構成され、第1の深さbよりも浅い第2の深さaのネジ底を有する複合リードネジ3f1とが一つの円筒上に重ねて配設される可変焦点距離レンズ鏡筒に適用される。そして、複合リードネジ3f1とカム溝3d2とは、屈曲部3e1で交差しないように配設される。カム溝3d1〜3d3が複数設けられ、複合リードネジ3f1〜3f6はカム溝3d1〜3d3の溝数の2倍以上の整数倍の条を有する多条ネジであり、複数の条の複合リードネジ3f1〜3f6がそれぞれ有する屈曲部3e1〜3e6のうち、少なくとも一つの屈曲部において複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3d1〜3d3とが交差しないように複数の条の複合リードネジ3f1〜3f6および複数のカム溝3d1〜3d3の配設位置が定められることにより上述した目的を達成する。
【0008】
なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために発明の実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下では、まず本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の構成および動作の概略を説明し、続いて上記可変焦点距離レンズ鏡筒を構成する部品の詳細を、そして可変焦点距離レンズ鏡筒の変倍動作およびフォーカシング動作の詳細について説明する。
【0010】
− 可変焦点距離レンズ鏡筒の構成 −
本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の主要部品を分解して示す図1および撮影光軸に沿う縦断面を示す図2を参照して説明する。
【0011】
図1において、固定筒1の周囲にはフランジ部1fが設けられ、フランジ部1fを介してカメラ本体に固設される。固定筒1の内周にはメスヘリコイドネジ1aが形成される。
【0012】
第1駆動筒2の外周面には、メスヘリコイドネジ1aと螺合するオスヘリコイドネジ2aが形成され、オスヘリコイドネジ2aの山部には駆動ギヤ15とかみ合う平歯車(ギア)2bの歯溝が形成される。つまり、オスヘリコイドネジ2aは、ヘリコイドネジとしての機能とギヤとしての機能を併せ持つものである。第1駆動筒2の内周面には、3本のカム溝2cと6本の直進ガイド溝2dとが形成される。
【0013】
第2駆動筒3の外周面には、第1駆動筒2の6本の直進ガイド溝2dと係合する突起3aが6カ所に設けられる一方、内周面には後で詳述する複合リードネジ3fが設けられ、さらにこの複合リードネジ3fに重ねるようにしてカム溝3dが設けられる。
【0014】
第2駆動筒3の6本の複合リードネジ3fと螺合する6カ所のオスヘリコイドネジ4aを外周に有する1群筒4には、1群レンズ101が組み込まれて固設される。1群筒4の内周面には、直進ガイド筒5の外周面に光軸方向に延在するように形成される2本または3本(図1においては2本の場合を示す)の凸部5bと係合する2本または3本の直進溝4bが形成されており、1群筒4と直進ガイド筒5とは光軸回り方向の相対移動が阻止される一方、光軸方向には相対移動可能となっている。
【0015】
直進ガイド筒5の後方にはフランジ部5gが形成され、フランジ部5gには円周溝5hが設けられる。フランジ部5gの外周には、その円周を3等分する位置に3本のフォロワピン5cが固設される。直進ガイド筒5の内周面には、後述する移動キー10のキー10bと光軸方向に相対移動可能に係合するキー溝5eが2箇所に形成される。直進ガイド筒5の円筒部には、直進ガイド穴5dおよび5fがそれぞれ円周方向に3箇所設けられる。
【0016】
シャッタユニット7には、2群レンズ102を保持する2群レンズ枠6がビス(不図示)により一体に固定される。シャッタユニット7の前方には、図2に示されるように溝7aが設けられ、この溝に遮光性のシリコンゴム等で成形されて光軸方向に伸縮自在な円筒状の蛇腹11の一端が固着される。蛇腹11の他端(被写体側端)は、図2に示されるように止め輪13により1群筒4の先端部に固定される。この蛇腹11は、1群レンズ101より入射した光がシャッタユニット7の外周部を通ってフイルム面に達するのを防止するためのものである。
【0017】
図1に示されるように、3群レンズ103を保持する3群レンズ枠8と上述した2群レンズ枠6とは、間に付勢バネ9を介装して直進ガイド筒5に組み込まれる。2群レンズ枠6に挿入される3本のガイドピン6aと直進ガイド穴5fとが係合し、3群レンズ枠8に挿入される3本のフォロワピン8aと直進ガイド穴5dとが係合し、両レンズ枠6、8は直進ガイド筒5内で光軸方向に移動可能に保持される。このとき、付勢バネ9によって2群レンズ枠6は被写体側に、3群レンズ枠8はフイルム側にそれぞれ付勢される。
【0018】
上述した1群筒4と第2駆動筒3とを螺合させて組み合わせ、さらに上述のように2群レンズ枠6、付勢バネ9や3群レンズ枠8等を組み込んだ直進ガイド筒5を、直進溝4bと凸部5bとが係合するようにして組み合わせてレンズ保持ユニットLHが完成する。このとき、第2駆動筒3のフイルム側端面近傍の内周には、フランジ部5gに設けられる円周溝5hと係合する突起3gが図2および図4に示されるように形成されており、第2駆動筒3に直進ガイド筒5を組み込むことにより円周溝5hと突起3gとがスナップフィットにより係合する。上述のようにして組まれた第2駆動筒3と直進ガイド筒5とは、光軸方向には一体に移動し、光軸回りの回転方向には相対回転可能となる。そして、直進ガイド筒5を固定して第2駆動筒を光軸まわりに回転させると、直進ガイド筒5に回転を規制されている1群筒4に対して第2駆動筒3が相対回転し、オスヘリコイドネジ4aと複合リードネジ3fとの作用により1群筒4が光軸方向に沿って直進動する。このとき、3群レンズ枠8に挿入されるフォロワピン8aと第2駆動筒3のカム溝3dとの作用により、3群レンズ枠8が直進ガイド筒5内を直進動する。
【0019】
図1に戻って、レンズ保持ユニットLHは第1駆動筒2に組み込まれ、このときに突起3aとガイド溝2dとが係合し、フォロワピン5cとカム溝2cとが係合する。第1駆動筒2のフイルム側端面近傍の内周には図2に示されるメネジ2eが形成されており、移動キー10の挿入された固定部材12がこのメネジ2eに螺合される。この固定部材12により、移動キー10は第1駆動筒2から抜けることなく、第1駆動筒2に対して相対回転可能となる。つまり、第1駆動筒2と移動キー10とは、光軸方向には一体に移動し、光軸回りの回転方向には相対回転可能となる。第1駆動筒2に移動キー10が組み込まれた状態において、移動キー10のキー10bは直進ガイド筒5の内周に設けられるキー溝5eと係合している。
【0020】
以上のようにしてレンズ保持ユニットLHおよび移動キー10等が組まれた第1駆動筒2の外周面に設けられるオスヘリコイドネジ2aは、固定筒1のメスヘリコイドネジ1aにねじこまれ、さらに移動キー10のフイルム側端にガイド枠14が4本のビス20により固設される。ガイド枠14には凸部14bが設けられており、この凸部14bは固定筒1に光軸方向に延在して設けられる開口1bの縁端1cと係合する。凸部14bと縁端1cとの係合により、ガイド枠14は光軸回りの回転が規制される一方で光軸方向には移動自在となっている。
【0021】
固定筒1の上述した開口1bの部分には駆動ギヤ15が回転自在に取り付けられる。駆動ギヤ15の回転軸は、光軸と平行な方向に延在する。駆動ギヤ15と、第1駆動筒2のオスヘリコイドネジ2aに刻設されるギヤ2bとが噛み合い、駆動ギヤ15が回転するのに応じて第1駆動筒2が固定筒1内を回転して光軸方向に前後動する。駆動ギヤ15は、第1駆動筒2が光軸方向に前後動しても噛み合いが外れることのないように十分な長さの歯幅を有している。
【0022】
− 可変焦点距離レンズ鏡筒の動作の概略 −
上述のように第1駆動筒2が固定筒1内を回転しながら光軸方向に前後動すると、第1駆動筒2のガイド溝2dと第2駆動筒3の突起3aとが係合しているため、第2駆動筒3が第1駆動筒2により連れ回される。一方、1群筒4は直進ガイド筒5により、直進ガイド筒5は移動キー10により、そして移動キー10はガイド枠14によりそれぞれ光軸回りの回転が規制されているので光軸方向に沿って直進動する。
【0023】
以下で、第1駆動筒2、3群レンズ枠8、固定筒5、2群レンズ枠6、第2駆動筒3、1群筒4の光軸方向の移動動作に関して説明する。
【0024】
第1駆動筒2は、メスヘリコイドネジ1aおよびオスヘリコイドネジ2aで設定されているリードにより、第1駆動筒2の回転角度に比例した量の前後駆動が行われる。
【0025】
直進ガイド筒5は、この直進ガイド筒5に固設されるフォロワピン5cと第1駆動筒2の内周に設けられるカム溝2cとが係合しており、カム溝2cのカムプロファイルと第1駆動筒2の回転角度とに応じた量の前後駆動が行われる。フイルム面を基準として光軸方向に沿う移動量を考えた場合、直進ガイド筒5の前後移動量は第1駆動筒の移動量にカム溝2cのリフト量を加えたものとなる。
【0026】
第2駆動筒3は、先述したように直進ガイド筒5と一体に光軸方向に前後動するので、その移動量は直進ガイド筒5の移動量と同じである。
【0027】
1群筒4は、複合リードネジ3fおよび直進溝4bで設定されているリードにより、第1駆動筒2の回転角度すなわち第2駆動筒3の回転に応じた量の前後駆動が行われる。フイルム面を基準として光軸方向に沿う移動量考えた場合、1群筒4の前後移動量は直進ガイド筒5の移動量に複合リードネジ3fによる繰り出し量を加えたものとなる。
【0028】
ところで、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒は、いわゆる沈胴式の可変焦点距離レンズ鏡筒である。つまり、可変焦点距離レンズ鏡筒は、カメラの電源をオンすると沈胴状態(格納状態)からワイド端まで繰り出し、その後は撮影者による焦点距離変更スイッチの操作に応じてワイド端とテレ端との間で繰り出し・繰り込み動作する。以下、本明細書中では、沈胴状態からワイド端位置に至るまでの可変焦点距離レンズ鏡筒の作動域を「沈胴域」と称し、ワイド端からテレ端に至るまでの領域を「撮影域」と称する。
【0029】
2群レンズ枠6は、上述のとおり付勢バネ9により被写体側に付勢されており、2群レンズ枠6に固設されるガイドピン6aは直進ガイド筒5の直進ガイド穴5fと係合している。可変焦点距離レンズ鏡筒が撮影域にある場合、2群レンズ枠6は直進ガイド筒5とともに一体に動く。可変焦点距離レンズ鏡筒が沈胴域にある場合については後で詳しく説明するが、たとえばワイド端から沈胴位置まで繰り込む場合、1群筒4が直進ガイド筒5に入れ子状に重なる位置まで縮退する。このとき、シャッタユニット7が1群筒4に押され、これにより2群レンズ枠6がフイルム面側に後退する。なお、図2は可変焦点距離レンズ鏡筒が沈胴状態にあって、2群レンズ枠6がフイルム面側に後退している様子を示している。
【0030】
3群レンズ枠8に固設されるフォロワピン8aは、先述のとおり直進ガイド筒5の直進ガイド穴5dを貫通して第2駆動筒3の内周面側に形成されるカム溝3dと係合している。このため、3群レンズ枠8は、第2駆動筒3が直進ガイド筒5に対して光軸回りに相対回転する際の回転角度とカム溝3dのカムプロファイルとに応じた量の前後駆動が行われる。フイルム面を基準として光軸方向の移動量を考えた場合、3群レンズ枠8の前後移動量は直進ガイド筒5の移動量にカム溝3dのリフト量を加えたものとなる。
【0031】
以上の説明を整理すると、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒が変倍動作をする際には、第1駆動筒2および第2駆動筒3のみが光軸まわりの回転を伴なって繰り出し・繰り込み動作を行い、その他の1群筒4、2群レンズ枠6、直進ガイド筒5、3群レンズ枠8等が上記回転を伴わずに繰り出し・繰り込み動作、すなわち直進動作を行う。
【0032】
ここで、可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端からテレ端へ変倍動作する場合を例にとって1群レンズ101、2群レンズ102および3群レンズ103の動作を説明する。本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒において、1群レンズ101、2群レンズ102および3群レンズ103は、基本的に直進ガイド筒5を核として保持されている。そして、直進ガイド筒5は第1駆動筒2のオスヘリコイドネジ2aおよびカム溝2cの作用により繰り出される。このときに、1群筒4および3群レンズ枠8は、第2駆動筒3の内面に設けられる複合リードネジ3fおよびカム溝3dの作用によってそれぞれ直進ガイド筒5に対して相対移動する。2群レンズ枠6は直進ガイド筒5と一体に動く。以上の動作の組み合わせにより、可変焦点距離レンズ鏡筒の変倍動作にともなって1群レンズ101、2群レンズ102および3群レンズ103は被写体側に移動しつつ、1群レンズ101〜2群レンズ102、2群レンズ102〜3群レンズ103それぞれの群間隔を変化させる。
【0033】
本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の構成および概略動作についての以上の説明に続き、上記可変焦点距離レンズ鏡筒を構成する主な部品の詳細について説明する。
【0034】
− 第1駆動筒 −
図3(a)は、第1駆動筒2の内周面を展開して図示したもので、図3(a)の上側が被写体側に、そして下側がフイルム面側に対応する。第1駆動筒2の内周面には、第2駆動筒3の突起3aと係合する6本のガイド溝2dと直進ガイド筒5に固設されるフォロワピン5cと係合する3本のカム溝2cとが形成される。
【0035】
第1駆動筒2は、プラスチック等の成形加工により製作され、カム溝2cの溝幅には、第1駆動筒2の中心側に向かって広がるようにテーパが形成されている。このテーパにより、第2駆動筒3を成形加工する際のアンダーカット(金型から製品を抜く際に、金型と製品との間で生じる干渉)が防止される。
【0036】
図3(a)の断面B−Bを示す図3(b)および図3(c)を参照し、カム溝2cの本数に対してガイド溝2dの本数が2倍設けられる理由について説明する。カム溝2cの深さはガイド溝2cの深さよりも深く設けられるため、カム溝2cとガイド溝2dとが交差するところでガイド溝2dが分断される。ガイド溝2dに係合する突起3aの光軸方向の係合量はカム溝2cの幅よりも小さい。このため、図3(b)に示されるようにガイド溝2dと係合している突起3aが、第2駆動筒3の繰り出しにともなって図3の上方向に移動すると、図3(c)に示されるようにカム溝2cで分断された部分にさしかかったときに突起3aとガイド溝2dとの係合が外れてしまう。もし、カム溝2cおよびガイド溝2dを同じ本数設け、さらにカム溝2cおよびガイド溝2dをそれぞれ等間隔で設けた場合、突起3aとガイド溝2dとの係合は同時に外れてしまう。
【0037】
そこで、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒ではカム溝2cが3本設けられるのに対してガイド溝2dを2倍の6本設けてある。ガイド溝2dをカム溝2cの本数の2倍設けることにより、たとえば図3(a)の左から数えて奇数番目のガイド溝2dで突起3aの係合が外れても、偶数番目のガイド溝2dでの係合を維持することができる。ガイド溝2dの配設位置については必ずしも円周を6等分する位置に設ける必要はなく、図3(a)に示されるように不等ピッチにしてもよい。要は、複数のガイド溝2dのうち、いずれかのガイド溝2dで突起3aが係合していて、複数の突起3aの係合がすべて同時に外れてしまうことのないようにガイド溝2dの配設ピッチを決定すればよい。
【0038】
本実施の形態では、図3(a)の左より数えて奇数番目に設けられる3本のガイド溝2dおよび偶数番目に設けられる3本のガイド溝2dは、それぞれが円周をほぼ3等分する位置に設けられる。つまり、ガイド溝2dの配設位置の円周ピッチはP1、P2、P1、P2、…の繰り返しとなる。このようにガイド溝を設けることにより、奇数番目に設けられるガイド溝2dと突起3aとの係合が外れても、偶数番目に設けられるガイド溝2dと突起3aとの係合が維持される。加えて、常に円周をほぼ3等分する位置で第1駆動筒2と第2駆動筒とが係合するので、支持バランスに優れる。このように支持バランスを優れたものとすることにより、第1駆動筒2および第2駆動筒3をスムーズに相対移動させることができる。
【0039】
以上の例に対し、3本のカム溝2cとともに設けるガイド溝2dの本数を3とし、たとえばガイド溝2dの配設間隔を不等にして、すべて(この場合、3つ)の突起3aが同時には外れることのないようにすることも可能である。あるいは、3本のカム溝2cに対してたとえば4本のガイド溝2dを設けることにより、すべての突起3aが同時に外れることのないようにすることも可能である。ただし、このようにすると、どこかで突起3aとガイド溝2dとの係合が外れたときに、第1駆動筒2と第2駆動筒3との係合位置が円周上で偏ってしまい、支持バランスがよくなくなる場合がある。したがって、カム溝2cの配設本数に対して整数倍の本数のガイド溝2dを設け、加えて常に円周をほぼ3等分する位置でガイド溝2dと突起3aとの係合が維持されるようにガイド溝2dの配設位置を設定することが望ましい。
【0040】
なお、カム溝2cの配設本数を3本とする例について説明したが2本、あるいはこれ以外の配設本数とするものであってもよい。
【0041】
ところで、複数の突起3aの光軸方向の長さをカム溝2cの溝幅よりも長くすることにより、上述した設計配慮は不要となる。しかし、第1駆動筒2の光軸方向の最短寸法は、第1駆動筒2と第2駆動筒3との光軸方向の相対移動ストロークと、突起3aの光軸方向の長さとの和で決定されるものであるから、突起3aの光軸方向長さを増すと第1駆動筒2の光軸方向の長さも増す。このため、上述のように突起3aの光軸方向の長さを短縮することは可変焦点距離レンズ鏡筒の沈胴時の全長を短縮するために効果的であり、上述した設計配慮をすることが望ましい。
【0042】
− 第2駆動筒 −
図4を参照して第2駆動筒3の内周面に形成される複合リードネジ3fおよびカム溝3dについて説明する。図4は、第2駆動筒3の内周面を展開して図示したもので、図の上方が被写体側、下方がフイルム側に対応する。複合リードネジ3f1〜3f6は、図4に示される第2駆動筒3のフイルム側に位置する範囲Aの部分に設けられて第1のリードを有するネジ3b1〜3b6と、第2駆動筒3の被写体側に位置する範囲Bに設けられて第1のリードよりも小さい第2のリードを有するネジ3c1〜3c6とがそれぞれ屈曲部3e1〜3e6を介して接続されて構成される。
【0043】
以下、本明細書中では第1、第2のリードを有するネジを単に「第1リードネジ」、「第2リードネジ」と称する。図4からもわかるように、本実施の形態において複合リードネジ3f1〜3f6は6条の多条ネジとなっている。
【0044】
複合リードネジ3f1〜3f6の形状について説明すると、6本の複合リードネジ3f1〜3f6を構成する第1リードネジ3b1〜3b6のうち、添え字が奇数のものと偶数のものとで谷部の溝幅が異なる。具体的には、第1リードネジ3d1、3d3および3d5の谷部の溝幅が3d2、3d4、3d6の谷部の溝幅よりも広く形成されている。この理由については後で説明する。
【0045】
上述の複合リードネジ3f1〜3f6の範囲Aの側すなわちフイルム側には、複合リードネジ3f1〜3f6に重ね合わせるようにして同じ形状の3本のカム溝3d1〜3d3が円周をほぼ3等分する位置に設けられる。
【0046】
図4(a)のB−B断面を示す図4(b)に示されるように、カム溝3d1〜3d3の深さ(寸法b)は、複合リードネジ3f1〜3f6の谷部深さ(寸法a)よりも深くなるように形成される。なお、第1駆動筒2と同様、第2駆動筒3はプラスチック等の成形加工により製作され、複合リードネジ3f1〜3f6の谷部溝幅およびカム溝3d1〜3d3の溝幅には、第2駆動筒3の中心側に向かって広がるようにテーパが形成されている。このテーパにより、第2駆動筒3を成形加工する際のアンダーカットが防止される。
【0047】
図5を参照し、1群筒4の外周に設けられて上述の複合リードネジ3f1〜3f6と螺合する6条のオスヘリコイドネジ4a1〜4a6について説明する。図5(a)は、第2駆動筒3の内周面を展開し、6条あるうちの2条のオスヘリコイドネジ4a1、4a2の山部を重ね合わせて図示したものである。以下では複合リードネジ3f1とオスヘリコイドネジ4a1とが螺合する様子を一例に説明する。なお、図5(a)の2点鎖線AAの左側では線の錯綜を避けるため、カム溝3d1、3d2の図示を省略する。
【0048】
オスヘリコイドネジ4a1を拡大して示す図である図5(b)において、オスヘリコイドネジ4a1は、第1リードネジ3b1に螺合する第1リード面a、bと、第2リードネジ3c1に螺合する第2リード面c、dと、光軸に直交する面e、fとを有する。なお、オスヘリコイドネジ4a1〜4a6のそれぞれには、複合リードネジ3f1〜3f6に形成されるテーパに合わせてテーパが形成されており、いわゆる台形ネジ状のネジ山形状を有するがその図示は省略する。
【0049】
図5(a)に戻り、オスヘリコイドネジ4a1は、沈胴位置からワイド端近傍に至るまでの沈胴域では第1リードネジ3b1と螺合し、W(ワイド)端からT(テレ)端に至るまでの撮影域では第2リードネジ3c1と螺合する。
【0050】
オスヘリコイドネジ4a1が第1リードネジ3b1と螺合する状態から第2リードネジ3c1と螺合する状態へ、あるいは逆に第2リードネジ3c1と螺合する状態から第1リードネジ3b1と螺合する状態へ切り替わる過程について図5(c)を参照して説明する。図5(c)は、第1リードネジ3b1、屈曲部3e1、第2リードネジ3c1を部分的に拡大し、オスヘリコイドネジ4a1とともに示す図である。可変焦点距離レンズ鏡筒が沈胴位置からワイド端へ繰り出す過程において、第2駆動筒3は図の左方向へ移動する。オスヘリコイドネジ4a1は、第1リードネジ3b1の斜面pで押され、図の上方(被写体側)へと移動する。可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端側から沈胴位置へ繰り込む過程において、第2駆動筒3は図の右方向へ移動する。オスヘリコイド4a1は、第2リードネジ3c1の斜面qで押され、図の下方(フイルム側)へと移動する。いずれの場合においてもオスヘリコイド4a1は、屈曲部3e1によって第1リードネジ3b1と螺合する状態から第2リードネジ3c1と螺合する状態へ、あるいは第2リードネジ3c2と螺合する状態から第1リードネジ3b1と螺合する状態へと切り替えられる。
【0051】
なお、先に説明したように第1リードネジ3b1、3b3および3b5の谷部の溝幅が3b2、3b4、3b6の谷部の溝幅よりも広く構成されている。したがって、たとえばオスヘリコイドネジ4a2の寸法はオスヘリコイドネジ4a1と異なるが、形状はオスヘリコイドネジ4a1のものと似ているので図示および説明については省略する。
【0052】
再び図4を参照して、6本の複合リードネジ3f1〜3f6のうち、添え字が奇数のものと偶数のものとで谷部の溝幅が異なる理由について説明する。本来、複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3b1〜3b3とはオーバーラップして設けず、たとえば第2駆動筒3の光軸方向寸法を延長して複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3b1〜3b3とを光軸に沿う前後方向に分けて設ける方が構造上は単純になる。しかし、このように第2駆動筒の光軸方向寸法を延長すれば、可変焦点距離レンズ鏡筒が長くなり、沈胴時のカメラの厚さを薄くすることができない。そのため、図4に示されるように複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3b1〜3b3とを重ね合わせて設ける。
【0053】
上述のように複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3b1〜3b3とをオーバーラップさせて設けると、図4で示されるようにカム溝3b1〜3b3によって複合リードネジ3f1〜3f6のネジ溝が分断される。このため、第1駆動筒2(図3)の説明と同様の理由によりオスヘリコイドネジ4a1〜4a6と複合リードネジ3f1〜3f6との係合が同時に外れてしまうおそれがある。こうした不具合が発生することのないように、カム溝3b1〜3b3が3本設けられているのに対して複合リードネジ3f1〜3f6は整数倍、本実施例では2倍の6本が設けられている。
【0054】
ところで、カム溝3d1〜3d3のカムプロファイルが本実施の形態のように蛇行するものである場合、カムプロファイルによっては1本の複合リードネジが複数の箇所で分断されてしまい、オスヘリコイドネジ4a1〜4a6と複合リードネジ3f1〜3f6との係合が同時に外れてしまう可能性もある。そのようなときには、6本の複合リードネジ3f1〜3f6のうち、添え字が奇数のものと偶数のものとで谷部の溝幅を変えることが有効となる。つまり、谷部の溝幅を変えることにより、複合リードネジ3f1〜3f6がカム溝3b1〜3b3によって分断される際の光軸方向の位置をずらすことができるので、オスヘリコイドネジ4a1〜4a6と複合リードネジ3f1〜3f6との係合が同時に外れてしまうことのないように設計できる。
【0055】
本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒が沈胴域から撮影域、あるいは撮影域から沈胴域へと繰り出し・繰り込み作動するときにオスヘリコイドネジ4a1〜4a6が複合リードネジ3f1〜3f6の屈曲部3e1〜3e6を経ることについては既に説明した。つまり、第1リードネジ3b1〜3b6と第2リードネジ3c1〜3c6との間でオスヘリコイドネジ4a1〜4a6の係合が切り替わる場合に、屈曲部3e1〜3e6が重要な役割を果たす。つまり、屈曲部3e1〜3e6の部分をオスヘリコイドネジ4a1〜4a6が通過するのを境にオスヘリコイドネジ4a1〜4a6の作動が大きく切り替わるので、この屈曲部3e1〜3e6がカム溝3b1〜3b3によって分断されないようにすることが重要である。
【0056】
屈曲部3e1〜3e6がカム溝3b1〜3b3によって分断されないようにするため、複合リードネジ3f1〜3f6の形状を決める際には以上に説明したようにネジの条数、ネジ溝の幅等のパラメータを考慮すればよい。
【0057】
本実施の形態では上述したパラメータを考慮した上で、図4に示されるように6本の複合リードネジ3f1〜3f6のすべての屈曲部3e1〜3e6がカム溝3d1〜3d3で分断されることのないようにしてある。理論上は、6つの屈曲部3e1〜3e6のうち、一つでも残されていればオスヘリコイドネジ4a1〜4a6は作動する筈である。しかし、実際には第2駆動筒3の製作誤差や、第2駆動筒3と1群筒4のオスヘリコイドネジ4a1〜4a6との間の嵌合ガタなどの不安定要因が存在する。これらの不安定要因により、屈曲部が分断されている部分にさしかかったオスヘリコイドネジ4a1〜4a6のいずれかが、ネジ溝から外れてしまうこともある。したがって、これらの屈曲部3e1〜3e6はすべてカム溝3d1〜3d3で分断されることのないようにすることが動作の確実性を得る上でも動作をスムーズにする上でも望ましい。
【0058】
第2駆動筒3の内周面における複合リードネジ3f1〜3f6およびカム溝3d1〜3d3の形成位置について説明する。1群筒4を繰り出し・繰り込み動作させるための複合リードネジ3f1〜3f6の形成位置に対し、3群レンズ枠8を駆動するためのカム溝3d1〜3d3の形成位置は、図3に示されるようにフイルム面側にある。複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3d1〜3d3とが上述したような位置関係で形成される理由は可変焦点距離レンズ鏡筒の強度を増すためである。つまり、1群筒4や3群レンズ枠8に光軸方向の外力が作用した場合、オスヘリコイドネジ4a1〜4a6、複合リードネジ3f1〜3f6、フォロワピン8aおよびカム溝3d1〜3d3にはせん断応力が生じる。このとき、光軸方向に同じ外力が作用したと仮定すると、係合量の比較的多いオスヘリコイドネジ4a1〜4a6および複合リードネジ3f1〜3f6で生じるせん断応力の方がフォロワピン8およびカム溝3d1〜3d3で生じるせん断応力よりも小さくなる。すなわち、オスヘリコイドネジ4a1〜4a6および複合リードネジ3f1〜3f6は、より大きな外力に耐えうる。
【0059】
このため、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒では、鏡筒外部に露出する1群筒4を第2駆動筒3とヘリコイドネジにより係合させる一方、鏡筒内部のフイルム面側に配設されているために大きな外力のかかることの少ない3群レンズ枠8をカムで駆動する。
【0060】
第2駆動筒3の内面における複合リードネジ3f1〜3f6およびカム溝3d1〜3d3の形成位置を上述のようにすることにより、外部に露出する鏡筒構成部材の強度を増すことが可能となる。そして、複合リードネジ3f1〜3f6とカム溝3d1〜3d3とを光軸方向にオーバーラップさせて設けることにより、第2駆動筒3の全長を短縮することができ、これにより可変焦点距離レンズ鏡筒の沈胴時の寸法を短縮してカメラを小型化することができる。
【0061】
− 直進ガイド筒およびシャッタFPCのくびれ部 −
図6には、シャッタユニット7の取り付けられた2群レンズ枠6、付勢バネ9および3群レンズ枠8が直進ガイド筒5に組み込まれる様子を示す。シャッタユニット7とカメラ本体の回路基板(不図示)とを電気的に接続するシャッタFPC7aの中間部7cは、直進ガイド筒5のフランジ部5gに設けられる切り欠き5iにFPC止め22を介して固定される。
【0062】
先に説明したとおり、直進ガイド筒5には直進ガイド穴5dおよび5fが形成されており、2群レンズ枠はガイドピン6aが直進ガイド穴5fと係合し、3群レンズ枠8はフォロワピン8aが直進ガイド穴5dと係合してそれぞれ直進ガイド筒5内を光軸方向に移動自在に支持される。そして2群レンズ枠6と3群レンズ枠8との間に介装される付勢バネ9により2群レンズ枠6は図の下方(被写体側)へ、3群レンズ枠8は図の上方(フイルム面側)へそれぞれ付勢される。直進ガイド筒5の外周には複数の凸部5bが光軸と平行な方向に延在するように設けられており、図1に示されるように1群筒4の内部に形成される直進溝4bと係合する。つまり、直進ガイド筒5は1群筒4(1群レンズ101)、2群レンズ枠6(2群レンズ102)および3群レンズ枠8(3群レンズ103)を保持する移動枠としての機能と、1群筒4および3群レンズ枠103の直進ガイドとしての機能を併せ持つ。
【0063】
シャッタFPC7aには、部分的にその幅を狭めたくびれ部7bが形成される。シャッタFPC7aの長手方向に沿って複数の導通パターンが形成されるが、上述したくびれ部7bにおいては上記複数の導通パターンの各パターン幅も狭められる。これは、以下で説明するようにくびれ部7bの厚さ方向の曲げ剛性を低下させるためである。
【0064】
図7は、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端に位置している状態を示す縦断面図である。図7において2群レンズ枠6は、付勢バネ9により図の左方向(被写体側)に付勢されている。つまり、2群レンズ枠6およびシャッタユニット7は直進ガイド筒5における移動範囲内で最も被写体側に押しつけられた状態にある。撮影域、すなわち可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端〜テレ端に位置する場合には、直進ガイド筒5と2群レンズ枠6およびシャッタユニット7との位置関係は図7に示される状態が維持される。この状態ではシャッタユニット7と直進ガイドガイド筒5のフランジ部5gとは最も離れた状態にあるため、シャッタFPC7aはたるみが比較的少ない状態にある。
【0065】
図8は、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒が沈胴位置にある状態を示す縦断面図である。沈胴状態において1群筒4は、直進ガイド筒5と光軸方向にほぼ重なった状態となる位置にまで後退し、後退する1群筒4によって2群保持枠6がフイルム面側に押されて後退する。2群保持枠6が後退するのにともない、シャッタユニット7と直進ガイド筒5のフランジ部5gとが近づき、シャッタFPC7aのたるみ量は増す。
【0066】
ところで、カメラが使われていないときには、可変焦点距離レンズ鏡筒は沈胴状態にある場合が多い。つまり、シャッタFPC7aは図8の状態にあることが多い。このため、シャッタFPC7aには曲げクセがつきやすい。シャッタFPC7aに曲げクセが付くと、可変焦点距離レンズ鏡筒を撮影域にまで繰り出した場合にシャッタFPC7aの曲げクセが2群レンズ枠6を後退させようとする弾性力として作用する。付勢バネ9が2群レンズ枠6を被写体側へ押し出そうとする力をシャッタFPC7aによる弾性力が上回ると、2群レンズ枠6が光軸に対して倒れ、あるいは2群レンズ102と3群レンズ103との群間隔が変化して、光学性能が低下する。これに対し、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒ではシャッタFPC7aの屈曲部に上述したくびれ部7b(図6)が位置するようになっている。したがって、シャッタFPC7aの曲げ剛性が低下するので上述した不具合を防止することができる。無論、付勢バネ9の付勢力を増して上述した不具合を抑制することは可能であるが、付勢バネ9の付勢力を増すと可変焦点距離レンズ鏡筒を変倍駆動するためのモータの負荷が増す。このため、上述のようにシャッタFPC7aの剛性を下げることが望ましい。
【0067】
なお、上記くびれ部7bの長さは、シャッタFPC7aの全長に比較して僅かな量であり、このくびれ部7bで導通パターン幅を狭めることによる導通抵抗の増加量はシャッタFPC7aの全長にわたって導通パターン幅を狭める場合に比べて低減することができる。このため、比較的大きな駆動電流を要するシャッタアクチュエータへの供給電流が制限されることはなく、シャッタアクチュエータの十分な駆動力を得ることができる。
【0068】
− 固定筒 −
図9(a)は、固定筒1を被写体側から見た様子を示す正面図であり、図9(b)は図9(a)の断面B−Bを示す図である。図9(a)に示されるように、固定筒1の円筒部の内面に設けられるメスヘリコイドネジ1aの一部に切り欠き状の溝1dが設けられる。この溝1dの奥の面1eは、メスヘリコイドネジ1aの谷径よりも光軸から離れる位置に設けられる。溝1dは、図9(b)に示されるように光軸方向に延在しており、後述するように可変焦点距離レンズ鏡筒の光軸方向の繰り出し位置を電気的に検出するためのいわゆるエンコーダ基板および上述したシャッタFPC7a配設するための空間となっている。溝1dはまた、後述するようにエンコーダ基板の表面上を光軸方向に摺動するエンコーダブラシの移動空間ともなっている。
【0069】
固定筒1の円筒部において、溝1dとほぼ相対する位置には開口1bが空けられている。第1駆動筒2を回転駆動するための駆動ギヤ15の両端に設けられた軸は、固定筒1の孔1gおよび1hで回転自在に支持される。そして先に説明したとおり、開口1bを介して駆動ギヤ15と第1駆動筒2のオスヘリコイドネジ2aに刻設されるギヤ2bとがかみ合う。
【0070】
再び図8を参照し、固定筒1の溝1dまわりの説明をする。溝1dの奥の面1eにはエンコーダ基板24が配設される。エンコーダ基板24に形成されるパターンは、単にON/OFFを繰り返す1ビットの信号を発生するものであってもよいし、あるいは上述のパターンに対してON/OFFの位相を180度ずらしたパターンをさらに加えた、いわゆる2相クロック信号状のパターンであってもよい。不図示のモータにより駆動ギヤ15(図2)が駆動され、第1駆動筒2が光軸方向に前後すると、エンコーダ基板24の上をガイド枠14のエンコーダブラシ取付部14aに固設されたエンコーダブラシ17が光軸方向に移動して摺動する。エンコーダブラシ17が光軸方向に移動するのに応じて発生する信号は、不図示の制御回路に入力される。この信号は、可変焦点距離レンズ鏡筒の繰り出し位置の検知、あるいは焦点距離情報や開放F値情報等を得るためなどに用いられる。
【0071】
エンコーダ基板24に接続されるFPC24aは、シャッタFPC7aとともに固定部材1eにて固定筒1に固定される。溝1d内においてシャッタFPC7aは、エンコーダブラシ17と第1駆動筒2との間の空間に位置するように配設される。
【0072】
本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の変倍動作にともなうシャッタFPC7aのふるまいについて、図7および図10を参照して説明する。可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端にある場合を示す図7において、直進ガイド筒5はフイルム面に比較的近い位置にある。シャッタFPC7aのFPC止め22と固定部材1eとの間の部分は、そのスパンのうちの大半が溝1d内に収納されている。可変焦点距離レンズ鏡筒が図10に示されるようにテレ側に繰り出すのにつれて、第2駆動筒3(直進ガイド筒5)および第1駆動筒2が被写体側に繰り出す。これにより、溝1d内に収納されていたシャッタFPC7aが鏡筒内に移動する。このときシャッタFPC7aは、溝1dの中で第1駆動筒2とエンコーダブラシ17との間を移動する。つまり、シャッタFPC7aが溝1dの中でうねってエンコーダ基板24と接触していても、ガイド枠14のエンコーダブラシ取付部14aによってシャッタFPC7aが押しのけられるのでエンコーダブラシ17とエンコーダ基板24との間の接触が阻害されることがない。
【0073】
上述した溝1dは、固定筒1のメスヘリコイドネジ1aの谷径よりも外側に、いわば箱状に形成されるものであるから、固定筒1の円筒部分を分断することがない。このため、固定筒1の円筒部分を切り欠いて開口を設けるのに比べて円筒部分の剛性低下を抑制することができる。また、撮影動作時にシャッタユニット7が開いて3群レンズ103より射出した光が固定筒1の外に漏れ出てフイルム面に達することも、溝部1bが開口でなく、閉じていることにより抑制される。
【0074】
さらに、溝部1dの奥の面1eの光軸からの距離は、固定筒1の部品製作精度で決まり、したがって光軸からエンコーダ基板24の摺動面までの寸法誤差のばらつきが低減される。このため、エンコーダブラシ17のエンコーダ基板24への接触圧を安定化させることができ、信頼性を増すことができる。また、可変焦点距離レンズ鏡筒のユニットとしての集積度を増すことができ、ユニット段階での動作の点検が容易になるとともにこの可変焦点距離レンズ鏡筒を組み込むカメラの最終組立工程の工数を低減することができる。これに対して、固定筒1に開口を設け、エンコーダ基板24をボディ側に固定して、この開口部分を介してエンコーダブラシ17をエンコーダ基板24に接触させようとした場合、固定筒1のボディへの取付位置のばらつき等によってエンコーダブラシ17の接触圧もばらつきやすくなる。また、エンコーダ基板24から出力される信号も可変焦点距離レンズ鏡筒をボディに組み込む前に点検することができなくなる。
【0075】
ところで、溝1dは上述のように固定筒1のメスヘリコイドネジ1aの谷径よりも外側に設けられるものであるから、固定筒1の円筒部分には外周部によけいな出っ張りを有することになる。しかし、ボディ側の鏡筒配設スペースは、ボディを正面から見たときに長方形ないし正方形の形状となっている。したがって、ボディ側の鏡筒配設スペースと鏡筒との間には略三角形状の空間が四隅にできる。この空間に溝1dを位置させることにより、効率のよいレイアウトが可能となるので、カメラを大型化することなく上述した効果を得ることができる。
【0076】
− FPCガイド −
ここで図8に戻って、ボディ16に設けられるFPCガイド16aについて説明する。可変焦点距離レンズ鏡筒がテレ側から沈胴位置に繰り込む過程において、シャッタFPC7aには剛性があって曲げに逆らおうとするので、シャッタFPC7aの曲げの曲率半径は大きくなりやすい。このような状態で第2駆動筒3が後退するとシャッタFPC7aが3群レンズ103とボディ16との間に挟まれて、いわゆるジャミングを発生することもある。FPCガイド16aは、大きく膨らもうとするシャッタFPC7aを光軸から離れる方向にガイドして押し出す。FPCガイド16aにより押し出されたシャッタFPC7aは、3群レンズ103とボディ16との間に挟まれることなく溝1dの内部にスムーズに収まる。このFPCガイド16aは、ボディ16と一体に成形することにより製造コストの上昇を抑制できる。
【0077】
− 3群レンズ枠 −
図1および図6に示されるように、3群レンズ枠8には突起8bが光軸に略平行な方向に設けられる。この突起8bは、以下で説明するように可変焦点距離レンズの焦点距離に応じてシャッタユニット7の開口を規制するためのものである。
【0078】
図11は、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の光軸に沿う縦断面の一部を示すものであり、(a)が沈胴時の、(b)がワイド端時の、そして(c)がテレ端時の様子を示す。可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端からテレ端に繰り出すのにつれて2群レンズ102と3群レンズ103との群間隔は図11(b)、(c)に示されるように縮まる。突起8bの先端部には、段カム8cが設けられ、そのプロファイルは根本から先端に向かうにつれて光軸近傍を中心とする半径方向にそのリフト量が段階的に減じられるものとなっている。また、段カム8c(突起8b)の図11紙面垂直方向の厚み、すなわち光軸近傍を中心とする円の周方向の厚み寸法は根本から先端までほぼ一定となっている。
【0079】
シャッタユニット7には、後で詳述する開口規制レバー18が設けられており、上述の段カム8cと開口規制レバー18とは、ワイド端では図11(b)に示されるように離れていて当接しない。そして、両者は中間の焦点距離域で当接し始めて焦点距離に応じて段階的に開口規制レバー18のリフト量が変化し、テレ端で図11(c)に示されるようにリフト量は最大となる。また、図11(a)に示されるように、沈胴時に可変焦点距離レンズ鏡筒の全長を短縮させてコンパクトにするために各レンズ群間は縮められて2群レンズ102〜3群レンズ103間の間隔も縮まって段カム8cと開口規制レバー18とが当接する。このときの2群レンズ102〜3群レンズ103間の光軸方向の相対距離は、可変焦点距離レンズ鏡筒をワイド端からテレ端まで変倍動作させたときの2群レンズ102と3群レンズ103との間の光軸方向の光軸方向の相対距離の変化範囲内にある。つまり、沈胴時に上述した2群レンズ102と3群レンズ103との間の光軸方向の光軸方向の相対距離の変化範囲を逸脱することがないので、特に沈胴時ためだけにシャッタユニット7と段カム8cとの干渉を防止するための新たな切り欠き等を設ける必要がなくなり、シャッタユニット7や可変焦点距離レンズ鏡筒の設計の自由度が増す。
【0080】
図12は、シャッタユニット7をフイルム面側より見た様子を部分的に拡大して示すものであり、(a)がワイド端の状態を、(b)がテレ端の状態を示す。シャッタユニット7には開口規制レバー18が軸pを中心として回転自在に取り付けられている。ねじりバネ19の一方の腕が開口規制レバー18の突起18aに掛けられ、他方の腕がシャッタユニット7に固設される突起7bに掛けられ、開口規制レバー18は反時計回りの方向に付勢される。この開口規制レバー18は、シャッタユニット7に固設される回り止め7hにより回転方向に位置決めされる。シャッタユニット7の外周の一部には切り欠き7dが設けられ、この切り欠き7dに開口規制レバー18の腕18cが位置する。開口規制レバー18の腕18cの反対側の腕には図の紙面裏側、すなわち被写体側に延びる突起18bが設けられる。
【0081】
シャッタユニット7の内部には軸qを中心として回動するセクタ羽根7eが組み込まれる。なお、シャッタユニット7には、光軸と直交する略同一平面上でセクタ羽根7eと対向して作動するセクタ羽根7i(図12(a)にその一部を図示)も組み込まれるが、ここでは説明および全体の図示を省略する。
【0082】
セクタ羽根7eに空けられる長穴7gに駆動ピン7fが係合しており、この駆動ピン7fによりセクタ羽根7eは開閉駆動される。上述した開口規制レバー18の突起18bは、セクタ羽根7eが開閉動作する空間にまで達する長さを有する。したがって、図12(a)に示すワイド端の状態で駆動ピン7gがセクタ羽根7eを開放させる側に駆動しようとしてもセクタ羽根7eと突起18bとが当接してセクタ羽根7eの開口が規制されて全開はしない。つまり、セクタ羽根7eで決定される開口径は、シャッタユニット7の固定絞り7cで決定される開口径よりも小さくなる。以上のようにしてシャッタユニット7の最大開口径が開口規制レバー18によって規制される。
【0083】
可変焦点距離レンズ鏡筒がテレ端に位置する場合、シャッタユニット7と3群レンズ枠8とが図11(c)に示されるように接近し、これにともなって図12(b)に示されるように突起8b(段カム8c)がシャッタユニット7の上述した切り欠き7dに入り込む。そして段カム8cによって開口規制レバー18の腕18cが押され、開口規制レバー18は時計回り方向に回転して突起18bがシャッタユニット7の外周側に待避する。この状態で駆動ピン7gがセクタ羽根7eを開放させる側に作動した場合、セクタ羽根7eは突起18bと当接することはないのでセクタ羽根7eは開口が規制されることなく全開する。このときの開口径は固定絞り7cで規定される。
【0084】
以上に説明したように、3群レンズ枠8に段カム8cは光軸とほぼ平行な方向に延在して設けられ、そのリフト量が光軸近傍を中心とする半径方向に変化するものであるとともに、この段カム8cの光軸近傍を中心とする円の周方向の厚みはほぼ一定である。また、3群レンズ枠8およびシャッタユニット7は可変焦点距離レンズ鏡筒中で共に直進動するものであるから、両者は光軸回りの相対回転運動をすることがない。このような構成とすることにより、シャッタユニット7に対して段カム8cをいわば突き刺してゆく方向にシャッタユニット7と段カム8cとを相対移動させることができ、これにより段カム8cの移動空間の体積を減じることができる。つまり、段カム8cの移動ストロークに対応して設けるシャッタユニット7の逃げ、すなわち切り欠き7dの面積を小さくすることができる。なお、段カム8cの上述した厚み寸法については、段カム8cの強度や射出成型時の型抜け性を考慮し、適宜先細りのテーパ形状となるように定めてもよい。
【0085】
上述した効果についてさらに説明すると、シャッタユニット7を光軸方向より透視して見たと仮定して、シャッタユニット7の内部はその大半がセクタ羽根7cおよび7eの移動空間として占められる。このため、上述のように段カム8cとの干渉を避けるための逃げを最小化することがシャッタユニット7の小型化のためには有利となる。このとき、切り欠き7dは半径方向に延在して設けられることもシャッタユニット7の小型化に有利である。つまり、ドーナツ状のシャッタ基板上に、上述のような半径方向に延在する切り欠きを設けることは、従来技術の説明からも明らかなように、周方向に延在する切り欠きを設けるのに比べ比較的容易に行うことができる。
【0086】
以上では、シャッタユニット7に隣接して配置され、変倍動作にともなってシャッタユニット7に対して光軸方向に相対移動する3群レンズ枠8に段カム8cが設けられる例について説明したが、この例に限らない。要は変倍動作に応じてシャッタユニット7に対して光軸方向に相対移動する部材があれば、その部材に段カムを設けることができる。たとえば、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒では1群筒4に段カムを設けることも可能である。ただし、段カムはシャッタユニット7よりもフイルム面側、すなわち結像面側に配設される部材等に設けることが望ましい。この理由は、シャッタユニット7の被写体側には蛇腹11等の遮光部材や、レンズバリア開閉機構等の部品が配設される場合が多いからである。段カムをシャッタユニット7よりも被写体にある部材に設けると、上記遮光部材やレンズバリア開閉機構等の設計を困難にする場合がある。
【0087】
以上ではレンズシャッタを内蔵する可変焦点距離レンズ鏡筒で設定される焦点距離に応じて絞り径を制限する例について説明したが、たとえば一眼レフカメラに装着されるレンズに本発明を適用することも可能である。このときには、シャッタユニット7に代えて可変絞りユニットが配設される。そして、以上に説明した段カムにより可変絞りユニットの最大開口を制限すればよい。
【0088】
− 変倍動作およびフォーカシング動作の詳細 −
図13は、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の繰り出し・繰り込みにともなう1群レンズ101、2群レンズ102および3群レンズ103の動きを説明する図であり、横軸に第1駆動筒2の回転角を、縦軸に光軸方向のストロークをとって以下に説明するようにグラフ化したものである。
【0089】
図13において、グラフ▲1▼は固定筒1と第1駆動筒2との相対回転によって得られる第1駆動筒2の移動ストロークを示す。グラフ▲2▼は、第1駆動筒2と直進ガイド筒5との相対回転によって得られる第2駆動筒3の第1駆動筒2に対する相対ストロークを示す。グラフ▲3▼は、第2駆動筒3と1群筒4との相対回転によって得られる1群筒4の第2駆動筒3に対する相対ストロークを示す。グラフ▲4▼は、第2駆動筒3と直進ガイド筒5との相対回転によって得られる3群レンズ枠8の第2駆動筒3に対する相対ストロークを示す。
【0090】
以上に説明したグラフ▲1▼〜▲4▼で示されるストロークの組み合わせにより1群レンズ101、2群レンズ102および3群レンズ103のフイルム面に対する移動量が決まる。各レンズ群のフイルム面に対する移動量は、図13に示されるように、1群レンズ101の移動量はグラフ▲1▼、▲2▼および▲3▼を合成することにより得られる。同様に、2群レンズ102の移動量はグラフ▲1▼とグラフ▲2▼とを合成することにより、3群レンズ103の移動量はグラフ▲1▼、グラフ▲2▼およびグラフ▲4▼を合成することにより得られる。
【0091】
上述した1群レンズ101〜3群レンズ103の動きを要約すると、1群レンズ101および3群レンズ103は、それぞれ2群レンズ102に対して光軸方向へ相対移動可能に直進ガイド筒5に保持され、直進ガイド筒5はグラフ▲1▼および▲2▼の和で示されるストロークで駆動される。このとき1群レンズ101はグラフ▲3▼で示されるストロークで、3群レンズ103はグラフ▲4▼で示されるストロークで、それぞれ直進ガイド枠5に対して相対駆動される。
【0092】
以上の構成を有する可変焦点距離レンズ鏡筒を沈胴位置からワイド端、すなわち図13のFL1の位置まで繰り出すと、焦点距離FL1で略無限遠に位置する被写体の尖鋭像をフイルム面上に結ぶ状態となる。可変焦点距離レンズ鏡筒をその位置からさらに繰り出すにつれ、焦点距離FL1で近距離に位置する被写体の尖鋭像をフイルム面上へ結ぶ状態に変化する(焦点調節範囲D1)。可変焦点距離レンズ鏡筒をさらに繰り出すと、焦点距離FL1からFL2への変倍域を経て焦点距離FL2において略無限遠に位置する被写体の尖鋭像をフイルム面上に結ぶ状態となる。以下、同様にして可変焦点距離レンズ鏡筒を繰り出してゆくと、変倍動作すなわち撮影画角を変化させる動作と焦点調節動作とを交互に繰り返し、テレ端の焦点距離FL6で近距離に位置する被写体の尖鋭像をフイルム面上へ結ぶ状態にまで至る。なお、図13でD1<D2…D5<D6と、ワイド側よりもテレ側の焦点調節範囲が大きくなっているが、これは撮影レンズの焦点距離が長くなるにつれて撮影距離変化に対する像面の移動量が増すためである。各焦点調節範囲D1、D2、…、D6における繰り出し量は可変焦点距離レンズ鏡筒駆動用のモータの回転量により制御される。
【0093】
本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の繰り出し量または繰り込み量を以上のように制御することにより、変倍動作と焦点調節動作とを一つのアクチュエータで行うことができる。このため、可変焦点距離レンズ鏡筒の小型化および製造コストの低廉化が達成できる。
【0094】
また、以上の構成によれば、直進ガイド筒5を駆動するためのカム溝2cを第1駆動筒2に、そして第3レンズ群103を駆動するためのカム溝3dを第2駆動筒3に、それぞれ分けて設けることができる。このため、一つのカム筒内に2種類のカム溝を設けることによるカム筒の大型化、特に光軸方向寸法の大型化を抑止でき、沈胴時の可変焦点距離レンズ鏡筒の全長を短縮することができる。このとき、第2駆動筒3の内面には1群筒4を駆動するための複合リードネジ3f1〜3f6と3群レンズ枠8を駆動するためのカム溝3d1〜3d3とを光軸方向にオーバーラップさせて設けることができる。したがって第2駆動筒3の光軸方向の長さを延ばすことなく、一つの駆動筒で複数のレンズ群を独立して駆動することが可能となる。
【0095】
さらに、第2駆動筒3に複合リードネジ3f1〜3f6が設けられることにより、以下で説明するように沈胴時に第1駆動筒2、第2駆動筒3および1群筒4の被写体側の端面位置をボディ16の前面とともに面一に揃えるように可変焦点距離レンズ鏡筒を容易に設計することができる。
【0096】
沈胴時に第1駆動筒2、第2駆動筒3および1群筒4の被写体側端面位置をボディ16の前面に対して面一に揃えるためには、これらの部品間に存在する各段差をゼロとする必要がある。つまり、図7に示すワイド端位置にある可変焦点距離レンズ鏡筒の下部に示す第1駆動筒2先端〜ボディ16の前面の段差δ1、第2駆動筒3先端〜第1駆動筒2先端の段差δ2、1群筒4〜第2駆動筒3先端の段差δ3をそれぞれゼロにする必要がある。これらの段差のうち、段差δ1をゼロにするために必要な第1駆動筒2の回転角が決まる。段差δ2をゼロにするためには、上述した第1駆動筒2の回転角に応じてカム溝2cのプロファイルを決めればよい。ところが、1群筒4の第2駆動筒3に対する光軸方向の動きはカムではなくネジ対偶で決められており、しかもそのリードは1群レンズ101の撮影域で必要とされる移動ストロークと第2駆動筒3の回転角とに基づいて決定される。上述のようにして決められるリードでは段差δ3をゼロにすることができないため、本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒では図5に示されるように第2駆動筒3の内面に形成されるヘリコイドネジを複合リードネジとしている。つまり、ワイド端から沈胴位置に至るまでの第2駆動筒3の回転角と、段差δ3をゼロにするために必要とされる1群筒4の移動ストロークとに基づいて第1リードネジ3b1〜3b6が決定される。このように、複合リードネジを用いることにより、可変焦点距離レンズ鏡筒を構成する各要素の移動ストロークの設定に自由度を持たせることができる。
【0097】
以上の発明の実施の形態と請求項との対応において、カム溝3d1〜3d3がカム溝を、第1リードネジ3b1〜3b6が第1のリードネジを、第2リードネジ3c1〜3c6が第2のリードネジを、屈曲部3e1〜3e6が屈曲部を、複合リードネジ3f1〜3f6が複合リードネジを、1群筒4が第1の被駆動部材を、3群レンズ枠8が第2の被駆動部材をそれぞれ構成する。
【0098】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、可変焦点距離レンズ鏡筒の設計の自由度および作動の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の主要構成部品を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の光軸に沿う縦断面を示す図である。
【図3】第1駆動筒の内面にカム溝およびガイド溝が形成される様子を説明する図である。
【図4】第2駆動筒の内面に複合リードネジおよびカム溝が形成される様子を説明する図であり、(a)が第2駆動筒の内面を展開した様子を示す図であり、(b)が図4(a)の断面B−Bを示す図である。
【図5】第2駆動筒の内面に形成される複合リードネジとオスヘリコイドネジとが係合する様子を示す図であり、(a)は第2駆動筒の内面全体を示す図であり、(b)はオスヘリコイドネジの一部を拡大して示す図であり、(c)は複合リードネジの屈曲部近傍を部分的に拡大して示す図である。
【図6】直進ガイド筒にシャッタユニット、2群レンズ枠、付勢バネ、3群レンズ枠等が組み込まれる様子を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒がワイド端にある状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒が沈胴位置にある状態を示す縦断面図である。
【図9】固定筒の形状を説明する図であり、(a)が正面から見た様子を示す図であり、(b)が図9(a)の断面B−Bを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒がテレ端位置にある状態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の変倍動作に応じ、段カムと開口規制レバーとの位置関係が変化する様子を示す図であり、(a)が沈胴位置にある場合を示す図であり、(b)がワイド端にある状態を示す図であり、(c)がテレ端にある状態を示す図である。
【図12】開口規制レバーによってセクタの開口が規制される様子を説明する図であり、(a)がワイド端の場合を示す図であり、(b)がテレ端の場合を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る可変焦点距離レンズ鏡筒の繰り出し・繰り込みにともなう1群レンズ、2群レンズおよび3群レンズの動きと、変倍動作および焦点調節動作が交互に行われる様子を説明する図である。
【符号の説明】
1 固定筒
1a メスヘリコイドネジ
1b 開口
1d 溝
2 第1駆動筒
2a オスヘリコイドネジ
2c カム溝
2d ガイド溝
3 第2駆動筒
3b1〜3b6 第1リードネジ
3c1〜3c6 第2リードネジ
3d1〜3d3 カム溝
3f1〜3f6 複合リードネジ
4 1群筒
4a オスヘリコイドネジ
5 直進ガイド筒
5b 凸部
5c フォロワピン
5d、5f 直進ガイド穴
5e キー溝
6 2群レンズ枠
6a ガイドピン
7 シャッタユニット
7a シャッタFPC
7b くびれ部
7c 中間部
7d 切り欠き
7e、7f セクタ
8 3群レンズ枠
8a フォロワピン
8b 突起
8c 段カム
9 付勢バネ
10 移動キー
14 ガイド枠
17 エンコーダブラシ
18 開口規制レバー
22 FPC止め
24 エンコーダ基板
101 1群レンズ
102 2群レンズ
103 3群レンズ
Claims (1)
- 第1の深さを有する有底のカム溝と、
第1のリードを有する第1のリードネジの谷部と前記第1のリードより小さい第2のリードを有する第2のリードネジの谷部とが屈曲部を介して接続されて構成され、前記第1の深さよりも浅い第2の深さのネジ底を有する複合リードネジとが一つの円筒上に重ねて配設される可変焦点距離レンズ鏡筒において、
前記複合リードネジと前記カム溝とは、前記屈曲部で交差しないように配設され、
前記カム溝は複数設けられ、かつ前記複合リードネジは前記カム溝の溝数の2倍以上の整数倍の条を有する多条ネジであり、前記複合リードネジがそれぞれ有する屈曲部のうち、少なくとも一つの屈曲部において前記複合リードネジと前記カム溝とが交差しないように前記複合リードネジおよび前記カム溝の配設位置が定められることを特徴とする可変焦点距離レンズ鏡筒。
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